説明

ハニカム構造体

【課題】製造コストを低く抑えることができるハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体が接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックと、上記セラミックブロックの外周面に形成されたシール材層とからなるハニカム構造体であって、上記セラミックブロックは、長手方向に垂直な断面の形状が四角形である断面四角形ユニットが接着材層を介して複数個結束されてなる断面四角形ユニット集合体と、長手方向に垂直な断面の形状が三角形であり、外周部に外壁が形成された断面三角形ユニットとを含んでなり、上記断面四角形ユニット集合体の外周面には、凹部及び凸部が階段状に形成されており、上記凹部には、上記断面三角形ユニットが接着材層を介して存在しており、上記シール材層の厚さが部分的に異なっていることを特徴とするハニカム構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両及び建設機械等の内燃機関から排出される排ガスに含有されるパティキュレートマター(以下、単にPMともいう)が環境及び人体に害を及ぼすことが最近問題となっている。
【0003】
そこで、排ガス中のPMを捕集して排ガスを浄化する排ガス浄化装置として、例えば、ハニカム構造体を構成要素とした排ガス浄化装置が種々提案されている。
【0004】
ハニカム構造体は、例えば、炭化ケイ素等の多孔質セラミックからなり、その内部にはハニカム構造体の長手方向に沿って、一方の端部側から他方の端部側まで多数のセルがセル壁を隔てて並設されている。また、一のセルのいずれか一方の端部は、封止材により封止されている。
そのため、ハニカム構造体の排ガス流入側の端部が開口したセルに流入した排ガスは、隣り合うセル同士を隔てるセル壁を通過し、排ガス流出側の端部が開口したセルから流出する。これにより、排ガスに含まれるPMがセル壁に補集される。
なお、PMが所定量堆積し、圧力損失が一定の値に達したところで、ハニカム構造体を加熱する再生処理を施す。これにより、堆積したPMが燃焼してハニカム構造体のPM補集能が再生される。
【0005】
このようなハニカム構造体に関し、近年では、バス、トラック等の大型車、農業用機械、建築用機械、船舶、機関車等に用いられる大型のディーゼルエンジンに取り付けて使用することを目的として、多量のPMを補集することができる大型のハニカム構造体が求められている。
【0006】
大型化を指向したハニカム構造体としては、例えば、炭化ケイ素等の多孔質セラミックからなるハニカム焼成体が接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックと、このセラミックブロックの外周面に形成されたシール材層とから構成されたハニカム構造体が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−179526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の従来のハニカム構造体を製造する場合には、まず、ハニカム焼成体を接着材層を介して複数個結束させることにより、角柱状のセラミックブロックを作製する。そして、作製したセラミックブロックの外周面に研削加工を施すことにより円柱状のセラミックブロックを作製する。続いて、このセラミックブロックの外周面にシール材層を形成する。
これにより、円柱状のハニカム構造体を製造する。
【0009】
しかしながら、研削加工工程では、研削加工によって研削するセラミック部分が無駄になる。また、炭化ケイ素等からなる硬質なセラミックブロックの外周面を研削するため、研削加工に長時間を要する。
そのため、ハニカム構造体の生産性が低く、製造コストが高く付いてしまうという問題がある。
特に、製造するハニカム構造体の大きさが大きくなればなるほど、研削加工を施すべき部分が多くなり、この傾向は顕著である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のハニカム構造体は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体が接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックと、上記セラミックブロックの外周面に形成されたシール材層とからなるハニカム構造体であって、上記セラミックブロックは、長手方向に垂直な断面の形状が四角形である断面四角形ユニットが接着材層を介して複数個結束されてなる断面四角形ユニット集合体と、長手方向に垂直な断面の形状が三角形であり、外周部に外壁が形成された断面三角形ユニットとを含んでなり、上記断面四角形ユニット集合体の外周面には、凹部及び凸部が階段状に形成されており、上記凹部には、上記断面三角形ユニットが接着材層を介して存在しており、上記シール材層の厚さが部分的に異なっていることを特徴とする。
【0011】
本発明のハニカム構造体では、製造時において、セラミックブロックの外周面を研削する研削加工工程を行う必要がなく、製造コストを低く抑えることができる。
外周面に凹部及び凸部が階段状に形成された断面四角形ユニット集合体の凹部に、断面三角形ユニットが接着材層を介して存在するセラミックブロックでは、凹部及び凸部により形成された段差が断面三角形ユニットにより解消されるので、断面四角形ユニット集合体に比べて、その形状が円柱状、長円柱状、楕円柱状又は三角形の頂点部が曲線になっている形状の柱状体等に近い多角柱状となる。
【0012】
本発明のハニカム構造体では、上記凹部が、第一の断面四角形ユニットの第一の側面と第二の断面四角形ユニットの第二の側面とを含んでなり、上記第一の側面と上記断面三角形ユニットの第一の側面とが接着材層を介して互いに接しており、上記第二の側面と上記断面三角形ユニットの第二の側面とが接着材層を介して互いに接しており、上記断面三角形ユニットの第三の側面が上記断面四角形ユニットのいずれの側面とも互いに接していないことが望ましい。
このような構成を有するハニカム構造体であっても、本発明の作用効果を好適に享受することができる。
【0013】
本発明のハニカム構造体では、上記断面四角形ユニットの形状が断面正方形であり、上記断面三角形ユニットの形状が断面直角三角形であり、かつ、上記断面四角形ユニットの第一の端面の対角線と第二の端面の対角線とを通る平面で上記断面四角形ユニットを二等分した形状と一致しており、上記断面三角形ユニットの第三の側面が上記直角三角形の斜辺を含む側面であることが望ましい。
このような構成を有するハニカム構造体では、セラミックブロックの形状を円柱状、長円柱状、楕円柱状又は三角形の頂点部が曲線になっている形状の柱状体等により近い多角柱状とすることができるので、本発明の作用効果をより好適に享受することができる。
なお、断面正方形とは、断面四角形ユニットの長手方向に垂直な断面の形状(断面形状)が正方形であることをいい、断面直角三角形とは、断面三角形ユニットの長手方向に垂直な断面の形状(断面形状)が直角三角形であることをいう。
【0014】
本発明のハニカム構造体では、上記ハニカム焼成体には、断面異形ユニットがさらに含まれており、上記断面異形ユニットの長手方向に垂直な断面の形状は、少なくとも第一の辺と、上記第一の辺と直角を形成する第二の辺と、上記直角と対向する傾斜辺とを含んで構成されており、上記断面異形ユニットの外周部には外壁が形成されており、上記傾斜辺を含む側面は、上記セラミックブロックの外周面を構成していることが望ましい。
また、この場合、上記断面異形ユニットの第二の辺を含む側面が、上記断面三角形ユニットと接着材層を介して接していることがさらに望ましい。
このような構成を有するハニカム構造体では、セラミックブロックの形状を円柱状、長円柱状、楕円柱状又は三角形の頂点部が曲線になっている形状の柱状体等により近い多角柱状とすることができるので、本発明の作用効果を特に好適に享受することができる。
【0015】
本発明のハニカム構造体では、上記シール材層の最も厚い部分の厚みと、上記シール材層の最も薄い部分の厚みとの比が、20:1〜5:3であることが望ましい。
上記シール材層の最も厚い部分の厚みと、上記シール材層の最も薄い部分の厚みとの比が、20:1〜5:3であると、PMの補集効率を高めることができるとともに、再生処理時の熱応力を充分に緩和することができる。
【0016】
本発明のハニカム構造体では、上記シール材層の最も厚い部分の厚みが、5.0〜10.0mmであり、上記シール材層の最も薄い部分の厚みが、0.5〜3.0mmであることが望ましい。
上記シール材層の最も厚い部分の厚みが、5.0〜10.0mmであり、上記シール材層の最も薄い部分の厚みが、0.5〜3.0mmであると、PMの補集効率を高めることができるとともに、再生処理時の熱応力を充分に緩和することができる。
【0017】
本発明のハニカム構造体では、上記ハニカム焼成体の数が25個以上であることが望ましい。
【0018】
本発明のハニカム構造体は、上記ハニカム構造体の長手方向に垂直な断面の形状が円形であり、直径が190mm以上であることが望ましい。
係るハニカム構造体は、大型のディーゼルエンジンへの使用に適した大型のハニカム構造体であるが、このような構成を有していると本発明の作用効果を特に好適に享受することができる。
【0019】
本発明のハニカム構造体は、上記セラミックブロックの長手方向に垂直な断面の形状が八角形であるか、上記セラミックブロックの長手方向に垂直な断面の形状が32角形であることが望ましい。
このような構成を有するハニカム構造体では、セラミックブロックの形状が円柱状、長円柱状、楕円柱状又は三角形の頂点部が曲線になっている形状の柱状体等により近く、本発明の作用効果を好適に享受することができる。
【0020】
本発明のハニカム構造体では、上記多数のセルの上記長手方向に垂直な断面の形状が四角形であることが望ましい。
【0021】
本発明のハニカム構造体では、上記多数のセルが、大容量セルと小容量セルとからなり、上記大容量セルの上記長手方向に垂直な断面の面積が上記小容量セルの上記長手方向に垂直な断面の面積より大きいことが望ましい。
なお、本明細書において、大容量セルとは、ハニカム構造体(ハニカム焼成体)に形成された複数のセルのうち、セルの長手方向に垂直な断面の面積の最も大きいセルのことをいい、小容量セルとは、ハニカム構造体(ハニカム焼成体)に形成された複数のセルのうち、セルの長手方向に垂直な断面の面積の最も小さいセルのことをいう。
但し、大容量セルと小容量セルは、特定の断面形状(基本パターン)を有している基本セルのうちで決められる。
上記基本セルとは、ハニカム焼成体を構成するセルを長手方向に垂直な断面で観察した際、同一の形状、又は、上下左右に繰り返し形成されている複数個の異なる形状を有する最小単位のセルをいう。
但し、基本セルは、セルの断面積の異なる2種類のセルを組み合わせて最小単位としたときの繰り返しであってよく、この場合、セルの断面積の異なる2種類のセルの両方を合わせて基本セルという。
この基本セルの概念を用い、大容量セルと小容量セルについて以下に説明する。
例えば、下記する図17(a)に示すハニカム焼成体610では、ハニカム焼成体610の長手方向に垂直な断面において正方形の図形(セル)が繰り返されており、これらの断面正方形のセルが基本セルである。このハニカム焼成体では、全ての基本セルの断面積が同じであるから、大容量セルと小容量セルが形成されたハニカム焼成体には該当しない。
