説明

ハロゲン化銀カラー写真感光材料

【課題】 シアンダイサウンドの様なサウンド信号を色像で記録するシステムに対応する、現像処理工程が簡便な映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供する。
【解決手段】 感光性ハロゲン化銀乳剤層のうち、支持体に最も近い層のハロゲン化銀乳剤粒子のハロゲン化銀組成が、塩化銀含有率95モル%以上の、塩臭化銀、塩ヨウ化銀、塩ヨウ臭化銀、または塩化銀であり、かつ、支持体と支持体に最も近い感光性ハロゲン化銀乳剤層の間に、黒色コロイド銀を含有する非感光性親水性コロイド層を少なくとも一層有し、かつ、ハロゲン化銀カラー写真感光材料中のFe量が6×10-5mol/m2以下である映画映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡略、短縮化された露光/処理工程で処理可能な映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化銀写真の応用である映画は、1秒間に24枚の緻密な静止画を順次投影し、動画像を得る方法であり、他の動画像を再生する方法に比べ圧倒的な高画質を有している。その高画質を原資とした大画面化が容易であり、大人数が同時に動画像を鑑賞するのに適している。それ故、映画館などの映画映写設備を有する大人数収容可能な劇場が多数作られている。しかしながら最近の急速な電子技術および情報処理技術の発達は、テキサスインスツルメンツ社のDMDデバイス、ヒューズ−JVC社のD−ILAデバイス、ソニー社の高精細液晶デバイス等を用いた映画に迫る画質を有し、より簡便な動画再生手段を提供可能なプロジェクターを開発できるまでに至った。従って、映画に対しても、本来の高画質を維持しつつ簡便性の付与、特に露光、現像といった現像所における作業の簡便化、時間短縮および処理安定性の向上が求められている。
【0003】
ハロゲン化銀写真感光材料において現像処理時間の短縮は従来から重要な課題として取り上げられ、現像速度の速いハロゲン化銀乳剤、カップリング活性の高いカプラーあるいは迅速現像が可能な処理剤などに関する研究が多く行われてきた。特に、塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤を用いることはカラー写真感光材料の迅速処理に極めて有効な手段である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、映画映写用ハロゲン化銀写真感光材料の現像作業を複雑かつ難しくしている要因の一つにサウンド現像の存在が挙げられる。
映画が発明されて以来、映像に音声をつける試みが種々なされてきた。映画の音声で重要な性能は画像と音声が同期することである。簡易かつ確実に同期を実現するためには1本の映写用フィルム上に、画像情報と音声情報が同時に記録されている事が理想的である。この様な背景から1920年代に映写用フィルム上に光学的に音声を記録する技術が開発された。当時の映写用フィルムは現像銀で画像を形成するB/W写真感光材料が主流であった。現像銀は紫外光から赤外光に至る広い範囲の光を吸収するため、現像銀で音声情報を記録する場合、光学読み取り装置の読み取り波長域には特に制約はなく、当時の技術で実用化が容易であった波長800nm〜900nmの近赤外域に最大感度を持つ装置が用いられた。
【0005】
その後に実用化された映写用ハロゲン銀カラー写真感光材料において、カラー画像を形成する発色色素は近赤外域に吸収を持たない。ところが、サウンド信号読み取りシステムは、開発当時から現代に至るまで変更は行われなかった。そのため、現在の映写用ハロゲン銀カラー写真感光材料においてもサウンド信号は銀像で記録されている。一方、映写用ハロゲン銀カラー写真感光材料において画像部は色純度を上げる必要から現像銀は処理工程で除去される。
【0006】
この様に、映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、銀像を必要としない色素画像と銀像で形成しなければならないサウンド信号が同じ材料上に存在する。このため、映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料の現像処理工程は、処理途中でサウンド信号が記録される部分(いわゆるサウンドトラック)にのみ、特殊な現像液を塗布する等の複雑なものとなり、工程数は12工程におよぶ(イーストマンコダック社より開示されているECP−2D処理に必要な工程数)。これは映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料と同じく画像鑑賞を目的としたハロゲン化銀カラー印画紙の現像工程はわずか3工程であることから考えると多いと言わざるを得ず、現像所にとって大きな負担になっている。
【0007】
この簡略化を目的に種々の方法、特に、色素画像形成と同じ処理工程でサウンドトラックを形成する方法が検討されてきた。その中で、サウンド信号読み取りシステムを改良する試みが推進されている。この代表的な例はシアン発色色素でサウンドトラックを形成するシアンダイサウンドと呼ばれる技術(SMTPE Technical Conference and World Media Expo(1996)における”Red LED Reproduction of Cyan Stereo Variable Area Dye Track”と題された報告で技術内容が開示された)である。この技術は、既存の映写用カラー写真感光材料が使え、かつ、現像所も既存の設備をほとんど改造せずに実現出来る方法である。サウンド読み取り機の改造は米国を中心に進んでおり、普及期に入りつつある。
【0008】
シアンダイサウンドにおいて、サウンド信号は画像部と同じ色素画像で記録され、現像銀は不要である。その為、処理工程の中で、サウンド信号用に銀像を形成するのに必要な工程が不要となるので、工程数が短縮出来る事になる。
さらに、サウンド信号用の銀像形成が不要なことは、映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料の設計にも影響を与える。
【0009】
拡大投影され鑑賞される映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、鮮鋭度は重要な画質要件である。鮮鋭度の向上にはイラジェーションやハレーションの防止が有効である。特にハレーションの防止においては、支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に着色層を設けることが有効である。この着色層に求められる性能は、現像処理後に無色になることである。現像処理時に脱色する着色剤としては黒色コロイド銀とアルカリ性下で溶解する染料の固体分散物が挙げられる。黒色コロイド銀は写真処理工程で容易に脱色出来るので、撮影用ハロゲン化銀カラー写真感光材料等で実用化されている。ところが、映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、先述したように銀像でサウンド信号を形成するので、黒色コロイド銀は使用できない。その為、脱色に時間がかかる染料の固体分散物を使用しているのが現状である(例えば、特許文献2)。シアンダイサウンドではサウンド信号を色像で形成する為、シアンダイサウンドを前提とした映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、黒色コロイド銀も使用可能となる。
【特許文献1】米国特許第4840878号明細書
【特許文献2】特開平11−95371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、第1にシアンダイサウンドの様なサウンド信号を色像で記録するシステムに対応する、現像処理工程が簡便な映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することである。本発明の目的は第2に、簡略化された処理工程においても、安定に処理可能な映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することである。本発明の目的は第3に、処理工程の簡略化により環境負荷を低減出来る映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題解決について鋭意検討した結果、ダイサウンドトラックの適用を前提に、ハレーション防止を目的としたコロイド銀着色層を設けた映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料において、処理後の白地濃度の変動が大きくなること。さらにこの濃度変動が、塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤を用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料において顕著であること。さらに、この濃度変動は感光材料中のFe量に依存し、Fe量を低減する事で、抑制出来ることを見い出し、本発明に至った。なお、映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料において、Fe量が写真性能に影響する事が特開2003−172984号公報に記載されているが、白地濃度の変化、特にコロイド銀含有層導入時の変化については述べられていない。
【0012】
従って、前記課題を解決する手段は以下の通りである。即ち、
<1>透過支持体上に、イエロー発色感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色感光性ハロゲン化銀乳剤層およびマゼンタ発色感光性ハロゲン化銀乳剤層を含む発色性および感色性が異なる少なくとも3種の感光性ハロゲン化銀乳剤層を少なくともそれぞれ一層ずつ有し、かつ、非感光性親水性コロイド層を少なくとも一層有する映画映写用ハロゲン化銀カラー感光材料であって、感光性ハロゲン化銀乳剤層のうち、支持体に最も近い層のハロゲン化銀乳剤粒子のハロゲン化銀組成が、塩化銀含有率95モル%以上の、塩臭化銀、塩ヨウ化銀、塩ヨウ臭化銀、または塩化銀であり、かつ、支持体と支持体に最も近い感光性ハロゲン化銀乳剤層の間に、黒色コロイド銀を含有する非感光性親水性コロイド層を少なくとも一層有し、かつ、ハロゲン化銀カラー写真感光材料中のFe量が6×10-5mol/m2以下であることを特徴とする映画映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
<2>前記ハロゲン化銀カラー写真感光材料中のFe量が、8×10-6mol/m2以下である<1>に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
<3>前記ハロゲン化銀カラー写真感光材料中のすべての感光性ハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀乳剤粒子のハロゲン化銀組成が、塩化銀含有率95モル%以上の、塩臭化銀、塩ヨウ化銀、塩ヨウ臭化銀、または塩化銀であることを特徴とする<1>または<2>にハロゲン化銀カラー写真感光材料。
