説明

ハロゲン化銀カラー写真感光材料及び画像形成方法

【課題】 高感度で長期保存後もカブリ濃度変動が小さく、かつ露光時間の違いによる発色濃度差が少ないハロゲン化銀カラー写真感光材料及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】 反射支持体上に塩化銀含有率90モル%以上の感光性ハロゲン化銀粒子を含有するY画像形成層、M画像形成層、C画像形成層を有し、発色現像処理後の波長λnmでのカブリ濃度A(λ)と最大発色濃度B(λ)、及び300mR相当の放射線を照射した後の波長λnmにおけるカブリ濃度A′(λ)が、下式(I)〜(III)で示される条件の少なくとも一つを満足することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(I):B(450)/〔A′(450)−A(450)〕≧60
式(II):B(550)/〔A′(550)−A(550)〕≧160
式(III):B(650)/〔A′(650)−A(650)〕≧260

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化銀写真カラー写真感光材料及び画像形成方法に関するものであり、詳しくは、長期保存時における未露光部のカブリ濃度変動を低減したプリント用のハロゲン化銀カラー写真感光材料及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターの演算能力の向上や、ネットワーク技術の進歩に伴い、画像をデジタルデータとして取り扱う機会が急速に増加している。スキャナなどを用いてデジタルデータ化された画像情報は、コンピューター上で編集加工したり、更には文字やイラスト等のデータを付加することも比較的容易に行える。このようなデジタル化された画像情報に基づいたハードコピーを作成するハードコピー材料としては、例えば、昇華型熱転写プリント、溶融型熱転写プリント、インクジェットプリント、静電転写型プリント、サーモオートクロームプリント、ハロゲン化銀写真感光材料等が挙げられるが、中でもハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう)は、高感度であること、階調性に優れていること、画像保存性に優れていること等、他のプリント材料に比べて非常に優れた特性を有しているため、特に高品質なハードコピーの作成用として今日盛んに用いられている。
【0003】
スキャナなどを用いてデジタルデータ化された画像情報は、コンピューター上で編集加工したり、更には文字やイラスト等のデータを付加することも比較的容易に行えるため、例えば、人物、風景、静物等の写真撮影データに基づいた画像等(以下「シーン画像」と称す)と、文字画像(特に細くて小さな黒文字画像)が混在する画像を扱う機会が増加している。そのため、デジタルデータに基づく画像出力においては、シーン画像はより自然に、文字画像は滲みなく再現させるという2つの要求を同時に満足する必要がある。
【0004】
また、ここ数年のデジタルスチルカメラ、あるいはフィルムスキャナ等の画像入力装置の高解像度化はめざましく、その高品質画像データを活かした画像出力を行うために、出力装置(デジタル露光機)の高解像度化も検討されている。最近では様々なデジタル露光機が製品化されているが、このような露光を行うデジタル画像露光装置として、現在多くの機種が販売されており、また露光光源や制御装置等の進歩と相まって、新しいデジタル画像露光装置も数多く開発されている。これらのデジタル画像露光装置の中でも、露光光源として、レーザーやLEDのように光源波長分布がシャープなものを用いている装置が主流になりつつある。
【0005】
しかし、各種デジタル画像露光装置の普及で多種多様な画像装置が各社から発売されているが、搭載しているレーザーやLEDの種類は統一されているわけではなく、露光装置毎に露光波長、露光時間もまちまちであり、そのためデジタル露光の時間は今までのネガスルー方式のアナログ露光と大きく異なり、10-7秒から10-2秒の露光秒数まで1万〜10万倍の露光時間に差があることから、露光時間に対する許容性が大きく要求されるようになってきた。更に、デジタル露光機は機器の性質上、熱に対する影響を受けやすく、そのため露光時の温度や湿度に対する耐久性も、従来のアナログ露光装置による画像形成よりも強く要求されるようになってきている。また、ミニラボの普及に伴い、お客様からのオーダーを受けてからプリントを仕上げるまでの時間は短い場合で35分以内ということをサービスとして提供している写真店もあり、処理時間を短くすることに対する要求と、処理時間を短くしても美しい画像が特にデジタルで提供するということが市場から強く要望されている。
【0006】
一方、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の画像品質を改良するにあたって、形成する発色色素の色相改良や白地の白色度、すなわちハロゲン化銀カラー写真感光材料の未露光部の濃度及び色味の改良は重要な課題の1つである。特に、白地の白色度が好ましくないと、ハイライト部分の明るさや色味を損なうばかりでなく、発色色素と共存する部分では色濁りを発生させ、その結果、画質を損ない、また画像中で未発色部と発色部が共存する際のコントラストを視覚的に低下させる要因となる。
【0007】
好ましい白色度のハロゲン化銀カラー写真感光材料を実現させるためには、ハロゲン化銀乳剤自身のカブリを低下させることや、現像処理後のハロゲン化銀カラー写真感光材料中に増感色素等の不要な着色物を残留させないような設計を行うことが重要である。
【0008】
上記課題を克服するため、継続的な技術検討がなされており、例えば、特開平6−39936号、特開平6−59421号、特開平6−202291号等には白色顔料や染料を用い、発色現像時間等を規定することにより白地特性を改良する方法が提案されている。
【0009】
一方、ハロゲン化銀のカブリを低下させるためには、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の製造直後のみならず、製造後、露光あるいは現像処理までの保存期間中においても、カブリの増加を抑えることが重要である。
【0010】
ハロゲン化銀カラー写真感光材料の保存中のカブリを抑える手段としては、例えば、特定の構造を有するカブリ防止剤を用いてカブリを抑制する方法(例えば、特許文献1参照。)、カテコール類やハイドロキノン類を用いてカブリを抑制する方法(例えば、特許文献2参照。)、あるいは特定の構造からなる水溶性還元剤を用いてカブリを抑制する方法(例えば、特許文献3参照。)等が提案されている。
【0011】
また、白色度が改良されたハロゲン化銀カラー写真感光材料を長期間にわたり保存した際の自然放射線に起因するカブリを改良する方法としては、イエロー画像形成層に平均粒子サイズが0.70μm以下のハロゲン化銀粒子を用いる方法やイエロー画像形成層の塗布銀量を0.1〜0.23g/m2の範囲で設計する方法が開示されている(例えば、特許文献4、5参照。)。
【0012】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、上記技術によって得られる改良効果は十分ではなく、特にハロゲン化銀カラー写真感光材料を長期にわたって保存した際に、自然放射線によってもたらされるカブリの抑制が不十分であった。自然放射線によるカブリの増加は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料以外のデジタル画像出力材料では生じない現象であり、他の画像出力材料との競合力を高めるためにも、自然放射線によるカブリ耐性に優れ、長期間にわたり保存された際にも安定性に優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料が切望されている。
【特許文献1】特開昭62−215272号公報
【特許文献2】特開平11−143011号公報
【特許文献3】特開平11−102045号公報
【特許文献4】特開2003−43644号公報
【特許文献5】米国特許第2003/87210号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高感度でかつ長期保存した後においても、カブリ濃度変動が小さく、有効発色濃度域が広く、かつ露光時間の違いによる発色濃度差が少ないデジタル画像情報のプリント材料に適したハロゲン化銀カラー写真感光材料及び画像形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0015】
(請求項1)
反射支持体上に、塩化銀含有率が90モル%以上の感光性ハロゲン化銀粒子をそれぞれ含有するイエロー画像形成層、マゼンタ画像形成層、シアン画像形成層を各々少なくとも1層有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、発色現像処理後の波長λnm(λ=450nm、550nm、650nm)における各未露光部のカブリ濃度A(λ)と最大発色濃度B(λ)、及び300mR相当の放射線を照射した後に発色現像処理を施したときの波長λnm(λ=450nm、550nm、650nm)における各未露光部のカブリ濃度A′(λ)が、下式(I)〜(III)で示される条件の少なくとも一つを満足することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0016】
式(I)
B(450)/〔A′(450)−A(450)〕≧60
式(II)
B(550)/〔A′(550)−A(550)〕≧160
式(III)
B(650)/〔A′(650)−A(650)〕≧260
(請求項2)
前記未露光部のカブリ濃度A(λ)と最大発色濃度B(λ)、及び未露光部のカブリ濃度A′(λ)が、下式(I′)〜(III′)で示される条件の少なくとも一つを満足することを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0017】
式(I′)
B(450)/〔A′(450)−A(450)〕≧90
式(II′)
B(550)/〔A′(550)−A(550)〕≧240
式(III′)
B(650)/〔A′(650)−A(650)〕≧360
(請求項3)
各画像形成層の感光波長でそれぞれ0.5秒間の露光した後、発色現像処理して得られるイエロー、マゼンタ及びシアンの各画像形成層の反射濃度をDY(0.5)、DM(0.5)、DC(0.5)とし、各画像形成層の感光波長でそれぞれ10-6秒間の露光した後、発色現像処理して得られるイエロー、マゼンタ及びシアンの各画像形成層の反射濃度をDY(10-6)、DM(10-6)、DC(10-6)とした時、下式(IV)〜(VI)で示される条件の少なくとも一つを満足することを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0018】
式(IV)
DY(0.5)−DY(10-6)≦0.2
式(V)
DM(0.5)−DM(10-6)≦0.2
式(VI)
DC(0.5)−DC(10-6)≦0.2
〔式中、DY、DM、DCは、各画像形成層の感光波長で露光後に発色現像処理し、反射濃度0.7を得るのに要する露光量より0.5LogE多い露光量における反射濃度を表す。〕
(請求項4)
各画像形成層の少なくとも1層に含有される感光性ハロゲン化銀粒子が、2種類以上のカルコゲン化合物を用いて化学増感されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0019】
(請求項5)
各画像形成層の少なくとも1層に含有される感光性ハロゲン化銀粒子に対する増感色素の添加量が、下式(VII)〜(IX)で示される条件の少なくとも一つを満足する条件で分光増感されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0020】
式(VII)
VY>3.2×10-4/LY
式(VIII)
VM>2.3×10-4/LM
式(IX)
VC>0.6×10-4/LC
〔式中、VY、VM、VCは、それぞれの画像形成層に含有される感光性ハロゲン化銀粒子1モル(銀換算)に対する増感色素の添加モル数(mol/Agmol)を表す。またLY、LM、LCは、それぞれの画像形成層に含有される感光性ハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズ(μm)を表す。〕
(請求項6)
各画像形成層の少なくとも1層に含有される感光性ハロゲン化銀粒子に対する増感色素の添加量が、下式(VII′)〜(IX′)で示される条件の少なくとも一つを満足する条件で分光増感されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0021】
式(VII′)
VY≧3.5×10-4/LY
式(VIII′)
VM≧2.5×10-4/LM
式(IX′)
VC≧0.8×10-4/LC
〔式中、VY,VM,VC,LY,LM及びLCは前記式(VII),(VIII)及び式(IX)におけるそれらと同義である。〕
(請求項7)
各画像形成層の少なくとも1層に含有される感光性ハロゲン化銀粒子が、水配位子を有する8族金属錯体及び有機配位子を有する8族金属錯体から選ばれる少なくとも1種を、1×10-8〜1×10-4モル/Agモル含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0022】
(請求項8)
各画像形成層に含まれる銀量の総和が、0.51g/m2以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0023】
(請求項9)
各画像形成層に含まれる銀量の総和が、0.48g/m2以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0024】
(請求項10)
前記イエロー画像形成層に含まれる銀量の総和が、0.23g/m2以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0025】
(請求項11)
請求項1〜10のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料を走査露光した後、0.1〜30秒で発色現像処理を開始し、かつ5〜30秒の発色現像処理を行うことを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高感度でかつ長期保存した後においても、カブリ濃度変動が小さく、有効発色濃度域が広く、かつ露光時間の違いによる発色濃度差が少ないデジタル画像情報のプリント材料に適したハロゲン化銀カラー写真感光材料及び画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0028】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、反射支持体上に、塩化銀含有率が90モル%以上の感光性ハロゲン化銀粒子をそれぞれ含有するイエロー画像形成層、マゼンタ画像形成層、シアン画像形成層を各々少なくとも1層有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、発色現像処理後の波長λnm(λ=450nm、550nm、650nm)における各未露光部のカブリ濃度A(λ)と最大発色濃度B(λ)、及び300mR相当の放射線を照射した後に発色現像処理を施したときの波長λnm(λ=450nm、550nm、650nm)における各未露光部のカブリ濃度A′(λ)が、前式(I)〜(III)で示される条件の少なくとも一つを満足するハロゲン化銀カラー写真感光材料により、高感度でかつ長期保存した後においても、カブリ濃度変動が小さく、有効発色濃度域が広く、かつ露光時間の違いによる発色濃度差が少ないデジタル画像情報のプリント材料に適したハロゲン化銀カラー写真感光材料を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0029】
以下、本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料の詳細について説明する。
【0030】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう)は、反射支持体上に、イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層と、マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層と、シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層とをそれぞれ少なくとも一層有する。本発明において、前記イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はイエロー画像形成層として、前記マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はマゼンタ画像形成層として、及び前記シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はシアン画像形成層として機能する。このイエロー画像形成層、マゼンタ画像形成層及びシアン画像形成層の各々に含有されるハロゲン化銀乳剤は、相互に異なる波長領域の光(例えば、青色領域、緑色領域、及び赤色領域の光)に対して、感光性を有しているのが好ましい。また、本発明の感光材料は、前記イエロー画像形成層、マゼンタ画像形成層及びシアン画像形成層以外にも、必要に応じて、後述の親水性コロイド層、アンチハレーション層、中間層、あるいは着色層を有していてもよい。
【0031】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料では、発色現像処理後の各波長λnm(λ=450nm、550nm、650nm)における未露光部のカブリ濃度をA(λ)とし、最大発色濃度をB(λ)とし、300mR相当の放射線を照射した後に発色現像処理を施したときの波長λnm(λ=450nm、550nm、650nm)における未露光部のカブリ濃度をA′(λ)とした時、前式(I)〜(III)で示される条件の少なくとも一つを満足することを特徴とする。
【0032】
すなわち、具体的には、前記式(I)で規定されるイエロー画像形成層におけるイエロー濃度が、B(450)/〔A′(450)−A(450)〕≧60の条件を満たすことが特徴の1つであり、更には前記式(I′)で規定される様にB(450)/〔A′(450)−A(450)〕≧90であることが好ましく、及び/または、前記式(II)で規定されるマゼンタ画像形成層におけるマゼンタ濃度が、B(550)/〔A′(550)−A(550)〕≧160の条件を満たすことが特徴の1つであり、更には前記式(II′)で規定される様にB(550)/〔A′(550)−A(550)〕≧240であることが好ましく、及び/または、前記式(III)で規定されるシアン画像形成層におけるシアン濃度が、B(650)/〔A′(650)−A(650)〕≧260の条件を満たすことが特徴の1つであり、更には前記式(III′)で規定される様にB(650)/〔A′(650)−A(650)〕≧360以上であることが好ましい。
【0033】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、長期保存後のより良好な白地特性を実現する観点から、発色現像処理後の各波長λnm(λ=450nm、550nm、650nm)における未露光部のカブリ濃度A(λ)及び300mR相当の放射線を照射した後に発色現像処理を施したときの波長λnm(λ=450nm、550nm、650nm)における未露光部のカブリ濃度A′(λ)はいずれも小さいほど好ましく、また、A′値とA値の差は小さいほど、放射線によるカブリ濃度の増加が少ないことになる。
【0034】
本発明において、波長λnmにおける未露光部のカブリ濃度A(λ)は、現像処理済みの試料を、25℃、50%RH条件下で、積分球開口率2%、スリット巾5nm、スペキュラー光を除いたところでの反射吸光度として測定される。反射吸光度の測定装置の代表的な例としては、日立製作所社製のU−3410型スペクトロフォトメーターが挙げられる。最大発色濃度B(λ)及び放射線を照射後の波長λnmにおける未露光部のカブリ濃度A′(λ)も、上記A(λ)と同様方法に従って測定して求めることができる。
【0035】
また、本発明において、発色現像処理とは、ハロゲン化銀カラー写真感光材料に対し各メーカーより指定されている発色現像処理を適用することができ、例えば、ハロゲン化銀カラー写真感光材料がカラーペーパーである場合、プロセスRA−4シリーズ処理(イーストマンコダック社製)あるいはプロセスCPKシリーズ処理(コニカミノルタフォトーメージング社製)等を用いることができ、また、T.H.ジェームズ著、セオリイ オブ ザ ホトグラフィック プロセス第4版(The Theory of The Photografic Process Forth Edition)第291頁〜第334頁及びジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサエティ(Journa1 of the American Chemical Society)第73巻、第3,100頁(1951)に記載されている、それ自体公知の現像剤を使用することができ、また、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)17643 28〜29頁、RD18716 615頁及びRD308119 XIXに記載された通常の方法によって、現像処理することができる。
【0036】
また、未露光部のカブリ濃度A(λ)、A′(λ)及び最大発色濃度B(λ)は、例えば、ハロゲン化銀カラー写真感光材料に、濃度を段階的に変化させた光学ウェッジを介して十分な露光を付与した後、上記の発色現像処理を施した後、光学ウェッジの透過率がほぼ0%の未露光部と、透過率がほぼ100%である最大露光部の発色濃度(最大発色濃度)を測定して求めることができる。
【0037】
また、未露光部のカブリ濃度A′(λ)の測定に際しては、発色現像処理前に、ハロゲン化銀カラー写真感光材料に、例えば、137Csを線源に用いて照射線量が300mRになるように放射線照射を行った後、上記方法に従って発色現像処理及び濃度測定により求めることができる。
【0038】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料において、上記で規定する式(I)〜(III)、あるいは式(I′)〜(III′)のいずれか1つを実現する手段として、特に制限はなく、例えば、各画像形成層における未露光部のカブリ濃度A(λ)に対しては、用いるハロゲン化銀乳剤におけるハロゲン化銀粒子の組成、粒子径、形状、化学増感条件や、カブリ抑制剤あるいは安定剤、塗布銀量、増感色素量、バインダー量、硬膜度等の条件を適宜選択、あるいは組み合わせて行うことが好ましく、また、300mR相当の放射線を照射した後の未露光部のカブリ濃度A′(λ)に関しては、上記のカブリ濃度A(λ)の制御因子の中で、特に、ハロゲン化銀粒子の粒子径、化学増感条件や、塗布銀量、増感色素量を適宜選択、あるいは組み合わせて行うことが好ましい。
【0039】
また、最大発色濃度B(λ)を所望の条件とするには、例えば、各画像形成層で用いるカプラーの種類、添加量、あるいはハロゲン化銀粒子の粒径、ハロゲン組成等を適宜選択、あるいは組み合わせて行うことが好ましい。
【0040】
次いで、本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料の構成要素の詳細について、順次説明する。
【0041】
本発明においては、各色画像形成層が、塩化銀含有率が90モル%以上のハロゲン化銀乳剤を含有することを特徴とする。
【0042】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤を構成するハロゲン化銀粒子は、塩化銀含有率が90モル%以上であることを特徴とするが、塩化銀含有率が93モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることが更に好ましい。また、沃化銀含有率は0.05〜2モル%であることが好ましく、0.05〜1モル%であることが更に好ましい。
【0043】
本発明に係るハロゲン化銀粒子には、高照度短時間露光における高濃度域での特性曲線の軟調化を軽減する観点から、粒子内部に少なくとも1つの沃化銀局在相を有することが好ましい。本発明において粒子内部とは、ハロゲン化銀粒子において粒子表面を除いたハロゲン化銀相をいう。本発明において沃化銀局在相とは、本発明に係るハロゲン化銀粒子の平均沃化銀含有率の2倍以上の沃化銀含有率の沃化銀を含むハロゲン化銀相であり、ハロゲン化銀粒子の平均沃化銀含有率の3倍以上の沃化銀含有率の沃化銀を含むことが好ましく、5倍以上の沃化銀含有率の沃化銀を含むことが好ましい。
【0044】
本発明において上記沃化銀局在相の位置は粒子中心からハロゲン化銀体積で60%以上外側に存在することが好ましく、70%以上外側であることが更に好ましく、80%以上外側であることが最も好ましい。
【0045】
上記沃化銀局在相に好ましい形態の一つはハロゲン化銀粒子内部において該沃化銀局在相が層状に存在する(以下、沃化銀局在層ともいう)ことであり、該沃化銀局在層を2層以上導入することも好ましく、その場合は、主層を上記の条件で導入し最大ヨウ化物濃度未満である層(以下副層)の少なくとも一つを主層よりも更に粒子表面近くに導入することが好ましい。主層および副層のI濃度は目的に応じて任意に選択することが出来る。潜像安定性の観点からは、主層は可能な限り高濃度が好ましく、副層は主層よりも低濃度であることが好ましい。
【0046】
本発明において、沃化銀局在相の他の好ましい形態はハロゲン化銀粒子の頂点近傍や稜線近傍に該沃化銀局在相が存在することであり、上記沃化銀局在層と併用することも好ましい。
【0047】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤中のハロゲン化銀粒子は臭化銀含有率が0.1〜10モル%であることが好ましく、0.5〜8モル%であることがより好ましく、2〜8モル%であることが更に好ましい。
【0048】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤においては臭化銀を高濃度に含有する部分を有するハロゲン化銀乳剤も好ましく用いられ、この場合、高濃度に臭化銀を含有する部分は、ハロゲン化銀乳剤粒子にエピタキシー接合していても、いわゆるコア・シェル乳剤であってもよいし、完全な層を形成せず単に部分的に組成の異なる領域が存在するだけであってもよい。また、組成は連続的に変化してもよいし不連続に変化してもよいが、ハロゲン化銀粒子が最外シェルの少なくとも一部に臭化銀局在相を有することが好ましく、頂点近傍に臭化銀局在相を有することが更に好ましい。
【0049】
本発明において臭化銀局在相とは、本発明に係るハロゲン化銀粒子の平均臭化銀含有率の2倍以上の臭化銀含有率の臭化銀を含むハロゲン化銀相であり、ハロゲン化銀粒子の平均臭化銀含有率の3倍以上の臭化銀含有率の臭化銀を含むことが好ましく、5倍以上の臭化銀含有率臭化銀を含むことが好ましい。
【0050】
該臭化銀局在相中には、後記の8族金属化合物を含有することが好ましい。この場合用いられる8族金属化合物はイリジウム錯体であることが好ましい。
【0051】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤が沃化銀を含有する場合においては、ハロゲン化銀粒子の沃化銀含有率の粒子間変動係数が40%未満であることが好ましく、30%未満であることが好ましく、20%未満であることが更に好ましい。
【0052】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤が臭化銀を含有する場合においては、ハロゲン化銀粒子の臭化銀含有率の粒子間変動係数が30%未満であることが好ましく、20%未満であることがより好ましい。
【0053】
ハロゲン化銀粒子の上記臭化銀含有率及び沃化銀含有率は、EPMA法(Electron Probe Micro Analyzer法)により求める。具体的には、ハロゲン化銀粒子を互いに接触しないようによく分散させた試料を作製し、液体窒素で−100℃以下に冷却しながら電子ビームを照射し、個々のハロゲン化銀粒子から放射される銀、臭素、及び沃素の特性X線強度を求めることにより、該個々のハロゲン化銀粒子の臭化銀含有率及び沃化銀含有率が決定できる。
【0054】
上記方法により、個々のハロゲン化銀粒子について求めたハロゲン化銀粒子の臭化銀含有率を300個以上のハロゲン化銀粒子について求め、平均したものを平均臭化銀含有率とし、本発明に係るハロゲン化銀粒子の臭化銀含有率の粒子間変動係数は、下記計算式により求めるものとする。
【0055】
臭化銀含有率の粒子間変動係数=(ハロゲン化銀粒子の臭化銀含有率の標準偏差)/(平均臭化銀含有率)×100(%)
上記方法により、個々のハロゲン化銀粒子について求めたハロゲン化銀粒子の沃化銀含有率を300個以上のハロゲン化銀粒子について求め、平均したものを平均沃化銀含有率とし、本発明に係るハロゲン化銀粒子の沃化銀含有率の粒子間変動係数は、下記計算式により求めるものとする。
【0056】
沃化銀含有率の粒子間変動係数=(ハロゲン化銀粒子の沃化銀含有率の標準偏差)/(平均沃化銀含有率)×100(%)
本発明において、ハロゲン化銀粒子に沃化銀を含有させるには、種々の沃度化合物を使用することが出来る。例えば、ヨウ化カリウム水溶液のようなヨウ化物塩水溶液を用いる方法、“無機化合物・錯体辞典”中原勝儼著,講談社944頁等記載のポリヨウ化物を用いる方法、特開平2−68538号等に開示されているヨウ化銀を含むハロゲン化銀微粒子あるいはヨウ化物イオン放出剤を用いる方法等であるが、ヨウ化物塩水溶液、ヨウ化銀を含むハロゲン化銀微粒子、ヨウ化物イオン放出剤を用いる方法を用いることが好ましい。本発明におけるハロゲン化銀粒子中の沃化銀含有率及び沃化銀局在相を形成する場合の該沃化銀局在相の沃化銀含有率はこれら沃化物を含む添加液の濃度及び量で任意に調整することができる。
【0057】
本発明において、ハロゲン化銀粒子に臭化銀を含有させるには、種々の臭化物を使用することが出来る。例えば、臭化カリウム水溶液のような臭化物塩水溶液を用いる方法、特開平2−68538号等に開示されている臭化銀を含むハロゲン化銀微粒子あるいは臭化物イオン放出剤を用いる方法等であるが、臭化物塩水溶液、臭化銀を含むハロゲン化銀微粒子、臭化物イオン放出剤を用いることが好ましい。本発明におけるハロゲン化銀粒子中の臭化銀含有率及び臭化銀局在相を形成する場合の該臭化銀局在相の臭化銀含有率、更にはハロゲン化銀粒子表面の平均臭化銀含有率はこれら臭化物を含む添加液の濃度及び量で任意に調整することができる。
【0058】
本発明においてハロゲン化銀微粒子を供給することによりハロゲン化銀相に沃化銀及び/または臭化銀を含有させる場合には、ハロゲン化銀微粒子は平均粒径が0.05μm以下であることが好ましく、0.001〜0.03μmであることがより好ましく、0.001〜0.02μmであることが更に好ましい。該ハロゲン化銀微粒子の製造においては、平均分子量が40000以下の低分子量ゼラチンを用いることが好ましい。該低分子量ゼラチンの平均分子量は5000〜25000であることがより好ましく、5000〜15000であることが更に好ましい。該ハロゲン化銀微粒子の形成温度は40℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましく、5〜20℃であることが更に好ましい。該ハロゲン化銀微粒子の製造には公知の方法及び製造装置を用いることができるが、特開2000−112049号記載の連続法核生成装置を用いることが好ましい。
【0059】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤においては、粒子内部に下記一般式(S)で表される化合物を含有することが、本発明の効果を更に効果的に発揮する観点から好ましい。
【0060】
【化1】