下記する図18(a)、図19(a)及び図20(a)に示すハニカム焼成体820、910及び1010では、セルを長手方向に垂直な断面で観察した場合、角部に相当する部分が円弧状になっている四角形のセル821a、911a及び1011aと、角部を有しており、上記四角形のセルと断面形状及び断面積が異なる四角形のセル821b、911b及び1011bとが繰り返されている。断面形状及び断面積が異なる2種類のセルが、基本セルである。
これらの基本セルのうち、セルの長手方向に垂直な断面の面積の最も大きいセル821a、911a及び1011aが大容量セルであり、セルの長手方向に垂直な断面の面積の最も小さいセル821b、911b及び1011bが小容量セルである。
同様にして大容量セルと小容量セルとを決定すると、図18(b)〜図18(d)、図19(b)〜図19(d)、図20(b)〜図20(d)に示すハニカム焼成体では、セル831a、871a、881a、921a、961a、971a、1021a、1061a及び1071aが大容量セルであり、セル831b、871b、881b、921b、961b、971b、1021b、1061b及び1071bが小容量セルである。
係るハニカム構造体を排ガスの浄化に使用する際、排ガスが流入する流入側セルを大容量セルとし、排ガスが流出する流出側セルを小容量セルとした場合には、PMの堆積層の厚さを薄くすることができるので、圧力損失の上昇を抑制したり、PMの捕集限界量を多くしたりすることができる。また、堆積したPMを燃焼させやすくなる。
【0022】
本発明のハニカム構造体では、上記大容量セルの上記長手方向に垂直な断面の形状が四角形であり、上記小容量セルの上記長手方向に垂直な断面の形状が四角形であることが望ましい。
また、上記大容量セルの上記長手方向に垂直な断面の形状が八角形であり、上記小容量セルの上記長手方向に垂直な断面の形状が四角形であることが望ましい。
これらの形状のセルはPMの補集に特に適しているので、PMの捕集効率を高めることができる。
【0023】
本発明のハニカム構造体において、長手方向に垂直な断面の形状が四角形であるセルでは、少なくとも一つの角部に相当する部分が円弧状となっていることが望ましい。
このような形状のセルを有しているハニカム焼成体では、クラックが発生しにくくなる。角部を有するセルと比べて、再生処理時の熱応力が角部近傍に集中しにくくなり、緩和されやすくなるためであると考えられる。
【0024】
本発明のハニカム構造体では、上記大容量セル及び上記小容量セルの上記長手方向に垂直な断面におけるセルの各辺の形状が曲線であることが望ましい。
係る形状のセルはPMの補集に特に適しているので、PMの捕集効率を高めることができる。
【0025】
本発明のハニカム構造体では、上記多数のセルのいずれか一方の端部が封止されていることが望ましい。
【0026】
本発明のハニカム構造体では、上記ハニカム構造体の上記長手方向に垂直な断面の形状が、円、長円、楕円、又は、三角形の頂点部が曲線になっている形状等であることが望ましい。
【0027】
本発明は上記した円柱、長円柱、楕円柱又は三角形の頂点部が曲線になっている形状の柱状体等の各形状に近い形状のセラミックブロックを含むハニカム構造体に係る発明である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1に示すハニカム構造体のA−A線断面図であり、図2(b)は、図2(a)に示すA−A線断面図における一の凹部近傍を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を構成する断面四角形ユニットの一例を模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示す断面四角形ユニットのB−B線断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を構成する断面三角形ユニットの一例を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示す断面三角形ユニットのC−C線断面図である。
【図5】図5(a)は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を構成する断面異形ユニットの一例を模式的に示す斜視図であり、図5(b)は、図5(a)に示す断面異形ユニットのD−D線断面図である。
【図6】本発明の第二実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図7】図6に示したハニカム構造体のE−E線断面図である。
【図8】本発明の第三実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図9】図8に示したハニカム構造体のF−F線断面図である。
【図10】本発明の第四実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図11】図10に示したハニカム構造体のG−G線断面図である。
【図12】本発明の第五実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図13】図12に示したハニカム構造体のH−H線断面図である。
【図14】本発明の第五実施形態のハニカム構造体を構成する断面長方形ユニットの一例を模式的に示す斜視図である。
【図15】本発明の第六実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図16】図15に示したハニカム構造体のI−I線断面図である。
【図17】図17(a)、図17(b)、図17(c)、図17(d)及び図17(e)は、本発明のハニカム構造体に係る断面異形ユニットの一例を模式的に示す側面図である。
【図18】図18(a)、図18(b)、図18(c)及び図18(d)は、本発明のハニカム構造体に係る断面正方形ユニットの端面の一例を模式的に示す側面図である。
【図19】図19(a)、図19(b)、図19(c)及び図19(d)は、本発明のハニカム構造体に係る断面異形ユニットの端面の一例を模式的に示す側面図である。
【図20】図20(a)、図20(b)、図20(c)及び図20(d)は、本発明のハニカム構造体に係る断面三角形ユニットの端面の一例を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者らは、上述した従来のハニカム構造体の製造方法における研削加工工程での問題を解決すべく、鋭意検討を行った。
その結果、ハニカム焼成体として長手方向に垂直な断面の形状が四角形である断面四角形ユニットと、長手方向に垂直な断面の形状が三角形である断面三角形ユニットとを使用し、断面四角形ユニットを組み合わせてなる断面四角形ユニット集合体の外周面に形成された凹部に断面三角形ユニットが存在する構成を有するセラミックブロックを採用するとともに、該セラミックブロックの外周面に部分的に厚さが異なるシール材層を形成することにより、上記問題を解決することができることを見出した。
【0030】
即ち、本発明者らは、上述した構成を採用することにより、製造時において研削加工工程を行わずとも円柱状、長円柱状、楕円柱状又は三角形の頂点部が曲線になっている形状の柱状体等の所望の形状を有するハニカム構造体を製造することが可能であり、ハニカム構造体の製造コストを低く抑えることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0031】
なお、ハニカム構造体の形状は、長手方向に垂直な断面の形状が円であるものに限られず、断面の形状が長円、楕円、又は三角形の頂点部が曲線になっている形状等であってもよい。セラミックブロックの断面の形状も、上記ユニットを組み合わせることにより、長円、楕円、又は、三角形の頂点部が曲線になっている形状等に近い形状とすることができる。
また、セラミックブロックの断面の形状が長円、楕円、又は、三角形の頂点部が曲線になっている形状等に近い形状であるということは、それぞれの形状の外周から部分的に凸部又は凹部があるが、それぞれの形状に近似している形状のことをいう。
【0032】
(第一実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の一実施形態である第一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0033】
図1は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図であり、図2(a)は、図1に示すハニカム構造体のA−A線断面図であり、図2(b)は、図2(a)に示すA−A線断面図における一の凹部近傍を拡大して示す部分拡大断面図である。
なお、図2(b)では、凹部に嵌め込まれる断面直角二等辺三角形ユニット、及び、凹部と断面直角二等辺三角形ユニットとの間に形成される接着材層を省略して示している。
【0034】
図1及び図2(a)に示す本実施形態のハニカム構造体10は、セラミックブロック20と、セラミックブロック20の外周面23に形成されたシール材層30とからなる。
また、ハニカム構造体10の形状は円柱状である。ハニカム構造体10の長手方向に垂直な断面の形状は円形であり、その直径(図2(a)中、符号Rで示す)は190mm以上である。
なお、ハニカム構造体の長手方向に垂直な断面の形状が長円、楕円、三角形の頂点部が曲線になっている形状の場合は、各形状の中心を通る、外周の2点の間の線分のうち最も長い線分の長さが190mm以上であることが望ましい。
【0035】
セラミックブロック20は、炭化ケイ素の多孔質セラミックからなるハニカム焼成体21が接着材層22を介して複数個結束されることにより構成されている。
また、セラミックブロック20の長手方向に垂直な断面の形状は、12角形である。
【0036】
複数個のハニカム焼成体21は、図3(a)、図3(b)、図4(a)、図4(b)、図5(a)及び図5(b)に示すように、互いに異なる形状を有する3種類のユニットから構成されている。
【0037】
図3(a)は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を構成する断面四角形ユニットの一例を模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示す断面四角形ユニットのB−B線断面図である。
図4(a)は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を構成する断面三角形ユニットの一例を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示す断面三角形ユニットのC−C線断面図である。
図5(a)は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を構成する断面異形ユニットの一例を模式的に示す斜視図であり、図5(b)は、図5(a)に示す断面異形ユニットのD−D線断面図である。
【0038】
図3(a)及び図3(b)に示すハニカム焼成体21aは、その長手方向(図3(a)中、両矢印aで示す)に垂直な断面の形状(以下、ユニット等の長手方向に垂直な断面の形状のことを、単に断面形状ともいう)が四角形である断面四角形ユニットである。具体的にいうと、断面四角形ユニットは、その断面形状において互いに長さが略等しい4つの辺を有し、一の辺と他の辺とが直交してなる4つの角部を有している。即ち、断面四角形ユニット21aは、その断面形状が正方形の断面正方形ユニットである。
【0039】
断面正方形ユニット21aは、第一の端面41a及び第二の端面41bを有しており、第一の端面41a(第二の端面41b)の一辺の長さ(図3(a)中、両矢印Lで示す長さ)は、31.5〜38.7mmが望ましい。
