説明

ハロゲン化銀写真観光材料

【課題】処理変動に対する耐性に優れかつ鮮鋭性にも優れた高画質な映画用カラー感光材料を提供すること。
【解決手段】支持体上に、それぞれ、少なくとも2層の互いに感度の異なる青感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、および赤感性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、支持体から順に赤感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤、青感性ハロゲン化銀乳剤層が塗設され、かつ該赤感性ハロゲン化銀乳剤層において、下記式が成り立つことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式 Ru/Ro>1(式1)
ここで、Roは赤感性ハロゲン化銀層において最も感度の高い感光層の塗布銀量を表し、Ruは最も感度が低い感光層の塗布銀量を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理変動に対する耐性に優れかつ鮮鋭性にも優れた映画用ハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
映画用カラーネガフィルムに用いられる処理液は、ECN2処理等の処理液が推奨されているが、処理条件や処理液内容が各ラボ独自に調整されており、処理の条件が一定していないのが実情である。特に、現像主薬の量が推奨処方より少ない場合が多く、感材の最下層に位置する赤感性層が最も影響を受けやすく、処理変動に対する耐性の強化が望まれている。
【0003】
通常最下層にある赤感性乳剤層の鮮鋭度は青感性乳剤層および緑感性乳剤層に比べて劣っている。また、最下層は処理の影響も受けやすく、上記のように現像主薬の量が少ない場合等、軟調化しやすく鮮鋭度の低い画像となる。更に、赤、青、緑各色の鮮鋭度のバランスも崩れてしまう。例えば、赤色の鮮鋭度が他色の鮮鋭度に対して大きく劣ると黒色の細線を撮影した場合、細線の両側に赤色の滲みが生じてしまい、細線の鮮鋭性が失われるだけでなく赤みを帯びるなど、違和感ある画像となってしまう。
【0004】
処理変動に対する耐性を強化する技術については種々検討されているが鮮鋭度の改良は達成できていない。例えば、文献1では、処理変動に対する耐性を上げかつ青感性層の感度を向上させることはでき、イラジエーション防止染料と組み合わせることにより青色の鮮鋭度を向上させることはできる。しかしながら、青色の鮮鋭度を向上させることは、赤色の鮮鋭度を相対的に悪化させてしまい、各色の鮮鋭度のバランスが更に崩れ、総合的に見ると画質が大きく劣ってしまう問題があった。
【特許文献1】特開2003−270751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は処理変動に対する耐性に優れかつ鮮鋭性にも優れた高画質な映画用カラー感光材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、
(1)支持体上に、それぞれ少なくとも2層の互いに感度の異なる青感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、および赤感性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、支持体から順に赤感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤、青感性ハロゲン化銀乳剤層が塗設され、かつ該赤感性ハロゲン化銀乳剤層において、下記式が成り立つことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式 Ru/Ro>1(式1)
ここで、Roは赤感性ハロゲン化銀層において最も感度の高い感光層の塗布銀量を表し、Ruは最も感度が低い感光層の塗布銀量を表す。
【0007】
(2)前記式がRu/Ro>2(式2)であることを特徴とする(1)記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0008】
(3)前記式がRu/Ro>3(式3)であることを特徴とする(1)記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0009】
(4)前記式がRu/Ro>4(式4)であることを特徴とする(1)記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0010】
(5)使用用途が映画用カラーネガフイルムであることを特徴とする(1)から(4)いずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、処理変動に対する耐性に優れかつ精鋭性にも優れた高画質な映画用カラー感光材料を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のハロゲン化銀感光材料は、赤感性ハロゲン化銀乳剤層において、最も感度の高い乳剤層の塗布銀量をRo、最も感度の低い乳剤層の塗布銀量をRuで表したときに、Ru/Ro>1であり、好ましくはRu/Ro>2、より好ましくはRu/Ro>3、最も好ましいのはRu/Ro>4である。
【0013】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、支持体上に、それぞれ少なくとも2層の互いに感度の異なる赤感性ハロゲン化銀乳剤層及び緑感性ハロゲン化銀乳剤層、並びにそれぞれ少なくとも1層の青感性ハロゲン化銀乳剤層及び非感光性層を有する。
【0014】
多層ハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、一般に単位感光性層の配列が、支持体側から順に赤感色性層、緑感色性層、青感色性の順に設置される。しかし、目的に応じて上記設置順が逆であっても、また同一感色性層中に異なる感光性層が挟まれたような設置順をもとり得る。上記のハロゲン化銀感光性層の間および最上層、最下層には非感光性層を設けてもよい。これらには、後述のカプラー、DIR化合物、混色防止剤等が含まれていてもよい。各単位感光性層を構成する複数のハロゲン化銀乳剤層は、DE 1,121,470あるいはGB 923,045に記載されているように高感度乳剤層、低感度乳剤層の2層を、支持体に向かって順次感光度が低くなる様に配列するのが好ましい。また、特開昭57−112751号、同62−200350号、同62−206541号、同62−206543号に記載されているように支持体より離れた側に低感度乳剤層、支持体に近い側に高感度乳剤層を設置してもよい。
【0015】
具体例として支持体から最も遠い側から、低感度青感光性層(BL)/高感度青感光性層(BH)/高感度緑感光性層(GH)/低感度緑感光性層(GL)/高感度赤感光性層(RH)/低感度赤感光性層(RL)の順、またはBH/BL/GL/GH/RH/RLの順、またはBH/BL/GH/GL/RL/RHの順等に設置することができる。
【0016】
また特公昭55−34932公報に記載されているように、支持体から最も遠い側から
青感光性層/GH/RH/GL/RLの順に配列することもできる。また特開昭56−25738号、同62−63936号に記載されているように、支持体から最も遠い側から青感光性層/GL/RL/GH/RHの順に配列することもできる。
【0017】
また特公昭49−15495号に記載されているように上層を最も感光度の高いハロゲン化銀乳剤層、中層をそれよりも低い感光度のハロゲン化銀乳剤層、下層を中層よりも更に感光度の低いハロゲン化銀乳剤層を配置し、支持体に向かって感光度が順次低められた感光度の異なる3層から構成される配列が挙げられる。このような感光度の異なる3層から構成される場合でも、特開昭59−202464号に記載されているように、同一感色性層中において支持体より離れた側から中感度乳剤層/高感度乳剤層/低感度乳剤層の順に配置されてもよい。
【0018】
その他、高感度乳剤層/低感度乳剤層/中感度乳剤層、あるいは低感度乳剤層/中感度乳剤層/高感度乳剤層の順に配置されていてもよい。
また、4層以上の場合にも、上記の如く配列を変えてよい。
色再現性を改善するための手段として層間抑制効果を利用することが好ましい。
【0019】
赤感層に重層効果を与える層に用いられるハロゲン化銀粒子は、例えば、そのサイズ、形状について特に限定されないが、アスペクト比の高いいわゆる平板状粒子や粒子サイズのそろった単分散乳剤、ヨードの層状構造を有する沃臭化銀粒子が好ましく用いられる。また、露光ラチチュードを拡大するために、粒子サイズの異なる2種以上の乳剤を混合することが好ましい。
【0020】
赤感層に重層効果を与えるドナー層は、支持体上のどの位置に塗設してもよいが、青感層より支持体に近く赤感性層より支持体から遠い位置に塗設することが好ましい。またイエローフィルター層より支持体に近い側にあるのが更に好ましい。
【0021】
赤感層に重層効果を与えるドナー層は、緑感性層よりも支持体に近く、赤感性層よりも支持体から遠い側にあることがさらに好ましく、緑感性層の支持体に近い側に隣接して位置することが最も好ましい。この場合「隣接する」とは中間層などを間に介さないことを言う。
【0022】
赤感層に重層効果を与える層は複数の層から成ってもよい。その場合、それらの位置はお互いに隣接していても離れていてもよい。
【0023】
本発明には、特開平11−305396号に記載の固体分散染料を用いることができる。
【0024】
本発明の感光材料で用いることのできる乳剤(以下、「本発明の乳剤」ともいう)は沃臭化銀、臭化銀または塩沃臭化銀平板状乳剤に関するものである。
【0025】
本発明のカラー写真感光材料は、好ましくは、各単位感光性層が実質的に感色性は同じであるが感光度の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層から構成され、各単位感光性層を構成するハロゲン化銀乳剤層の中で感度の高い乳剤層のうち少なくとも1層に含有されるハロ
ゲン化銀粒子の全投影面積の50%以上が平板状ハロゲン化銀粒子(以下、平板粒子ともいう。)である。本発明において該平板粒子の平均アスペクト比は、好ましくは8以上であり、より好ましくは12以上であり、最も好ましくは15以上である。
【0026】
平板粒子において、アスペクト比とはハロゲン化銀における厚みに対する直径の比を意味する。すなわち、個々のハロゲン化銀粒子の直径を厚みで除した値である。ここで、直径とは、ハロゲン化銀粒子を顕微鏡または電子顕微鏡で観察したとき、粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径を指すものとする。また、本明細書において平均アスペクト比とは乳剤中の全平板粒子のアスペクト比の平均値である。
【0027】
また、本発明の緑感性ハロゲン化銀乳剤層および赤感性ハロゲン化銀乳剤層の最高感度層に用いるハロゲン化銀写真乳剤は、全ハロゲン化銀粒子数の50%以上が粒子厚み0.15μm以下である。全ハロゲン化銀粒子数の60%以上が、粒子厚み0.15μm以下の粒子であることが好ましい。また、50%以上が、粒子厚み0.01μm以上0.15μm以下の粒子であることも好ましい。
【0028】
アスペクト比および粒子厚みの測定法の一例としては、レプリカ法による透過電子顕微鏡写真を撮影して個々の粒子の円相当直径と厚みを求める方法がある。この場合、厚みはレプリカの影(シャドー)の長さから算出する。
【0029】
本発明における平板粒子の形状は、通常、6角形である。6角形の形状とは平板粒子の主平面の形状が6角形であり、その隣接辺比率(最大辺長/最小辺長)が2以下の形状をなすことである。好ましくは、隣接辺比率が1.6以下、より好ましくは隣接辺比率が1.2以下である。下限は、1.0であることは言うまでもない。高アスペクト比粒子において特に、平板粒子中に三角平板粒子が増加する。三角平板粒子は、オストワルド熟成が進みすぎた場合に出現する。実質的に6角平板粒子を得るためには、この熟成を行う時間をできるだけ短くすることが好ましい。そのためには平板粒子の比率を核形成により高める工夫をしなければならない。斎藤による特開昭63−11928号に記載されているように、銀イオンと臭化物イオンをダブルジェット法により反応液中に添加する際、6角平板粒子の発生確率を高めるためには、銀イオン水溶液と臭化物イオン水溶液の一方もしくは、両方の溶液がゼラチンを含むことが好ましい。
【0030】
本発明の感光材料に含有される6角平板粒子は、核形成・オストワルド熟成・成長工程により形成される。これらいずれの工程も粒子サイズ分布の広がりを抑える上で重要であるが、先の工程で生じたサイズ分布の広がりを後の工程で狭めることは不可能であるため、最初の核形成過程においてサイズ分布に広がりが生じないように注意しなければならない。核形成過程において重要な点は、銀イオンと臭化物イオンをダブルジェット法により反応液中に添加し、沈殿を生じさせる核形成時間と、反応溶液の温度との関係である。斎藤による特開昭63−92942号には、単分散性をよくするために核形成時の反応溶液の温度は20〜45℃の領域が好ましいと記載されている。また、ゾラ等による特開平2−222940号には、核形成時の好ましい温度は、60℃以下であると述べられている。
【0031】
アスペクト比が大きく、かつ単分散な平板粒子を得る目的で、粒子形成中にゼラチンを追添加する場合がある。この時、使用するゼラチンとしては、特開平10−148897号及び特開平11−143002号に記載されている化学修飾ゼラチンを用いるのが好ましい。この化学修飾ゼラチンは、ゼラチン中のアミノ基を化学修飾した際に新たにカルボキシル基を少なくとも二個以上導入されたことを特徴とするゼラチンであるが、トリメリット化ゼラチンを用いるのが好ましい、またコハク化ゼラチンを用いるのも好ましい。本ゼラチンは、成長工程前に添加することが好ましいが、さらに好ましくは核形成直後に添
加するのがよい。添加量は、粒子形成中の全分散媒の質量に対して好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上がよい。
【0032】
平板粒子乳剤は沃臭化銀もしくは塩沃臭化銀より成ることが好ましい。塩化銀を含んでもよいが、好ましくは塩化銀含率は8モル%以下、より好ましくは3モル%以下、最も好ましくは0モル%である。沃化銀含有率については、平板粒子乳剤の粒子サイズの分布の変動係数が30%以下であることが好ましいので、沃化銀含有率は20モル%以下が好ましい。沃化銀含有率を低下させることにより平板粒子乳剤の円相当径の分布の変動係数を小さくすることが容易になる。特に平板粒子乳剤の粒子サイズの分布の変動係数は20%以下が好ましく、沃化銀含有率は10モル%以下が好ましい。
【0033】
平板粒子乳剤は沃化銀分布について粒子内で構造を有していることが好ましい。この場合、沃化銀分布の構造は2重構造、3重構造、4重構造さらにはそれ以上の構造があり得る。
【0034】
本発明において、平板粒子は転位線を有することが好ましい。平板粒子の転位線は、例えばJ.F.Hamilton,Phot.Sci.Eng.,11,57,(1967)やT.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.Japan,3,5,213,(1972)に記載の、低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察することができる。すなわち乳剤から粒子に転位線が発生するほどの圧力をかけないよう注意して取り出したハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト等)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。この時粒子の厚みが厚い程、電子線が透過しにくくなるので高圧型(0.25μmの厚さの粒子に対して200kV以上)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができる。このような方法により得られた粒子の写真より、主平面に対して垂直方向から見た場合の各粒子についての転位線の位置および数を求めることができる。