【0061】
上記一般式(S)において、Qは、5員もしくは6員の含窒素複素環を表し、M1は水素原子、アルカリ金属原子もしくは1価のカチオンを形成するに必要な原子群を表す。
【0062】
また、上記一般式(S)で表される化合物は、下記一般式(S−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0063】
【化2】

【0064】
上記一般式(S−2)において、Arは
【0065】
【化3】

【0066】
で表される基を表す。式中、R2はアルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基もしくはその塩、スルホ基もしくはその塩、ヒドロキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイル基又はスルホンアミド基を表す。nは0〜2の整数を表す。M1は一般式(S)におけるM1と同義である。
【0067】
本発明においてハロゲン化銀粒子内部とは、ハロゲン化銀粒子表面を除いたハロゲン化銀相をいう。
【0068】
前記一般式(S)で示される化合物は、例えば、特公昭40−28496号、特開昭50−89034号、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイティ(J.Chem.Soc.)49、1748(1927)、同4237(1952)、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.)39、2469(1965)、米国特許2,824,001号、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイティ、1723(1951)、特開昭56−111846号、米国特許1,275,701号、米国特許3,266,897号、同2,403,927号等に記載の化合物を包含し、合成法もこれらの文献に記載の方法に準じて合成することができる。
【0069】
本発明においてハロゲン化銀粒子内部における前記一般式(S)で表される化合物の含有量は1×10-8〜1×10-1モル/モルAgXが好ましく、1×10-7〜1×10-2モル/モルAgXがより好ましい。
【0070】
本発明においては、ハロゲン化銀粒子が外周部に転位線を有する正常晶粒子であることが好ましい。本発明において、ハロゲン化銀粒子が外周部に転位線を有するとは、外周部に転位線を有するハロゲン化銀粒子が全ハロゲン化銀粒子中の50%(個数)以上を占めることをいい、70%(個数)以上を占めることが好ましく、80%(個数)以上を占めることが更に好ましい。
【0071】
本発明においてハロゲン化銀の外周部とは、本発明に係る立方体ハロゲン化銀粒子の(100)面垂直方向からの投影像における辺を含み、辺から内側へ垂直方向にハロゲン化銀粒子の直径の20%に相当する距離までにある領域をいう。
【0072】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤においては、ハロゲン化銀粒子の外周部に5本以上の転位線を有するハロゲン化銀粒子が全ハロゲン化銀粒子中の50%(個数)以上を占めることが好ましく、10本以上の転位線を有するハロゲン化銀粒子が全ハロゲン化銀粒子中の50%(個数)以上を占めることがより好ましく、20本以上の転位線を有するハロゲン化銀粒子が全ハロゲン化銀粒子中の50%(個数)以上を占めることが更に好ましい。
【0073】
本発明に係るハロゲン化銀粒子においては、上記外周部以外の領域に転位線が存在していてもよい。
【0074】
本発明に係るハロゲン化銀粒子の転位線は、例えばJ.F.Hamilton著:Photo.Sci.Eng.11(1967),57頁やT.Shiozawa著:J.Soc.Phot.Sci.Japan 35(1972),213頁に記載の方法、即ち低温での透過型電子顕微鏡を用いた方法により観察することができる。即ち、乳剤から粒子に転位が発生するほどの圧力を掛けないように注意して取り出したハロゲン化銀粒子を、電子顕微鏡用のメッシュに載せ、電子線による損傷(プリントアウト等)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。この時、粒子の厚みが厚いほど電子線が透過し難くなるので、高圧型(0.25μmの厚さに対して200kV)の電子顕微鏡を用いた方が、より鮮明に観察することができる。粒子厚さが更に厚い場合は更に高加速電圧の電子顕微鏡を用いることが好ましい。
【0075】
粒子厚の関係で電子線の透過観察が困難な場合には、ハロゲン化銀粒子を転位が発生する程の圧力を掛けないよう細心の注意を払いつつ、(100)面に平行に0.25μm以下の薄片に切り出し、その薄片を観察することにより、転位線の有無を確認することができる。
【0076】
本発明に係るハロゲン化銀粒子においては、ハロゲン化銀粒子間における転位線本数の変動係数が30%以下が好ましく、20%以下が好ましい。
【0077】
該転位線本数の変動係数は、ハロゲン化銀粒子の転位線を300個以上の粒子について上記の方法により観察し、転位線本数の標準偏差をσ本、平均値をα本とすると、粒子間変動係数K(%)は次式で求めることができる。
【0078】
K(%)=(σ/α)×100
本発明において、前記の種々の沃度化合物及びまたは臭化物を使用して局所的なに沃化銀含有相及び/または臭化銀含有相を形成する操作を利用してハロゲン化銀粒子に転位線を導入することができる。例えば、ヨウ化カリウム水溶液のようなヨウ化物塩水溶液、臭化カリウム水溶液のような臭化物塩水溶液を用いる方法、“無機化合物・錯体辞典”中原勝儼著,講談社944頁等記載のポリヨウ化物を用いる方法、特開平2−68538号等に開示されているヨウ化銀及び/または臭化銀を含むハロゲン化銀微粒子あるいはヨウ化物イオン放出剤、臭化物イオン放出剤を用いる方法等であるが、ヨウ化物イオン放出剤及び/または臭化物イオン放出剤を用いることが好ましく、特開平11−271912号及び特開2000−250164号記載の沃素イオン放出化合物及び/または臭化物イオン放出化合物を用いることが特に好ましい。
【0079】
本発明におけるハロゲン化銀粒子中の転位線の本数、転位線を形成する領域は上記沃素イオン放出化合物及び/または臭化物イオン放出化合物の添加量、沃素イオン及び/または臭化物イオンを放出させるpHやその際のハロゲン化銀粒子の粒子間距離、ハロゲン化銀粒子の成長温度、あるいは、沃素イオン及び/または臭化物イオンを放出させる速度の異なる化合物種の適宜選択によって任意に制御することが出来る。
【0080】
本発明に係るハロゲン化銀粒子の形成時におけるヨウ化物イオン放出剤及び/または臭化物イオン放出剤の添加位置は最終的なハロゲン化銀粒子体積に対して50〜98%であることが好ましく、70〜95%であることがより好ましい。ヨウ化物イオン放出剤及び/または臭化物イオン放出剤の添加量はハロゲン化銀に対して0.02〜8モル%であることが好ましく、0.04〜5モル%であることがより好ましい。
【0081】
ヨウ化物イオン放出剤及び/または臭化物イオン放出剤からヨウ化物イオン及び/または臭化物イオンを放出させるpHは5.0〜12.0が好ましく、6.0〜11.0がより好ましい。ヨウ化物イオン放出剤及び/または臭化物イオン放出剤からヨウ化物イオン及び/または臭化物イオンを放出させる温度は10℃〜80℃が好ましく、20℃〜70℃がより好ましい。ヨウ化物イオン放出剤及び/または臭化物イオン放出剤からヨウ化物イオン及び/または臭化物イオンを放出させる際の粒子間距離を任意に制御する為には限外濾過を用いた濃縮を行うことが好ましい。ヨウ化物イオン放出剤及び/または臭化物イオン放出剤は、必要に応じて任意に2種類以上を併用することもできる。
【0082】
本発明に係るハロゲン化銀粒子の形状は任意のものを用いることができるが、好ましい一つの例は、(100)面を結晶表面として有する立方体である。また、米国特許4,183,756号、同4,225,666号、特開昭55−26589号、特公昭55−42737号や、ザ・ジャーナル・オブ・フォトグラフィック・サイエンス(J.Photogr.Sci.)21巻,39頁(1973年)等の文献に記載された方法等により、八面体、十四面体、二十四面体、十二面体等の形状を有する粒子を造り、これを用いることもできる。更に、正常晶以外の双晶面を有する粒子や平板状粒子を用いてもよい。
【0083】
本発明に係るハロゲン化銀粒子は、単一の形状からなる粒子が好ましく用いられるが、単分散のハロゲン化銀乳剤を二種以上同一層に添加する事もできる。
【0084】
本発明に係るハロゲン化銀粒子の粒径は特に制限はないが、迅速処理性及び、感度など、他の写真性能などを考慮すると好ましくは0.1〜5.0μm、更に好ましくは0.2〜3.0μmの範囲である。特に立方体粒子を用いる場合は、好ましくは、0.1〜1.2μm、更に好ましくは、0.15〜1.0μmの範囲である。
【0085】
本発明のハロゲン化銀粒子の粒径の分布は、好ましくは変動係数が0.22以下、更に好ましくは 0.15以下、より好ましくは0.10以下の単分散ハロゲン化銀粒子である。ここで変動係数は、粒径分布の広さを表す係数であり、次式によって定義される。
【0086】
変動係数=S/R
(ここに、S は粒径分布の標準偏差、R は平均粒径を表す。)
ここでいう粒径とは、球状のハロゲン化銀粒子の場合はその直径、また、立方体や球状以外の形状の粒子の場合は、その投影像を同面積の円像に換算したときの直径を表す。
【0087】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料では、水配位子を有する8族金属錯体及び有機配位子を有する8族金属錯体から選ばれる少なくとも1種をハロゲン化銀粒子内部に含む塩化銀含有率が90モル%以上のハロゲン化銀乳剤を含有することが好ましい。
【0088】
以下、本発明に係る水配位子を有する8族金属錯体、有機配位子を有する8族金属錯体について説明する。
【0089】
本発明において用いられる8族金属錯体は鉄、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、コバルト、白金の金属錯体であることが好ましい。該金属錯体は、6配位錯体、5配位錯体、4配位錯体、2配位錯体等を用いることができるが、6配位錯体、4配位錯体が好ましい。上記水配位子及び/または有機配位子を1つ以上有する8族金属錯体から選ばれる少なくとも1種は、イリジウム錯体であることが好ましい。
【0090】
本発明において、8族金属錯体を構成する配位子は、カルボニル配位子、フルミネート配位子、チオシアネート配位子、ニトロシル配位子、チオニトロシル配位子、シアノ配位子、水配位子、ハロゲン配位子、あるいはアンモニア、水酸化物、亜硝酸、亜硫酸、過酸化物の配位子及び有機配位子等、任意のものを用いることができるが、ニトロシル配位子、チオニトロシル配位子、シアノ配位子、水配位子、ハロゲン配位子及び有機配位子から選ばれる1つ以上の配位子を含有することが好ましい。
【0091】
本発明において有機配位子とは、1つ以上のH−C、C−CあるいはC−N−H結合を含み、金属イオンに配位可能な化合物をいう。本発明に用いられる有機配位子は、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピラン、ピリダジン、イミダゾール、チアゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ピラゾール、フラン、フラザン、オキサゾール、イソオキサゾール、チオフェン、フェナントロリン、ビピリジン、エチレンジアミンから選ばれる化合物、イオン、あるいはこれらの化合物に置換基を導入した化合物であることが好ましい。
【0092】
本発明においてより好ましく用いられる水配位子及び/または有機配位子を1つ以上有するイリジウム錯体及び錯イオンの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。また、カウンターカチオンはカリウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン等、任意のものを用いることができる。また、金属錯体が陽イオンである場合に、対陰イオンとして、硝酸イオン、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン等、当業界で公知のものを用いることができる。
【0093】
(A−1)K[IrBr5(H2O)]
(A−2)K2[IrBr5(H2O)]
(A−3)K3[IrBr5(H2O)]
(A−4)K4[IrBr5(H2O)]
(A−5)K[IrBr4(H2O)2
(A−6)[IrBr4(H2O)2
(A−7)[IrBr3(H2O)3
(A−8)[IrBr3(H2O)3]Br
(A−9)K[IrCl5(H2O)]
(A−10)K2[IrCl5(H2O)]
(A−11)K3[IrCl5(H2O)]
(A−12)K4[IrCl5(H2O)]
(A−13)K[IrCl4(H2O)2
(A−14)[IrCl4(H2O)2
(A−15)[IrCl3(H2O)3
(A−16)[IrBr3(H2O)3]Cl
(A−17)[Ir(bipy)Cl4-
(A−18)[Ir(bipy)Br4-
(A−19)[Ir(bipy)32+
(A−20)[Ir(py)62+
(A−21)[Ir(phen)32+
(A−22)[IrCl2(bipy)20
(A−23)[Ir(thia)62+
(A−24)[IrCl5(thia)]2-
(A−25)[IrCl4(thia)21-
(A−26)[IrCl5(5−methylthia)]2-
(A−27)[IrCl4(5−methylthia)21-
(A−28)[IrBr5(thia)]2-
(A−29)[IrBr4(thia)21-
(A−30)[IrBr5(5−methylthia)]2-
(A−31)[IrBr4(5−methylthia)21-
(A−32)[Ir(phen)(bipy)32+
(A−33)[Ir(im)62+
(A−34)[IrCl5(im)]2-
(A−35)[IrCl4(im)21-
(A−36)[IrBr5(im)]2-
(A−37)[IrBr4(im)21-
(A−38)[Ir(NCS)2(bipy)20
(A−39)[Ir(CN)2(bipy)20
(A−40)[IrCl2(bipy)30
(A−41)[IrCl2(bipy)20
(A−42)[Ir(phen)(bipy)22+
(A−43)[Ir(NCS)2(bipy)20
(A−44)[Ir(NCS)2(bipy)20
(A−45)[Ir(bipy)2(H2O)(bipy′)]2+
(A−46)[Ir(bipy)2(OH)(bipy′)]+
(A−47)[Ir(bipy)Cl42-
(A−48)[Ir(bipy)33+
(A−49)[Ir(py)63+
(A−50)[Ir(phen)33+
(A−51)[IrCl2(bipy)2+
(A−52)[Ir(thia)63+
(A−53)[Ir(phen)(bipy)33+
(A−54)[Ir(im)63+
(A−55)[Ir(NCS)2(bipy)2+
(A−56)[Ir(CN)2(bipy)2+
(A−57)[IrCl2(bipy)3+
(A−58)[IrCl2(bipy)2+
(A−59)[Ir(phen)(bipy)23+
(A−60)[Ir(NCS)2(bipy)2+
(A−61)[Ir(NCS)2(bipy)2+
(A−62)[Ir(bipy)2(H2O)(bipy′)]3+
(A−63)[Ir(bipy)2(OH)(bipy′)]2+
なお、上記8族金属化合物例または8族金属錯体例において、略号は下記を表す。
【0094】
bipy=ビピリジン二座配位子
bipy′=ビピリジン単座配位子
im=イミダゾール
py=ピリジン
phen=フェナントロリン
thia=チアゾール
5−methylthia=5−メチルチアゾール
本発明に係るハロゲン化銀乳剤の形成においては、上記水配位子または有機配位子を1つ以上有する8族金属錯体の1種類以上を添加する以外に、更に下記一般式(A)で表される8族金属錯体の少なくとも1種類以上を添加することが好ましい。
【0095】
一般式(A)
Rn[MXm6-m
式中、Mは周期表8族元素から選択される金属を表し、鉄、コバルト、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、白金であり、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウムであることがより好ましい。Rはアルカリ金属を表し好ましくはセシウム、ナトリウムまたはカリウムである。mは0〜6、nは0〜4の整数を表す。X及びYは配位子を表し、カルボニル配位子、フルミネート配位子、チオシアネート配位子、ニトロシル配位子、チオニトロシル配位子、シアノ配位子、ハロゲン配位子、あるいはアンモニア、水酸化物、亜硝酸、亜硫酸、過酸化物の配位子を表す。
【0096】
以下に本発明において用いられる8族金属化合物、8族金属錯体の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。また、カウンターカチオンはカリウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン等、任意のものを用いることができる。また、金属錯体が陽イオンである場合に、対陰イオンとして、硝酸イオン、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン等、当業界で公知のものを用いることができる。
【0097】
(E−1)K2[IrCl6
(E−2)K3[IrCl6
(E−3)K2[Ir(CN)6
(E−4)K3[Ir(CN)6
(E−5)K2[Ir(NO)(CN)5
(E−6)K2[IrBr6
(E−7)K3[IrBr6
(E−8)K2[IrBr4Cl2
(E−9)K3[IrBr4Cl2
(E−10)K2[IrBr3Cl3
(E−11)K3[IrBr3Cl3
(E−12)K2[IrBr5Cl]
(E−13)K3[IrBr5Cl]
(E−14)K2[IrBr5I]
(E−15)K3[IrBr5I]
(E−16)K3[IrBr(CN)5
(E−17)K3[IrBr2(CN)4
(E−18)K2[Ir(CN)5(H2O)]
(E−19)K3[Ir(CN)5(H2O)]
(E−20)K[Ir(NO)Cl5
(E−21)K[Ir(NS)Cl5
(F−1)K2[RuCl6
(F−2)K2[FeCl6
(F−3)K2[PtCl6
(F−4)K3[RhCl6
(F−5)K2[OsCl6
(F−6)K2[RuBr6
(F−7)K2[FeBr6
(F−8)K2[PtBr6
(F−9)K3[RhBr6
(F−10)K2[OsBr6
(F−11)K2[Pt(SCN)4
(F−12)K4[Ru(CNO)6
(F−13)K4[Fe(CNO)6
(F−14)K2[Pt(CNO)4
(F−15)K3[Co(NH36
(F−16)K3[Co(CNO)6
(F−17)K4[Os(CNO)6
(F−18)Cs2[Os(NO)Cl5
(F−19)K2[Ru(NO)Cl5
(F−20)K2[Ru(CO)Cl5
(F−21)Cs2[Os(CO)Cl5
(F−22)K2[Fe(NO)Cl5
(F−23)K2[Ru(NO)Br5
(F−24)K2[Ru(NO)I5
(F−25)K2[Ru(NS)Cl5
(F−26)K2[Os(NS)Cl5
(F−27)K2[Ru(NS)Br5
(F−28)K2[Ru(NS)(SCN)5
(F−29)K2[RuBr6
(F−30)K2[FeBr6
(F−31)K4[Fe(CN)6
(F−32)K3[Fe(CN)6
(F−33)K4[Ru(CN)6
(F−34)K4[Os(CN)6
(F−35)K3[Rh(CN)6
(F−36)K4[RuCl(CN)5
(F−37)K4[OsBr(CN)5
(F−38)K4[OsCl(CN)5
(F−39)K3[RhF(CN)5
(F−40)K3[Fe(CO)(CN)5
(F−41)K4[RuF2(CN)4
(F−42)K4[OsCl2(CN)4
(F−43)K4[RhI2(CN)4
(F−44)K4[Ru(CN)5(OCN)]
(F−45)K4[Ru(CN)5(N34
(F−46)K4[Os(CN)5(SCN)]
(F−47)K4[Rh(CN)5(SeCN)]
(F−48)K4[RuF2(CN)4
(F−49)K3[Fe(CN)3Cl3
(F−50)K4[Os(CN)Cl5
(F−51)K3[Co(CN)6
(F−52)K2[RuBr(CN)5
(F−53)K2[Os(NS)(CN)5
(F−54)K[Ru(NO)2Cl4
(F−55)K4[Ru(CN)5(N34
(F−56)K2[Os(NS)Cl(SCN)4
(F−57)K2[Ru(NS)I5
(F−58)K2[Os(NS)Cl4(TeCN)4
(F−59)K2[Rh(NS)Cl5
(F−60)K2[Ru(NO)(CN)5
(F−61)K[Rh(NO)2Cl4
(F−62)K2[Rh(NO)Cl5
本発明において、8族金属化合物を含有させるには、ハロゲン化銀粒子の物理熟成中にドーピングを行ってもよいし、ハロゲン化銀粒子の形成過程(一般に、水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化アルカリの添加中)にドーピングを行ってもよいし、またハロゲン化銀粒子形成を一時止めた状態でドーピングを施しその後更に粒子形成を継続してもよく、8族金属化合物の存在下で核形成や物理熟成、粒子形成を行うことにより実施できる。
【0098】
本発明で用いられる8族金属化合物の濃度としては、一般的にハロゲン化銀1モルあたり1×10-9モル以上1×10-2モル以下の範囲が適当であり、より好ましくは1×10-9モル以上1×10-3モル以下の範囲であり、2×10-9〜1×10-4モルの範囲が特に好ましい。
【0099】
本発明において、ハロゲン化銀粒子に8族金属化合物を含有させるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、或いは水、メタノール、エタノール等の単独もしくは混合溶媒に溶解したものを添加してもよく、当業界で一般に添加剤をハロゲン化銀乳剤に加える方法を適用することができる。また、8族金属化合物をハロゲン化銀微粒子とともにハロゲン化銀乳剤に加えることができ、ハロゲン化銀粒子形成中に8族金属化合物を含有するハロゲン化銀微粒子を添加することができる。
【0100】
上記ハロゲン化銀乳剤中のハロゲン化銀粒子形成中に8族金属化合物を含有するハロゲン化銀微粒子を添加する製造方法に関しては、特開平11−212201号及び特開2000−89403号記載の方法を参照することができる。
【0101】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤においては、ハロゲン化銀乳剤が実質的にカルシウムイオンを含まないゼラチンを含有することが好ましい。本発明において、実質的にカルシウムイオンを含まないゼラチンとは、カルシウム含有量が100ppm以下であるゼラチンであり、好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下である。本発明に係る実質的にカルシウムイオンを含まないゼラチンはイオン交換樹脂等を用いたカチオン交換処理により得ることができる。
【0102】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤においては、実質的にカルシウムイオンを含まないゼラチンがハロゲン化銀粒子形成から脱塩、分散、化学増感及び/または色増感の終了までのいずれか1つ以上のハロゲン化銀乳剤調製工程で使用されることが好ましいが、化学増感及び/または色増感の前であることが好ましい。調製したハロゲン化銀乳剤中の全分散媒の10質量パーセント以上が、該実質的にカルシウムイオンを含まないゼラチンであることが好ましく、30質量パーセント以上である事がより好ましく、50質量パーセント以上であることが更に好ましい。
【0103】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤においては、ハロゲン化銀粒子がアミノ基置換された化学修飾ゼラチンを用いてハロゲン化銀粒子の粒子形成及び/または脱塩が行われていることが好ましい。該化学修飾ゼラチンには特開平5−72658号公報、特開平9−197595号公報、特開平9−251193号公報などに記載の、ゼラチンのアミノ基を置換した化学修飾ゼラチンを好ましく使用することができる。粒子形成及び/または脱塩において該化学修飾ゼラチンを用いる場合、粒子形成に用いる全分散媒の10質量パーセント以上が、該化学修飾ゼラチンであることが好ましく、30質量パーセント以上である事がより好ましく、50質量パーセント以上であることが更に好ましい。アミノ基の置換比率は30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。
【0104】
本発明に係るハロゲン化銀写真乳剤の製造においては、粒子形成後において、脱塩を行うことが好ましい。脱塩は、例えば、RD17643号II項の方法により行うことができる。
【0105】
更に詳しくは、沈殿生成物あるいは物理熟成後の乳剤から不要な可溶性塩類を除去する為には、ゼラチンをゲル化させて行うヌーデル水洗法を用いてもよく、また無機塩類、アニオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー(例えば、ポリスチレンスルホン酸)を用いることができ、ゼラチン誘導体及び化学修飾ゼラチン(例えば、アシル化ゼラチン、カルバモイル化ゼラチン)を利用した沈殿法も好ましく用いることができる。また、膜分離を利用した限外濾過も脱塩に好ましく用いることができる。
【0106】
膜分離を利用した限外濾過に関しては、化学工学便覧、改訂五版(化学工学協会編、丸善)924〜954頁、RDの102巻10208及び第131巻13122、あるいは特公昭59−43727号、同62−27008号、特開昭62−113137号、同57−209823号、同59−43727号、同61−219948号、同62−23035号、同63−40137号、同63−40039号、特開平3−140946号、同2−172816号、同2−172817号、同4−22942号等に記載の方法も参考にすることができる。本発明において、限外濾過を用いる場合には特開平11−339923号あるいは特開平11−231448号記載の装置または方法を用いることが好ましい。
【0107】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤の製造において用いられる分散媒は、ハロゲン化銀粒子に対する保護コロイド性を有する化合物である。該分散媒は、ハロゲン化銀粒子形成時の核生成工程から粒子成長工程に渡って存在させることが好ましい。本発明で好ましく用いることができる分散媒には、ゼラチンと親水性コロイドがある。ゼラチンとしては、通常分子量10万程度のアルカリ処理ゼラチンや酸処理ゼラチン、或いは酸化処理したゼラチンや、Bull.Soc.Sci.Photo.Japan No.16,P30(1966)に記載されたような酵素処理ゼラチンを好ましく用いることができる。ハロゲン化銀粒子の核生成時には平均分子量が1万〜7万のゼラチンを用いることが好ましく、平均分子量が1万〜5万のゼラチンを用いることが更に好ましい。ゼラチンの平均分子量を小さくするために、ゼラチン分解酵素や過酸化水素等を用いてゼラチンを分解処理することができる。また、同様に核生成時にメチオニン含有量が少ないゼラチンを用いることも特に平板状ハロゲン化銀粒子を形成する際には好ましい。分散媒単位質量(グラム)当たりのメチオニン含有量としては50μモル以下が好ましく、20μモル以下がより好ましい。ゼラチン中のメチオニン含有量は、過酸化水素等を用いてゼラチンを酸化処理することによって低減せしめることができる。
【0108】
親水性コロイドとしては、例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼインのような蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類の如きセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体のような糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾールのような単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンやBull.Soc.Sci.Photo.Japan.No.16.P30(1966)に記載されたような酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。
【0109】
ハロゲン化銀乳剤の調製装置、方法としては、当業界において公知の種々の方法を用いることができる。
【0110】
ハロゲン化銀乳剤は、酸性法、中性法、アンモニア法の何れで得られたものであってもよい。該粒子は一時に成長させたものであってもよいし、種粒子を造った後で成長させてもよい。種粒子を造る方法と成長させる方法は、同じであっても異なってもよい。
【0111】
又、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン化物を反応させる形式としては、順混合法、逆混合法、同時混合法、それらの組合せなど何れでもよいが、同時混合法で得られたものが好ましい。更に同時混合法の一形式として、特開昭54−48521号等に記載されているpAgコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。
【0112】
又、特開昭57−92523号、同57−92524号等に記載の反応母液中に配置された添加装置から水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物水溶液を供給する装置、独国公開特許2,921,164号等に記載された水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物水溶液を連続的に濃度変化して添加する装置、特公昭56−501776号等に記載の反応器外に反応母液を取り出し、限外濾過法で濃縮することによりハロゲン化銀粒子間の距離を一定に保ちながら粒子形成を行う装置などを用いてもよい。
【0113】
更に必要で有ればチオエーテル等のハロゲン化銀溶剤を用いてもよい。又、メルカプト基を有する化合物、含窒素複素環化合物又は増感色素のような化合物をハロゲン化銀粒子の形成時又は粒子形成終了の後に添加して用いてもよい。
