ノズル装置
【課題】ガス処理塔内におけるガスの流速分布を均一化し、ガスに対する均一な処理を可能にするノズル装置。
【解決手段】ガスを下方から送入して上方からの液体と接触処理するガス処理塔1の下方に配置されるノズル装置Nで、ガスを横方向に通流させる基管6と、基管6からのガスを左右に分岐して横方向に通流させる左右一対の枝管8からなる横分岐管路Xを少なくとも3つ備え、第1横分岐管路Xの枝管8の一方に第2横分岐管路Xの基管6を接続し、他方に第3横分岐管路Xの基管6を接続して、第1横分岐管路Xの基管6からのガスを少なくとも2回以上横方向に分岐して吹き出し口5から少なくとも下方に吹き出すように構成してある。
【解決手段】ガスを下方から送入して上方からの液体と接触処理するガス処理塔1の下方に配置されるノズル装置Nで、ガスを横方向に通流させる基管6と、基管6からのガスを左右に分岐して横方向に通流させる左右一対の枝管8からなる横分岐管路Xを少なくとも3つ備え、第1横分岐管路Xの枝管8の一方に第2横分岐管路Xの基管6を接続し、他方に第3横分岐管路Xの基管6を接続して、第1横分岐管路Xの基管6からのガスを少なくとも2回以上横方向に分岐して吹き出し口5から少なくとも下方に吹き出すように構成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを下方から送入して上方からの液体と接触処理するガス処理塔の下方に配置されるノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなノズル装置は、例えば、充填塔やスプレー塔などのようなガス処理塔の下方に配置されて、硫化水素を含む燃料ガスを下方から吹き出して送入し、上方からの水や吸収液と接触させて硫化水素を除去する脱硫処理用などに使用され、従来、図13および図14に示す構造のものが知られている(適切な特許文献が見当たらないため、図示して説明する)。
【0003】
図13に示す従来技術では、ノズル装置Nが1本の管路11で構成され、その管路11の端部に吹き出し口5がひとつ設けられて、そのひとつの吹き出し口5がガス処理塔1内に臨んでいる。
また、図14に示す従来技術では、ノズル装置Nが1本の管路11で構成され、その管路11の下方に多数の吹き出し口5が設けられてガス処理塔1内に挿入されている。
なお、図13および図14において、2は液噴霧ノズルを示し、3は充填材層を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図13に示す従来技術では、ガス処理塔1の側部において横方向に向くひとつの吹き出し口5からガスを吹き出して送入するため、図の上方に示すように、ガス処理塔1内でのガスの流速分布が不均一となり、ガス処理塔1内でのガス処理能力が著しく低下するという問題がある。
同様に、図14に示す従来技術でも、図の上方に示すように、ガス処理塔1内でのガスの流速分布が不均一で、すべてのガスに対して均一な処理の実行がむずかしいという問題がある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、ガス処理塔内におけるガスの流速分布を均一化し、ガスに対する均一な処理を可能にするノズル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、ガスを下方から送入して上方からの液体と接触処理するガス処理塔の下方に配置されるノズル装置であって、前記ノズル装置が、ガスを横方向に通流させる基管と、その基管からのガスを左右に分岐して横方向に通流させる左右一対の枝管からなる横分岐管路を少なくとも3つ備え、その第1横分岐管路の枝管の一方に第2横分岐管路の基管を接続し、他方に第3横分岐管路の基管を接続して、第1横分岐管路の基管からのガスを少なくとも2回以上横方向に分岐して吹き出し口から少なくとも下方に吹き出すように構成してあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、ガス処理塔の下方に配置されるノズル装置が、ガスを横方向に通流させる基管と、その基管からのガスを左右に分岐して横方向に通流させる左右一対の枝管からなる横分岐管路を少なくとも3つ備え、その第1横分岐管路の枝管の一方に第2横分岐管路の基管を接続し、他方に第3横分岐管路の基管を接続して、第1横分岐管路の基管からのガスを少なくとも2回以上横方向に分岐して吹き出し口から少なくとも下方に吹き出すように構成してあるので、ノズル装置に流入したガスは、第1横分岐管路において左右に分岐され、その左右に分岐されたガスは、さらに、第2横分岐管路または第3横分岐管路においてそれぞれ左右に分岐され、少なくとも2回以上横方向に分岐されることになる。
そして、その2回以上横方向に分岐されたガスが、吹き出し口から少なくとも下方に向けて吹き出されるので、このノズル装置をガス処理塔の下方に配置することによって、ガス処理塔内におけるガスの流速分布は均一化され、上方からの液体による均一な処理が可能となる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、上記第1の特徴構成に加えて、前記ノズル装置が、ガスを上下に分岐して縦方向に通流させる上下一対の枝管からなる縦分岐管路を少なくとも4つ備え、その第1から第4縦分岐管路を前記第2と第3横分岐管路の枝管にそれぞれ接続して、前記第2と第3横分岐管路の枝管からのガスをそれぞれ上下方向に分岐して吹き出し口から下方と上方へ吹き出すように構成してあるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、ノズル装置が、ガスを上下に分岐して縦方向に通流させる上下一対の枝管からなる縦分岐管路を少なくとも4つ備え、その第1から第4縦分岐管路を第2と第3横分岐管路の枝管にそれぞれ接続して、第2と第3横分岐管路の枝管からのガスをそれぞれ上下方向に分岐して吹き出し口から下方と上方へ吹き出すように構成してあるので、第1〜第3横分岐管路によって少なくとも2回以上横方向に分岐されたガスは、さらに、縦分岐管路においてそれぞれ上下に分岐されて吹き出し口から下方と上方へ向けて吹き出されるので、ガス処理塔内におけるガスの流速分布は一層均一化され、上方からの液体による均一な処理がより一層確実となる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、上記第2の特徴構成に加えて、前記吹き出し口において、下方への吹き出し口の開口面積が大で、上方への吹き出し口の開口面積が小であるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、下方への吹き出し口の開口面積が大で、上方への吹き出し口の開口面積が小であるから、各縦分岐管路の下方への吹き出し口からのガスは多量で、かつ、周囲に分散しながら上昇するのに対し、上方への吹き出し口からのガスは少量で、かつ、ほぼ真っ直ぐに上昇することになり、その結果、下方と上方への吹き出し口から吹き出すガスの流速が均一化され、ガス処理塔内におけるガスの流速分布は一層確実に均一化される。