説明

ハンディプリンタ

【課題】印刷面が垂直に近い非水平面であっても、画像を傾斜させずに印刷することが可能なハンディプリンタを提供する。
【解決手段】非水平面に対する印刷に際し、第1加速度センサ16により、垂直方向Vに対するプリントヘッド12の側方(詳しくはプリントヘッド12のノズル列12a及びノズル列12aのインク吐出方向Dのいずれにも直交する方向)へのノズル列12aの傾斜角αを検出し、この傾斜角αに応じて画像Gを回転させて、この回転させた画像を非水平面に印刷し、画像の傾斜を補正している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動での移動走査により画像を多様な面に印刷することが可能なハンディプリタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のハンディプリンタは、壁面やダンボール箱の外面等の印刷面に画像を印刷するためのものであり、ハンディプリンタ本体を手動で印刷面に沿って移動走査すると、ハンディプリンタ本体の移動距離が検出されて、この移動距離に応じてハンディプリンタ本体に内蔵のプリントヘッドにより印刷面に対する画像が順次印刷され、画像全体が印刷面に印刷される。
【0003】
このようなハンディプリンタは、手動で移動走査されるため、その移動軌跡が斜めになったり曲がったりすることがあり、これが印刷面の画像の傾斜の原因となる。
【0004】
このため、例えば特許文献1では、基準ガイドを記録シートに印して、ハンディプリンタ本体に基準ガイドを検出する検出部を設けておき、検出部により基準ガイドを検出して、この検出された基準ガイドに基づきハンディプリンタ本体の移動方向のずれ角度を求め、このずれ角度に基づいて画像を修正して、画像の傾斜を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−208291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、基準ガイドが印刷面に予め印されていなければ、画像の傾斜を補正することができなかった。
【0007】
また、印刷面が水平面である場合は、ハンディプリンタ本体の移動走査が容易であって、基準ガイドが無くても、移動走査を誤ることは少ないが、印刷面が垂直に近い非水平面であって、特に頭上でハンディプリンタ本体を移動走査させる場合は、水平面の場合と比較すると、ハンディプリンタ本体の移動走査が困難になり、ハンディプリンタ本体が斜めになった状態で移動走査され、画像が傾斜することが多かった。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、印刷面が垂直に近い非水平面であっても、画像を傾斜させずに印刷することが可能なハンディプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、非水平面に沿って移動走査されたハンディプリンタ本体の移動量を検出する移動量検出部と、前記非水平面に画像を印刷するプリントヘッドとを備え、前記移動量検出部により検出された移動量に応じて前記プリントヘッドの前記画像の印刷を進行させるハンディプリンタであって、垂直方向に対する前記プリントヘッドの側方への傾斜角を検出するヘッド傾斜角検出部と、前記ヘッド傾斜角検出部により検出された前記傾斜角に応じて前記プリントヘッドにより印刷される前記画像を傾斜させ、前記非水平面に印刷される前記画像の傾斜を補正する制御部とを備えている。
【0010】
通常、非水平面に画像を印刷する場合は、画像の印刷進行方向が水平方向となり、プリントヘッドを水平方向に移動させる必要がある。このとき、プリントヘッドが垂直方向に向けられて、プリントヘッドの側方への傾斜角が「0」である場合には、水平方向(印刷進行方向)へのプリントヘッドの移動に伴い、プリントヘッドにより画像が傾斜することなく非水平面に印刷される。ところが、垂直方向に対してプリントヘッドが傾斜して、プリントヘッドの側方への傾斜角が生じている場合には、プリントヘッドにより非水平面に印刷された画像が傾斜する。そこで、本発明では、垂直方向に対するプリントヘッドの側方への傾斜角を検出して、この傾斜角に応じてプリントヘッドにより印刷される画像を傾斜させ、非水平面に印刷される画像の傾斜を補正している。
【0011】
また、本発明のハンディプリンタにおいては、前記画像を記憶する画像記憶部を備え、前記制御部は、前記ヘッド傾斜角検出部により検出された傾斜角に応じて前記画像記憶部内の前記画像を回転させ、前記プリントヘッドにより前記回転させた画像を前記非水平面に印刷させている。
【0012】
このように傾斜角に応じて画像記憶部内の画像を回転させ、プリントヘッドによりその回転させた画像を非水平面に印刷することにより、非水平面に印刷される画像の傾斜を補正することができる。
【0013】
更に、本発明のハンディプリンタにおいては、前記非水平面に沿って移動走査された前記ハンディプリンタ本体の順方向又は逆方向の移動方向を検出する移動方向検出部と、報知部とを備え、前記制御部は、前記移動方向検出部により検出された前記ハンディプリンタ本体の移動方向が規定移動方向と一致するか否かを判定し、この判定結果を前記報知部により報知させている。
【0014】
例えば、規定移動方向が左から右への順方向であるときには、ハンディプリンタ本体を左から右への順方向に移動させつつ、画像を印刷する。この場合に、ハンディプリンタ本体を右から左へと逆方向に移動させると、画像の左右が反転してしまう。このため、ハンディプリンタ本体の順方向又は逆方向の移動方向を検出して、この移動方向が規定移動方向と一致するか否かを判定し、この判定結果を報知している。これにより、左右が反転した画像の印刷を防止することができる。