【0114】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料に用いるハロゲン化銀乳剤は、通常、化学増感を施される。化学増感法については、不安定硫黄化合物の添加に代表されるカルコゲン増感、金増感に代表される貴金属増感、あるいは還元増感等を単独もしくは併用して用いることができる。化学増感に用いられる化合物としては、特開昭62−215272号の第18頁右下欄から第22頁右上欄の記載を参考にできる。本発明においては、カルコゲン増感には2種類以上のカルコゲン化合物を用いることが好ましい。
【0115】
以下、化学増感剤の詳細について説明する。
【0116】
カルコゲン化合物には、不安定硫黄化合物、不安定セレン化合物、不安定テルル化合物を使用することができるが、特に不安定硫黄化合物と不安定セレン、または不安定硫黄化合物と不安定テルル化合物を併用することが好ましい。
【0117】
本発明で用いることのできるセレン増感剤としては、特に水溶液中で硝酸銀と反応して銀セレニドの沈殿を形成しうる不安定セレン化合物が好ましく用いられる。例えば、米国特許第1,574,944号、同第1,602,592号、同第1,623,499号、特開昭60−150046号、特開平4−25832号、同4−109240号、同4−147250号等に記載されている。
【0118】
有用なセレン増感剤としては、コロイドセレン金属、イソセレノシアネート類(例えば、アリルイソセレノシアネート等)、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、N,N,N′−トリエチルセレノ尿素、N,N,N′,N′−テトラメチルセレノ尿素、N,N,N′−トリメチル−N′−ヘプタフルオロセレノ尿素、N,N′−ジメチル−N,N′−ビス(カルボキシメチル)セレノ尿素、N,N,N′−トリメチル−N′−ヘプタフルオロプロピルカルボニルセレノ尿素、N,N,N′−トリメチル−N′−4−ニトロフェニルカルボニルセレノ尿素等)、セレノケトン類(例えば、セレノアセトン、セレノアセトフェノン等)、セレノアミド(例えば、セレノアセトアミド、N,N−ジメチルセレノベンズアミド、N,N−ジエチル−4−オクチルアミノスルホニルセレノベンズアミド等)、セレノカルボン酸類及びセレノエステル類(例えば、2−セレノプロピオン酸、メチル−3−セレノブチレート等)、セレノフォスフェート類(例えば、トリ−p−トリルセレノフォスフェート、ペンタフルオロフェニル−ジフェニルセレノフォスフェート等)、セレニド類(例えば、ジメチルセレニド、トリブチルフォスフィンセレニド、トリフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェニル−ジフェニルフォスフィンセレニド、トリフリルフォスフィンセレニド、トリピリジルフォスフィンセレニド等)が挙げられる。特に好ましいセレン増感剤はセレノ尿素、セレノアミド類、セレニド類である。
【0119】
これらのセレン増感剤の使用技術の具体例は、下記特許に開示されている。米国特許第1,574,944号、同第1,602,592号、同第1,623,499号、同第3,297,466号、同第3,297,447号、同第3,320,069号、同第3,408,196号、同第3,408,197号、同第3,442,653号、同第3,420,670号、同第3,591,385号、フランス特許第2,693,038号、同第2,093,209号、特公昭52−34491号、同52−34492号、同53−295号、同57−22090号、特開昭59−180536号、同59−185330号、同59−181337号、同59−187338号、同59−192241号、同60−150046号、同60−151637号、同61−246738号、特開平3−4221号、同3−24537号、同3−111838号、同3−116132号、同3−148648号、同3−237450号、同4−16838号、同4−25832号、同4−32831号、同4−33043号、同4−96059号、同4−109240号、同4−140738号、同4−140739号、同4−147250号、同4−184331号、同4−190225号、同4−191729号、同4−195035号、同5−11385号、同5−40324号、同5−24332号、同5−24333号、同5−303157号、同5−306268号、同6−306269号、同6−27573号、同6−75328号、同6−175259号、同6−208184号、同6−208186号、同6−317867号、同7−92599号、同7−98483号、同7−104415号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号、同8−114882号、同9−19760号、同9−138475号、同9−166841号、同9−138475号、同9−189979号、同10−10666号、特開2001−343721号、英国特許第255,846号、同第861,984号等に記載されており、また、H.E.Spencer等著Journal of Photographic Science誌、31巻、158〜169(1983)等の研究論文にも開示されている。
【0120】
本発明に係るセレン増感剤の好ましい添加量は、通常はハロゲン化銀1モル当たり1×10-9〜1×10-5モルであることが好ましい。更に好ましくは1×10-8モル〜1×10-5モルである。
【0121】
本発明に係る前記セレン増感剤をハロゲン化銀乳剤に添加するには、当業界で写真乳剤に添加剤を加える場合に通常用いられる方法を適用できる。例えば、水溶性の化合物である場合は、適当な濃度の水溶液とし、水に不溶または難溶性の化合物の場合は、水と混合しうる任意の有機溶媒、例えば、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等の写真特性に悪影響を与えない溶媒に溶解し、溶液として添加することができる。
【0122】
本発明で用いられるテルル増感剤としては、テルロ尿素類(例えばN,N−ジメチルテルロ尿素、テトラメチルテルロ尿素、N−カルボキシエチル−N,N′ジメチルテルロ尿素、N,N′−ジメチル−N′−フェニルテルロ尿素等)、フォスフィンテルリド類(トリブチルフォスフィンテルリド、トリシクロヘキシルフォスフィンテルリド、トリ−i−プロピルフォスフィンテルリド、ブチル−ジ−I−プロピルフォスフィンテルリド、ジブチルフェニルフォスフィンテルリド、トリ−t−ブチルフォスフィンテルリド、トリモルホリルフォスフィンテルリド等)、テルロアミド類(テルロアセトアミド、N,N−ジメチルテルロベンズアミド等)、テルロケトン類、テルロエステル類、イソテルロシアナート類などが挙げられる。
【0123】
硫黄増感剤としては、1,3−ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、1−エチル−3−(2−チアゾリル)チオ尿素などのチオ尿素誘導体、ローダニン誘導体、ジチカルバミン酸類、ポリスルフィド有機化合物、チオ硫酸塩、硫黄単体などが好ましい。尚、硫黄単体としては、斜方晶系に属するα−硫黄が好ましい。その他、米国特許第1,574,944号、同第2,410,689号、同第2,278,947号、同第2,728,668号、同第3,501,313号、同第3,656,955号等の各明細書、西独出願公開(OLS)1,422,869号、特開昭56−24937号、同55−45016号等に記載されている硫黄増感剤を用いることができる。
【0124】
本発明において、更にリサーチディスクロージャー誌307巻307105号などに記載されている金、白金、パラジウム、イリジウムなどの貴金属塩を用いることが好ましく、中でも、特に金増感剤を併用することが好ましい。有用な金増感剤としては、塩化金酸、チオ硫酸金、チオシアン酸金等の他に、米国特許第2,597,856号、同第5,049,485号、特公昭44−15748号、特開平1−147537号、同4−70650号等に開示されている有機金化合物、あるいは硫化金、硫化金銀などが挙げられる。また金錯塩を用いた増感法を行う場合には、補助剤として、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩、チオエーテルなどの金のリガンドを併用することが好ましく、特に、チオシアン酸塩を用いるのが好ましい。
【0125】
本発明に係る上記各種の化学増感剤や抑制剤、酸化剤等においては、特開2001−318443号、特願2003−29472号、特開2004−37554号、同2004−4144号、同2004−4446号、同2004−4452号、同2004−4456号、同2004−4458号、同2004−4656号、同2004−4672号、同2003−307803号、同2003−287841号、同2003−287842号、同2003−233146号、同2003−172990号、同2003−172991号、同2003−113193号、同2003−113194号、同2003−114489号、同2002−372765号、同2002−296721号、同2002−278011号、同2002−268169号、同2002−244241号、同2002−250982号、同2002−258427号、同2002−268168号、同2002−268170号、同2000−193942号、同2001−75214号、同2001−75215号、同2001−75216号、同2001−75217号、同2001−75218号、同2001−100352号、同2004−70363号、同2004−67695号、同2002−131858号、同2001−166412号等の公報、欧州特許第1094360号明細書、同1388752号明細書、米国特許第6686143号明細書、同6322961号明細書等に記載の化合物及びその使用技術も好ましく用いることができる。
【0126】
上記カルコゲン増感剤及び金増感剤の添加量は、ハロゲン化銀乳剤の種類、使用する化合物の種類、熟成条件によって一様ではないが、通常はハロゲン化銀1モル当たり1×10-9〜1×10-5モルであることが好ましい。更に好ましくは1×10-8〜1×10-4モルである。前記の各種増感剤の添加方法は、用いる増感剤の性質に応じて、水またはメタノール等の有機溶媒の単独または混合溶媒に溶解して添加する方法でも、あるいはゼラチン溶液と予め混合して添加する方法でも、特開平4−140739号に開示されている方法、すなわち有機溶媒可溶性の重合体との混合溶液の乳化分散物の形態で添加する方法でもよい。
【0127】
本発明においては、還元増感法を用いてもよく、リサーチディスクロージャー誌307巻307105号や特開平7−78685号などに記載されている還元性化合物を用いる事も出来る。
【0128】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料に係る各色画像形成層のハロゲン化銀粒子には、所望の光波長域に分光感度を付与するために分光増感が施される。
【0129】
本発明の感光材料をカラー感光材料として用いる場合には、イエローカプラー、マゼンタカプラー、シアンカプラーに組み合わせて400〜900nmの波長域の特定領域に分光増感されたハロゲン化銀乳剤を含む層を有する。該ハロゲン化銀乳剤は1種又は2種以上の増感色素を組み合わせて含有する。
【0130】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料において、青、緑、赤の各感色領域の分光増感に用いられる分光増感色素としては、例えば、F.M.Harmer著 Heterocyclic compounds−Cyanine dyes and related compounds (John Wiley&Sons〔New York,London〕社刊1964年)に記載されているものを挙げることができる。
【0131】
本発明に用いる分光増感色素としては、公知の化合物を何れも用いることができるが、青感光性増感色素としては、特開平3−251840号28頁に記載のBS−1〜BS−8を単独で又は組み合わせて好ましく用いることができる。緑感光性増感色素としては、同公報28頁に記載のGS−1〜GS−5が好ましく、更に赤感光性増感色素としては、同公報29頁に記載のRS−1〜RS−8が好ましく用いられる。又、半導体レーザーを用いるなどして赤外光により画像露光を行う場合には、赤外感光性増感色素を用いる必要があるが、赤外感光性増感色素としては、特開平4−285950号6〜8頁に記載のIRS−1〜IRS−11の色素が好ましく用いられる。又、これらの赤外、赤、緑、青感光性増感色素に特開平4−285950号8〜9頁に記載の強色増感剤SS−1〜SS−9や特開平5−66515号15〜17頁に記載の化合物S−1〜S−17を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0132】
これらの分光増感色素の添加量は、場合に応じて広範囲にわたるが、ハロゲン化銀1モルあたり0.5×10-6モル〜1.0×10-2モルの範囲が好ましい。更に好ましくは、1.0×10-6モル〜5.0×10-3モルの範囲である。
【0133】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、イエロー、マゼンタ及びシアンの各画像形成層に含有される感光性ハロゲン化銀粒子1モル(銀換算)に対する増感色素の添加モル数(mol/Agmol)をVY、VM、VCとし、それぞれの画像形成層に含有される感光性ハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズ(μm)をLY、LM、LCとした時、イエロー画像形成層では、VY>3.2×10-4/LYの関係を満たすことが好ましく、更にはVY≧3.5×10-4/LYの関係を満たすことが好ましく、及び/またはマゼンタ画像形成層においては、VM>2.3×10-4/LMの関係を満たすことが好ましく、更にはVM≧2.5×10-4/LMの関係を満たすことが好ましく、及び/またはシアン画像形成層においては、VC>0.6×10-4/LCの関係を満たすことが好ましく、更にはVC≧0.8×10-4/LCの関係を満たすことが好ましい。
【0134】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料において、イエロー、マゼンタ及びシアンの各画像形成層の少なくとも1層を、上記で規定する満たす条件で増感色素を添加することにより、本発明に係る前記式(I)〜(III)、あるいは式(I′)〜(III′)で規定する条件を達成することができ好ましい。
【0135】
増感色素のハロゲン化銀乳剤への添加には、当業界でよく知られた方法を用いることができる。例えば、これらの増感色素は直接乳剤に分散することもできるし、あるいはピリジン、メチルアルコール、エチルアルコール、メチルセロソルブ、アセトン、フッ素化アルコール、ジメチルホルムアミド又はこれらの混合物などの水可溶性溶媒に溶解し、あるいは水で希釈し、ないしは水の中で溶解し、これらの溶液の形で乳剤へ添加することができる。溶解の過程で超音波振動を用いることもできる。
【0136】
又、色素は米国特許3,469,987号などに記載されている如く、色素を揮発性有機溶媒に溶解し、この溶液を親水性コロイド中に分散しこの分散物を乳剤に添加する方法、特公昭46−24185号公報などに記載されている如く、水不溶性色素を溶解することなしに水溶性溶媒中に分散させ、この分散液を乳剤に添加する方法も用いられる。
【0137】
又、色素は酸溶解分散法による分散物の形で乳剤へ添加することができる。その他乳剤への添加には、米国特許2,912,345号、同3,342,605号、同2,996,287号及び同3,425,835号等に記載の方法を用いることもできる。
【0138】
増感色素を乳剤へ添加する時期は、ハロゲン化銀粒子の形成時から、支持体に塗布する直前までの製造工程中の任意の時期に添加することができる。
【0139】
具体的には、ハロゲン化銀粒子の形成前、ハロゲン化銀粒子形成中、ハロゲン化銀粒子形成終了後から化学増感開始までの間、化学増感開始時、化学増感中、化学増感終了時及び化学増感終了後から塗布時までの間から選ばれた任意の時期でよい。又複数回に分けて添加してもよい。
【0140】
次いで、本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料のその他の構成要素について説明する。
【0141】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤には、ハロゲン化銀写真感光材料の調製工程中に生じるカブリを防止したり、保存中の性能変動を小さくしたり、現像時に生じるカブリを防止する目的で公知のカブリ防止剤、酸化剤、抑制剤、安定剤等を用いることが出来る。こうした目的に用いることのできる好ましい化合物の例として、特開平2−146036号公報7ページ下欄に記載された一般式(II)で表される化合物を挙げることができ、さらに好ましい具体的な化合物としては、同公報の8ページに記載の(IIa−1)〜(IIa−8)、(IIb−1)〜(IIb−7)の化合物や、1−(3−メトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール等の化合物、特開平8−6201記載の一般式(S)化合物、チオスルフォン酸化合物、ジスルフィド化合物、ポリスルフィド化合物等が好ましく、特願2003−29472号、同2003−10482号、同2002−312557号等に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0142】
これらの化合物は、その目的に応じて、ハロゲン化銀乳剤粒子の調製工程、化学増感工程、化学増感工程の終了時、塗布液調製工程などの工程で添加される。これらの化合物の好ましい添加量は、ハロゲン化銀1モル当り1×10-8〜1×10-1モル、更に好ましくは1×10-7〜1×10-2モルである。これら化合物の添加には、当業界で写真乳剤あるいは塗布液、調製液等に添加剤を加える場合に通常用いられる方法を適用できる。例えば、水溶性の化合物である場合は、適当な濃度の水溶液とし、水に不溶または難溶性の化合物の場合は、水と混合しうる任意の有機溶媒、例えば、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等の写真特性に悪影響を与えない溶媒に溶解し、溶液として添加することができる。
【0143】
感光材料には、イラジエーション防止やハレーション防止の目的で種々の波長域に吸収を有する染料を用いることができる。この目的で、公知の化合物を何れも用いることができるが、特に、可視域に吸収を有する染料としては、特開平3−251840号30頁に記載のAI−1〜11の染料及び特開平6−3770号記載の染料が好ましく用いられ、赤外線吸収染料としては、特開平1−280750号2頁左下欄に記載の一般式(I)、(II)、(III)で表される化合物が好ましい分光特性を有し、写真乳剤の写真特性への影響もなく、又、残色による汚染もなく好ましい。好ましい化合物の具体例として、同公報3頁左下欄〜5頁左下欄に挙げられた例示化合物(1)〜(45)を挙げることができる。これらの染料を添加する量として、鮮鋭性を改良する目的には、感光材料の未処理試料の680nmにおける分光反射濃度が0.7〜3.0にする量が好ましく、更には0.8〜3.0にすることがより好ましい。
【0144】
感光材料中に蛍光増白剤を添加することが白地性を改良でき好ましい。好ましく用いられる化合物としては、特開平2−232652号記載の一般式〔II〕で示される化合物が挙げられる。
【0145】
本発明の感光材料に用いられるカプラーとしては、発色現像主薬の酸化体とカップリング反応して340nmより長波長域に分光吸収極大波長を有するカップリング生成物を形成し得る如何なる化合物をも用いることができるが、特に代表的なカプラーとしては、波長域350〜500nmに分光吸収極大波長を有するイエロー色素形成カプラー、波長域500〜600nmに分光吸収極大波長を有するマゼンタ色素形成カプラー、波長域600〜750nmに分光吸収極大波長を有するシアン色素形成カプラーとして知られているものが挙げられる。
【0146】
好ましく用いることのできるシアンカプラーとしては、特開平4−114154号5頁左下欄に記載の一般式〔C−I〕、〔C−II〕で表されるカプラーを挙げることができ、具体的な化合物として、同公報5頁右下欄〜6頁左下欄にCC−1〜CC−9として記載されているものを挙げることができる。
【0147】
好ましく用いることのできるマゼンタカプラーとしては、特開平4−114154号4頁右上欄に記載の一般式〔M−I〕、〔M−II〕で表されるカプラーを挙げることができ、具体的な化合物として、同公報4頁左下欄〜5頁右上欄にMC−1〜MC−11として記載されているものを挙げることができる。上記マゼンタカプラーの内、より好ましいものは一般式〔M−I〕で表されるカプラーであり、その内、該一般式〔M−I〕のRMが3級アルキル基であるカプラーが耐光性に優れ特に好ましい。同公報5頁上欄に記載されているMC−8〜MC−11は、青〜紫、赤に到る色の再現に優れ、更にディテールの描写力にも優れており好ましい。
【0148】
好ましく用いることのできるイエローカプラーとしては、特開平4−114154号3頁右上欄に記載の一般式〔Y−I〕で表されるカプラーを挙げることができ、具体的化合物は同公報3頁左下欄以降にYC−1〜YC−9として記載されているものを挙げることができる。中でも、一般式〔Y−1〕のRY1がアルコキシ基であるカプラー、又は特開平6−67388号記載の一般式〔I〕で示されるカプラーは、好ましい色調の黄色を再現でき好ましい。この内、特に好ましい化合物例として特開平4−114154号4頁左上欄に記載されるYC−8、YC−9及び特開平6−67388号13〜14頁に記載のNo(1)〜(47)で示される化合物を挙げることができる。更に最も好ましい化合物は、特開平4−81847号1頁及び11〜17頁に記載の一般式[Y−1]で示される化合物である。
【0149】
感光材料に用いられるカプラーやその他の有機化合物を添加するのに水中油滴型乳化分散法を用いる場合には、通常、沸点150℃以上の水不溶性高沸点有機溶媒に、必要に応じて低沸点及び/又は水溶性有機溶媒を併用して溶解し、ゼラチン水溶液などの親水性バインダー中に界面活性剤を用いて乳化分散する。分散手段としては、撹拌機、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波分散機等を用いることができる。分散後又は分散と同時に、低沸点有機溶媒を除去する工程を入れてもよい。
【0150】
カプラーを溶解して分散するために用いることの出来る高沸点有機溶媒としては、ジオクチルフタレート、ジ−i−デシルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル類、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート等の燐酸エステル類が好ましく用いられる。又、高沸点有機溶媒の誘電率としては3.5〜7.0であることが好ましい。又、2種以上の高沸点有機溶媒を併用することもできる。
【0151】
又、高沸点有機溶媒を用いる方法に代えて、又は高沸点有機溶媒と併用して、水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマー化合物を、必要に応じて低沸点及び/又は水溶性有機溶媒に溶解し、ゼラチン水溶液などの親水性バインダー中に界面活性剤を用いて種々の分散手段により乳化分散する方法を採ることもできる。この時用いられる水不溶性で有機溶媒可溶性のポリマーとしては、ポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)等を挙げることができる。
【0152】
写真用添加剤の分散や塗布時の表面張力調整のため用いられる界面活性剤として好ましい化合物としては、1分子中に炭素数8〜30の疎水性基とスルホン酸基又はその塩を含有するものが挙げられる。具体的には、特開昭64−26854号記載のA−1〜A−11が挙げられる。又、アルキル基に弗素原子を置換した界面活性剤も好ましく用いられる。これらの分散液は、通常、ハロゲン化銀乳剤を含有する塗布液に添加されるが、分散後塗布液に添加される迄の時間、及び塗布液に添加後塗布迄の時間は短いほうが良く、各々10時間以内が好ましく、3時間以内、20分以内がより好ましい。
【0153】
上記各カプラーには、形成された色素画像の光、熱、湿度等による褪色を防止するため褪色防止剤を併用することが好ましい。特に好ましい化合物としては、特開平2−66541号3頁記載の一般式〔I〕及び〔II〕で示されるフェニルエーテル系化合物、特開平3−174150号記載の一般式〔IIIB〕で示されるフェノール系化合物、特開昭64−90445号記載の一般式〔A〕で示されるアミン系化合物、特開昭62−182741号記載の一般式〔XII〕、〔XIII〕、〔XIV〕、〔XV〕で示される金属錯体が特にマゼンタ色素用として好ましい。又、特開平1−196049号記載の一般式〔I〕で示される化合物及び特開平5−11417号記載の一般式[II]で示される化合物が特にイエロー、シアン色素用として好ましい。
【0154】
発色色素の吸収波長をシフトさせる目的で、特開平4−114154号9頁左下欄に記載の化合物d−11、同10頁左上欄に記載の化合物A′−1等の化合物を用いることができる。又、これ以外にも、米国特許4,774,187号に記載の蛍光色素放出化合物を用いることもできる。
【0155】
感光材料には、現像主薬酸化体と反応する化合物を感光層と感光層の間の層に添加して色濁りを防止したり、又、ハロゲン化銀乳剤層に添加してカブリ等を改良することが好ましい。このための化合物としてはハイドロキノン誘導体が好ましく、更に好ましくは2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノンのようなジアルキルハイドロキノンである。特に好ましい化合物は、特開平4−133056号記載の一般式〔II〕で示される化合物であり、同号13〜14頁に記載の化合物II−1〜II−14及び17頁記載の化合物−1が挙げられる。
【0156】
感光材料中には、紫外線吸収剤を添加してスタチックカブリを防止したり、色素画像の耐光性を改良することが好ましい。好ましい紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール類が挙げられ、特に好ましい化合物として特開平1−250944号記載の一般式〔III−3〕で示される化合物、特開昭64−66646号記載の一般式[III]で示される化合物、特開昭63−187240号記載のUV−1L〜UV−27L、特開平4−1633号記載の一般式[I]で示される化合物、特開平5−165144号記載の一般式(I)、(II)で示される化合物が挙げられる。
【0157】
本発明の感光材料にはバインダーとしてゼラチンを用いることが有利であるが、必要に応じてゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子のグラフトポリマー、ゼラチン以外の蛋白質、糖誘導体、セルロース誘導体、単一又は共重合体の如き合成親水性高分子物質等の親水性コロイドも用いることができる。
【0158】
本発明の感光材料においては、構成層中の総塗設ゼラチン量は3g/m2以上、6g/m2以下であることが好ましく、3g/m2以上、5g/m2以下であることが更に好ましい。また、超迅速処理した場合でも、現像進行性、及び定着漂白性、残色を満足するために、構成層全体の膜厚が3μm〜7.5μmであることが好ましく、更に3μm〜6.5μmであることが好ましい。乾燥膜厚の評価方法は、乾燥膜剥離前後の膜厚の変化、あるいは断面の光学顕微鏡や電子顕微鏡での観察により測定することができる。本発明において、現像進行性と乾燥速度を上げることを両立するために、膨潤膜厚が8μm〜19μmであることが好ましく、更に9μm〜18μmであることが好ましい。膨潤膜厚の測定としては、35℃の水溶液中に乾燥した感光材料を浸し、膨潤して十分平衡に達した状態で打点方法にて測定することができる。
【0159】
また、本発明の感光材料においては、画像形成層に含まれる銀量の総和が、0.51g/m2以下であることが好ましく、0.48g/m2以下であることが更に好ましく、0.1g/m2〜0.45g/m2であることが特に好ましい。また、イエロー画像形成層に含まれる銀量の総和は、0.23g/m2以下であることが好ましく、0.1g/m2〜0.19g/m2であることがより好ましい。
【0160】
本発明において、バインダーの硬膜剤としては、ビニルスルホン型硬膜剤、クロロトリアジン型硬膜剤、カルボキシル基活性型硬膜剤を単独又は併用して使用することが好ましい。特開昭61−249054号、同61−245153号記載の化合物を使用することが好ましい。又、写真性能や画像保存性に悪影響する黴や細菌の繁殖を防ぐため、コロイド層中に特開平3−157646号記載のような防腐剤及び抗黴剤を添加することが好ましい。又、感光材料又は処理後の試料の表面の物性を改良するため、保護層に特開平6−118543号や特開平2−73250号記載の滑り剤やマット剤を添加することが好ましい。
【0161】
本発明において用いられる反射支持体は、反射支持体の画像形成層塗設面側の耐水性樹脂被覆層中に白色顔料が含有されていることが好ましい。耐水性樹脂に混合分散する白色顔料としては、二酸化チタン、硫酸バリウム、リトポン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化珪素、三酸化アンチモン、燐酸チタニウム、酸化亜鉛、鉛白、酸化ジルコニウム等の無機顔料やポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等の有機微粉末等を挙げることができる。これらの顔料の中でも、二酸化チタンの使用が特に効果的である。二酸化チタンは、ルチル型及びアナターゼ型のいずれでも良いが、白色度を優先する場合アナターゼ型を、また鮮鋭度を優先する場合はルチル型が好ましい。白色度と鮮鋭度両方を考慮してアナターゼ型とルチル型とをブレンドして用いても良い。更に耐水性樹脂層が多層から成る場合、ある層にはアナターゼ型を、又、他の層にはルチル型を使用する方法も好ましい。またこれらの二酸化チタンは、サルフェート法、クロライド法のいずれの方法で製造されたものであっても良い。
【0162】