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、上記第1〜第3の特徴構成に加えて、前記各分岐管路における基管と枝管の管径が、ノズル装置への流入口側ほど大径で、吹き出し口側ほど小径に構成してあるところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、各分岐管路における基管と枝管の管径が、ノズル装置への流入口側ほど大径で、吹き出し口側ほど小径に構成してあるので、ノズル装置を通流するガスの流速は、流入口側から吹き出し口側に至るまで均一化され、管径を必要以上に大径にすることもなく、非常に合理的なノズル装置を提供することができる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、上記第1の特徴構成に加えて、前記ノズル装置が、ガスを下方へのみ通流させる下向き管路を少なくとも4つ備え、その第1から第4下向き管路を前記第2と第3横分岐管路の枝管にそれぞれ接続して、前記第2と第3横分岐管路の枝管からのガスをそれぞれ吹き出し口から下方へのみ吹き出すように構成し、各下向き管路が、前記第2と第3横分岐管路の枝管からのガスに対して、そのガスの流れ方向に垂直なガス衝突面を備えているところにある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、ノズル装置が、ガスを下方へのみ通流させる下向き管路を少なくとも4つ備え、その第1から第4下向き管路を第2と第3横分岐管路の枝管にそれぞれ接続して、第2と第3横分岐管路の枝管からのガスをそれぞれ吹き出し口から下方へのみ吹き出すように構成してあるので、第1〜第3横分岐管路によって少なくとも2回以上横方向に分岐されたガスは、各下向き管路の吹き出し口から下方へ向けて吹き出される。
そして、その各下向き管路が、第2と第3横分岐管路の枝管からのガスに対して、そのガスの流れ方向に垂直なガス衝突面を備えているので、第2と第3横分岐管路の枝管からのガスは、その流れ方向を下方へ向けて円滑に変えるのではなくて、流れに垂直なガス衝突面に衝突することにより分散しながら変えることになり、その結果、後述するシミュレーションからも明らかなように、ガスの流速分布は、ガス処理塔の全体にわたって均一化される。
【0016】
本発明の第6の特徴構成は、上記第5の特徴構成に加えて、前記第1横分岐管路において、その左右一対の枝管の中心軸が基管の中心軸よりも上方に位置するように構成してあるところにある。
【0017】
本発明の第6の特徴構成によれば、第1横分岐管路において、その左右一対の枝管の中心軸が基管の中心軸よりも上方に位置するように構成してあるので、第1横分岐管路の基管の上端から下向き管路の下端に至るまでの上下高さ、言い換えると、ガス処理塔内に配置するノズル装置全体の上下高さを低くすることができ、その分、ガス処理塔の内部空間が上下方向に長くなって、その長くなった内部空間の有効利用が可能となる。
【0018】
本発明の第7の特徴構成は、上記第1〜第6の特徴構成に加えて、前記ガス処理塔内のガスの平均流速が、乾燥状態の標準換算(0℃、1気圧)において0.6m/秒以下の緩い流れであり、前記ノズル装置が、その緩い流れのガス処理塔に配置されるものである。
【0019】
すなわち、ガス処理塔内のガスの平均流速が、乾燥状態の標準換算において0.6m/秒より速い場合は、充填材層を通過する際の圧力損失が大きく、そのため、充填材層によってガスが整流作用を受け、ノズル装置の構成の如何にかかわらず、ガスの流速分布において極端な偏流が生じることはない。
しかしながら、ガスの平均流速が0.6m/秒以下になると、充填材層を通過する際の圧力損失が少なくなるため、充填材層による整流作用を期待することができず、その結果、ノズル装置によってはガスの流速分布に極端な偏流が生じやすくなる。
【0020】
本発明の第7の特徴構成によれば、ガス処理塔内のガスの平均流速が、乾燥状態の標準換算(0℃、1気圧)において0.6m/秒以下の緩い流れであり、前記ノズル装置が、その緩い流れのガス処理塔に配置されるので、本発明によるノズル装置の特徴が顕著に現れ、充填材層による整流作用が期待できないにもかかわらず、ノズル装置そのものによって偏流の発生が抑制され、後述するシミュレーションからも明らかなように、ガスの流速分布は、ガス処理塔の全体にわたってより一層均一化される。
【0021】
本発明の第8の特徴構成は、上記第1〜第7の特徴構成に加えて、前記ガス処理塔が、燃料ガスから硫化水素を吸収除去する脱硫処理用の吸収塔であり、前記ノズル装置が、燃料ガスを送入するためにその吸収塔に配置されるものである。
【0022】
本発明の第8の特徴構成によれば、ガス処理塔が、燃料ガスから硫化水素を吸収除去する脱硫処理用の吸収塔であり、前記ノズル装置が、燃料ガスを送入するためにその吸収塔に配置されることにより、燃料ガス中の硫化水素を良好に吸収除去することが可能となる。
すなわち、燃料ガスから硫化水素を吸収除去する場合、アンモニアなどの物質を吸収除去する場合に比べて、その吸収除去が比較的緩慢であり、そのため、吸収塔内における燃料ガスの流速を速くすることが困難となる。具体的には、乾燥状態の標準換算において0.6m/秒以下の緩い流れに設定することが多く、本発明によるノズル装置であれば、上記第7の特徴構成に関連して記述したように、たとえ0.6m/秒以下の緩い流れであっても、吸収塔の全体にわたって均一化された速度分布を現出することができ、その結果、燃料ガス中の硫化水素を良好に吸収除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明によるノズル装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
このノズル装置Nは、図1に示すように、充填塔、スプレー塔、吸収塔などのようなガス処理塔1の下方に配置されて、例えば、硫化水素(H2S)を含む燃料ガスから硫化水素を除去する脱硫処理に使用される。