【0015】
また、本発明のハンディプリンタにおいては、前記非水平面に沿って移動走査された前記ハンディプリンタ本体の順方向又は逆方向の移動方向を検出する移動方向検出部を備え、前記制御部は、前記移動方向検出部により検出された前記ハンディプリンタ本体の移動方向が規定移動方向と一致するか否かを判定し、前記規定移動方向と一致しないと判定した場合に、前記プリントヘッドにより印刷される前記画像の左右を反転させている。
【0016】
このようにハンディプリンタ本体の順方向又は逆方向の移動方向を検出して、この移動方向が規定移動方向と一致しなかったときに、プリントヘッドにより印刷される画像の左右を反転させれば、印刷された画像の左右が反転することはない。
【0017】
更に、本発明のハンディプリンタにおいては、前記非水平面に沿って移動走査された前記ハンディプリンタ本体の順方向又は逆方向の移動方向を検出する移動方向検出部を備え、前記制御部は、前記プリントヘッドの印刷幅よりも前記画像の幅が広い場合に、前記画像を前記プリントヘッドの印刷幅未満の幅で複数の画像部分に分割し、前記各画像部分を順次選択して、前記移動量検出部により検出された移動量に応じて前記プリントヘッドによる前記画像部分の印刷を進め、前記移動方向検出部により検出された前記ハンディプリンタ本体の移動方向が反転したときには、前記プリントヘッドによる次に選択された前記画像部分の印刷を開始している。
【0018】
このように画像をプリントヘッドの印刷幅で複数の画像部分に分割して、ハンディプリンタ本体の移動量に応じて画像部分を印刷し、ハンディプリンタ本体の移動方向が反転する度に、プリントヘッドによる次に選択された画像部分の印刷を開始して行けば、各画像部分を順次印刷して、各画像部分からなる画像全体を印刷することができる。
【0019】
また、本発明のハンディプリンタにおいては、前記制御部は、前記非水平面に沿って移動走査された前記ハンディプリンタ本体の移動軌跡を求め、前記移動軌跡から前記各画像部分の印刷範囲を求めて、前記画像部分の印刷範囲と次に選択された前記画像部分の印刷範囲との重複領域を求め、前記重複領域での次に選択された前記画像部分の印刷を禁止している。
【0020】
このようにハンディプリンタ本体の移動軌跡を求め、移動軌跡から各画像部分の印刷範囲を求めて、各画像部分の印刷範囲の重複領域を求め、重複領域での次に選択された画像部分の印刷を禁止すれば、重複領域において各画像部分が重複して印刷されることはない。
【0021】
更に、本発明のハンディプリンタにおいては、前記プリントヘッドは、インクを噴出するノズルを有するインクジェット方式のものであり、水平方向に対する前記プリントヘッドのノズルからのインク吐出方向の傾斜角を検出するノズル傾斜角検出部と、前記インク吐出方向の傾斜角に応じて前記プリントヘッドのノズルからのインク吐出力を調節するヘッド駆動部とを設けている。
【0022】
インクジェット方式の場合は、例えばノズルが下方向に向いたときと上方向に向いたときとでは、重力の影響によりインクの吐出速度が変化する。このため、水平方向に対するノズルからのインク吐出方向の傾斜角に応じてノズルからのインク吐出力を調節すれば、インク吐出方向が如何なる向きであっても、インク吐出速度を一定にして、画像品質の劣化等を防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
このような本発明によれば、垂直方向に対するプリントヘッドの側方への傾斜角を検出し、この傾斜角に応じてプリントヘッドにより印刷される画像を傾斜させているので、非水平面に印刷される画像の傾斜を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のハンディプリンタの第1実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1のハンディプリンタの使用状態を例示する平面図である。
【図3】(a)、(b)は、ハンディプリンタの本体の底面から突出した一対のローラを示す底面図及び側面図である。
【図4】(a)、(b)は、プリントヘッドの傾斜角、印刷進行方向等を示す斜視図及び上面図である。
【図5】(a)は印刷進行方向とプリントヘッドのノズル列が斜めに交差した状態で印刷された傾斜した画像を示す図であり、(b)は印刷進行方向とプリントヘッドのノズル列が斜めに交差した状態で印刷された正常な画像を示す図である。
【図6】(a)は逆方向に移動されたハンディプリンタにより印刷された左右反転の画像を示す図であり、(b)は逆方向に移動されたハンディプリンタにより印刷された正常な画像を示す図である。
【図7】第2実施形態のハンディプリンタを示すブロック図である。
【図8】画像を分割してなる3つの画像部分を例示する図である。
【図9】プリントヘッドの中心の移動軌跡を例示する座標系を示す図である。
【図10】各画像部分の重複領域を示す図である。
【図11】第3実施形態のハンディプリンタを示すブロック図である。
【図12】(a)はプリントヘッドのノズル列からのインク吐出方向が水平方向であるときの状態を示す側面図であり、(b)はノズル列からのインク吐出方向が水平方向よりも下向きになったときの状態を示す側面図であり、(c)はノズル列からのインク吐出方向が水平方向よりも上向きになったときの状態を示す側面図である。
