説明

ハロゲン化銀写真感光材料

【課題】水溶性イリジウム化合物による高照度不軌の低減効果を維持しつつ走査露光時に感度の露光温度依存性の少ないハロゲン化銀写真感光材料を提供する。
【解決手段】支持体上に少なくとも一層のハロゲン化銀乳剤層を有し、該ハロゲン化銀乳剤層が含有するハロゲン化銀粒子がハロゲン化銀1モル当り1×10-7〜1×10-5モルの水溶性イリジウム化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層が導電性金属酸化物を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化銀写真感光材料に関するものであり、更に詳しくは、レーザー光等の高照度、短時間露光の光源で使用されるハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターによるデジタル画像処理技術の進歩にともなって、ヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、半導体レーザー、発光ダイオード等の光源を持つ走査型露光装置に用いられるハロゲン化銀写真感光材料が広く普及しており、カラー印画紙、製版フィルムや印刷版などの工業用フィルム、医療用フィルムなど様々な用途に用いられている。
【0003】
走査露光タイプのハロゲン化銀写真感光材料は極めて高照度で短時間の走査露光により画像が形成されることから、高照度相反則不軌を低減させるために、水溶性イリジウム化合物をドープしたハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀乳剤を用いる方法が一般に行われている。高照度相反則不軌は高照度露光時にハロゲン化銀粒子内に多量の光電子が発生し、潜像分散が起こることにより発生する。すなわち高照度露光により多量に発生した光電子を一時的に伝導帯からイリジウムトラップに待避させ、ある時間滞在した後に再び伝導帯に放出することにより潜像分散を改良することが出来る。しかし、イリジウムトラップに捕獲された光電子の再放出速度が温度に依存する結果、感度が露光時の温度に依存するという問題があった。感度の露光温度依存性を低減させる方法として、特開平5−134342号公報(特許文献1)にはテルル化合物で化学増感する方法が、特開2003−295373号公報(特許文献2)には、配位子の一部にハロゲン、シアン以外の配位子を有するイリジウム化合物をドーパントとして用いる方法が記載されている。また、本発明者も、特開平11−295841号公報(特許文献3)で水を配位子として有するイリジウム化合物のハロゲノアコ錯体を用いて諧調再現性を向上させる方法を提案している。しかし、いずれの方法もハロゲン化銀写真感光材料において感度の露光温度依存性を低減するには十分ではなかった。
【0004】
一方、特開平5−19410号公報、特開2004−198900号公報(特許文献4、5)などにはフィルムの帯電防止などの目的で酸化スズ等の導電性金属酸化物をハロゲン化銀写真感光材料構成層中のいずれかの層に用いる方法が提案されているが、帯電防止のために用いられるこれらの導電性金属酸化物は通常フィルムの裏面側に設けられている。しかし上記導電性金属酸化物をハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤層に用いることで高照度走査露光時の感度の露光温度依存性を低減させる効果については知られていない。
【特許文献1】特開平5−134342号公報
【特許文献2】特開2003−295373号公報
【特許文献3】特開平11−295841号公報
【特許文献4】特開平5−19410号公報
【特許文献5】特開2004−198900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は水溶性イリジウム化合物による高照度不軌の低減効果を維持しつつ走査露光時に感度の露光温度依存性の少ないハロゲン化銀写真感光材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
支持体上に少なくとも一層のハロゲン化銀乳剤層を有し、該ハロゲン化銀乳剤層が含有するハロゲン化銀粒子がハロゲン化銀1モル当り1×10-7〜1×10-5モルの水溶性イリジウム化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層が導電性金属酸化物を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料により達成された。
【発明の効果】
【0007】