燃料ガスの脱硫処理用に使用される吸収塔1の場合、液体としての脱硫液を散布する液噴霧ノズル2が上方に配置され、液噴霧ノズル2の下方に充填材層3が、充填材層3の下方にノズル装置Nがそれぞれ配置されて、流入口4から流入される燃焼ガスをノズル装置Nの吹き出し口5から吹き出して吸収塔1内へ送入し、上方からの脱硫液と接触させて、脱硫液中に硫化水素を溶け込ませて吸収除去するように構成されている。
【0024】
そのノズル装置Nは、図2に示すように、燃料ガスをほぼ水平な横方向に通流させる基管6と、その基管6に連通されて燃料ガスをほぼ水平な横方向に通流させる左右一対の枝管8からなるほぼT字状の横分岐管路Xを備え、基管6の出口に対面する枝管8の内面が、基管6からの燃料ガスを衝突させて左右の流れに分岐させる衝突分岐部7として機能するように構成されている。
つまり、横分岐管路Xは、燃料ガスを横方向に通流させる基管6と、基管6からの燃料ガスを衝突させて左右の流れに分岐させる衝突分岐部7と、その左右の流れに分岐された燃料ガスのそれぞれを横方向に通流させる左右一対の枝管8を備えている。
なお、横分岐管路Xは、必ずしもT字状にする必要はなく、例えば、ほぼY字状にするなど種々の形状を採用することができる。
【0025】
さらに、ノズル装置Nは、図3に示すように、横分岐管路Xの枝管8に接続されて燃料ガスをほぼ垂直な縦方向に通流させる上下一対の枝管10からなる縦分岐管路Yを備え、横分岐管路Xの枝管8の出口に対面する枝管10の内面が、枝管8からの燃料ガスを衝突させて上下の流れに分岐させる衝突分岐部9として機能するように構成されている。
つまり、縦分岐管路Yは、横分岐管路Xの枝管8からの燃料ガスを衝突させて上下の流れに分岐させる衝突分岐部9と、上下の流れに分岐された燃料ガスのそれぞれを縦方向に通流させる上下一対の枝管10を備え、各枝管10には吹き出し口5が設けられている。
各枝管10に設けられる吹き出し口5は、上方への枝管10に設けられる上向き吹き出し口5aの開口面積が小で、下方への枝管10に設けられる下向き吹き出し口5bの開口面積が大に形成されている。
【0026】
そして、ノズル装置Nは、横分岐管路Xを少なくとも3つ備え、流入口4から流入された燃料ガスは、少なくとも2回以上横方向に分岐されて吹き出し口5から吹き出されるように構成され、好ましくは、縦分岐管路Yも備えていて、その縦分岐管路Yが、横分岐管路Xの枝管8に接続されている。
例えば、図4および図5に示す実施形態では、横分岐管路Xを7つ備え、流入口4にひとつの第1横分岐管路X(図中、「A」で示す)が接続され、その第1横分岐管路Xの枝管8の一方に第2横分岐管路X(図中、「B」で示す)が接続され、他方に第3横分岐管路X(図中、「C」で示す)が接続され、さらに、第2横分岐管路Xの枝管8に第4と第5横分岐管路X(図中、「D」と「E」で示す)が接続され、第3横分岐管路Xの枝管8に第6と第7横分岐管路X(図中、「F」と「G」で示す)が接続されている。
そして、このノズル装置Nは、縦分岐管路Yを合計8つ備えていて、各縦分岐管路Yが第4〜第7横分岐管路Xの枝管8に接続され、各枝管8からの燃料ガスをそれぞれ上下に分岐して上向き吹き出し口5aと下向き吹き出し口5bから吹き出すように構成されている。
【0027】
したがって、この図4および図5に示す実施形態では、ノズル装置Nが7つの横分岐管路Xと8つの縦分岐管路Yを備え、流入口4から流入された燃料ガスは、横方向に3回分岐され、かつ、上下方向に1回分岐されて、縦分岐管路Yの上下の吹き出し口5a,5bから吹き出されることになる。
具体的には、流入口4からノズル装置Nへ流入された燃料ガスは、「A」で示す第1横分岐管路Xにおいてほぼ等量の2つの流れに分岐され、その分岐された燃料ガスのそれぞれが、「B」と「C」で示す第2と第3横分岐管路Xにおいてほぼ等量の2つの流れに分岐され、さらに、その分岐された燃料ガスのそれぞれが、「D」〜「G」で示す第4〜第7横分岐管路Xにおいてほぼ等量の2つの流れに分岐される。つまり、第4〜第7横分岐管路Xの横枝管路8には、流入口4から流入された燃料ガスのほぼ1/8の量の燃料ガスが流入される。
【0028】
さらに、第4〜第7横分岐管路Xの各横枝管路8に流入された燃料ガスが、縦分岐管路Yの上向き吹き出し口5aと下向き吹き出し口5bから吹き出されて上方からの脱硫液と接触し、燃料ガス中の硫化水素が脱硫液に溶け込んで吸収塔1から排出され、つぎの処理が実行される。
そして、このような構成のノズル装置Nが、図5に示す吸収塔1の平面視において、断面円形のガス処理塔1の中心TLに対してノズル装置Nの全吹き出し口5a,5bの中心NLがノズル装置Nへの燃料ガスの流入口4側に片寄る位置に配置されている。
すなわち、ノズル装置Nの全吹き出し口5a,5bの中心NLが吸収塔1の中心TLと一致していると、全吹き出し口5a,5bから吹き出される燃料ガスの流速分布は、流入口4と反対の側へ少し片寄ることになるが、このような片寄りが補正されて、燃料ガスの流速分布は吸収塔1の全体にわたって均一化される。
【0029】
〔別実施形態〕
つぎに、別の実施形態について説明するが、重複説明を避けるため、先の実施形態で説明した構成や同じ作用を有する構成については、同じ符号を付すことにより説明を省略し、主として先の実施形態と異なる構成について説明する。
【0030】
(1)先の実施形態では、ノズル装置Nが7つの横分岐管路Xを備え、燃料ガスが横方向に3回分岐されて吹き出される構成のものを示したが、横分岐管路Xを少なくとも3つ備え、横方向に少なくとも2回以上分岐されて吹き出される構成のものであれば、燃料ガスの流速分布の均一化を図ることができる。
また、ノズル装置Nが縦分岐管路Yを備え、燃料ガスが上向き吹き出し口5aと下向き吹き出し口5bから吹き出される構成のものを示したが、図6に示すように、縦分岐管路Yを使用せずに、横分岐管路Xの左右一対の枝管8に燃料ガスを下方へのみ通流させる下向き管路12を接続し、その下向き管路12の先端部に吹き出し口5を設けて実施することもできる。要するに、燃料ガスの吹き出し方向に関しては、少なくとも下方に吹き出すように構成すればよい。
【0031】
また、横分岐管路Xの枝管8に下向き管路12を接続する場合、図7に示すように、例えば、1本の斜め管13を介して枝管8と下向き管路12を接続し、枝管8からの燃料ガスの流れ(図中、矢印で示す)に垂直なガス衝突面12aが下向き管路12の内面に形成されるように構成することもできる。