<4>前記ハロゲン化銀カラー写真感光材料において、支持体に最も近いハロゲン化銀乳剤層と黒色コロイド銀を含有する非感光性親水性コロイド層が隣接していることを特徴とする<1>、<2>または<3>に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、シアンダイサウンド技術によるサウンド信号記録を前提にした簡略化された処理においても、白地濃度の安定性に優れた映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず本発明のハロゲン化銀写真感光材料に用いられるハロゲン化銀乳剤について説明する。本発明において、支持体に最も近い感光性ハロゲン化銀乳剤層中のハロゲン化銀乳剤粒子の塩化銀含有率は、95モル%以上である。さらに、発色現像の迅速化の観点から、全ての感光性ハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀乳剤粒子の塩化銀含有率が95モル%以上であることが好ましい。また、ハロゲン化銀乳剤粒子のハロゲン化銀組成としては塩化銀含有率95モル%以上の、塩化銀、塩臭化銀、塩ヨウ化銀、又は塩ヨウ臭化銀である。ハロゲン化銀乳剤粒子の塩化銀含有率は、98モル%以上であることがさらに好ましい。また、塩化銀粒子の表面に臭化銀局在相を有してもよい。該局在相のハロゲン化銀組成は、臭化銀含有率において少なくとも10モル%のものが好ましく、20モル%を越えるものがより好ましい。また主平面が(111)面又は(100)面である平板粒子を用いてもよい。主平面が(111)面又は(100)面である平板状高塩化銀乳剤粒子については、特開平6−138619号、米国特許第4,399,215号、同5,061,617号や米国特許第5,320,938号、同5,264,337号、同5,292,632号、同5,314,798号、同5,413,904号、WO94/22051号等に開示されている方法にて調製することができる。
【0015】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、乳剤粒子形成もしくは物理熟成の過程において、種々の多価金属イオン不純物を導入することができる。好ましい例としてはイリジウム化合物を含有する場合である。該イリジウム化合物を含有する場合、相反則特性が改良されることが知られている。イリジウム化合物としては、6個のリガンドを有しイリジウムを中心金属とする6配位錯体が、ハロゲン化銀結晶中に均一に取り込ませるために好ましい。本発明で用いられるイリジウムの一つの好ましい態様として、Cl、Br又はIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、6個全てのリガンドがCl、Br又はIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が更に好ましい。この場合、6配位錯体中にCl、Br又はIが混在していてもよい。
異なる好ましい態様として、ハロゲン又はシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、H2O、OH、O、OCN、チアゾール又は置換チアゾールをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾール又は置換チアゾールをリガンドとして有し、残りのリガンドがCl、Br又はIからなるIrを中心金属とする6配位錯体がより好ましい。更に、1個もしくは2個の5−メチルチアゾールをリガンドとして有し、残りのリガンドがCl、Br又はIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が最も好ましい。
これらのイリジウム錯体は、粒子形成中に銀1モルあたり1×10-10モルから1×10-3モル添加することが好ましく、1×10-8モルから1×10-5モル添加することが最も好ましい。
【0016】
イリジウム以外に他の金属イオンをハロゲン化銀粒子の内部及び/又は表面にドープするがことができる。なお、本明細書にて「ドープする」とは、特性を大きく変える、又は制御するために、意図的に少量添加することを意味する。用いる金属イオンとしては遷移金属イオンが好ましく、なかでも、鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、又は、亜鉛であることが好ましい。さらにこれらの金属イオンは配位子を伴い6配位八面体型錯体として用いることがより好ましい。無機化合物を配位子として用いる場合には、シアン化物イオン、ハロゲン化物イオン、チオシアン、水酸化物イオン、過酸化物イオン、アジ化物イオン、亜硝酸イオン、水、アンモニア、ニトロシルイオン、又は、チオニトロシルイオンを用いることが好ましく、上記の鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、又は、亜鉛のいずれの金属イオンに配位させて用いることも好ましく、複数種の配位子を1つの錯体分子中に用いることも好ましい。また、配位子として有機化合物を用いることもでき、好ましい有機化合物としては主鎖の炭素数が5以下の鎖状化合物及び/又は5員環あるいは6員環の複素環化合物を挙げることができる。さらに好ましい有機化合物は分子内に窒素原子、リン原子、酸素原子、又は、硫黄原子を金属への配位原子として有する化合物であり、特に好ましくはフラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、フラザン、ピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンであり、さらにこれらの化合物を基本骨格としそれらに置換基を導入した化合物もまた好ましい。
【0017】
金属イオンと配位子の組み合わせとして、好ましくは、鉄イオン及びルテニウムイオンとシアン化物イオンの組み合わせである。本発明においては、イリジウムとこれらの化合物を併用することが好ましい。これらの化合物においてシアン化物イオンは、中心金属である鉄又はルテニウムへの配位数のうち過半数を占めることが好ましく、残りの配位部位はチオシアン、アンモニア、水、ニトロシルイオン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピラジン、又は、4,4’−ビピリジンで占められることが好ましい。最も好ましくは中心金属の6つの配位部位が全てシアン化物イオンで占められ、ヘキサシアノ鉄錯体又はヘキサシアノルテニウム錯体を形成することである。これらシアン化物イオンを配位子とする錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10-8モルから1×10-2モル添加することが好ましく、1×10-6モルから5×10-4モル添加することが最も好ましい。ルテニウム及びオスミウムを中心金属とした場合には、ニトロシルイオン、チオニトロシルイオン、又は水分子と塩化物イオンとを配位子として共に用いることも好ましい。より好ましくはペンタクロロニトロシル錯体、ペンタクロロチオニトロシル錯体、又は、ペンタクロロアクア錯体を形成することであり、ヘキサクロロ錯体を形成することも好ましい。これらの錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10-10モルから1×10-6モル添加することが好ましく、より好ましくは1×10-9モルから1×10-6モル添加することである。
【0018】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料中の鉄については、主にゼラチン、乳剤粒子中に故意にドープしたもの、染料等によって持ち込まれるが、本発明の感光材料中の、鉄含有量であるFe量は、6×10-5mol/m2以下(好ましくは1×10-8〜6×10-5mol/m2)であることが必要であり、8×10-6mol/m2以下(好ましくは1×10-8〜8×10-6mol/m2)が好ましく、3×10-6mol/m2以下(好ましくは1×10-8〜3×10-6mol/m2)が最も好ましい。Fe量が多すぎると白地濃度の変動が大きくなる。本発明においては、このFe量を規定することにより初めて、所望する特性が発現できることが確認された。
【0019】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、通常化学増感を施される。化学増感法については、不安定硫黄化合物の添加に代表される硫黄増感、金増感に代表される貴金属増感、あるいは還元増感等を単独もしくは併用して用いることができる。化学増感に用いられる化合物については、特開昭62−215272号の第18頁右下欄から第22頁右上欄に記載のものが好ましく用いられる。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、当業界に知られる金増感を施したものであることが好ましい。金増感を施すことにより、レーザー光等によって走査露光したときの写真性能の変動を更に小さくすることができるからである。金増感を施すには、塩化金酸もしくはその塩、チオシアン酸金類あるいはチオ硫酸金類等の化合物を用いることができる。これらの化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10-7〜5×10-3モル、好ましくは1×10-6〜1×10-4モルである。本発明においては、金増感を他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは金化合物以外を用いた貴金属増感等と組み合わせてもよく、本発明においてはより好ましい。
【0020】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、乳剤のあるいは感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちアゾール類、例えばベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアイジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニトロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールなど)、メルカプトピリミジン類、メルカプトトリアジン類など;例えばオキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類、例えばトリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン)ペンタアザインデン類;ベンゼンチオスルフォン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフォン酸アミドなどのようなかぶり防止剤又は安定剤として知られた多くの化合物を加えることができる。特に好ましいのは、メルカプトテトラゾール類である。これは、かぶり防止、安定化以外に高照度感度を更に高める働きがあり好ましい。
【0021】
本発明の緑感性ハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズの球相当径としては、0.25μm以下(好ましくは0.05〜0.25μm)であることが好ましく、0.20μm以下(好ましくは0.05〜0.20μm)であることがより好ましく、0.18μm以下(好ましくは0.05〜0.18μm)であることがさらに好ましい。球相当径0.40μmの粒子は、辺長約0.32μmの立方体粒子に相当し、球相当径0.3μm粒子は、辺長約0.24μmの立方体粒子に相当し、球相当径0.20μmの粒子は辺長約0.16μmの立方体粒子に相当する。緑感性ハロゲン化銀乳剤の平均粒子サイズは最も視感度の高いマゼンタ粒状度を決める大きな要因の一つであり、平均粒子サイズを下げることは高画質化にとって重要な要因になる。また、一般的には粒子サイズを小さくすることは現像速度を早くすることが知られており、処理安定性向上の観点からも好ましい。また粒子サイズを小さくすること、特に上記のサイズ領域でかつ高塩化銀粒子を調製する場合においては安定に均一な粒子を調製することに困難性が伴う。つまり溶解度が高い高塩化銀でかつ上記の粒子サイズ領域であると粒子形成〜塗布までの各工程で常に粒子の溶解を防止することが好ましい。
【0022】
本発明のハロゲン化銀粒子は、現像進行を速くする目的で、単分散であることが好ましく、各ハロゲン化銀粒子の粒子サイズの変動係数は0.3以下(好ましくは0.3〜0.05)が好ましく、さらに好ましくは0.25以下(好ましくは0.25〜0.05)である。ここでいう変動係数とは、統計上の標準偏差値(s)と平均粒子サイズ(d)との比(s/d)で表される。