本発明で使用できる反射支持体の耐水性樹脂とは、吸水率(質量%)が0.5以下、好ましくは0.1以下の樹脂で、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン系重合体等のポリオレフィン、ビニールポリマーやそのコポリマー(ポリスチレン、ポリアクリレートやそのコポリマー)やポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート等)やそのコポリマーである。特に好ましくはポリエチレンとポリエステルである。ポリエチレンは高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン及びこれらポリエチレンのブレンドを用いることができる。
【0163】
ポリエステルとしては、ジカルボン酸とジオールとから縮合重合によって合成されたポリエステルが好ましく、また好ましいジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。好ましいジオールとしては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキシレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物(2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル)プロパン)、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらジカルボン酸の単独あるいは混合物と、ジオールの単独あるいは混合物とを縮合重合して得られる種々のポリエステルを使用することができる。中でもジカルボン酸の少なくとも一種はテレフタル酸であることが好ましい。
【0164】
上記耐水性樹脂と白色顔料との混合比率は質量比で98/2〜30/70(耐水性樹脂/白色顔料)、好ましくは95/5〜50/50、特に好ましくは90/10〜60/40である。これらの耐水性樹脂層は2〜200μmの厚みで基体上に被覆するのが好ましく、更に好ましくは5〜80μmである。基体の感光層塗布面側でない面に被覆する樹脂又は樹脂組成物の厚みは、5〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。
【0165】
又、耐水性樹脂層には、ブルーイング剤を含有させて本発明の白地の範囲内に調節することができる。ブルーイング剤としては、一般に知られる群青、コバルトブルー、酸化リン酸コバルト、キナクリドン系顔料等とその混合物が用いられる。ブルーイング剤の粒子径に特に限定はないが、市販のブルーイング剤の粒径は通常0.3μm〜10μm程度であり、この範囲の粒径であれば特に使用上支障がない。本発明で使用する反射支持体の耐水性樹脂層が多層構成である場合、耐水性樹脂層におけるブルーイング剤の含有量は、最上層の耐水性樹脂層中の含有率を、下層の含有率以上にするのが好ましい。好ましいブルーイング剤の含有量は、最上層に0.2質量%〜0.5質量%、またその下側の層には0〜0.45質量%である。
【0166】
本発明に係る反射支持体に使用される基体は、天然パルプを主原料とする天然パルプ紙、天然パルプと合成繊維とから成る混抄紙、合成繊維を主成分とする合成繊維紙、ポリスチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂フィルムを擬紙化した、所謂合成紙、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、三酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、等のプラスチックフィルムの何れでも良いが、写真用耐水性樹脂被覆の基体としては天然パルプ紙(以下単に「原紙」と称する)が特に好ましく有利に用いられる。必要に応じ、染料や蛍光染料を添加して白地を本発明の範囲に調節することもできる。
【0167】
本発明に使用される支持体の原紙の厚さは特に限定されるものではないが、坪量としては、50g/m2〜250g/m2が、厚みとしては、50μm〜250μmが望ましい。
【0168】
本発明において、さらに好ましい反射支持体としては、ハロゲン化銀乳剤含有層を設ける側の紙基体上に微小空孔を有するポリオレフィン層を有しているものが挙げられる。ポリオレフィン層は多層から成っていてもよく、その場合、好ましくはハロゲン化銀乳剤層側のゼラチン層に隣接するポリオレフィン層は微小空孔を有さず(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)、紙基体上に近い側に微小空孔を有するポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)から成るものがより好ましい。紙基体及び写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の密度は0.40〜1.0g/mlであることが好ましく、0.50〜0.70g/mlがより好ましい。また、紙基体及び写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の厚さは10〜100μmが好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。また、ポリオレフィン層と紙基体の厚さの比は0.05〜0.2が好ましく、0.1〜0.15がさらに好ましい。
【0169】
また、上記紙基体の画像形成層とは逆側(裏面)にポリオレフィン層を設けることも、反射支持体の剛性を高める点から好ましく、この場合、裏面のポリオレフィン層は表面が艶消しされたポリエチレン又はポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。裏面のポリオレフィン層は5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましく、さらに密度が0.7〜1.1g/mlであることが好ましい。本発明に係る反射支持体において、紙基体上に設けるポリオレフィン層に関する好ましい態様については、特開平10−333277号、同10−333278号、同11−52513号、同11−65024号、欧州特許第880,065号、及び欧州特許第880,066号に記載されている例が挙げられる。
【0170】
更に前記の耐水性樹脂層中には蛍光増白剤を含有するのが好ましい。また、前記蛍光増白剤を分散含有する親水性コロイド層を、別途形成してもよい。前記蛍光増白剤として、好ましくは、ベンゾオキサゾール系、クマリン系、ピラゾリン系が用いることができ、更に好ましくは、ベンゾオキサゾリルナフタレン系及びベンゾオキサゾリルスチルベン系の蛍光増白剤である。使用量は、特に限定されないが、好ましくは1〜100mg/m2である。耐水性樹脂に混合する場合の混合比は、好ましくは樹脂に対して0.0005〜3質量%であり、更に好ましくは0.001〜0.5質量%である。
【0171】
反射型支持体としては、透過型支持体、又は上記のような反射型支持体上に、白色顔料を含有する親水性コロイド層を塗設したものでもよい。また、反射型支持体は、鏡面反射性又は第2種拡散反射性の金属表面をもつ支持体であってもよい。
【0172】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料の白地を、支持体上に塗布された写真構成層を形成する親水性コロイド層で調節する方法について説明する。
【0173】
各構成層に由来し白地を悪化させる要因としては、ハロゲン化銀乳剤のカブリ、増感色素の残色、処理液の汚れ吸着等が挙げられる。それらの悪化要因を低減することで支持体自身が本来有する白色度に近づけることができる。また、処理で脱色されない染料又は顔料を添加し着色させたり、処理後の感光材料中に蛍光増白剤を含有せしめることで、白地を本発明の好ましい範囲に調節することができる。
【0174】
本発明において写真構成層の親水性コロイド層の着色に好ましく用いられる顔料について説明する。
【0175】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、反射支持体上に塗設された、感光性ハロゲン化銀乳剤層、非感光性層の少なくとも一層中に少なくとも一種の顔料が分散されているもの(すなわち、分散された顔料)が好ましい。本発明において、顔料を含む層は、ハロゲン化銀乳剤を含有する感光性層でもよく、又はハロゲン化銀乳剤層の間に位置する中間層やハロゲン化銀乳剤層の上層に位置する紫外線吸収層、又はゼラチンの下塗り層等の非感光性層のいずれでもよい。ハロゲン化銀乳剤層は通常、特性曲線の調節のために塗布流量を変化させるため、色味付けを一定にするためには、顔料を非感光性層に導入する方が好ましい場合が多い。
【0176】
通常、イエローステインを克服するためにはブルーの色味付けを施す。この色味付けとしては通常イエローステインと拮抗させ、ニュートラルな色とし、人間の目に白と感じさせるのに十分な量の顔料を添加する。さらに、顔料を2種類以上用いてそれらの顔料の使用量比率を変えることによって、広い範囲でのイエローステイン補正が可能である。一般にはシアン方向に色相を変化させる青顔料とマゼンタ方向に色相を変化させる赤又は紫顔料の併用である。これにより広い範囲の色味の調節が可能である。本発明に用いられる顔料は水不溶性であればどういう顔料でも良いが、特に有機溶媒に対し、親和性が強く、有機溶媒中で容易に分散されるものが好ましい。一般に顔料の粒子径は0.01μm〜5μmが効率よく色味付けするのに良い。好ましくは、0.01μm〜3μmである。
【0177】
本発明においては、顔料は以下のようにして導入するのが最も好ましい。即ち、通常の色素形成カプラー(以下「カプラー」という場合がある。)等の写真性有用物質を乳化分散し、分散物として感光材料に組み込むのと同様に、本発明に用いられる顔料を高沸点有機溶媒に加え、微粒子顔料からなる均一な自発分散液を生成させる。この液を親水性コロイド中、好ましくはゼラチン水溶液中に、界面活性剤の分散剤と共に超音波、コロイドミル、ホモジナイザー、マントンゴーリン、高速ディゾルバー等の公知の装置により微粒子状に乳化分散し、分散物を得る。本発明に用いられる高沸点有機溶媒は、特に制限するものではなく、通常のものが用いられ、例えば、米国特許第2,322,027号、特開平7−152129号に記載のものが挙げられる。また、高沸点有機溶媒と共に補助溶媒を用いることができる。補助溶媒の例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級アルコールのアセテート、プロピオン酸エチル、2級ブチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、β−エトキシエチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテートやシクロヘキサノン等が挙げられる。また、本発明に用いられる顔料は、本発明の感光材料に使用するカプラー等の写真用有用化合物を溶解する有機溶媒中に共存させ、共乳化して乳化物として調製して用いるのが最も好ましい。
【0178】
本発明を下記に挙げるいくつかの例によりさらに詳細に説明するが、特に断らない限りそれらの例に限定されるものではない。本発明においては、求められる色調調整が可能で現像処理時に変化することなく感光材料中に留まるものであればいかなる種類の顔料も制限なく使用することができる。以下に好ましい顔料について具体例を挙げながら説明するが、本発明に用いられる青顔料とは、「カラーインデックス」(The Societyof Dyers and colourists)において、C.I.Pigment Blueとして分類されている顔料をさす。同様に、本発明に用いられる赤顔料とは、C.I.Pigment Redとして分類されている顔料をさし、本発明に用いられる紫顔料とは、C.I.Pigment Violetとして分類されている顔料をさす。
【0179】
本発明で用いることができる青顔料としては、例えば、アゾ顔料(例えば、C.I.Pigment Blue 25)、フタロシアニン顔料(例えば、C.I.Pigment Blue 15:1、同15:3、同15:6、同16、同75)、インダントロン顔料(例えば、C.I.Pigment Blue 60、同64、同21)、トリアリールカルボニウム系の塩基性染料レーキ顔料(例えば、C.I.Pigment Blue 1、同2、同9、同10、同14、同62)、同じくトリアリールカルボニウム系の酸性染料レーキ顔料(例えば、C.I.Pigment Blue 18、同19、同24:1、同24:x、同56、同61)、インジゴ顔料(例えば、C.I.Pigment Blue 63、同66)などの有機顔料を挙げることができる。これらの中でもインダントロン顔料、トリアリールカルボニウム系の塩基性染料レーキ顔料及び酸性染料レーキ顔料、インジゴ顔料が色相的に好ましく、さらに堅牢性の点でインダントロン顔料が最も好ましい。本発明における青顔料としては、無機顔料の群青、コバルトブルーも好ましく用いることができる。本発明に用いられるインダントロン顔料としては、有機溶媒と親和性の高いものが特に好ましく、これは市販品から選ぶことができ、例えば、Ciba Speciality Chemicals(チバ スペシャリティ ケミカルズ)社製の、BlueA3R−KP(商品名)、BlueA3R−K(商品名)等を用いることができる。
【0180】
本発明においては、色相を調整するために、さらに赤乃至紫の顔料を併用することが好ましい。好ましい赤顔料としては、アゾ顔料(例えば、C.I.Pigment Red 2、同3、同5、同12、同23、同48:2、同48:3、同52:1、同53:1、同57:1、同63:2、同112、同144、同146、同150、同151、同166、同175、同176、同184、同187、同220、同221、同245)、キナクリドン顔料(例えば、C.I.Pigment Red 122、同192、同202、同206、同207、同209)、ジケトピロロピロール顔料(例えば、C.I.Pigment Red 254、同255、同264、同272)ペリレン顔料(例えば、C.I.Pigment Red 123、同149、同178、同179、同190、同224)、ぺリノン顔料(例えば、C.I.Pigment Red 194)、アントラキノン顔料(例えば、C.I.Pigment Red 83:1、同89、同168、同177)、ベンズイミダゾロン顔料(例えば、C.I.Pigment Red 171、同175、同176、同185、同208)、トリアリールカルボニウム系の塩基性染料レーキ顔料(例えば、C.I.Pigment Red 81:1、同169)、チオインジゴ顔料(例えば、C.I.Pigment Red 88、同181)、ピラントロン顔料(例えば、C.I.Pigment Red 216、同226)、ピラゾロキナゾロン顔料(例えば、C.I.Pigment Red 251、同252)、イソインドリン顔料(例えば、C.I.Pigment Red 260)等を挙げることができる。中でもアゾ顔料、キナクリドン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリレン顔料がより好ましく、アゾ顔料、ジケトピロロピロール顔料が特に好ましい。
【0181】
好ましい紫顔料としては、アゾ顔料(例えば、C.I.Pigment Violet 13、同25、同44、同50)、ジオキサジン顔料(例えば、C.I.Pigment Violet 23、同37)、キナクリドン顔料(例えば、C.I.Pigment Violet 19、同42)、トリアリールカルボニウム系の塩基性染料レーキ顔料(例えば、C.I.Pigment Violet 1、同2、同3、同27、同39)、アントラキノン顔料(例えば、C.I.Pigment Violet 5:1、同33)、ペリレン顔料(例えば、C.I.Pigment Violet 29)、イソビオラントロン顔料(例えば、C.I.Pigment Violet 31)、ベンズイミダゾロン顔料(例えば、C.I.Pigment Violet 32)等を挙げることができる。中でもアゾ顔料、ジオキサジン顔料、キナクリドン顔料が好ましく、ジオキサジン顔料が特に好ましい。本発明に用いられるジオキサジン顔料としては、有機溶媒と親和性の高いものが特に好ましく、これは市販品から選ぶことができ、例えば、Ciba Spesialty Chemicals社製の、Violet B−K(商品名)、Violet B−KP(商品名)等を用いることができる。
【0182】
本発明では、上記に挙げた顔料の他に、色調調整のためさらに他の顔料(C.I.Pigment Yellow、 C.I.Pigment Orange、 C.I.Pigment Brown、 C.I.Pigment Greenで分類された各顔料)を併用することができる。具体的な化合物については、「カラーインデックス」(The Society of Dyers and colourists)、W.Herbst,K.Hunger共著”Industrial Organic pigments”、(VCH Verlagsgesellschsft mbH1993年刊)に記載されている。
【0183】
本発明に使用できる顔料は、上述の裸の顔料であっても良いし、表面処理を施された顔料でも良い。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネートなど)を顔料表面に結合させる方法、顔料誘導体(シナジスト)を使用する方法などが考えられ、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMCI出版、1984)、「最新顔料応用技術」(CMCI出版、1986)等の文献に記載されている。中でも樹脂やワックスで顔料表面を予め表面コートされた形で市販されている易分散性の顔料、所謂インスタント顔料(例えばCiba SpesialtyChemicals社製のマイクロリス顔料)は、感光材料に導入する際に分散する必要なく高沸点有機溶剤中に良好に分散できるため特に好ましい。この場合、顔料が分散された高沸点有機溶剤をさらにゼラチンなどの親水性コロイド中に分散することができる。
【0184】
本発明に於いては、上記のように顔料を高沸点有機溶剤に分散し、次いでそれをゼラチンなどの親水性コロイド中に分散してもよいが、顔料を親水性コロイド中に直接分散してもよい。この際使用される分散剤は、用いるバインダーと顔料に合わせて種々のもの、例えば界面活性剤型の低分子分散剤や高分子型分散剤、を用いることが出来るが、分散安定性の観点から高分子型分散剤を用いることがより好ましい。分散剤の例としては特開平3−69949号、欧州特許549486号等に記載のものを挙げることができる。本発明に使用できる顔料の粒径は、分散後で、0.01〜10μmの範囲であることが好ましく、0.02〜1μmであることが更に好ましい。顔料をバインダー中へ分散する方法としては、インク製造やトナー製造時に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は「最新顔料応用技術」(CMCI出版、1986年出版)に記載がある。
【0185】
本発明に用いられる顔料の全使用量の好ましい範囲は、0.1mg/m2〜10mg/m2であり、より好ましくは、0.3mg/m2〜5mg/m2である。また、ブルーの顔料と、異なる色相の顔料とを併用するのが好ましい。写真構成層を形成する親水性コロイド層に顔料を添加する方法は、顔料を支持体のポリオレフィン被服樹脂中に添加する方法に対して同一の色味に調節するのに必要な顔料の量を大きく減ずることができるので、コスト上メリットがあり好ましい。本発明において、前記青顔料と、前記赤顔料及び/又は紫顔料とを併用する場合は、同一又は異なる親水性コロイド層に分散させて用いることができ、特に制限するものではない。
【0186】
本発明においては感光材料の写真構成層に油溶性染料を用い白地の調節をすることも好ましい。油溶性染料の代表的具体例は、特開平2−842号の(8)〜(9)頁に記載の化合物1〜27が挙げられる。
【0187】
また、本発明においては感光材料の親水性コロイド層中に蛍光増白剤を含有させて、処理後に感光材料中に蛍光増白剤を残存させることにより白地を調節することもできる。また、感光材料中にポリビニルピロリドン等の蛍光増白剤を捕獲するポリマーを添加することもできる。
【0188】
ハロゲン化銀乳剤を用いた感光材料の塗布に際して、塗布性を向上させるために増粘剤を用いてもよい。塗布法としては2種以上の層を同時に塗布することの出来るエクストルージョンコーティング及びカーテンコーティングが特に有用である。
【0189】
本発明の感光材料を用いて写真画像を形成するには、ネガ上に記録された画像を、プリントしようとする感光材料上に光学的に結像させて焼き付けてもよいし、画像を一旦デジタル情報に変換した後、その画像をCRT(陰極線管)上に結像させ、この像をプリントしようとする感光材料上に結像させて焼き付けてもよいし、デジタル情報に基づいてレーザー光の強度を変化させて走査することによって焼き付けてもよい。
【0190】
本発明は、現像主薬を感光材料中に内蔵していない感光材料に適用することが好ましく、特に直接鑑賞用の画像を形成する感光材料に適用することが好ましい。例えば、カラーペーパー、カラー反転ペーパー、ポジ画像を形成する感光材料、ディスプレイ用感光材料、カラープルーフ用感光材料を挙げることができる。特に、反射支持体を有する感光材料に適用することが好ましい。
【0191】
本発明の感光材料は、通常のネガプリンターを用いたプリントシステムに使用される以外に、陰極線(CRT)を用いた走査露光方式にも適している。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種、あるいは2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤、緑、青に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。
【0192】
感光材料が異なる分光感度分布を有する複数の感光性層を持ち、陰極性管も複数のスペクトル領域の発光を示す蛍光体を有する場合には、複数の色を一度に露光、即ち陰極線管に複数の色の画像信号を入力して管面から発光させてもよい。各色ごとの画像信号を順次入力して各色の発光を順次行わせ、その色以外の色をカットするフィルムを通して露光する方法(面順次露光)を採ってもよく、一般には、面順次露光の方が、高解像度の陰極線管を用いることができるため、高画質化のためには好ましい。
【0193】
本発明の感光材料に対する露光工程では、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶とを組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いたデジタル走査露光方式が好ましく使用される。システムをコンパクトで、安価なものにするために半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を使用することが好ましい。特にコンパクトで、安価、更に寿命が長く安定性が高い装置を設計するためには半導体レーザーの使用が好ましく、露光光源の少なくとも一つは半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0194】
このような走査露光光源を使用する場合、本発明の感光材料の分光感度極大波長は、使用する走査露光用光源の波長により任意に設定することができる。半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーあるいは半導体レーザーと非線形光学結晶を組合わせて得られるSHG光源では、レーザーの発振波長を半分にできるので、青色光、緑色光が得られる。従って、感光材料の分光感度極大は通常の青、緑、赤の3つの波長領域に持たせることが可能である。このような走査露光における露光時間は、画素密度を400dpiとした場合の画素サイズを露光する時間として定義すると、好ましい露光時間としては10-4秒以下、更に好ましくは10-6秒以下である。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0195】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、以下の公知資料に記載の露光、現像システムと組み合わせることで好ましく用いることができる。前記現像システムとしては、特開平10−333253号に記載の自動プリント並びに現像システム、特開2000−10206号に記載の感光材料搬送装置、特開平11−215312号に記載の画像読取装置を含む記録システム、特開平11−88619号並びに特開平10−202950号に記載のカラー画像記録方式からなる露光システム、特開平10−210206号に記載の遠隔診断方式を含むデジタルフォトプリントシステムが挙げられる。
【0196】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、画像形成層の感光波長でそれぞれ0.5秒間の露光した後、発色現像処理して得られるイエロー、マゼンタ及びシアンの各画像形成層の反射濃度をDY(0.5)、DM(0.5)、DC(0.5)とし、画像形成層の感光波長でそれぞれ10-6秒間の露光した後、発色現像処理して得られるイエロー、マゼンタ及びシアンの各画像形成層の反射濃度をDY(10-6)、DM(10-6)、DC(10-6)とした時、前式(IV)〜(VI)で示される条件の少なくとも一つを満足することが好ましい。
【0197】
すなわち、イエロー画像形成層のDY(0.5)−DY(10-6)、マゼンタ画像形成層のDM(0.5)−DM(10-6)、シアン画像形成層のDC(0.5)−DC(10-6)のいずれか1つが、0.2以下であることが好ましく、0.15以下であることが更に好ましく、0.1以下であることが特に好ましい。
【0198】
DY(0.5)−DY(10-6)の値は、0.5秒露光で得られるイエロー画像の階調と10-6秒露光で得られるイエロー画像の階調を反射濃度0.7の点で合わせて重ね、合わせた点からそれぞれ0.5logE多い露光量点における0.5秒露光と10-6秒露光のイエロー画像の反射濃度の差を意味しており、実質的に高濃度部領域での階調差を表す。DY(0.5)−DY(10-6)の値が0に近いほど、イエロー画像形成層の照度不軌が小さいことになる。マゼンタ画像形成層及びシアン画像形成層においても、上記と同様の方法で求める。
【0199】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法は、露光を施したハロゲン化銀カラー写真感光材料を、発色処理工程(発色現像液)に続いて、漂白工程(漂白液)、定着工程(定着液)あるいは漂白定着工程(漂白定着液)、安定化工程(安定化液)を経て、乾燥する。また、それぞれ補充用発色現像液、補充用漂白液、補充用定着液、あるいは補充用漂白定着液、補充用安定化液等を補充しながら連続的に現像処理することができる。以下に本発明で用いられる発色現像液、漂白液、漂白定着液、定着液、安定液、リンス液について説明する。
【0200】
本発明に係る発色現像液に用いられる発色現像主薬として好ましい例は、公知の芳香族第1級アミン発色現像主薬、特にp−フェニレンジアミン誘導体であり、代表例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。
【0201】
1)N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン
2)4−アミノ−3−メチル−N,N−ジエチルアニリン
3)4−アミノ−N−(β−ヒドロキシエチル)−N−メチルアニリン
4)4−アミノ−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アニリン
5)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アニリン
6)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)アニリン
7)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(4−ヒドロキシブチル)アニリン
8)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン
9)4−アミノ−N,N−ジエチル−3−(β−ヒドロキシエチル)アニリン
10)4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−メトキシエチル)アニリン
11)4−アミノ−3−メチル−N−(β−エトキシエチル)−N−エチルアニリン
12)4−アミノ−3−メチル−N−(3−カルバモイルプロピル)−N−n−プロピル−アニリン
13)4−アミノ−N−(4−カルバモイルブチル)−N−n−プロピル−3−メチルアニリン
14)N−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−3−ヒドロキシピロリジン
15)N−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−3−(ヒドロキンメチル)ピロリジン
16)N−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−3−ピロリジンカルボキサミド
上記p−フェニレンジアミン誘導体のうち、特に好ましくは例示化合物5)、6)、7)、8)及び12)であり、その中でも例示化合物5)と8)が好ましい。また、これらのp−フェニレンジアミン誘導体は、硫酸塩、塩酸塩、亜硫酸塩、ナフタレンジスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの塩の形、或いは遊離塩基型(フリー体ともいう)である。上記芳香族第1級アミン現像主薬の使用液中の濃度は、現像液1L当たり2mmol〜200mmolが好ましく、より好ましくは6mmol〜100mmolであり、特に10mmol〜40mmolが好ましい。
【0202】
本発明に用いられる発色現像液においては、発色現像主薬の酸化による消失を減じるため、保恒剤を含有することが好ましい。代表的な保恒剤としては、ヒドロキシルアミン誘導体が挙げられる。本発明で用いることのできるヒドロキシルアミン誘導体としては、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミン等のヒドロキシルアミン塩の他、例えば、特開平1−97953号、同1−186939号、同1−186940号、同1−187557号公報などに記載されているヒドロキシルアミン誘導体を用いることができるが、特に、下記一般式〔A〕で表されるヒドロキシルアミン誘導体が好ましい。
【0203】
【化4】