水溶性イリジウム化合物による高照度不軌の低減効果を維持しつつ走査露光時に感度の露光温度依存性の少ないハロゲン化銀写真感光材料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は走査露光時に発生する高照度相反則不軌を低減する目的でハロゲン化銀粒子はハロゲン化銀1モル当り1×10-7〜1×10-5モルの水溶性イリジウム化合物を含有する。しかし、前述した様に、ハロゲン化銀乳剤中の水溶性イリジウム化合物は一時的な電子トラップとして潜像分散を低減させる効果を有する反面、イリジウムトラップに捕獲された光電子の再放出時間が露光温度に依存するために感度の露光温度依存性が生じるという問題があった。本発明者はハロゲン化銀乳剤中に水溶性イリジウム化合物を含有させることによって生じる上記問題を解決するべく鋭意検討を行った結果、ハロゲン化銀乳剤層に導電性金属酸化物を含有させることによって、水溶性イリジウム化合物による高照度不軌の低減効果を維持しつつ感度の露光温度依存性の少ないハロゲン化銀写真感光材料が得られることを見出した。
【0009】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、走査露光光源を用いる種々の用途に用いることが出来、例えば、印刷製版や医療用等の工業用フィルム、印画紙、銀錯塩拡散転写法等を用いる感光性印刷版等の用途が挙げられる。また、これら用途に応じて、種々の支持体を用いることが出来る。支持体としては、ガラス、酢酸セルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、紙、バライタ塗布紙、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなど)ラミネート紙、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、陽極酸化等の表面処理を行ったアルミニウム板等の金属支持体などが挙げられる。
【0010】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、その用途に応じて、支持体上に少なくとも一層のハロゲン化銀乳剤層以外にアンダー層、中間層、オーバーコート層、バッキング層等のその他の層を含有することが出来る。本発明のハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤層やその他の層には、通常、親水性バインダーが用いられる。用いられるバインダーは、通常ゼラチンであるが、ゼラチンはその一部をデンプン、アルブミン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、アラビアゴム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリルアミド、スチレン−無水マレイン酸共重合体などの親水性高分子結合剤の一種または二種以上で置換することも出来る。更にビニル共重合体水分散物(ラテックス)を用いることも出来る。
【0011】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤のハロゲン組成は塩化銀、塩臭化銀、塩ヨウ化銀、塩ヨウ臭化銀から選択されるが、高塩化銀濃度のハロゲン化銀乳剤ほど、高照度不軌及び走査露光時の露光温度依存性に対する本発明の改良効果が顕著であり、更には塩ヨウ化銀または塩ヨウ臭化銀において本発明の顕著な効果を呈するものであり、特に臭化銀が30モル%以下の塩ヨウ化銀または塩ヨウ臭化銀において特に顕著な効果を呈する。ハロゲン化銀は立方体、八面体型、平板状等の種々の結晶を用いることが出来、用途に応じて種々の粒径のものを用いることが出来る。
【0012】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料に用いられるハロゲン化銀粒子が含有する水溶性イリジウム化合物はハロゲン化銀乳剤の物理熟成時の任意の時点で添加することによってハロゲン化銀粒子中にドープすることが出来る。本発明に用いられる水溶性イリジウム化合物としては、種々のものが使用出来るが以下に具体例を示す。
【0013】
塩化イリジウム(III)n水和物(n:整数) IrCl3・nH2
塩化イリジウム(IV)n水和物(n:整数) IrCl4・nH2
ヘキサクロロイリジウム(III)酸アンモニウムn水和物
(NH43[IrCl6]・nH2
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリ K3IrCl6
ヘキサクロロイリジウム(III)酸ナトリウム12水和物
Na3[IrCl6]・12H2
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム (NH42[IrCl6
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム K2[IrCl6
ヘキサアンミンイリジウム(III)塩化物 [Ir(NH46]Cl3
ペンタアンミンクロロイリジウム(III)塩化物 [IrCl(NH35]Cl2
ジクロロテトラニトロイリジウム(III)酸カリウム K3[IrCl2(NO24
ヘキサシアノイリジウム(III)酸カリウム K3[Ir(CN)6
臭化イリジウム(III)(1水和物) IrBr3・H2
臭化イリジウム(IV)(1水和物) IrBr4・H2
ヘキサブロモイリジウム(III)酸カリウム K3[IrBr6
