説明

ノズルキャップ再装着阻止装置

【課題】プレフィルドシリンジのノズルキャップが一旦外された場合にその再装着を阻止する装置を提供する。
【解決手段】プレフィルドシリンジのノズルキャップの再装着を阻止する装置であって,
ノズルキャップの少なくとも先端側を収容する概略筒状のキャップカバーを含んでなり,該キャップカバーが,(a) 内周に,該ノズルキャップの外周の一部とかみ合って該ノズルキャップが該カバーから後方へ抜けることを阻止するが,該ノズルキャップが内部に入り込むことは妨げない突起を有しており,且つ (b)該ノズルキャップが奥へと入り込むことを許容する空間を該突起の前方に備えているものである,ノズルキャップ再装着阻止装置,及び該装置を装着したプレフィルドシリンジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,予め注射液が充填されたルアー先の注射用シリンジのための装置に関し,詳しくは,そのようなシリンジのノズルに付されたノズルキャップが一旦外された場合にその後の再装着を不能にすることを通じて,ノズルキャップが被せられた状態のシリンジについて,それが未開封であることを保証する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
予め注射液の充填されている注射筒(「プレフィルドシリンジ」という。)が知られている。プレフィルドシリンジとして広く用いられているのは,ルアー先のもの,すなわちプレフィルドシリンジ先端のノズルがオスルアー(male luer)の形態をとっているものである。オスルアーには,これを塞いでシリンジ内を密封するためノズルキャップ(通常合成ゴム製である)が被されている。プレフィルドシリンジの先端のノズルは,注射針や、対応するメスルアー(female luer)を備えた輸液チューブ、輸液ポンプの接続ポートその他の相手方接続器具に挿入されて液密の継手(ルアーフィッティング)を形成する。ルアー先のプレフィルドシリンジにはまた,相手方接続器具のメスルアーの周囲をねじ止めして固定できる雌ねじつきのスリーブ(ルアーロック)を備えたタイプのものも広く知られ且つ用いられている。
【0003】
従来のルアー先のプレフィルドシリンジのノズルに付されたノズルキャップは,一旦外しても,摘んでノズルに嵌めるだけで再び元通り装着することができる。しかしながら,一旦ノズルキャップを外したときは何らかの汚染源(常在菌等)にノズル先端が曝露されるリスクが常に存在する。プレフィルドシリンジのノズルキャップを外すのは,患者への注射や点滴静注液への注入に際して等の使用時のみであることが予定されており,その場合は直ちに注射針等清浄な相手方の接続器具と結合されるため問題はない。しかしながら,使用時以外において,何らかの理由でノズルキャップが一旦外され又は偶発的に外れた後にノズルキャップが再装着されるということが行われた場合には,重大な汚染の危険性が存在する。なぜなら,ノズルの先端が清浄でない指先や物品表面に直接触れ,又は外れたノズルキャップが手で摘まれてノズルに再装着される過程で,ノズルキャップのうちノズルに接触する部分が汚染され,汚染因子がノズル先端に付着し,更にそこから注射液内へと移行する可能性が大きいからである。このような事態が起こっていても,ノズルキャップが再装着されている限り,外見上これを識別できないため,使用から除外することはできず,使用に供されることとなる。このような事態は,ノズルキャップの取り外しが意図的なものでなくてもプレフィルドシリンジの日常的な取り扱いの中でのミスにより発生し得る。
【0004】
ルアーロック方式のプレフィルドシリンジのキャップを,ミシン目の入った熱収縮性樹脂フィルムでルアーロックと共に覆うことにより封印し,フィルムを破らない限りノズルキャップが外せないようにしたプレフィルドシリンジが知られている(特許文献1参照)。この方式によれば,封印の破られていないプレフィルドシリンジは,ノズルキャップも外されたことがないものであるということが一見して明らかである。しかしながら,熱収縮フィルム全体が除去されてしまっている場合には,もともと熱収縮フィルムが施されていたということを使用者が知っていない限り,ノズルキャップが外された可能性について使用者が注意を喚起されることはない,という問題がある。その上,プレフィルドシリンジの製造において熱収縮フィルムによるノズルキャップの封印は,シリンジへの注射液充填後に行われるが,フィルムを収縮させるために熱風又は熱線を用いて加熱する必要があり,このときプレフィルドシリンジの先端部の温度上昇が避け難い。現在プレフィルドシリンジが用いられている製剤のうち,特に水溶液の形のタンパク質製剤は,他の製剤に比して一般に熱に対し非常に不安定であるため,このような加熱は極力回避することが望ましい。
【0005】
従って,プレフィルドシリンジのノズルキャップが一度も外されたことがないことを使用者に保証し,ノズルキャップが外されたおそれのあるプレフィルドシリンジの使用を確実にユーザーに回避させる手段であって,しかもプレフィルドシリンジ中の製剤に熱的負荷を与えない手段が求められている。
【特許文献1】特開2002−315827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は,一旦ノズルキャップが外された場合にその再装着を実質的に阻止できる手段があれば,上記問題が解消されることに着目した。すなわち,本発明は,プレフィルドシリンジにおいて,一旦外されたノズルキャップの再装着を阻止する装置,及びそのような装置を用いたプレフィルドシリンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の達成のため本発明は,次の装置を提供するものである。
1.プレフィルドシリンジのノズルキャップの再装着を阻止する装置であって,
ノズルキャップの少なくとも先端側を収容する概略筒状のキャップカバーを含んでなり,該キャップカバーが,
(a) 内周に,該ノズルキャップの外周の一部とかみ合って該ノズルキャップが該カバーから後方へ抜けることを阻止するが,該ノズルキャップが内部に入り込むことは妨げない突起を有しており,且つ