【0023】
本発明に使用できるハロゲン化銀写真乳剤は、例えばリサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)No.17643(1978年12月),22〜23頁,“I.乳剤製造(Emulsion preparation and types)”、及び同No.18716(1979年11月),648頁、同No.307105(1989年11月),863〜865頁、及びグラフキデ著「写真の物理と化学」,ポールモンテル社刊(P.Glafkides, Chemie et Phisique Photographique,Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」,フォーカルプレス社刊(G.F.Duffin,Photographic Emulsion Chemistry,Focal Press,1966)、ゼリクマンら著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman,et al.,Making and Coating Photographic Emulsion,Focal Press,1964)などに記載された方法を用いて調製することができる。
【0024】
米国特許第3,574,628号、同第3,655,394号、及び英国特許第1,413,748号に記載された単分散乳剤も好ましい。また、アスペクト比が約3以上であるような平板状粒子も本発明に使用できる。平板状粒子は、ガトフ著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Gutoff,Photographic Science and Engineering)、第14巻248〜257頁(1970年);米国特許第4,434,226号、同第4,414,310号、同第4,433,048号、同第4,439,520号及び英国特許第2,112,157号に記載の方法により簡単に調製することができる。
【0025】
結晶構造は一様なものでも、内部と外部とが異質なハロゲン組成からなるものでもよく、層状構造をなしていてもよい。エピタキシャル接合によって組成の異なるハロゲン化銀が接合されていてもよく、例えばロダン銀、酸化鉛などのハロゲン化銀以外の化合物と接合されていてもよい。また種々の結晶形粒子の混合物を用いてもよい。
【0026】
上記の乳剤は潜像を主として表面に形成する表面潜像型でも、粒子内部に形成する内部潜像型でも表面と内部のいずれにも潜像を有する型のいずれでもよいが、ネガ型の乳剤であることが必要である。内部潜像型のうち、特開昭63−264740号公報に記載のコア/シェル型内部潜像型乳剤であってもよく、この調製方法は特開昭59−133542号公報に記載されている。この乳剤のシェルの厚みは現像処理等によって異なるが、3〜40nmが好ましく、5〜20nmが特に好ましい。
【0027】
ハロゲン化銀乳剤は、通常、物理熟成、化学熟成及び分光増感を行ったものを使用する。このような工程で使用される添加剤はRDNo.17643、同No.18716及び同No.307105に記載されており、その該当箇所を後掲の表にまとめた。本発明の感光材料には、感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子サイズ、粒子サイズ分布、ハロゲン組成、粒子の形状、感度の少なくとも1つの特性(本発明においては特に感度)の異なる2種類以上の乳剤を、同一層中に混合して使用することができ、本発明の好ましい形態である。
【0028】
米国特許第4,082,553号に記載の粒子表面をかぶらせたハロゲン化銀粒子、米国特許第4,626,498号、特開昭59−214852号公報に記載の粒子内部をかぶらせたハロゲン化銀粒子、コロイド銀を感光性ハロゲン化銀乳剤層及び/又は実質的に非感光性の親水性コロイド層に適用することが好ましい。粒子内部又は表面をかぶらせたハロゲン化銀粒子とは、感光材料の未露光部及び露光部を問わず、一様に(非像様に)現像が可能となるハロゲン化銀粒子のことをいい、その調製法は、米国特許第4,626,498号明細書、特開昭59−214852号公報に記載されている。粒子内部がかぶらされたコア/シェル型ハロゲン化銀粒子の内部核を形成するハロゲン化銀は、ハロゲン組成が異なっていてもよい。粒子内部又は表面をかぶらせたハロゲン化銀としては、塩化銀、塩臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀のいずれをも用いることができる。これらのかぶらされたハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズとしては0.01〜0.75μmが好ましく、特に0.05〜0.6μmが好ましい。また、粒子形状は規則的な粒子でもよく、多分散乳剤でもよいが、単分散性(ハロゲン化銀粒子の質量又は粒子数の少なくとも95%が平均粒子径の±40%以内の粒子径を有するもの)であることが好ましい。
【0029】
支持体上に設けられた感光性ハロゲン化銀乳剤層や非感光性親水性コロイド層(中間層や保護層など)からなる写真構成層中のいずれかの層、好ましくはハロゲン化銀乳剤層に、1−アリール−5−メルカプトテトラゾール化合物をハロゲン化銀1モル当たり1.0×10-5〜5.0×10-2モル添加することが好ましく、更には1.0×10-4〜1.0×10-2モル添加することが好ましい。この範囲で添加することによって、連続処理後の処理済みカラー写真表面への汚れをいっそう少なくすることができる。
【0030】
このような1−アリール−5−メルカプトテトラゾール化合物としては、1位のアリール基が無置換又は置換フェニル基であるものが好ましく、この置換基の好ましい具体例としてはアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、−NHCOC511(n)など)、ウレイド基(例えば、メチルウレイドなど)、アルコキシ基(例えばメトキシなど)、カルボン酸基、アミノ基、スルファモイル基などであって、これらの基はフェニル基に複数個(2〜3個など)結合していてもよい。また、これらの置換基の位置はメタ又はパラ位が好ましい。これらの具体例としては、1−(m−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールや1−(m−アセチルアミノフェニル)−5−メルカプトテトラゾールが挙げられる。
【0031】
本発明でいう黒色コロイド銀とは、可視光領域での吸収が実質的に変化しないようなものだけでなく、例えば、褐灰色のようなコロイド銀なども含む。すなわちハレーション防止として機能するものであれば全て含まれる。
【0032】
これらのコロイド銀の製法は、従来から知られている方法、例えば、米国特許第2,688,601号にみられるようにゼラチン溶液中で可溶性銀塩をハイドロキノンによって還元する方法、ドイツ国特許第1,096,193号に記載されている難溶性銀塩をヒドラジンによって還元する方法、米国特許第2,921,914号に記載されているようにタンニン酸により銀に還元する方法、特開平5−134358に記載されているように無電解メッキによって銀粒子を形成する方法などを用いることが可能である。
【0033】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における塗布銀量としては、6.0g/m以下が好ましく、4.5g/m以下がより好ましく、2.0g/m以下が最も好ましい。なお、塗布銀量は好ましくは0.02g/m以上、より好ましくは0.05g/m以上、さらに好ましくは0.5g/m以上使用される。この中で黒色コロイド銀の塗布銀量は、好ましくは0.01g/m以上2.0g/m以下、より好ましくは0.02g以上2.0g/m以下、さらに好ましくは0.04g以上1.0g/m以下である。
【0034】
次に本発明の映画映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料の写真層等について記載する。本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、透過支持体を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であり、該支持体上に、実質的に感色性の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層から成る感光性層を少なくとも3種有するハロゲン化銀カラー写真感光材料である。本発明は映画用カラー写真感光材料に適用することができる。
【0035】
本発明において、感光性ハロゲン化銀乳剤層及び非感光性親水性コロイド層の層数及び層順に特に制限はないが、イエロー発色感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色感光性ハロゲン化銀乳剤層およびマゼンタ発色感光性ハロゲン化銀乳剤層を含む発色性および感色性が異なる少なくとも3種の感光性ハロゲン化銀乳剤層を少なくともそれぞれ一層ずつ有する。また、非感光性親水性コロイド層を少なくとも一層有する。
各発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層の発色性と感色性との間にも制限はなく、例えば、ある発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層が赤外域や紫外域に感色性を有していてもかまわない。
【0036】
本発明においては、支持体と支持体に最も近い感光性ハロゲン化銀乳剤層の間に、黒色コロイド銀を含有する非感光性親水性コロイド層を少なくとも一層有する。支持体に最も近いハロゲン化銀乳剤層と黒色コロイド銀を含有する非感光性親水性コロイド層が隣接していることが好ましい。
典型的な層順の例としては、支持体から順に黒色コロイド銀を含有する非感光性親水性コロイド層、イエロー発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層、非感光性親水性コロイド層(混色防止層)、シアン発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層、非感光性親水性コロイド層(混色防止層)、マゼンタ発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層、非感光性親水性コロイド層(保護層)である。しかし、目的に応じて、上記設置順を変更しても、感光性ハロゲン化銀乳剤層又は非感光性親水性コロイド層の数を増減させてもかまわない。
【0037】
本発明において、親水性コロイドとしてはゼラチンが好ましく用いられる。必要に応じて他の親水性コロイドを任意の比率でゼラチンに代えて用いることもできる。これらの例としては、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他のポリマーのグラフト重合体、アルブミンあるいはカゼイン等のタンパク質、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及び硫酸セルロース等)、アルギン酸ナトリウム及びデンプン誘導体等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの部分アセタール体、ポリ(N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾールあるいはポリビニルピラゾール等の広範囲な合成ポリマー等を挙げることができる。
【0038】
本発明に使用または併用できる写真用添加剤は以下のリサーチ・ディスクロージャー誌(RD)に記載されており、下記の表に関連する記載箇所を示した。
【0039】
【表1】