ヘキサブロモイリジウム(IV)酸カリウム K2[IrBr6
【0014】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀粒子が含有する水溶性イリジウム化合物の量はハロゲン化銀1モル当り1×10-7〜1×10-5モルの範囲である。1×10-7モル以下では高照度露光時に伝導体に多量に発生した光電子を一時的に退避させるには十分なイリジウムトラップが形成されず、また1×10-5モル以上ではイリジウムトラップから伝導体へ再放出された電子がイリジウムトラップに再トラップされてしまうためにいずれの場合にも高照度不軌の低減効果が不十分となる。
【0015】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤粒子は写真特性の高調化のために水溶性イリジウム化合物とともに水溶性ロジウムまたは/及びルテニウム化合物を含有することが好ましい。水溶性ロジウムまたは/及びルテニウム化合物はハロゲン化銀中でイリジウムトラップよりも深い電子トラップを形成し、光電子を半永久的に捕捉することにより足部の感度を低下させて高調化することが出来る。本発明に用いられる水溶性ロジウムまたは/及びルテニウム化合物の例を以下に示す。
【0016】
塩化ロジウム(III)n水和物(n:整数) RhCl3・nH2
ヘキサクロロロジウム(III)酸カリウム1水和物 K3[RhCl6]・H2
ヘキサクロロロジウム(III)酸ナトリウム12水和物 Na3[RhCl6]・12H2
ヘキサクロロロジウム(III)酸アンモニウム1水和物 (NH43[RhCl6]・H2
アクアペンタクロロロジウム(III)酸カリウム K2[RhCl5(H2O)]
ペンタアンミンクロロロジウム(III)塩化物 [RhCl(NH36]Cl2
ヘキサアンミンロジウム(III)塩化物 [Rh(NH36]Cl3
ヘキサシアノロジウム(III)酸カリウム K3[Rh(CN)6
ヘキサチオシアナトロジウム(III)酸カリウム K3[Rh(NCS)6
塩化ルテニウム(III)n水和物(n:整数) RuCl3・nH2
ヘキサクロロルテニウム(IV)酸カリウム K2[RuCl6
ヘキサクロロルテニウム(IV)酸ナトリウム Na2[RuCl6
ヘキサクロロルテニウム(III)酸アンモニウム (NH43[RuCl6
ヘキサアンミンルテニウム(III)塩化物 [Ru(NH36]Cl3
ペンタクロロニトロシルルテニウム(III)酸カリウム K2[RuCl5(NO)]
ペンタクロロルテニウム(III)酸アンモニウム (NH42[RuCl5
ヘキサシアノルテニウム(II)酸カリウム3水和物 K4[Ru(CN)6]・3H2
ヘキサブロモルテニウム(III)酸カリウム K3[RuBr6
【0017】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料に用いられるハロゲン化銀粒子の製造はこれまで知られている様々な方法を用いることが出来る。すなわち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン化物を反応させる形式としてはダブルジェット法やシングルジェット法と組み合わせたダブルジェット法などを用いることが出来る。ダブルジェット法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ方法、すなわちコントロールド・ダブルジェット法を用いることも出来る。また、英国特許第1,535,016号明細書、特公昭48−36890号公報、特公昭52−16364号公報等に記載されているように、硝酸銀やハロゲン化アルカリ水溶液の添加速度を粒子形成速度に応じて変化させる方法や、米国特許第4,242,445号明細書、特開昭55−158124号公報等に記載されているように水溶液濃度を変化させる方法を用いて臨界過飽和度を超えない範囲において早く成長させることが好ましい。これらの方法は、再核発生を起こさず、ハロゲン化銀粒子が均一に成長するために好ましく用いられる。
【0018】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤層に含有される導電性金属酸化物は体積抵抗率が105Ω・cm以下、好ましくは103Ω・cm以下の結晶性の金属酸化物である。導電性金属酸化物の導電性は、金属酸化物結晶の酸素欠陥やドナーを導入することにより得られるが、本発明の導電性金属酸化物はエレクトロンドナーとなるような異種原子、例えば、アルミニウム、ガリウムを少量ドープした金属酸化物が感光性ハロゲン化銀乳剤にカブリを生じさせない点から好ましい。この様な金属酸化物の例として、アルミニウム、インジウム、ガリウム、テルル、ホウ素などをドープした酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛、フッ素をドープした酸化チタンやチタン酸スズ、フッ素、アンチモン、インジウム及びリンなどをドープした酸化スズなどの金属酸化物が挙げられる。特に好ましい金属酸化物はアンチモンドープ酸化スズ、インジウムドープ酸化スズ、アンチモン酸亜鉛である。本発明の体積抵抗率は特開2006−172916号公報等に記載されている方法により測定することが出来る。すなわち、導電性金属酸化物粉末を100Kg/cm2の圧力で加圧成型した状態で試料の上下間の抵抗値を抵抗率計、例えば三菱化学株式会社製抵抗率計ロレスタGPT610を用いて測定し、同時に試験片の厚みを測定し、測定された抵抗値及び試料片の厚さ及び断面積から体積抵抗率を求めることが出来る。また、導電性金属酸化物分散溶液の場合には、脱溶媒後、十分乾燥して導電性金属酸化物粉末とした後、加圧成型し、上記と同様の方法により体積抵抗率を求めることが出来る。