【0035】
本発明で用いる平板粒子の転位線の数は、1粒子当り平均10本以上が好ましい。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに、数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。数百に及ぶ転位線が認められる場合もある。
【0036】
転位線は、例えば平板粒子の外周近傍に導入することができる。この場合転位は外周にほぼ垂直であり、平板粒子の中心から辺(外周)までの距離の長さのx%の位置から始まり外周に至るように転位線が発生している。このxの値は好ましくは10以上100未満であり、より好ましくは30以上99未満であり、最も好ましくは50以上98未満である。この時、この転位線の開始する位置を結んでつくられる形状は粒子形と相似に近いが、完全な相似形ではなく、ゆがむことがある。この型の転位数は粒子の中心領域には見られない。転位線の方向は結晶学的におおよそ(211)方向であるがしばしば蛇行しており、また互いに交わっていることもある。
【0037】
また平板粒子の外周上の全域に渡ってほぼ均一に転位線を有していても、外周上の局所的な位置に転位線を有していてもよい。すなわち六角形平板ハロゲン化銀粒子を例にとると、6つの頂点の近傍のみに転位線が限定されていてもよいし、そのうちの1つの頂点近傍のみに転位線が限定されていてもよい。逆に6つの頂点近傍を除く辺のみに転位線が限定されていてもよい。
【0038】
また平板粒子の平行な2つの主平面の中心を含む領域に渡って転位線が形成されていてもよい。主平面の全域に渡って転位線が形成されている場合には転位線の方向は主平面に垂直な方向から見ると結晶学的におおよそ(211)方向の場合もあるが(110)方向またはランダムに形成されている場合もあり、さらに各転位線の長さもランダムであり、主平面上に短い線として観察される場合と、長い線として辺(外周)まで到達して観察される場合がある。転位線は直線のこともあれば蛇行していることも多い。また、多くの場合互いに交わっている。
【0039】
転位線の位置は以上のように外周上または主平面上または局所的な位置に限定されていてもよいし、これらが組み合わされて、形成されていてもよい。すなわち、外周上の主平面上に同時に存在していてもよい。
【0040】
平板粒子に転位線を導入するには粒子内部に特定の高沃化銀相を設けることによって達成できる。この場合、高沃化銀相には、不連続に高沃化銀領域を設けてもよい。具体的には粒子内部の高沃化銀相は基盤粒子を調製した後、高沃化銀相を設けその外側を高沃化銀相より沃化銀含有率の低い相でカバーすることによって得られる。基盤の平板粒子の沃化銀含有率は高沃化銀相よりも低く、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜15モル%である。
【0041】
本明細書において、粒子内部の高沃化銀相とは沃化銀を含むハロゲン化銀固溶体をいう。この場合のハロゲン化銀としては沃化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀が好ましいが、沃化銀または沃臭化銀(当該高沃化銀相に含有されるハロゲン化銀に対する沃化銀含有率が10〜40モル%)であることがより好ましい。この粒子内部の高沃化銀相(以下、内部高沃化銀相という)を基盤粒子の辺上、角上、面上のいずれかの場所に選択的に存在せしめるためには基盤粒子の生成条件および内部高沃化銀相の生成条件およびその外側をカバーする相の生成条件をコントロールすることが望ましい。基盤粒子の生成条件としてはpAg(銀イオン濃度の逆数の対数)およびハロゲン化銀溶剤の有無、種類および量、温度が重要な要因である。基盤粒子の成長時のpAgを8.5以下、より好ましくは8以下で行うことにより、後の内部高沃化銀相の生成時に、該内部高沃化銀相を基盤粒子の頂点近傍もしくは面上に選択的に存在せしめることができる。
【0042】
一方基盤粒子の成長時のpAgを8.5以上より好ましくは9以上で行うことにより、後の内部高沃化銀相の生成において、内部高沃化銀相を基盤粒子の辺上に存在せしめることができる。これらpAgのしきい値は温度およびハロゲン化銀溶剤の有無、種類および量によって上下に変化する。ハロゲン化銀溶剤として、例えばチオシアネートを用いた場合にはこのpAgのしきい値は高い値の方向にずれる。成長時のpAgとして特に重要なものはその基盤粒子の成長の最終時のpAgである。一方、成長時のpAgが上記の値を満足しない場合においても、基盤粒子の成長後、該pAgに調整し、熟成することにより、内部高沃化銀相の選択位置をコントロールすることも可能である。この時、ハロゲン化銀溶剤としてアンモニア、アミン化合物、チオ尿素誘導体、チオシアネート塩が有効である。内部高沃化銀相の生成はいわゆるコンバージョン法を用いることができる。
【0043】
この方法には、粒子形成途中に、その時点での粒子あるいは粒子の表面近傍を形成しているハロゲンイオンより、銀イオンをつくる塩の溶解度が小さいハロゲンイオンを添加する方法などがあるが、本発明においては、添加する溶解度の小さいハロゲンイオンがその時点の粒子の表面積に対してある値(ハロゲン組成に関係する)以上の量であることが好ましい。たとえば粒子形成途中においてその時点のハロゲン化銀粒子の表面積に対してある量以上のKI量を添加することが好ましい。具体的には8.2×10-5モル/m2以上の沃化物塩を添加することが好ましい。
【0044】
より好ましい内部高沃化銀相の生成法は沃化物塩を含むハロゲン化物塩水溶液の添加と同時に銀塩水溶液を添加する方法である。
【0045】
例えばKI水溶液の添加と同時にAgNO3水溶液をダブルジェットで添加する。この時KI水溶液とAgNO3水溶液の添加開始時間と添加終了時間はお互いにずれて前後していてもよい。KI水溶液に対するAgNO3水溶液の添加モル比は0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。さらに好ましくは1以上である。系中のハロゲンイオンおよび添加沃素イオンに対してAgNO3水溶液の総添加モル量が銀過剰領域となってもよい。これらの沃素イオンを含むハロゲン化物水溶液の添加と銀塩水溶液とのダブルジェットによる添加時のpAgは、ダブルジェットでの添加時間に伴なって減少することが好ましい。添加開始前のpAgは、6.5以上13以下が好ましい。より好ましくは7.0以上11以下が好ましい。添加終了時のpAgは6.5以上10.0以下が最も好ましい。
【0046】
以上の方法を実施する際には、混合系のハロゲン化銀の溶解度が極力低い方が好ましい。したがって高沃化銀相を形成する時の混合系の温度は30℃以上80℃以下が好ましいが、より好ましくは30℃以上70℃以下である。
【0047】
さらに好ましくは内部高沃化銀相の形成は微粒子沃化銀または微粒子沃臭化銀または微粒子塩沃化銀または微粒子塩沃臭化銀を添加して行うことができる。特に微粒子沃化銀を添加して行うことが好ましい。これら微粒子は通常0.01μm以上0.1μm以下の粒子サイズであるが、0.01μm以下または0.1μm以上の粒子サイズの微粒子も、用いることができる。これら微粒子ハロゲン化銀粒子の調製方法に関しては特開平1−183417号、同2−44335号、同1−183644号、同1−183645号、同2−43534号および同2−43535号に関する記載を参考にすることができる。これら微粒子ハロゲン化銀を添加して熟成することにより内部高沃化銀相を設けることが可能である。
【0048】
熟成して微粒子を溶解する時には、前述したハロゲン化銀溶剤を用いることも可能である。これら添加した微粒子は直ちに全て溶解して消失する必要はなく、最終粒子が完成した時に溶解消失していればよい。
【0049】
内部高沃化銀相の位置は粒子の投影される六角形等の中心から測り、粒子全体の銀量に対して5モル%以上100モル%未満の範囲に存在することが好ましく、さらに好ましくは20モル%以上95モル%未満、特に50モル%以上9モル%未満の範囲内であることが好ましい。これら内部高沃化銀相を形成するハロゲン化銀の量は銀量にして粒子全体の銀量の50モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下である。これら高沃化銀相に関してはハロゲン化銀乳剤製造の処方値であって、最終粒子のハロゲン組成を種々の分析法にて測定した値ではない。内部高沃化銀相は最終粒子においては、シェル付け過程における再結晶等により消失してしまうことがよくあり、上記の銀量は全てその処方値に関するものである。
【0050】
したがって最終粒子においては転位線の観測は上述した方法によって容易に行えるが、転位線の導入のために導入した内部沃化銀相は、境界の沃化銀組成が連続的に変化するため明確な相としては確認することができない場合が多い。粒子各部のハロゲン組成についてはX線回析、EPMA(XMAという名称もある)法(電子線でハロゲン化銀粒子を走査してハロゲン化銀組成を検出する方法)、ESCA(XPSという名称もある)法(X線を照射し粒子表面から出て来る光電子を分光する方法)などを組み合わせることにより確認することができる。
【0051】
内部高沃化銀相をカバーする外側の相は高沃化銀相の沃化銀含有率よりも低く、好ましくは沃化銀含有率は、当該カバーする外側の相に含有されるハロゲン化銀量に対して0〜30モル%、より好ましくは0〜20モル%、最も好ましくは0〜10モル%である。
【0052】
内部高沃化銀相をカバーする外側の相の形成時の温度、pAgは任意であるが、好ましい温度は30℃以上、80℃以下である。最も好ましくは35℃以上70℃以下である。好ましいpAgは6.5以上11.5以下である。前述したハロゲン化銀溶剤を用いると好ましい場合もあり、最も好ましいハロゲン化銀溶剤はチオシアネート塩である。
【0053】
さらに、平板粒子に転位線を導入する別の方法には、特開平6−11782号に記載されているように沃化物イオン放出剤を用いる方法もあり、好ましく用いられる。
この転位線を導入する方法と、前述した転位線を導入する方法を適宜、組み合わせて用いて転位線を導入することも可能である。
【0054】
本発明の感光材料に含有されるハロゲン化銀粒子の粒子間ヨード分布の変動係数は20%以下であることが好ましい。より好ましくは15%以下であり、特に好ましくは10%以下である。個々のハロゲン化銀のヨード含有率分布の変動係数が20%より大きい場合は、硬調ではなく、圧力を加えたときの感度の減少も大きくなってしまい好ましくない。
【0055】
本発明の感光材料に含有される粒子間ヨード分布の狭いハロゲン化銀粒子の製造方法それ自体としては、公知のいずれの方法、例えば特開平1−183417号等に示されているような微粒子を添加する方法、特開平2−68538号に示されているような沃化物イオン放出剤を用いる方法等を単独、もしくは組み合わせて用いることができる。
【0056】
本発明で用いるハロゲン化銀粒子は、粒子間ヨード分布の変動係数が20%以下であることが好ましいが、粒子間ヨード分布を単分散化する最も好ましい方法として、特開平3−213845号に記載されている方法を用いることができる。すなわち、95モル%以上の沃化銀を含有する微細なハロゲン化銀粒子が、反応容器の外に設けられた混合器において、水溶性銀塩の水溶液及び水溶性ハライド(95モル%以上のヨードイオンを含有する)の水溶液を混合して形成され、かつ形成後ただちに該反応容器中に供給されることで、単分散な粒子間ヨード分布を達成することが可能である。ここで、反応容器とは平板状ハロゲン化銀粒子の核形成及び/又は結晶成長を起こさせる容器をいう。
【0057】
混合器で調製されたハロゲン化銀粒子を添加する方法及びそれに用いる調製手段は特開平3−213845号に記載されているように、以下の三つの技術を用いることができる。
【0058】
(1) 混合器で微粒子を形成した後、ただちにそれを反応容器に添加する。
【0059】
(2) 混合器で強力かつ効率のよい攪拌を行う。
【0060】
(3) 保護コロイド水溶液の混合器への注入。
【0061】
上記(3)で用いる保護コロイドは、単独で混合器に注入してもよいし、ハロゲン塩水溶液又は硝酸銀水溶液に保護コロイドを含有させて混合器に注入してもよい。保護コロイドの濃度は1質量%以上、好ましくは2〜5質量%である。本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に対して保護コロイド作用を有する高分子化合物としては、ポリアクリルアミドポリマー、アミノポリマー、チオエーテル基を有するポリマー、ポリビニルアルコール、アクリル酸ポリマー、ヒドロキシキノリンを有するポリマー、セルローズ、澱粉、アセタール、ポリビニルピロリドン、三元ポリマーなどがあるが、低分子量ゼラチンを用いるのが好ましい。低分子量ゼラチンの重量平均分子量は、30000以下がよく、さらに好ましくは10000以下である。
【0062】
微細なハロゲン化銀粒子を調製する際の粒子形成温度は、35℃以下が好ましく、特に好ましくは25℃以下である。微細なハロゲン化銀粒子を添加する反応容器の温度は50℃以上、好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。
【0063】
本発明によって用いられる微細なサイズのハロゲン化銀の粒子サイズは粒子をメッシュにのせてそのまま透過型電子顕微鏡によって確認できる。本発明で用いる微粒子のサイズは好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。この微細なハロゲン化銀は他のハロゲンイオン、銀イオンの添加と同時に添加してもよいし、微細なハロゲン化銀のみを添加してもよい。微細なハロゲン化銀粒子は全ハロゲン化銀に対して0.005〜20モル%、好ましくは0.01〜10モル%の範囲で混合される。
【0064】
個々の粒子の沃化銀含有率はX線マイクロアナライザーを用いて、一個一個の粒子の組成を分析することで測定できる。粒子間ヨード分布の変動係数とは少なくとも100個、より好ましくは200個、特に好ましくは300個以上の乳剤粒子の沃化銀含有率を測定した際の沃化銀含有率の標準偏差と平均沃化銀含有率を用いて関係式
(標準偏差/平均沃化銀含有率)×100=変動係数
で定義される値である。個々の粒子の沃化銀含有率測定は例えば欧州特許第147,868号に記載されている。個々の粒子の沃化銀含有率Yi(モル%)と各粒子の球相当径Xi(μm)の間には、相関がある場合と無い場合があるが、相関が無いことが望ましい。本発明で用いる粒子のハロゲン化銀組成に関する構造については、例えば、X線回折、EPMA法(電子線でハロゲン化銀粒子を走査して、ハロゲン化銀組成を検出する方法)、ESCA法(X線を照射して粒子表面から出てくる光電子を分光する方法)を組み合わせることにより確認することができる。本発明において沃化銀含有率を測定する際、粒子表面とは、表面より50℃程度の深さの領域のことを言い、粒子内部とは上記の表面以外の領域を言う。このような粒子表面のハロゲン組成は、通常ESCA法により測定することができる。
【0065】
本発明には前述の平板状粒子のほかに立方体、8面体、14面体などの正常晶粒子や不定形の双晶粒子を使用することができる。
【0066】
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤はセレン増感または金増感することが好ましい。
本発明で用い得るセレン増感剤としては、従来公知の特許に開示されているセレン化合物を用いることができる。通常、不安定型セレン化合物および/または非不安定型セレン化合物は、これを添加して高温、好ましくは40℃以上で乳剤を一定時間攪拌することにより用いられる。不安定型セレン化合物としては、特公昭44−15748号、特公昭43−13489号、特開平4−25832号、特開平4−109240号などに記載の化合物を用いることが好ましい。
【0067】
具体的な不安定セレン増感剤としては、例えばイソセレノシアネート類(例えばアリルイソセレノシアネートの如き脂肪族イソセレノシアネート類)、セレノ尿素類、セレノケトン類、セレノアミド類、セレノカルボン酸類(例えば、2−セレノプロピオン酸、2−セレノ酪酸)、セレノエステル類、ジアシルセレニド類(例えば、ビス(3−クロロ−2,6−ジメトキシベンゾイル)セレニド)、セレノホスフェート類、ホスフィンセレニド類、コロイド状金属セレンがあげられる。
