説明

ハロゲン化銀写真感光材料

【課題】高感度で画質に優れたハロゲン化銀写真感光材料を提供する。
【解決手段】感光性ハロゲン化銀乳剤が一般式(I)の色素により分光増感され、アンチハレーション層に固体分散染料を含有し、写真構成層中に水溶性染料を含有し、感光材料の670nmにおける吸光度が1.0〜2.0で水に浸漬後が0.2以上であるハロゲン化銀写真感光材料。
【化1】


[Y1とY2はベンゾチアゾール環等の形成に必要な非金属原子群;R31とR32はアルキル基;R33はメチル基等;X1―はアニオン;n1とn2は0か1;m1は0〜2を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン化銀写真感光材料に関するものであり、さらに詳しくは高感度で画質に優れたハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にハロゲン化銀写真感光材料においては、感度調節、セーフライト安全性の向上、光の色温度調節、ハレーション防止、あるいは多層カラー感光材料での感度バランスの調節などの目的で、特定の波長の光を吸収させるべく、ハロゲン化銀乳剤層またはその他の親水性コロイド層に光吸収化合物を含ませることが従来から行われてきている。例えば、ハロゲン化銀写真感光材料は、支持体上に感光性ハロゲン化銀乳剤層などの親水性コロイド層を形成してなるが、該感光性ハロゲン化銀乳剤層に画像を記録するために像様露光を行う場合、写真感度を向上させるため該ハロゲン化銀乳剤層に入射する光の分光組成を制御することが必要となる。このような場合、普通、前記感光性ハロゲン化銀乳剤層よりも支持体から遠い側に存在する親水性コロイド層に前記ハロゲン化銀乳剤層が不要とする波長域の光を吸収しうる染料を含有させてフィルター層とし、目的とする波長域の光のみを透過させる方法が用いられる。またハレーション防止層に関しては、画像の鮮鋭度を改良する目的で、感光性乳剤層と支持体との間あるいは支持体の裏面に設けて、乳剤層と支持体との界面や支持体裏面での有害な反射光を吸収せしめて画像の鮮鋭性を向上させている。さらに、ハロゲン化銀乳剤層には画像の鮮鋭度を上げる目的でハロゲン化銀が感光する波長域の光を吸収しうる染料をイラジエーション防止の目的で用いることがある。特に、写真製版工程に用いられるハロゲン化銀写真感光材料、より詳しくは明室用感光材料は、セーフライト光に対する安全性を高めるため、UV光や可視光を吸収する染料が感光層もしくは、光源と感光層との間の層に添加される。さらにX線感光材料においては、クロスオーバー光を減少させるようなクロスオーバーカットフィルターとして、鮮鋭度向上のための着色層を設けることもある。またマイクロフィルムにおいては感光性乳剤層と支持体との間に設けたハレーション防止層が、明室ローディング適性を向上させるための遮光層を兼ねる場合もある。
【0003】
このような目的で使用される染料として、例えば、特許文献1や特許文献2等に記載された水溶性染料が知られている。しかしながら、これらの染料を使用すると、画質は向上するものの感度が低下する問題点がある。一方、染料を固体分散状態で使用する、いわゆる固体分散染料が例えば特許文献3、特許文献4等で知られているが、画質の改良に対して必ずしも十分であるとは言い難い。従って、画質の改良と高感度化の両立が望まれていた。また、保存後の長期経時においても感度変動が少なく、かつ画質の劣化が少なく、さらには、残色の少ないハロゲン化銀写真感光材料の開発も望まれていた。
【0004】
一方、ハロゲン化銀真感光材料の露光方法の一つとして、原図を走査し、その画像信号に基づいてハロゲン化銀写真感光材料上に露光を行い、原図の画像に対応するネガ画像もしくはポジ画像を形成するいわゆるスキャナー方式による画像形成方法が知られている。これらの露光装置の光源として、HeNeレーザー(633nm) 、赤色半導体レーザー(670nm〜680nm)、LED(660〜680nm)が広く普及している。従って、これらの光源に対して、高感度、硬調な特性を有するハロゲン化銀感光材料が必要とされている。
【0005】
【特許文献1】特開平1−191133号公報
【特許文献2】特開平5−188516号公報
【特許文献3】国際特許WO88/04794号明細書
【特許文献4】特開平10−78634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記の従来技術の課題を克服し、高感度で画質に優れたハロゲン化銀写真感光材料を提供することを目的とする。さらには、保存後の経時においても感度変動と画質劣化が少なく、しかも残色の少ないハロゲン化銀写真感光材料を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は鋭意検討の結果、上記課題は以下に記載する本発明の手段で解決されることを見出した。
(1)支持体の同一面上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層、少なくとも1層のアンチハレーション層および少なくとも1層の保護層を有するハロゲン化銀写真感光材料であって、該感光性ハロゲン化銀乳剤の少なくとも1種が下記一般式(I)で表される色素により分光増感され、該アンチハレーション層に少なくとも1種の固体分散染料を含有し、支持体上に形成された層(以下において「写真構成層」という)の少なくとも1層に少なくとも1種の水溶性染料を含有し、感光材料の670nmにおける吸光度が1.0〜2.0であって、かつ水に浸漬後の670nmにおける吸光度が0.2以上であるハロゲン化銀写真感光材料。
【0008】
【化1】

【0009】
一般式(I)中、Y1およびY2は各々独立にベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトチアゾール環、ナフトセレナゾール環またはキノリン環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、これらの複素環は低級アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。R31およびR32は各々独立に低級アルキル基、またはスルホ基もしくはカルボキシル基を有するアルキル基を表す。R33はメチル基、エチル基またはプロピル基を表す。X1―はアニオンを表す。n1およびn2は各々独立に0または1を表す。m1は1または2を表し、分子内塩の時はm1=0である。
【0010】
(2)前記固体分散染料の少なくとも1種が下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【化2】

一般式(II)中、各R1は、各々独立して、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換もしくは未置換のアミド基、または置換もしくは未置換のスルホンアミド基を表し、nは1〜4の整数を表し、R2は、水素原子、置換または非置換の、アルキル基もしくはアミド基を表し、R3およびR4の各々独立に水素原子または置換もしくは未置換のアルキル基を表し、Mはカチオンを表す。
【0011】
(3)前記ハロゲン化銀乳剤が、イリジウム、鉄、レニウム、ルテニウムまたはオスミウム化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(4) 前記ハロゲン化銀写真感光材料が赤色LED光源で露光されるハロゲン化銀写真感光材料であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(5)前記アンチハレーション層のpHが4.0〜4.8であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、高感度で画質に優れたハロゲン化銀写真感光材料が提供できる。さらには保存後の感度変動が少なく、画質劣化が少なく、しかも残色の少ないハロゲン化銀写真感光材料が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明のハロゲン化銀写真感光材料について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
最初に本発明で使用される一般式(I)で表される分光増感色素について詳細に説明する。
前記一般式(I)において、Y1およびY2は各々独立にベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフチチアゾール環、ナフトセレナゾール環またはキノリン環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、これらの複素環は低級アルキル基(炭素数1〜6のアルキル基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であって、例えばメチル基、エチル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、ヒドロキシル基、アリール基(例えばフェニル基)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基)、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子等)等で置換されていてもよい。R31およびR32は各々独立に低級アルキル基(炭素数1〜6のアルキル基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であって、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、スルホ基を有するアルキル基(例えばβ−スルホエチル基、γ−スルホプロピル基、γ−スルホブチル基、δ−スルホブチル基、スルホアルコキシアルキル基〔例えばスルホエトキシエチル基、スルホプロポキシエチル基〕等)、またはカルボキシル基を有するアルキル基(例えばβ−カルボキシルエチル基、γ−カルボキシプロピル基、γ−カルボキシブチル基、δ−カルボキシブチル基)を表す。R33はメチル基、エチル基またはプロピル基を表す。X1―はアニオン、好ましくはシアニン色素に通常用いられるアニオン(例えばハロゲンイオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等)を表す。m1は1または0を表し、分子内塩のときはm1=0を表す。
【0015】
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明で用いることができる一般式(I)で表される化合物はこれらに限定されるものではない。
【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
【化7】