(b)該ノズルキャップが奥へと入り込むことを許容する空間を該突起の前方に備えているものである,
ノズルキャップ再装着阻止装置。
2.該キャップカバーが,該ノズルキャップを両側から覆うように構成された1対の概略半円筒状の部材よりなり,該突起をその内周に有するものである,ノズルキャップ再装着阻止装置。
3.該キャップカバーが,該1対の概略半円筒状の部材を,その両側の長手方向の縁同士を重ね合わせた状態で,相互に結合することにより構成されるものである,上記2のノズルキャップ再装着阻止装置。
4.該長手方向の縁が,それらを重ね合わせた状態に保持する保持手段を備えるものである,上記3のノズルキャップ再装着阻止装置。
5.該保持手段が,該1対の概略半円筒状の部材の重ね合わされる縁の一方に設けられた他方に向かって延びる突出部と,他方に設けられた該突出部が嵌め込まれる穴とからなるものである,上記4のノズルキャップ再装着阻止装置。
6.該1対の概略半円筒状の部材がヒンジにより連結されているものである,上記2ないし5の何れかのノズルキャップ再装着阻止装置。
7.該ヒンジが,該1対の概略半円筒状の部材の一体成形された部分である,上記6のノズルキャップ再装着阻止装置。
8.上記1のノズルキャップ再装着阻止装置であって,該キャップカバーが,筒状の内側部材と,該内側部材の前部及び側面を覆ってこれに被せられる筒状の外側部材とを含んでなり,
該内側部材は,該ノズルキャップを両側から覆うように構成された1対の概略半円筒状の部材よりなり,該突起をその内周に有するものであり,
該外側部材及び該内側部材は,該外側部材が該内側部材を覆って被せられたとき該外側部材からの該内側部材の抜去を阻止する係止手段を,両者の接触面に備えるものである,
ノズルキャップ再装着阻止装置。
9.該キャップカバーが,該1対の概略半円筒状の部材を,その両側の長手方向の縁同士を重ね合わせた状態で,該外側部材内に嵌め込むことにより構成されるものである,上記8のノズルキャップ再装着阻止装置。
10.該長手方向の縁が,それらを重ね合わせた状態に保持する保持手段を備えるものである,上記9のノズルキャップ再装着阻止装置。
11.該保持手段が,該1対の概略半円筒状の部材の部材の重ね合わされる縁の一方に設けられた他方に向かって延びる突出部と,他方に設けられた該突出部が嵌り込む穴とからなるものである,上記10のノズルキャップ再装着阻止装置。
12.該1対の概略半円筒状の部材がヒンジにより連結されているものである,上記8ないし11のノズルキャップ再装着阻止装置。
13.該ヒンジが,該1対の概略半円筒状の部材の一体成形された部分である,上記12のノズルキャップ再装着阻止装置。
14.プレフィルドシリンジの胴部を覆う筒状の胴部保護カバーを更に含んでなり,該胴部保護カバーの前端部に,該キャップカバーの後端部が被せられているものである,上記1ないし13の何れかのノズルキャップ再装着阻止装置。
15.該胴部保護カバーが,前端側の第1の筒状部材と,該第1の筒状部材の後端部に前端部を嵌め込んで結合される後端側の第2の筒状部材から構成されており,該第1の筒状部材の前端部に該キャップカバーの後端部が被せられているものである,上記14のノズルキャップ再装着阻止装置。
16.該第2の筒状部材の前端部が複数の長手方向スリットにより複数に分割されており,該第1の筒状部材が該前端部を外部から内方へ押圧するよう,該前端部との接触位置にテーパのある内壁を有するものである,上記15のノズルキャップ再装着阻止装置。
17.上記1ないし16のノズルキャップ再装着阻止装を装着してなるプレフィルドシリンジ。
【発明の効果】
【0008】
上記構成になる本発明によれば,プレフィルドシリンジにおいてノズルキャップを外すには,キャップカバーごとノズルキャップをノズルから引き抜く必要がある。こうして外されたノズルキャップは,キャップカバー内周の突起により阻止されてキャップカバーから後方へ抜け落ちることができず,キャップカバー内に,取り出し不能に留まる。更には,キャップカバーは,ノズルキャップが奥へと入り込むことができる空間を有しているため,カバーキャップをプレフィルドシリンジの先端に再度押し当てたとしても,ノズルキャップはノズル先端に触れないか又は触れても押し退けられてキャップカバーの奥に逃げるため,ノズルに嵌合しない。従って,一旦ノズルキャップが外された後は,ノズルへのノズルキャップの再装着が確実に防止される。ノズルに装着されたノズルキャップによってのみキャップカバーが支持されている態様の場合には,一旦ノズルキャップが外された後はキャップカバーごとプレフィルドシリンジから分離した状態となるため,ノズルの脱落は一目瞭然である。また,キャップカバーに胴部保護カバーの前端部が嵌め込まれている態様の場合には,キャップカバーはプレフィルドシリンジに取り付けることができても,キャップカバー内でノズルキャップがノズルと結合せずに遊んでいる状態となる。この状態は,キャップカバーが再取り付けられたプレフィルドシリンジを手にして振るとキャップカバー内のノズルキャップがキャップカバーの内壁に衝突しその振動が手に伝わるため,ノズルキャップが外れていることが容易に判別できる。また,キャップカバーを透明材料で形成しておけば,ノズルキャップが外れていることは一見して判別できる。更には,ノズルキャップはノズルを締め付けるように装着されており,引き抜く際には相応の抵抗を伴うが,ノズルキャップが外れているときにはそのような抵抗がないため,キャップカバーを外す際の感触によっても容易に判別可能である。
こうして何れの場合にも,ノズルキャップが既に外されていることが使用者に明らかとなり,そのようなプレフィルドシリンジが使用者に気付かれず使用される事態を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のノズルキャップ再装着阻止装置は,キャップカバーのみからなるものであってもよく,またノズルキャップと,プレフィルドシリンジの胴部を覆う保護カバーとを含んでなるものとしてもよい。
【0010】