このような構成であれば、枝管8からの燃料ガスは、ガス衝突面12aに衝突して分散しながら下方へ方向を変えて吹き出し口5から吸収塔1へ送入されることになり、その結果、吸収塔1内を上昇する燃料ガスの流速分布が、吸収塔1の全体にわたって均一化される。
なお、斜め管13は、下向き管路12の内面にガス衝突面12aを形成するためのものであるから、特に1本に限るものではなく、2本以上であってもよい。
【0032】
このガス衝突面12aを備えた下向き管路12を有するノズル装置Nを使用すると、燃料ガスの流速分布が、吸収塔1の全体にわたって均一化されるのであるが、特に、乾燥状態の標準換算(0℃、1気圧)において0.6m/秒以下の緩い流れにおいて顕著な効果を期待することができる。
図8と図9は、従来のノズル装置(従来型ノズル)とガス衝突面12aを備えた下向き管路12を有するノズル装置N(本件ノズル)を使用した場合の塔内におけるガスの流速分布をシミュレーションした図である。
なお、従来型ノズルは、図14に示した従来のノズル装置において、吹き出し口5を4つ設けたものであり、図8と図9において、(イ)はその従来型ノズルの流速分布を示し、(ロ)は本件ノズルの流速分布を示す。そして、図中における数値は、塔内のガスの流速(m/秒)を示し、曲線は各流速における等速線を示す。
この図8と図9から、従来型のノズルでは、ガスの流速が塔の内壁に沿って極端に速くなり、塔の中心部と塔の内壁近傍との間で極端な偏流が生じているのに対し、本件ノズルでは、ガスの流速が塔の中心部から内壁近傍にわたって非常に均一化されていることが理解できる。
【0033】
また、ガス衝突面12aを備えた下向き管路12を有するノズル装置Nを使用する場合、図10に示すように、横分岐管路Xにおいて、その左右一対の枝管8の中心軸L8が基管6の中心軸L6よりも上方に位置するように構成することができる。
このように構成すれば、横分岐管路Xの基管6の上端から下向き管路12の下端に至るまでの上下高さ、つまり、ノズル装置Nの全体の上下高さを低くすることができ、その分、吸収塔1の内部空間が上下方向に長くなって、その長くなった内部空間の有効利用が可能となる。
【0034】
(2)先の実施形態では、横分岐管路Xの基管6と枝管8および縦分岐管路Yの枝管10の管径をほぼ同一に構成した例を示したが、図11に示すように、各管6,8,10の管径を流入口4側ほど大径で、吹き出し口5側ほど小径に構成し、例えば、各管6,8,10内を通流する燃料ガスの流速が、流入口4から吹き出し口5までほぼ等速になるように構成することもできる。
その場合、図12に示すように、縦分岐管路Yが接続される横分岐管路Xの枝管8については、垂直方向の下方内面を水平にし、上方内面側を絞って管径を小径にするのが好ましい。なぜなら、上向き吹き出し口5aから水が流入した場合、枝管8内に滞留するのを防止し、下向き吹き出し口5bからの流出を容易にするからである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ノズル装置を使用するガス処理塔の概略説明図
【図2】ノズル装置を構成する横方向分離ユニットの斜視図
【図3】ノズル装置を構成する縦方向分離ユニットの斜視図
【図4】ノズル装置の斜視図
【図5】ノズル装置の平面図
【図6】別の実施形態によるノズル装置の要部の斜視図
【図7】別の実施形態によるノズル装置の要部の断面図
【図8】(イ)従来型ノズルの塔内のガス流速分布を示す図、(ロ)本件ノズルの塔内のガス流速分布を示す図
【図9】(イ)従来型ノズルの塔内のガス流速分布を示す図、(ロ)本件ノズルの塔内のガス流速分布を示す図
【図10】別の実施形態によるノズル装置の要部の正面図
【図11】別の実施形態によるノズル装置の斜視図
【図12】別の実施形態によるノズル装置の要部の側面図
【図13】従来のノズル装置を使用するガス処理塔の概略説明図
【図14】従来のノズル装置を使用するガス処理塔の概略説明図
【符号の説明】
【0036】
1 ガス処理塔としての吸収塔
5 吹き出し口
5a 上方への吹き出し口
5b 下方への吹き出し口
6 横分岐管路の基管
8 横分岐管路の枝管
10 縦分岐管路の枝管
12 下向き管路
12a ガス衝突面
N ノズル装置
X 横分岐管路
Y 縦分岐管路
L6 横分岐管路の基管の中心軸
L8 横分岐管路の枝管の中心軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを下方から送入して上方からの液体と接触処理するガス処理塔の下方に配置されるノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなノズル装置は、例えば、充填塔やスプレー塔などのようなガス処理塔の下方に配置されて、硫化水素を含む燃料ガスを下方から吹き出して送入し、上方からの水や吸収液と接触させて硫化水素を除去する脱硫処理用などに使用され、従来、図13および図14に示す構造のものが知られている(適切な特許文献が見当たらないため、図示して説明する)。
【0003】
図13に示す従来技術では、ノズル装置Nが1本の管路11で構成され、その管路11の端部に吹き出し口5がひとつ設けられて、そのひとつの吹き出し口5がガス処理塔1内に臨んでいる。
また、図14に示す従来技術では、ノズル装置Nが1本の管路11で構成され、その管路11の下方に多数の吹き出し口5が設けられてガス処理塔1内に挿入されている。
なお、図13および図14において、2は液噴霧ノズルを示し、3は充填材層を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図13に示す従来技術では、ガス処理塔1の側部において横方向に向くひとつの吹き出し口5からガスを吹き出して送入するため、図の上方に示すように、ガス処理塔1内でのガスの流速分布が不均一となり、ガス処理塔1内でのガス処理能力が著しく低下するという問題がある。