【図13】第1実施形態のハンディプリンタ及び第2実施形態のハンディプリンタを包含する第3実施形態のハンディプリンタの印刷制御の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明のハンディプリンタの第1実施形態を示すブロック図である。また、図2は、第1実施形態のハンディプリンタ1の使用状態を例示する平面図である。
【0027】
本実施形態のハンディプリンタ1は、図2に示すように利用者により手動で移動走査されるものであり、ハンディプリンタ1の本体1aが手動で印刷面に沿って矢印方向Cに移動走査されると、本体1aに内蔵のプリントヘッドにより印刷面に画像Gが印刷される。
【0028】
このハンディプリンタ1は、図1に示すようにハンディプリンタ1を統括的に制御する制御部11と、印刷面に画像を印刷するプリントヘッド12と、利用者により操作される操作部13と、印刷面に沿って移動走査されたときのハンディプリンタ1の移動量及び移動方向を検出する移動検出部14と、印刷面に印刷される画像(画像データ)を記憶した画像メモリ15と、プリントヘッド12に内蔵され、垂直方向に対するプリントヘッド12の側方への傾斜角度を検出する第1加速度センサ16と、表示もしくは音による報知を行う報知部17とを備えている。
【0029】
プリントヘッド12は、インクを噴出するノズル列12aを有するインクジェット方式のものである。
【0030】
移動検出部14は、例えば図3(a)、(b)の底面図及び側面図に示すようにハンディプリンタ1の本体1aの底面から突出した一対のローラ2と、各ローラ2の回転数及び回転方向を検出するそれぞれのセンサ(図示せず)とを有しており、各ローラ2の回転数、回転方向、回転数差に基づき本体1aに内蔵のプリントヘッド12の移動量、順方向又は逆方向の移動方向、及び印刷進行方向を求める。画像の印刷に際しては、ハンディプリンタ1の本体1aの底面から突出した各ローラ2を印刷面に接触させて、本体1aを移動させるので、本体1aの移動量に応じた回転数だけ各ローラ2が回転し、本体1aの移動方向に応じて各ローラ2が順方向又は逆方向に回転し、本体1aの進行方向の変化に応じて各ローラ2の回転数差が変化する。このため、各ローラ2の回転数、回転方向、回転数差に基づき本体1aに内蔵のプリントヘッド12(ノズル列12a)の移動量、順方向又は逆方向の移動方向、及び印刷進行方向を求めることができる。
【0031】
ここで、プリントヘッド12の移動量とはノズル列12aの中心12bの移動距離である。また、プリントヘッド12の順方向又は逆方向の移動方向とは、図2の矢印方向C(左から右への方向)又は矢印方向Cとは逆の方向(右から左への方向)である。図2に示すようにハンディプリンタ1が矢印方向Cに移動走査されたときに、プリントヘッド12により画像Gが左側から右側へと順次記録されて行く。また、ハンディプリンタ1が矢印方向Cとは逆方向に移動走査されたときには、画像Gが右側から左側へと逆方向に順次記録されて、印刷される画像Gの左右の反転が防止される。更に、プリントヘッド12の印刷進行方向とは、図4(a)、(b)の斜視図及び上面図に示すようにプリントヘッド12のノズル列12aのインク吐出方向Dが鉛直に交わる印刷面上でノズル列12aの中心12bが移動して行く方向Eである。
【0032】
第1加速度センサ16は、各種の方式のいずれを適用してもよい。この第1加速度センサ16は、図4(a)、(b)に示すようにプリントヘッド12のノズル列12aが垂直もしくは垂直近くに立てられたときに、つまりプリントヘッド12により非水平面への印刷が行われるときに、垂直方向Vに対するプリントヘッド12の側方(詳しくはプリントヘッド12のノズル列12a及びノズル列12aのインク吐出方向Dのいずれにも直交する方向)へのノズル列12aの傾斜角αを検出する。尚、垂直方向Vは、重力方向に一致する。
【0033】
次に、ハンディプリンタ1の基本動作を説明する。まず、利用者は、操作部13を操作して、画像メモリ15に記憶されている複数の画像のうちから印刷対象の1つの画像を選択し、この選択した画像を画像メモリ15から制御部11へと転送させる。制御部11は、画像メモリ15から画像を入力すると、この画像を制御部11に内蔵のビットマップメモリ11aに展開して記憶する。
【0034】
この後、利用者は、操作部13を操作して(印刷開始ボタンの押下)、画像の印刷開始を指示し、図2に示すようにハンディプリンタ1の本体1aを手動で印刷面に沿って順方向に移動走査する。制御部11は、操作部13の操作により画像の印刷開始が指示されると、移動検出部14により検出されたプリントヘッド12の移動量及び順方向の移動方向を取得し、プリントヘッド12の移動量及び順方向の移動方向を制御部11に内蔵の位置情報メモリ11bに記憶する。
【0035】
また、制御部11は、第1加速度センサ16により検出されたプリントヘッド12のノズル列12aの傾斜角αを入力する。
【0036】
ここで、基本動作においては、プリントヘッド12の移動方向が順方向であり、印刷面が水平面であって、第1加速度センサ16により検出された傾斜角αが「0」であるものとする。
【0037】
この場合、制御部11は、プリントヘッド12の移動量に応じてビットマップメモリ11aから画像を読み出しつつプリントヘッド12に出力し、プリントヘッド12による画像の印刷を進行させて行き、操作部13の操作により画像の印刷終了が指示されると(印刷開始ボタンの解放)、プリントヘッド12による画像の印刷を終了する。詳しくは、プリントヘッド12の移動(副走査方向の移動)に伴ってノズル列12aによる主走査ラインの記録を繰返しており、プリントヘッド12の移動量が各主走査ラインのピッチ分だけ増加する度に、主走査ラインの各画素をビットマップメモリ11aから読み出してプリントヘッド12に出力し、プリントヘッド12により主走査ラインの各画素を印刷する。これにより、ビットマップメモリ11a内の画像が印刷面に印刷される。