【0021】
【化8】

【0022】
【化9】

【0023】
【化10】

【0024】
上記一般式(I)で表わされる化合物は、エフ・エム・ハーマー(F.M.Hamer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニン・ダイズ・アンド・リレイテッド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds)(ジョン・ウィリー・アンド・サンズ John Wiley & Sons社、ニューヨーク、ロンドン、1964年刊)、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−−スペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー −−(Heterocyclic Compounds---Special topics in heterocyclic chemistry ---)」第18章、第14節、第482〜515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社、ニューヨーク、ロンドン(1977年刊)、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd'S Chemistry of Carbon Compounds)」(2nd.Ed.vol. IV, part B、1977年刊)第15章、第369〜422頁(2nd.Ed.vol. IV, part B、1985年刊)、第15章、第267〜296頁、エルスバイヤー・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、などに記載の方法に基づいて合成することができる。
【0025】
一般式(I)で表される分光増感色素をハロゲン化銀乳剤中に含有させるには、例えばこれを直接乳剤中に分散させても良いし、あるいは水、メタノール、エタノール、プロパノール、メチルセロソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解させたものを乳剤に添加しても良い。また、特公昭44−23389号公報、特公昭44−27555号公報、特公昭57−22089号公報等に記載のように酸または塩基を共存させて水溶液としたものや、米国特許第3,822,135号、米国特許第4,006,025号等の各明細書に記載のように界面活性剤を共存させて水溶液あるいはコロイド分散物としたものを乳剤へ添加してもよい。また、フェノキシエタノール等の実質上水と非混和性の溶媒に溶解した後、水または親水性コロイドに分散したものを乳剤に添加してもよい。特開昭53−102733号公報、特開昭58−105141号公報に記載のように親水性コロイド中に直接分散させ、その分散物を乳剤に添加してもよい。
【0026】
本発明の分光増感色素は、米国特許第3,485,634号明細書に記載されている超音波振動を用いて溶解してもよい。また本発明の分光増感色素を溶解、あるいは分散して乳剤に添加する他の方法としては、米国特許第3,482,981号、同3,585,195号、同3,469,987号、同3,425,835号、同3,342,605号、英国特許第1,271,329号、同1,038、029号、同1,121,174号、米国特許第3,660,101号、同3,658,546号各明細書に記載の方法を利用することができる。
【0027】
ここで、分光増感色素は、ハロゲン化銀乳剤の製造工程のいかなる工程に存在させて用いることもできるし、製造後塗布直前までのいかなる段階に存在させることもできる。前者の例としては、ハロゲン化銀粒子形成工程、物理熟成工程、化学熟成工程などである。例えば特開昭55−26589号公報に記載のように粒子形成中に添加してもよい。本発明に用いられる分光増感色素は、ハロゲン化銀1モル当り5×10-9モル〜2×10-2モル、好ましくは5×10-6モル〜2×10-2モル、特に好ましくは1×10-5モル〜1×10-2モルの割合でハロゲン化銀乳剤中に含有される。
【0028】
次に、本発明において、アンチハレーション層に使用される固体分散染料について詳細に説明する。
本発明において、固体分散に用いられる染料は具体的には国際特許WO88/04794号、ヨーロッパ特許EP0274723A1号、同276,566号、同299,435号、特開昭52−92716号、同55−155350号、同55−155351号、同61−205934号、同48−68623号、特開平2−282244号各公報、米国特許第2,527,583号、同3,486,897号、同3,746,539号、同3,933,798号、同4,130,429号、同4,040,841号各明細書、特開平3−7931号、同3−167546号各公報などに記載のものが使用できる。
【0029】
分散方法についても、上記特許に記載されているが、染料を適当な分散剤とともに水中にボールミルあるいはサンドミル、コロイドミルなどにより機械的に分散固体とする方法、解離状態の染料を塩の形で塗布したのち、酸性のゼラチンを上塗りすることにより分散固定を塗布時に得る方法、染料が溶解するpHに調節することによりアルカリ性水溶液とし、ゼラチンなど保護コロイド存在下でその後pHを下げることによって微小固体析出物として得る方法、さらにまた染料を適当な溶媒中で溶解させた後、染料の貧溶媒を添加して析出させることによって分散固体を得ることも可能である。固体分散された粒子の平均粒子サイズは、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.05〜3μmである。本発明において、好ましい染料は600〜800nmの範囲に吸収極大を有する染料である。
【0030】
これらの染料のうち、好ましくは国際特許WO88/04794号公報の表I〜表Xに記載の化合物および以下に示す(IV)〜(X)で表される化合物である。
【0031】
【化11】

【0032】
一般式(IV)〜(X)中、AおよびA’は同じでも異なっていてもよく、各々酸性核を表し、Bは塩基性核を表し、XおよびYは同じでも異なっていてもよく、各々電子求引性基を表す。Rは水素原子またはアルキル基を表し、R1 およびR2 は各々アルキル基、アリール基、アシル基またはスルホニル基を表し、R1 とR2 が連結して5または6員環を形成してもよい。R3 およびR6 は各々水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、R4 およびR5 は各々水素原子またはR1 とR4 もしくはR2 とR5 が連結して5または6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。L1 、L2 およびL3 は各々メチン基を表す。mは0または1を表し、nおよびqは各々0、1または2を表し、pは0または1を表し、pが0のとき、R3 はヒドロキシ基またはカルボキシル基を表し且つR4 およびR5 は水素原子を表す。B'はカルボキシル基、スルファモイル基、またはスルホンアミド基を有するヘテロ環基を表す。Qはヘテロ環基を表す。但し、一般式(IV)〜(X)で表される化合物は、1分子中に水とエタノールの容積比が1対1の混合溶液中におけるpKaが4〜11の範囲にある解離性基を少なくとも1個有する。
また、本発明には特開平7−152112号公報に記載された一般式(1)で表される化合物なども有用に用いることができる。
【0033】
本発明において特に好ましく用いられるのは、下記一般式(II)で表される染料の固体分散染料である。
【0034】
【化12】

【0035】
一般式(II)中、各R1は、各々独立して、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換もしくは未置換のアミド基、または置換もしくは未置換のスルホンアミド基を表し、nは1〜4の整数を表し、R2は、水素原子、置換または非置換の、アルキル基もしくはアミド基を表し、R3およびR4は各々独立に水素原子または置換もしくは未置換のアルキル基を表し、Mは水素原子またはカチオンを表す。
【0036】
以下に、本発明において固体分散染料として使用される染料の具体例を示す。但し本発明で用いることができる染料は以下の化合物に限定されるものではない。
【0037】
【化13】

【0038】
【化14】

【0039】
上記以外に、国際特許WO88/04794号、特開平7−152112号および特開平5−11383号(例示化合物I−1〜VII−7)、特開平10−78634号各公報に記載の染料が挙げられる。
これらの染料は国際特許WO88/04794号、ヨーロッパ特許EP0274723A1号、同276,566号、同299,435号、特開昭52−92716号、同55−155350号、同55−155351号、同61−205934号、同48−68623号、特開平2−282244号各公報、米国特許第2,527,583号、同3,486,897号、同3,746,539号、同3,933,798号、同4,130,429号、同4,040,841号各明細書、特開平3−7931号、同3−167546号等各明細書に記載された方法およびその方法に準じて容易に合成することができる。
本発明における固体分散された染料の塗布量としては、1平方メートル当り10mg〜500mgが好ましく、特に50〜300mgが好ましい。
また、本発明においては、上記の固体分散染料を使用する際のアンチハレーション層のpHを好ましくは4.0〜4.8に設定することにより、ハロゲン化銀写真感光材料を高温高湿下で保存した時の感度低下を極めて少なくすることができる。
【0040】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、写真構成層中(好ましくはアンチハレーション層、ハロゲン化銀乳剤層もしくはその隣接層)に水溶性染料を含有する。本発明でいう水溶性染料とは、25℃の水に対して0.5%以上溶ける染料であり、好ましくは1%以上溶ける染料である。本発明で使用する水溶性染料は、好ましくはλmaxが600nm〜800nmの範囲に吸収ピークを有するものである。これらの水溶性染料としては、その化学構造には特別な制限はなく、オキソノール染料、ヘミオキソノール染料、メロシアニン染料、シアニン染料、アゾ染料などを使用しうる。
【0041】
このような染料には、例えば英国特許第506,385号、同1,177,429号、同1,311,884号、同1,338,799号、同1,385,371号、同1,467,214号、同1,433,102号、同1,553,516号各明細書、特開昭48−85,130号、同49−114,420号、同52−117,123号、同52−92716号、同55−161,233号、同59−111,640号、特公昭39−22,069号、同43−13,168号、同62−273527号各公報、米国特許第3,247,127号、同3,469,985号、同4,078,933号等各明細書に記載されたピラゾロン核やバルビツール酸核を有するオキソノール染料、米国特許第2,533,472号、同3,379,533号、英国特許第1,278,621号等の各明細書記載されたその他のオキソノール染料、英国特許第575,691号、同680,631号、同599,623号、同786,907号、同907,125号、同1,045,609号、米国特許第4,255,326号各明細書、特開昭59−211,043号公報等に記載されたアゾ染料、特開昭50−100,116号、同54−118,247号各公報、英国特許第2,014,598号、同750,031号等各明細書に記載されたアゾメチン染料、米国特許第2,865,752号明細書に記載されたアントラキノン染料、米国特許第2,538,009号、同2,688,541号、同2,538,008号、同4,923,788号、英国特許第584,609号、同1,210,252号各明細書、特開昭50−40,625号、同51−3,623号、同51−10,927号、同54−118,247号、特公昭48−3,286号、同59−37,303号、同63−197,943号等各公報に記載されたアリーリデン染料、特公昭28−3,082号、同44−16,594号、同59−28,898号等各公報に記載されたスチリル染料、英国特許第446,583号、同1,335,422号各明細書、特開昭59−228,250号公報に記載されたトリアリールメタン染料、英国特許第1,075,653号、同1,153,341号、同1,284,730号、同1,475,228号、同1,542,807号等各明細書に記載されたメロシアニン染料、米国特許第2,843,486号、同3,294,539号、同4,900,653号等各明細書に記載されたシアニン染料などが挙げられる。
【0042】
これらの中で、本発明で特に好ましく用いることのできる染料は以下の一般式(III−1)〜(III−6)で表わされる染料である。
【0043】
【化15】