同様に、図14に示す従来技術でも、図の上方に示すように、ガス処理塔1内でのガスの流速分布が不均一で、すべてのガスに対して均一な処理の実行がむずかしいという問題がある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、ガス処理塔内におけるガスの流速分布を均一化し、ガスに対する均一な処理を可能にするノズル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、ガスを下方から送入して上方からの液体と接触処理するガス処理塔の下方に配置されるノズル装置であって、前記ノズル装置が、ガスを横方向に通流させる基管と、その基管からのガスを左右に分岐して横方向に通流させる左右一対の枝管からなる横分岐管路を少なくとも3つ備え、その第1横分岐管路の枝管の一方に第2横分岐管路の基管を接続し、他方に第3横分岐管路の基管を接続して、第1横分岐管路の基管からのガスを少なくとも2回以上横方向に分岐して吹き出し口から少なくとも下方に吹き出すように構成してあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、ガス処理塔の下方に配置されるノズル装置が、ガスを横方向に通流させる基管と、その基管からのガスを左右に分岐して横方向に通流させる左右一対の枝管からなる横分岐管路を少なくとも3つ備え、その第1横分岐管路の枝管の一方に第2横分岐管路の基管を接続し、他方に第3横分岐管路の基管を接続して、第1横分岐管路の基管からのガスを少なくとも2回以上横方向に分岐して吹き出し口から少なくとも下方に吹き出すように構成してあるので、ノズル装置に流入したガスは、第1横分岐管路において左右に分岐され、その左右に分岐されたガスは、さらに、第2横分岐管路または第3横分岐管路においてそれぞれ左右に分岐され、少なくとも2回以上横方向に分岐されることになる。
そして、その2回以上横方向に分岐されたガスが、吹き出し口から少なくとも下方に向けて吹き出されるので、このノズル装置をガス処理塔の下方に配置することによって、ガス処理塔内におけるガスの流速分布は均一化され、上方からの液体による均一な処理が可能となる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、上記第1の特徴構成に加えて、前記ノズル装置が、ガスを上下に分岐して縦方向に通流させる上下一対の枝管からなる縦分岐管路を少なくとも4つ備え、その第1から第4縦分岐管路を前記第2と第3横分岐管路の枝管にそれぞれ接続して、前記第2と第3横分岐管路の枝管からのガスをそれぞれ上下方向に分岐して吹き出し口から下方と上方へ吹き出すように構成してあるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、ノズル装置が、ガスを上下に分岐して縦方向に通流させる上下一対の枝管からなる縦分岐管路を少なくとも4つ備え、その第1から第4縦分岐管路を第2と第3横分岐管路の枝管にそれぞれ接続して、第2と第3横分岐管路の枝管からのガスをそれぞれ上下方向に分岐して吹き出し口から下方と上方へ吹き出すように構成してあるので、第1〜第3横分岐管路によって少なくとも2回以上横方向に分岐されたガスは、さらに、縦分岐管路においてそれぞれ上下に分岐されて吹き出し口から下方と上方へ向けて吹き出されるので、ガス処理塔内におけるガスの流速分布は一層均一化され、上方からの液体による均一な処理がより一層確実となる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、上記第2の特徴構成に加えて、前記吹き出し口において、下方への吹き出し口の開口面積が大で、上方への吹き出し口の開口面積が小であるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、下方への吹き出し口の開口面積が大で、上方への吹き出し口の開口面積が小であるから、各縦分岐管路の下方への吹き出し口からのガスは多量で、かつ、周囲に分散しながら上昇するのに対し、上方への吹き出し口からのガスは少量で、かつ、ほぼ真っ直ぐに上昇することになり、その結果、下方と上方への吹き出し口から吹き出すガスの流速が均一化され、ガス処理塔内におけるガスの流速分布は一層確実に均一化される。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、上記第1〜第3の特徴構成に加えて、前記各分岐管路における基管と枝管の管径が、ノズル装置への流入口側ほど大径で、吹き出し口側ほど小径に構成してあるところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、各分岐管路における基管と枝管の管径が、ノズル装置への流入口側ほど大径で、吹き出し口側ほど小径に構成してあるので、ノズル装置を通流するガスの流速は、流入口側から吹き出し口側に至るまで均一化され、管径を必要以上に大径にすることもなく、非常に合理的なノズル装置を提供することができる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、上記第1の特徴構成に加えて、前記ノズル装置が、ガスを下方へのみ通流させる下向き管路を少なくとも4つ備え、その第1から第4下向き管路を前記第2と第3横分岐管路の枝管にそれぞれ接続して、前記第2と第3横分岐管路の枝管からのガスをそれぞれ吹き出し口から下方へのみ吹き出すように構成し、各下向き管路が、前記第2と第3横分岐管路の枝管からのガスに対して、そのガスの流れ方向に垂直なガス衝突面を備えているところにある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、ノズル装置が、ガスを下方へのみ通流させる下向き管路を少なくとも4つ備え、その第1から第4下向き管路を第2と第3横分岐管路の枝管にそれぞれ接続して、第2と第3横分岐管路の枝管からのガスをそれぞれ吹き出し口から下方へのみ吹き出すように構成してあるので、第1〜第3横分岐管路によって少なくとも2回以上横方向に分岐されたガスは、各下向き管路の吹き出し口から下方へ向けて吹き出される。
そして、その各下向き管路が、第2と第3横分岐管路の枝管からのガスに対して、そのガスの流れ方向に垂直なガス衝突面を備えているので、第2と第3横分岐管路の枝管からのガスは、その流れ方向を下方へ向けて円滑に変えるのではなくて、流れに垂直なガス衝突面に衝突することにより分散しながら変えることになり、その結果、後述するシミュレーションからも明らかなように、ガスの流速分布は、ガス処理塔の全体にわたって均一化される。
【0016】
本発明の第6の特徴構成は、上記第5の特徴構成に加えて、前記第1横分岐管路において、その左右一対の枝管の中心軸が基管の中心軸よりも上方に位置するように構成してあるところにある。
【0017】
本発明の第6の特徴構成によれば、第1横分岐管路において、その左右一対の枝管の中心軸が基管の中心軸よりも上方に位置するように構成してあるので、第1横分岐管路の基管の上端から下向き管路の下端に至るまでの上下高さ、言い換えると、ガス処理塔内に配置するノズル装置全体の上下高さを低くすることができ、その分、ガス処理塔の内部空間が上下方向に長くなって、その長くなった内部空間の有効利用が可能となる。
【0018】