本発明においてキャップカバーの内周に設ける「突起」は,ノズルキャップの何れかの部位に当たることによりノズルキャップがキャップカバーから脱落してしまうのを阻止するよう,キャップカバーの他の部分の内径に比して狭まった内法を与えるものであればよく,その形状,高さ,長さ,幅やカバーキャップ内での配置は問わない。例えば,環状の突起でも,内周に沿って分離した複数の突起であってもよい。
【0011】
プレフィルドシリンジのノズルキャップには,先端部の外径を他の部分より大きく形成してあるものと,根元部分で最も外径が大きいものとが,現在主として用いられている。キャップカバーの内周に設ける突起は,これら相対的に大きい外径を有する部分でノズルキャップに後方から当接し,それによりノズルキャップの後方への抜け落ちを阻止する形状及び寸法に形成すればよい。また,ノズルキャップが均一な径のものとして形成されている場合には,ノズルキャップの後端(ノズルに接する側の末端)に前記突起が当接して抜け落ちを阻止するよう,その形状,寸法を定めればよい。
【0012】
キャップカバーは,ノズルキャップが奥へと入り込むことを許容する空間を備えている。これは,プレシリンジのノズルに装着されたノズルキャップにキャップカバーが取り付けられた状態で,キャップカバー内部においてノズルキャップの先端からキャップカバーの先端壁までの間に十分な隙間(例えば,ノズルキャップとプレフィルドシリンジのノズルとの嵌合に必要な距離に等しい又はこれより長い距離を有する隙間)を設け,且つその部位におけるキャップカバーの内径をノズルキャップの外径に比して十分大きくしておくことにより達成できる。
【0013】
キャップカバーは,例えば,組み立てたときに先端側が底面で閉じた概略円筒状となるよう,先端側に底面を有する1対の概略半円筒状の部材を閉じ合わせることによって構成することができる。
【0014】
そのような1対の概略半円筒状の部材のみでキャップカバーを構成する場合,その両側の長手方向の縁同士を重ね合わせた状態で,両者を相互に結合すればよい。結合には,例えば,両者が接する部位において,超音波溶着,熱溶着,高周波溶着等適宜の溶着方法を適用するか,又は接着を行えばよい。また両者を閉じ合わせたときに暫定的に安定するよう,相互に接することとなる適宜の部位に相互の保持手段を備えていてもよい。そのような保持手段の例としては,対向する長手方向の縁の一方に,他方へ向かって延びるように形成されたピン等の突出部を設け,他方にその突出部が嵌め込まれる穴や切り欠きを設けた構成のものが挙げられる。また,そのようにして結合している部位に前記の超音波溶着等の溶着方法を適用し又は接着を施してもよい。また,ピンの先端を鉤状にし,ピンが嵌め込まれる穴の内部にこの鉤に噛合って脱落不能に係止する突起を設けておくことによって,概略半円筒状の1対の部材(又は部分)を,溶着等の追加の手段を用いることなく固定してもよい。
【0015】
上記の1対の概略半円筒条の部材は,分離された別個の部材であってもよいが,それらを柔軟なヒンジで連結した形に一体成形してもよい。その場合ヒンジは,これを中心(点又は線)としてそれら1対の半円筒状の部材同士を,開いた状態からノズルキャップの上に閉じ合わせることを許容するものであればよく,それ以外に特に制限はない。例えば,対向するこれら2つの部分の前縁の左右端部同士を相互に連結する細い帯状部として形成することができ,また,代わりとして,対向するこれら2つの部分の先端側の底面の縁同士を,薄肉の材料で連結して折り目としてもよい。
【0016】
更にまた上記とは異なり,キャップカバーは,ノズルキャップに取り付ける前に既に概略円筒状の最終形態をとっている部材として構成してもよい。その場合には,キャップカバーの内周に設けられる突起は,突起の位置におけるキャップカバーの内法が,ノズルキャップの最大径より幾分小さくなるように形成しておき,更には,所望により,突起の後面のみに緩やかな傾斜をつけることによって,ノズルキャップの挿入方向の通過のみが容易になるようにしておけばよい。そうすれば,ノズルキャップにキャップカバーを被せるときには,ノズルに嵌められたキャップカバー(弾性部材であり,通常合成ゴムで形成されている)をシリンジ方向に押し付けて弾性変形させて突起を設けた部位を通過させることができるため,ノズルキャップはキャップカバー内に収まる。
【0017】
上記の各場合において,ノズルキャップに取り付けられたキャップカバーを引くときは,キャップカバー内の突起とノズルキャップとが干渉し,ノズルキャップがこれにより引かれ,ノズルから引き抜かれる。ノズルから引き抜かれたノズルキャップは,突起に阻止されてキャップカバーから出られず,カバーキャップ内に残る。ノズルから外れてキャップカバー内に残ったノズルキャップがキャップカバー内で少なくとも前後方向に移動可能なように,キャップカバーはノズルキャップが奥に入り込むことを許容する空間を備えていることが必要である。そのような空間をキャップカバーが備えている限り,カバーキャップ内に入ったままのノズルキャップをノズルに再装着しようとしても,ノズルキャップをノズルに嵌める方向の押圧力が働かず,ノズルキャップはた,とえノズルの先端に触れたとしてもキャップカバー内を前方へ逃げてしまうため,これをノズルに嵌め直すことはできず,外れたままの状態となる。
【0018】
キャップカバーを,複数の部材の組み合わせにより構成する場合,キャップカバーは,例えば,前記突起を備え,ノズルキャップに直接に接するものである概略円筒状の内側部材と,これに被せられるものである外側部材とから構成することができる。その場合,内側部材は,組み立てたときに概略円筒状(先端側に底面を有していてもいなくてもよい)となる1対の概略半円筒状の部材から構成することができる。内側部材は,これを器具で挟んで引くことができないよう,外側部材内に完全に埋没するか,少なくとも外側部材から後方へ突出していないことが好ましい。また,外側部材は,前端が閉じていることがこのましく,その場合には,内側部材は前端が開いていても,閉じていてもよい。
【0019】