【0038】
例えば、図2に示すようにハンディプリンタ1の本体1aが手動で印刷面に沿って矢印方向Cに移動走査されて、本体1aに内蔵のプリントヘッド12により画像Gが印刷面に記録される。
【0039】
ところで、印刷面が水平面である場合は、ハンディプリンタ1の移動走査が容易であって、ハンディプリンタ1の移動走査を誤ることは少ないが、印刷面が垂直に近い非水平面であって、特に頭上でハンディプリンタ1を移動走査させる場合は、水平面の場合と比較すると、ハンディプリンタ1の移動走査が困難になり、図5(a)に示すようにハンディプリンタ1の本体1aが斜めになった状態で移動走査されることがある。このとき、仮にプリントヘッド12が垂直方向に向いているときと同様に、画像Gを記録すると、図5(a)に示すように画像Gが傾斜して印刷される。
【0040】
通常、非水平面に画像を印刷する場合は、画像の印刷進行方向が水平方向となり、プリントヘッド12を水平方向に移動させる必要がある。このとき、プリントヘッド12が垂直方向に向けられて、プリントヘッド12の側方への傾斜角が「0」である場合には、プリントヘッド12の移動に伴い、プリントヘッド12により画像が傾斜することなく非水平面に印刷される。ところが、ハンディプリンタ1の本体1aが斜めになって、プリントヘッド12の側方への傾斜角αが生じている場合には、プリントヘッド12により非水平面に印刷された画像が傾斜する。
【0041】
そこで、本実施形態では、非水平面に対する印刷に際し、第1加速度センサ16により、図4(a)、(b)に示すような垂直方向Vに対するプリントヘッド12の側方へのノズル列12aの傾斜角αを検出し、この傾斜角αに応じて画像Gを回転させて、この回転させた画像を非水平面に印刷し、画像の傾斜を補正している。この画像の傾斜の補正手順は、次の通りである。
【0042】
まず、利用者は、操作部13を操作して(印刷開始ボタンの押下)、画像の印刷開始を指示し、ハンディプリンタ1の本体1aを手動で印刷面に沿って順方向に移動走査させる。制御部11は、操作部13の操作により画像の印刷開始が指示されると、移動検出部14により検出されたプリントヘッド12の移動量及び順方向の移動方向を取得し、プリントヘッド12の移動量及び順方向の移動方向を制御部11に内蔵の位置情報メモリ11bに記憶する。
【0043】
また、制御部11では、第1加速度センサ16により検出されたプリントヘッド12の側方へのノズル列12aの傾斜角αを傾斜補正部11cに入力する。
【0044】
ここでは、プリントヘッド12の移動方向が順方向であり、プリントヘッド12のノズル列12aが垂直方向Vに対して傾斜角αで傾斜しているものとする。
【0045】
この場合、傾斜補正部11cは、傾斜角αを入力すると、ビットマップメモリ11a内の画像を傾斜角−αだけ回転させる。つまり、ビットマップメモリ11aにおいて、画像をプリントヘッド12のノズル列12aの傾斜方向とは逆方向に傾斜角αだけ回転させる。ビットマップメモリ11a内の画像の回転は、ビットマップメモリ11aに対する画像の読出しと再書込みにより行われる。
【0046】
こうしてビットマップメモリ11a内の画像を傾斜角−αだけ回転させた後、制御部11は、プリントヘッド12の移動量に応じてビットマップメモリ11aから画像を読み出しつつプリントヘッド12に出力し、プリントヘッド12による画像の印刷を進行させて行き、操作部13の操作により画像の印刷終了が指示されると(印刷開始ボタンの解放)、プリントヘッド12による画像の印刷を終了する。従って、傾斜角αだけ傾斜したプリントヘッド12のノズル列12aによりビットマップメモリ11a内の傾斜角−αだけ回転された画像が非水平面に印刷される。これにより、図5(b)に示すように画像Gが傾斜せず正立した状態で印刷される。
【0047】
一方、ハンディプリンタ1の通常の移動方向は、左から右への順方向に規定されており、ハンディプリンタ1が順方向に移動されると、ビットマップメモリ11a内の画像が該画像の左側から右側へと順次読み出されてプリントヘッド12に出力され、プリントヘッド12により画像が該画像の左側から右側へと印刷されて行く。ところが、図6(a)に示すようにハンディプリンタ1が右から左へと逆方向に移動されているにもかかわらず、プリントヘッド12により画像が該画像の左側から右側へと印刷されたならば、印刷された画像の左右が反転する。
【0048】
そこで、本実施形態では、ハンディプリンタ1が右から左へと逆方向に移動されたときには、ビットマップメモリ11a内の画像を該画像の右側から左側へと逆方向に順次読み出してプリントヘッド12に出力し、画像の左右反転を防止している。この画像の左右反転の防止手順は、次の通りである。
【0049】
まず、利用者は、操作部13を操作して(印刷開始ボタンの押下)、画像の印刷開始を指示し、ハンディプリンタ1の本体1aを手動で印刷面に沿って順方向に移動走査させる。制御部11は、操作部13の操作により画像の印刷開始が指示されると、移動検出部14により検出されたプリントヘッド12の移動量及び順方向の移動方向を取得し、プリントヘッド12の移動量及び順方向の移動方向を制御部11に内蔵の位置情報メモリ11bに記憶する。
【0050】