【0044】
式中、Z3 およびZ4 は各々同じでも異っていてもよく、複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表わし、L4 、L5 、L6 、L7 およびL8 はメチン基を表わし、n1およびn2は各々独立に0または1を表わし、M+は水素またはその他の1価のカチオンを表わす。
【0045】
【化16】

【0046】
式中、XおよびYは同一または異なっていてもよく、電子求引性基を表わし、XとYが連結されて環を形成してもよい。R41およびR42は同一または異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、置換アミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基またはスルホ基を表わす。R43およびR44は同一または異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基またはスルホニル基を表わし、R43、R44が連結されて5〜6員環を形成してもよい。R41とR43、R42とR44がそれぞれ連結されて5〜6員環を形成してもよい。上記X、Y、R41、R42、R43、R44のうち、少なくとも1つは置換基としてスルホ基またはカルボキシル基を有する。L11、L12およびL13は各々メチン基を表わす。k1は0または1を表わす。
【0047】
一般式(III−3)
Ar1−N=N−Ar2
式中、Ar1 およびAr2 は同じでも異っていても良く、アリール基または複素環基を表わす。
【0048】
【化17】

【0049】
式中、R51、R54、R55およびR58は同一または互いに異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイル基またはアミノ基(−NR' R''で、R' ,R''は同一または互いに異なっていてもよく、水素原子、または少なくとも一つのスルホン酸基もしくはカルボキシル基をもつアルキル基またはアリール基)を表わす。R52、R53、R56およびR57は同一または互いに異なっていてもよく、水素原子、スルホン酸基、カルボキシル基または少なくとも一つのスルホン酸基またはカルボキシル基をもつアルキル基またはアリール基を表わす。
【0050】
【化18】

【0051】
式中、LおよびL’は各々独立に置換、非置換メチン基または窒素原子を表し、mは0、1、2または3を表わす。Z5はピラゾロン核、ヒドロキシピリドン核、バルビツール酸核、チオバルビツール酸核、ジメドン核、インダン−1,3−ジオン核、ロダニン核、チオヒダントイン核、オキサゾリジン−4−オン−2−チオン核、ホモフタルイミド核、ピリミジン−2,4−ジオン核または1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2,4−ジオン核を形成するに必要な非金属原子群を表わす。Z6はオキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、ナフトオキサゾール核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ピリジン核、キノリン核、ベンゾイミダゾール核、ナフトイミダゾール核、イミダゾキノキサリン核、インドレニン核、イソオキサゾール核、ベンゾイソオキサゾール核、ナフトイソオキサゾール核またはアクリジン核を形成するに必要な非金属原子群を表わし、Z5 およびZ6はさらに置換基を有していてもよい。
【0052】
【化19】

【0053】
または
【0054】
【化20】

【0055】
式中、RおよびR’は互いに同一または異っていてもよく、置換または非置換のアルキル基を表わす。L71、L72およびL73は互いに同一または異っていてもよく、置換または非置換のメチン基を表わし、m7は0、1、2または3を表わす。ZおよびZ’は互いに同一または異っていてもよく、置換または非置換の複素5員環または複素6員環を形成するに必要な非金属原子群を表わし、k7およびn7は各々独立に0または1である。X-はアニオンを表わす。aは1または2を表わし、化合物が分子内塩を形成するときにはaは1である。
【0056】
これらの化合物のうち、一般式(III−1)で表される染料が好ましい。
一般式(III−1)においては、Z3 およびZ4 でそれぞれ表わされる非金属原子群によって形成される複素環は5もしくは6員環が好ましく、単環でも縮合環でも良く、例えば5−ピラゾロン、6−ヒドロキシピリドン、ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−3,6−ジオン、バルビツール酸、ピラゾリジンジオン、チオバルビツール酸、ロダニン、イミダゾピリジン、ピラゾロピリミジン、ピロリドン、ピラゾロイミダゾールなどが挙げられる。L4 、L5、L6 、L7およびL8 でそれぞれ表されるメチン基は置換基(例えば、メチル基、エチル基、フェニル基、塩素原子、スルホエチル基、カルボキシエチル基、ジメチルアミノ基、シアノ基)を有していても良く、置換基どうしが連結して5または6員環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、5,5−ジメチルシクロヘキセン)を形成してもよい。M+ で表わされる水素以外の1価のカチオンは、例えNa+、K+、HN+(C253、C65NH2+、Li+等を挙げることができる。
一般式(III−1)で表わされる染料のうち、特に好ましいものは下記一般式(III−1a)、(III−1b)、(III−1c)、(III−1d)または(III−1e)で表わされる染料である。
【0057】
【化21】

【0058】
式中、R7 およびR9 は各々独立に脂肪族基、芳香族基またはヘテロ環基を表わし、R8およびR10は各々独立に脂肪族基、芳香族基、−OR11、−COOR11、−NR1112、−CONR1112、−NR11CONR1112、−SO2 13、−COR13、−NR12COR13、−NR12SO213またはシアノ基(ここに、R11、R12は各々独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基を表わし、R13は脂肪族基または芳香族基を表わし、R11とR12またはR12とR13は連結して5または6員環を形成していても良い。)を表わし、L4 、L5 、L6 、L7、L8 、n1、n2およびM+は一般式(III−1)における定義と同義である。
【0059】
【化22】

【0060】
式中、R21およびR24は各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−NR2728、−NR27CONR2728、−NR28COR29またはNR28SO229を表わし、R22およびR25は各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、スルホン酸基、−NR2728、−NR28COR29、−NR28SO229、−NR27CONR2728、−COOR27、−CONR2728、−COR29、−SO2 29またはSO2 NR2728を表わし、R23およびR26は各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−OR27、−COOR27、−COR29、−CONR2728、−NR2728、−NR28COR29またはNR28SO2 29、−NR27CONR2728、−SO229、−SO2 NR2728、−OR27またはシアノ基を表わす(ここにR27、R28は各々水素原子、脂肪族基または芳香族基を表わし、R29は脂肪族基または芳香族基を表わし、R27とR28またはR28とR29は連結して5または6員環を形成していても良い。)。L4 、L5 、L6 、L7 、L8 、n1、n2およびM+は一般式(III−1)における定義と同義である。
【0061】
【化23】

【0062】
式中、R31およびR34は各々独立に脂肪族基、芳香族基または複素環基を表わし、R32およびR35は各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、COR39またはSO2 39を表わし、R33およびR36は各々独立に水素原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、−COOR37、−OR37、−NR3738、−N(R38)COR39、−N(R38)SO2 39、−CONR3738またはN(R37)CONR3738(R39は脂肪族基または芳香族基を表わし、R37およびR38は各々独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基を表わす。)を表わし、Z31は酸素原子またはNR45、Z32は酸素原子またはNR46(R45およびR46は各々R31およびR34と連結して5員環を形成するのに必要な非金属原子群を表わす。)を表わし、L4 、L5 、L6 、L7 、L8 、n1、n2およびM+は一般式(III−1)における定義と同義である。但しR31、R32、R33、R34、R35、R36、L4 、L5 、L6、L7 またはL8 の少くとも1個は、少くとも1個のカルボン酸基またはスルホン酸基を有する基を表わす。
【0063】
【化24】

【0064】
式中、R61、R62、R63およびR64は各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表わし、L4 、L5 、L6 、L7 、L8 、n1、n2およびM+ は一般式(III−1)における定義と同義である。
【0065】
【化25】