また、断面正方形ユニット21aの長手方向の長さは、101.6〜381.6mm(4〜15inch)が望ましい。
【0040】
断面正方形ユニット21aは、長手方向に垂直な断面の面積が小容量セル42bより相対的に大きい大容量セル42a、及び、長手方向に垂直な断面の面積が大容量セル42aより相対的に小さい小容量セル42bを有する。
大容量セル42aは、その長手方向に垂直な断面の形状が八角形であり、小容量セル42bは、その長手方向に垂直な断面の形状が四角形である。
【0041】
図3(b)に示すように、大容量セル42aは、第一の端面41a側の端部が開口しており、第二の端面41b側の端部が封止材43aにより封止されている。
一方、小容量セル42bは、第二の端面41b側の端部が開口しており、第一の端面41a側の端部が封止材43bにより封止されている。
そのため、大容量セル42a及び小容量セル42bを隔てるセル壁44がフィルタとして機能するようになっている。即ち、大容量セル42aに流入した排ガスGは、必ずこれらのセル壁44を通過した後、小容量セル42bから流出するようになっている。
【0042】
なお、本明細書においては、各ユニットの形状やセルの形状を三角形、四角形等の名称で表現しているが、本明細書における三角形、四角形とは、完全な直線のみからなる厳密な図形を意味するものではなく、その角(頂点)が直線や曲線で面取りされていて三角形、四角形と実質的に同視し得る形状を包含する。また、本明細書において「直角」、「平行」、「直角二等辺三角形」等の語は数学的に厳密な形状を意味するものではなく、「直角」、「平行」、「直角二等辺三角形」等の形状と実質的に同視し得る形状を包含する。
【0043】
次に、別のユニットの構成について詳しく説明する。
図4(a)、図4(b)に示すハニカム焼成体21bは、第一の端面41a及び第二の端面41bを有しており、その断面形状が三角形である断面三角形ユニットである。
具体的にいうと、断面三角形ユニット21bは、その断面形状が直角二等辺三角形である断面直角二等辺三角形ユニットであり、図3(a)、図3(b)に示す断面正方形ユニット21aの第一の端面41aの対角線と第二の端面41bの対角線とを通る平面で断面正方形ユニット21aを二等分した形状と一致している。
以下の説明では、断面直角二等辺三角形ユニット21bにおける上記直角二等辺三角形の斜辺を含む側面を第三の側面B3とし、第三の側面B3以外の二つの側面をそれぞれ第一の側面B1、第二の側面B2ということにする。
【0044】
断面直角二等辺三角形ユニット21bの断面形状において、第一の側面B1及び第二の側面B2を構成する上記直角二等辺三角形の斜辺以外の二辺の長さは、それぞれ31.5〜38.7mmが望ましく、第三の側面B3を構成する上記直角二等辺三角形の斜辺の長さは、40.9〜54.9mmが望ましい。
また、断面直角二等辺三角形ユニット21bの長手方向の長さ(図4(a)中、両矢印bで示す長さ)は、断面正方形ユニット21aの長手方向の長さと略同じであり、101.6〜381.6mmが望ましい。
【0045】
図4(a)、図4(b)に示す断面直角二等辺三角形ユニット21bに形成されたセルは、上述した断面正方形ユニット21aと同様に、八角形の断面形状を有する大容量セル42aと、四角形の断面形状を有する小容量セル42bとからなる。
【0046】
大容量セル42a及び小容量セル42bを隔てるセル壁44は、断面直角二等辺三角形ユニット21bの外周部を構成する外壁である第一の側面B1、第二の側面B2及び第三の側面B3に結合している。
【0047】
図4(b)に示すように、大容量セル42aは、第一の端面41a側の端部が開口しており、第二の端面41b側の端部で封止材43aにより封止されている。一方、小容量セル42bは、第二の端面41b側の端部が開口しており、第一の端面41a側の端部で封止材43bにより封止されている。
そのため、断面正方形ユニット21aと同様に、大容量セル42aと小容量セル42bとを隔てるセル壁44がフィルタとして機能するようになっている。
【0048】
次に、さらに別のユニットの構成について詳しく説明する。
図5(a)、図5(b)に示すハニカム焼成体21cは、第一の端面41a及び第二の端面41bを有しており、その断面形状が、少なくとも第一の辺と、上記第一の辺と直角を形成する第二の辺と、上記直角と対向する傾斜辺とを含んで構成された断面異形ユニットである。
具体的な断面異形ユニット21cの断面形状は、第一の辺51と、第二の辺52と、傾斜辺53と、第三の辺54を有し、第一の辺51と第二の辺52の形成する角度は直角であり、傾斜辺53はその直角に対向して設けられている。傾斜辺53は直線からなる。また、第三の辺54は傾斜辺53と第二の辺52を接続している辺であり、第一の辺51は第三の辺54と平行になっている。
即ち、断面異形ユニット21cは、その断面形状が台形である断面台形ユニットである。
以下の説明では、断面台形ユニット21cの第一の辺51を含む側面を第一の側面C1とし、第二の辺52を含む側面を第二の側面C2とし、第三の辺54を含む側面を第三の側面C3とし、傾斜辺53を含む側面を第四の側面C4ということにする。
【0049】
断面台形ユニット21cの断面形状において、第一の辺51の長さは、12.0〜25.5mmが望ましく、第二の辺52の長さは、第一の辺51の長さより長く、49.8〜56.9mmが望ましく、第三の辺54の長さは、3.6〜10.0mmが望ましい。
また、断面台形ユニット21cの長手方向の長さ(図5(a)中、両矢印cで示す長さ)は、断面正方形ユニット21aの長手方向の長さと略同じであり、101.6〜381.6mmが望ましい。
【0050】
図5(a)、図5(b)に示す断面台形ユニット21cに形成されたセルは、上述した断面正方形ユニット21aと同様に、八角形の断面形状を有する大容量セル42aと、四角形の断面形状を有する小容量セル42bとからなる。
【0051】
大容量セル42a及び小容量セル42bを隔てるセル壁44は、断面台形ユニット21cの外周部を構成する外壁である第一の側面C1、第二の側面C2、第三の側面C3及び第四の側面C4に結合している。
【0052】
図5(b)に示すように、大容量セル42aは、第一の端面41a側の端部が開口しており、第二の端面41b側の端部で封止材43aにより封止されている。一方、小容量セル42bは、第二の端面41b側の端部が開口しており、第一の端面41a側の端部で封止材43bにより封止されている。
そのため、断面正方形ユニット21aと同様、大容量セル42aと小容量セル42bとを隔てるセル壁44がフィルタとして機能するようになっている。
【0053】
ここで、上述した各ユニットを用いて構成されるセラミックブロック20の詳細な構成について、図2(a)及び図2(b)を用いて以下に説明する。
【0054】
図2(a)に示すセラミックブロック20は、13個の断面正方形ユニット21aと、8個の断面直角二等辺三角形ユニット21bと、8個の断面台形ユニット21cとの合計29個のハニカム焼成体が接着材層22を介して複数個結束されることにより構成されている。
なお、接着材層22には、アルミナファイバ等の無機繊維と、炭化ケイ素等の無機粒子と、シリカゾル等の無機バインダと、カルボキシメチルセルロース等の有機バインダ等とが含まれている。
また、接着材層22の厚みは、0.5〜2.0mmが望ましい。
【0055】
具体的にいうと、セラミックブロック20は、13個の断面正方形ユニット21aが接着材層22を介して互いに結束されることにより、断面形状が20角形の断面正方形ユニット集合体24が構成されている。
断面正方形ユニット集合体24の外周面25には、凹部26a及び凸部26bが階段状に形成されており、凹部26aは8つ存在している。
【0056】
一の凹部26aの詳細な構成について説明する。図2(b)において両矢印で示された領域である凹部26aは、第一の断面正方形ユニット21aの第一の側面A1と、第一の側面A1に対して略垂直方向に立設している第二の断面正方形ユニット21a’の第二の側面A2と、接着材層とを含んで構成されている。上記接着材層は、第一の断面正方形ユニット21aと第一の断面正方形ユニット21aに隣り合う第三の断面正方形ユニット21a’’との間に形成された接着材層22、及び、第三の断面正方形ユニット21a’’と第二の断面正方形ユニット21a’との間に形成された接着材層22’から構成されている。
【0057】
この凹部26aには、図2(a)に示すように、断面直角二等辺三角形ユニット21bが接着材層22を介して嵌め込まれた状態で存在している。
即ち、第一の断面正方形ユニット21aの第一の側面A1と、断面直角二等辺三角形ユニット21bの第一の側面B1とが接着材層22を介して互いに接しており、第二の断面正方形ユニット21a’の第二の側面A2と、断面直角二等辺三角形ユニット21bの第二の側面B2とが接着材層22を介して互いに接している。
断面直角二等辺三角形ユニット21bの第三の側面B3は、断面正方形ユニットの側面とは接していない。
また、他の凹部と断面直角二等辺三角形ユニットとの関係も同様であり、8つの凹部26aには、それぞれ断面直角二等辺三角形ユニット21bが接着材層22を介して嵌め込まれた状態で存在している。
断面直角二等辺三角形ユニットが上述のように配置されているので、断面正方形ユニット集合体24の外周面25に形成された凹凸が解消されている。
【0058】
断面直角二等辺三角形ユニット21bの第三の側面B3は、断面台形ユニット21cの第二の側面C2と接着材層を介して接している。断面台形ユニット21cの第一の側面C1は、隣り合う他の断面台形ユニット21c’の第一の側面C1’と接着材層を介して接している。また、断面台形ユニット21cの第四の側面C4は、セラミックブロック20の外周面23の一部を構成している。他の断面台形ユニットも同様の構成となっている。
このため、セラミックブロック20の長手方向に垂直な断面の形状は、12角形である。
【0059】
次に、シール材層30について説明する。
シール材層30は、セラミックブロック20の外周面23に形成されており、部分的に厚さが異なっている。そのため、ハニカム構造体10の形状は、円柱状を呈している。
【0060】
シール材層30の最も厚い部分の厚み(図2(a)中、2つの矢印間の距離X)と、シール材層30の最も薄い部分の厚み(図2(a)中、2つの矢印間の距離Y)との比(シール材層30の最も厚い部分の厚み:シール材層30の最も薄い部分の厚み)は、20:1〜5:3が望ましく、4:1〜3:1がより望ましく、7.8:2.3〜8.3:3.0がさらに望ましい。
具体的には、シール材層30の最も厚い部分の厚みは、5.0〜10.0mmが望ましく、8.0〜9.0mmがより望ましく、8.2〜8.7mmがさらに望ましい。
また、シール材層30の最も薄い部分の厚みは、0.5〜3.0mmが望ましく、1.0〜2.5mmがより望ましく、1.6〜2.3mmがさらに望ましい。
シール材層30の最も厚い部分の厚みとシール材層30の最も薄い部分の厚みとの比が上記範囲であると、PMの捕集効率を高めることができるとともに、再生処理時の熱応力を充分に緩和することができる。
これに対して、シール材層の最も厚い部分の厚みが、10.0mmを超えると、シール材層の厚さが厚すぎる部分が多くなり、ハニカム構造体の端面においてセルが開口している領域が少なくなって、ハニカム構造体の大きさの割にPMの捕集効率が低くなる。なお、上記シール材層の最も厚い部分の厚みの下限値は、特に限定されないが、5.0mmであることが好ましい。
また、上記シール材層の最も薄い部分の厚みが、0.5mm未満であると、シール材層の厚さが薄すぎて、再生処理時の熱応力を緩和しにくくなる。
【0061】