ここでは、プリントヘッド12の移動方向が逆方向であり、印刷面が水平面であって、第1加速度センサ16により検出された傾斜角αが「0」であるものとする。
【0051】
この場合、制御部11は、プリントヘッド12の移動方向を取得して、この移動方向が右から左への逆方向であると判定し、画像反転部11dを起動する。画像反転部11dは、ビットマップメモリ11a内の画像を該画像の右側から左側へと逆方向に順次読み出すための読出しアドレスを設定する。そして、制御部11は、プリントヘッド12の移動量に応じて、その読出しアドレスに従ってビットマップメモリ11a内の画像を該画像の右側から左側へと逆方向に順次読み出してプリントヘッド12に出力する。
【0052】
こうしてビットマップメモリ11a内の画像が該画像の右側から左側へと逆方向に順次読み出されてプリントヘッド12に出力されると、右から左への逆方向に移動されているプリントヘッド12により画像が該画像の右側から左側へと印刷され、図6(b)に示すように画像がその左右を反転されることなく印刷面に印刷される。そして、操作部13の操作により画像の印刷終了が指示されると(印刷開始ボタンの解放)、プリントヘッド12による画像の印刷が終了する。
【0053】
また、制御部11は、プリントヘッド12の移動方向を取得して、この移動方向が右から左への逆方向であると判定すると、報知部17を制御して、この判定結果を報知部17から報知する。これにより、利用者は、プリントヘッド12の移動方向が逆方向である旨を知ることができ、次回からの移動方向を順方向に変更することができる。尚、報知部17による報知は、プリントヘッド12の移動方向が順方向であるときにも行っても構わない。
【0054】
このように第1実施形態のハンディプリンタ1では、ハンディプリンタ1の本体1aが印刷面に沿って移動走査されると、移動検出部14によりプリントヘッド12の移動量及び順方向の移動方向が検出され、プリントヘッド12の移動量に応じてビットマップメモリ11aから画像が読み出されてプリントヘッド12に出力され、プリントヘッド12により画像が印刷面に印刷される。また、印刷面が垂直に近い非水平面である場合は、第1加速度センサ16により、垂直方向Vに対するプリントヘッド12の側方へのノズル列12aの傾斜角αが検出され、傾斜角αに応じてビットマップメモリ11a内の画像Gが回転されて、この回転された画像が非水平面に印刷され、画像の傾斜が補正される。更に、ハンディプリンタ1が右から左へと逆方向に移動されたときには、ビットマップメモリ11a内の画像が該画像の右側から左側へと逆方向に順次読み出されてプリントヘッド12に出力され、画像の左右反転が防止される。
【0055】
次に、本発明のハンディプリンタの第2実施形態を説明する。図7は、第2実施形態のハンディプリンタ1Aを示すブロック図である。
【0056】
第2実施形態のハンディプリンタ1Aは、第1実施形態のハンディプリンタ1を包含する構成となっており、第1実施形態のハンディプリンタ1の制御部11の代わりに制御部11Aを適用している。この制御部11Aは、ビットマップメモリ11a、位置情報メモリ11b、傾斜補正部11cの他に、画像分割部11e、印刷済み画像座標メモリ11f、及び重複領域演算部11gを備えている。
【0057】
画像分割部11eは、画像メモリ15からの画像がビットマップメモリ11aに記憶されると、この画像の幅がプリントヘッド12の印刷幅J(図7に示すノズル列12aの長さ)よりも広いか否かを判定し、画像の幅がプリントヘッド12の印刷幅Jよりも広くなければ(画像の幅が印刷幅J以下である)、ビットマップメモリ11a内の画像をそのまま維持する。この場合は、第1実施形態と同様に、プリントヘッド12の移動量に応じてビットマップメモリ11aから画像を読み出しつつプリントヘッド12に出力し、プリントヘッド12による画像の印刷を進行させて行く。また、プリントヘッド12のノズル列12aが傾斜角αで傾斜している場合は、ビットマップメモリ11a内の画像を傾斜角−αだけ回転させて、画像の傾斜を補正し、更にハンディプリンタ1が右から左へと逆方向に移動された場合は、ビットマップメモリ11a内の画像を該画像の右側から左側へと逆方向に順次読み出して、画像の左右反転を防止する。
【0058】
また、画像分割部11eは、ビットマップメモリ11a内の画像の幅がプリントヘッド12の印刷幅Jよりも広ければ、ビットマップメモリ11a内の画像を印刷幅J未満の幅で複数の画像部分に分割する。例えば、図8に示すように画像Gを印刷幅J未満の幅で3つの第1乃至第3画像部分g1〜g3に分割する。
【0059】
この場合は、ハンディプリンタ1を順方向に移動させるだけでは、第1乃至第3画像部分g1〜g3を印刷することができず、ハンディプリンタ1を順方向→逆方向→順方向と往復移動させて、第1乃至第3画像部分g1〜g3を順次印刷することになる。また、利用者は、操作部13の操作により画像の印刷開始を指示した(印刷開始ボタンの押下)後、順次印刷される各画像部分を見ながら、ハンディプリンタ1を往復移動させ、画像全体の印刷を確認してから、操作部13の操作により画像の印刷終了を指示して(印刷開始ボタンの解放)、ハンディプリンタ1の移動走査を終了する。
【0060】
ここで、制御部11Aは、操作部13の操作により画像の印刷開始が指示されると、移動検出部14により検出されたプリントヘッド12の移動量、順方向の移動方向、及び印刷進行方向を取得し、プリントヘッド12の移動量、順方向の移動方向、及び印刷進行方向に基づきプリントヘッド12の移動軌跡を求めて、このプリントヘッド12の移動軌跡を制御部11Aに内蔵の位置情報メモリ11bに記憶して行く。