【0068】
不安定型セレン化合物の好ましい類型を上に述べたが、これらは限定的なものではない。写真乳剤の増感剤としての不安定型セレン化合物といえば、セレンが不安定である限り該化合物の構造はさして重要なものではなく、セレン増感剤分子の有機部分はセレンを担持し、それを不安定な形で乳剤中に存在せしめる以外何らの役割をもたないことが、当業者には一般に理解されている。本発明においては、かかる広範な概念の不安定セレン化合物が有利に用いられる。
【0069】
本発明で用い得る非不安定型セレン化合物としては、例えば特公昭46−4553号、特公昭52−34492号および特公昭52−34491号に記載の化合物を挙げることができる。具体的な非不安定型セレン化合物としては、例えば亜セレン酸、セレノシアン化カリウム、セレナゾール類、セレナゾール類の四級塩、ジアリールセレニド、ジアリールジセレニド、ジアルキルセレニド、ジアルキルジセレニド、2−セレナゾリジンジオン、2−セレノオキサゾリジンチオンおよびこれらの誘導体があげられる。
【0070】
これらのセレン増感剤は水またはメタノール、エタノールなどの有機溶媒の単独または混合溶媒に溶解して、化学増感時に添加される。好ましくは、化学増感開始前に添加される。使用されるセレン増感剤は1種に限られず、上記セレン増感剤の2種以上を併用して用いることができる。不安定セレン化合物と非不安定セレン化合物との併用は好ましい。
【0071】
本発明に使用し得るセレン増感剤の添加量は、用いるセレン増感剤の活性度、ハロゲン化銀の種類や大きさ、熟成の温度および時間などにより異なるが、好ましくは、ハロゲン化銀1モル当り2×10-6モル以上5×10-6モル以下である。セレン増感剤を用いた場合の化学増感の温度は、好ましくは40℃以上80℃以下である。pAgおよびpHは任意である。例えばpHについては、4から9までの広い範囲で本発明の効果が得られる。
【0072】
セレン増感は、ハロゲン化銀溶剤の存在下で行うことにより、より効果的に達成される。
【0073】
本発明で用いることができるハロゲン化銀溶剤としては、例えば米国特許第3,271,157号、同第3,531,289号、同第3,574,628号、特開昭54−1019号、同54−158917号に記載された(a)有機チオエーテル類、特開昭53−82408号、同55−77737号、同55−2982号に記載された(b)チオ尿素誘導体、特開昭53−144319号に記載された(c)酸素または硫黄原子と窒素原子とにはさまれたチオカルボニル基を有するハロゲン化銀溶剤、特開昭54−100717号に記載された(d)イミダゾール類、(e)亜硫酸塩、(f)チオシアネートが挙げられる。
【0074】
特に好ましいハロゲン化銀溶剤としては、チオシアネートおよびテトラメチルチオ尿素がある。また、用いられる溶剤の量は種類によっても異なるが、好ましい量はハロゲン化銀1モル当り1×10-4モル以上1×10-2モル以下である。
【0075】
上記金増感の金増感剤としては、金の酸化数が+1価でも+3価でもよく、金増感剤として通常用いられる金化合物を用いることができる。代表的な例としては、塩化金酸塩、カリウムクロロオーレート、オーリックトリクロライド、カリウムオーリックチオシアネート、カリウムヨードオーレート、テトラシアノオーリックアシド、アンモニウムオーロチオシアネート、ピリジルトリクロロゴールド、硫化金、金セレナイドが挙げられる。金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり1×10-7モル以上5×10-5モル以下が好ましい。
【0076】
本発明で用いる乳剤は、化学増感において硫黄増感を併用することが望ましい。
この硫黄増感は、通常、硫黄増感剤を添加して、高温、好ましくは40℃以上で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。
【0077】
上記の硫黄増感には、硫黄増感剤として公知のものを用いることができる。例えばチオ硫酸塩、アリルチオカルバミドチオ尿素、アリルイソチアシアネート、シスチン、p−トルエンチオスルホン酸塩、ローダニンなどが挙げられる。その他、例えば米国特許第1,574,944号、同第2,410,689号、同第2,278,947号、同第2,728,668号、同第3,501,313号、同第3,656,955号、ドイツ特許1,422,869号、特公昭56−24937号、特開昭55−45016号公報に記載されている硫黄増感剤も用いることができる。硫黄増感剤の添加量は、乳剤の感度を効果的に増大させるのに十分な量でよい。この量は、pH、温度、ハロゲン化銀粒子の大きさなどの種々の条件の下で相当の範囲にわたって変化するが、ハロゲン化銀1モル当り1×10-7モル以上、5×10-5モル以下が好ましい。
【0078】
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤を粒子形成中、粒子形成後でかつ化学増感前あるいは化学増感中、あるいは化学増感後に還元増感することもできる。
還元増感としては、ハロゲン化銀乳剤に還元増感剤を添加する方法、銀熟成と呼ばれるpAg1〜7の低pAgの雰囲気で成長または、熟成させる方法、高pH熟成と呼ばれるpH8〜11の高pHの雰囲気で成長または熟成させる方法のいずれを選ぶことができる。また2つ以上の方法を併用することもできる。
【0079】
還元増感剤を添加する方法は還元増感のレベルを微妙に調節できる点で好ましい方法である。
還元増感剤として例えば、第一錫塩、アスコルビン酸およびその誘導体、アミンおよびポリアミン類、ヒドラジン誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物、ボラン化合物などが公知である。本発明の還元増感にはこれら公知の還元増感剤を選んで用いることができ、また2種以上の化合物を併用することもできる。還元増感剤として塩化第一錫、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボラン、アスコルビン酸およびその誘導体が好ましい化合物である。還元増感剤の添加量は乳剤製造条件に依存するので添加量を選ぶ必要があるが、ハロゲン化銀1モル当り10-7〜10-3モルの範囲が適当である。
【0080】
還元増感剤は水あるいはアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類のような有機溶媒に溶かし粒子成長中に添加される。あらかじめ反応容器に添加するのもよいが、粒子成長の適当な時期に添加する方が好ましい。また水溶性銀塩あるいは水溶性アルカリハライドの水溶液にあらかじめ還元増感剤を添加しておき、これらの水溶液を用いてハロゲン化銀粒子を沈澱せしめてもよい。また粒子成長に伴って還元増感剤の溶液を何回かに分けて添加しても連続して長時間添加するのも好ましい方法である。
【0081】
本発明で用いる乳剤の製造工程中に銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用してこれを銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀のように水に難溶の銀塩を形成してもよく、又、硝酸銀のように水に易溶の銀塩を形成してもよい。銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、オゾン、過酸化水素およびその添加物(例えば、NaBO2・H22・3H2O、2NaCO3・3H22、Na427・2H22、2Na2SO4・H22・2H2O)、ペルオキシ酸塩(例えばK228、K226、K228)、ペルオキシ錯体化合物(例えば、K2[Ti(O2)C24]・3H2O、4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O、Na3[VO(O2)(C242・6H2O)、過マンガン酸塩(例えば、KMnO4)、クロム酸塩(例えば、K2Cr27)のような酸素酸塩、沃素や臭素のようなハロゲン元素、過ハロゲン酸塩(例えば過沃素酸カリウム)、高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)、およびチオスルフォン酸塩などがある。
【0082】
また、有機の酸化剤としては、p−キノンのようなキノン類、過酢酸や過安息香酸のような有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシイミド、クロラミンT、クロラミンB)が例として挙げられる。
【0083】
本発明において、好ましい酸化剤は、オゾン、過酸化水素およびその付加物、ハロゲン元素、チオスルフォン酸塩のような無機酸化剤及びキノン類のような有機酸化剤である。
【0084】
前述の還元増感と銀に対する酸化剤を併用するのは好ましい態様である。酸化剤を用いたのち還元増感を施こす方法、その逆方法あるいは両者を同時に共存させる方法を用いることができる。これらの方法は粒子形成工程でも化学増感工程でも適用できる。
【0085】
本発明で用いる写真乳剤は、好ましくはメチン色素類その他によって分光増感することにより優れた色彩度を発揮することができる。用いられる色素には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。特に有用な色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、および複号メロシアニン色素に属する色素である。これらの色素類は、塩基性異節環核としてシアニン色素類に通常利用される核のいずれを含むものであってもよい。
【0086】
その様な核として、例えばピロリン核、オキサゾリン核、チアゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核;これらの核に脂環式炭化水素環が融合した核;及びこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、即ち、インドレニン核、ベンズインドレニン核、インドール核、ベンズオキサゾール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンズイミダゾール核、キノリン核を挙げることができる。これらの核は炭素原子上に置換基を有していてもよい。
【0087】
メロシアニン色素または複合メロシアニン色素にはケトメチレン構造を有する核として、ピラゾリン−5−オン核、チオヒダントイン核、2−チオオキサゾリジン−2,4−ジオン核、チアゾリジン−2,4−ジオン核、ローダニン核、チオバルビツール酸核のような5〜6員異節環核を有することができる。
【0088】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。その代表例は米国特許第2,688,545号、同2,977,229号、同3,397,060号、同3,522,0523号、同3,527,641号、同3,617,293号、同3,628,964号、同3,666,480号、同3,672,898号、同3,679,4283号、同3,703,377号、同3,769,301号、同3,814,609号、同3,837,862号、同4,026,707号、英国特許第1,344,281号、同1,507,803号、特公昭43−4936号、同53−12375号、特開昭52−110618号、同52−109925号に記載されている。増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。
【0089】
更に、本発明は分光増感色素で光吸収率を向上させる技術と併用することが好ましい。例えば、分子間力を利用することで増感色素をハロゲン化銀粒子表面へ単層飽和吸着(すなわち1層吸着)より多く吸着させたり、2つ以上の別々に共役しておらず共有結合で連結
された発色団を有する、いわゆる連結色素を吸着させることである。その中でも、以下に示した特許に記載されている技術と併用することが好ましい。
【0090】
特開平10−239789号、特開平11−133531号、特開2000−267216号、特開2000−275772号、特開2001−75222号、特開2001−75247号、特開2001−75221号、特開2001−75226号、特開2001−75223号、特開2001−255615号、特開2002−23294号、特開平10−171058号、特開平10−186559号、特開平10−197980号、特開2000−81678号、特開2001−5132号、特開2001−166413号、特開2002−49113号、特開昭64−91134号、特開平10−110107号、特開平10−171058号、特開平10−226758号、特開平10−307358号、特開平10−307359号、特開平10−310715号、特開2000−231174号、特開2000−231172号、特開2000−231173号、特開2001−356442号、欧州特許第985965A号、欧州特許第985964A号、欧州特許第985966A号、欧州特許第985967A号、欧州特許第1085372A号、欧州特許第1085373A号、欧州特許第1172688A号、欧州特許第1199595A号、欧州特許第887700A1号。
【0091】
増感色素を乳剤中に添加する時期は、これまで有用であると知られている乳剤調製の如何なる段階であってもよい。もっとも普通には化学増感の完了後塗布前までの時期に行なわれるが、米国特許第3,628,969号、および同第4,225,666号に記載されているように化学増感剤と同時期に添加し分光増感を化学増感と同時に行なうことも、特開昭58−113928号に記載されているように化学増感に先立って行なうことも出来、またハロゲン化銀粒子沈澱生成の完了前に添加し分光増感を開始することも出来る。更にまた米国特許第4,225,666号に教示されているようにこれらの増感色素を分けて添加すること、即ちこれらの増感色素の一部を化学増感に先立って添加し、残部を化学増感の後で添加することも可能であり、米国特許第4,183,756号に開示されている方法を始めとしてハロゲン化銀粒子形成中のどの時期であってもよい。
【0092】
複数の増感色素を添加する場合は、それぞれを別々にポーズをおいて添加する方法や混合して添加する方法、1種の増感色素の一部を先行して添加し、残りを他の増感色素と混合して添加する方法など、選択した増感色素種および所望の分光感度によって最適のものを選択することができる。
【0093】
増感色素は、ハロゲン化銀1モル当り、4×10-6〜8×10-3モルで用いることができるが、より好ましいハロゲン化銀粒子サイズ0.2〜1.2μmの場合はハロゲン化銀1モル当たり約5×10-5〜2×10-3モルがより有効である。
【0094】
本発明で用いるハロゲン化銀粒子は、双晶面間隔が0.017μm以下であることが
好ましい。より好ましくは0.007〜0.017μmであり、特に好ましくは0.007〜0.015μmである。
【0095】
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤は、化学増感時に予め調製した沃臭化銀乳剤を添加し、溶解させることで経時中のカブリを改善することができる。添加時期は化学増感時ならいつでもよいが、最初に沃臭化銀乳剤を添加して溶解させた後、続いて増感色素及び化学増感剤の順に添加するのが好ましい。使用する沃臭化銀乳剤のヨード含量は、ホスト粒子の表面ヨード含量より低濃度のヨード含量の沃臭化銀乳剤であり、好ましくは純臭化銀乳剤である。この沃臭化銀乳剤のサイズは、完全に溶解させられるならばサイズに制限はないが、好ましくは球相当直径0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。沃臭化銀乳剤の添加量は、用いるホスト粒子により変化するが、基本的には銀1モルに対
して、0.005〜5モル%が好ましく、より好ましくは0.1〜1モル%である。
【0096】
本発明に用いられる乳剤は、ハロゲン化銀乳剤に有用であることが知られている通常のドーパントを用いることができる。通常のドーパントにはFe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Tlなどがある。本発明では、ヘキサシアノ鉄(II)錯体およびヘキサシアノルテニウム錯体(以下、単に「金属錯体」ともいう)が好ましく用いられる。