シール材層30の材質は、上述した接着材層22と同じである。
シール材層30がセラミックブロック20の外周面23に形成されていることにより衝撃等の外力が吸収されるので、ハニカム構造体10は破損しにくい。
【0062】
次に、本実施形態のハニカム構造体の製造方法について説明する。
本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、
セラミック原料を成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作成する成形工程と、
上記ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を作製する焼成工程と、
複数の上記ハニカム焼成体を接着材層を介して接着させてセラミックブロックを作製する結束工程と、
上記セラミックブロックの外周面にシール材層を形成するシール材層形成工程を含むハニカム構造体の製造方法であって、
上記成形工程及び上記焼成工程では、少なくとも断面四角形ユニット及び断面三角形ユニットを作製し、
上記断面四角形ユニットの長手方向に垂直な断面の形状は、四角形であり、
上記断面三角形ユニットの長手方向に垂直な断面の形状は、三角形であり、外周部に外壁が形成されており、
上記結束工程では、複数の上記断面四角形ユニットを接着材層を介して接着させることにより、外周面に凹部及び凸部が階段状に形成された断面四角形ユニット集合体を作製し、
上記断面三角形ユニットを接着材層を介して上記凹部に嵌め込み、
上記シール材層形成工程では、上記シール材層の厚さが部分的に異なるように上記シール材層を形成することを特徴とする。
【0063】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法において、上記結束工程では、第一の断面四角形ユニットの第一の側面と第二の断面四角形ユニットの第二の側面とを含んで上記凹部を形成し、
上記第一の側面と上記断面三角形ユニットの第一の側面とを接着材層を介して互いに接着し、
上記第二の側面と上記断面三角形ユニットの第二の側面とを接着材層を介して互いに接着し、
上記断面三角形ユニットの第三の側面を上記断面四角形ユニットのいずれの側面とも互いに接着させないことが望ましい。
【0064】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法において、上記成形工程及び上記焼成工程では、その形状が断面正方形である断面四角形ユニットを作製し、
その形状が断面直角三角形であり、かつ、上記断面四角形ユニットの第一の端面の対角線と第二の端面の対角線とを通る平面で上記断面四角形ユニットを二等分した形状と一致している断面三角形ユニットを作製し、
上記結束工程では、上記直角三角形の斜辺を含む側面を上記断面四角形ユニットのいずれの側面とも互いに接着させないことが望ましい。
【0065】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法において、上記成形工程及び上記焼成工程では、その長手方向に垂直な断面の形状が、少なくとも第一の辺と、上記第一の辺と直角を形成する第二の辺と、上記直角と対向する傾斜辺とを含んで構成されており、その外周部に外壁が形成された断面異形ユニットを作製し、
上記結束工程では、上記傾斜辺を含む側面が上記セラミックブロックの外周面を構成するように上記断面異形ユニットを配置することが望ましい。
【0066】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法において、上記結束工程では、上記断面異形ユニットの第二の辺を含む側面を上記断面三角形ユニットと接着材層を介して接着させることが望ましい。
【0067】
以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法を工程順に説明する。
まず、セラミック原料としての平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末等のセラミック粉末と、有機バインダと液状の可塑剤、潤滑剤、水等を混合して、成形体製造用の湿潤混合物を調製する。
【0068】
続いて、上記湿潤混合物を押出成形機に投入して押出成形する成形工程を行い、所定の形状のハニカム成形体を作製する。
具体的には、図3(a)及び図3(b)に示すような、断面視八角形の大容量セルと断面視四角形の小容量セルとを有し、断面形状が正方形であるハニカム成形体を作製する。また、金型の形状を変更して、図4(a)及び図4(b)に示すような、断面形状が直角二等辺三角形であるハニカム成形体を作製し、図5(a)及び図5(b)に示すような、断面形状が台形であるハニカム成形体を作製する。
なお、断面形状が正方形であるハニカム成形体は、後述する焼成工程を経て断面正方形ユニットとなる。断面形状が直角二等辺三角形であるハニカム成形体は、後述する焼成工程を経て断面直角二等辺三角形形ユニットとなる。断面形状が台形であるハニカム成形体は、後述する焼成工程を経て断面台形ユニットとなる。
以下の工程で、ハニカム成形体というときはこれら3種のハニカム成形体を区別せずに指すものとする。
【0069】
次に、ハニカム成形体の両端を切断装置を用いて切断する切断工程を行い、ハニカム成形体を所定の長さに切断し、切断したハニカム成形体を乾燥機を用いて乾燥する。
次いで、セルのいずれか一方の端部に、封止材となる封止材ペーストを所定量充填し、セルを目封じする。このような工程を経て、セル封止ハニカム成形体を作製する。
なお、封止材ペーストとしては、上記湿潤混合物を用いることができる。
【0070】
次に、セル封止ハニカム成形体中の有機物を脱脂炉中で加熱する脱脂工程を行い、ハニカム脱脂体を作製する。このハニカム脱脂体の形状は図3(a)、図3(b)、図4(a)、図4(b)、図5(a)及び図5(b)に示す各ハニカム焼成体の形状とほぼ同様である。
【0071】
そして、ハニカム脱脂体を焼成炉に搬送し、アルゴン雰囲気下、2000〜2300℃で焼成する焼成工程を行うことによって、図3(a)、図3(b)、図4(a)、図4(b)、図5(a)及び図5(b)に示す形状のハニカム焼成体、すなわち、断面正方形ユニット、断面直角二等辺三角形ユニット及び断面台形ユニットを作製する。
【0072】
続いて、ハニカム焼成体の所定の側面に接着材ペースト層を形成し、接着材ペースト層を加熱固化して接着材層とし、接着材層を介して複数のハニカム焼成体を結束させてセラミックブロックとする結束工程を行う。
接着材ペーストとしては、無機繊維及び/又はウィスカ、無機バインダ、並びに、有機バインダを含む接着材ペーストが好適に用いられる。
【0073】
この結束工程においては、まず、断面正方形ユニットの側面に接着材ペーストを塗布して接着材ペースト層を形成する。そして、この接着材ペースト層の上に、順次他の断面正方形ユニットを積層する工程を繰り返す。これにより、図1、図2(a)及び図2(b)に示す断面形状が20角形の断面正方形ユニット集合体を作製する。
【0074】
次に、断面正方形ユニット集合体の外周面に形成された8つの凹部にそれぞれ接着材ペーストを塗布して接着材ペースト層を形成する。
そして、第一の断面正方形ユニットの第一の側面と、断面直角二等辺三角形ユニットの第一の側面とが接着材ペースト層を介して互いに接し、第二の断面正方形ユニットの第二の側面と、断面直角二等辺三角形ユニットの第二の側面とが接着材ペースト層を介して互いに接するように、8つの凹部にそれぞれ断面直角二等辺三角形ユニットを1個ずつ嵌め込む。
【0075】
続けて、断面直角二等辺三角形ユニットの第三の側面に接着材ペーストを塗布して接着材ペースト層を形成する。
そして、断面直角二等辺三角形ユニットの第三の側面と、一の断面台形ユニットの第二の側面とが接着材ペースト層を介して互いに接するように、断面直角二等辺三角形ユニットと、断面台形ユニットとを接着する。
同様にして、他の断面台形ユニットについても断面直角二等辺三角形ユニットと接着材ペースト層で接着する。この際、一の断面台形ユニットの第一の側面と、他の断面台形ユニットの第一の側面との間にも接着材ペースト層を形成する。
【0076】
これにより、13個の断面正方形ユニットと、8個の断面直角二等辺三角形ユニットと、8個の断面台形ユニットとが接着材ペースト層で結束された、図1、図2(a)に示す断面形状が12角形のセラミックブロックを作製する。
【0077】
続いて、セラミックブロックの外周面にシール材ペーストを塗布し、シール材ペーストを乾燥固化させてシール材層(コート層)を形成するシール材層形成工程を行い、円柱状のハニカム構造体を製造する。
ここで、セラミックブロックの外周面に塗布するシール材ペーストの厚さを、例えば、断面台形ユニットの側面では薄くなり、断面正方形ユニット(断面正方形ユニット集合体)の側面では厚くなるように調整することにより、本工程を経て製造されたハニカム構造体の形状が円柱状となるようにシール材ペーストを塗布する。例えば、製造されたハニカム構造体において、シール材層の最も厚い部分の厚みと、シール材層の最も薄い部分の厚みとの比が、20:1〜5:3となるようにシール材ペーストを塗布する。具体的には、製造されたハニカム構造体において、シール材層の最も厚い部分の厚みが、5.0〜10.0mmとなり、シール材層の最も薄い部分の厚みが、0.5〜3.0mmとなるように、シール材ペーストを塗布する。
なお、上記シール材ペーストとしては、上記接着材ペーストと同様のペーストを使用することができる。
以上の工程によって、ハニカム構造体を製造する。
【0078】
なお、シール材ペーストとしては、上記接着材ペーストと同様のペーストを使用すればよいが、シール材ペーストとして異なる組成のペーストを使用してもよい。
以上の工程によって、本実施形態のハニカム構造体を製造することができる。
【0079】
以下に、本実施形態のハニカム構造体の作用効果について列挙する。
【0080】
(1)本実施形態のハニカム構造体は、製造時において、セラミックブロックの外周面を研削する研削加工工程を行う必要がなく、製造コストを低く抑えることができる。この理由について、以下に説明する。
【0081】
まず、セラミックブロックが断面正方形ユニット集合体のみから構成されている場合について考えてみる。
断面正方形ユニット集合体の外周面には、凹部及び凸部が階段状に形成されており、凹凸が存在している。そのため、断面正方形ユニット集合体の外周面に略均一の厚さのシール材層を形成した場合には、断面正方形ユニット集合体の形状に由来して、得られるハニカム構造体の形状が角柱状となり、円柱状、長円柱状、楕円柱状又は三角形の頂点部が曲線になっている形状の柱状体等にはならない。
【0082】
そこで、ハニカム構造体の形状を円柱状、長円柱状、楕円柱状又は三角形の頂点部が曲線になっている形状の柱状体等とするためには、断面正方形ユニット集合体に対して予め研削加工を施すことにより、断面正方形ユニット集合体の形状を円柱状、長円柱状、楕円柱状又は三角形の頂点部が曲線になっている形状の柱状体等に加工することが考えられるが、研削加工を施した場合には、製造コストが高くなってしまう。
特に、大型のハニカム構造体を製造しようとすると、セラミックブロックの外周面を多量に研削する必要があり、製造コストがかなり高くなり、加工時間(研削時間)も長くなることが懸念される。
【0083】
これに対し、本実施形態のハニカム構造体では、断面正方形ユニット集合体の外周面に形成された凹部に断面三角形ユニットが接着材層を介して嵌め込まれた状態で存在しており、凹部及び凸部により形成される凹凸が解消されている。そのため、セラミックブロックの形状は、断面正方形ユニット集合体よりも円柱状、長円柱状、楕円柱状又は三角形の頂点部が曲線になっている形状の柱状体等にできるだけ近い多角柱状となっている。