【0066】
式中、R65、R66、R67およびR68は各々独立に脂肪族基、芳香族基、またはヘテロ環残基を表わし、L41、L42およびL43は各々メチン基を表わす。n41は1、2または3を表わす。但しR65、R66、R67、R68のいずれかにカルボキシル基またはスルホ基を有し、その合計が少なくとも2個以上である。
【0067】
一般式(III−1a)〜(III−1e)で表される染料のうち、好ましくは一般式(III−1a)で表される染料である。
【0068】
以下に一般式(III−1a)で表される染料について詳細に説明する。
7 、R8 、R9 、R10、R11、R12およびR13で表わされる脂肪族基としては、直鎖、分岐または環状アルキル基、アラルキル基、アルケニル基のいずれでも良く、例えばメチル基、エチル基、n−ブチル基、ベンジル基、2−スルホエチル基、4−スルホブチル基、2−スルホベンジル基、2−カルボキシエチル基、カルボキシメチル基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基等が挙げられる。R7 、R8 、R9 、R10、R11、R12およびR13で表わされる芳香族基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、4−スルホフェニル基、3−スルホフェニル基、2,5−ジスルホフェニル基、4−カルボキシフェニル基、5,7−ジスルホ−3−ナフチル基等が挙げられる。R7 およびR9 で表わされる複素環基は、5または6員の含窒素複素環基(縮合環を含む)を表わし、例えば5−スルホピリジン−2−イル基、5−スルホベンゾチアゾール−2−イル基等が挙げられる。R11とR12、R12とR13が連結して形成される5または6員環としては、ピロリジン環、ピペリジン環、ピロリドン環、モルホリン環等が挙げられる。
n1およびn2はともに1である場合が特に好ましい。またR7およびR8はともに芳香族基である場合が特に好ましい。さらには、n1およびn2がともに1であり、かつR7およびR8がともに芳香族基である場合が最も好ましい。
以下に水溶性染料の具体例を示すが、本発明で用いることができる水溶性染料はこれらに限定されるものではない。
【0069】
【化26】