【0204】
上記一般式〔A〕において、Lは置換してもよいアルキレン基を表し、Aはカルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィン基、ヒドロキシル基、アルキル置換してもよいアミノ基、アルキル置換してもよいアンモニオ基、アルキル置換してもよいカルバモイル基、アルキル置換してもよいスルファモイル基、アルキルスルホニル基、水素原子、アルコキシル基、または−O−(B−O)n−R′を表し、R、R′は各々水素原子、置換してもよいアルキル基を表す。Bは置換してもよいアルキレン基を表し、nは1〜4の整数を表す。
【0205】
上記一般式〔A〕において、Lは炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖の置換してもよいアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5が更に好ましい。具体的には、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン等の基が好ましい例として挙げられる。置換基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィン基、ヒドロキシル基、アルキル置換してもよいアンモニオ基を表し、カルボキシル基、スルホ基、ホスフィン基、ヒドロキシル基が好ましい例として挙げられる。Aはカルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィン基、ヒドロキシル基、または、それぞれアルキル置換してもよいアミノ基、アンモニオ基、カルバモイル基またはスルファモイル基を表し、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、ホスホノ基、アルキル置換してもよいカルバモイル基が好ましい例として挙げられる。−L−Aの例として、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、スルホエチル基、スルホプロピル基、スルホブチル基、ホスホノメチル基、ホスホノエチル基、ヒドロキシエチル基を好ましい例として挙げることができ、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、スルホエチル基、スルホプロピル基、ホスホノメチル基、ホスホノエチル基が特に好ましい例として挙げることができる。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖の置換してもよいアルキル基が好ましく、特に、炭素数1〜5が好ましい。置換基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィン酸基、ヒドロキシル基、または、それぞれアルキル置換してもよいアミノ基、アンモニオ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシル基、−O−(B−O)n−R′等が挙げられる。なお、B及びR′は前記Aの説明に記載のそれらと同義である。置換基は二つ以上あってもよい。Rとして水素原子、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、スルホエチル基、スルホプロピル基、スルホブチル基、ホスホノメチル基、ホスホノエチル基、ヒドロキシエチル基が好ましい例として挙げることができ、水素原子、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、スルホエチル基、スルホプロピル基、ホスホノメチル基、ホスホノエチル基が特に好ましい例として挙げることができる。LとRが連結して環を形成してもよい。
【0206】
以下に、一般式〔A〕で表される化合物のうち、その代表的な化合物例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0207】
【化5】