【0040】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料には、種々の色素形成カプラーを使用することができるが、以下の色素形成カプラーが特に好ましい。イエローカプラー:欧州特許EP502,424A号の式(I),(II)で表されるカプラー;欧州特許EP513,496A号の式(1),(2)で表されるカプラー(特に18頁のY−28);特開平5−307248号公報の請求項1の一般式(I)で表されるカプラー;米国特許第5,066,576号のカラム1の45〜55行の一般式(I)で表されるカプラー;特開平4−274425号公報の段落0008の一般式(I)で表されるカプラー;欧州特許EP498,381A1号の40頁のクレーム1に記載のカプラー(特に18頁のD−35);欧州特許EP447,969A1号の4頁の式(Y)で表されるカプラー(特にY−1(17頁),Y−54(41頁));米国特許4,476,219号のカラム7の36〜58行の式(II)〜(IV)で表されるカプラー(特にII−17,19(カラム17),II−24(カラム19))。
【0041】
マゼンタカプラー;特開平3−39737号(L−57(11頁右下),L−68(12頁右下),L−77(13頁右下));欧州特許EP456,257号のA−4−63(134頁),A−4−73,−75(139頁);欧州特許EP486,965号のM−4,−6(26頁),M−7(27頁);特開平6−43611号の段落0024のM−45,特開平5−204106号の段落0036のM−1;特開平4−362631号の段落0237のM−22。
シアンカプラー:特開平4−204843号のCX−1,3,4,5,11,12,14,15(14〜16頁);特開平4−43345号のC−7,10(35頁),34,35(37頁),(I−1),(I−17)(42〜43頁);特開平6−67385号の請求項1の一般式(Ia)又は(Ib)で表されるカプラー。
ポリマーカプラー:特開平2−44345号のP−1,P−5(11頁)。
【0042】
発色色素が適度な拡散性を有するカプラーとしては、米国特許第4,366,237号、独国特許GB2,125570号、欧州特許EP96,873B号、独国特許DE3,234,533号に記載のものが好ましい。発色色素の不要吸収を捕正するためのカプラーは、欧州特許EP456,257A1号の5頁に記載の式(CI),(CII),(CIII),(CIV)で表されるイエローカラードシアンカプラー(特に84頁のYC−86)、該欧州特許公報に記載のイエローカラードマゼンタカプラーExM−7(202頁、EX−1(249頁)、EX−7(251頁)、米国特許第4,833,069号に記載のマゼンタカラードシアンカプラーCC−9(カラム8)、CC−13(カラム10)、US4,837,136の(2)(カラム8)、国際公開WO92/11575のクレーム1の式〔C−1〕で表される無色のマスキングカプラー(特に36〜45頁の例示化合物)が好ましい。
【0043】
現像主薬酸化体と反応して写真的に有用な化合物残基を放出する化合物(色素形成カプラーを含む)としては、以下のものが挙げられる。
現像抑制剤放出化合物:欧州特許EP378,236A1号の11頁に記載の式(I),(II),(III),(IV)のいずれかで表される化合物(特にT−101(30頁),T−104(31頁),T−113(36頁),T−131(45頁),T−144(51頁),T−158(58頁)),欧州特許EP436,938A2号の7頁に記載の式(I)で表される化合物(特にD−49(51頁))、特開平5−307248号の式(1)で表される化合物(特に段落0027の(23))、欧州特許EP440,195A2号の5〜6頁に記載の式(I),(II),(III)のいずれかで表される化合物(特に29頁のI−(1));
漂白促進剤放出化合物:欧州特許EP310,125A2号の5頁の式(I),(I’)で表される化合物(特に61頁の(60),(61))及び特開平6−59411号の請求項1の式(I)で表される化合物(特に段落0022の(7));
リガンド放出化合物:米国特許第4,555,478号のクレーム1に記載のLIG−Xで表される化合物(特にカラム12の21〜41行目の化合物);
ロイコ色素放出化合物;米国特許第4,749,641号のカラム3〜8の化合物1〜6;
蛍光色素放出化合物:米国特許第4,774,181号のクレーム1のCOUP−DYEで表される化合物(特にカラム7〜10の化合物1〜11);
現像促進剤又はカブラセ剤放出化合物:米国特許第4,656,123号のカラム3の式(1)、(2)、(3)で表される化合物(特にカラム25の(I−22))及び欧州特許EP450,637A2号の75頁36〜38行目のExZK−2;離脱して初めて色素となる基を放出する化合物:米国特許第4,857,447号のクレーム1の式(I)で表わされる化合物(特にカラム25〜36のY−1〜Y−19)。
【0044】
色素形成カプラー以外の添加剤としては、以下のものが好ましい。
油溶性有機化合物の分散媒:特開昭62−215272号のP−3,5,16,19,25,30,42,49,54,55,66,81,85,86,93(140〜144頁);
油溶性有機化合物の含浸用ラテックス:米国特許第4,199,363号に記載のラテックス;
現像主薬酸化体スカベンジャー:米国特許第4,978,606号のカラム2の54〜62行の式(I)で表される化合物(特にI−(1),(2),(6),(12)(カラム4〜5))、米国特許第4,923,787号のカラム2の5〜10行の式(特に化合物1(カラム3));
ステイン防止剤:欧州特許EP298321A号の4頁30〜33行の式(I)〜(III),特にI−47,72,III−1,27(24〜48頁);
褪色防止剤:欧州特許EP298321A号のA−6,7,20,21,23,24,25,26,30,37,40,42,48,63,90,92,94,164(69〜118頁),米国特許第5,122,444号のカラム25〜38のII−1〜III−23,特にIII−10,欧州特許EP471347A号の8〜12頁のI−1〜III−4,特にII−2,米国特許第5,139,931号のカラム32〜40のA−1〜48,特にA−39,42;
発色増強剤又は混色防止剤の使用量を低減させる素材:欧州特許EP411324A号の5〜24頁のI−1〜II−15,特にI−46;
ホルマリンスカベンジャー:欧州特許EP477932A号の24〜29頁のSCV−1〜28,特にSCV−8;
【0045】
硬膜剤:特開平1−214845号の17頁のH−1,4,6,8,14,米国特許第4,618,573号のカラム13〜23の式(VII)〜(XII)で表される化合物(H−1〜54),特開平2−214852号の8頁右下の式(6)で表される化合物(H−1〜76),特にH−14,米国特許第3,325,287号のクレーム1に記載の化合物;
現像抑制剤プレカーサー:特開昭62−168139号のP−24,37,39(6〜7頁);米国特許第5,019,492号のクレーム1に記載の化合物,特にカラム7の28〜29;
防腐剤、防黴剤:米国特許第4,923,790号のカラム3〜15のI−1〜III−43,特にII−1,9,10,18,III−25;
安定剤、かぶり防止剤:米国特許第4,923,793号のカラム6〜16のI−1〜(14),特にI−1,60,(2),(13),米国特許第4,952,483号のカラム25〜32の化合物1〜65,特に36;
化学増感剤:トリフェニルホスフィンセレニド,特開平5−40324号の化合物50;
染料:特開平3−156450号の15〜18頁のa−1〜b−20,特にa−1,12,18,27,35,36,b−5,27〜29頁のV−1〜23,特にV−1,欧州特許EP445627A号の33〜55頁のF−I−1〜F−II−43,特にF−I−11,F−II−8,欧州特許EP457153A号の17〜28頁のIII−1〜36,特にIII−1,3、欧州特許EP319999A号の6〜11頁の化合物1〜22,特に化合物1,欧州特許EP519306A号の式(1)〜(3)で表される化合物D−1〜87(3〜28頁),米国特許第4,268,622号の式(I)で表される化合物1〜22(カラム3〜10),米国特許第4,923,788号の式(I)で表される化合物(1)〜(31)(カラム2〜9);
UV吸収剤:特開昭46−3335号の式(1)で表される化合物(18b)〜(18r),101〜427(6〜9頁),欧州特許EP520938A号の式(I)で表される化合物(3)〜(66)(10〜44頁)及び式(III)で表される化合物HBT−1〜HBT−10(14頁),欧州特許EP521823号の式(1)で表される化合物(1)〜(31)(カラム2〜9)。
【0046】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は乳剤層を有する側の支持体から最も離れた層、または乳剤層を有しない側の支持体から最も離れた層、若しくはその両方に、フッ素原子を含む化合物を好ましく用いることができる。なかでも、特開2003−172984号明細書中の請求項2記載の化合物を用いる事が好ましい。
【0047】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、乳剤層を有する側の全親水性コロイド層において、膜厚の総和が28μm以下であることが好ましく、23μm以下がより好ましく、18μm以下がさらに好ましく、16μm以下が特に好ましい。なお、該膜厚の総和は、0.1μm以上であり、好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上である。また、膜膨潤速度T1/2は、60秒以下が好ましく、30秒以下がより好ましい。T1/2は、発色現像液で35℃、3分処理した時に到達する最大膨潤膜厚の90%を飽和膜厚としたとき、その膜厚が1/2に到達するまでの時間と定義する。膜厚は、25℃相対湿度55%調湿下(2日)で測定した膜厚を意味し、T1/2は、エー・グリーン(A.Green)らのフォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photogr. Sci. Eng),19巻、2,124〜129頁に記載の型のスエロメーター(膨潤計)を使用することにより測定できる。T1/2は、バインダーとしてのゼラチンに硬膜剤を加えること、あるいは塗布後の経時条件を変えることによって調整することができる。
【0048】
また、膨潤率は、180〜280%が好ましく、200〜250%がより好ましい。ここで、膨潤率とは、本発明のハロゲン化銀写真感光材料を27℃の蒸留水に浸し、膨潤させたときの平衡膨潤量を表す尺度であり、膨潤率(単位:%)=膨潤時の全膜厚/乾燥時の全膜厚×100と定義される。前記膨潤率は、ゼラチン硬化剤の添加量を調節することにより上記範囲とすることができる。
【0049】
本発明の映画映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料は、映画用ポジ感光材料の標準的な処理工程で処理出来るが、シアンダイサウンドを想定した簡略化された処理工程において、より好ましく処理できる。
即ち、従来の映画用ポジ感光材料の標準的な処理工程(乾燥以外)が、下記12工程必要であるのに対し、
(1)発色現像浴
(2)停止浴
(3)水洗浴
(4)第一定着浴
(5)水洗浴
(6)漂白浴
(7)水洗浴
(8)サウンド現像(塗り付け現像)
(9)水洗
(10)第二定着浴
(11)水洗浴
(12)安定浴
簡略化された処理工程は、サウンドトラックに現像銀を残す必要が無いため、下記8工程に短縮が可能である。
(1)発色現像浴
(2)停止浴
(3)水洗浴
(4)漂白浴
(5)水洗浴
(6)定着浴
(7)水洗浴
(8)安定浴
【0050】
さらに、漂白機能と定着機能を併せ持つ漂白定着浴の使用により、さらに処理工程を減らすことも可能である。具体的には(4)漂白浴を漂白定着浴とし、(5)水洗浴と(6)定着浴を削除した6工程に短縮可能である。
【0051】
本発明においては、上記処理工程のうち、発色現像時間(上記の(1)の工程)が2分30秒以下(下限は6秒以上が好ましく、より好ましくは10秒以上、さらに好ましくは20秒以上、最も好ましくは30秒以上)、より好ましくは2分以下(下限は2分30秒と同じ)である迅速処理を実施した場合において、特に好ましい結果が得られる。
【0052】
以下、支持体について説明する。本発明においては、透過支持体であり、プラスチックフィルム支持体がより好ましい。前記プラスチックフィルム支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンのフィルムが挙げられる。
【0053】
これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、特に2軸延伸、熱固定されたポリエチレンテレフタレートフィルムが、安定性、強靱さなどの点からも特に好ましい。
【0054】
前記支持体の厚みとしては、特に制限はないが、15〜500μmが一般的で、特に40〜200μmが取扱易さ、汎用性などの点から有利なため好ましく、85〜150μmが最も好ましい。透過支持体とは、好ましくは可視光が90%以上透過するものを意味し、光の透過を実質的に妨げない量であれば染料化ケイ素、アルミナゾル、クロム塩、ジルコニウム塩などを含有していてもよい。
【0055】
上記プラスチックフィルム支持体の表面に、感光層を強固に接着させるために、一般に下記の表面処理が行なわれる。帯電防止層(バック層)が形成される側の表面も、一般に同様な表面処理が行なわれる。(1)薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸素処理、などの表面活性処理したのち直接に写真乳剤(感光層形成用塗布液)を塗布して接着力を得る方法と、(2)一旦これらの表面処理した後、下塗層を設けこの上に写真乳剤層を塗布する方法との二法がある。
【0056】
これらのうち(2)の方法がより有効であり、広く行われている。これらの表面処理は、いずれも、本来は疎水性であった支持体表面に、多少とも極性基を形成させること、表面の接着に対してマイナスの要因になる薄層を除去すること、表面の架橋密度を増加させ接着力を増加させるものと思われ、その結果として下塗層用溶液中に含有される成分の極性基との親和力が増加することや、接着表面の堅牢度が増加すること等により、下塗層と支持体表面との接着性が向上すると考えられる。
【0057】
上記プラスチックフィルム支持体上の感光層が設けられない側の表面には、導電性金属酸化物粒子を含有する非感光性層が設けられることが好ましい。上記非感光性層のバインダーとしては、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂が好ましく使用される。この非感光性層は硬膜されているのが好ましく、硬膜剤としては、アジリジン系、トリアジン系、ビニルスルホン系、アルデヒド系、シアノアクリレート系、ペプチド系、エポキシ系、メラミン系などが用いられるが、導電性金属酸化物粒子を強固に固定する観点からは、メラミン系化合物が特に好ましい。
【0058】
導電性金属酸化物粒子の材料としては、ZnO、TiO、SnO、Al、In、MgO、BaO、MoO及びV及びこれらの複合酸化物、そしてこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。
【0059】
金属酸化物としては、SnO、ZnO、Al、TiO、In、MgO、及びVが好ましく、さらにSnO、ZnO、In、TiO及びVが好ましく、SnO及びVが特に好ましい。異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAlあるいはIn、TiOに対してNbあるいはTa、Inに対してSn、及びSnOに対してSb、Nbあるいはハロゲン元素などの異種元素を好ましくは0.01〜30モル%(さらに好ましくは0.1〜10モル%)ドープしたものを挙げることができる。異種元素の添加量が、少なすぎる場合は酸化物又は複合酸化物に充分な導電性を付与することができず、多すぎると粒子の黒化度が増し、帯電防止層が黒ずむため感光材料用としては適さない。従って、導電性金属酸化物粒子の材料としては、金属酸化物又は複合金属酸化物に対し異種元素を少量含むものが好ましい。また結晶構造中に酸素欠陥を含むものも好ましい。
【0060】