【0070】
【化27】

【0071】
【化28】

【0072】
【化29】

【0073】
【化30】

【0074】
【化31】

【0075】
上記以外に、特開平5−188516号公報に記載の具体例を挙げることができる。
これらの水溶性染料は、例えば特開平5−188516号公報に記載される方法または該特許に記載される合成法に準じて容易に合成することができる。
水溶性染料の添加量はlogEで0.5以上感度が低下しない範囲であり、1mg/m2〜200mg/m2が好ましく、5mg/m2〜100mg/m2がさらに好ましい。これらの水溶性染料は単独で使用してもまた2種以上併用してもよい。これらの水溶性染料は、写真構成層中のいずれに添加してもよいが、本発明においてはアンチハレーション層に添加すれば本発明の効果が効果的に発現するので好ましい。
【0076】
本発明においては、現像処理前のハロゲン化銀写真感光材料の670nmにおける吸光度は1.0〜2.0であり、好ましくは1.0〜1.5である。
また、本発明においては、水に浸漬後の670nmにおける吸光度が0.2以上である。ここで水に浸漬後の670nmの吸光度とは、具体的には25cm2のハロゲン化銀写真感光材料(現像処理前の生フィルム)を25℃の純水200mlに5分間静止した状態で浸漬し、その後自然乾燥させ、670nmで測定したフィルムの吸光度である。水に浸漬後の670nmにおける吸光度は0.2〜2.0が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.5である。
本発明においては、上記のように調整することにより、極めて効果的に本発明の効果が発現される。
【0077】
以下に本発明のハロゲン化銀写真感光材料の詳細を説明する。
本発明に好ましく用いられるハロゲン化銀乳剤は、ピー・グラフキデス(P.Glafkides)、著「シミー・エ・フィジーク・フォトグラフィーク(Chimie et Physique Photographique)」(ポール・モンテル(Paul Montel)社刊、1967年)、ジー・エフ・ダァフィン(G.F.Duffin) 著「フォトグラフィック・エマルジョン・ケミストリー(Photographic Emulsion Chemistry)」(フォーカルプレス(Focal Press)社刊、1966年)、ヴィ・エル・ツェリクマンら(V.L.Zelikman et al.)著「メイキング・アンド・コーティング・フォトグラフィック・エマルジョン(Making and Coating Photographic Emulsion) 」(フォーカル・プレス(Focal Press)社刊、1964年)などに記載された方法を用いて調製することができる。すなわち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでも良く、また可溶性ハロゲン塩を反応させる形式としては片側混合法、同時混合法、それらの組合わせなどのいずれを用いてもよい。また、粒子を銀イオン過剰の下において形成させる方法(いわゆる逆混合法)を用いることもできる。同時混合法の一つの形式としてはハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ方法、すなわちいわゆるコントロール・ダブルジェット法を用いることもできる。この方法によると、結晶形が規則的で粒子サイズが均一に近いハロゲン化銀乳剤が得られる。別々に形成した2種以上のハロゲン化銀乳剤を混合して用いても良い。
【0078】
またこのハロゲン化銀粒子の形成時には粒子の成長をコントロールするためにハロゲン化銀溶剤として例えばアンモニア、ロダンカリ、ロダンアンモン、チオエーテル化合物(例えば、米国特許第3,271,157号、同第3,574,628号、同第3,704,130号、同4,297,439号、同第4,276,374号各明細書など)、チオン化合物(例えば特開昭53−144319号公報、同第53−82408号公報、同第55−77737号公報など)、アミン化合物(例えば特開昭54−100717号公報など)などを用いることができる。
【0079】
ハロゲン化銀粒子形成または物理熟成の過程においてカドミウム塩、亜鉛塩、タリウム塩、イリジウム塩またはその錯塩、ロジウム塩またはその錯塩、鉄塩または鉄錯塩などを共存させてもよい。また、本発明に用いられる内部潜像型乳剤としては、例えば米国特許第2,592,250号、同3,206,313号、同3,447,927号、同3,761,276号、および同3,935,014号各明細書に記載がある異種金属を内蔵させた乳剤等を挙げることができる。
【0080】
これらのうち、好ましくはイリジウム、鉄、レニウム、ルテニウムまたはオスミウム化合物(塩または金属錯体を含む)である。
本発明に特に好ましく用いられるイリジウム化合物として、水溶性イリジウム化合物を用いることができる。例えば、ハロゲン化イリジウム(III)化合物、またハロゲン化イリジウム(IV)化合物、またイリジウム錯塩で配位子としてハロゲン、アミン類、オキザラト等を持つもの、例えばヘキサクロロイリジウム(III)あるいは(IV)錯塩、ヘキサアンミンイリジウム(III) あるいは(IV)錯塩、トリオキザラトイリジウム(III)あるいは(IV)錯塩などが挙げられる。本発明においては、これらの化合物の中からIII価のものとIV価のものを任意に組合せて用いることができる。これらのイリジウム化合物は水あるいは適当な溶媒に溶解して用いられるが、イリジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行なわれる方法、即ちハロゲン化水素水溶液(例えば塩酸、臭酸、フッ酸等)、あるいはハロゲン化アルカリ(例えばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性イリジウムを用いる代わりに、ハロゲン化銀粒子調製時にあらかじめイリジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。本発明に係わるイリジウム化合物の全添加量は、最終的に形成されるハロゲン化銀1モル当たり1×10-8〜1×10-6モルが適当であり、好ましくは5×10-8〜1×10-6モルである。10-6モル以上添加すると減感化し好ましくない。イリジウム化合物の添加は、ハロゲン化銀乳剤の製造時および、乳剤を塗布する前の各段階において適宜行なうことができるが、特に、粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましい。具体的化合物としては、塩化第1イリジウム(III)、臭化第1イリジウム(III)、塩化第2イリジウム(IV)、ヘキサクロロイリジウム(III)酸ナトリウム、ヘキサクロロイリジウム(III)塩、ヘキサアミンイリジウム(IV)塩、トリオキザラトイリジウム(III)塩、トリオキザラトイリジウム(IV)塩、などのハロゲンアミン類、オキザラト錯塩類が好ましい。
【0081】
本発明に好ましく用いられる鉄化合物は2価または3価の鉄イオン含有化合物で、好ましく鉄塩や鉄錯体である。具体的化合物としては、硝酸第一鉄アンモニウム、塩基性酢酸第二鉄、アルブミン酸第二鉄、酢酸第二鉄アンモニウム、臭化第二鉄、塩化第二鉄、クロロ酸第二鉄、クエン酸第二鉄、フッ化第二鉄、ぎ酸第二鉄、グリセロ・リン酸第二鉄、水酸化第二鉄、酸性リン酸第二鉄、硝酸第二鉄、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄ナトリウム、チオシアン化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸第二鉄アンモニウム、ヒ酸第一鉄、臭化第一鉄、炭酸第一鉄、塩化第一鉄、クエン酸第一鉄、フッ化第一鉄、ぎ酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、水酸化第一鉄、よう化第一鉄、乳酸第一鉄、蓚酸第一鉄、リン酸第一鉄、こはく酸第一鉄、硫酸第一鉄、チオシアン酸第一鉄、硝酸第一鉄、硫酸第二鉄グアニジン、クエン酸第二鉄アンモニウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ペンタシアノアンミン第一鉄カリウム、エチレンジニトリロ四酢酸第二鉄ナトリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、塩化トリス(ジピリジル)第二鉄、ペンタシアノニトロシル第二鉄カリウム、塩化ヘキサレア第二鉄、が挙げられる。
このうち、特にヘキサシアノ鉄(II)酸塩、ヘキサシアノ鉄(III)酸塩、チオシアン酸第一鉄塩やチオシアン酸第二鉄塩が好ましい。
【0082】
本発明に好ましく用いられるレニウム、ルテニウム、オスミウム化合物はヨーロッパ公開特許EP0336689A号、同0336427A1号、同0336425A1号、同0336426A1号各公報に記載された六座配位錯体が好ましく、特にシアニド配位子を少なくとも4個以上含むものが好ましい。好ましい化合物としては、以下の式で表される。
〔M(CN)6-yyn
ここで、Mはレニウム、ルテニウム、オスミウムを表し、Lは架橋配位子を表し、yは0、1または2を表し、nは2−、3−、4−を表す。
【0083】
以下にこれらの具体例を挙げることができる。
〔Re(CN)54-、〔Ru(CN)54-、〔Os(CN)54-、〔ReF(CN)54-、〔RuF(CN)54-、〔OsF(CN)54-、〔ReCl(CN)54-、〔RuCl(CN)54-、〔OsCl(CN)54-、〔ReBr(CN)54-、〔RuBr(CN)54-、〔OsBr(CN)54-、〔ReI(CN)54-、〔RuI(CN)54-、〔OsI(CN)54-、〔ReF2(CN)44-、〔RuF2(CN)54-、〔OsF2(CN)54-、〔ReCl2(CN)44-、〔RuCl2(CN)44-、〔OsCl2(CN)44-、〔RuBr2(CN)44-、〔OsBr2(CN)44-、〔ReBr2(CN)44-、〔RuI2(CN)44-、〔OsI2(CN)44-、〔Ru(CN)5(OCN)〕4-、〔Os(CN)5(OCN)〕4-、〔Ru(CN)5(SCN)〕4-、〔Os(CN)5(SCN)〕4-、〔Ru(CN)5(N3)〕4-、〔Os(CN)5(N3)〕4-、〔Ru(CN)5(H2O)〕3-、〔Os(CN)5(H2O)〕3-
【0084】
上記の鉄、レニウム、ルテニウム、オスミウム化合物は、ハロゲン化銀粒子形成中に添加することが好ましい。添加位置としては、粒子中に均一に分布させても、粒子形成の初期、中期、後期に局在させてもよいが、粒子形成の後期、すなわち最終粒子サイズの50%、より好ましくは80%が形成された後に添加することが好ましい。添加量は銀1モルに対し1×10-3モル以下にすればカブリを効果的に抑えられるため好ましく、さらに好ましくは1×10-6〜1×10-4モルである。
本発明においては、第VIII族に含まれる他の金属、例えばコバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、白金等を併用してもよい。特に塩化ロジウム、ヘキサクロロロジウム(III)酸アンモニウムのごときロジウム塩との併用は硬調な乳剤が得られ有利である。
【0085】
ハロゲン化銀乳剤は、通常は化学増感される。化学増感のためには、例えば、エイチ・フリーザー(H.Frieser)著「ディ・グランドラーゲッター・フォトグラフィッシェン・プロツェス・ミット・シルベルハロゲニーデン(Die Grundklagendor Photographischen Prozesse mit Silber halogenlden)(アカデミッシェ・フェアラーク社(Akademische Verlagegegellschaft,1968年刊)675〜734頁に記載の方法を用いることができる。すなわち、活性ゼラチンや銀と反応し得る硫黄を含む化合物(例えば、チオ硫酸塩、チオ尿素類、メルカプト化合物類、ローダニン類)を用いる硫黄増感法;還元性物質(例えば、第一錫塩、アミン類、ヒドラジン誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物)を用いる還元増感法;貴金属化合物(例えば、金錯塩のほか、Pt、Rh、Ir、Pdなどの周期律表VIII族の金属の錯塩)を用いる貴金属増感法などを単独または組合わせて用いることができる。
【0086】
さらに具体的な化学増感剤として、アリルチオカルバミド、チオ尿素、ソジウム・チオサルフェートやシスチンなどの硫黄増感剤;ポタシウム・クロロオーレイト、オーラス・チオサルフェートやポタシウム・クロロパラデートなどの貴金属増感剤;塩化スズ、フェニルヒドラジンやレダクトンなどの還元増感剤等を含む。またセレン増感剤を用いることも有用である。セレン化合物としては、不安定型セレン化合物および/または非不安定型セレン化合物があり、高温、好ましくは40℃以上で乳剤を一定時間攪拌することにより用いられる。不安定型セレン化合物としては特公昭44−15748号、特公昭43−13489号各公報、特開平4−25832号、同4−109240号各公報などに記載の化合物を用いることが好ましい。具体的な不安定セレン増感剤としては、イソセレノシアネート類(例えばアリルイソセレノシアネートの如き脂肪族イソセレノシアネート類)、セレノ尿素類、セレノケトン類、セレノアミド類、セレノカルボン酸類(例えば、2−セレノプロピオン酸、2−セレノ酢酸)、セレノエステル類、ジアシルセレニド類(例えば、ビス(3−クロロ−2,6−ジメトキシベンゾイル)セレニド)、セレノホスフェート類、ホスフィンセレニド類、コロイド状金属セレンなどが挙げられる。不安定型セレン化合物の好ましい類型を上に述べたがこれらは限定的なものではない。当業技術者には写真尿素の増感剤としての不安定型セレン化合物といえば、セレンが不安定である限りにおいて該化合物の構造はさして重要なものではなく、セレン増感剤分子の有機部分はセレンを担持し、それを不安定な形で乳剤中に存在せしめる以外何らの役割をもたないことが一般に理解されている。本発明においては、かかる広範な概念の不安定セレン化合物が有利に用いられる。非不安定型セレン化合物としては特公昭46−4553号、特公昭52−34492号各公報および特公昭52−34491号公報に記載の化合物が非不安定型セレン化合物としては例えば亜セレン酸、セレノシアン化カリウム、セレナゾール類、セレナゾール類の四級塩、ジアリールセレニド、ジアリールジセレニド、ジアルキルセレニド、ジアルキルジセレニド、2−セレナゾリジンジオン、2−セレノオキサゾリジンチオンおよびこれらの誘導体等が挙げられる。またポリオキシエチレン化合物、ポリオキシプロピレン化合物、四級アンモニウム基をもつ化合物などの増感剤も含んでもよい。