【0019】
本発明の導電性金属酸化物の好ましい含有量は0.001〜1g/m2の範囲であり、より好ましくは、0.01〜0.1g/m2の範囲である。
【0020】
本発明の導電性金属酸化物の好ましい一次粒子サイズは1〜50nmの範囲である。また、本発明の導電性金属酸化物は、ハロゲン化銀乳剤中に均一に分散するために、例えば特開2005−187226号公報、特開2005−187580号公報、特開2005−231095号公報等に記載の分散剤を用いて分散液の状態でハロゲン化銀乳剤に添加することが好ましい。導電性金属酸化物の分散液中の二次粒径は20〜200nmの範囲が好ましく、二次粒径はレーザー散乱式粒度分布測定装置、例えば大塚電子株式会社製PAR−IIIを用いて測定される。また、導電性金属酸化物の分散液として種々のものが市販されている。例えば石原産業株式会社からアンチモンドープ酸化スズ水分散液SN−100Dが、三菱マテリアル株式会社から酸化アンチモンドープ酸化スズ水分散液TDL−1、TDL−S、リンドープ酸化スズ水分散液EPSPDL−2が、住友金属株式会社からインジウムドープ酸化スズ分散液X100、X500、SC100、DX−400が、日産化学工業株式会社からアンチモン酸亜鉛分散液セルナックスCX−Z330H、同CX−Z330H−F2などが市販されており、これらの導電性金属酸化物分散液を本発明の導電性金属酸化物として用いることが出来る。
【0021】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤は化学増感剤、カブリ防止剤、安定剤、増感色素、現像促進剤等、種々の添加物を用いることが出来る。以下、本発明のハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子形成以後の工程について概説する。
【0022】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤は硫黄増感、セレン増感、テルル増感、貴金属増感、還元増感等の化学増感を単独あるいは組み合わせて用いることも出来る。また、光源の波長に応じて、当業界で知られる種々の分光増感色素を用いることが出来る。それらの色素にはシアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロホーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素及びヘミオキサノール色素等がある。
【0023】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料が有するハロゲン化銀乳剤層は、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のカブリを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、安定剤、例えば1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールのような複素環化合物を含有させることが出来る。本発明の写真感光材料には、写真乳剤層その他の親水性コロイド層に無機または有機の硬膜剤を含有してもよい。例えばクロム塩(クロムミョウバンなど)、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グリオキサールなど)、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体(2,3−ジヒドロキシジオキサンなど)、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンなど)などを単独または組み合せて用いることが出来る。
【0024】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、イラジエーション、ハレーション等による画質、その他の性能を高める目的で、ハロゲン化銀乳剤層や、オーバーコート層、バッキング層等のその他の親水性コロイド層に、当業者で知られるフィルター染料を含有させることが出来る。
【0025】