本発明の第7の特徴構成は、上記第1〜第6の特徴構成に加えて、前記ガス処理塔内のガスの平均流速が、乾燥状態の標準換算(0℃、1気圧)において0.6m/秒以下の緩い流れであり、前記ノズル装置が、その緩い流れのガス処理塔に配置されるものである。
【0019】
すなわち、ガス処理塔内のガスの平均流速が、乾燥状態の標準換算において0.6m/秒より速い場合は、充填材層を通過する際の圧力損失が大きく、そのため、充填材層によってガスが整流作用を受け、ノズル装置の構成の如何にかかわらず、ガスの流速分布において極端な偏流が生じることはない。
しかしながら、ガスの平均流速が0.6m/秒以下になると、充填材層を通過する際の圧力損失が少なくなるため、充填材層による整流作用を期待することができず、その結果、ノズル装置によってはガスの流速分布に極端な偏流が生じやすくなる。
【0020】
本発明の第7の特徴構成によれば、ガス処理塔内のガスの平均流速が、乾燥状態の標準換算(0℃、1気圧)において0.6m/秒以下の緩い流れであり、前記ノズル装置が、その緩い流れのガス処理塔に配置されるので、本発明によるノズル装置の特徴が顕著に現れ、充填材層による整流作用が期待できないにもかかわらず、ノズル装置そのものによって偏流の発生が抑制され、後述するシミュレーションからも明らかなように、ガスの流速分布は、ガス処理塔の全体にわたってより一層均一化される。
【0021】
本発明の第8の特徴構成は、上記第1〜第7の特徴構成に加えて、前記ガス処理塔が、燃料ガスから硫化水素を吸収除去する脱硫処理用の吸収塔であり、前記ノズル装置が、燃料ガスを送入するためにその吸収塔に配置されるものである。
【0022】
本発明の第8の特徴構成によれば、ガス処理塔が、燃料ガスから硫化水素を吸収除去する脱硫処理用の吸収塔であり、前記ノズル装置が、燃料ガスを送入するためにその吸収塔に配置されることにより、燃料ガス中の硫化水素を良好に吸収除去することが可能となる。
すなわち、燃料ガスから硫化水素を吸収除去する場合、アンモニアなどの物質を吸収除去する場合に比べて、その吸収除去が比較的緩慢であり、そのため、吸収塔内における燃料ガスの流速を速くすることが困難となる。具体的には、乾燥状態の標準換算において0.6m/秒以下の緩い流れに設定することが多く、本発明によるノズル装置であれば、上記第7の特徴構成に関連して記述したように、たとえ0.6m/秒以下の緩い流れであっても、吸収塔の全体にわたって均一化された速度分布を現出することができ、その結果、燃料ガス中の硫化水素を良好に吸収除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明によるノズル装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
このノズル装置Nは、図1に示すように、充填塔、スプレー塔、吸収塔などのようなガス処理塔1の下方に配置されて、例えば、硫化水素(H2S)を含む燃料ガスから硫化水素を除去する脱硫処理に使用される。
燃料ガスの脱硫処理用に使用される吸収塔1の場合、液体としての脱硫液を散布する液噴霧ノズル2が上方に配置され、液噴霧ノズル2の下方に充填材層3が、充填材層3の下方にノズル装置Nがそれぞれ配置されて、流入口4から流入される燃焼ガスをノズル装置Nの吹き出し口5から吹き出して吸収塔1内へ送入し、上方からの脱硫液と接触させて、脱硫液中に硫化水素を溶け込ませて吸収除去するように構成されている。
【0024】
そのノズル装置Nは、図2に示すように、燃料ガスをほぼ水平な横方向に通流させる基管6と、その基管6に連通されて燃料ガスをほぼ水平な横方向に通流させる左右一対の枝管8からなるほぼT字状の横分岐管路Xを備え、基管6の出口に対面する枝管8の内面が、基管6からの燃料ガスを衝突させて左右の流れに分岐させる衝突分岐部7として機能するように構成されている。
つまり、横分岐管路Xは、燃料ガスを横方向に通流させる基管6と、基管6からの燃料ガスを衝突させて左右の流れに分岐させる衝突分岐部7と、その左右の流れに分岐された燃料ガスのそれぞれを横方向に通流させる左右一対の枝管8を備えている。
なお、横分岐管路Xは、必ずしもT字状にする必要はなく、例えば、ほぼY字状にするなど種々の形状を採用することができる。
【0025】
さらに、ノズル装置Nは、図3に示すように、横分岐管路Xの枝管8に接続されて燃料ガスをほぼ垂直な縦方向に通流させる上下一対の枝管10からなる縦分岐管路Yを備え、横分岐管路Xの枝管8の出口に対面する枝管10の内面が、枝管8からの燃料ガスを衝突させて上下の流れに分岐させる衝突分岐部9として機能するように構成されている。
つまり、縦分岐管路Yは、横分岐管路Xの枝管8からの燃料ガスを衝突させて上下の流れに分岐させる衝突分岐部9と、上下の流れに分岐された燃料ガスのそれぞれを縦方向に通流させる上下一対の枝管10を備え、各枝管10には吹き出し口5が設けられている。
各枝管10に設けられる吹き出し口5は、上方への枝管10に設けられる上向き吹き出し口5aの開口面積が小で、下方への枝管10に設けられる下向き吹き出し口5bの開口面積が大に形成されている。
【0026】
そして、ノズル装置Nは、横分岐管路Xを少なくとも3つ備え、流入口4から流入された燃料ガスは、少なくとも2回以上横方向に分岐されて吹き出し口5から吹き出されるように構成され、好ましくは、縦分岐管路Yも備えていて、その縦分岐管路Yが、横分岐管路Xの枝管8に接続されている。
例えば、図4および図5に示す実施形態では、横分岐管路Xを7つ備え、流入口4にひとつの第1横分岐管路X(図中、「A」で示す)が接続され、その第1横分岐管路Xの枝管8の一方に第2横分岐管路X(図中、「B」で示す)が接続され、他方に第3横分岐管路X(図中、「C」で示す)が接続され、さらに、第2横分岐管路Xの枝管8に第4と第5横分岐管路X(図中、「D」と「E」で示す)が接続され、第3横分岐管路Xの枝管8に第6と第7横分岐管路X(図中、「F」と「G」で示す)が接続されている。
そして、このノズル装置Nは、縦分岐管路Yを合計8つ備えていて、各縦分岐管路Yが第4〜第7横分岐管路Xの枝管8に接続され、各枝管8からの燃料ガスをそれぞれ上下に分岐して上向き吹き出し口5aと下向き吹き出し口5bから吹き出すように構成されている。
【0027】
したがって、この図4および図5に示す実施形態では、ノズル装置Nが7つの横分岐管路Xと8つの縦分岐管路Yを備え、流入口4から流入された燃料ガスは、横方向に3回分岐され、かつ、上下方向に1回分岐されて、縦分岐管路Yの上下の吹き出し口5a,5bから吹き出されることになる。