【0097】
該金属錯体の添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり10-7モル以上、かつ10-3モル以下であることが好ましく、ハロゲン化銀1モル当たり、1.0×10-5モル以上、かつ5×10-4モル以下であることが更に好ましい。
【0098】
本発明に用いる金属錯体は、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加し含有させてもよい。また、数回にわたって分割して添加し含有させてもよい。しかしながら、ハロゲン化銀粒子中に含有される金属錯体の全含有量の50%以上が用いるハロゲン化銀粒子の最表面から銀量で1/2以内の層に含有されることが好ましい。ここで述べた金属錯体を含む層の更に支持体を基準として外側に金属錯体を含まない層を設けてもよい。
【0099】
これらの金属錯体は水または適当な溶媒で溶解して、ハロゲン化銀粒子の形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、銀塩水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加して粒子形成を行う事により含有させるのが好ましい。また、あらかじめ金属錯体を含有させたハロゲン化銀微粒子を添加溶解させ、別のハロゲン化銀粒子上に沈積させることによって、これらの金属錯体を含有させることも好ましく行われる。
これらの金属錯体を添加するときの反応溶液中の水素イオン濃度はpHが1以上10以下が好ましく、さらに好ましくはpHが3以上7以下である。
【0100】
本発明の感光材料において、「1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物」を含有する場合が好ましい。
これらの化合物として好ましくは以下のタイプ1、2から選ばれる化合物である。
【0101】
(タイプ1)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
【0102】
(タイプ2)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
【0103】
まずタイプ1の化合物について説明する。
タイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子を放出し得る化合物としては、特開平9−211769号(具体例:28〜32頁の表Eおよび表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9−211774号、特開平11−95355号(具体例:化合物INV1〜36)、特表2001−500996号(具体例:化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号、米国特許5,747,236号、欧州特許786692A1号(具体例:化合物INV1〜35)、欧州特許893732A1号、米国特許6,054,260号、米国特許5,994,051号などの特許に記載の「1光子2電子増感剤」または「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0104】
またタイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(1)(特開2003-114487号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(2)(特開2003-114487号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(3)(特開2003-114488号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(4)(特開2003-114488号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(5)(特開2003-114488号に記載の一般式(3)と同義)、一般式(6)(特開2003-75950号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(7)(特開2003-75950号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(8)(特願2003-25886号に記載の一般式(1)と同義)、または化学反応式(1)(特願2003-33446号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物のうち一般式(9)(特願2003-33446号に記載の一般式(3)と同義)で表される化合物が挙げられる。またこれらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0105】
次にタイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物で1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(10)(特開2003-140287号に記載の一般式(1)と同義)、化学反応式(1)(特願2003-33446号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物であって一般式(11)(特願2003-33446号に記載の一般式(2)と同義)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0106】
本発明の感光材料において、ヘテロ原子を1個以上持つ複素環化合物を含有することが好ましい。本発明において好ましく用いることができるのは、ヘテロ原子を1個又は2個持つ複素環化合物の場合は、現像主薬酸化体と反応しない化合物であり、ヘテロ原子を3個以上持つ複素環の場合は現像主薬酸化体と反応する化合物である。以下、各々について説明する。
【0107】
以下で、テロ原子を1個又は2個持つ複素環化合物について説明する。ヘテロ原子とは、炭素原子、又は水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。「ヘテロ原子を1個又は2個持つ複素環」における、ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。
【0108】
多環複素環の場合、全ての環系に含まれるヘテロ原子の数が1個又は2個のもののみが含まれ、例えば1,3,4,6−テトラアザインデンのヘテロ原子の数は4個であり含まれない。
【0109】
これらの要件を満たす、いかなる複素環化合物を用いても良いが、ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子であり、さらに好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、及びセレン原子であり、特に好ましくは、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子であり、最も好ましくは窒素原子、及び硫黄原子である。
【0110】
複素環の環員数はいずれでも良いが、好ましくは3〜8員環であり、さらに好ましくは5〜7員環であり、特に好ましくは5、及び6員環である。
【0111】
複素環としては、飽和であっても不飽和であっても良いが、好ましくは少なくとも1つの不飽和の部分を有する場合であり、さらに好ましくは少なくとも2つの不飽和の部分を有する場合である。別の言い方をすると、複素環としては、芳香族、擬似芳香族、及び非芳香族のいずれでも良いが、好ましくは芳香族複素環、及び擬似芳香族複素環である。
【0112】
これらの複素環として具体的には、ピロール環、チオフェン環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、及び、これらにベンゾ縮環したインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、キノキサリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、アクリジン環、及び、これらが一部又は全部飽和したピロリジン環、ピロリン環、イミダゾリン環等が挙げられる。
【0113】
これらの複素環には、「ヘテロ原子を1個又は2個持つ複素環」の定義に反しない限り、いかなる置換基が置換していても縮環していても良く、置換基としては前述のWが挙げられる。また、複素環に含まれる3級窒素原子が置換されて4級窒素となっても良い。なお、複素環の別の互変異性構造を書くことができるどのような場合も、化学的に等価である。
【0114】
ヘテロ原子を1個又は2個持つ複素環において、遊離チオール基(−SH)及びチオカルボニル基(>C=S)が置換していない場合が好ましい。
【0115】
上記の複素環のうち、好ましくは(aa−1)〜(aa−4)である。(aa−2)においては、ベンゼン環が縮環している(ab−25)が、さらに好ましい。
【0116】
なお、ヘテロ原子を1個又は2個持つ複素環化合物は、酸化現像主薬と反応しても反応
しなくても、いずれでも良いが、酸化現像主薬と反応しない複素環化合物を好ましく用いることができる。
【0117】
すなわち、酸化現像主薬と直接に化学反応又はレドックス反応を顕著に生じない(5〜10%未満)ものが好ましく、さらに、カプラーではなく、かつ酸化現像主薬と反応して色素又はいずれか他の生成物を生成しないものが好ましい。
【0118】
本発明において用いるヘテロ原子を3個以上持つ複素環化合物について説明する。ヘテロ原子とは、炭素原子、又は水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。本発明の複素環はヘテロ原子を3個以上持つ複素環化合物である。「ヘテロ原子を3個以上持つ複素環」における、ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。
【0119】
多環複素環の場合、全ての環系に含まれるヘテロ原子の数が3個以上のものは本発明に含まれ、例えば1H−ピラゾロ[1,5−b][1,2,4]トリアゾールのヘテロ原子の数は4個であり、本発明のヘテロ原子を3個以上持つ複素環に含まれる。
【0120】
ヘテロ原子の数の上限は特にないが、好ましくは10個以下であり、さらに好ましくは8個以下、特に好ましくは6個以下、最も好ましくは4個以下である。
【0121】
これらの要件を満たす、いかなる複素環化合物を用いても良いが、ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子であり、さらに好ましくは、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子であり、さらに好ましくは、窒素原子、及び硫黄原子であり、特に好ましくは、窒素原子である。
【0122】
複素環の環員数はいずれでも良いが、好ましくは3〜8員環であり、さらに好ましくは5〜7員環であり、特に好ましくは5、及び6員環であり、最も好ましくは5員環である。
【0123】
複素環としては、飽和であっても不飽和であっても良いが、好ましくは少なくとも1つの不飽和の部分を有する場合であり、さらに好ましくは少なくとも2つの不飽和の部分を有する場合である。別の言い方をすると、複素環としては、芳香族、擬似芳香族、及び非芳香族のいずれでも良いが、好ましくは芳香族複素環、及び擬似芳香族複素環である。
【0124】
また、複素環としては縮環した多環複素環が好ましく、特に2環性の複素環が好ましい。
【0125】
なお、ヘテロ原子を3個以上持つ複素環化合物は、酸化現像主薬と反応しても反応しなくても、いずれでも良いが、酸化現像主薬と反応する複素環化合物を好ましく用いることができる。
【0126】
本発明には、非感光性微粒子ハロゲン化銀を使用することが好ましい。非感光性微粒子ハロゲン化銀とは、色素画像を得るための像様露光時においては感光せずに、その現像処理において実質的に現像されないハロゲン化銀微粒子であり、あらかじめカブラされていないほうが好ましい。微粒子ハロゲン化銀は、臭化銀の含有率が0〜100モル%であり、必要に応じて塩化銀および/または沃化銀を含有してもよい。好ましくは沃化銀を0.5〜10モル%含有するものである。微粒子ハロゲン化銀は、平均粒径(投影面積の円相当直径の平均値)が0.01〜0.5μmが好ましく、0.02〜0.2μmがより好ましい。
【0127】
微粒子ハロゲン化銀は、通常の感光性ハロゲン化銀と同様の方法で調製できる。ハロゲン化銀粒子の表面は、光学的に増感される必要はなく、また分光増感も不要である。ただし、これを塗布液に添加するのに先立ち、あらかじめトリアゾール系、アザインデン系、ベンゾチアゾリウム系、もしくはメルカプト系化合物または亜鉛化合物などの公知の安定剤を添加しておくことが好ましい。この微粒子ハロゲン化銀粒子含有層に、コロイド銀を含有させることができる。
【0128】
本技術に関する感光材料には、前記の種々の添加剤が用いられるが、それ以外にも目的に応じて種々の添加剤を用いることができる。
【0129】
これらの添加剤は、より詳しくはリサーチディスクロージャー Item 17643(1978年12月)、同 Item 18716(1979年11月)および同 Item 308119(1989年12月)に記載されており、その該当個所を後掲の表にまとめて示した。
【0130】
添加剤種類 RD17643 RD18716 RD308119
1 化学増感剤 23頁 648頁右欄 996頁
2 感度上昇剤 同 上
3 分光増感剤、 23〜24頁 648頁右欄〜 996右〜 998右
強色増感剤 649頁右欄
4 増 白 剤 24頁 998右
5 カブリ防止剤 24〜25頁 649頁右欄 998右〜1000右
および安定剤
6 光吸収剤、 25〜26頁 649頁右欄〜 1003左〜1003右
フィルター染料 650頁左欄
紫外線吸収剤
7 ステイン防止剤 25頁右欄 650左〜右欄 1002右
8 色素画像安定剤 25頁 1002右
9 硬 膜 剤 26頁 651頁左欄 1004右〜1005左
10 バインダー 26頁 同 上 1003右〜1004右
11 可塑剤、潤滑剤 27頁 650頁右欄 1006左〜1006右
12 塗布助剤、 26〜27頁 同 上 1005左〜1006左
表面活性剤
13 スタチック 27頁 同 上 1006右〜1007左
防止剤
14 マット剤 1008左〜1009左
【0131】
本発明の写真感光材料ならびにそれで用いる乳剤に使用することができる層配列等の技術、ハロゲン化銀乳剤、色素形成カプラー、DIRカプラー等の機能性カプラー、各種の添加剤等、及び現像処理については、欧州特許第0565096A1号(1993年10月13日公開)及びこれに引用された特許に記載されている。以下に各項目とこれに対応する記載個所を列記する。
【0132】
1.層構成:61頁23〜35行、61頁41行〜62頁14行
2.中間層:61頁36〜40行、
3.重層効果付与層:62頁15〜18行、
4.ハロゲン化銀ハロゲン組成:62頁21〜25行、
5.ハロゲン化銀粒子晶癖:62頁26〜30行、
6.ハロゲン化銀粒子サイズ:62頁31〜34行、
7.乳剤製造法:62頁35〜40行、
8.ハロゲン化銀粒子サイズ分布:62頁41〜42行、
9.平板粒子:62頁43〜46行、
10.粒子の内部構造:62頁47行〜53行、
11.乳剤の潜像形成タイプ:62頁54行〜63頁5行、
12.乳剤の物理熟成・化学増感:63頁6〜9行、
13.乳剤の混合使用:63頁10〜13行、
14.かぶらせ乳剤:63頁14〜31行、
15.非感光性乳剤:63頁32〜43行。
【0133】
16.塗布銀量:63頁49〜50行、
17.ホルムアルデヒドスカベンジャー:64頁54〜57行、
18.メルカプト系カブリ防止剤:65頁1〜2行、
19.かぶらせ剤等放出剤:65頁3〜7行、
20.色素:65頁7〜10行、
21.カラーカプラー全般:65頁11〜13行、
22.イエロー、マゼンタ及びシアンカプラー:65頁14〜25行、
23.ポリマーカプラー:65頁26〜28行、