【0061】
図9は、プリントヘッド12の移動軌跡を例示する座標系を示している。ここでは、操作部13の操作により画像の印刷開始が指示された時点で、プリントヘッド12の移動量、順方向又は逆方向の移動方向、及び印刷進行方向を初期化して、プリントヘッド12(ノズル列12aの中心12b)の位置を座標系の原点P(0,0)に設定し、引き続いて移動検出部14により検出されたプリントヘッド12の移動量、順方向又は逆方向の移動方向、及び印刷進行方向に応じてプリントヘッド12(ノズル列12aの中心12b)の原点からの第1乃至第3移動軌跡r1〜r3を順次求めて、第1乃至第3移動軌跡r1〜r3を位置情報メモリ11bに記憶して行く。
【0062】
第1移動軌跡r1は、原点P(0,0)から第1折返し点P1(x1、y1)までの移動軌跡であり、操作部13の操作により画像の印刷開始が指示された時点からプリントヘッド12の移動方向が逆方向に切替わる時点までのプリントヘッド12の移動量及び印刷進行方向に基づき求められる。また、第2移動軌跡r2は、第1折返し点P1(x1、y1)から第2折返し点P2(x2、y2)までの移動軌跡であり、プリントヘッド12の移動方向が逆方向に切替わった時点からその移動方向が順方向に再び切替わる時点までのプリントヘッド12の移動量及び印刷進行方向に基づき求められる。更に、第3移動軌跡r3は、第2折返し点P2(x2、y2)からの移動軌跡であり、プリントヘッド12の移動方向が順方向に再び切替わった時点から操作部13の操作により画像の印刷終了が指示されるまでのプリントヘッド12の移動量及び印刷進行方向に基づき求められる。
【0063】
また、制御部11Aは、第1移動軌跡r1に沿ってハンディプリンタ1Aが移動されるときに、プリントヘッド12の移動量に応じてビットマップメモリ11aから第1画像部分g1を読み出してプリントヘッド12に出力し、プリントヘッド12により第1画像部分g1を印刷させ、次の第2移動軌跡r2に沿ってハンディプリンタ1Aが移動されるときに、プリントヘッド12の移動量に応じてビットマップメモリ11aから第2画像部分g2を読み出してプリントヘッド12に出力し、プリントヘッド12により第2画像部分g2を印刷させ、最後に第3移動軌跡r3に沿ってハンディプリンタ1Aが移動されるときに、プリントヘッド12の移動量に応じてビットマップメモリ11aから第3画像部分g3を読み出してプリントヘッド12に出力し、プリントヘッド12により第3画像部分g3を印刷させる。
【0064】
ただし、第2移動軌跡r2に沿ってハンディプリンタ1Aが移動されるときには、ハンディプリンタ1Aが逆方向に移動される。このため、第2移動軌跡r2に沿っての移動に際しては、画像反転部11dによりビットマップメモリ11a内の第2画像部分g2を該第2画像部分g2の右側から左側へと逆方向に順次読み出すための読出しアドレスを設定し、ビットマップメモリ11a内の第2画像部分g2を該第2画像部分g2の右側から左側へと逆方向に順次読み出してプリントヘッド12に出力する。これにより、逆方向に移動されているプリントヘッド12により第2画像部分g2が該第2画像部分g2の右側から左側へと印刷され、図8に示すように第2画像部分g2がその左右を反転されることなく印刷面に印刷される。
【0065】
同時に、制御部11Aは、第1画像部分g1の出力開始時点及び出力終了時点に基づき、第1移動軌跡r1における第1画像部分g1の印刷起点s1及び印刷終点s2を求め、この第1画像部分g1の印刷起点s1及び印刷終点s2に準じて、第2移動軌跡r2における第2画像部分g2の印刷起点s1及び印刷終点s2、第3移動軌跡r3における第3画像部分g3の印刷起点s1及び印刷終点s2を設定し、これらの印刷起点s1及び印刷終点s2を印刷済み画像座標メモリ11fに記憶する。例えば、図9の座標系に示すように、第1移動軌跡r1における第1画像部分g1の印刷起点s1及び印刷終点s2に合わせて、印刷進行方向における第1乃至第3画像部分g1〜g3のずれが小さくなるように第2移動軌跡r2における第2画像部分g2の印刷起点s1及び印刷終点s2、第3移動軌跡r3における第3画像部分g3の印刷起点s1及び印刷終点s2を設定する。具体的には、印刷終点s2から折返し点までの距離と、この折返し点から次の印刷起点s1までの距離とが等しくなるように、第2画像部分g2以降の印刷起点s1を設定することが考えられる。これにより、第1乃至第3画像部分g1〜g3のずれが小さくなる。
【0066】
また、非水平面に対する印刷に際しては、第1加速度センサ16により、図4(a)、(b)に示すような垂直方向Vに対するプリントヘッド12の側方へのノズル列12aの傾斜角αを検出し、この傾斜角αに応じて画像Gを回転させて、この回転させた画像を非水平面に印刷し、画像の傾斜を補正する。この画像の傾斜の補正手順は、次の通りである。
【0067】