更に、本発明のハロゲン化銀乳剤層や他の親水性コロイド層には、塗布助剤、帯電防止、スベリ性改良、乳化分散、接着防止及び写真特性改良(例えば、現像促進、硬調化、増感)など種々の目的で界面活性剤を含んでよい。例えばサポニン(ステロイド系)、アルキレンオキサイド誘導体(ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類など)、グリシドール誘導体(アルケニルコハク酸ポリグリセリドなど)、多価アルコールの脂肪酸エステル類、糖のアルキルエステル類などの非イオン性界面活性剤;アルキルカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル類、アルキリン酸エステル類などの様な、カルボキシル基、スルホ基、ホスホ基、硫酸エステル基、リン酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤;アミノ酸類、アミノアルキルスルホン酸類、アミノアルキル硫酸またはリン酸エステル類などの両性界面活性剤;脂肪族あるいは芳香族第4級アンモニウム塩類、ピリジニウム、イミダゾリウムなどの複素環第4級アンモニウム塩類などのカチオン界面活性剤を用いることが出来る。
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、無論この記述により本発明が制限されるものではない。
【実施例1】
【0027】
コントロールダブルジェット法により、ハロゲン化銀1モル当り7.2×10-7モルのヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムと3.6×10-7モルのアクアペンタクロロロジウム(III)酸カリウムを含有する平均粒径0.35μmの六面体塩ヨウ化銀(ヨウ素は0.4モル%)を作製し、脱塩処理した後、化学増感(金−硫黄増感)を施してハロゲン化銀乳剤を得た。ハロゲン化銀乳剤には更に銀1g当り石原産業株式会社製アンチモンドープ酸化スズ水分散液SN−100D(固形分30質量%)を0.025g、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを0.02g、下記構造式で示す増感色素を0.03g、硬膜剤及び界面活性剤を添加した後、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)上に銀量で3.2g/m2(ゼラチンを0.8g/m2含む)となるように塗布、乾燥し本発明1のハロゲン化銀写真感光材料を得た。尚、石原産業株式会社製アンチモンドープ酸化スズ水分散液SN−100Dの二次粒径を大塚電子株式会社製レーザー散乱式粒度分布測定装置PAR−IIIを用いて測定したところ95nmであった。また上記分散液を脱水、乾燥して粉末とした後、100Kg/cm2の圧力で加圧成型した状態で三菱化学株式会社製抵抗率計ロレスタGPT610を用いて体積抵抗率を測定したところ6.8×10Ω・cmであった。
【0028】
【化1】

【0029】
石原産業株式会社製アンチモンドープ酸化スズ水分散液SN−100Dを銀1g当り0.024g添加する代わりに、住友金属株式会社製インジウムドープ酸化スズ水分散液X500(固形分25質量%)を夫々0.005g、0.03g、0.15g添加する以外は本発明1のハロゲン化銀写真感光材料と同様にしてハロゲン化銀写真感光材料を作製し、本発明2、3及び4のハロゲン化銀写真感光材料を得た。尚、住友金属株式会社製インジウムドープ酸化スズ水分散液X500の二次粒径を大塚電子株式会社製レーザー散乱式粒度分布測定装置PAR−IIIを用いて測定したところ、105nmであった。また前記分散液をそれぞれ脱水、乾燥して粉末とした後、100Kg/cm2の圧力で加圧成型した状態で三菱化学株式会社製抵抗率計ロレスタGPT610を用いて体積抵抗率を測定したところ5.1×10Ω・cmであった。
【0030】
石原産業株式会社製アンチモンドープ酸化スズ水分散液SN−100Dを銀1g当り0.025g添加する代わりに、日産化学株式会社製アンチモン酸亜鉛水分散液セルナックCX−Z330H(固形分30質量%)を0.025g添加する以外はハロゲン化銀写真感光材料1と同様にしてハロゲン化銀写真感光材料を作製し、本発明のハロゲン化銀写真感光材料5とした。尚、日産化学株式会社製アンチモン酸亜鉛水分散液セルナックCX−Z330Hの二次粒径を大塚電子株式会社製レーザー散乱式粒度分布測定装置PAR−IIIを用いて測定したところ90nmであった。また上記分散液を脱水、乾燥して粉末とした後、100Kg/cm2の圧力で加圧成型した状態で三菱化学株式会社製抵抗率計ロレスタGPT610を用いて体積抵抗率を測定したところ2.5×102Ω・cmであった。
【0031】
導電性金属酸化物を用いない以外は本発明1のハロゲン化銀写真感光材料と同様にしてハロゲン化銀写真感光材料を作製し、比較1のハロゲン化銀写真感光材料を得た。また、石原産業株式会社製アンチモンドープ酸化スズ水分散液SN−100Dの代わりに、導電性ポリマーとしてエイチ・シー・ストラック社製ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散液PH500(固形分1質量%)を0.75g/m2含有する以外は本発明1のハロゲン化銀写真感光材料と同様にしてハロゲン化銀写真感光材料を作製し、比較2のハロゲン化銀写真感光材料を得た。エイチ・シー・ストラック社製ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散液PH500を脱水、乾燥して粉末とした後、100Kg/cm2の圧力で加圧成型した状態で三菱化学株式会社製抵抗率計ロレスタGPT610を用いて体積抵抗率を測定したところ8.1×10Ω・cmであった。