上記1対の概略半円筒状の内側部材は,分離された別個の部材として構成してもよいが,一部においてヒンジで連結された構成としてもよい。その場合,ヒンジは,これを中心(点又は線)として,それら1対の半円筒状の部材同士を開いた状態からノズルキャップの上に閉じ合わせることを許容するものであればよく,それ以外に特に制限はない。例えば,対向するこれら2つの部分の前縁の左右端部同士を相互に連結する細い帯状部として形成することができ,また,代わりとして,内側部材の先端側が底面で閉じている場合には,底面の中心線に沿って薄肉の材料で両部材を連結して折り目としてもよい。なおそれらヒンジは,内側部材の一部として一体成形されることが好ましい。
【0020】
また,上記内側部材を構成する1対の半円筒状の部材は,閉じ合わされた状態で暫定的に保持できるよう,閉じ合わせたときに相互に接することとなる部位に相互の保持手段を備えていてもよい。そのような保持手段の例としては,対向する長手方向の縁の一方に,他方へ向かって延びるように形成されたピン等の突出部と,他方に該ピン等の突出部が嵌め込まれる穴や切り欠き等を設けた構成のものが挙げられる。
【0021】
外側部材は,筒状であり,内側部材に被せた後は内側部材を外側部材から実質上抜去不能にする係止手段が,外側部材と内側部材との接触面に備えられていることが好ましい。そのような係止手段の例としては,内側部材の後端の縁と,これに当接するよう外側部材の内周面に設けられた突起との組み合わせが挙げられる。また,代わりとして,外側部材と内側部材とが,相互の接触面の同一位置において,一方に突起,他方にこれを受ける溝(例えば環状溝)を有するものとしてもよい。更には,前後に方向で隣接する1組の突起(例えば環状突起)としてもよい。外側部材緒を内側部材に被せるには,例えば,プレフィルドシリンジのノズルキャップを覆った内側部材を,シリンジの胴部を前方へ押すことによって,外側部材内に押し込めばよい。また,必須ではないが,これら何れの場合も,内側部材を押し込む場合の抵抗のみを減少させるよう,内側部材の押し込み時に当接する突起の部位に傾斜を持たせておくことができる。
【0022】
本発明のノズルキャップ再装着阻止装置は,上記キャップカバーのみから構成されるものであってもよいが,更に,キャップカバーを不用意な横方向からの力に対して安定化するため等,所望により,プレフィルドシリンジの胴部を覆う胴部保護カバーを含んでなるものであってもよい。胴部保護カバーは,プレフィルドシリンジをこれで覆い,胴部保護カバーから突き出たノズルキャップにキャップカバーを取り付けたとき,キャプカバーの後端部が胴部保護カバーの前端部に被さるように構成することができる。そうすることにより,ノズルキャップのみの支えられた形のキャップキャップカバーを,横方向からの力に対して安定化させることができる。
【0023】
胴部保護カバーは,例えば,プレフィルドシリンジの胴部後端に設けられた指掛片から,プレフィルドシリンジ胴部の前縁まで,又は,プレフィルドシリンジにルアーロック方式に対応したルアーロックが取り付けられている場合には,例えば,当該ルアーロックの前端までを覆う,筒状の構造物とすればよい。
【0024】
胴部保護カバーは,その前端部において,中に収容されたプレフィルドシリンジの胴部の前端部(又は,ルアーロック方式におけるルアーロックの外周)に密着する寸法であることが好ましい。またこの場合,同前端部において,その内径をプレフィルドシリンジの前端部(又はルアーロック)の外径と等しい寸法としておき,同前端部の側壁を長手方向の複数のスリット(例えば,3〜12本)により分割しておけば,プレフィルドシリンジの胴部の前端部(又はルアーロック)に無理なく密着させる上で好都合である。
【0025】
胴部保護カバーの前端部が複数のスリットにより分割されている場合には,胴部保護カバーの前端部に被せられるキャップカバーの後端部の内周面は,前方向に内径が僅かに減少するようテーパを有するものとしてもよい。その場合,キャップカバーを胴部保護カバーの前端部に被せたとき,当該部分の外径が(従って内径も)僅かに絞り込まれてプレフィルドシリンジの胴部に対する密着性が高まりキャップカバーの安定性が増すため,有利である。
【0026】
胴部保護カバーは,上記で前提としているような単一の部材でもよいが,複数の部材例えば,キャップカバーの後端部が被せられる領域を含んだ前端側の第1の筒状部材と,該第1の筒状部材の後端側に嵌め込まれて結合される第2の筒状部材とから構成されていることもできる。この場合,第2の筒状部材は,前端部において,中に収容されたプレフィルドシリンジの胴部の先端側に密着する寸法であることが好ましい。またこの場合,必須ではないが,前端部において,第2の筒状部材の内径をプレフィルドシリンジ外径と等しい寸法としておき,第2の筒状部材の側壁を長手方向の複数のスリット(例えば,3〜12本)により分割しておけば,プレフィルドシリンジの胴部に無理なく密着させる上で好都合である。
【0027】
また,必須ではないが,前記第1の筒状部材と第2の筒状部材との接触面に,両者を相互に係止するための係止手段をそなえていることが好ましい。そのような係止手段の例としては,第1の筒状部材の後端付近の内周面に設けられた突起(又は溝)と,これに当接する第2の筒状部材の外周面に設けられた溝(又は突起)組み合わせが挙げられる。また,代わりとして,第1の筒状部材と第2の筒状部材とが,相互の接触面の同一位置において,一方に突起,他方にこれを受ける溝(例えば環状溝)を有するものとしてもよい。更には,前後に変位した位置関係で相互に接触する1組の突起(例えば環状突起)を有するものとしてもよい。
【0028】
第2の筒状部材の前端部が複数のスリットにより分割されている場合には,第2の筒状部材の前端部が嵌め込まれる第1の筒状部材の内周面は,前方向に内径が僅かに減少するようテーパを有するものとしてもよい。その場合,第1の筒状部材を第2の筒状部材の上に嵌めたとき,第2の筒状部材の前端部の外径が(従って内径も)僅かに絞り込まれてプレフィルドシリンジの胴部に対する密着性が高まり,胴部保護カバー内のプレフィルドシリンジの安定性が増すため,有利である。
【0029】