【0208】
【化6】

【0209】
【化7】

【0210】
また、保恒剤として亜硫酸塩を使用することも好ましく、その濃度は、カラーネガフィルム用発色現像液においては、0.005〜1.0mol/Lが好ましく、カラーペーパー用は色現像液においては、0〜0.1mol/Lが好ましい。本発明で用いることのできる亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウムなどを挙げることができる。
【0211】
発色現像液には、上記説明した本発明に係る保恒剤の他に、下記に示す保恒剤の使用を制限するものではない。ヒドロキサム酸類、ヒドラジド類、フェノール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、糖類、モノアミン類、ジアミン類、ポリアミン類、四級アンモニウム塩類、ニトロキシラジカル類、アルコール類、オキシム類、ジアミド化合物類、縮環式アミン類などを挙げることができる。これらは、特開昭63−4235号、同63−30845号、同63−21647号、同63−44655号、同63−53551号、同63−43140号、同63−56654号、同63−58346号、同63−43138号、同63−146041号、同63−44657号、同63−44656号、米国特許第3,615,503号、同2,494,903号、特開昭52−143020号、特公昭4830496号などの各公報または明細書に開示されている。
【0212】
その他、特開昭57−44148号及び同57−53749号公報に記載の各種金属類、特開昭59−180588号公報に記載のサリチル酸類、トリエタノールアミンやトリイソパノールアミンの如き特開昭54−3532号公報に記載のアルカノールアミン類、米国特許第3,746,544号明細書等に記載の芳香族ポリヒドロキシ化合物等を必要に応じて含有しても良い。
【0213】
本発明に用いられる発色現像液は9.0以上、13.5以下であることが好ましく、更に好ましく9.5以上、12.0以下であり、そのpH値を維持できるようにアルカリ剤、緩衝剤及び必要によっては酸を含ませることができる。
【0214】
発色現像処理液を調整したときに、上記pHを保持する観点からは、下記に示す緩衝剤を用いるのが好ましい。緩衝剤としては、炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、グリシル塩、N,N−ジメチルグリシン塩、ロイシン塩、ノルロイシン塩、グアニン塩、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン塩、アラニン塩、アミノ酪酸塩、2−アミノ−2−メチル−1、3−プロバンジオール塩、バリン塩、プロリン塩、トリスヒドロキンアミノメタン塩、リシン塩などを用いることができる。特に炭酸塩、リン酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩は、pH10.0以上の高pH領域での緩衝能に優れ、発色現像液に添加しても写真性能面への悪影響(カプリなど)がなく、安価であるといった観点から好ましい緩衝剤である。
【0215】
上記緩衝剤の例示化合物としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、四ホウ酸カリウム、o−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(サリチル酸ナトリウム)、o−ヒドロキシ安息香酸カリウム、5−スルホ−2−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(5−スルホサリチル酸ナトリウム)、5−スルホ−2−ヒドロキシ安息香酸カリウム(5−スルホサリチル酸カリウム)などを挙げることができる。しかしながら本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0216】
これら緩衝剤は、発色現像液1リットルあたり0.01〜2モルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5モルである。
【0217】
本発明に用いられる発色現像液には、その他の成分として、例えばカルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤や、安定性向上剤でもある各種キレート剤を添加することもできる。例えば、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、N,N,N−トリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−テトラメチレンスルホン酸、トランスシロヘキサシジアミン四酢酸、1,2−ジアミノプロバン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミンオルトヒドロキシフェニル酢酸、エチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、β−アラニンジ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、N,N′−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N′−ジ酢酸、1,2−ジヒドロキシベンゼン−4,6−ジスルホン酸等が挙げられる。これらのキレート剤は必要に応じて2種以上併用しても良い。また、これらのキレート剤の量は、発色現像液処理中の金属イオンを封鎖するのに充分な量であれば良い。例えば、1リットル当り0.lg〜10g程度になるように添加する。
【0218】
本発明に用いられる発色現像液には、必要により任意の現像促進剤を添加することもできる。現像促進剤としては、特公昭37−16088号、同37−5987号、同38−7826号、同44−12380号、同45−9019号及び米国特許第3,813,247号等の各公報または明細書に表されるネオエーテル系化合物、特開昭52−49829号及び同50−15554号公報に表わされるp−フェニレンジアミン系化合物、特開昭50−137726号、特公昭44−30074号、特開昭56−156826号及び同52−43429号公報等に表される4級アンモニウム塩類、米国特許第2,494,903号、同3,128,182号、同4,230,796号、同3,253,919号、特公昭41−11431号、米国特許第2,482,546号、同2,596,926号及び同3,582,346号等の各公報または明細書に記載のアミン系化合物、特公昭37−16088号、同42−25201号、米国特許第3,128,183号、特公昭41−11431号、同42−23883号及び米国特許第3,532,501号等の各公報または明細書に表されるポリアルキレンオキサイド、その他1−フェニル−3−ビラゾリトン類またはイミダゾール類を必要に応じて添加することができる。それらの濃度は、発色現像液1リットルあたり0.001〜0.2モルが好ましく、より好ましくは0.01〜0.05モルである。
【0219】
発色現像液には、必要に応じて、ハロゲンイオンのほかに、任意のカブリ防止剤を添加できる。有機カブリ防止剤としては、例えばベンゾトリアゾール、6−ニトロベンズイミダゾール、5−ニトロイソインダゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−ニトロベンゾトリアゾール、5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−チアゾリル−ベンズイミダゾール、2−チアゾリルメチル−ベンズイミダゾール、インダゾール、ヒドロキシアザインドリジン、アデニンの如き含窒素ヘテロ環化合物を代表例として挙げられる。
【0220】
また、本発明に用いられる発色現像液には、必要に応じて、蛍光増白剤を使用することができる。蛍光増白剤としては、ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンスルホン酸化合物が好ましい。ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンスルホン酸化合物としては、公知もしくは市販のジアミノスチルベン系増自剤を用いることができる。公知のビス(トリアジニルアミノ)スチルベンスルホン酸化合物としては、例えば、特開平6−329936号、同7−140625号、同10−140849号などの公報に記載の化合物が好ましい。市販の化合物としては、例えば、「染色ノート」第9版(色染社),165〜168頁に記載されており、その中に記載されている化合物の中でも、Blankophor BSU liq.及びHakkol BRKが好ましい。
【0221】
また、その他のビス(トリアジニルアミノ)スチルベンスルホン酸化合物としては特開2001−281823号公報の段落番号〔0038〕〜同〔0049〕に記載の化合物I−1〜I−48及び特開2001−281823号公報の段落番号〔0050〕〜同〔0052〕に記載の化合物II−1〜II−16を挙げることもできる。上記した蛍光増白剤の添加量としては、発色現像液1リットルあたり0.1ミリモル〜0.1モルが好ましい。
【0222】
カラーペーパー用の発色現像処理液中に臭素イオンが含まれる場合は、1.0×10-3モル/リットル以下であることが好ましい。カラ−ペーパー用の発色現像処理液では、塩素イオンを3.5×10-2〜1.5×10-1モル/リットル含有することが好ましいが、塩素イオンは、通常現像の副生成物として現像液に放出されるので補充液には添加不要のこともある。
【0223】
また、本発明において、処理方法で適用されうる発色現像の処理温度は、現像処理されるハロゲン化銀カラー写真感光材料がカラーペーパーである場合は、30〜55℃が好ましく、より好ましくは35〜55℃であり、より好ましくは38〜45℃である。
【0224】
本発明の画像形成方法においては、ハロゲン化銀カラー写真感光材料に走査露光を施した後、0.1〜30秒以内に発色現像処理を開始することが好ましく、また、発色現像処理時間は、5〜60秒が好ましく、より好ましくは5〜50秒である、更に好ましくは5〜30秒である。補充量は少ない方が好ましいが、感光材料1m2当たり15〜600mlが適当であり、好ましくは15〜120ml、特に好ましくは30〜60mlである。なお、本発明でいう発色現像時間とは、感光材料が発色現像液中に入ってから次の処理工程(例えば漂白定着液)に入るまでの時間をいう。自動現像機などで処理される場合には、感光材料が発色現像液中に浸漬されている時間(いわゆる液中時間)と、感光材料が発色現像液を離れ、次の処理工程に向けて液外を搬送される時間(いわゆるクロスオーバータイム)との両者の合計を発色現像時間という。また、クロスオーバータイムは10秒以下が好ましく、より好ましくは5秒以下である。
【0225】
本発明において、漂白液あるいは漂白定着液において用いられる漂白剤としては、いかなる漂白剤も用いることができるが、特に鉄(III)の有機錯塩(例えば、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、エチレンジアミンジコハク酸などのアミノポリカルボン酸類、アミノポリホスホン酸、ホスホノカルボン酸および有機ホスホン酸などの錯塩)もしくはクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの有機酸、過硫酸塩、過酸化水素などが好ましい。
【0226】
これらのうち、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、メチルイミノ二酢酸の鉄(III)錯塩が漂白力が高いことから好ましい。これらの第二鉄イオン錯塩は錯塩の形で使用してもよいし、第二鉄塩、例えば硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄アンモニウム、燐酸第二鉄などとアミノポリカルボン酸、アミノポリホスホン酸、ホスホノカルボン酸などのキレート剤とを用いて溶液中で第二鉄イオン錯塩を形成させてもよい。また、キレート剤を第二鉄イオン錯塩を形成する以上に過剰に用いてもよい。鉄錯体のなかでもアミノポリカルボン酸鉄錯体が好ましく、その添加量は0.01〜1.0モル/リットルが好ましく、より好ましくは0.05〜0.50モル/リットルである。
【0227】
漂白液あるいは漂白定着液には、漂白促進剤として種々の化合物を用いることができる。例えば、リサーチディスクロージャー17129号(1978年7月号)に記載のメルカプト基またはジスルフイド結合を有する化合物や、チオ尿素系化合物、あるいは沃素、臭素イオン等のハロゲン化物が漂白力に優れる点で好ましい。
【0228】
その他、漂白液あるいは漂白定着液には、臭化物(例えば、臭化カリウム)または塩化物(例えば、塩化カリウム)または沃化物(例えば、沃化アンモニウム)等の再ハロゲン化剤を含むことができる。必要に応じ硼砂、メタ硼酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、グリコール酸などのpH緩衝能を有する一種類以上の無機酸、有機酸およびこれらのアルカリ金属またはアンモニウム塩または、硝酸アンモニウム、グアニジンなどの腐蝕防止剤などを添加することができる。
【0229】
定着液あるいは漂白定着液に使用される定着剤は、公知の定着剤、即ちチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムなどのチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムなどのチオシアン酸塩、エチレンビスチオグリコール酸、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールなどのチオエーテル化合物およびチオ尿素類などの水溶性のハロゲン化銀溶解剤であり、これらを一種あるいは二種以上混合して使用することができる。本発明においては、チオ硫酸特にチオ硫酸アンモニウム塩の使用が好ましい。1リットルあたりの定着剤の量は、0.1〜5.0モルが好ましく、更に好ましくは0.3〜2.0モルの範囲である。漂白定着液または定着液のpH領域は、3〜10が好ましく、更には5〜9が特に好ましい。
【0230】
また、漂白液、定着液、漂白定着液には、その他各種の蛍光増白剤や消泡剤あるいは界面活性剤、ポリビニルピロリドン、メタノール等の有機溶媒を含有させることができる。
【0231】
漂白液、定着液、漂白定着液は、保恒剤として亜硫酸塩、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸アンモニウム等などの添加が一般的であるが、その他、アスコルビン酸や、カルボニル重亜硫酸付加物、あるいは、カルボニル化合物等を添加してもよい。
【0232】
更には緩衝剤、蛍光増白剤、キレート剤、消泡剤、防カビ剤等を必要に応じて添加してもよい。また、漂白液、定着液、漂白定着液のアンモニウムカチオン濃度は作業性の点からは全カチオンに対して50mol%以下であること好ましいが、処理性の点からはアンモニウムカチオン濃度が50mol%以上であること好ましい。
【0233】
また、本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料の処理方法に適用されうる漂白定着工程に要する時間は90秒以下であることが好ましく、より好ましくは45秒以下である。ここでいう漂白定着工程に要する時間とは、該工程が複数槽を有する場合は、第1槽に感光材料が浸漬してから最終槽を出るまでの時間を指し、1槽の場合は、例えば後続するリンスまたは安定化液へ感光材料が浸漬するまでの時間を指し、その間のクロスオーバータイムを含むものとする。クロスオーバータイムは10秒以下が好ましく、より好ましくは5秒以下である。また。漂白定着液の温度は20〜70℃が好ましく、望ましくは25〜50℃である。また、漂白定着液の補充量は200ml/m2以下が好ましく、より好ましくは20ml/m2〜100ml/m2である。
【0234】
漂白処理液の補充量は、200ml/m2以下が好ましく、より好ましくは50ml/m2〜200ml/m2である。また、漂白工程の処理時間の合計は、15秒〜90秒であることが好ましい。ここでいう漂白工程に要する時間とは、該工程が複数槽を有する場合は、第1槽に感光材料が浸漬してから最終槽を出るまでの時間を指し、1槽の場合は、例えば後続するリンスまたは安定化液へ感光材料が浸漬するまでの時間を指し、その間のクロスオーバータイムを含むものとする。クロスオーバータイムは10秒以下が好ましく、より好ましくは5秒以下である。また、処理温度は25℃〜50℃であることが好ましい。定着処理液の補充量は、600ml/m2以下が好ましく、より好ましくは20ml/m2〜500ml/m2である。また、定着工程の処理時間の合計は、15秒〜90秒であることが好ましい。ここでいう定着工程に要する時間とは、該工程が複数槽を有する場合は、第1槽に感光材料が浸漬してから最終槽を出るまでの時間を指し、1槽の場合は、例えば後続するリンスまたは安定化液へ感光材料が浸漬するまでの時間を指し、その間のクロスオーバータイムを含むものとする。クロスオーバータイムは10秒以下が好ましく、より好ましくは5秒以下である。また、処理温度は25℃〜50℃であることが好ましい。
【0235】
次に、リンスまたは安定化工程及びそこで用いる処理液について説明する。
【0236】
安定化工程で用いるリンスまたは安定化液には、キレート剤(エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸等)、緩衝剤(炭酸カリウム、硼酸塩、酢酸塩、リン酸塩等)、防黴剤(ディアサイド702(米国ディアボーン社製)、p−クロロ−m−クレゾール、ベンゾイソチアゾリン−3−オン等)、蛍光増白剤(トリアジニルスチルベン系化合物等)、酸化防止剤(アスコルビン酸塩等)、水溶性金属塩(亜鉛塩、マグネシウム塩等)等、通常安定液に含有せしめる成分を適宜用いることができる。
【0237】
更にリンスまたは安定化液には、液保存性の点からp−トルエンスルフィン酸、m−カルボキシベンゼンスルフィン酸などのアリ−ルスルフィン酸などを含有させてもよく、亜硫酸塩、重亜硫酸塩またはメタ重亜硫酸塩も含有させることが好ましい。亜硫酸イオンを放出するものであれば、有機物、無機物いかなるものでもよいが、好ましくは無機塩である。好ましい具体的化合物としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸アンモニウム等が挙げられる。これらの塩は安定液中に少なくとも1×10-3モル/L以上になるような量が添加されることが好ましく、更に好ましくは5×10-3モル/L〜5×10-2モル/Lになるようなに添加されることである。
【0238】
安定化工程の好ましいpHは4〜10が好ましく、更に好ましくは5〜8である。
【0239】
安定化工程の温度は、処理するハロゲン化銀カラー写真感光材料の用途・特性等で種々設定し得るが、一般には15〜45℃が好ましく、より好ましくは20〜40℃である。時間は任意に設定できるが短い方が処理時間の低減の見地から望ましい。好ましくは5秒〜1分45秒、更に好ましくは10秒〜1分であるが、ハロゲン化銀カラー写真感光材料がカラーペーパーである場合には、安定化処理工程に要する時間が8〜26秒であることが好ましく、またハロゲン化銀カラー写真感光材料がカラーネガフィルムである場合には、安定化処理工程に要する時間が10〜40秒であることが好ましい。
【0240】
補充量は、少ない方がランニングコスト、排出量減、取扱い性等の観点で好ましい。
【0241】
具体的な好ましい補充量は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料、単位面積あたり前浴からの持込み量の0.5〜50倍が好ましく、より好ましくは3倍〜40倍である。またはハロゲン化銀カラー写真感光材料1m2当たり1リットル以下が好ましく、より好ましくは500ml以下である。また補充は連続的に行っても間欠的に行ってもよい。
【0242】
本発明に係る処理方法においては、安定化液を用いた安定化工程の構成としては、1槽で構成されていても、あるいは2層以上で構成されていても良いが、好ましくは2槽以上で構成された多段向流方式を用いることが好ましい。
【0243】
多段向流方式とは、複数に分割された安定化槽において、感光材料の搬送方向の下流から上流にかけて安定化液が多段の各分割安定化槽にオーバーフローしながらハロゲン化銀写真感光材料の搬送路に沿って流れ、安定化処理がなされる方式である。
【0244】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料の現像処理に用いる現像処理装置としては、処理槽に配置されたローラーに感光材料をはさんで搬送するローラートトランスポートタイプであっても、ベルトに感光材料を固定して搬送するエンドレスベルト方式であってもよいが、処理槽をスリット状に形成して、この処理槽に処理液を供給するとともに感光材料を搬送する方式や処理液を噴霧状にするスプレー方式、処理液を含浸させた担体との接触によるウエッブ方式、粘性処理液による方式なども用いることができる。大量に処理する場合には、自動現像機を用いてランニング処理されるのが通常だが、この際、補充液の補充量は少ない程好ましく、環境適性等より最も好ましい処理形態は、補充方法として錠剤の形態で処理剤を添加することであり、公開技報94−16935に記載の方法が最も好ましい。
【0245】
本発明の感光材料の処理に用いる現像処理装置としては、処理槽に配置されたローラーに感光材料を挟んで搬送するローラートランスポートタイプであっても、ベルトに感光材料を固定して搬送するエンドレスベルト方式であってもよいが、処理槽をスリット状に形成して、この処理槽に処理液を供給すると共に感光材料を搬送する方式や処理液を噴霧状にするスプレー方式、処理液を含浸させた担体との接触によるウエッブ方式、粘性処理液による方式なども用いることができる。大量に処理する場合には、自動現像機を用いてランニング処理されるのが、通常だがこの際、補充液の補充量は少ない程好ましく、環境適性等より最も好ましい処理形態は、補充方法として錠剤の形態で処理剤を添加することであり、公開技法94−16935号に記載の方法が最も好ましい。
【0246】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、1画面当たりの面積が3〜7cm2であるネガフィルムを通して露光し画像形成する場合に、特に本発明の感光材料による画質の改良度が大きく好ましい。上記ネガフィルムは情報記録能を有するものであってもよい。
【実施例】
【0247】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0248】
実施例1
《青感性層ハロゲン化銀乳剤の調製》
〔ハロゲン化銀乳剤の調製〕
平均粒径0.141μmの塩化銀乳剤を種晶として用い、特開昭62−160128号公報記載の混合撹拌装置を用いて、以下の手順で粒子成長を行い、ハロゲン化銀乳剤A−1を調製した。
【0249】
脱イオンゼラチンの102.5gとNaClの10.5gを、純水4.1Lに溶解した後、下記界面活性剤Vの10質量%メタノール溶液の2.5mlを加え、45℃に保温し、硝酸銀換算で0.133モル相当の種晶を加えた。高速攪拌しながら、2.2モル/LのNaCl水溶液でEAgを123mVに調整した後、直ちに表1に記載したS1溶液とX1溶液をダブルジェット法により107分間で添加した(第1添加)。
【0250】
界面活性剤V:HO(CH2CH2O)m〔CH(CH3)CH2O〕20(CH2CH2O)nH (m+n=10)
上記S1溶液とX1溶液の添加に引き続き、表1に記載のS2溶液とX2溶液をダブルジェット法により19分間で添加した(第2添加)。
【0251】
上記添加終了後に、特開平5−72658号に記載の方法に従い、アミノ基をフェニルカルバモイル化した化学修飾ゼラチン(修飾率95%)150gを含む水溶液を添加した後、pHを調節して脱塩及び水洗処理を施し、追加の脱イオンゼラチンを加えて良く分散し、40℃にてpHを5.7、pAgを7.6に調整した。以上のようにして、塩化銀98.3モル%、臭化銀1.7モル%のハロゲン組成からなる、平均粒子サイズ(同体積の立方体換算辺長)0.72μm、変動係数8%の立方体ハロゲン化銀粒子を含むハロゲン化銀乳剤A−1を得た。
【0252】
上記ハロゲン化銀乳剤A−1の調製において、種晶乳剤の添加量、第1添加及び第2添加で使用する溶液を表1に記載したように変更し、かつ添加時間も各乳剤毎に最適に調整してハロゲン化銀乳剤B−1〜G−1を調製した。ハロゲン化銀乳剤B−1〜G−1の平均粒子サイズは表に示した通りであり、各ハロゲン化銀乳剤はいずれも変動係数8%の立方体ハロゲン化銀粒子を含むハロゲン化銀乳剤であった。
【0253】
【化8】