従って、このセラミックブロックに対して研削加工を施すことなく、部分的に厚さの異なるシール材層を外周面に形成するだけで、円柱状、長円柱状、楕円柱状又は三角形の頂点部が曲線になっている形状の柱状体等のハニカム構造体を容易に製造することができる。それゆえ、製造コストを低く抑えることができる。
また、セラミックブロックの外周面に形成されたシール材層の厚さが部分的に異なっているので、円柱状、長円柱状、楕円柱状又は三角形の頂点部が曲線になっている形状の柱状体等の所望形状のハニカム構造体とすることができる。
【0084】
(2)特に、本実施形態のハニカム構造体では、断面台形ユニットの傾斜辺を含む第三の側面がセラミックブロックの外周面を構成しているため、セラミックブロックの形状が円柱状、長円柱状、楕円柱状又は三角形の頂点部が曲線になっている形状の柱状体等により近く、上述した作用効果(1)を好適に享受することができる。
【0085】
(3)また、シール材層の最も厚い部分の厚みと、シール材層の最も薄い部分の厚みとの比が、20:1〜5:3である場合には、PMの補集効率を高めることができるとともに、再生処理時の熱応力を充分に緩和することができる。
特に、シール材層の最も厚い部分の厚みが、5.0〜10.0mmであり、シール材層の最も薄い部分の厚みが、0.5〜3.0mmである場合には、PMの補集効率をより高めることができるとともに、再生処理時の熱応力をより充分に緩和することができる。
【0086】
(4)また、ハニカム焼成体に形成された多数のセルは、断面形状が八角形である大容量セルと、断面形状が四角形である小容量セルとからなる。
本実施形態のハニカム構造体を排ガスの浄化に使用する場合には、排ガスが流入する流入側セルを大容量セルとし、排ガスが流出する流出側セルを小容量セルとすることにより、流入側セルの表面積の総量を大きくすることができる。
従って、排ガス浄化時には、流入側セルの表面積の総量と流出側セルの表面積の総量とが等しいハニカム構造体と比較して、PMの堆積層の厚さを薄くすることができる。そのため、圧力損失の上昇を抑制したり、PMの捕集限界量を多くしたりすることができる。
また、一定量のPMを補集する場合で比較すると、PMの堆積層の厚さが薄くなって、PMを燃焼させやすくなる。
さらに、セルの形状がPMの補集に特に適した形状であるので、PMの捕集効率を高めることができる。
【0087】
(第二実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の一実施形態である第二実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態のハニカム構造体では、ハニカム焼成体として断面正方形ユニットと断面直角二等辺三角形ユニットとを使用し、使用するハニカム焼成体の個数が異なり、セラミックブロックの断面形状が八角形であること以外は、本発明の第一実施形態で述べたハニカム構造体と同様の構成を有している。
従って、本発明の第一実施形態のハニカム構造体についての説明と重複する事項については、説明を省略する。
【0088】
図6は、本発明の第二実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、図7は、図6に示したハニカム構造体のE−E線断面図である。
【0089】
図6、図7に示す本実施形態のハニカム構造体110は、セラミックブロック120と、セラミックブロック120の外周面123に形成されたシール材層130とからなる。
【0090】
セラミックブロック120は、断面形状が12角形である1個の断面正方形ユニット集合体124と、4個の断面直角二等辺三角形ユニット121bとからなり、その断面形状は八角形である。
断面正方形ユニット集合体124は、12個の断面正方形ユニット121aが接着材層122を介して接着されることにより構成されている。
断面正方形ユニット121a及び断面直角二等辺三角形ユニット121bの構成については、本発明の第一実施形態で説明した断面正方形ユニット21a及び断面直角二等辺三角形ユニット21bと同様である。
【0091】
断面正方形ユニット集合体124の外周面125には、凹部126a及び凸部126bが階段状に形成されており、凹部126aは4個存在している。
そして、4個の凹部126aには、それぞれ断面直角二等辺三角形ユニット121bが接着材層122を介して嵌め込まれた状態で存在している。
【0092】
セラミックブロック120の外周面123には、部分的に厚さが異なるシール材層130が形成されており、ハニカム構造体110の形状は円柱状である。
【0093】
本実施形態のハニカム構造体を製造する方法については、断面正方形ユニットを12個、断面直角二等辺三角形ユニットを4個作製し、結束工程で図6、図7に示す形状のセラミックブロック120が作製されるようにハニカム焼成体を適宜組み合わせること以外は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を製造する方法と同様であるので説明を省略する。
【0094】
本実施形態のハニカム構造体においても、本発明の第一実施形態と同様の作用効果(1)、(3)及び(4)を奏することができる。
【0095】
(第三実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第三実施形態について説明する。
本実施形態では、ハニカム焼成体として断面正方形ユニットと、断面直角二等辺三角形ユニットを使用するが、使用するハニカム焼成体の個数が多いこと(32個)以外は、本発明の第二実施形態で述べたハニカム構造体と同様の構成を有している。
従って、本発明の第二実施形態のハニカム構造体についての説明と重複する事項については、説明を省略する。
【0096】
図8は、本発明の第三実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、図9は、図8に示したハニカム構造体のF−F線断面図である。
【0097】
図8、図9に示す本実施形態のハニカム構造体210は、セラミックブロック220と、セラミックブロック220の外周面223に形成されたシール材層230とからなる。
【0098】
セラミックブロック220は、断面形状が20角形である1個の断面正方形ユニット集合体224と、8個の断面直角二等辺三角形ユニット221bとからなり、その断面形状は八角形である。
断面正方形ユニット集合体224は、24個の断面正方形ユニット221aが接着材層222を介して結束されることにより構成されている。
断面正方形ユニット221a及び断面直角二等辺三角形ユニット221bの構成については、本発明の第一実施形態で説明した断面正方形ユニット21a及び断面直角二等辺三角形ユニット21bと同様である。
【0099】
断面正方形ユニット集合体224の外周面225には、凹部226a及び凸部226bが階段状に形成されており、凹部226aが8個存在している。
そして、8個の凹部226aには、それぞれ断面直角二等辺三角形ユニット221bが接着材層222を介して嵌め込まれた状態で存在している。
【0100】
セラミックブロック220の外周面223には、部分的に厚さが異なるシール材層230が形成されており、ハニカム構造体210の形状は円柱状である。
【0101】
本実施形態のハニカム構造体を製造する方法については、断面正方形ユニットを24個、断面直角二等辺三角形ユニットを8個作製し、結束工程で図8、図9に示す形状のセラミックブロック220が作製されるように、ハニカム焼成体を適宜組み合わせること以外は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を製造する方法と同様であるので、説明を省略する。
【0102】
本実施形態のハニカム構造体においても、本発明の第一実施形態と同様の作用効果(1)、(3)及び(4)を発揮することができる。
【0103】
(第四実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第四実施形態について説明する。
本実施形態では、ハニカム焼成体として断面正方形ユニットと、断面直角二等辺三角形ユニットを使用するが、使用するハニカム焼成体の個数が多いこと(45個)以外は、本発明の第二実施形態で述べたハニカム構造体と同様の構成を有している。
従って、本発明の第二実施形態のハニカム構造体についての説明と重複する事項については、説明を省略する。
【0104】
図10は、本発明の第四実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、図11は、図10に示したハニカム構造体のG−G線断面図である。
【0105】
図10、図11に示す本実施形態のハニカム構造体310は、セラミックブロック320と、セラミックブロック320の外周面323に形成されたシール材層330とからなる。
【0106】
セラミックブロック320は、断面形状が20角形である1個の断面正方形ユニット集合体324と、8個の断面直角二等辺三角形ユニット321bとからなり、その断面形状は八角形である。
断面正方形ユニット集合体324は、37個の断面正方形ユニット321aが接着材層322を介して結束されることにより構成されている。
断面正方形ユニット321a及び断面直角二等辺三角形ユニット321bの構成については、本発明の第一実施形態で説明した断面正方形ユニット21a及び断面直角二等辺三角形ユニット21bと同様である。
【0107】
断面正方形ユニット集合体324の外周面325には、凹部326a及び凸部326bが階段状に形成されており、凹部326aが8個存在している。
そして、8個の凹部326aには、それぞれ断面直角二等辺三角形ユニット321bが接着材層322を介して嵌め込まれた状態で存在している。
【0108】
セラミックブロック320の外周面323には、部分的に厚さが異なるシール材層330が形成されており、ハニカム構造体310の形状は円柱状である。
【0109】
本実施形態のハニカム構造体を製造する方法については、断面正方形ユニットを37個、断面直角二等辺三角形ユニットを8個作製し、結束工程で図10、図11に示す形状のセラミックブロック320が作製されるように、ハニカム焼成体を適宜組み合わせること以外は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を製造する方法と同様であるので、説明を省略する。
【0110】
本実施形態のハニカム構造体においても、本発明の第一実施形態と同様の作用効果(1)、(3)及び(4)を発揮することができる。
【0111】
(第五実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第五実施形態について説明する。
本実施形態では、ハニカム焼成体として断面正方形ユニットと、断面直角二等辺三角形ユニットと、断面形状が長方形の断面四角形ユニット(以下、単に、断面長方形ユニットともいう)とを使用すること以外は、本発明の第二実施形態で述べたハニカム構造体と同様の構成を有している。
従って、本発明の第二実施形態のハニカム構造体の説明と重複する事項については、説明を省略する。
【0112】
図12は、本発明の第五実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、図13は、図12に示したハニカム構造体のH−H線断面図である。
【0113】
図12、図13に示す本実施形態のハニカム構造体410は、セラミックブロック420と、セラミックブロック420の外周面423に形成されたシール材層430とからなる。