導電性金属酸化物粒子は、非感光性層全体に対し、体積比率が50%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3〜30%である。塗設量としては特開平10−62905号に記載の条件に従うことが好ましい。体積比率が大きすぎると処理済カラー写真の表面に汚れが付着しやすく、また小さすぎると帯電防止能が十分に機能しない。
【0061】
導電性金属酸化物粒子の粒子径は、光散乱をできるだけ小さくするために小さい程好ましいが、粒子と結合剤の屈折率の比をパラメーターとして決定されるべきものであり、ミー(Mie)の理論を用いて求めることができる。一般に、平均粒子径が0.001〜0.5μmが好ましく、0.003〜0.2μmがさらに好ましい。ここでいう、平均粒子径とは、導電性金属酸化物粒子の一次粒子径だけでなく高次構造の粒子径も含んだ値である。
【0062】
上記金属酸化物の微粒子を帯電防止層形成用塗布液へ添加する際は、そのまま添加して分散しても良いが、水等の溶媒(必要に応じて分散剤、バインダーを含む)に分散させた分散液の形で添加することが好ましい。
【0063】
本発明の帯電防止層に使用する他の有用な電気伝導性材料には、米国特許第3,245,833号、同第3,428,451号および同第5,075,171号明細書に記載される、沃化第一銅のような半導体金属塩、米国特許第4,845,369号および同第5,116,666号明細書に記載される、例えば、非導電性チタン酸カリウムウィスカー上に塗付されたアンチモンをドープした酸化錫を含む繊維状の導電性粉体、米国特許第4,070,189号明細書の架橋されたビニルベンジル第4級アンモニウムポリマーのような導電性ポリマー、米国特許第4,237,194号明細書の導電性ポリアニリン、および米国特許第4,987,042号、同第5,035,926号、同第5,354,613号、同第5,370,981号、同第5,372,924号、同第5,543,944号および同第5,766,515号明細書の導電性ポリチオフェン、米国特許第4,203,769号、同第5,006,451号、同第5,221,598号および同第5,284,714号明細書に記載される、バナジウムペントキシドまたは銀をドープしたバナジウムペントキシドのコロイドゲル、が含まれる。
【0064】
非感光性層は、前記導電性素材を分散、支持する結合剤として前記バインダーと硬膜剤との硬化物を含んでいるのが好ましい。本発明では、良好な作業環境の維持、及び大気汚染防止の観点から、バインダーも硬膜剤も、水溶性のものを使用するか、あるいはエマルジョン等の水分散状態で使用することが好ましい。また、バインダーは、硬膜剤との架橋反応が可能なように、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びグリシジル基のいずれかの基を有するのが好ましい。水酸基及びカルボキシル基が好ましく、特にカルボキシル基が好ましい。バインダー中の水酸基又はカルボキシル基の含有量は、0.0001〜1当量/1kgが好ましく、特に0.001〜1当量/1kgが好ましい。
【0065】
以下に、前記バインダーとして好ましく用いられる樹脂について説明する。アクリル樹脂としては、アクリル酸;アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類;アクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリル酸;メタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類;メタクリルアミド及びメタクリロニトリルのいずれかのモノマーの単独重合体、又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。これらの中では、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体、又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体が好ましい。例えば、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体、又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体が挙げられる。
【0066】
上記アクリル樹脂は、上記組成を主成分とし、硬膜剤との架橋反応が可能なように、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びグリシジル基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用して得られるポリマーであるのが好ましい。
【0067】
上記ビニル樹脂としては、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホリマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくはエチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)を挙げることができる。これらの中で、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホリマール、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくはエチレン/酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体)が好ましい。
【0068】
上記ビニル樹脂は、硬膜剤との架橋反応が可能なように、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホリマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル及びポリ酢酸ビニルでは、例えば、ビニルアルコール単位をポリマー中に残すことにより水酸基を有するポリマーとし、他のポリマーについては、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びグリシジル基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用することにより得られるポリマーとする。
【0069】
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)、ポリヒドロキシ化合物と多塩基酸との反応により得られる脂肪族ポリエステル系ポリオール、ポリエーテルポリオール(例、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオール)、ポリカーボネート系ポリオール、及びポリエチレンテレフタレートポリオールのいずれか一種、あるいはこれらの混合物とポリイソシアネートから誘導されるポリウレタンを挙げることができる。上記ポリウレタン樹脂では、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応後、未反応として残った水酸基を硬膜剤との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。
【0070】
上記ポリエステル樹脂としては、一般にポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)と多塩基酸との反応により得られるポリマーが使用される。上記ポリエステル樹脂では、例えば、ポリオールと多塩基酸との反応終了後、未反応として残った水酸基、カルボキシル基を硬膜剤との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。勿論、水酸基等の官能基を有する第三成分を添加しても良い。上記ポリマーの中で、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂が好ましく、特にアクリル樹脂が好ましい。
【0071】
硬膜剤として好ましく用いられるメラミン化合物としては、メラミン分子内に二個以上(好ましくは三個以上)のメチロール基及び/又はアルコキシメチル基を含有する化合物及びそれらの縮重合体であるメラミン樹脂あるいはメラミン・ユリア樹脂などをあげることができる。メラミンとホルマリンの初期縮合物の例としては、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどがあり、その具体的な市販品としては、例えばスミテックス・レジン(Sumitex Resin)M−3、同MW、同MK及び同MC(住友化学(株)製、いずれも商品名)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
上記縮重合体の例としては、ヘキサメチロールメラミン樹脂、トリメチロールメラミン樹脂、トリメチロールトリメトキシメチルメラミン樹脂等を挙げることができる。市販品としては、MA−1及びMA−204(住友ベークライト(株製、いずれも商品名)、ベッカミン(BECKAMINE)MA−S、ベッカミンAPM及びベッカミンJ−101(大日本インキ化学工業(株)製、いずれも商品名)、ユーロイド344(三井東圧化学(株)製、商品名)、大鹿レジンM31及び大鹿レジンPWP−8(大鹿振興(株)製、いずれも商品名)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
メラミン化合物としては、分子量を1分子内の官能基数で割った値で示される官能基当量が50以上300以下であることが好ましい。ここで官能とはメチロール基及び/又はアルコキシメチル基を示す。この値が300を超えると硬化密度が小さく高い強度が得られず、メラミン化合物の量を増やすと塗布性が低下する。硬化密度が小さいとスリ傷が発生しやすくなる。また硬化する程度が低いと導電性金属酸化物を保持する力も低下する。官能基当量が50未満では硬化密度は高くなるが透明性が損なわれ、減量しても良化しない。水性メラミン化合物の添加量は、上記ポリマーに対して好ましくは0.1〜100質量%、さらに好ましくは10〜90質量%である。
【0074】
帯電防止層には必要に応じて、マット剤、帯電調整剤、界面活性剤、滑り剤などを併用して使用することができる。マット剤としては、好ましくは0.001〜10μm、より好ましくは0.2μm〜0.5μmの粒径をもつ酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの酸化物や、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等の重合体あるいは共重合体等が挙げられる。これらマット剤の好ましい添加量は2mg/m〜15mg/mである。
【0075】
帯電調整剤としては、後述の界面活性剤、フッ素原子を含有するポリマー類、無機塩類、有機塩類等が挙げられる。特に、フッ素原子を含有する界面活性剤やポリマー類、テトラアルキルアンモニウムイオンを含有する塩類などが好ましく用いられる。
【0076】
界面活性剤としては任意のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。滑り剤としては、炭素数8〜22の高級アルコールのリン酸エステル若しくはそのアミノ塩;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸及びそのエステル類;及びシリコーン系化合物等を挙げられる。
【0077】
前記帯電防止層の厚みとしては、0.01〜1μmが好ましく、さらに0.01〜0.2μmが好ましい。前記厚みが、0.01μm未満であると、塗布剤を均一に塗布しにくいため製品に塗布むらが生じやすく、1μmを超えると、帯電防止性能や耐傷性が劣る場合がある。前記帯電防止層の上には、表面層を設けるのが好ましい。該表面層は、主として滑り性及び耐傷性を向上させるため、及び帯電防止層の導電性金属酸化物粒子の、脱離防止機能を補助するために設けられる。
【0078】
前記表面層の材料としては、(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン及び4−メチル−1−ペンテン等の1−オレフィン系不飽和炭化水素の単独又は共重合体からなるワックス、樹脂及びゴム状物(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体及びプロピレン/1−ブテン共重合体)、(2)上記1−オレフィンの二種以上と共役又は非共役ジエンとのゴム状共重合体(例えば、エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン/プロピレン/1,5−ヘキサジエン共重合体及びイソブテン/イソプレン共重合体)、(3)1−オレフィンと共役又は非共役ジエンとの共重合体、(例えば、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/エチリデンノルボルネン共重合体)、(4)1−オレフィン、特にエチレンと酢酸ビニルとの共重合体及びその完全若しくは部分ケン化物、(5)1−オレフィンの単独又は共重合体に上記共役若しくは非共役ジエン又は酢酸ビニル等をグラフトさせたグラフト重合体及びその完全若しくは部分ケン化物、などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。上記化合物は、特公平5−41656号公報に記載されている。
【0079】
これらの中でも、ポリオレフィンであって、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩基を有するものが好ましい。通常水溶液あるいは水分散液として使用する。
【0080】
前記表面層には、メチル基置換度2.5以下の水溶性メチルセルロースを添加してもよく、その添加量は表面層を形成する全結合剤に対して0.1〜40質量%が好ましい。上記水溶性メチルセルロースについては、特開平1−210947号公報に記載されている。
【0081】
前記表面層は、帯電防止層上に一般によく知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストル−ジョンコート法などにより上記バインダー等を含む塗布液(水分散液又は水溶液)を塗布することにより形成することができる。
【0082】
前記表面層の厚みとしては、0.01〜1μmが好ましく、さらに0.01〜0.2μmが好ましい。前記厚みが、0.01μm未満であると、塗布剤を均一に塗布しにくいため製品に塗布むらが生じやすく、1μmを超えると、帯電防止性能や耐傷性が劣る場合がある。
【0083】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における被膜のpHは、4.6〜6.4が好ましく、さらに好ましくは5.5〜6.5である。経時の長い試料において、被膜pHが6.5を超える場合、セーフライト照射によるシアン画像、マゼンタ画像の増感が大きく、逆に被膜pHが4.5を下回る場合、感光材料を露光してから現像するまでの時間変化に対して、イエロー画像濃度が大きく変化する。いずれの場合も実用上問題である。
【0084】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における被膜pHとは、塗布液を支持体上に塗布することによって得られた全写真層のpHであり、塗布液のpHとは必ずしも一致しない。その被膜pHは、特開昭61−245153号に記載されているような以下の方法で測定できる。即ち、(1)ハロゲン化銀乳剤が塗布された側の感光材料表面に純水を0.05ml滴下する。次に、(2)3分間放置後、表面pH測定電極(東亜電波製GS−165F、商品名)にて被膜pHを測定する。被膜pHの調整は、必要に応じて酸(例えば硫酸、クエン酸)又はアルカリ(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を用いて行うことができる。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0086】
(実施例1)
[支持体の準備]
乳剤塗設面側に下塗りを施し、乳剤塗設面の反対側に下記の導電性ポリマー(0.05g/m)と酸化スズ微粒子(0.20g/m)を含有するアクリル樹脂層を塗設したポリエチレンテレフタレートフィルム支持体(厚さ120μm)を準備した。
【0087】
【化1】