24.拡散性色素形成カプラー:65頁29〜31行、
25.カラードカプラー:65頁32〜38行、
26.機能性カプラー全般:65頁39〜44行、
27.漂白促進剤放出カプラー:65頁45〜48行、
28.現像促進剤放出カプラー:65頁49〜53行、
29.その他のDIRカプラー:65頁54行〜66頁4行、
30.カプラー分散方法:66頁5〜28行
31.防腐剤・防かび剤:66頁29〜33行、
32.感材の種類:66頁34〜36行、
33.感光層膜厚と膨潤速度:66頁40行〜67頁1行、
34.バック層:67頁3〜8行、
35.現像処理全般:67頁9〜11行、
36.現像液と現像薬:67頁12〜30行、
37.現像液添加剤:67頁31〜44行、
38.反転処理:67頁45〜56行、
39.処理液開口率:67頁57行〜68頁12行、
40.現像時間:68頁13〜15行、
41.漂白定着、漂白、定着:68頁16行〜69頁31行、
42.自動現像機:69頁32〜40行、
43.水洗、リンス、安定化:69頁41行〜70頁18行、
44.処理液補充、再使用:70頁19〜23行、
45.現像薬感材内蔵:70頁24〜33行、
46.現像処理温度:70頁34〜38行、
47.レンズ付フィルムへの利用:70頁39〜41行
【0134】
また、欧州特許第602600号公報に記載の、2−ピリジンカルボン酸または2,6−ピリジンジカルボン酸と硝酸第二鉄のごとき第二鉄塩、及び過硫酸塩を含有した漂白液も好ましく使用できる。この漂白液の使用においては、発色現像工程と漂白工程との間に、停止工程と水洗工程を介在させることが好ましく、停止液には酢酸、コハク酸、マレイン酸などの有機酸を使用することが好ましい。さらに、この漂白液には、pH調整や漂白カブリの目的に、酢酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸などの有機酸を0.1〜2モル/リットル(以下、リットルを「L」と表記する。)の範囲で含有させることが好ましい。
【0135】
本発明に使用できる適当な支持体は、例えば、前述のRD.No.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄、および同No.307105の879頁に記載されている。
【0136】
本発明の感光材料は、乳剤層を有する側の支持体に対して反対側に、乾燥膜厚の総和が0.5μm〜20μmのバック層を設けることが好ましい。このバック層には、例えば、前述の光吸収剤、カーボンブラック、フィルター染料、紫外線吸収剤、スタチック防止剤、硬膜剤、バインダー、可塑剤、潤滑剤、塗布助剤、表面活性剤を含有させることが好ましく、中でもカーボンブラック、スタチック防止剤が特に好ましい。
【0137】
本発明のコロイドカーボンとは、カーボンブラック粉体をポリマーに練りこんだものをいう。カーボンブラック添加量は、光学透過濃度(白色光にて)が2.0以下になるくらいが望ましく、さらに望ましくは光学透過濃度が0.5以上1.8以下である。カーボンブラックを含有するバック層には、光吸収剤、フィルター染料、紫外線吸収剤、スタチック防止剤、硬膜剤、バインダー、可塑剤、潤滑剤、塗布助剤、表面活性剤等を含有させることが好ましい。このカーボンブラックは現像処理時に前浴で溶解し、次工程のリンスで洗い落とされる。
【0138】
スタチック防止剤としては、導電性金属酸化物粒子を用いることが好ましい。導電性金属酸化物粒子の材料としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、MgO、BaO、MoO3およびV25及びこれらの複合酸化物、そしてこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。金属酸化物としては、SnO2、ZnO、Al23、TiO2、In23、MgO、およびV25が好ましく、さらにSnO2、ZnO、In23、TiO2およびV25が好ましく、SnO2およびV25が特に好ましい。異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAlあるいはIn、TiO2に対してNbあるいはTa、In23に対してSn、及びSnO2に対してSb、Nbあるいはハロゲン元素などの異種元素を0.01〜30モル%(好ましくは0.1〜10モル%)ドープしたものを挙げることができる。異種元素の添加量が、0.01モル%未満の場合は酸化物または複合酸化物に充分な導電性を付与することができず、30モル%を超えると粒子の黒化度が増し、帯電防止層が黒ずむため感材用としては適さない。従って、本発明では導電性金属酸化物粒子の材料としては、金属酸化物または複合金属酸化物に対し異種元素を少量含むものが好ましい。また結晶構造中に酸素欠陥を含むものも好ましい。導電性金属酸化物粒子は、含有する層全体に対し、体積比率が50%以下である必要があるが、好ましくは3〜30%である。塗設量としては1〜300mg/m2が好ましく、2〜200mg/m2がより好ましく、100〜250mg/m2が最も好ましい。体積比率が50%を越えると処理済カラー写真の表面に汚れが付着しやすく、また3%を下回ると帯電防止能が十分に機能しない。
【0139】
導電性金属酸化物粒子の粒子径は、光散乱をできるだけ小さくするために小さい程好ましいが、粒子と結合剤の屈折率の比をパラメーターとして決定されるべきものであり、ミー(Mie)の理論を用いて求めることができる。一般に、平均粒子径が0.001〜0.5μmの範囲であり、0.003〜0.2μmの範囲が好ましい。ここでいう、平均粒子径とは、導電性金属酸化物粒子の一次粒子径だけでなく高次構造の粒子径も含んだ値である。上記金属酸化物の微粒子を帯電防止層形成用塗布液へ添加する際は、そのまま添加して分散しても良いが、水等の溶媒(必要に応じて分散剤、バインダーを含む)に分散させた分散液の形で添加することが好ましい。
【0140】
導電性金属酸化物を含有する層は、導電性金属酸化物粒子を分散、支持する結合剤としてバインダーと硬膜剤との硬化物を含んでいるのが好ましい。本発明では、良好な作業環境の維持、及び大気汚染防止の観点から、バインダーも硬膜剤も、水溶性のものを使用するか、あるいはエマルジョン等の水分散状態で使用することが好ましい。また、バインダーは、硬膜剤との架橋反応が可能なように、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びグリシジル基のいずれかの基を有するのが好ましい。水酸基及びカルボキシル基が好ましく、特にカルボキシル基が好ましい。バインダー中の水酸基又はカルボキシル基の含有量は、0.0001〜1当量/1kgが好ましく、特に0.001〜1当量/1kgが好ましい。
【0141】
導電性金属酸化物粒子を含有する層のバインダーとしては、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂が好ましく使用される。本発明の非感光性層は硬膜されているのが好ましく、硬膜剤としては、アジリジン系、トリアジン系、ビニルスルホン系、アルデヒド系、シアノアクリレート系、ペプチド系、エポキシ系、メラミン系などが用いられるが、導電性金属酸化物粒子を強固に固定する観点からは、メラミン系化合物が特に好ましい。
【0142】
以下に導電性金属酸化物粒子を含有する層のバインダーとして好ましく用いられる樹脂について説明する。アクリル樹脂としては、アクリル酸;アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類;アクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリル酸;メタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類;メタクリルアミド及びメタクリロニトリルのいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。これらの中では、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体が好ましい。例えば、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。上記アクリル樹脂は、上記組成を主成分とし、硬膜剤との架橋反応が可能なように、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びグリシジル基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用して得られるポリマーであるのが好ましい。
【0143】
上記ビニル樹脂としては、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくはエチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)を挙げることができる。これらの中で、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくはエチレン/酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体)が好ましい。上記ビニル樹脂は、硬膜剤との架橋反応が可能なように、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル及びポリ酢酸ビニルでは、例えば、ビニルアルコール単位をポリマー中に残すことにより水酸基を有するポリマーとし、他のポリマーについては、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びグリシジル基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用することにより得られるポリマーとする。
【0144】
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)、ポリヒドロキシ化合物と多塩基酸との反応により得られる脂肪族ポリエステル系ポリオール、ポリエーテルポリオール(例、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオール)、ポリカーボネート系ポリオール、及びポリエチレンテレフタレートポリオールのいずれか一種、あるいはこれらの混合物とポリイソシアネートから誘導されるポリウレタンを挙げることができる。上記ポリウレタン樹脂では、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応後、未反応として残った水酸基を硬膜剤との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。
【0145】
上記ポリエステル樹脂としては、一般にポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)と多塩基酸との反応により得られるポリマーが使用される。上記ポリエステル樹脂では、例えば、ポリオールと多塩基酸との反応終了後、未反応として残った水酸基、カルボキシル基を硬膜剤との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。勿論、水酸基等の官能基を有する第三成分を添加しても良い。上記ポリマーの中で、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂が好ましく、特にアクリル樹脂が好ましい。
【0146】
硬膜剤として好ましく用いられるメラミン化合物としては、メラミン分子内に二個以上(好ましくは三個以上)のメチロール基および/またはアルコキシメチル基を含有する化合物およびそれらの縮重合体であるメラミン樹脂あるいはメラミン・ユリア樹脂などをあげることができる。メラミンとホルマリンの初期縮合物の例としては、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどがあり、その具体的な市販品としては、例えばスミテックス・レジン(Sumitex Resin)M−3、同MW、同MK及び同MC(住友化学(株)製)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0147】
上記縮重合体の例としては、ヘキサメチロールメラミン樹脂、トリメチロールメラミン樹脂、トリメチロールトリメトキシメチルメラミン樹脂等をあげることができる。市販品としては、MA−1及びMA−204(住友ベークライト(株製)、ベッカミン(BECKAMINE)MA−S、ベッカミンAPM及びベッカミンJ−101(大日本インキ化学工業(株)製)、ユーロイド344(三井東圧化学(株)製)、大鹿レジンM31及び大鹿レジンPWP−8(大鹿振興(株)製)等をあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0148】
メラミン化合物としては、分子量を1分子内の官能基数で割った値で示される官能基当量が50以上300以下であることが好ましい。ここで官能とはメチロール基および/またはアルコキシメチル基を示す。この値が300を超えると硬化密度が小さく高い強度が得られず、メラミン化合物の量を増やすと塗布性が低下する。硬化密度が小さいとスリ傷が発生しやすくなる。また硬化する程度が低いと導電性金属酸化物を保持する力も低下する。官能基当量が50未満では硬化密度は高くなるが透明性が損なわれ、減量しても良化しない。本発明の水性メラミン化合物の添加量は、上記ポリマーに対して0.1〜100質量%、好ましくは10〜90質量%である。
【0149】
帯電防止層には必要に応じて、マット剤、界面活性剤、滑り剤などを併用して使用することができる。マット剤としては、0.001μm〜10μmの粒径をもつ酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの酸化物や、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等の重合体あるいは共重合体等があげられる。
【0150】
界面活性剤としては公知のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等があげられる。滑り剤としては、炭素数8〜22の高級アルコールのリン酸エステルもしくはそのアミノ塩;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸およびそのエステル類;及びシリコーン系化合物等を挙げることができる。
【0151】
本発明の帯電防止層の層厚は、0.01〜1μmの範囲が好ましく、さらに0.01μm〜0.2μmの範囲が好ましい。0.01μm未満では塗布剤を均一に塗布しにくいため製品に塗布むらが生じやすく、1μmを超える場合は、帯電防止性能や耐傷性が劣る場合がある。帯電防止層の上には、表面層を設けるのが好ましい。表面層は、主として滑り性及び耐傷性を向上させるため、及び帯電防止層の導電性金属酸化物粒子の脱離防止の機能を補助するために設けられる。
【0152】
表面層の材料としては、(1)エチレン、プロピレ、1−ブテン及び4−メチル−1−ペンテン等の1−オレフィン系不飽和炭化水素の単独または共重合体からなるワックス、樹脂及びゴム状物(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体及びプロピレン/1−ブテン共重合体)、(2)上記1−オレフィンの二種以上と共役または非共役ジエンとのゴム状共重合体(例えば、エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン/プロピレン/1,5−ヘキサジエン共重合体及びイソブテン/イソプレン共重合体)、(3)1−オレフィンと共役または非共役ジエンとの共重合体、(例えば、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/エチリデンノルボルネン共重合体)、(4)1−オレフィン、特にエチレンと酢酸ビニルとの共重合体およびその完全もしくは部分ケン化物、(5)1−オレフィンの単独または共重合体に上記共役もしくは非共役ジエンまたは酢酸ビニル等をグラフトさせたグラフト重合体およびその完全もしくは部分ケン化物、などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。上記化合物は、特公平5−41656号公報に記載されている。上記のポリオレフィンであって、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩基を有するものが好ましい。本発明では、通常水溶液あるいは水分散液として使用する。