【0087】
上記ハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のカブリを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちアゾール類、例えばベンゾチアゾリウム塩、ニトロインダゾール流、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ベンズイミダゾール類(特にニトロまたはハロゲン置換体);ヘテロ環メルカプト化合物類たとえばメルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール)、メルカプトピリミジン類;カルボキシル基やスルホン基などの水溶性基を有する上記のヘテロ類メルカプト化合物類;チオケト化合物たとえばオキサゾリンチオン;アザインデン類たとえばテトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン類);ベンゼンチオスルホン酸類;ベンゼンスルフィン酸;などのようなカブリ防止剤または安定剤として知られた多くの化合物を加えることができる。
【0088】
ハロゲン化銀乳剤は、米国特許第3,411,911号、同3,411,912号、同3,142,568号、同3,325,286号、同3,547,650号各明細書、特公昭45−5331号公報に記載されているアルキルアクリレート、アルキルメタアクリレート、アクリル酸、グリシジルアクリレート等のホモ、またはコポリマーからなるポリマーラテックスを写真材料の寸度安定性の向上、膜物性の改良などの目的で含有することができる。
【0089】
ハロゲン化銀乳剤をリス型の印刷用感光材料として用いるときには、伝染現像効果を高めるようなポリアルキレンオキシド化合物を用いることができる。たとえば米国特許第2,400,532号、同第3,294,537号、同第3,294,540号、仏国特許第1,491,805号、同第1,596,673号各明細書、特公昭40−234466号公報、特開昭60−156423号公報、同54−18726号公報、同56−161933号公報に記載されているような化合物を用いることができる。好ましい例としては、炭素原子数2〜4のアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレン−1,2−オキシド、ブチレン−1,2−オキシドなど好ましくはエチレンオキシドの少なくとも10単位からなるポリアルキレンオキシドと水、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂肪酸、有機アミン、ヘキシトール誘導体などの活性水素原子を少なくとも一個有する化合物との縮合物あるいは、2種以上のポリアルキレンオキシドのブロックポリマーなどを挙げることができる。すなわち、ポリアルキレンオキシド化合物として、具体的にはポリアルキレングリコールアルキルエーテル類、ポリアルキレングリコールアリールエーテル類、ポリアルキレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリアルキレングリコールエステル類、ポリアリキレングリコール脂肪族アミド類、ポリアルキレングリコールアミン類、ポリアルキレングリコールブロック共重合体、ポリアルキレングリコールグラフト重合物などを用いることができる。使用できるポリアルキレンオキシド化合物は分子量が300〜15,000、好ましくは600〜8,000のものである。これらのポリアルキレンオキシド化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り10mg〜3gが好ましい。添加時期は製造工程中の任意の時期を選ぶことができる。
【0090】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、支持体の同一面上に、少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層、少なくとも1層のアンチハレーション層および少なくとも1層の保護層を有する。
本発明においては、支持体の裏側(乳剤層を持たない側)にバック層を有していても良い。上記ハロゲン化銀写真感光材料が、バック層、支持体、アンチハレーション層、乳剤層、中間層、紫外線吸収層および保護層からなる構成を採っても良い。
一般式(I)で表される分光増感色素、アンチハレーション層に使用される固体分散染料、写真構成層に使用される水溶性染料を含有する本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、脱色が容易であるという好ましい特徴を有する。
【0091】
本発明で用いられるハロゲン化銀乳剤には、保護コロイドとしてゼラチンのほかにフタル化ゼラチンやマロン化ゼラチンのようなアシル化ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロースや、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース化合物;テキストリンのような可溶性でんぷん;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドやポリスチレンスルホン酸のような親水性ポリマー;寸度安定化のための可塑剤;ラテックスポリマーやマット剤を加えることができる。完成(finished) 乳剤は、適切な支持体、例えばバライタ紙、レジンコート紙、合成紙、トリアセテートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、その他のプラスチックベースまたはガラス板の上に塗布される。
【0092】
写真像を得るための露光は通常の方法を用いて行なえば良い。すなわち、自然光(日光)、タングステン電灯、水銀灯、キセノンアーク灯、炭素アーク灯、キセノンフラッシュ灯、レーザー、LED、CRTなどの公知の多種の光源をいずれでも用いることができる。露光時間は通常カメラで用いられる1/1000秒から1秒の露光時間はもちろん、1/1000秒より短い露光、例えばキセノン蛍光灯を用いた1〜104 〜1/108 秒の露光を用いることもできるし、1秒より長い露光を用いることもできる。必要に応じて色フィルターで露光に用いられる光の分光組成を調節することができる。露光にレーザー光を用いることもできる。また電子線、X線、γ線、α線などによって励起された蛍光体から放出する光によって露光されてもよい。
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、露光が走査露光である場合に好ましく適用される。露光波長としては600nm〜800nm(好ましくは600nm〜700nm)が好ましく、このような露光光源としては、HeNeレーザー(633nm) 、赤色半導体レーザー(670nm〜680nm)、赤色LED(660〜680nm)が好ましく、特に赤色LEDが好ましい。
【0093】
本発明は種々のハロゲン化銀写真感光材料に適用される。カラー写真感光材料であっても黒白感光材料であってもよいが、黒白感光材料が好ましい。具体的には、医療用または工業用の感光材料、印刷用感光材料、マイクロフィルム用感光材料等が挙げられるが、中でもマイクロフィルム用感光材料が好ましい。
【0094】
本発明の感光材料の写真処理には、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)176号第28〜30頁(RD−17643)に記載されているような公知の方法を利用することができ、その処理液には公知のものを用いることができる。また、処理温度は通常、18℃〜50℃の間に設定されるが、18℃より低い温度または50℃を超える温度としてもよい。目的に応じて、銀画像を形成する現像処理(黒白写真処理)、あるいは、色素像を形成すべき現像処理から成るカラー写真処理のいずれをも適用することができるが、好ましくは黒白写真処理である。
【0095】
黒白現像液には、ジヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン)、3−ピラゾリドン類(例えば1−フェニル−3−ピラゾリドン)、アミノフェノール類(例えばN−メチル−p−アミノフェノール)、アスコルビン酸誘導体やエリソルビン酸誘導体等の公知の現像主薬を単独或は組み合わせて用いることができる。
【0096】
本発明において、好ましい現像液は特開平7−225447号公報に記載の一般式(5)で表される化合物(アスコルビン酸誘導体やエリソルビン酸誘導体を含む)を現像主薬として含むものであり、該公報の段落番号0015〜0016、0107〜0116が本願の明細書に好ましく取り込まれる。特に、該一般式(5)で表される化合物を現像主薬として含み、実質的にジヒドロキシベンゼン類を含まない現像液が好ましい。
該一般式(5)で表される化合物の中でも、好ましいのは、アスコルビン酸誘導体やエリソルビン酸誘導体であり、さらに好ましくはアスコルビン酸あるいはエリソルビル酸(立体光学異性体)である。アスコルビン酸誘導体やエリソルビン酸誘導体の使用量の一般的な範囲としては、現像液1リットル当り5×10-3モル〜1モル、特に好ましくは10-2モル〜0.5モルである。
【0097】
補助現像主薬としての1−フェニル−3−ピラゾリドンまたはその誘導体の例としては、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジヒドロキシルメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−5−メチル−3−ピラゾリドン、1−p−アミノフェニル−4,4ジメチル−3−ピラゾリドン、1−p−トリル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドンなどがある。p−アミノフェノール系補助現像主薬としては、N−メチルーp−アミノフェノール、p−アミノフェノール、N−(β−ヒドロキシエチル)−p−アミノフェノール、N−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン、2−メチル−p−アミノフェノ−ル、p−ベンジルアミノフェノール等があるが、なかでもN−メチル−p−アミノフェノールが好ましい。本発明の一般式(5)で表される化合物と1−フェニル−3−ピラゾリドン類またはp−アミノフェノール類との組合せを用いる場合には、後者を通常10-3モル/リットル〜0.1モル/リットル、より好ましくは10-3モル/リットル〜0.06モル/リットルの量で用いるのが好ましい。
【0098】
本発明において、実質的にジヒドロキシベンゼン類は含まないとは、ジヒドロキシベンゼン類の現像液中での濃度が前記一般式(5)で表される化合物や上記の補助現像主薬の量に比して取るに足らないこと(例えば5×10-2モル/リットル以下であること)を意味する。本発明の現像液は、好ましくはジヒドロキシベンゼン類を全く含まないものである。
【0099】
本発明の現像液には、保恒剤として亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩を添加してもよい。亜硫酸塩は0.01モル/リットル以上で用いられる。多量に用いるとハロゲン化銀乳剤粒子を溶解して、銀汚れの原因となる。また、COD(化学的酸素要求量)を高める原因ともなるため、添加量は必要最小限にすべきである。
【0100】
本発明の現像処理に用いる現像液のpHは9.0〜12.0までの範囲が好ましい。さらに好ましくは9.5〜12までの範囲である。pHの設定のために用いるアルカリ剤には炭酸カリウム、炭酸ナトリウムの他に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどがある。なお本発明の現像液では炭酸イオンは保恒剤としても機能する。炭素イオンをこの目的で使用する場合、0.5モル/リットル以上の量で用いることが好ましい。本発明の現像液には、特開昭60−93433号公報に記載の糖類(例えばサッカロ−ス)、オキシム類(例えばアセトキシム)、フェノール類(例えば5−スルホサリチル酸)、ケイ酸塩、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウムの如きpH緩衝剤を用いることができる。緩衝剤の濃度は0.3モル/リットル以上が好ましい。ホウ酸、メタホウ酸ナトリウムのようなホウ素化合物は、一般式(I)で表される本発明の増感色素と反応して不活化させる恐れがあり好ましくない。
【0101】