【0088】
[ハロゲン化銀乳剤の準備]
−青感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(BO−01)
(立方体、粒子サイズ0.71μm、粒子サイズ分布0.09、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
当業界で知られたコントロールダブルジェット法により、硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより、調製した。イリジウム含有量は4×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(A’)〜(C’)を下記のように添加した。
青色増感色素(A’);3.5×10-5モル/モル銀
青色増感色素(B’);1.9×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’);1.8×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸とトリエチルチオ尿素を用いて最適に金硫黄増感した。
【0089】
中サイズ乳剤(BM−01)
(立方体、粒子サイズ0.52μm、粒子サイズ分布0.09、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
当業界で知られたコントロールダブルジェット法により、硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより、調製した。イリジウム含有量は6×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(A’)〜(C’)を下記のように添加した。
青色増感色素(A’);6.9×10-5モル/モル銀
青色増感色素(B’);2.3×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’);2.7×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸とトリエチルチオ尿素を用いて最適に金硫黄増感した。
【0090】
小サイズ乳剤(BU−01)
(立方体、粒子サイズ0.31μm、粒子サイズ分布0.08、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
BM−01乳剤の調製において、粒子形成温度を下げたこと以外はBM−01と同様にした。
後述する構造式で表される増感色素(A’)〜(C’)を下記のように添加した。
青色増感色素(A’):8.5×10-4モル/モル銀
青色増感色素(B’):4.1×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’):3.7×10-5モル/モル銀
【0091】
−赤感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(RO−01)
(立方体、粒子サイズ0.23μm、粒子サイズ分布0.11、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
当業界で知られているコントロールダブルジェット法により硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより調製した。イリジウム含有率は2×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように添加し分光増感した。
赤感性増感色素(D’):4.5×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):0.2×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.2×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸と、トリエチルチオ尿素を用いて、最適に金硫黄増感した後、後述する構造式で表されるCpd−71をハロゲン化銀1モル当たり、9.0×10-4モル添加した。
【0092】
中サイズ乳剤(RM−01)
(立方体、粒子サイズ0.174μm、粒子サイズ分布0.12、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
粒子形成温度を変更したこと以外はRO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように使用した。
赤感性増感色素(D’):7.0×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):1.0×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.4×10-5モル/モル銀
【0093】
小サイズ乳剤(RU−01)
(立方体、粒子サイズ0.121μm、粒子サイズ分布0.13、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
粒子形成温度を変更したこと以外はRO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように使用した。
赤感性増感色素(D’):8.9×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):1.2×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.5×10-5モル/モル銀
【0094】
−緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(GO−01)
(立方体、粒子サイズ0.20μm、粒子サイズ分布0.11、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
当業界で知られているコントロールダブルジェット法により硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより調製した。イリジウム含有率は2×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように添加し分光増感した。
緑感性増感色素(G’):2.8×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):0.8×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.2×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
更に、塩化金酸と、トリエチルチオ尿素を用いて、最適に金硫黄増感した。
【0095】
中サイズ乳剤(GM−01)
(立方体、粒子サイズ0.146μm、粒子サイズ分布0.12、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
粒子形成温度を変更したこと以外はGO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように使用した。
緑感性増感色素(G’):3.8×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):1.3×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.4×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
【0096】
小サイズ乳剤(GU−01)
(立方体、粒子サイズ0.102μm、粒子サイズ分布0.10、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
粒子形成温度を変更したこと以外はGO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように使用した。
緑感性増感色素(G’):5.1×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):1.7×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.9×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
【0097】
【化2】