【0114】
セラミックブロック420は、断面形状が12角形である1個の断面四角形ユニット集合体424と、4個の断面直角二等辺三角形ユニット421bとからなり、その断面形状は八角形である。
【0115】
断面四角形ユニット集合体424は、4個の断面正方形ユニット421aと、長手方向に垂直な断面の形状が長方形である8個の断面長方形ユニット421cとから構成されている。
断面正方形ユニット421aは、本発明の第一実施形態で説明した断面正方形ユニット21aと同様の構成を有しているので、説明を省略する。
【0116】
断面長方形ユニット421cの構成について図面を用いて説明する。
【0117】
図14は、本発明の第五実施形態のハニカム構造体を構成する断面長方形ユニットの一例を模式的に示す斜視図である。
【0118】
断面長方形ユニット421cは、その長手方向(図14中、両矢印dで示す)の長さが断面正方形ユニット421a及び後述する断面直角二等辺三角形ユニット421bの長手方向の長さと略一致している。
また、断面長方形ユニット421cの長手方向に垂直な断面における長辺L’の長さは、断面正方形ユニット421aの長手方向に垂直な断面における一辺の長さLと略一致している。
断面長方形ユニット421cの長手方向に垂直な断面における短辺l’の長さは、断面正方形ユニット421aの長手方向に垂直な断面における一辺の長さLの略半分の長さである。
【0119】
図14に示す断面長方形ユニット421cに形成された多数のセルは、上述した断面正方形ユニット21aと同様に、セル壁444を隔てて長手方向に並設されている。また、多数のセルは、八角形の断面形状を有する大容量セル442aと、四角形の断面形状を有する小容量セル442bとからなる。
【0120】
大容量セル442aは、第一の端面441a側の端部が開口しており、第二の端面441b側の端部で封止材により封止されている。一方、小容量セル442bは、第二の端面441b側の端部が開口しており、第一の端面441a側の端部で封止材により封止されている。
そのため、断面正方形ユニット21aと同様、大容量セル442aと小容量セル442bとを隔てるセル壁444がフィルタとして機能するようになっている。
【0121】
次に、図13を参照しながら、断面直角二等辺三角形ユニット421b及び断面四角形ユニット集合体424の構成について説明する。
断面直角二等辺三角形ユニット421bは、長手方向に垂直な断面における第一の側面B1を構成する辺の長さ及び第二の側面B2を構成する辺の長さが、断面長方形ユニット421cの長手方向に垂直な断面における短辺l’の長さと略一致していること以外は、本発明の第一実施形態における断面直角二等辺三角形ユニット21bと同様の構成を有している。
【0122】
図13に示す断面四角形ユニット集合体424では、4個の断面正方形ユニット421aが接着材層422を介して断面形状が正方形になるように互いに結束されており、結束された一の断面正方形ユニット421aの第一の側面A1には、第一の断面長方形ユニット421cの長側面D1が接着材層422を介して接しており、上記一の断面正方形ユニット421aの第二の側面A2には、第二の断面長方形ユニット421c’の長側面D1’が接着材層422を介して接している。同様にして、合計で8個の断面長方形ユニット421cが、断面正方形ユニット421aと接着材層422を介して接している。
このような構成を有する断面四角形ユニット集合体424の断面形状は、12角形である。
また、断面四角形ユニット集合体424の外周面425には、凹部426a及び凸部426bが階段状に形成されており、凹部426aは4つ存在している。
【0123】
一の凹部426aの詳細な構成をみてみると、第一の断面長方形ユニット421cの第一の短側面D2と、断面直角二等辺三角形ユニット421bの第一の側面B1とが接着材層422を介して互いに接しており、第二の断面長方形ユニット421c’の第二の短側面D2’と、断面直角二等辺三角形ユニット421bの第二の側面B2とが接着材層422を介して互いに接している。断面直角二等辺三角形ユニット421bの第三の側面B3は、セラミックブロック420の外周面423を構成している。
また、他の凹部と断面三角形ユニットとの関係も同様であり、4つの凹部426bには、それぞれ断面直角二等辺三角形ユニット421bが接着材層422を介して嵌め込まれた状態で存在している。
【0124】
セラミックブロック420の外周面423には、部分的に厚さが異なるシール材層430が形成されており、ハニカム構造体410の形状は円柱状である。
【0125】
本実施形態のハニカム構造体を製造する方法については、断面正方形ユニットを4個、断面直角二等辺三角形ユニットを4個、断面長方形ユニットを8個作製し、結束工程で図12、図13に示す形状のセラミックブロック420が作製されるようにハニカム焼成体を適宜組み合わせること以外は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を製造する方法と同様であるので説明を省略する。
なお、焼成後に断面長方形ユニットとなり、長手方向に垂直な断面の形状が長方形であるハニカム成形体を作製するためには、作製するハニカム成形体の形状に応じた押出成形用金型を使用すればよい。
【0126】
本実施形態のハニカム構造体においても、本発明の第一実施形態と同様の作用効果(1)、(3)及び(4)を発揮することができる。
【0127】
(第六実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第六実施形態について説明する。
本実施形態では、ハニカム焼成体として断面正方形ユニットと、断面三角形ユニットと、断面長方形ユニットを使用するが、上記断面三角形ユニットが本発明の第一実施形態で説明した断面直角二等辺三角形ユニットと同様の形状を有しており、セラミックブロックを構成するハニカム焼成体の数が116個であり、セラミックブロックの断面形状が32角形であって、下記するようにハニカム焼成体の組み合わせ方が異なること以外は、本発明の第五実施形態で述べたハニカム構造体と同様の構成を有している。
従って、本発明の第五実施形態のハニカム構造体についての説明と重複する事項については、説明を省略する。
【0128】
図15は、本発明の第六実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、図16は、図15に示したハニカム構造体のI−I線断面図である。
【0129】
図15、図16に示す本実施形態のハニカム構造体510は、セラミックブロック520と、セラミックブロック520の外周面523に形成されたシール材層530とからなる。
【0130】
セラミックブロック520は、断面形状が44角形である1個の断面四角形ユニット集合体524と、8個の断面直角二等辺三角形ユニット521bとからなり、その断面形状は32角形である。
断面四角形ユニット集合体524は、88個の断面正方形ユニット521aが接着材層522を介して結束されることにより構成された1個の断面正方形ユニット集合体527と、断面正方形ユニット集合体527の外周面528に接着材層522を介して接している4個の断面長方形ユニット集合体529とから構成されている。断面長方形ユニット集合体529のうち、2個の断面長方形ユニット集合体529aは、6個の断面長方形ユニット521cから構成されており、2個の断面長方形ユニット集合体529bは、4個の断面長方形ユニット521cから構成されている。すなわち、断面略長方形ユニット集合体529は、計20個の断面略長方形ユニット521cから構成されている。
断面正方形ユニット521a、断面直角二等辺三角形ユニット521bの構成については、本発明の第一実施形態で説明した断面正方形ユニット21a、断面直角二等辺三角形ユニット21bと同様である。また、断面長方形ユニット521cの構成については、本発明の第五実施形態で説明した断面長方形ユニット421cと同様である。
【0131】
断面四角形ユニット集合体524の外周面525には、凹部526a及び凸部526bが階段状に形成されており、凹部526aは20個存在している。
そして、20個の凹部526aのうち、8個の凹部526aには、それぞれ断面直角二等辺三角形ユニット521bが接着材層522を介して嵌め込まれた状態で存在している。
【0132】
セラミックブロック520の外周面523には、部分的に厚さが異なるシール材層530が形成されており、ハニカム構造体510の形状は円柱状である。
【0133】
本実施形態のハニカム構造体を製造する方法については、断面正方形ユニットを88個、断面直角二等辺三角形ユニットを8個、断面長方形ユニットを20個作製し、結束工程で図15、図16に示す形状のセラミックブロック520が作製されるように、ハニカム焼成体を適宜組み合わせること以外は、本発明の第五実施形態のハニカム構造体を製造する方法と同様であるので、説明を省略する。
【0134】
本実施形態のハニカム構造体においても、本発明の第一実施形態と同様の作用効果(1)、(3)及び(4)を発揮することができる。
【0135】
(その他の実施形態)
本発明のハニカム構造体において、断面四角形ユニットとしては、上述した断面正方形ユニット又は断面長方形ユニットに限られず、例えば、ひし形や平行四辺形等の断面形状を有する断面四角形ユニット、及び、これらの断面形状と実質的に同視しうる断面形状を有する断面四角形ユニット等であってもよい。
【0136】
本発明のハニカム構造体において、断面三角形ユニットとしては、上述した断面直角二等辺三角形ユニットに限られず、断面四角形ユニット集合体の外周面に形成された凹部に嵌め込むことができる形状であれば、その形状は特に限定されず、例えば、直角三角形や、二等辺三角形や、正三角形等の断面形状を有する断面三角形ユニット、及び、これらの断面形状と実質的に同視しうる断面形状を有する断面三角形ユニット等であってもよい。
【0137】
本発明のハニカム構造体において、断面異形ユニットとしては、上述した断面台形ユニットに限定されず、下記する断面形状の断面扇形ユニット又は下記する断面台形ユニット等を使用してもよい。
【0138】
図17(a)、図17(b)、図17(c)、図17(d)及び図17(e)は、本発明のハニカム構造体に係る断面異形ユニットの一例を模式的に示す側面図である。
図17(a)、図17(b)及び図17(c)は、断面扇形ユニットを示しており図17(d)及び図17(e)は、断面台形ユニットを示している。
【0139】
図17(a)、図17(b)、図17(c)、図17(d)及び図17(e)の各図面に示す断面異形ユニットとしての各断面扇形ユニット及び各断面台形ユニットは、上述した大容量セル及び小容量セルの代わりに、長手方向に垂直な断面の形状が四角形であるセルを備えている。
【0140】
本発明のハニカム構造体におけるセルは、上述した大容量セルと小容量セルとの組み合わせから構成されていてもよいし、その長手方向に垂直な断面の面積が同一であるセルから構成されていてもよい。長手方向に垂直な断面の面積が同一であるセルから構成されている場合は、長手方向に垂直な断面の形状が例えば四角形等であってもよく、どのような断面の形状を有していてもよい。
【0141】
断面異形ユニットとしての断面扇形ユニットとしては、長手方向に垂直な断面の形状が1つの円弧及び2つの直線部からなる形状、1つの円弧及び3つの直線部からなる形状、又は、1つの円弧及び4つの直線部からなる形状等が挙げられる。断面扇形ユニットの形状は、少なくとも1つの円弧と2つの直線部を備えていればよく、円弧の数が2つ以上であってもよく、直線部の数が5つ以上であってもよい。