本発明のノズルキャップ再装着阻止装置は,プラスチック,金属その他適宜の材料で作成されたものであってよく,好ましくは,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリエステル,ポリカーボネート,ポリ塩化ビニルその他の適宜なプラスチックにより成形される。
【実施例】
【0030】
以下,典型的な実施例を参照して本発明をより詳細に記述するが,本発明がそれらの実施例に限定されることは意図しない。
【0031】
〔実施例1〕
図1は,プレフィルドシリンジに装着する前の状態における,本発明の一実施例の側面図を示す。図において,1は,取り付け前のプラスチック製のノズルキャップ再装着阻止装置であり,2はプレフィルドシリンジである。この実施例に用いるプレフィルドシリンジ2は,ノズル(図では見えない)の周囲にルアーロック4が固定されており,ノズルには合成ゴム製のノズルキャップ6が被せられている。ノズルキャップ再装着阻止装置1は,プレフィルドシリンジ2の胴部を覆うための,前端側の第1の筒状部材10及び後端側の第2の筒状部材11から構成される胴部保護カバーと,ノズルキャップ6に被せるためのキャップカバーを構成する部材である内側部材12及び外側部材14とからなる。
【0032】
図2〜8に,本実施例のノズルキャップ再装着阻止装置と,そのプレフィルドシリンジ2への取り付けのプロセスを側面図で示す。図2において,胴部保護カバーの後端側をなす第2の筒状部材11は,プレフィルドシリンジ2の胴部5にほぼ等しい長さを有しており,後端にはプレフィルドシリンジの指掛片3を受け入れるこれより大径の指掛片13が形成されている。筒状部材11は,前方へ向かって外径,内径共にごく僅かに細くなっており,前端部は更に,他の部分より側壁の肉厚を薄くすることにより外径寸法が減少されている。前端部にはまた,長手方向の複数のスリット16が等間隔に入れられ,それにより前端部の外周壁は複数に分割されている。また,前端部の外周には,環状の突起18が形成されている。
【0033】
図3に,胴部保護カバーの後端側をなす第2の筒状部材11をプレフィルドシリンジ2に被せた後,胴部保護カバーの前端側をなす第1の筒状部材10を更に被せようとする状態の,一部を断面図とした側面図を示す。図に見られるように,第2の筒状部材11は,その後端の指掛片13の後面においてプレフィルドシリンジ2の指掛片3の前面に接すると共に,前端においては,プレフィルドシリンジの胴部5の前端部の外周面に接し,先端は僅かに内方へ突出して,プレフィルドシリンジ2の胴部5の肩とルアーロック4との隙間に入っている。
【0034】
図4は,第1の筒状部材10を第2の筒状部材11上に被せた後,更に,キャップカバーを構成する部材のうち内側部材12を取り付けようとする状態の,一部を断面図とした側面図を示す。図に見られるように,筒状部材10は,筒状部材11の外径を減少させた前端部に嵌められてこれを覆い,更にルアーロック4の外周を覆っている。筒状部材10の内径は,こうして,筒状部材11の前端部の外壁を外側から保持し,前端部外壁を介してプレフィルドシリンジ2の胴部12の前端部を保持する。
【0035】
図5は,キャップカバーを構成する部材のうち内側部材12の拡大透視図である。図においては,内側部材12は,取り付け前の最も開いた位置を取っている。内側部材12は,1対の概略半円筒状の部材23,24からなり,それらは,対向する前縁の左右の角においてヒンジ20で連結されており,ヒンジ20を中心として矢印の方向にノズルキャップ上へ閉じ合わせることより,内部に環状突起を有する円筒状の部材である内側部材12を与える。概略半円筒状の部材23及び24は,それらを閉じ合わせたときに当接するそれぞれの長手方向の2列の平行な縁のうち一方に突起26及び28をそれぞれ備え,他方には,相手方の突起(28又は26)が嵌り込むための穴(28’,26’)を有する。
【0036】
図6は,キャップカバーの内側部材12をノズルキャップ6上で閉じ合わせて突起26及び28をそれぞれに対応する穴26’及び28’に嵌め込んだ後,キャップカバーの外側部材14を被せようとする状態の,一部を断面図とした側面図を示す。図に見られるように,内側部材12には,内周面に環状突起30が形成されている。環状突起の内径は,ノズルキャップ6を挟み付けることはないが,しかしその大径部32の外径より十分に小さくなるよう設定されている。
【0037】
図7は,キャップカバーの外側部材14を内側部材12に被せて,ノズルキャップ再装着阻止装置の取り付けを完了したプレフィルドシリンジの,一部を断面図とした側面図を,図8はその側面図を,それぞれを示す。本実施例では,外側部材14は,内側部材12を越えて,胴部保護カバーの後端側をなす第1の筒状部材10の前端部をも覆っている。内側部材12と外側部材14の接触面には,内側部材12が外側部材から抜去不能となるように,係止手段が形成されており(図10),係止手段は,外側部材14の内周面に設けられた環状突起と,これに対応する内側部材12の外周面に設けられた環状溝よりなる。内側部材12は,これを外側部材14に強く奥まで押し込むことができ,それにより外側部材内に収まるが,こうして外側部材14が一旦被せられると,それら環状突起と環状溝との係合により,また引き抜くための手掛かりがないため,外側部材14から引き抜くことができない。この状態において,キャップカバー内のノズルキャップの前方には,ノズルキャップ6が奥まで入り込むのを許容する十分な奥行き及び内径の空間35が設けられている。
【0038】
図9は,図7及び8に示した,ノズルキャップ再装着阻止装置の装着を完了したプレフィルドシリンジからキャップカバー(12,14)を引き抜いた状態を示す,一部を断面図とした側面図である。ノズルキャップ7の大径部分32は,外径がノズカバーの内周面の環状突起30の内径より大きいため,環状突起30を通ることができず,キャップカバーを引き抜くとき,同時にノズルから外れて,図に示したようにキャップカバー内に残る。
【0039】