【0098】
【化3】

【0099】
【化4】

【0100】
【化5】

【0101】
[染料固体微粒子分散物の調製]
下記化合物(HD−1)のメタノールウェットケーキを化合物の正味量が240gになるように秤量し、分散助剤として下記化合物(Pm−1)を48g秤量し、水を加えて4000gとした。流通式サンドグラインダーミル(UVM−2)(アイメックスK.K製)にジルコニアビーズ(0.5mm径)を1.7リットル充填し、吐出量0.5リットル/min、周速10m/sで2時間粉砕した。その後、分散物を化合物濃度が3質量%となるように希釈し、下記構造式で表される化合物(Pm−1)を染料に対し質量比で3%添加した(分散物Aと称する)。この分散物の平均粒子サイズは0.45μmであった。
さらに、同様な方法で下記化合物(HD−2)を5質量%含む分散物(分散物Bと称する)を得た。
【0102】
【化6】

【0103】
【化7】

【0104】
[試料100の作製]
支持体上に、下記に示すような組成の各層を重層塗布し、多層カラー写真感光材料である試料100を作製した。
【0105】
−第6層塗布液調整−
マゼンタカプラー(ExM)75.0g、添加物(Cpd−49)1.5g、添加物(Cpd−51)0.1gおよび添加物(Cpd−55)2.3gを溶媒(Solv−21)15gおよび酢酸エチル80mlに溶解し、この溶液を、添加物(Cpd−52)の10%水溶液20mlを含む10%ゼラチン水溶液1000gに乳化分散させて、乳化分散物Mを調整した。一方、前述した塩臭化銀乳剤GO−01、GM−01,およびGU−01を用いて、前記乳化分散物Mとこの塩臭化銀乳剤とを混合溶解し、後記組成となるように第6層塗布液を調製した。第1層〜第5層および第7層用の塗布液も第6層塗布液と同様な方法で調製した。
【0106】
−層構成−
以下に各層の組成を示す。数字は塗布量(g/m)を表す。ハロゲン化銀乳剤塗布量は銀換算塗布量を表す。また、ゼラチン硬膜剤として、1−オキシ−3,5−ジクロロ−s−トリアジンナトリウム塩を用いた。
【0107】
[試料101の層構成]
支持体
・上記ポリエチレンテレフタレートフィルム
【0108】
第1層(ハレーション防止層(非感光性親水性コロイド層))
・ゼラチン 1.10
・上記分散物A(HD−1塗布量として) 0.15
・上記分散物B(HD−2塗布量として) 0.09
【0109】
第2層(青感性ハロゲン化銀乳剤層)
・塩臭化銀乳剤BO−01、乳剤BM−01、および乳剤BU−01の3:1:6混合物(銀モル比)。 0.57
・ゼラチン 2.71
・イエローカプラー(ExY’) 1.19
・(Cpd−41) 0.0006
・(Cpd−42) 0.01
・(Cpd−43) 0.04
・(Cpd−44) 0.006
・(Cpd−45) 0.017
・(Cpd−46) 0.002
・(Cpd−52) 0.07
・(Cpd−54) 0.08
・(Cpd−63) 0.02
・溶媒(Solv−21) 0.26
【0110】
第3層(混色防止層)
・ゼラチン 0.56
・(Cpd−49) 0.02
・(Cpd−43) 0.05
・(Cpd−52) 0.01
・(Cpd−53) 0.005
・(Cpd−61) 0.02
・(Cpd−62) 0.05
・溶媒(Solv−21) 0.05
・溶媒(Solv−23) 0.04
・溶媒(Solv−24) 0.001
【0111】
第4層(赤感性ハロゲン化銀乳剤層)
・塩臭化銀乳剤RO−01、乳剤RM−01および乳剤RU−01の2:2:6混合物(銀モル比) 0.39
・ゼラチン 2.7
・シアンカプラー(ExC’) 0.75
・(Cpd−47) 0.06
・(Cpd−48) 0.06
・(Cpd−50) 0.03
・(Cpd−52) 0.04
・(Cpd−53) 0.03
・(Cpd−55) 0.03
・(Cpd−57) 0.05
・(Cpd−58) 0.007
・(Cpd−60) 0.02
・溶媒(Solv−21) 0.51
・溶媒(Solv−22) 0.28
・溶媒(Solv−23) 0.03
【0112】
第5層(混色防止層)
・ゼラチン 0.56
・(Cpd−49) 0.02
・(Cpd−43) 0.05
・(Cpd−52) 0.01
・(Cpd−53) 0.005
・(Cpd−62) 0.05
・(Cpd−64) 0.002
・溶媒(Solv−21) 0.05
・溶媒(Solv−23) 0.04
・溶媒(Solv−24) 0.001
【0113】
第6層(緑感性ハロゲン化銀乳剤層)
・塩臭化銀乳剤GO−01、GM−01、GU−01の1:3:6混合物(銀モル比) 0.54
・ゼラチン 1.66
・マゼンタカプラー(ExM’) 0.73
・(Cpd−49) 0.013
・(Cpd−51) 0.001
・(Cpd−52) 0.02
・(Cpd−55) 0.02
・溶媒(Solv−21) 0.15
【0114】
第7層(保護層)
・ゼラチン 0.97
・アクリル樹脂(平均粒径2μm) 0.002
・(Cpd−55) 0.03
・(Cpd−56) 0.08
・(Cpd−59) 0.001
ここで使用した化合物を以下に示す。
【0115】
【化8】