具体的には、流入口4からノズル装置Nへ流入された燃料ガスは、「A」で示す第1横分岐管路Xにおいてほぼ等量の2つの流れに分岐され、その分岐された燃料ガスのそれぞれが、「B」と「C」で示す第2と第3横分岐管路Xにおいてほぼ等量の2つの流れに分岐され、さらに、その分岐された燃料ガスのそれぞれが、「D」〜「G」で示す第4〜第7横分岐管路Xにおいてほぼ等量の2つの流れに分岐される。つまり、第4〜第7横分岐管路Xの横枝管路8には、流入口4から流入された燃料ガスのほぼ1/8の量の燃料ガスが流入される。
【0028】
さらに、第4〜第7横分岐管路Xの各横枝管路8に流入された燃料ガスが、縦分岐管路Yの上向き吹き出し口5aと下向き吹き出し口5bから吹き出されて上方からの脱硫液と接触し、燃料ガス中の硫化水素が脱硫液に溶け込んで吸収塔1から排出され、つぎの処理が実行される。
そして、このような構成のノズル装置Nが、図5に示す吸収塔1の平面視において、断面円形のガス処理塔1の中心TLに対してノズル装置Nの全吹き出し口5a,5bの中心NLがノズル装置Nへの燃料ガスの流入口4側に片寄る位置に配置されている。
すなわち、ノズル装置Nの全吹き出し口5a,5bの中心NLが吸収塔1の中心TLと一致していると、全吹き出し口5a,5bから吹き出される燃料ガスの流速分布は、流入口4と反対の側へ少し片寄ることになるが、このような片寄りが補正されて、燃料ガスの流速分布は吸収塔1の全体にわたって均一化される。
【0029】
〔別実施形態〕
つぎに、別の実施形態について説明するが、重複説明を避けるため、先の実施形態で説明した構成や同じ作用を有する構成については、同じ符号を付すことにより説明を省略し、主として先の実施形態と異なる構成について説明する。
【0030】
(1)先の実施形態では、ノズル装置Nが7つの横分岐管路Xを備え、燃料ガスが横方向に3回分岐されて吹き出される構成のものを示したが、横分岐管路Xを少なくとも3つ備え、横方向に少なくとも2回以上分岐されて吹き出される構成のものであれば、燃料ガスの流速分布の均一化を図ることができる。
また、ノズル装置Nが縦分岐管路Yを備え、燃料ガスが上向き吹き出し口5aと下向き吹き出し口5bから吹き出される構成のものを示したが、図6に示すように、縦分岐管路Yを使用せずに、横分岐管路Xの左右一対の枝管8に燃料ガスを下方へのみ通流させる下向き管路12を接続し、その下向き管路12の先端部に吹き出し口5を設けて実施することもできる。要するに、燃料ガスの吹き出し方向に関しては、少なくとも下方に吹き出すように構成すればよい。
【0031】
また、横分岐管路Xの枝管8に下向き管路12を接続する場合、図7に示すように、例えば、1本の斜め管13を介して枝管8と下向き管路12を接続し、枝管8からの燃料ガスの流れ(図中、矢印で示す)に垂直なガス衝突面12aが下向き管路12の内面に形成されるように構成することもできる。
このような構成であれば、枝管8からの燃料ガスは、ガス衝突面12aに衝突して分散しながら下方へ方向を変えて吹き出し口5から吸収塔1へ送入されることになり、その結果、吸収塔1内を上昇する燃料ガスの流速分布が、吸収塔1の全体にわたって均一化される。
なお、斜め管13は、下向き管路12の内面にガス衝突面12aを形成するためのものであるから、特に1本に限るものではなく、2本以上であってもよい。
【0032】
このガス衝突面12aを備えた下向き管路12を有するノズル装置Nを使用すると、燃料ガスの流速分布が、吸収塔1の全体にわたって均一化されるのであるが、特に、乾燥状態の標準換算(0℃、1気圧)において0.6m/秒以下の緩い流れにおいて顕著な効果を期待することができる。
図8と図9は、従来のノズル装置(従来型ノズル)とガス衝突面12aを備えた下向き管路12を有するノズル装置N(本件ノズル)を使用した場合の塔内におけるガスの流速分布をシミュレーションした図である。
なお、従来型ノズルは、図14に示した従来のノズル装置において、吹き出し口5を4つ設けたものであり、図8と図9において、(イ)はその従来型ノズルの流速分布を示し、(ロ)は本件ノズルの流速分布を示す。そして、図中における数値は、塔内のガスの流速(m/秒)を示し、曲線は各流速における等速線を示す。
この図8と図9から、従来型のノズルでは、ガスの流速が塔の内壁に沿って極端に速くなり、塔の中心部と塔の内壁近傍との間で極端な偏流が生じているのに対し、本件ノズルでは、ガスの流速が塔の中心部から内壁近傍にわたって非常に均一化されていることが理解できる。
【0033】
また、ガス衝突面12aを備えた下向き管路12を有するノズル装置Nを使用する場合、図10に示すように、横分岐管路Xにおいて、その左右一対の枝管8の中心軸L8が基管6の中心軸L6よりも上方に位置するように構成することができる。
このように構成すれば、横分岐管路Xの基管6の上端から下向き管路12の下端に至るまでの上下高さ、つまり、ノズル装置Nの全体の上下高さを低くすることができ、その分、吸収塔1の内部空間が上下方向に長くなって、その長くなった内部空間の有効利用が可能となる。
【0034】
(2)先の実施形態では、横分岐管路Xの基管6と枝管8および縦分岐管路Yの枝管10の管径をほぼ同一に構成した例を示したが、図11に示すように、各管6,8,10の管径を流入口4側ほど大径で、吹き出し口5側ほど小径に構成し、例えば、各管6,8,10内を通流する燃料ガスの流速が、流入口4から吹き出し口5までほぼ等速になるように構成することもできる。
その場合、図12に示すように、縦分岐管路Yが接続される横分岐管路Xの枝管8については、垂直方向の下方内面を水平にし、上方内面側を絞って管径を小径にするのが好ましい。なぜなら、上向き吹き出し口5aから水が流入した場合、枝管8内に滞留するのを防止し、下向き吹き出し口5bからの流出を容易にするからである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ノズル装置を使用するガス処理塔の概略説明図
【図2】ノズル装置を構成する横方向分離ユニットの斜視図
【図3】ノズル装置を構成する縦方向分離ユニットの斜視図
【図4】ノズル装置の斜視図
【図5】ノズル装置の平面図
【図6】別の実施形態によるノズル装置の要部の斜視図
【図7】別の実施形態によるノズル装置の要部の断面図
【図8】(イ)従来型ノズルの塔内のガス流速分布を示す図、(ロ)本件ノズルの塔内のガス流速分布を示す図
【図9】(イ)従来型ノズルの塔内のガス流速分布を示す図、(ロ)本件ノズルの塔内のガス流速分布を示す図
【図10】別の実施形態によるノズル装置の要部の正面図
【図11】別の実施形態によるノズル装置の斜視図