【0254】
【表1】

【0255】
〔青感性層ハロゲン化銀乳剤の調製〕
(青感性層ハロゲン化銀乳剤A−11の調製)
上記ハロゲン化銀乳剤A−1を65℃に維持して、塩化カリウム2.30×10-3モル/Agモル、分光増感色素A(下記分光増感色素1:分光増感色素2のモル比=90:10の混合物)4.0×10-4モル/Agモルを加えて分光増感処理を施し、さらに、塩化ナトリウム1.51×10-2モル/Agモル、p−トルエンチオスルフォン酸1.13×10-5モル/Agモル、チオ硫酸ナトリウム2.07×10-6モル/Agモル、塩化金酸4.97×10-6モル/Agモル、チオシアン酸カリウム8.36×10-5モル/Agモル相当の各溶液を添加、熟成して最適に化学増感処理を施した。その後、下記チオスルフォン酸化合物−1を4.10×10-5モル/Agモル、下記メルカプト化合物−1を2.60×10-4モル/Agモル、メルカプト化合物−2を3.31×10-5モル/Agモル加え10分間熟成して安定化した後、降温冷却して青感性層ハロゲン化銀乳剤A−11を調製した。
【0256】
【化9】

【0257】
(青感性層ハロゲン化銀乳剤B−11の調製)
上記青感性層ハロゲン化銀乳剤A−11の調製において、ハロゲン化銀乳剤A−1に代えて、ハロゲン化銀乳剤B−1を用いた以外は同様にして分光増感及び化学増感処理を施して、青感性層ハロゲン化銀乳剤B−11を調製した。なお、各添加剤の量は、ハロゲン化銀乳剤A−1を基準として平均粒子サイズの逆数に比例する量となるように適宜調整した。
【0258】
(青感性層ハロゲン化銀乳剤B−12の調製)
上記青感性層ハロゲン化銀乳剤B−11の調製において、チオ硫酸ナトリウムの添加量の40モル%をカルコゲン化合物−1(トリフリルフォスフィンセレニド)に置き換えた以外は同様にして、青感性層ハロゲン化銀乳剤B−12を調製した。
【0259】
(青感性層ハロゲン化銀乳剤B−13の調製)
上記青感性層ハロゲン化銀乳剤B−11の調製において、分光増感色素Aの添加量を表2に記載の量に変更した以外は同様にして、青感性層ハロゲン化銀乳剤B−13を調製した。
【0260】
(青感性層ハロゲン化銀乳剤C−11の調製)
上記青感性層ハロゲン化銀乳剤A−11の調製において、ハロゲン化銀乳剤A−1に代えて、ハロゲン化銀乳剤C−1を用いた以外は同様にして分光増感及び化学増感処理を施して、青感性層ハロゲン化銀乳剤C−11を調製した。なお、各添加剤の量は、ハロゲン化銀乳剤A−1を基準として平均粒子サイズの逆数に比例する量となるように適宜調整した。
【0261】
(青感性層ハロゲン化銀乳剤C−12の調製)
上記青感性層ハロゲン化銀乳剤C−11の調製において、チオ硫酸ナトリウムの添加量の40モル%を前記カルコゲン化合物−1に置き換えた以外は同様にして、青感性層ハロゲン化銀乳剤C−12を調製した。
【0262】
(青感性層ハロゲン化銀乳剤C−13の調製)
上記青感性層ハロゲン化銀乳剤C−11の調製において、分光増感色素Aの添加量を表2に記載の量に変更した以外は同様にして、青感性層ハロゲン化銀乳剤C−13を調製した。
【0263】
(青感性層ハロゲン化銀乳剤D−11の調製)
上記青感性層ハロゲン化銀乳剤B−12の調製において、ハロゲン化銀乳剤B−1に代えて、ハロゲン化銀乳剤D−1を用いた以外は同様にして分光増感及び化学増感処理を施して、青感性層ハロゲン化銀乳剤D−11を調製した。なお、各添加剤の量は、ハロゲン化銀乳剤B−1を基準として平均粒子サイズの逆数に比例する量となるように適宜調整した。
【0264】
(青感性層ハロゲン化銀乳剤D−12の調製)
上記青感性層ハロゲン化銀乳剤D−11の調製において、分光増感色素Aの添加量を表2に記載の量に変更した以外は同様にして、青感性層ハロゲン化銀乳剤D−12を調製した。
【0265】
(青感性層ハロゲン化銀乳剤E−11の調製)
上記青感性層ハロゲン化銀乳剤B−12の調製において、ハロゲン化銀乳剤B−1に代えて、ハロゲン化銀乳剤E−1を用いた以外は同様にして分光増感及び化学増感処理を施して、青感性層ハロゲン化銀乳剤E−11を調製した。なお、各添加剤の量は、ハロゲン化銀乳剤B−1を基準として平均粒子サイズの逆数に比例する量となるように適宜調整した。
【0266】
(青感性層ハロゲン化銀乳剤E−12、E−13の調製)
上記青感性層ハロゲン化銀乳剤B−11の調製において、分光増感色素Aの添加量を表2に記載の量にそれぞれ変更した以外は同様にして、青感性層ハロゲン化銀乳剤E−12、E−13を調製した。
【0267】
(青感性層ハロゲン化銀乳剤E−14の調製)
上記青感性層ハロゲン化銀乳剤B−12の調製において、分光増感色素Aの添加量を表2に記載の量にそれぞれ変更した以外は同様にして、青感性層ハロゲン化銀乳剤E−14を調製した。
【0268】
(青感性層ハロゲン化銀乳剤F−11の調製)
上記青感性層ハロゲン化銀乳剤B−11の調製において、ハロゲン化銀乳剤B−1に代えて、ハロゲン化銀乳剤F−1を用いた以外は同様にして分光増感及び化学増感処理を施して、青感性層ハロゲン化銀乳剤F−11を調製した。なお、各添加剤の量は、ハロゲン化銀乳剤B−1を基準として平均粒子サイズの逆数に比例する量となるように適宜調整した。但し、分光増感色素Aは表2に記載した量を添加した。
【0269】
(青感性層ハロゲン化銀乳剤F−12の調製)
上記青感性層ハロゲン化銀乳剤B−12の調製において、ハロゲン化銀乳剤B−1に代えて、ハロゲン化銀乳剤F−1を用いた以外は同様にして分光増感及び化学増感処理を施して、青感性層ハロゲン化銀乳剤F−12を調製した。なお、各添加剤の量は、ハロゲン化銀乳剤B−1を基準として平均粒子サイズの逆数に比例する量となるように適宜調整した。但し、分光増感色素Aは表2に記載した量を添加した。
【0270】
(青感性層ハロゲン化銀乳剤G−11の調製)
上記青感性層ハロゲン化銀乳剤B−12の調製において、ハロゲン化銀乳剤B−1に代えて、ハロゲン化銀乳剤G−1を用いた以外は同様にして分光増感及び化学増感処理を施して、青感性層ハロゲン化銀乳剤G−11を調製した。なお、各添加剤の量は、ハロゲン化銀乳剤B−1を基準として平均粒子サイズの逆数に比例する量となるように適宜調整した。但し、分光増感色素Aは表2に記載した量を添加した。
【0271】
【表2】

【0272】
《緑感性層ハロゲン化銀乳剤及び赤感性層ハロゲン化銀乳剤の調製》
〔ハロゲン化銀乳剤の調製〕
平均粒径0.141μmの塩化銀乳剤を種晶として用い、特開昭62−160128号公報記載の混合撹拌装置を用いて、以下の手順で粒子成長を行い、ハロゲン化銀乳剤H−1を調製した。
【0273】
脱イオンゼラチンの107gとNaClの10.5gを、純水4.0Lに溶解した後、前記界面活性剤Vの10質量%メタノール溶液2.5mlを加えて45℃に保温し、硝酸銀換算で0.314モル相当の種晶を加えた。高速攪拌しながら、2.2モル/LのNaCl水溶液でEAg120mVに調整した後、直ちに表3に記載のS1溶液とX1溶液をダブルジェット法により105分間で添加した(第1添加)。
【0274】
S1溶液とX1溶液の添加に引き続き、表3に記載のS2溶液とX2溶液をダブルジェット法により6分間で添加した(第2添加)。
【0275】
上記添加終了後に、特開平5−72658号に記載の方法に従い、アミノ基をフェニルカルバモイル化した化学修飾ゼラチン(修飾率95%)150gを含む水溶液を添加した後、pHを調節して脱塩及び水洗処理を施し、追加の脱イオンゼラチンを加えて良く分散し、40℃にてpHを5.7、pAgを7.6に調整した。
【0276】
以上のようにして、塩化銀99.9モル%、臭化銀0.1モル%のハロゲン組成からなる、平均粒子サイズ(同体積の立方体換算辺長)0.54μm、変動係数8%の立方体ハロゲン化銀粒子を含むハロゲン化銀乳剤H−1を得た。
【0277】
上記ハロゲン化銀乳剤H−1の調製において、種晶乳剤の添加量、第1添加及び第2添加で使用する溶液を表3に記載したように変更し、かつ添加時間も各ハロゲン化銀乳剤毎に最適に調整して、ハロゲン化銀乳剤I−1〜K−1を調製した。
【0278】
ハロゲン化銀乳剤I−1〜K−1の平均粒子サイズは表3に示した通りであり、各ハロゲン化銀乳剤は、いずれも変動係数8%の立方体ハロゲン化銀粒子を含むハロゲン化銀乳剤であった。
【0279】
【表3】

【0280】
〔緑感性層ハロゲン化銀乳剤の調製〕
(緑感性層ハロゲン化銀乳剤H−11の調製)
上記調製したハロゲン化銀乳剤H−1を66℃に維持して、分光増感色素B(下記分光増感色素−3:分光増感色素−4のモル比=99:1の混合物)1.7×10-4モル/Agモルを加えて分光増感処理を施し、更に、5%H2SO4を81ml、臭化カリウム1.95×10-3モル/Agモル、p−トルエンチオスルフォン酸1.15×10-4モル/Agモル、下記硫黄化合物−1を4.25×10-7モル/Agモル、チオ硫酸ナトリウム1.54×10-6モル/Agモル、塩化金酸5.88×10-6モル/Agモル、チオシアン酸カリウム4.18×10-4モル/Agモル相当の各溶液を添加して熟成し、最適に化学増感処理を施した。その後、臭化カリウム9.75×10-4モル/Agモル、前記メルカプト化合物−1を3.91×10-4モル/Agモル加え10分間熟成して安定化した後、降温冷却して緑感性層ハロゲン化銀乳剤H−11を調製した。
【0281】
【化10】

【0282】
(緑感性層ハロゲン化銀乳剤I−11の調製)
上記緑感性層ハロゲン化銀乳剤H−11の調製において、ハロゲン化銀乳剤H−1に代えて、ハロゲン化銀乳剤I−1を用いた以外は同様にして分光増感及び化学増感処理を施して、緑感性層ハロゲン化銀乳剤I−11を調製した。なお、各添加剤の量は、ハロゲン化銀乳剤H−1を基準として平均粒子サイズの逆数に比例する量となるように適宜調整した。
【0283】
〔赤感性層ハロゲン化銀乳剤の調製〕
(赤感性層ハロゲン化銀乳剤J−11の調製)
上記調製したハロゲン化銀乳剤乳剤J−1を65℃に維持して、塩化カルシウム1.04×10-3モル/Agモル、p−トルエンチオスルフォン酸4.61×10-5モル/Agモル、前記硫黄化合物−1を3.62×10-7モル/Agモル、チオ硫酸ナトリウム1.64×10-6モル/Agモル、塩化金酸7.94×10-6モル/Agモル、チオシアン酸カリウム2.86×10-4モル/Agモル相当の各溶液を添加して化学増感処理を施した。その後、下記分光増感色素−5を3.99×10-5モル/Agモル、分光増感助剤−1を2.82×10-4モル/Agモル加えて熟成し、最適に化学増感と分光増感処理を施した。その後、下記メルカプト化合物−3を3.91×10-4モル/Agモル加え10分間熟成して安定化した後、降温冷却して赤感性層ハロゲン化銀乳剤J−11を調製した。
【0284】
【化11】