【0116】
【化9】

【0117】
【化10】

【0118】
【化11】

【0119】
【化12】

【0120】
【化13】

【0121】
【化14】

【0122】
【化15】

【0123】
【化16】

【0124】
以上のように試料100を作製した。
【0125】
<試料101の作製>
次に、前記感光材料100の作製において、第1層を以下の組成に変更した試料101を作製した。
【0126】
第1層(ハレーション防止層)
・ゼラチン 1.03
・黒色コロイド銀(銀塗布量として) 0.18
【0127】
[試料102の作製]
次に、前記感光材料101の作製において、第1層と第2層の間に、以下の組成の非感光性親水性コロイド層(中間層)を導入した試料102を作製した。
【0128】
中間層(非感光性)
・ゼラチン 0.70
・(Cpd−49) 0.01
・(Cpd−43) 0.03
・(Cpd−52) 0.01
・(Cpd−53) 0.003
・溶媒(Solv−21) 0.08
・溶媒(Solv−23) 0.05
【0129】
[試料103〜110の作製]
試料101の作製において、表2に示すように第2層中の感光性ハロゲン化銀乳剤のハロゲン組成、試料102で用いた中間層の有無、第1層中のコロイド銀塗布量、感光材料中のFe量を変化させた試料103〜110を作製した。なお、Fe量は、主に化合物Cpd−62の塗布量変化で行った。
【0130】
【表2】

【0131】
[処理液の準備]
映画用カラー処理フィルムの標準的な処理方法として、イーストマンコダック社より発表させているECP−2Dプロセスに対し、サウンド現像工程を除いた処理を基本とする下記処理プロセスを準備した。次にランニング平衡にある現像処理状態を作る目的で、作製した全試料について、塗布銀量の約30%が現像されるような画像を露光し、露光の終了した試料は上記処理プロセスにて発色現像浴の補充液量がタンク容量の2倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を実施した。
ECP−2Dプロセス(サウンド現像工程を除いたもの)
<工程>
工程名 処理温度(℃) 処理時間(秒) 補充量
(ml 35mm×30.48m当たり)
1. 現像 36.7±0.1 180 690
2. 停止 27±1 40 770
3. 水洗 27±3 40 1200
4. 第一定着 27±1 40 200
5. 水洗 27±3 40 1200
6. 漂白 27±1 60 200
7. 水洗 27±3 40 1200
8. 第二定着 27±1 40 200
9. 水洗 27±3 60 1200
10.リンス 27±3 10 400
11.乾燥
【0132】
<処理液処方>
1リットル当たりの組成を示す タンク液 補充液
現像 コダック
アンチカルシウムNo.4 1.0ml 1.4ml
亜硫酸ナトリウム 4.35g 4.50g
CD−2 2.95g 6.00g
炭酸ナトリウム 17.1g 18.0g
臭化ナトリウム 1.72g 1.60g
水酸化ナトリウム −−− 0.6g
硫酸(7N) 0.62ml −−−
停止 硫酸(7N) 50ml 50ml
定着
(第一 チオ硫酸アンモニウム(58%) 100ml 170ml
第二共通) 亜硫酸ナトリウム 2.5g 16.0g
亜硫酸水素ナトリウム 10.3g 5.8g
沃化カリウム 0.5g 0.7g
漂白 プロキセルGXL 0.07ml 0.10ml
アンモニア水(28%) 54.0ml 64.0ml
PDTA 44.8g 51.0g
臭化アンモニウム 23.8g 30.7g
酢酸(90%) 10.0ml 14.5ml
無水硝酸鉄 53.8g 61.2g
リンス Kodak Stabilizer Additive
0.14ml 0.17ml
Dearcide702 0.7ml 0.7ml
なお、上記において現像工程で使用するCD−2は現像主薬であり、漂白工程で使用するプロキセルGXLとリンス工程で使用するDearcide702は防黴剤である。この様にして得られたランニング平衡状態の処理液を用いる処理を処理Aとする。処理Aに対し、以下のように工程を変えた、処理プロセスを準備した。この処理プロセスに対しても、ランニング平衡にある現像処理状態を作る目的で、作製した全試料について、塗布銀量の約30%が現像されるような画像を露光し、露光の終了した試料は上記処理プロセスにて発色現像浴の補充液量がタンク容量の2倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を実施した。この様にして得られたランニング平衡状態の処理液を用いる処理を処理Bとする。
<処理Bの工程>
<工程>
工程名 処理温度(℃) 処理時間(秒) 補充量
(ml 35mm×30.48m当たり)
1. 現像 39.0±0.1 120 690
2. 停止 27±1 40 770
3. 水洗 27±3 40 1200
4. 漂白 27±1 60 200
5. 水洗 27±3 40 1200
6. 定着 27±1 60 200
7. 水洗 27±3 60 1200
8.リンス 27±3 10 400
9. 乾燥
【0133】
なお、処理Bにおいて、各浴の処理液処方は処理Aと同じである。
【0134】
[試料の評価]
各試料を感光計(富士写真フイルム製FWH型、光源の色温度3200K)を用い、イエローとマゼンタの色補正フィルター及び光学濃度が5mmあたり0.2変化する光学楔を介して、処理Aにてニュートラルグレーのセンシトメトリー像が得られるように露光を行なった後、処理A、処理Bの各処理液で各々現像処理を行った。得られた処理後試料について、白地部のイエロー濃度(Dmin(B))および最大発色部のイエロー濃度(Dmax(B))をXrite社製Xrite310にてStatusAで測定し、それぞれ白地濃度変動、簡易処理適性の評価値とした。Dmin(B)値が低い程、白地濃度変動が小さく、Dmax(B)値が高い試料ほど、簡易処理適性に優れた試料であると評価できる。結果を表3に示す。
【0135】
【表3】

【0136】
[評価結果]
試料100のように第1層に染料固体分散物を用いたものは標準処理(処理A)においては、白地濃度、最大発色部の濃度共に満足な値を示すが、簡略化処理(処理B)においては白地濃度が高く、使用に適さない。試料101,102のように第1層にコロイド銀を導入した試料では、標準処理、簡略化処理ともに白地濃度が高くなる。一方、試料103,104のように第2層に使用するハロゲン化銀乳剤の塩化銀含率を下げると白地濃度は低減できるが、処理Bにおいて最大発色濃度が下がる。即ち、簡易処理適性を失うことになる。ところが、本発明の試料105以降の試料においては、処理A、処理B共に白地濃度の低減と最大発色濃度の維持が両立できている。また、試料105と107および試料106と108の比較から、中間層を有しない試料(試料107と108)の方がわずかではあるが、最大発色濃度が高く、より好ましい事が分かる。さらに試料107、108、110の比較からFe量が8×10-6mol/m2以下である方が白地濃度の点でより好ましいことが分かる。
【0137】
実施例2
実施例1で作製した本発明の試料105〜110について、下記方法にて簡略化処理時のサウンド適性を評価した。
まず、60Hz、100Hz、400Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz、16000Hzの音声信号がDolby−Aフォーマットで記録されたサウンドネガフィルム(イーストマンコダック社製パンクロマテックサウンドネガフィルムNo.2374)を準備した。このフィルムを用い、適切な露光条件で試料101〜110にシアンダイサウンドトラックを露光した。なお、露光条件およびサウンドネガフィルム濃度は事前にクロスモジュレーションテストにより決定した。得られた試料を実施例1の処理Bにて処理を行い、シアンダイサウンドトラック付き映写機(日本電子光学工業株式会社製シネフォワード映写機)にて、シアンダイサウンドトラックを再生した。この時の各周波数間の再生信号強度を比較した結果、何れの試料においても、100Hzの信号再生強度に対し、4000Hzまでの信号再生強度の変動は0.5dB以内であり、16000Hzの低下量は7dB以内であることが確認された。この事から、本発明の試料は簡略化した処理を施しても、60Hz〜4000Hzの範囲で平坦かつ、高周波数域の信号も十分に再生できる周波数特性を持つことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過支持体上に、イエロー発色感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色感光性ハロゲン化銀乳剤層およびマゼンタ発色感光性ハロゲン化銀乳剤層を含む発色性および感色性が異なる少なくとも3種の感光性ハロゲン化銀乳剤層を少なくともそれぞれ一層ずつ有し、かつ、非感光性親水性コロイド層を少なくとも一層有する映画映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、感光性ハロゲン化銀乳剤層のうち、支持体に最も近い層のハロゲン化銀乳剤粒子のハロゲン化銀組成が、塩化銀含有率95モル%以上の、塩臭化銀、塩ヨウ化銀、塩ヨウ臭化銀、または塩化銀であり、かつ、支持体と支持体に最も近い感光性ハロゲン化銀乳剤層の間に、黒色コロイド銀を含有する非感光性親水性コロイド層を少なくとも一層有し、かつ、ハロゲン化銀カラー写真感光材料中のFe量が6×10-5mol/m2以下であることを特徴とする映画映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項2】
前記ハロゲン化銀カラー写真感光材料中のFe量が、8×10-6mol/m2以下である請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項3】
前記ハロゲン化銀カラー写真感光材料中のすべての感光性ハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀乳剤粒子のハロゲン化銀組成が、塩化銀含有率95モル%以上の、塩臭化銀、塩ヨウ化銀、塩ヨウ臭化銀、または塩化銀であることを特徴とする請求項1または2にハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項4】
前記ハロゲン化銀カラー写真感光材料において、支持体に最も近いハロゲン化銀乳剤層と黒色コロイド銀を含有する非感光性親水性コロイド層が隣接していることを特徴とする請求項1、2、または3に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。

【公開番号】特開2007−264269(P2007−264269A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88673(P2006−88673)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】