【0153】
上記表面層には、メチル基置換度2.5以下の水溶性メチルセルロースを添加しても良く、その添加量は表面層を形成する全結合剤に対して0.1質量%〜40質量%が好ましい。上記水溶性メチルセルロースについては、特開平1−210947号公報に記載されている。上記表面層は、帯電防止層上に一般によく知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストル−ジョンコート法などにより上記バインダー等を含む塗布液(水分散液又は水溶液)を塗布することにより形成することができる。上記表面層の層厚は、0.01〜1μmの範囲が好ましく、さらに0.01μm〜0.2μmの範囲が好ましい。0.01μm未満では塗布剤を均一に塗布しにくいため製品に塗布むらが生じやすく、1μmを超える場合は、帯電防止性能や耐傷性が劣る場合がある。本発明の感光材料は、アマチュア用カラーネガ、アドバンストアマチュア用カラーネガ、プロフェッショナル用カラーネガ、映画用カラーネガのいずれにも適用することができるが、映画用カラーネガに適用することが最も好ましい。
【0154】
本発明の感光材料の現像処理においては、カーボンブラックの除去等の目的で発色現像の前に前浴およびリンス浴を設けることが好ましい。前浴はカーボンブラックを溶解させるため、アルカリ性の溶液でpHは9.0以上が好ましい。前浴の温度は25〜40℃、時間は5〜30秒が好ましい。リンス浴はカーボンブラックを洗い流すために設けるもので、水洗工程と同様に水洗水が用いられる。リンス浴の温度は25〜40℃、時間は5〜60秒が好ましい。
【0155】
本発明の感光材料の現像処理に用いる発色現像液は、好ましくは芳香族第一級アミン系発色現像主薬を主成分とするアルカリ性水溶液である。この発色現像主薬としては、アミノフェノール系化合物も有用であるが、p−フェニレンジアミン系化合物が好ましく使用される。その代表例としては3−メチル−4−アミノ−N,Nジエチルアニリン、3−メチル−4−アミノ−N−エチル−N−β−ヒドロキシエチルアニリン、4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン、3−メチル−4−アミノ−N−エチル−β−メトキシエチルアニリン、及びこれらの硫酸塩、塩酸塩もしくはp−トルエンスルホン酸塩などが挙げられる。本発明の効果は、現像主薬として4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−メタンスルフォンアミドエチル)アニリンを用いたとき、最も効果が大きい。
【0156】
発色現像液は、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、ホウ酸塩もしくはリン酸塩のようなpH緩衝剤、塩化物塩、臭化物塩、沃化物塩、ベンズイミダゾール類、ベンゾチアゾール類もしくはメルカプト化合物のような現像抑制剤またはかぶり防止剤を含むのが一般的である。また必要に応じて、ヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、亜硫酸塩、N,N−ビスカルボキシメチルヒドラジンの如きヒドラジン類、フェニルセミカルバジド類、トリエタノールアミン、カテコールスルホン酸類の如き各種保恒剤;エチレングリコール、ジエチレングリコールのような有機溶剤;ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、四級アンモニウム塩、アミン類のような現像促進剤;色素形成カプラー、競争カプラー、1−フェニル−3−ピラゾリドンのような補助現像主薬;粘性付与剤;アミノポリカルボン酸、アミノポリホスホン酸、アルキルホスホン酸、ホスホノカルボン酸に代表されるような各種キレート剤を用いることができる。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ニトリル三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロ−N,N,N−トリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N,N−テトラメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−ジ(o−ヒドロキシフェニル酢酸)及びそれらの塩を代表例として挙げることができる。発色現像処理の時間は通常2〜5分の間で設定されるが、高温高pHとし、かつ発色現像主薬を高濃度に使用することにより、更に処理時間の短縮を図ることもできる。
【0157】
発色現像後の写真乳剤層は通常漂白処理される。漂白処理は定着処理と同時に行なわれてもよいし(漂白定着処理)、個別に行なわれてもよい。更に処理の迅速化を図るため、漂白処理後に漂白定着処理する処理方法でもよい。さらに、二槽の連続した漂白定着浴で処理すること、漂白定着処理の前に定着処理すること、又は漂白定着処理後に漂白処理することも目的に応じ任意に実施できる。漂白剤としては、例えば、鉄(III)のような多価金属の化合物、過酸類(特に、過硫酸ソーダが適する)、キノン類、ニトロ化合物が用いられる。代表的漂白剤としては、鉄(III)の有機錯塩、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、メチルイミノ二酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸のようなアミノポリカルボン酸類との錯塩、または、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸との錯塩を用いることができる。これらのうち、エチレンジアミン四酢酸鉄(III)錯塩、及び1,3−ジアミノプロパン四酢酸鉄(III)錯塩をはじめとするアミノポリカルボン酸鉄(III)錯塩は、迅速処理と環境汚染防止の観点から好ましい。さらに、アミノボリカルボン酸鉄(III)錯塩は、漂白液においても、漂白定着液においても特に有用である。これらのアミノポリカルボン酸鉄(III)錯塩を用いた漂白液又は漂白定着液のpHは通常4.0〜8であるが、処理の迅速化のためにさらに低いpHで処理することもできる。
【0158】
漂白液、漂白定着液及びそれらの前浴には、必要に応じて漂白促進剤を使用することができる。有用な漂白促進剤の具体例は、次の明細書に記載されている:例えば、米国特許第3,893,858号、西独特許第1,290,812号、同第2,059,988号、特開昭53−32736号、同53−57831号、同53−37418号、同53−72623号、同53−95630号、同53−95631号、同53−104232号、同53−124424号、同53−141623号、同53−18426号、リサーチ・ディスクロージャーNo.17129号(1978号7月)に記載のメルカプト基またはジスルフィド基を有する化合物;特開昭51−140129号に記載のチアゾリジン誘導体;特公昭45−8506号、特開昭52−20832号、同53−32735号、米国特許第3,706,561号に記載のチオ尿素誘導体、西独特許第1,127,715号、特開昭58−16235号に記載の沃化物塩;西独特許第966,410号、同第2,748,430号に記載のポリオキシエチレン化合物類;特公昭45−8836号に記載のポリアミン化合物;その他特開昭49−40943号、同49−59644号、同53−94927号、同54−35727号、同55−26506号、同58−163940号記載の化合物;臭化物イオン等が使用できる。なかでも、メルカプト基またはジスルフィド基を有する化合物が促進効果が大きい観点で好ましく、特に米国特許第3,893,858号、西独特許第1,290,812号、特開昭53−95630号に記載の化合物が好ましい。更に、米国特許第4,552,884号に記載の化合物も好ましい。これらの漂白促進剤は感材中に添加してもよい。撮影用のカラー感光材料を漂白定着するときに、これらの漂白促進剤は特に有効である。
【0159】
漂白液や漂白定着液には上記の化合物の他に、漂白ステインを防止する目的で有機酸を含有させることが好ましい。特に好ましい有機酸は、酸解離定数(pKa)が2〜5である化合物で、具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸を挙げることができる。
【0160】
定着液や漂白定着液に用いられる定着剤としては、例えば、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩、チオエーテル系化合物、チオ尿素類、多量の沃化物塩を挙げることができる。このなかではチオ硫酸塩の使用が一般的であり、特にチオ硫酸アンモニウムが最も広範に使用できる。また、チオ硫酸塩と、例えば、チオシアン酸塩、チオエーテル系化合物、チオ尿素の併用も好ましい。定着液や漂白定着液の保恒剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、カルボニル重亜硫酸付加物あるいは欧州特許第294,769A号に記載のスルフィン酸化合物が好ましい。更に、定着液や漂白定着液には、液の安定化の目的で、各種アミノポリカルボン酸類や有機ホスホン酸類の添加が好ましい。本発明において、定着液または漂白定着液には、pH調整のためにpKaが6.0〜9.0の化合物、好ましくはイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールの如きイミダゾール類を0.1〜10モル/L添加することが好ましい。
【0161】
脱銀工程の時間の合計は、脱銀不良が生じない範囲で短い方が好ましい。好ましい時間は1分〜3分、更に好ましくは1分〜2分である。また、処理温度は25℃〜50℃、好ましくは35℃〜45℃である。好ましい温度範囲においては脱銀速度が向上し、かつ処理後のステイン発生が有効に防止される。脱銀工程においては、撹拌ができるだけ強化されていることが好ましい。撹拌強化の具体的な方法としては、特開昭62−183460号に記載の感光材料の乳剤面に処理液の噴流を衝突させる方法や、特開昭62−183461号に回転手段を用いて撹拌効果を上げる方法が挙げられる。更には、液中に設けられたワイパーブレードと乳剤面を接触させながら感光材料を移動させ、乳剤表面を乱流化することによってより撹拌効果を向上させる方法や、処理液全体の循環流量を増加させる方法が挙げられる。このような撹拌向上手段は、漂白液、漂白定着液、定着液のいずれにおいても有効である。撹拌の向上は、乳剤膜中への漂白剤および、定着剤の供給を速め、結果として脱銀速度を高めるものと考えられる。また、前記の撹拌向上手段は漂白促進剤を使用した場合により有効であり、促進効果を著しく増加させたり、漂白促進剤により定着阻害作用を解消させることができる。
【0162】
本発明の感光材料の現像に用いられる自動現像機は、特開昭60−191257号、同60−191258号、同60−191259号に記載の感光材料搬送手段を有していることが好ましい。前記の特開昭60−191257号に記載のとおり、このような搬送手段は前浴から後浴への処理液の持込みを著しく削減でき、処理液の性能劣化を防止する効果が高い。このような効果は、各工程における処理時間の短縮や処理液補充量の低減に特に有効である。
【0163】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、脱銀処理後、水洗及び/又は安定工程を経るのが一般的である。水洗工程での水洗水量は、感光材料の特性(例えば、カプラーのような使用素材による)、用途、更には、例えば、水洗水温、水洗タンクの数(段数)、向流、順流のような補充方式、その他種々の条件に応じて広範囲に設定し得る。このうち、多段向流方式における水洗タンク数と水量の関係は、Journal of the Society of Motion Picture and Television Engineers 第64巻、P.248〜253(1955年5月号)に記載の方法で求めることができる。
【0164】
前記文献に記載の多段向流方式によれば、水洗水量を大幅に減少し得るが、タンク内における水の滞留時間の増加によりバクテリアが繁殖し、生成した浮遊物が感光材料に付着するというような問題が生じる。本発明のカラー感光材料の処理おいては、このような問題の解決策として、特開昭62−288838号に記載のカルシウムイオン、マグネシウムイオンを低減させる方法を極めて有効に用いることができる。また、特開昭57−8542号に記載の、例えば、イソチアゾロン化合物やサイアベンダゾール類、塩素化イソシアヌール酸ナトリウムのような塩素系殺菌剤、その他、例えば、ベンゾトリアゾールのような、堀口博著「防菌防黴剤の化学」(1986年)三共出版、衛生技術会編「微生物の滅菌、殺菌、防黴技術」(1982年)工業技術会、日本防菌防黴学会編「防菌防黴剤事典」(1986年)に記載の殺菌剤を用いることもできる。
【0165】
本発明の感光材料の処理おける水洗水のpHは、4〜9、好ましくは5〜8である。水洗水温および水洗時間も、例えば感光材料の特性、用途に応じて種々設定し得るが、一般には、15〜45℃で20秒〜10分、好ましくは25〜40℃で30秒〜5分の範囲が選択される。更に、本発明の感光材料は、上記水洗に代えて、直接安定液によって処理することもできる。このような安定化処理においては、特開昭57−8543号、同58−14834号、同60−220345号に記載の公知の方法はすべて用いることができる。
【0166】
また、前記水洗処理に続いて、更に安定化処理する場合もある。その例として、撮影用カラー感光材料の最終浴として使用される、色素安定化剤と界面活性剤を含有する安定浴を挙げることができる。色素安定化剤としては、例えば、ホルマリンやグルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、N−メチロール化合物、ヘキサメチレンテトラミンあるいはアルデヒド亜硫酸酸付加物を挙げることができる。この安定浴にも、各種キレート剤や防黴剤を加えることができる。
【0167】
上記水洗及び/又は安定液の補充に伴うオーバーフロー液は脱銀工程のような他の工程において再利用することもできる。例えば自動現像機を用いた処理において、上記の各処理液が蒸発により濃縮化する場合には、水を加えて濃縮補正することが好ましい。
【0168】
本発明を適用するハロゲン化銀カラー写真感光材料には、処理の簡略化及び迅速化の目的で発色現像主薬を内蔵させても良い。内蔵させるためには、発色現像主薬の各種プレカーサーを用いるのが好ましい。例えば、米国特許第3,342,597号記載のインドアニリン系化合物、例えば、同第3,342,599号、リサーチ・ディスクロージャーNo.14,850及び同No.15,159に記載のシッフ塩基型化合物、同No.13,924に記載のアルドール化合物、米国特許第3,719,492号に記載の金属塩錯体、特開昭53−135628号に記載のウレタン系化合物を挙げることができる。
【0169】
本発明を適用するハロゲン化銀カラー感光材料は、必要に応じて、発色現像を促進する目的で、各種の1−フェニル−3−ピラゾリドン類を内蔵しても良い。典型的な化合物は、例えば、特開昭56−64339号、同57−144547号、および同58−115438号に記載されている。本発明における各種処理液は、10℃〜50℃において使用される。通常は33℃〜45℃の温度が標準的であるが、より高温にして処理を促進し処理時間を短縮したり、逆により低温にして画質の向上や処理液の安定性の改良を達成することができる。
【実施例】
【0170】
以下に本発明の実施例を示す。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0171】
実施例1
特開2001−281815号の実施例1に記載の乳剤粒子の製法を参照して表1に記載のハロゲン化銀乳剤Em−AからEm−Mを調製した。
【0172】
【表1】