例えば、第1移動軌跡r1に沿っての移動に際し、プリントヘッド12のノズル列12aが垂直方向Vに対して傾斜角α1で傾斜しているものとすると、第1加速度センサ16により傾斜角α1が検出されて、傾斜補正部11cによりビットマップメモリ11a内の第1画像部分g1が傾斜角−α1だけ回転される。そして、プリントヘッド12の移動量に応じてビットマップメモリ11aからその回転された第1画像部分g1が読み出されてプリントヘッド12に出力され、プリントヘッド12により第1画像部分g1が印刷される。同様に、第2移動軌跡r2に沿っての移動に際し、プリントヘッド12のノズル列12aが垂直方向Vに対して傾斜角α2で傾斜しているものとすると、第1加速度センサ16により傾斜角α2が検出されて、ビットマップメモリ11a内の第2画像部分g2が傾斜角−α2だけ回転され、プリントヘッド12の移動量に応じてビットマップメモリ11aからその回転された第2画像部分g2が読み出されてプリントヘッド12に出力され、プリントヘッド12により第2画像部分g2が印刷され、更に第3移動軌跡r3に沿っての移動に際し、プリントヘッド12のノズル列12aが垂直方向Vに対して傾斜角α3で傾斜しているものとすると、ビットマップメモリ11a内の第3画像部分g3が傾斜角−α3だけ回転されて、プリントヘッド12によりその回転された第3画像部分g3が印刷される。これにより、図8に示すように第1乃至第3画像部分g1〜g3が傾斜せず正立した状態で印刷される。
【0068】
また、ハンディプリンタ1を往復移動させて、第1乃至第3画像部分g1〜g3を順次印刷する場合は、第1乃至第3画像部分g1〜g3の印刷範囲が重なることがある。例えば、図10に示すように第1乃至第3画像部分g1〜g3の印刷範囲が重なって、第1画像部分g1の印刷範囲に対する第2画像部分g2の印刷範囲の重複領域h1、及び第2画像部分g2の印刷範囲に対する第3画像部分g3の印刷範囲の重複領域h2が生じることがある。
【0069】
このため、第2画像部分g2の印刷のときには、第1画像部分g1の印刷範囲に対する第2画像部分g2の印刷範囲の重複領域h1を求めて、重複領域h1での第2画像部分g2の印刷を禁止し、また第3画像部分g3の印刷のときには、第2画像部分g2の印刷範囲に対する第3画像部分g3の印刷範囲の重複領域h2を求めて、重複領域h2での第3画像部分g3の印刷を禁止し、これにより第1乃至第3画像部分g1〜g3が部分的に重なって印刷されることを防止している。このための手順は、次の通りである。
【0070】
制御部11Aの重複領域演算部11gは、画像分割部11eにより分割されたビットマップメモリ11a内の第1乃至第3画像部分g1〜g3と、位置情報メモリ11b内の第1乃至第3移動軌跡r1〜r3と、印刷済み画像座標メモリ11f内の第1乃至第3画像部分g1〜g3の印刷起点s1と、第1乃至第3画像部分g1〜g3の傾斜角α1〜α3とに基づき、第1画像部分g1の印刷範囲に対する第2画像部分g2の印刷範囲の重複領域h1及び第2画像部分g2の印刷範囲に対する第3画像部分g3の印刷範囲の重複領域h2を求める。例えば、図9の座標系において、第1画像部分g1と、第1移動軌跡r1と、第1移動軌跡r1上の印刷起点s1と、傾斜角α1とに基づいて、第1画像部分g1の印刷範囲を求める。そして、第2移動軌跡r2を求めつつ、第2移動軌跡r2上の印刷起点s1を設定して、第1画像部分g1と同様に第2画像部分g2の印刷範囲を求め、第1画像部分g1の印刷範囲に対する第2画像部分g2の印刷範囲の重複領域が生じた場合には、この重複領域における第2画像部分g2の印刷を禁止する。引き続いて、第2画像部分g2の印刷が終了した後、第3移動軌跡r3を求めつつ、第3移動軌跡r3上の印刷起点s1を設定して、第1画像部分g1と同様に第3画像部分g3の印刷範囲を求め、第2画像部分g2の印刷範囲に対する第3画像部分g3の印刷範囲の重複領域が生じた場合には、この重複領域における第3画像部分g3の印刷を禁止する。これにより、第1乃至第3画像部分g1〜g3が部分的に重なって印刷されることが防止される。
【0071】
このように第2実施形態のハンディプリンタ1Aでは、ビットマップメモリ11a内の画像の幅がプリントヘッド12の印刷幅Jよりも広い場合に、画像が印刷幅J未満の幅で複数の画像部分に分割され、ハンディプリンタ1の往復移動に伴い、プリントヘッド12の各移動軌跡が求められて、各画像部分が順次印刷され、画像全体の印刷がなされる。また、各画像部分の印刷範囲の重複領域が求められて、重複領域における画像部分印刷が禁止される。勿論、ハンディプリンタ1が右から左へと逆方向に移動されたときには、ビットマップメモリ11a内の画像部分が該画像部分の右側から左側へと逆方向に順次読み出されてプリントヘッド12に出力され、画像部分の左右反転が防止される。また、印刷面が垂直に近い非水平面である場合は、第1加速度センサ16によりプリントヘッド12の側方へのノズル列12aの傾斜角αが検出され、傾斜角αに応じてビットマップメモリ11a内の画像部分が回転されて、この回転された画像部分が非水平面に印刷され、画像部分の傾斜が補正される。
【0072】
次に、本発明のハンディプリンタの第3実施形態を説明する。図11は、第3実施形態のハンディプリンタ1Bを示すブロック図である。
【0073】
第3実施形態のハンディプリンタ1Bは、第1実施形態のハンディプリンタ1及び第2実施形態のハンディプリンタ1Aを包含する構成となっており、第2実施形態のハンディプリンタ1Aのプリントヘッド12の代りにプリントヘッド12Aを適用している。このプリントヘッド12Aは、ノズル列12a、第1加速度センサ16の他に、第2加速度センサ21及びヘッド駆動部22を有している。
【0074】
第2加速度センサ21は、プリントヘッド12Aに内蔵され、水平方向に対するプリントヘッド12Aのノズル列12aからのインク吐出方向(ノズル列12aのインク吐出孔の向き)の傾斜角を検出する。
【0075】
また、ヘッド駆動部22は、プリントヘッド12Aに内蔵され、第2加速度センサ21により検出されたインク吐出方向の傾斜角に応じてノズル列12aからのインクの吐出力を調整する。例えば、ピエゾ式のプリントヘッドでは、ピエゾ素子の印加電圧の制御によりインクの吐出力を調整する。