臭化カリウム、沃化カリウムの如き現像抑制剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、メチルセロソルブ、ヘキシレングリコール、エタノール、メタノールの如き有機溶剤、5−ニトロインダゾールなどのインダゾール系化合物、2−メルカプトベンツイミダゾール−5−スルホン酸ナトリウムなどのベンツイミダゾ−ル系化合物、、5−メチルベンツトリアゾールなどのベンツトリアゾール系化合物等のカブリ防止剤を含んでもよく、Research Disclosure 第 176巻、No.17643、第XXI項(12月号、1978年)に記載された現像促進剤を含んでもよい。また米国特許4,269,929号明細書、特開昭61−267759号公報および特開平2−208652号公報に記載されているアミン化合物を含有してもよい。さらに必要に応じて色調剤、界面活性剤、硬膜剤などを含んでもよい。本発明の現像液には、ヨ−ロッパ特許公開136582号公報、英国特許第958678号明細書、米国特許第3232761号明細書、特開昭56−106244号公報に記載のアルカノ−ルアミンなどのアミノ化合物を現像促進、コントラスト上昇などの目的で用いることができる。
【0102】
本発明に用いる定着液はチオ硫酸塩を含む水溶液であり、pH3.8以上、好ましくは4.2〜7.0を有する。定着剤としてはチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムなどがあるが、定着速度の点からチオ硫酸アンモニウムが特に好ましい。定着剤の使用量は適宜変えることができ、一般には約0.1〜約6モル/リットルある。定着液には硬膜剤として作用する水溶性アルミニウム塩を含んでもよく、それらには、例えば塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリ明ばんなどがある。定着液には、酒石酸、クエン酸、グルコン酸あるいはそれらの誘導体を単独であるいは2種以上用いることができる。これらの化合物は定着液1リットルにつき0.005モル/リットル以上含むものが有効で、特に0.01モル/リットル〜0.03モル/リットルが特に有効である。定着液には所望により保恒剤(例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩)、pH緩衝剤(例えば、酢酸、ホウ酸)pH調整剤(例えば、硫酸、アンモニア)、硬水軟化能のあるキレート剤、界面活性剤、湿潤剤、定着促進剤、特開昭62−78551号記載の化合物を含むことができる。定着促進剤としては、例えば特開昭45−35754号、同58−122535号、同58−122536号各公報記載のチオ尿素誘導体、分子内に3重結合を持つアルコ−ル、米国特許第4126459号明細書記載のチオエ−テル化合物などが挙げられ、また特開昭2−44355号公報記載の化合物を用いてもよい。また、色素溶出促進剤として、特開昭64−4739号公報記載の化合物を用いることができる。
【0103】
本発明における現像処理方法では、現像、定着工程の後、水洗水または安定化液で処理され、次いで乾燥される。ハロゲン化銀感光材料1m2 当たり、3リットル以下の補充量(ゼロ、すなわちため水水洗も含む)の水洗水または安定化液で処理することもできる。すなわち節水処理が可能となるのみならず、自現機設置の配管を不要とすることができる。水洗水の補充量を少なくする方法として、古くより多段向流方式(例えば2段、3段など)が知られている。この多段向流方式を本発明に適用すれば定着後の感光材料は徐々に清浄な方向、つまり定着液で汚れていない処理液の方に順次接触して処理されていくので、さらに効率のよい水洗がなされる。水洗を小量の水で行う場合には、特開昭63−18350号、同62−287252号各公報などに記載のスクイズローラー、クロスオーバーローラーの洗浄槽を設けることが好ましい。また、小量水洗時に問題となる公害負荷の軽減のために種々の酸化剤添加やフィルタ−濾過を組み合わせてもよい。上記の節水処理または無配管処理には、水洗水または安定化液に防ばい手段を施すことが好ましい。
【0104】
防ばい手段としては、特開昭60−263939号公報に記された紫外線照射法、同60−263940号公報に記された磁場を用いる方法、同61−131632号公報に記されたイオン交換樹脂を用いて純水にする方法、特開昭62−115154号、同62−153952号、同62−220951号、同62−209532号各公報に記載の防菌剤を用いる方法を用いることができる。さらには、L.F.West,"Water Quality Criteria" Photo. Sci. & Eng.,Vol.9 No.6(1965) 、M.W.Reach,"Microbiological Growths in Motion- picture Processing",SMPTE Jounal Vol.85(1976) 、R.O.Deegan,"Photo Processing Wash Water Biocides",J. Imaging Tech.,Vol.10,No.6(1984)、および特開昭57−8542号、同57−56143号、同58−105145号、同57−132146号、同58−18631号、同57−97530号、同57−157244号などの各公報に記載されている防菌剤、防ばい剤、界面活性剤などを併用することもできる。さらに、水洗浴または安定化浴には、R.T.Kreiman 著、J. Imaging Tech.,10(6)242 頁(1984)に記載されたイソチアゾリジン系化合物、Research Disclosure第205巻、No.20526(1981,No.4) に記載された化合物などを防菌剤(Microbiocide)として併用することもできる。その他、「防菌防黴の化学」堀口博著、三共出版(昭和57)、「防菌防黴技術ハンドブック」日本防菌防黴学会・博報堂(昭和61)に記載されているような化合物を含んでもよい。
【0105】
本発明の方法において少量の水洗水で水洗するときには特開昭63−143548号公報のような水洗工程の構成をとることも好ましい。さらに、本発明の方法で水洗または安定化浴に防黴手段を施した水を処理に応じて補充することによって生ずる水洗または安定化浴からのオーバーフローの一部または全部は特開昭60−235133号公報に記載されているようにその前の処理工程である定着能を有する処理液に利用することもできる。本発明における現像処理では、現像時間が5秒〜3分、好ましくは8秒〜2分、その現像温度は18℃〜50℃が好ましく、24℃〜40℃がより好ましい。
【0106】
定着温度および時間は約18℃〜約50℃で5秒〜3分が好ましく、24℃〜40℃で6秒〜2分がより好ましい。この範囲内で十分な定着ができ、残色が生じない程度に増感色素を溶出させることができる水洗(または安定化)における温度および時間は5〜50℃、6秒〜3分が好ましく、15〜40℃、8秒〜2分がより好ましい。現像、定着および水洗(または安定化)された感光材料は水洗水をしぼり切る、すなわちスクイズローラーを経て乾燥される。乾燥は約40℃〜100℃で行われ、乾燥時間は周囲の状況によって適宜変えられるが、通常は約4秒〜3分でよく、特に好ましくは40℃〜80℃で約5秒〜1分である。Dry to Dryで100秒以下の現像処理をするときには、迅速処理特有の現像ムラを防止するために特開昭63−151943号公報に記載されているようなゴム材質のローラーを現像タンク出口のローラーに適用することや、特開昭63−151944号公報に記載されているように現像タンク内の現像液攪拌のための吐出流速を10m/分以上にすることや、さらには、特開昭63−264758号公報に記載されているように、少なくとも現像処理中は待機中より強い攪拌をすることがより好ましい。さらに迅速処理のためには、とくに定着タンクのローラーの構成は、定着速度を速めるために、対向ローラーであることがより好ましい。対向ローラーで構成することによって、ローラーの本数を少なくでき、処理タンクを小さくできる。すなわち自現機をよりコンパクトにすることが可能となる。
【0107】
カラー現像処理の場合、特開平7−225447号公報の段落番号0128〜0130に記載がそのまま本願にも適用され、本願の明細書の一部として好ましく取り込まれる。
本発明の感光材料に用いられる各種添加剤、現像処理方法等に関しては、特に制限はなく、例えば下記箇所に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0108】
項 目 該 当 箇 所
1)ハロゲン化銀乳剤と 特開平2−97937号公報第20頁右下欄12行
その製法 目から同第21頁左下欄14行目、特開平2−12
236号公報第7頁右上欄19行目から同第8頁左
下欄12行目、および特開平5−11389号公報
に記載のセレン増感法。
2)分光増感色素 特開平2−55349号公報第7頁左上欄8行目か
(併用してよい) ら同第8頁右下欄8行目、同2−39042号公報
第7頁右下欄8行目から第13頁右下欄5行目。
特開平2−12236号公報第8頁左下欄13行目
から同右下欄4行目、同2−103536号公報第
16頁右下欄3行目から同第17頁左下欄20行目
、さらに特開平1−112235号、同2−124
560号、同3−7928号、同5−11389号
の各公報及び特願平3−411064号明細書に記
載の分光増感色素。
3)ヒドラジン造核剤 特開平2−12236号公報第2頁右上欄19行目
から同第7頁右上欄3行目の記載、同3−1741
43号公報第20頁右下欄1行目から同第27頁右
上欄20行目の一般式(II)および化合物例II−1
からII−54。
4)造核促進剤 特開平2−103536号公報第9頁右上欄13行
目から同第16頁左上欄10行目の一般式(II−m
)〜(II−p)および化合物例II−1からII−
22、特開平1−179939号公報に記載の化合
物。
【0109】
5)界面活性剤 特開平2−12236号公報第9頁右上欄7行目か
ら同右下欄7行目、および特開平2−18542号
公報第2頁左下欄13行目から同第4頁右下欄18
行目。
6)カブリ防止剤 特開平2−103536号公報第17頁右下欄19
行目から同第18頁右上欄4行目および同右下欄1
行目から5行目、さらに特開平1−237538号
公報に記載のチオスルフィン酸化合物。
7)ポリマーラテックス 特開平2−103536号公報第18頁左下欄12
行目から同20行目。
8)酸基を有する化合物 特開平2−103536号公報第18頁右下欄6行
目から同第19頁左上欄1行目。
9)マット剤、滑り剤 特開平2−103536号公報第19頁左上欄15
可塑剤 行目から同第19頁右上欄15行目。
10)ポリヒドロキシベン 特開平2−55349号公報第11頁左上欄9行目
ゼン類 から同右下欄17行目。
11)酸基を有する化合物 特開平2−103536号公報第18頁右下欄6行
目から同第19頁左上欄1行目、および同2−
55349号公報第8頁右下欄13行目から同第
11頁左上欄8行目。
12)染料 特開平2−103536号公報第17頁右下欄1行
(併用してよい) 目から同18行目、同2−39042号公報第4頁
右上欄1行目から第6頁右上欄5行目。
13)バインダー 特開平2−18542号公報第3頁右下欄1行目か
ら20行目。
【0110】
14)黒ポツ防止剤 米国特許第4956257号および特開平1−
118832号公報に記載の化合物。
15)レドックス化合物 特開平2−301743号公報の一般式(I)で表
される化合物(特に化合物例1〜50)、同3
−174143号公報第3頁〜第20頁に記載
の一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)、化
合物例1〜75、さらに特開平5−25723号、
特開平4−278939号公報に記載の化合物。
16)モノメチン化合物 特開平2−287532号公報の一般式(II)の化
(併用してよい) 合物(特に化合物例II−1〜II−26)。
17)ジヒドロキシベンゼ 特開平3−39948号公報第11頁左上欄から第
ン類 12頁左下欄の記載、およびEP452772A号
公報に記載の化合物。
18)現像液および現像方法 特開平2−103536号公報第19頁右上欄16
行目から同第21頁左上欄8行目。
特開平2−55349号公報第13頁右下欄1行目
から同第16頁左上欄10行目。
【実施例】
【0111】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0112】
<1.ハロゲン化銀乳剤の調製>
64℃に保たれた表1の1液に2液と3液を攪拌しながらpAgが8.3になるようにコントロールしながら20分かけて添加し、続いて表1の4液、5液をpAgが7.6になるようにコントロールしながら30分間添加し、最終的に平均粒子サイズ0.3μm、平均沃度含量1モル%の単分散立方体沃臭化銀乳剤を得た(変動係数8%)。その後、化合物(a)を使用しフロキュレーション法によって水洗し、ゼラチンを加えた後、pHを6.8、pAgを9.5に調整した後、銀1モル当りチオ硫酸ナトリウム2.8mg、塩化金酸4.6mg、チオシアン酸カリウム36mgおよびベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10.2mgを添加し、65℃で最適感度となるように化学増感を行った。さらに安定剤として2−メチル−4−ヒドロキシ−1,3,3a,7−テトラザインデン500mg、防腐剤としてフェノキシエタノールを100mg添加し、さらに分光増感色素として、化合物(b)および(c)をそれぞれ120mgと80mgをゼラチン分散物として添加し、沃臭化銀立方体乳剤を得た。
【0113】
【化32】