【0173】
表1において、平板状粒子には、高圧電子顕微鏡を用いると、特開平3−237450号に記載されているような転位線が観察される。
【0174】
1)感光層の塗設(試料101の作製)
下塗りを施した三酢酸セルロースフィルム支持体上に、下記に示すような組成のバック層を塗設した。
【0175】
(バック層の塗設)
支持体の片方の面に下記組成のバック層を塗設した。
メチルメタクリレート−メタクリル酸コポリマー
(共重合モル比1:1) 1.5質量部
セルロースアセテートヘキサヒドロフタレート
(ヒドロキシプロピル基4%、メチル基15%、
アセチル基8%、フタリル基36%) 1.5質量部
アセトン 50質量部
メタノール 25質量部
メチルセロソルブ 25質量部
コロイドカーボン 1.2質量部
以上の割合で塗布液を調製し、白色光に対して濃度が1.0になる様に塗布した。
【0176】
上記支持体上に、下記の組成の各層を重層塗布し、カラーネガフィルム(試料101)を作製した。
【0177】
(感光層の組成)
各層に使用する素材の主なものは下記のように分類されている;
ExC:シアンカプラー UV :紫外線吸収剤
ExM:マゼンタカプラー HBS:高沸点有機溶剤
ExY:イエローカプラー H :ゼラチン硬化剤
(具体的な化合物は以下の記載で、記号の次に数値が付けられ、後ろに化学式が挙げられている)。
各成分に対応する数字は、g/m2単位で表した塗布量を示し、ハロゲン化銀については銀換算の塗布量を示す。
【0178】
第1層(低感度赤感乳剤層)
Em−A 銀 0.205
Em−B 銀 0.068
ExC−1 0.196
ExC−2 0.025
ExC−3 0.115
ExC−4 0.102
ExC−5 0.016
ExC−8 0.010
ExC−10 0.025
Cpd−2 0.025
Cpd−4 0.008
HBS−1 0.210
HBS−5 0.038
ゼラチン 2.003
【0179】
第2層(中感度赤感乳剤層)
Em−B 銀 0.352
Em−C 銀 0.352
ExC−1 0.039
ExC−2 0.010
ExC−3 0.040
ExC−4 0.025
ExC−5 0.010
ExC−6 0.012
ExC−7 0.005
Cpd−2 0.036
Cpd−4 0.008
Cpd−6 0.060
HBS−1 0.097
ゼラチン 0.986
【0180】
第3層(高感度赤感乳剤層)
Em−D 銀 1.072
ExC−1 0.133
ExC−3 0.006
ExC−6 0.015
ExC−7 0.010
ExM−5 0.028
Cpd−2 0.064
Cpd−4 0.009
Cpd−6 0.025
HBS−1 0.223
ゼラチン 1.038
【0181】
第4層(中間層)
Cpd−1 0.050
Cpd−7 0.368
HBS−1 0.049
ポリエチルアクリレートラテックス 0.088
ゼラチン 0.617
【0182】
第5層(低感度緑感乳剤層)
Em−E 銀 0.454
Em−F 銀 0.228
Em−G 銀 0.189
ExM−2 0.339
ExM−3 0.082
ExM−4 0.090
ExY−1 0.004
ExC−9 0.004
ExC−10 0.004
HBS−1 0.094
HBS−3 0.015
HBS−4 0.106
HBS−5 0.185
ゼラチン 1.145
【0183】
第6層(中感度緑感乳剤層)
Em−H 銀 0.682
ExM−2 0.089
ExM−3 0.019
ExM−4 0.052
ExY−1 0.002
ExY−5 0.006
ExC−6 0.005
ExC−7 0.010
ExC−9 0.005
ExC−10 0.006
HBS−1 0.080
HBS−3 0.003
HBS−5 0.020
ゼラチン 0.837
【0184】
第7層(高感度緑感乳剤層)
Em−I 銀 0.534
ExC−6 0.009
ExC−7 0.010
ExM−1 0.035
ExM−2 0.006
ExM−3 0.003
ExM−4 0.007
ExM−5 0.020
ExM−6 0.186
ExC−9 0.002
ExC−10 0.004
ExY−5 0.006
Cpd−3 0.003
Cpd−4 0.004
HBS−1 0.063
HBS−5 0.041
ポリエチルアクリレートラテックス 0.090
ゼラチン 0.718
【0185】
第8層(イエローフィルター層)
黄色コロイド銀 銀 0.042
Cpd−1 0.080
固体分散染料ExF−1 0.045
固体分散染料ExF−2 0.008
油溶性染料ExF−3 0.010
HBS−1 0.054
ゼラチン 0.601
【0186】
第9層(低感度青感乳剤層)
Em−J 銀 0.415
ExC−1 0.012
ExY−1 0.008
ExY−2 0.011
ExY−6 0.027
ExY−7 0.369
ExC−9 0.003
ExC−10 0.009
Cpd−2 0.049
Cpd−3 0.005
HBS−1 0.249
HBS−5 0.070
ゼラチン 1.337
【0187】
第10層(中感度青感乳剤層)
Em−K 銀 0.376
ExC−1 0.017
ExY−1 0.004
ExY−2 0.073
ExY−6 0.009
ExY−7 0.143
ExC−9 0.004
ExC−10 0.011
Cpd−2 0.044
Cpd−3 0.002
HBS−1 0.219
HBS−5 0.070
ゼラチン 0.750
【0188】
第11層(高感度青感乳剤層)
Em−L 銀 0.328
Em−M 銀 0.328
ExY−1 0.007
ExY−2 0.025
ExY−6 0.043
ExY−7 0.197
ExC−10 0.016
Cpd−2 0.070
Cpd−3 0.001
HBS−1 0.061
ゼラチン 0.835
【0189】
第12層(第1保護層)
沃臭化銀乳剤粒子 銀 0.230
(平均球相当径0.07μm、沃化銀含有率1モル%)
UV−1 0.100
UV−2 0.120
UV−3 0.170
UV−4 0.017
UV−5 0.100
ExF−4 0.003
ExF−5 0.004
ExF−6 0.005
ExF−7 0.016
F−11 0.002
S−1 0.068
HBS−1 0.030
HBS−4 0.139
ゼラチン 1.300
【0190】
第13層(第2保護層)
H−1 0.365
B−1(直径1.7μm) 0.007
B−2(直径1.7μm) 0.160
B−3 0.029
ゼラチン 0.406
【0191】
更に、各層に適宜、保存性、処理性、圧力耐性、防黴・防菌性、帯電防止性及び塗布性をよくするために、W−1ないしW−9、B−4ないしB−6、F−1ないしF−17及び、鉛塩、白金塩、イリジウム塩、ロジウム塩が含有されている。
【0192】
有機固体分散染料の分散物の調製
第12層のExF−1を次の方法で分散した。
ExF−1のウエットケーキ 2.800kg
(17.6質量%の水を含む)
オクチルフェニルジエトキシメタンスルホン酸ナトリウム
(31質量%水溶液) 0.376kg
F−15(7%水溶液) 0.011kg
水 4.020kg
計 7.210kg
(NaOHでpH=7.2に調整)
【0193】
上記組成のスラリーをディゾルバーで攪拌して粗分散した後、アジテータミルLMK−4を用い、周速10m/s、吐出量0.6kg/min、0.3mm径のジルコニアビーズ充填率80%で分散液の吸光度比が0.29になるまで分散し、固体微粒子分散物を得た。染料微粒子の平均粒径は0.29μmであった。
ExF−2は欧州特許第549,489Aの実施例1に記載の微小析出(Microprecipitation)分散方法により分散した。平均粒径は0.06μmであった。
【0194】
以下、各層の作製に用いた化合物を示す。
【0195】
【化1】