図10〜11は,本実施例におけるノズルキャップ再装着阻止の仕組みを示す側方断面図である。図10は,図7に示した,正常にノズルキャップ及びキャップカバーが取り付けられた状態の本実施例の先端部付近を示す。この状態において,ノズルキャップ6はノズル6に確りと嵌められて密着し,その位置で固定されており,ノズルキャップ6の前方には空間35がある。また,第2の筒状部材11の先端は,プレフィルドシリンジの胴部5の前縁から僅かに内方へ向かう突起40を有しており,突起40は,胴部6とルアーロック4の間の間隙に入っている。また,第1の筒状部材10の内周面は,第2の筒状部材11の前縁との接触部位において,前方へ向かって径が縮小するテーパを有しており,それにより,第2の筒状部材の前端部を内方へ圧して,胴部との密着を高めている。更に,キャップカバーを構成する内側部材の後端付近外周には溝が,外側部材14の内周面には溝に対応する突起42が,それぞれ設けられ,相互にかみ合って内側部材12の引き抜きを阻止している。
【0040】
図11は,キャップカバーを胴部保護カバーから引き抜いた直後の状態を示し,ノズルキャップ6は,キャップカバーの引き抜きに伴ってノズルから抜け,その先端部が空間35内を自由に前後できる状態にある。この状態で,ノズルキャップ6は,キャップカバー内の空間35を奥へと入り込むことができ,これは,キャップカバーを引き抜いたときの反動,キャップカバーの前端を下方へ向けたとき,あるいはまた,ノズルキャップ6の後端が軽く前方へ押されたときに起こり得る。また,キャップカバーの内側部材12は,外側部材14内に嵌り込んでこれに係合しており,外側部材から抜けないため,キャップカバーは容易に分解できない。
【0041】
図12は,キャップカバーを胴部保護カバーに再度取り付けた状態を示す。このとき,図に示すように,ノズルキャップ6はノズルの先端に当たって前方へ押されるため空間35の範囲内で奥へと逃げている。プレフィルドシリンジの密封は,合成樹脂製のノズルキャップ6とノズルとの間の緊密な嵌合によるから,ノズルキャップ6はある程度の力で押し込んではじめてノズルに嵌まるように作られているが,ノズルは図の位置より前進できず,そのため,ノズルキャップ6をノズルに嵌ることはできないない。こうして再装着が阻止されたノズルキャップ6は,キャップカバー内で遊んでいる状態となる。従って,キャップカバーが再取り付けられたプレフィルドシリンジを手にして振るとキャップカバー内のノズルキャップがキャップカバーの内壁に衝突しその振動が手に伝わるため,ノズルキャップが外れていることが容易に判別できる。また,キャップカバーを透明なプラスチックで形成してある場合には,目視のみによっても直ちに判別できる。更には,ノズルに装着されているノズルキャップを引き抜く際には相応の抵抗を伴うが,ノズルキャップが外れているときにはそのような抵抗がないため,キャップカバーを外す際の感触によっても容易に判別可能である。
【0042】
〔実施例2〕
図13〜16は,本発明のノズルキャップ再装着阻止装置の別の一実施例と,そのプレフィルドシリンジ52への取り付けのプロセスを側面図で示す。図13は,取り付け前のプラスチック製のノズルキャップ再装着阻止装置51とプレフィルドシリンジ52とを示す側面図である。本実施例は,実施例1に含まれていた胴部保護カバーを含まず,またプレフィルドシリンジ52には,実施例1のプレフィルドシリンジ2に取り付けられていたルルアーロック4はない。プレフィルドシリンジ52のノズルに嵌められたノズルキャップ56は,後端部において外径が最大である。ノズルキャップ再装着阻止装置51は,ノズルキャップ56に被せるためのキャップカバーを構成する部材である内側部材62及び外側部材64とからなる。
【0043】
内側部材62は,1対の概略円筒状の部材73,74からなり,それらは,対向する前縁の左右の角においてヒンジ70で連結されており,ヒンジ70を中心として閉じ合わせることにより,円筒状の部材である内側部材62を与える。概略半円筒状の部材73,74は,それらを閉じ合わせたときに当接するそれぞれの長手方向の平行な2列の縁のうち一方に突起76及び78をそれぞれ備え,他方には,相手方の突起(78又は76)が嵌り込むための穴を有する。
【0044】
図14は,キャップカバーの内側部材62をノズルキャップ56上で閉じ合わせて突起76及び78をそれぞれに対応する穴に嵌め込んだ後,キャップカバーの外側部材64を被せようとする状態の,一部を断面図とした側面図を示す。ノズルキャップ56が後端部において外径が最大であることに合わせ,内側部材62は,後端部の内周に,ノズルキャップ56の外径より小さい内径の環状突起80を有しており,環状突起80はノズルの根元付近を挟むように取り囲んでいる。また,内側部材62の他の部分は,ノズル56に装着されていない場合にノズルキャップ56が内部で前後方向に自由に動けるよう,内径がノズルキャップ56何れの部位の外径より大きい内径を有するように形成されており,ノズルキャップ56の前方に,これが奥へと入り込むことを許容する空間80を有する。
【0045】
図15は,キャップカバーの外側部材64を内側部材62に被せて,ノズルキャップ再装着阻止装置の取り付けを完了したプレフィルドシリンジの,一部を断面図とした側面図を,図16は,その側面図を,それぞれを示す。
【0046】
図17は,図15及に示したノズルキャップ再装着阻止装置を備えたプレフィルドシリンジから,キャップカバーを引き抜いた状態を示す,一部を断面図とした側面図である。図に見られるように,ノズルキャップ56は,引き抜かれたキャップカバー内において遊んでおり,キャップカバーをプレフィルドシリンジに再度取り付けたとしても,ノズルキャップ56はノズル先端に当たって奥へと逃げるため,ノズルに嵌めることはできない。従って,キャップカバーが再度取り付けられたプレフィルドシリンジは,振ることにより手に伝わる振動又は目視(キャップカバーが透明な場合)により,また,キャップカバーを引き抜くときの感触により,ノズルキャップが外れていることが容易に判別できる。
【0047】
〔実施例3〕