【0142】
図17(a)は、長手方向に垂直な断面の形状が1つの円弧及び2つの直線部からなる断面扇形ユニットの一例を示している。図17(a)に示す断面扇形ユニット610の長手方向に垂直な断面における形状は、第一の辺611と、第二の辺612と、傾斜辺613を有する。
第一の辺611と第二の辺612の形成する角度は直角であり、傾斜辺613はその直角に対向して設けられている。傾斜辺613は円弧からなる。
傾斜辺613は第一の辺611及び第二の辺612に接続している。
【0143】
図17(b)は、長手方向に垂直な断面の形状が1つの円弧及び3つの直線部からなる断面扇形ユニットの一例を示している。
図17(b)に示す断面扇形ユニット620の長手方向に垂直な断面における形状は、第一の辺621と、第二の辺622と、傾斜辺623と、第三の辺624を有する。
第一の辺621と第二の辺622の形成する角度は直角であり、傾斜辺623はその直角に対向して設けられている。傾斜辺623は円弧からなる。
第三の辺624は傾斜辺623と第一の辺621を接続している辺であり、第三の辺624は第二の辺622と平行になっている。
【0144】
図17(c)は、長手方向に垂直な断面の形状が1つの円弧及び4つの直線部からなる断面扇形ユニットの一例を示している。図17(c)に示す断面扇形ユニット630の長手方向に垂直な断面における形状は、第一の辺631と、第二の辺632と、傾斜辺633と、第三の辺634と、第四の辺635を有する。
第一の辺631と第二の辺632の形成する角度は直角であり、傾斜辺633はその直角に対向して設けられている。傾斜辺633は円弧からなる。
第三の辺634は傾斜辺633と第一の辺631を接続している辺であり、第三の辺634は第二の辺632と平行になっている。
第四の辺635は傾斜辺633と第二の辺632を接続している辺であり、第四の辺635は第一の辺631と平行になっている。
【0145】
断面異形ユニットとしての断面台形ユニットとしては、長手方向に垂直な断面の形状が4つの直線部からなる形状、又は、5つの直線部からなる形状等が挙げられる。
断面台形ユニットの形状は、その直線部が少なくとも1つの傾斜辺と2つの辺(第一の辺及び第二の辺)を備えていればよく、傾斜辺の数が2つ以上であってもよく、直線部の数が6つ以上であってもよい。なお、「断面台形ユニット」の断面形状は台形に限定されるものではなく、五角形、六角形等の多角形であってもよい。
【0146】
図17(d)は、長手方向に垂直な断面の形状が4つの直線部からなる断面台形ユニットの一例を示している。図17(d)に示す断面台形ユニット710の長手方向に垂直な断面における形状は、第一の辺711と、第二の辺712と、傾斜辺713と、第三の辺714を有する。
第一の辺711と第二の辺712の形成する角度は直角であり、傾斜辺713はその直角に対向して設けられている。傾斜辺713は直線からなる。
第三の辺714は傾斜辺713と第一の辺711を接続している辺であり、第三の辺714は第二の辺712と平行になっている。
【0147】
図17(e)は、長手方向に垂直な断面の形状が5つの直線部からなる断面台形ユニットの一例を示している。図17(e)に示す断面台形ユニット720の長手方向に垂直な断面における形状は、第一の辺721と、第二の辺722と、傾斜辺723と、第三の辺724と、第四の辺725とを有する。
第一の辺721と第二の辺722の形成する角度は直角であり、傾斜辺723はその直角に対向して設けられている。傾斜辺723は直線からなる。
第三の辺724は傾斜辺723と第一の辺721を接続している辺であり、第三の辺724は第二の辺722と平行になっている。
第四の辺725は傾斜辺723と第二の辺722を接続している辺であり、第四の辺725は第一の辺721と平行になっている。
【0148】
本発明のハニカム構造体では、例えば、図3(a)、図3(b)に示す断面正方形ユニットのように、ハニカム焼成体の断面形状における各辺の交点部分が角部となっていてもよいが、上記ハニカム焼成体の角部に対応する部分が、面取りが施された形状となっていてもよい。
上記ハニカム焼成体の角部に対応する部分に面取りが施された形状とは、例えば、ハニカム焼成体の外周の角部に対応する部分が、円弧状の曲線から構成されたR面取り形状、又は、上記ハニカム焼成体の角部を直線で切り落とし鈍角のみが存在するように構成されたC面取り形状が挙げられる。
上記ハニカム焼成体の角部のR面取り形状のR寸法及び上記C面取り形状のC寸法としては、望ましい下限が0.3mmであり、より望ましい下限が0.5mmであり、一方、望ましい上限は2.5mmである。
上記ハニカム焼成体の角部のR寸法又はC寸法が0.3mm未満であると、上記ハニカム焼成体の角部に熱応力が集中することを充分に抑制することができなかったり、上記ハニカム焼成体の角部に位置するセルにおける気体の流動性を充分に向上させることができなかったりする。また、上記ハニカム焼成体の角部のR寸法又はC寸法が2.5mmを超えると、ハニカム焼成体の角部の丸みが大きすぎるために、ハニカム焼成体の角部に位置するセルにおいて、鋭角となる角部が生じるので、逆にハニカム焼成体のクラックが発生しやすくなる。
なお、R寸法とは、R面取り形状における円弧の半径を意味する。また、C寸法とは、角部を本来構成する2つの辺のうち、C面取りでより長く切り取られた側の辺についての切り取られた長さを意味する。
【0149】
本発明のハニカム構造体の断面において、ユニット(ハニカム焼成体)が占める面積の割合(ハニカム焼成体占有率)は、87〜93%であることが好ましい。
【0150】
また、上記多数のセルが大容量セルと小容量セルとからなる場合には、上記小容量セルの上記長手方向に垂直な断面の面積に対する上記大容量セルの上記長手方向に垂直な断面の面積の面積比が、1.4〜2.4であることが望ましい。
上述した大容量セルと小容量セルとを設けた場合、PMの捕集効率が向上するからである。
【0151】
また、各ハニカム焼成体が有するセルの形態は、これまでの本発明の実施形態において説明した形態に限定されるものではない。
図18(a)、図18(b)、図18(c)及び図18(d)は、本発明のハニカム構造体に係る断面正方形ユニットの端面の一例を模式的に示す側面図である。
これらの図に示すセルの形態は、いずれも大容量セルと小容量セルとが交互に配設された形態である。
【0152】
図18(a)に示すハニカム焼成体820では、大容量セル821aの長手方向に垂直な断面の形状が角部に相当する部分が円弧状になっている四角形である。小容量セル821bの長手方向に垂直な断面の形状は、四角形である。
【0153】
図18(b)に示すハニカム焼成体830では、大容量セル831a及び小容量セル831bの長手方向に垂直な断面がセルの各辺が曲線である形状である。
即ち、図18(b)ではセル壁833の断面形状が曲線である。
大容量セル831aの断面形状は、セル壁833がセルの断面の中心から外側に向かって凸の形状である。
一方、小容量セル831bの断面形状は、セル壁833がセルの断面の外側から中心に向かって凸の形状である。
セル壁833はハニカム焼成体の断面の水平方向及び垂直方向に対して起伏する「波形」の形状を有しており、隣り合うセル壁833の波形の山の部分(正弦曲線でいう振幅の極大値の部分)が互いに最近接することで、セルの断面形状が外側に膨らんだ大容量セル831aとセルの断面形状が内側に凹んだ小容量セル831bとが形成される。なお、波形の振幅は一定でもよくまた変化しても良いが、一定であることが好ましい。
【0154】
図18(c)に示すハニカム焼成体870では、大容量セル871aの長手方向に垂直な断面の形状は四角形であり、小容量セル871bの長手方向に垂直な断面の形状は四角形である。
図18(d)に示すハニカム焼成体880では、大容量セル881a及び小容量セル881bの長手方向に垂直な断面の形状が、角部に相当する部分が円弧状になっている四角形である。
【0155】
ハニカム焼成体が大容量セルと小容量セルを有する場合、隣り合う大容量セルの長手方向に垂直な断面の重心間距離と、隣り合う小容量セルの長手方向に垂直な断面の重心間距離とは、等しいことが望ましい。
「隣り合う大容量セルの長手方向に垂直な断面の重心間距離」とは、一の大容量セルの長手方向に垂直な断面における重心と、隣り合う大容量セルの長手方向に垂直な断面における重心との最小の距離をいい、一方、「隣り合う小容量セルの長手方向に垂直な断面の重心間距離」とは、一の小容量セルの長手方向に垂直な断面における重心と、隣り合う小容量セルの重心との最小の距離のことをいう。
【0156】
上記2つの重心間距離が等しいとき、再生時に熱が均一に拡散することで、ハニカム構造体内部の局所的な温度の偏りがなくなり、長期間繰り返し使用しても、熱応力に起因するクラック等が発生することのない耐久性に優れたハニカム構造体となるからである。
【0157】
ハニカム焼成体が有するセルが大容量セルと小容量セルからなる場合について、断面正方形ユニットを例にして説明したが、断面三角形ユニットや断面長方形ユニット等のハニカム焼成体が大容量セルと小容量セルを備えていても良い。
【0158】
図19(a)、図19(b)、図19(c)及び図19(d)は、本発明のハニカム構造体に係る断面異形ユニットの端面の一例を模式的に示す側面図である。
これらの図面に示す断面異形ユニット910、920、960及び970は、それぞれ大容量セル911a、921a、961a、971a及び小容量セル911b、921b、961b、971bが交互に配設されてなる。
大容量セル及び小容量セルの形状は、上述した断面正方形ユニットの場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0159】
図20(a)、図20(b)、図20(c)及び図20(d)は、本発明のハニカム構造体に係る断面三角形ユニットの端面の一例を模式的に示す側面図である。
これらの図面に示す断面三角形ユニット1010、1020、1060及び1070は、それぞれ大容量セル1011a、1021a、1061a、1071a及び小容量セル1011b、1021b、1061b、1071bが交互に配設されてなる。
大容量セル及び小容量セルの形状は、上述した断面正方形ユニットの場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0160】
本発明のハニカム構造体において、上記ハニカム焼成体のセル壁の厚さは、特に限定されないが、0.2〜0.4mmが望ましい。
ハニカム焼成体のセル壁の厚さが0.2mm未満であると、ハニカム構造を支持するセル壁の厚さが薄くなり、ハニカム焼成体の強度を保つことができなくなる。一方、ハニカム焼成体のセル壁の厚さが0.4mmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失の上昇を引き起こすからである。
【0161】
本発明のハニカム構造体において、上記ハニカム焼成体の断面におけるセル密度は特に限定されないが、望ましい下限は、31.0個/cm(200個/in)、望ましい上限は、93個/cm(600個/in)、より望ましい下限は、38.8個/cm(250個/in)、より望ましい上限は、77.5個/cm(500個/in)である。
【0162】
本発明のハニカム構造体の断面の形状は、上述したような円形(正円形)に限定されるものでなく、例えば、楕円形、長円形、又は、三角形の頂点部が曲線になっている形状等であってもよい。
【0163】
本発明のハニカム構造体において、上記ハニカム焼成体の気孔率は特に限定されないが、35〜60%であることが望ましい。