【0285】
(赤感性層ハロゲン化銀乳剤K−11の調製)
上記赤感性層ハロゲン化銀乳剤J−11の調製において、ハロゲン化銀乳剤J−1に代えて、ハロゲン化銀乳剤K−1を用いた以外は同様にして分光増感及び化学増感処理を施して、赤感性層ハロゲン化銀乳剤K−11を調製した。なお、各添加剤の量は、ハロゲン化銀乳剤J−1を基準として平均粒子サイズの逆数に比例する量となるように適宜調整した。
【0286】
実施例2
《ハロゲン化銀カラー写真感光材料の作製》
〔試料201の作製:比較例〕
坪量180g/m2の紙パルプの感光層塗布面に、表面処理を施したアナターゼ型酸化チタンを15質量%の含有量で分散して含む高密度溶融ポリエチレンをラミネートし、裏面には高密度ポリエチレンをラミネートした反射支持体をコロナ放電処理した後、ゼラチン下塗層を設け、更に表4、表5に記載の構成からなる各写真構成層を塗設して、ハロゲン化銀カラー写真感光材料である試料201を作製した。
【0287】
塗布液は下記のようにして調製した。
【0288】
なお、各感光層に使用したハロゲン化銀乳剤の詳細は、以下の通りである。
【0289】
第1層(青感層)の青感性ハロゲン化銀乳剤:青感性ハロゲン化銀乳剤A−11:青感性ハロゲン化銀乳剤B−11=90:10
第3層(緑感層)の緑感性ハロゲン化銀乳剤:緑感性ハロゲン化銀乳剤H−11:緑感性ハロゲン化銀乳剤I−11=5:95
第5層(赤感層)の赤感性ハロゲン化銀乳剤:赤感性ハロゲン化銀乳剤J−11:赤感性ハロゲン化銀乳剤K−11=33:67
上記試料101の作製において、添加剤1、硬膜剤(H−1)、(H−2)を添加した。また、各層のカプラー分散液の調製には界面活性剤(SU−2)を、また表面張力調整用の塗布助剤として、界面活性剤(SU−1)、(SU−3)を添加した。また、各層に、防黴剤(F−1)を全量が0.04g/m2となるように添加した。尚、表中に記載のハロゲン化銀乳剤は、銀に換算した値で示した。
【0290】
試料201の作製に用いた各添加剤の詳細は、以下の通りである。
【0291】
Sol−1:トリクレジルホスフェート
マット剤1:SiO2(平均粒径3.0μm)
【0292】
【表4】

【0293】
【表5】

【0294】
【化12】

【0295】
【化13】

【0296】
【化14】

【0297】
【化15】

【0298】
【化16】

【0299】
〔試料202の作製:比較例〕
上記試料201の作製において、第1層(青感層)の青感性ハロゲン化銀乳剤A−11、B−11を、青感性ハロゲン化銀乳剤B−11:C−11=90:10に変更した以外は同様にして、試料202を作製した。
【0300】
〔試料203の作製:比較例〕
上記試料202の作製において、第1層である青感層の総銀量を3.0g/m2となるように、青感性ハロゲン化銀乳剤B−11及びC−11の添加量を変更した以外は同様にして、試料203を作製した。なお、青感性ハロゲン化銀乳剤B−11とC−11の比率は試料202と同条件とした。
【0301】
〔試料204の作製:本発明〕
上記試料201の作製において、第1層(青感層)の青感性ハロゲン化銀乳剤A−11、B−11を、青感性ハロゲン化銀乳剤B−12:C−12=90:10に変更した以外は同様にして、試料204を作製した。
【0302】
〔試料205の作製:本発明〕
上記試料201の作製において、第1層(青感層)の青感性ハロゲン化銀乳剤A−11、B−11を、青感性ハロゲン化銀乳剤B−13:C−13=90:10に変更した以外は同様にして、試料205を作製した。
【0303】
《ハロゲン化銀カラー写真感光材料の評価》
〔試料の強制劣化処理〕
上記作製した各試料を2部準備し、1部は試料作製直後に、自然放射線に対する強制劣化処理(Cs137を線源として300mR相当の放射線を照射)を行い、強制劣化処理を行わない基準試料と併せて以下の露光処理1及び現像処理1を施した。
【0304】
〔露光処理1〕
各試料をL版サイズのシート状に断裁した後、5400°Kの光源を用いて、0.5秒でウェッジ露光を行った。
【0305】
〔現像処理1〕
上記露光を施した各試料を、下記現像処理1に従って現像処理を行った。
【0306】
(現像処理1)
処理工程 処理温度 時間 補充量
発色現像 38.0±0.3℃ 45秒 80ml
漂白定着 35.0±0.5℃ 45秒 120ml
安定化 30〜34℃ 60秒 150ml
乾燥 60〜80℃ 30秒
〈発色現像液タンク液及び補充液〉
タンク液 補充液
純水 800ml 800ml
トリエチレンジアミン 2g 3g
ジエチレングリコール 10g 10g
臭化カリウム 0.01g −
塩化カリウム 3.5g −
亜硫酸カリウム 0.25g 0.5g
N−エチル−N−(βメタンスルホンアミドエチル)−3−メチル−4−アミノアニリン硫酸塩 6.0g 10.0g
N,N−ジエチルヒドロキシルアミン 6.8g 6.0g
トリエタノールアミン 10.0g 10.0g
ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム塩 2.0g 2.0g
蛍光増白剤(4,4′−ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体)
2.0g 2.5g
炭酸カリウム 30g 30g
それぞれ、水を加えて全量を1リットルとし、タンク液はpHを10.10に、補充液はpHを10.60に調整した。
【0307】
〈漂白定着液タンク液及び補充液〉
ジエチレントリアミン五酢酸第二鉄アンモニウム2水塩 65g
ジエチレントリアミン五酢酸 3g
チオ硫酸アンモニウム(70%水溶液) 100ml
2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール 2.0g
亜硫酸アンモニウム(40%水溶液) 27.5ml
水を加えて全量を1リットルとし、炭酸カリウム又は氷酢酸でpHを5.0に調整した。
【0308】
〈安定化液タンク液及び補充液〉
o−フェニルフェノール 1.0g
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
ジエチレングリコール 1.0g
蛍光増白剤(チノパールSFP) 2.0g
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸 1.8g
塩化ビスマス(45%水溶液) 0.65g
硫酸マグネシウム−7水塩 0.2g
PVP(ポリビニルピロリドン) 1.0g
アンモニア水(水酸化アンモニウム25%水溶液) 2.5g
ニトリロ三酢酸−三ナトリウム塩 1.5g
水を加えて全量を1リットルとし、硫酸又はアンモニア水でpHを7.5に調整した。
【0309】
〔濃度測定及び評価〕
このようにして得られたグレーステップ画像の各ステップを、濃度計PDA−65(コニカミノルタフォトイメージング社製)を用いて各反射濃度を測定し、横軸−露光量(LogE)、縦軸−反射濃度(D)からなる特性曲線を作成した。
【0310】
(放射線耐性の評価)
処理後の各試料の未露光部分及び最大発色濃度部分において、450nmの波長における反射濃度を測定した。自然放射線に対する強制劣化処理を行った試料の未露光部分の反射濃度をA′(450)とし、強制劣化処理を行わない基準試料の未露光部分の反射濃度をA(450)、最大発色部分(Dmax部)の反射濃度をB(450)として、R(450)=B(450)/〔A′(450)−A(450)〕の値を求め、これを放射線耐性の尺度とした。放射線による未露光部分の濃度上昇が少ないとR(450)の値は大きくなり、放射線耐性に優れていることを表す。
【0311】
(感度の測定)
強制劣化処理を行わない基準試料の特性曲線において、イエロー反射濃度が未露光部分の反射濃度+0.7となる露光量の逆数を感度として定義し、試料201の感度を100とする相対感度を求めた。感度は値が大きいほど高感度で好ましいことを示す。
【0312】
以上により得られた結果を、表6に示す。
【0313】
【表6】

【0314】
表6に記載の結果より明らかなように、比較例である試料201から青感層のハロゲン化銀乳剤の粒子サイズを小さくした試料202では、放射線耐性は改良されるものの同時に感度低下を起こしてしまい高感度のハロゲン化銀カラー写真感光材料を達成できない。また、比較例である試料202から青感層の銀量を増量した比較例である試料203では、試料202から感度は向上しているが放射線耐性が顕著に劣化しており、いずれも放射線耐性と感度の両立が困難であることが分かる。
【0315】
これに対し、本発明に係る式(VII)あるいは式(VII′)で規定する要件を満たすハロゲン化銀乳剤を用いた本発明の試料204〜206は、比較例に対し同等の感度レベルを維持すると共に、放射線耐性が改良されており、その中でも青感層の総銀量が2.8g/m2以下とすることにより、良好な結果が得られることが分かる。
【0316】
実施例3
《ハロゲン化銀カラー写真感光材料作製》
〔試料301の作製:本発明〕
実施例2に記載の試料201の作製において、青感層で用いたハロゲン化銀乳剤A−11とB−11に代えて、各々ハロゲン化銀乳剤D−11とE−11を90:10で使用した以外は同様にして、試料301を作製した。
【0317】
〔試料302の作製:本発明〕
実施例2に記載の試料201の作製において、青感層で用いたハロゲン化銀乳剤A−11とB−11に代えて、各々ハロゲン化銀乳剤D−12とE−12を90:10で使用した以外は同様にして、試料302を作製した。
【0318】
《ハロゲン化銀カラー写真感光材料の評価》
〔放射線耐性の評価及び相対感度の測定〕
上記作製した各試料と実施例2で作製した試料201を2部準備し、1部は試料作製直後に、自然放射線に対する強制劣化処理(Cs137を線源として300mR相当の放射線を照射)を行い、強制劣化処理を行わない基準試料と併せて実施例2に記載の露光処理1及び現像処理1を施した。
【0319】
次いで、実施例2に記載の方法に従って、放射線耐性の評価と感度の測定を行った。
【0320】
〔照度不軌の評価〕
(露光及び現像処理)
上記作製した各試料と実施例2で作製した試料201をについて、下記の方法に従って露光処理2及び現像処理2を施した。
【0321】
〈露光処理2〉
露光装置を、キセノンフラッシュ高照度露光用感光計(山下電装(株)製SX−20型)に変更し、ラッテンフィルターを組み合わせて、グレーステップ画像が得られるように、露光量を適宜調整して、センシトメトリー用光学楔を介して露光秒数10-6秒で露光を行った。
【0322】
〈現像処理2〉
下記の処理工程に準じて、現像処理2を行った。
【0323】
処理工程 処理温度 時間 補充量
発色現像 42.0±0.3℃ 20秒 80ml
漂白定着 40.0±0.5℃ 20秒 120ml
安定化 30〜34℃ 20秒 150ml
乾燥 60〜80℃ 30秒
なお、上記現像処理2の各工程で用いた処理液は、前記現像処理1に記載の各処理液組成と同一とした。
【0324】
上記現像処理2で得られたグレーステップ画像の各ステップを、濃度計PDA−65(コニカミノルタフォトイメージング社製)を用いて各反射濃度を測定し、横軸−露光量(LogE)、縦軸−反射濃度(D)からなる特性曲線を作成した。
【0325】
(評価)
前記露光処理1(0.5秒)及び現像処理1の組み合わせで得られた特性曲線1から、イエロー発色濃度が0.7となる露光量より0.5LogE多い露光量における反射濃度DY(0.5)を求め、また上記露光処理2(10-6秒)及び現像処理2の組み合わせで得られた特性曲線2から、イエロー発色濃度が0.7となる露光量より0.5LogE多い露光量における反射濃度DY(10-6)を求め、これらによりS(Y)=DY(0.5)−DY(10-6)の値を算出した。S(Y)の値が小さいほど、露光時の照度や現像条件の違いに対してより安定な発色濃度が得られることを表す。
【0326】
以上により得られた結果を、表7に示す。
【0327】
【表7】

【0328】
表7に記載の結果より明らかなように、比較例である試料201に対し、青感層ハロゲン化銀乳剤に請求項4及び請求項7で規定する要件を満たすハロゲン化銀乳剤を使用した本発明の試料301は、放射線耐性及び感度に優れ、かつ露光時の照度の違いや現像処理条件に対して安定であることが分かる。また、青感層ハロゲン化銀乳剤乳剤に請求項5及び7で規定する要件を満たすハロゲン化銀乳剤を使用した試料302も、試料301と同様に優れた性能を有していることが分かる。
【0329】
実施例4
《ハロゲン化銀カラー写真感光材料の作製》
〔試料401の作製:本発明〕
実施例3に記載の試料302の作製において、青感層のハロゲン化銀乳剤D−12とE−12に代えて、各々ハロゲン化銀乳剤E−13とF−11を90:10使用した以外は同様にして、試料401を作製した。
【0330】
〔試料402の作製:本発明〕
実施例3に記載の試料302の作製において、青感層のハロゲン化銀乳剤D−12とE−12に代えて、各々ハロゲン化銀乳剤E−13とF−11を90:10使用し、かつ銀量を0.21g/m2に変更した以外は同様にして、試料402を作製した。
【0331】
〔試料403の作製:本発明〕
上記試料401の作製において、青感層のハロゲン化銀乳剤E−13とF−11に代えて、各々ハロゲン化銀乳剤E−14とF−12を90:10使用し、かつ銀量を0.185g/m2に変更した以外は同様にして、試料403を作製した。
【0332】
〔試料404の作製:本発明〕
上記試料401の作製において、青感層のハロゲン化銀乳剤E−13とF−11に代えて、各々ハロゲン化銀乳剤F−12とG−11を90:10使用した以外は同様にして、試料404を作製した。
【0333】
《ハロゲン化銀カラー写真感光材料の評価》
上記作製した試料401〜404と実施例2で作製した試料201について、実施例2に記載の方法と同様にして放射線耐性の評価及び相対感度の測定と、実施例3に記載の方法に従って、照度不軌の評価(S(Y))を行い、得られた結果を表8に示す。
【0334】
【表8】

【0335】
表8に記載の結果より明らかなように、比較例である試料201に対し、青感層に請求項6、7、10で規定する要件を満たすハロゲン化銀乳剤乳剤を使用した試料401、402は、放射線耐性及び相対感度に優れ、かつ露光時の照度の違いや現像処理条件に対して安定であることが分かる。また、請求項5、6、7、10で規定する要件を満たすハロゲン化銀乳剤を使用した試料403及び404では、相対感度や照度不軌、処理安定性を損なうことなく、試料402から放射線耐性が更に改良されていることが分かる。
【0336】
実施例5
実施例−1で調製した緑感性ハロゲン化銀乳剤H−1及びI−1、また赤感性ハロゲン化銀乳剤J−1及びK−1から、各青感性ハロゲン化銀乳剤で変更を行ったと同様の方法で、請求項4〜7で規定する要件を満たすハロゲン化銀乳剤を調製し、実施例2〜6と同様に、それぞれ緑感層、赤感層に適用して、同様の評価を行った結果、実施例2〜4に記載の青感層の結果と同様に、緑感層、赤感層でも良好な結果が得られることを確認することができた。
【0337】
また、本発明に係る各ハロゲン化銀乳剤を、青感層、緑感層及び赤感層に適用し、総銀量を0.45〜0.55g/m2まで変更した試料を作製して同様の評価を行った結果、総銀量が0.51g/m2以下で良好な結果が得られ、0.48g/m2以下とすることでより良好な結果が得られることも確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射支持体上に、塩化銀含有率が90モル%以上の感光性ハロゲン化銀粒子をそれぞれ含有するイエロー画像形成層、マゼンタ画像形成層、シアン画像形成層を各々少なくとも1層有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、発色現像処理後の波長λnm(λ=450nm、550nm、650nm)における各未露光部のカブリ濃度A(λ)と最大発色濃度B(λ)、及び300mR相当の放射線を照射した後に発色現像処理を施したときの波長λnm(λ=450nm、550nm、650nm)における各未露光部のカブリ濃度A′(λ)が、下式(I)〜(III)で示される条件の少なくとも一つを満足することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(I)
B(450)/〔A′(450)−A(450)〕≧60
式(II)
B(550)/〔A′(550)−A(550)〕≧160
式(III)
B(650)/〔A′(650)−A(650)〕≧260
【請求項2】
前記未露光部のカブリ濃度A(λ)と最大発色濃度B(λ)、及び未露光部のカブリ濃度A′(λ)が、下式(I′)〜(III′)で示される条件の少なくとも一つを満足することを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(I′)
B(450)/〔A′(450)−A(450)〕≧90
式(II′)
B(550)/〔A′(550)−A(550)〕≧240
式(III′)
B(650)/〔A′(650)−A(650)〕≧360
【請求項3】
各画像形成層の感光波長でそれぞれ0.5秒間の露光した後、発色現像処理して得られるイエロー、マゼンタ及びシアンの各画像形成層の反射濃度をDY(0.5)、DM(0.5)、DC(0.5)とし、各画像形成層の感光波長でそれぞれ10-6秒間の露光した後、発色現像処理して得られるイエロー、マゼンタ及びシアンの各画像形成層の反射濃度をDY(10-6)、DM(10-6)、DC(10-6)とした時、下式(IV)〜(VI)で示される条件の少なくとも一つを満足することを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(IV)
DY(0.5)−DY(10-6)≦0.2
式(V)
DM(0.5)−DM(10-6)≦0.2
式(VI)
DC(0.5)−DC(10-6)≦0.2
〔式中、DY、DM、DCは、各画像形成層の感光波長で露光後に発色現像処理し、反射濃度0.7を得るのに要する露光量より0.5LogE多い露光量における反射濃度を表す。〕
【請求項4】
各画像形成層の少なくとも1層に含有される感光性ハロゲン化銀粒子が、2種類以上のカルコゲン化合物を用いて化学増感されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項5】
各画像形成層の少なくとも1層に含有される感光性ハロゲン化銀粒子に対する増感色素の添加量が、下式(VII)〜(IX)で示される条件の少なくとも一つを満足する条件で分光増感されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(VII)
VY>3.2×10-4/LY
式(VIII)
VM>2.3×10-4/LM
式(IX)
VC>0.6×10-4/LC
〔式中、VY、VM、VCは、それぞれの画像形成層に含有される感光性ハロゲン化銀粒子1モル(銀換算)に対する増感色素の添加モル数(mol/Agmol)を表す。またLY、LM、LCは、それぞれの画像形成層に含有される感光性ハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズ(μm)を表す。〕
【請求項6】
各画像形成層の少なくとも1層に含有される感光性ハロゲン化銀粒子に対する増感色素の添加量が、下式(VII′)〜(IX′)で示される条件の少なくとも一つを満足する条件で分光増感されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式(VII′)
VY≧3.5×10-4/LY
式(VIII′)
VM≧2.5×10-4/LM
式(IX′)
VC≧0.8×10-4/LC
〔式中、VY,VM,VC,LY,LM及びLCは前記式(VII),(VIII)及び式(IX)におけるそれらと同義である。〕
【請求項7】
各画像形成層の少なくとも1層に含有される感光性ハロゲン化銀粒子が、水配位子を有する8族金属錯体及び有機配位子を有する8族金属錯体から選ばれる少なくとも1種を、1×10-8〜1×10-4モル/Agモル含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項8】
各画像形成層に含まれる銀量の総和が、0.51g/m2以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項9】
各画像形成層に含まれる銀量の総和が、0.48g/m2以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項10】
前記イエロー画像形成層に含まれる銀量の総和が、0.23g/m2以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料を走査露光した後、0.1〜30秒で発色現像処理を開始し、かつ5〜30秒の発色現像処理を行うことを特徴とする画像形成方法。

【公開番号】特開2006−17986(P2006−17986A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195390(P2004−195390)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】