【0032】
ハロゲン化銀乳剤層のハロゲン化銀乳剤粒子がハロゲン化銀1モル当り7.2×10-7モルのヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムを含有する代わりに、5.0×10-8モルのヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムを含有する以外は本発明3のハロゲン化銀写真感光材料と同様にしてハロゲン化銀写真感光材料を作製し、比較3のハロゲン化銀写真感光材料を得た。また、ハロゲン化銀乳剤層のハロゲン化銀乳剤粒子がハロゲン化銀1モル当り7.2×10-7モルのヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムを含有する代わりに、2.0×10-5モルのヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムを含有する以外は本発明3のハロゲン化銀写真感光材料と同様にしてハロゲン化銀写真感光材料を作製し、比較4のハロゲン化銀写真感光材料を得た。
【0033】
上記の本発明1〜5及び比較1〜4のハロゲン化銀写真感光材料を三菱製紙株式会社製の赤色LDイメージセッターFREDIA(露光波長:660nm、露光方式:内面ドラム2540dpi)で0℃及び30℃で露光量を変化しながら画像露光を行った後、自動現像機により下記組成の現像液で30℃20秒間現像処理後、下記組成の定着液で20秒間定着処理、水洗、乾燥後、透過濃度を測定して感度を求めた。感度は2.0の透過濃度を得るのに要する露光量の逆数として求め、比較例1のハロゲン化銀写真感光材料を30℃で露光を行ったときの感度を100としたときの相対感度で表した。結果を表1に示す。
【0034】
<現像液>
ハイドロキノン 24g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 0.75g
無水亜硫酸ナトリウム 60g
メタほう酸ナトリウム 33g
水酸化ナトリウム 19g
臭化カリウム 1.0g
6−ニトロベンツイミダゾール 0.5g
水を加えて 1.0L
【0035】
<定着液>
チオ硫酸アンモニウム(58.2質量%溶液) 120g
無水亜硫酸ナトリウム 23g
酢酸 11g
酒石酸 5.6g
硫酸アルミニウム 7.5g
水を加えて 1.0L
【0036】
【表1】

【0037】
表1の結果から、ハロゲン化銀乳剤層が導電性金属酸化物を含有しない比較1のハロゲン化銀写真感光材料は走査露光時の感度の露光温度依存性が大きい。また、ハロゲン化銀乳剤層が、高い導電性を有していても金属酸化物ではない導電性ポリマーを含有する比較2のハロゲン化銀写真感光材料も走査露光時の感度の露光温度依存性が大きい。また、ハロゲン化銀乳剤層が含有するハロゲン化銀粒子のハロゲン化銀1モル当りの水溶性イリジウム化合物の含有量が1×10-7に満たない比較3のハロゲン化銀写真感光材料は、感度の露光温度依存性は少ないものの、高照度不軌のために十分な感度が得られない。また、ハロゲン化銀乳剤層が含有するハロゲン化銀粒子のハロゲン化銀1モル当りの水溶性イリジウム化合物の含有量が1×10-5モルを超える比較4のハロゲン化銀写真感光材料は導電性金属酸化物を用いても露光温度依存性が大きく、感度も低い。これに対してハロゲン化銀乳剤層が含有するハロゲン化銀粒子がハロゲン化銀1モル当り1×10-7〜1×10-5モルの水溶性イリジウム化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料であって、ハロゲン化銀乳剤層が導電性金属酸化物を含有する本発明1〜5のハロゲン化銀写真感光材料は走査露光時の感度の露光温度依存性が少なく、高照度不軌特性もよいことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも一層のハロゲン化銀乳剤層を有し、該ハロゲン化銀乳剤層が含有するハロゲン化銀粒子がハロゲン化銀1モル当り1×10-7〜1×10-5モルの水溶性イリジウム化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層が導電性金属酸化物を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。

【公開番号】特開2009−237304(P2009−237304A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83755(P2008−83755)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】