ハニカム焼成体からなるハニカム構造体をフィルタとして使用する場合、ハニカム焼成体の気孔率が35%未満であると、ハニカム焼成体がすぐに目詰まりを起こす。一方、ハニカム焼成体の気孔率が60%を超えると、ハニカム焼成体の強度が低下して容易に破壊されやすくなるからである。
【0164】
本発明のハニカム構造体において、上記ハニカム焼成体の平均気孔径は、5〜30μmであることが望ましい。
ハニカム焼成体からなるハニカム構造体をフィルタとして使用する場合、ハニカム焼成体の平均気孔径が5μm未満であると、ハニカム焼成体が容易に目詰まりを起こす。一方、ハニカム焼成体の平均気孔径が30μmを超えると、パティキュレートがハニカム焼成体の気孔を通り抜けてしまい、該パティキュレートを捕集することができず、フィルタとして機能することができないからである。
【0165】
なお、上記気孔率及び気孔径は、例えば、従来公知の水銀圧入法により測定することができる。
【0166】
本発明のハニカム構造体において、上記ハニカム焼成体の構成材料の主成分は、炭化ケイ素に限定されるわけではなく、他のセラミック原料として、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック等のセラミック粉末が挙げられる。
これらのなかでは、非酸化物セラミックが好ましく、炭化ケイ素又はケイ素含有炭化ケイ素が特に好ましい。耐熱性、機械強度、熱伝導率等に優れるからである。
【0167】
また、本発明のハニカム構造体には、触媒が担持されていてもよい。
ハニカム構造体にCO、HC及びNOx等の排ガス中の有害なガス成分を浄化することが可能となる触媒を担持させることにより、触媒反応により排ガス中の有害なガス成分を充分に浄化することが可能となる。また、PMの燃焼を助ける触媒を担持させることにより、PMをより容易に燃焼除去することが可能となる。
【0168】
これまで、本発明のハニカム構造体としては、セルのいずれか一方の端部が封止されており、フィルタとして機能するハニカム構造体について説明を行ったが、本発明のハニカム構造体は、セルの端部が封止されていなくてもよい。このようなハニカム構造体は、触媒担体として好適に使用することが可能となる。
【0169】
上述した本発明のハニカム構造体の製造方法では、ハニカム焼成体を接着材を介して逐次組み立てる方法について説明したが、セラミックブロックを作製する方法は、特に限定されるものでない。例えば、以下の方法によりセラミックブロックを作製してもよい。
【0170】
はじめに、ハニカム焼成体をスペーサを介して縦横に複数個並列することにより、その長手方向に垂直な断面の形状が作製するセラミックブロックの形状と略同一である、ハニカム焼成体の並列体を作製する。
このとき、各ハニカム焼成体の間にはスペーサの厚さ分の空隙が形成される。
【0171】
続いて、円筒状の筒状体を有する充填装置内にハニカム焼成体の並列体を設置し、ハニカム焼成体の間に形成された空隙、及び、ハニカム焼成体と筒状体の間に形成された空隙にシール材ペーストを充填する。
【0172】
充填装置は、円筒状等の筒状体とシール材ペースト供給器を備えている。筒状体の内径は設置するハニカム焼成体の並列体の直径より少し大きくなっており、ハニカム焼成体の並列体を筒状体の内部空間に設置した際に、筒状体とハニカム焼成体の並列体との間に空隙が形成されるように構成されている。
【0173】
シール材ペースト供給器は、シール材ペースト室に収容されたシール材ペーストをハニカム焼成体間の空隙と、筒状体とハニカム焼成体の並列体の間の空隙に同時に充填することができるように構成されている。
【0174】
このようなハニカム焼成体の並列体と充填装置を用いて、ハニカム焼成体の間の空隙、及び、ハニカム焼成体と筒状体の間に形成された空隙にシール材ペーストを充填する。続いて、シール材ペーストを乾燥固化させることによってハニカム焼成体間の接着材層とシール材層(コート層)とを同時に形成する。
【0175】
すなわち、上記方法はセラミックブロックを作製する結束工程とセラミックブロックの外周面にシール材層を形成するシール材層形成工程を同時に行う方法である。
【符号の説明】
【0176】
10、110、210、310、410、510 ハニカム構造体
20、120、220、320、420、520 セラミックブロック
21a、121a、221a、321a、421a、521a 断面四角形ユニット(ハニカム焼成体)
21b、121b、221b、321b、421b、521b 断面三角形ユニット(ハニカム焼成体)
22、122、222、322、422、522 接着材層
23、123、223、323、423、523 セラミックブロックの外周面
24、124、224、324、424、524 断面四角形ユニット集合体
25、125、225、325、425、525 断面四角形ユニット集合体の外周面
26a、126a、226a、326a、426a、526a 凹部
26b、126b、226b、326b、426b、526b 凸部
30、130、230、330、430、530 シール材層
42a、442a 大容量セル
42b、442b 小容量セル
44、444 セル壁
51、611、621、631、711、712、721 第一の辺
52、612、622、632、712、722 第二の辺
53、613、623、633、713、723 傾斜辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体が接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックと、
前記セラミックブロックの外周面に形成されたシール材層とからなるハニカム構造体であって、
前記セラミックブロックは、長手方向に垂直な断面の形状が四角形である断面四角形ユニットが接着材層を介して複数個結束されてなる断面四角形ユニット集合体と、長手方向に垂直な断面の形状が三角形であり、外周部に外壁が形成された断面三角形ユニットとを含んでなり、
前記断面四角形ユニット集合体の外周面には、凹部及び凸部が階段状に形成されており、
前記凹部には、前記断面三角形ユニットが接着材層を介して存在しており、
前記シール材層の厚さが部分的に異なっていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記凹部は、第一の断面四角形ユニットの第一の側面と、第二の断面四角形ユニットの第二の側面とを含んでなり、
前記第一の側面と、前記断面三角形ユニットの第一の側面とが接着材層を介して互いに接しており、
前記第二の側面と、前記断面三角形ユニットの第二の側面とが接着材層を介して互いに接しており、
前記断面三角形ユニットの第三の側面は、前記断面四角形ユニットのいずれの側面とも互いに接していない請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記断面四角形ユニットの形状は、断面正方形であり、
前記断面三角形ユニットの形状は、断面直角三角形であり、かつ、前記断面四角形ユニットの第一の端面の対角線と、第二の端面の対角線とを通る平面で前記断面四角形ユニットを二等分した形状と一致しており、
前記断面三角形ユニットの第三の側面は、前記直角三角形の斜辺を含む側面である請求項2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記ハニカム焼成体には、断面異形ユニットがさらに含まれており、
前記断面異形ユニットの長手方向に垂直な断面の形状は、少なくとも第一の辺と、前記第一の辺と直角を形成する第二の辺と、前記直角と対向する傾斜辺とを含んで構成されており、
前記断面異形ユニットの外周部には外壁が形成されており、
前記傾斜辺を含む側面は、前記セラミックブロックの外周面を構成している請求項1〜3のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記断面異形ユニットの第二の辺を含む側面が、前記断面三角形ユニットと接着材層を介して接している請求項4に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記シール材層の最も厚い部分の厚みと、前記シール材層の最も薄い部分の厚みとの比が、20:1〜5:3である請求項1〜5のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記シール材層の最も厚い部分の厚みが、5.0〜10.0mmであり、前記シール材層の最も薄い部分の厚みが、0.5〜3.0mmである請求項1〜6のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記ハニカム焼成体の数は25個以上である請求項1〜7のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記ハニカム構造体の長手方向に垂直な断面の形状が円形であり、直径が190mm以上である請求項1〜8のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記セラミックブロックの長手方向に垂直な断面の形状は、八角形である請求項1〜9のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記セラミックブロックの長手方向に垂直な断面の形状は、32角形である請求項1〜9のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項12】
前記多数のセルの前記長手方向に垂直な断面の形状が四角形である請求項1〜11のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項13】
前記多数のセルは、大容量セルと、小容量セルとからなり、前記大容量セルの前記長手方向に垂直な断面の面積は、前記小容量セルの前記長手方向に垂直な断面の面積より大きい請求項1〜12のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項14】
前記大容量セルの前記長手方向に垂直な断面の形状は四角形であり、前記小容量セルの前記長手方向に垂直な断面の形状は四角形である請求項13に記載のハニカム構造体。
【請求項15】
前記大容量セルの前記長手方向に垂直な断面の形状は八角形であり、前記小容量セルの前記長手方向に垂直な断面の形状は四角形である請求項13に記載のハニカム構造体。
【請求項16】
長手方向に垂直な断面の形状が四角形であるセルでは、少なくとも一つの角部に相当する部分が円弧状となっている請求項14又は15に記載のハニカム構造体。
【請求項17】
前記大容量セル及び前記小容量セルの前記長手方向に垂直な断面におけるセルの各辺の形状は、曲線である請求項13〜16のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項18】
前記多数のセルのいずれか一方の端部が封止されている請求項1〜17のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項19】
前記ハニカム構造体の前記長手方向に垂直な断面の形状は、円、長円、楕円、又は、三角形の頂点部が曲線になっている形状である請求項1〜18のいずれかに記載のハニカム構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2011−241139(P2011−241139A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95248(P2011−95248)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】