【図12】別の実施形態によるノズル装置の要部の側面図
【図13】従来のノズル装置を使用するガス処理塔の概略説明図
【図14】従来のノズル装置を使用するガス処理塔の概略説明図
【符号の説明】
【0036】
1 ガス処理塔としての吸収塔
5 吹き出し口
5a 上方への吹き出し口
5b 下方への吹き出し口
6 横分岐管路の基管
8 横分岐管路の枝管
10 縦分岐管路の枝管
12 下向き管路
12a ガス衝突面
N ノズル装置
X 横分岐管路
Y 縦分岐管路
L6 横分岐管路の基管の中心軸
L8 横分岐管路の枝管の中心軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを下方から送入して上方からの液体と接触処理するガス処理塔の下方に配置されるノズル装置であって、
前記ノズル装置が、ガスを横方向に通流させる基管と、その基管からのガスを左右に分岐して横方向に通流させる左右一対の枝管からなる横分岐管路を少なくとも3つ備え、その第1横分岐管路の枝管の一方に第2横分岐管路の基管を接続し、他方に第3横分岐管路の基管を接続して、第1横分岐管路の基管からのガスを少なくとも2回以上横方向に分岐して吹き出し口から少なくとも下方に吹き出すように構成してあるノズル装置。
【請求項2】
前記ノズル装置が、ガスを上下に分岐して縦方向に通流させる上下一対の枝管からなる縦分岐管路を少なくとも4つ備え、その第1から第4縦分岐管路を前記第2と第3横分岐管路の枝管にそれぞれ接続して、前記第2と第3横分岐管路の枝管からのガスをそれぞれ上下方向に分岐して吹き出し口から下方と上方へ吹き出すように構成してある請求項1に記載のノズル装置。
【請求項3】
前記吹き出し口において、下方への吹き出し口の開口面積が大で、上方への吹き出し口の開口面積が小である請求項2に記載のノズル装置。
【請求項4】
前記各分岐管路における基管と枝管の管径が、ノズル装置への流入口側ほど大径で、吹き出し口側ほど小径に構成してある請求項1〜3のいずれか1項に記載のノズル装置。
【請求項5】
前記ノズル装置が、ガスを下方へのみ通流させる下向き管路を少なくとも4つ備え、その第1から第4下向き管路を前記第2と第3横分岐管路の枝管にそれぞれ接続して、前記第2と第3横分岐管路の枝管からのガスをそれぞれ吹き出し口から下方へのみ吹き出すように構成し、各下向き管路が、前記第2と第3横分岐管路の枝管からのガスに対して、そのガスの流れ方向に垂直なガス衝突面を備えている請求項1に記載のノズル装置。
【請求項6】
前記第1横分岐管路において、その左右一対の枝管の中心軸が基管の中心軸よりも上方に位置するように構成してある請求項5に記載のノズル装置。
【請求項7】
前記ガス処理塔内のガスの平均流速が、乾燥状態の標準換算(0℃、1気圧)において0.6m/秒以下の緩い流れであり、前記ノズル装置が、その緩い流れのガス処理塔に配置されるものである請求項1〜6のいずれか1項に記載のノズル装置。
【請求項8】
前記ガス処理塔が、燃料ガスから硫化水素を吸収除去する脱硫処理用の吸収塔であり、前記ノズル装置が、燃料ガスを送入するためにその吸収塔に配置されるものである請求項1〜7のいずれか1項に記載のノズル装置。
【請求項1】
ガスを下方から送入して上方からの液体と接触処理するガス処理塔の下方に配置されるノズル装置であって、
前記ノズル装置が、ガスを横方向に通流させる基管と、その基管からのガスを左右に分岐して横方向に通流させる左右一対の枝管からなる横分岐管路を少なくとも3つ備え、その第1横分岐管路の枝管の一方に第2横分岐管路の基管を接続し、他方に第3横分岐管路の基管を接続して、第1横分岐管路の基管からのガスを少なくとも2回以上横方向に分岐して吹き出し口から少なくとも下方に吹き出すように構成してあるノズル装置。
【請求項2】
前記ノズル装置が、ガスを上下に分岐して縦方向に通流させる上下一対の枝管からなる縦分岐管路を少なくとも4つ備え、その第1から第4縦分岐管路を前記第2と第3横分岐管路の枝管にそれぞれ接続して、前記第2と第3横分岐管路の枝管からのガスをそれぞれ上下方向に分岐して吹き出し口から下方と上方へ吹き出すように構成してある請求項1に記載のノズル装置。
【請求項3】
前記吹き出し口において、下方への吹き出し口の開口面積が大で、上方への吹き出し口の開口面積が小である請求項2に記載のノズル装置。
【請求項4】
前記各分岐管路における基管と枝管の管径が、ノズル装置への流入口側ほど大径で、吹き出し口側ほど小径に構成してある請求項1〜3のいずれか1項に記載のノズル装置。
【請求項5】
前記ノズル装置が、ガスを下方へのみ通流させる下向き管路を少なくとも4つ備え、その第1から第4下向き管路を前記第2と第3横分岐管路の枝管にそれぞれ接続して、前記第2と第3横分岐管路の枝管からのガスをそれぞれ吹き出し口から下方へのみ吹き出すように構成し、各下向き管路が、前記第2と第3横分岐管路の枝管からのガスに対して、そのガスの流れ方向に垂直なガス衝突面を備えている請求項1に記載のノズル装置。
【請求項6】
前記第1横分岐管路において、その左右一対の枝管の中心軸が基管の中心軸よりも上方に位置するように構成してある請求項5に記載のノズル装置。
【請求項7】
前記ガス処理塔内のガスの平均流速が、乾燥状態の標準換算(0℃、1気圧)において0.6m/秒以下の緩い流れであり、前記ノズル装置が、その緩い流れのガス処理塔に配置されるものである請求項1〜6のいずれか1項に記載のノズル装置。
【請求項8】
前記ガス処理塔が、燃料ガスから硫化水素を吸収除去する脱硫処理用の吸収塔であり、前記ノズル装置が、燃料ガスを送入するためにその吸収塔に配置されるものである請求項1〜7のいずれか1項に記載のノズル装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−260487(P2007−260487A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85339(P2006−85339)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(591027444)大阪ガスエンジニアリング株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(591027444)大阪ガスエンジニアリング株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
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