【0196】
【化2】

【0197】
【化3】

【0198】
【化4】

【0199】
【化5】

【0200】
【化6】

【0201】
【化7】

【0202】
【化8】

【0203】
【化9】

【0204】
【化10】

【0205】
【化11】

【0206】
【化12】

【0207】
【化13】

【0208】
【化14】

【0209】
【化15】

【0210】
【化16】

【0211】
以上の通りに作製したカラーネガ感光材料を、試料101とする。
【0212】
(試料102〜106の作製)
試料101における乳剤塗布銀量を表2のように調節して試料102〜106を作製した。
【0213】
【表2】

【0214】
(試料の評価)
各サンプルに、ウエッジを介して1/100秒の白色露光を行った。露光したサンプルを下記に示した現像処理を行い、特開昭63−226650号に記載されている方法で濃度測定を行った。
【0215】
処理工程及び処理液組成を以下に示す。
〔現像処理工程〕
時間 温度(℃)
前浴 10秒 27
リンス 20秒 30
発色現像 3分 41.1
停止 30秒 30
水洗 30秒 30
漂白 3分 27
水洗 1分 30
定着 2分 38
水洗 2分 30
リンス 10秒 30
乾燥 5〜7分 32〜47(相対湿度30〜50%)
【0216】
<前浴>
H2O 800mL
ホウ砂(10水塩) 20g
硫酸ナトリウム(無水) 100g
水酸ナトリウム 1g
水を加えて 1L
pH 9.25±0.10
【0217】
<発色現像液1>
H2O 850mL
コダックアンチカルシウムNo.4 2mL
亜硫酸ナトリウム(無水) 2g
イーストマンアンチフォグNo.9 0.22g
臭化ナトリウム(無水) 1.2g
炭酸ナトリウム(無水) 25.6g
重炭酸ナトリウム 2.7g
4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−
(β−メタンスルフォンアミドエチル)アニリン硫酸塩 4g
水を加えて 1L
pH 10.20±0.5
【0218】
<漂白液>
H2O 700mL
プロクセルGXL 0.07mL
コダックキレーティングエージェント No.1 24.2g
28%水酸化アンモニウム液 30mL
臭化アンモニウム 32.5g
氷酢酸 10mL
硝酸第2鉄(9水塩) 28.8g
水を加えて 1L
<停止液>
H2O 900mL
7.0N硫酸 50mL
水を加えて 1L
【0219】
<定着液>
H2O 700mL
コダックアンチカルシウムNo.4 2mL
58%チオ硫酸アンモニウム液 185mL
亜硫酸ナトリウム(無水) 10g
メタ重亜硫酸ナトリウム(無水) 8.4g
水を加えて 1L
【0220】
処理性の評価
本発明の効果を確認するために、発色現像液1の現像主薬を3.2gに減らした発色現像液2を調製し、同様に現像処理を行った。
【0221】
発色現像液(1)で処理した際にDminより0.5高い濃度を与える露光量における発色現像液(2)の濃度Dを求め、それらの差(ΔD)を計算し、処理液の変動による特性の変動の尺度とした。このΔDが大きいほど処理依存性の大きな感材であるといえる。得られた結果を表3に示した。
【0222】
鮮鋭度の評価
作製した感材を用い、センシトメトリー用ウエッジの前面に赤色フィルターを付して露光を与え、上記の現像処理をおこなって得たシアン色画像についてMTFを測定しその値を用いて鮮鋭度の評価を行った。MTFの測定法は「ジャーナル・オブ・アプライド・フォトグラフィック・エンジニアリング」6巻(1),1−8(1980)に記載される方法で行った。ただし、現像処理は上記に記載の処理である。得られた結果を表3に示した。値は試料101の値を100としたときの相対値で表した。値が大きいほど鮮鋭度の良い感材であるといえる。
【0223】
【表3】

【0224】
表3からわかる様に、本発明の効果は赤感性ハロゲン化銀層の最も感度の高い感光層の塗布銀量が最も感度の低い感光性層の塗布銀量よりも少ないときに得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、それぞれ、少なくとも2層の互いに感度の異なる青感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、および赤感性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、支持体から順に赤感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤、青感性ハロゲン化銀乳剤層が塗設され、かつ該赤感性ハロゲン化銀乳剤層において、下記式が成り立つことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
式 Ru/Ro>1(式1)
ここで、Roは赤感性ハロゲン化銀層において最も感度の高い感光層の塗布銀量を表し、Ruは最も感度が低い感光層の塗布銀量を表す。
【請求項2】
前記式がRu/Ro>2(式2)であることを特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項3】
前記式がRu/Ro>3(式3)であることを特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項4】
前記式がRu/Ro>4(式4)であることを特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項5】
使用用途が映画用カラーネガフイルムであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。

【公開番号】特開2008−145958(P2008−145958A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336011(P2006−336011)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】