図18〜20は,本発明のノズルキャップ再装着阻止装置の更なる別の一実施例と,そのプレフィルドシリンジ2への取り付けのプロセスを側面図で示す。本実施例は,実施例1に含まれていた胴部保護カバーを含まず,また実施例2におけるキャップカバーを構成する外側部材64を含まない。図18は,取り付け前のプラスチック製のノズルキャップ再装着阻止装置であるキャップカバー82と,プレフィルドシリンジ2とを示す側面図である。本実施例におけるプレフィルドシリンジ及びノズルキャップは,実施例1におけるものと同一であり,ルアーロック4も同一である。キャップカバー82は,先端側が底面100により閉じている点を除き,構造的に実施例1における内側部材12とほぼ同様である。すなわち,キャップカバー82は,1対の概略円筒状の部材93,94からなり,それらは,対向する前縁の左右の角においてヒンジ90で連結されており,ヒンジ90を中心として閉じ合わせることにより,先端側の閉じた円筒状の部材であるキャップカバー82を与える。概略半円筒状の部材93,94は,それらを閉じ合わせたときに当接するそれぞれの長手方向の2列の平行な縁のうち一方に突起96及び98をそれぞれ備え,他方には,相手方の突起(98又は96)が嵌り込むための穴を有する。
【0048】
図19は,キャップカバー82をノズルキャップ6上で閉じ合わせて突起96及び98をそれぞれに対応する穴に嵌め込んでキャップカバー82(すなわち,本実施例におけるノズルキャップ再装着阻止装置)を装着したプレフィルドシリンジの,一部を断面図とした側面図を,図20は,その側面図を,それぞれを示す。キャップカバー82はこの状態で部材93,94の突合せ面102に沿って,又は対応する穴に嵌め込まれているピン96及び98の部位において,超音波溶着をすることにより,閉じた状態で固定することができる。図19に示すように,キャップカバー82内において,ノズルに装着されたノズルキャップ6の前方にはノズルキャップ6の前方への移動を許容する十分な奥行き及び内径の空間105が確保されている。
【0049】
図21は,キャップカバー82を備えたプレフィルドシリンジのキャップカバーを引き抜いた状態を示す,一部を断面図とした側面図である。図に見られるとおり,ノズルはルアーロックから僅かに先端を出しているのみであり,一旦引き抜いたキャップカバー82を再度ルアーロックに元のように押し付けても,ノズルキャップ6がノズルに嵌ることはなく,キャップカバー82の取り付けすら最早不可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば,プレフィルドシリンジのノズルキャップの再装着を確実に阻止できるため,プレフィルドシリンジが未開封か否かの容易で確実な判別を可能にし,安全性を高めたプレフィルドシリンジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】プレフィルドシリンジへの取り付け前の一実施例の装置の側面図
【図2】プレフィルドシリンジへの胴部保護カバーの一部を取り付けようとする状態を示す側面図
【図3】プレフィルドシリンジに胴部保護カバーの一部の取り付けた状態を示す,一部を断面図とした側面図
【図4】胴部保護カバーの一部の取り付けたプレフィルドシリンジに,胴部保護カバーの残りの部分を取り付けた状態を示す,一部を断面図とした側面図
【図5】キャップカバーの内側部材の拡大透視図
【図6】キャップカバーの内側部材を取り付けた状態のプレフィルドシリンジを示す,一部を断面図とした側面図
【図7】ノズルキャップ再装着阻止装置の取り付けを完了したプレフィルドシリンジの,一部を断面図とした側面図
【図8】ノズルキャップ再装着阻止装置の取り付けを完了したプレフィルドシリンジの側面図
【図9】ノズルキャップ再装着阻止装置の装着を完了したプレフィルドシリンジからキャップカバーを引き抜いた状態を示す,一部を断面図とした側面図
【図10】ノズルキャップ及びキャップカバーが取り付けられた状態を示す,実施例の装置の先端部付近の側方断面図
【図11】キャップカバーを引き抜いた直後の状態を示す,実施例の装置の先端部付近の側方断面図
【図12】ノズルの再装着を試みている状態を示す,実施例の装置の先端部付近の側方断面図
【図13】プレフィルドシリンジへの取り付け前の,別の一実施例の装置の側面図
【図14】キャップカバーの内側部材を取り付けた状態のプレフィルドシリンジを示す,一部を断面図とした側面図
【図15】ノズルキャップ再装着阻止装置の取り付けを完了したプレフィルドシリンジの,一部を断面とした側面図
【図16】ノズルキャップ再装着阻止装置の取り付けを完了したプレフィルドシリンジの側面図
【図17】キャップカバーを引き抜いた直後の状態を示す,実施例の装置の先端部付近の側方断面図
【図18】プレフィルドシリンジへの取り付け前の,更なる別の一実施例の装置の側面図
【図19】ノズルキャップ再装着阻止装置の取り付けを完了したプレフィルドシリンジの,一部を断面とした側面図
【図20】ノズルキャップ再装着阻止装置の取り付けを完了したプレフィルドシリンジの側面図
【図21】ノズルキャップ再装着阻止装置の装着を完了したプレフィルドシリンジからキャップカバーを引き抜いた状態を示す,一部を断面図とした側面図
【符号の説明】
【0052】
1=ノズルキャップ再装着阻止装置,2=プレフィルドシリンジ,3=指掛片,4=ルアーロック,5=胴部,6=ノズルキャップ,10=第1の筒状部材,11=第2の筒状部材,12=内側部材,13=指掛片,14=外側部材,16=スリット,18=突起,20=ヒンジ,23,24=半円筒状部材,26,28=突起,26’,28’=穴,30=環状突起,32=大径部,35=空間,40=突起,42=突起,51=ノズルキャップ再装着阻止装置,52=プレフィルドシリンジ,55=胴部,56=ノズルキャップ,62=内側部材,64=外側部材, 70=ヒンジ,73,74=半円筒状部材,76,78=突起,80=空間,82=ノズルキャップ再装着阻止装置,90=ヒンジ,93,94==半円筒状部材,96,98=突起,100=底面,105=空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレフィルドシリンジのノズルキャップの再装着を阻止する装置であって,