【0114】
【表1】

【0115】
<2.染料の固体微粒子分散物の調製方法>
本実施例における調製法は、特開昭63−197943号公報の方法に準じた。すなわち、水434mlおよびTritonX−200R界面活性剤(TX−200R、Rohn & Haas社から販売)の6.7%溶液53gを1.5リットルのネジ蓋ビンに入れた。これに下記化合物(d)、(e)または(f)の染料20gと酸化ジルコニウム(ZrO2)のビーズ(2mm径)を800ml加え、このビンの蓋をしっかりしめてミル内に置き、内容物を4日間粉砕した。内容物を12.5%のゼラチン水溶液160gに添加し、ロールミルに10分間置いて泡を減少させた。得られた混合物を濾過し、ZrO2 ビーズを除去した。このままだと平均粒子サイズが0.3μmであるがまだ粗粒子を含んでいるので、この後遠心分離法によって分級し最大粒子サイズが1μm以下になる様にし、それぞれF−(a)、F−(b)、F−(c)を調製した。
【0116】
【化33】

【0117】
<3.塗布試料の作成>
両面に下引層を施した厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート支持体の片面に支持体から近い順に下記処方の導電層および保護層を順次塗布した。
(1)導電層
ジュリマーET410(日本純薬K.K.製) 38mg/m2
(ポリアクリル酸エステル)
SnO2 /Sb(9/1質量比、平均粒子サイズ0.25μm)
216mg/m2
化合物(g) 5mg/m2
化合物(h) 5mg/m2
【0118】
(2)保護層
ケミパールS120(三井石油化学K.K.製) 33mg/m2
(ポリオレフィン水性分散物)
スノーテックスC(日産化学K.K.製) 17mg/m2
化合物(g) 5mg/m2
化合物(i) 5mg/m2
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム 2mg/m2
【化34】

【0119】
さらに支持体の反対側の面に下記処方のアンチハレーション層、乳剤層、保護層を同時塗布した。
(3)アンチハレーション層(pH=4.3)
化合物(h) 5mg/m2
ゼラチン 1.5g/m2
固体分散染料F−(a)、F−(b)またはF−(c) 表2の量
染料(j)の固体分散物 20mg/m2
水溶性染料(k) 表2の量
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 10mg/m2
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム 25mg/m2
リン酸 15mg/m2
硬膜剤(l) 70mg/m2
【0120】
【化35】

【0121】
(4)乳剤層
化合物(h) 5mg/m2
前記乳剤 Ag量1.5g/m2に相当する量
ゼラチン 1.1g/m2
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 0.4mg/m2
3−(5−メルカプトテトラゾール)−ベンゼンスルホン酸ナトリウム
1.5mg/m2
4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン
3.5mg/m2
リン酸 15mg/m2
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム 35mg/m2
ポリエチルアクリレートラテックス(平均粒子サイズ0.05μm)
25mg/m2
2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン 140mg/m2
【0122】
(5)保護層
ゼラチン 0.5g/m2
化合物(m)(ゼラチン分散物) 40g/m2
硫酸バリウムストロンチウムマット剤 30mg/m2
(平均粒子サイズ1μm)
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 20mg/m2
L−アスコルビン酸 2mg/m2
1,5−ジヒドロキシ−2−ベンズアルドキシム 6mg/m2
酢酸ナトリウム 80 mg/m2
コロイダルシリカ(日産化学製スノーテックスC) 88mg/m2
化合物(n) 1.5mg/m2
化合物(o) 18mg/m2
フェノキシエタノール 2mg/m2
【0123】
【化36】

【0124】
<4.試料の評価>
得られた試料を、660nmに発光ピークを有する赤色LED(発光面積、56×55±5μm)を84.6μm間隔に1列に並べた光源を使用し、レンズを介して1/24に縮小して露光した。現像は、市販の富士写真フイルム(株)製の自現機AP−5で処理(現像液として富士写真フイルム(株)製のMD305を使用し、30℃、18秒で処理)し、得られた文字画像を顕微鏡で拡大して文字の鮮明さを評価した。評価の結果は5段階評価し、以下の5段階のレベルで評価した。
ランク5:文字の輪郭が非常に鮮明である。
ランク4:文字の輪郭が鮮明である。
ランク3:文字の輪郭が標準であり、何ら改良されていない。
ランク2:文字の輪郭がややぼやけている。
ランク1:文字の輪郭が非常にぼやけている。
感度は、カブリ濃度+0.1の濃度を与える露光量の逆数で表し、試料1の感度を100とし、これに対する相対感度で評価した。
一方、フィルムの吸光度は、生フィルムの670nmでの吸光度(表2において吸収Bとして示す)と、25cm2のフィルムを25℃の純水200mlに5分間静止した状態で浸漬し、その後自然乾燥させたフィルムの670nmでの吸光度(表2において吸収Aとして示す)を測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0125】
【表2】

【0126】
表2から明らかなように、本発明の試料(No.3、7および11)は、いずれも感度と画質に優れていることがわかる。また、本発明の試料(No.3、7および11)は、いずれも保存後の経時においても感度変動と画質劣化が少なく、しかも残色が少なかった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、赤色光源等に対して高感度で画質に優れている。このため本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、HeNeレーザー 、赤色半導体レーザー、LED等の光源を用いた露光に適しており、スキャナー方式等による画像形成方法に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の同一面上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層、少なくとも1層のアンチハレーション層および少なくとも1層の保護層を有するハロゲン化銀写真感光材料であって、該感光性ハロゲン化銀乳剤の少なくとも1種が下記一般式(I)で表される色素により分光増感され、該アンチハレーション層に少なくとも1種の固体分散染料を含有し、支持体上に形成された層の少なくとも1層に少なくとも1種の水溶性染料を含有し、感光材料の670nmにおける吸光度が1.0〜2.0であって、かつ水に浸漬後の670nmにおける吸光度が0.2以上であるハロゲン化銀写真感光材料。
【化1】


[一般式(I)中、Y1およびY2は各々独立にベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトチアゾール環、ナフトセレナゾール環またはキノリン環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、これらの複素環は低級アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。R31およびR32は各々独立に低級アルキル基、またはスルホ基もしくはカルボキシル基を有するアルキル基を表す。R33はメチル基、エチル基またはプロピル基を表す。X1―はアニオンを表す。n1およびn2は各々独立に0または1を表す。m1は1または2を表し、分子内塩の時はm1=0である。]
【請求項2】
前記固体分散染料の少なくとも1種が下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【化2】

[一般式(II)中、各R1は、各々独立して、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換もしくは未置換のアミド基、または置換もしくは未置換のスルホンアミド基を表し、nは1〜4の整数を表し、R2は、水素原子、置換または非置換の、アルキル基もしくはアミド基を表し、R3 およびR4は各々独立に水素原子または置換もしくは未置換のアルキル基を表し、Mは水素原子またはカチオンを表す。]
【請求項3】
前記ハロゲン化銀乳剤が、イリジウム、鉄、レニウム、ルテニウムまたはオスミウム化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項4】
前記ハロゲン化銀写真感光材料が赤色LED光源で露光されるハロゲン化銀写真感光材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項5】
前記アンチハレーション層のpHが4.0〜4.8であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。

【公開番号】特開2006−119428(P2006−119428A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308079(P2004−308079)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】