ノズルキャップの少なくとも先端側を収容する概略筒状のキャップカバーを含んでなり,該キャップカバーが,
(a) 内周に,該ノズルキャップの外周の一部とかみ合って該ノズルキャップが該カバーから後方へ抜けることを阻止するが,該ノズルキャップが内部に入り込むことは妨げない突起を有しており,且つ
(b)該ノズルキャップが奥へと入り込むことを許容する空間を該突起の前方に備えているものである,
ノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項2】
該キャップカバーが,該ノズルキャップを両側から覆うように構成された1対の概略半円筒状の部材よりなり,該突起をその内周に有するものである,ノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項3】
該キャップカバーが,該1対の概略半円筒状の部材を,その両側の長手方向の縁同士を重ね合わせた状態で,相互に結合することにより構成されるものである,請求項2のノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項4】
該長手方向の縁が,それらを重ね合わせた状態に保持する保持手段を備えるものである,請求項3のノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項5】
該保持手段が,該1対の概略半円筒状の部材の重ね合わされる縁の一方に設けられた他方に向かって延びる突出部と,他方に設けられた該突出部が嵌め込まれる穴とからなるものである,請求項4のノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項6】
該1対の概略半円筒状の部材がヒンジにより連結されているものである,請求項2ないし5の何れかのノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項7】
該ヒンジが,該1対の概略半円筒状の部材の一体成形された部分である,請求項6のノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項8】
請求項1のノズルキャップ再装着阻止装置であって,該キャップカバーが,筒状の内側部材と,該内側部材の前部及び側面を覆ってこれに被せられる筒状の外側部材とを含んでなり,
該内側部材は,該ノズルキャップを両側から覆うように構成された1対の概略半円筒状の部材よりなり,該突起をその内周に有するものであり,
該外側部材及び該内側部材は,該外側部材が該内側部材を覆って被せられたとき該外側部材からの該内側部材の抜去を阻止する係止手段を,両者の接触面に備えるものである,
ノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項9】
該キャップカバーが,該1対の概略半円筒状の部材を,その両側の長手方向の縁同士を重ね合わせた状態で,該外側部材内に嵌め込むことにより構成されるものである,請求項8のノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項10】
該長手方向の縁が,それらを重ね合わせた状態に保持する保持手段を備えるものである,請求項9のノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項11】
該保持手段が,該1対の概略半円筒状の部材の部材の重ね合わされる縁の一方に設けられた他方に向かって延びる突出部と,他方に設けられた該突出部が嵌り込む穴とからなるものである,請求項10のノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項12】
該1対の概略半円筒状の部材がヒンジにより連結されているものである,請求項8ないし11のノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項13】
該ヒンジが,該1対の概略半円筒状の部材の一体成形された部分である,請求項12のノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項14】
プレフィルドシリンジの胴部を覆う筒状の胴部保護カバーを更に含んでなり,該胴部保護カバーの前端部に,該キャップカバーの後端部が被せられているものである,請求項1ないし13の何れかのノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項15】
該胴部保護カバーが,前端側の第1の筒状部材と,該第1の筒状部材の後端部に前端部を嵌め込んで結合される後端側の第2の筒状部材から構成されており,該第1の筒状部材の前端部に該キャップカバーの後端部が被せられているものである,請求項14のノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項16】
該第2の筒状部材の前端部が複数の長手方向スリットにより複数に分割されており,該第1の筒状部材が該前端部を外部から内方へ押圧するよう,該前端部との接触位置にテーパのある内壁を有するものである,請求項15のノズルキャップ再装着阻止装置。
【請求項17】
請求項1ないし16のノズルキャップ再装着阻止装を装着してなるプレフィルドシリンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−22641(P2009−22641A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190765(P2007−190765)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(591039540)前田産業株式会社 (9)
【出願人】(000228545)日本ケミカルリサーチ株式会社 (27)
【出願人】(000104560)キッセイ薬品工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】