【0076】
ここで、図12(a)に示すようにプリントヘッド12Aのノズル列12aからのインク吐出方向Dが水平方向Hであるときと比較すると、図12(b)に示すようにノズル列12aからのインク吐出方向Dが水平方向Hよりも下向きになったときには、重力の影響により、ノズル列12aからのインク吐出速度が増大し、また図12(c)に示すようにノズル列12aからのインク吐出方向Dが水平方向Hよりも上向きになったときには、重力の影響により、ノズル列12aからのインク吐出速度が低減する。このようなインク吐出速度の変化が放置されたならば、プリントヘッド12Aにより印刷される画像濃度のムラ等が生じ、画像品質が劣化する。
【0077】
そこで、本実施形態では、第2加速度センサ21により水平方向に対するノズル列12aからのインク吐出方向の傾斜角β(図12(a)〜(b)に示す)を検出し、この傾斜角βをヘッド駆動部22に出力する。ヘッド駆動部22は、水平方向に対するインク吐出方向の傾斜角βを入力すると、この傾斜角βに応じてプリントヘッド12Aを駆動制御して、ノズル列12aからのインクの吐出力を変更し、ノズル列12aからのインク吐出速度を一定に維持する。例えば、図12(b)に示すようにノズル列12aからのインク吐出方向Dが下向きであるときには、ノズル列12aからのインク吐出力を低減させ、また図12(c)に示すようにノズル列12aからのインク吐出方向Dが上向きであるときには、ノズル列12aからのインク吐出力を増大させ、これによりノズル列12aからのインク吐出速度を一定に維持する。この結果、プリントヘッド12Aにより印刷される画像濃度のムラ等の発生が防止され、画像品質が維持される。
【0078】
次に、図13のフローチャートを参照して、第3実施形態のハンディプリンタ1B(第1実施形態のハンディプリンタ1及び第2実施形態のハンディプリンタ1Aを包含する)の印刷制御の手順を説明する。
【0079】
まず、画像分割部11eによりビットマップメモリ11a内の画像の幅がプリントヘッド12Aの印刷幅Jよりも広いか否かが判定され(ステップS101)、画像の幅がプリントヘッド12Aの印刷幅Jよりも広くなければ(ステップS101で「No」)、ビットマップメモリ11a内の画像がそのまま維持される。また、画像の幅がプリントヘッド12Aの印刷幅Jよりも広ければ(ステップS101で「Yes」)、ビットマップメモリ11a内の画像が印刷幅J未満の幅で複数の画像部分に分割される(ステップS102)。
【0080】
そして、操作部13の操作により画像の印刷開始が指示されると(ステップS103で「Yes」)、操作部13の操作により画像の印刷終了が指示されるまで(ステップS104で「Yes」)、各ステップS105〜S115の処理が繰返される。各ステップS105〜S115の処理は、次の通りである。
【0081】
制御部11Aによりプリントヘッド12Aの移動方向が逆方向であるか否かが判定され(ステップS105)、移動方向が順方向であれば(ステップS105で「No」)、ビットマップメモリ11a内の画像もしくは各画像部分がそのまま維持される。また、移動方向が逆方向であれば(ステップS105で「Yes」)、画像反転部11dによりビットマップメモリ11a内の画像もしくは画像部分をその右側から左側へと逆方向に順次読み出すための読出しアドレスが設定される(ステップS106)。
【0082】
また、第1加速度センサ16によりプリントヘッド12Aのノズル列12aの傾斜角αが検出され(ステップS107)、傾斜補正部11cによりビットマップメモリ11a内の画像が傾斜角−αだけ回転される(ステップS108)。
【0083】
そして、ハンディプリンタ1Bが移動走査されると(ステップS109)、移動検出部14により検出されたプリントヘッド12Aの移動量、順方向の移動方向、及び印刷進行方向に基づきプリントヘッド12の移動軌跡が求められ、このプリントヘッド12の移動軌跡が位置情報メモリ11bに記憶される(ステップS110、S111)。
【0084】
このとき、制御部11Aにより、一定時間の間にプリントヘッド12の移動軌跡が更新されているか否かが判定され(ステップS112)、移動軌跡が更新されていなければ(ステップS112で「Yes」)、ステップS105に直ちに戻る。また、移動軌跡が更新されていれば(ステップS112で「No」)、プリントヘッド12Aの移動量に応じてビットマップメモリ11aから画像もしくは画像部分が読み出されてプリントヘッド12Aに出力され、プリントヘッド12Aにより画像もしくは画像部分が印刷面に印刷される(ステップS113)。このとき、第2加速度センサ21によりプリントヘッド12Aからのインク吐出方向の傾斜角が検出され、ヘッド駆動部22により傾斜角に応じたプリントヘッド12Aのインク吐出力の制御がなされて、プリントヘッド12Aからのインク吐出速度が一定に維持される(ステップS114)。また、重複領域演算部11gにより各画像部分の印刷範囲の重複領域が求められて、重複領域における画像部分の印刷が禁止される(ステップS115)。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと解される。
【符号の説明】
【0086】
1、1A、1B ハンディプリンタ
1a ハンディプリンタの本体
2 ローラ
11、11A 制御部
11a ビットマップメモリ(画像記憶部)
11b 位置情報メモリ
11c 傾斜補正部
11d 画像反転部
11e 画像分割部
11f 印刷済み画像座標メモリ
11g 重複領域演算部
12、12A プリントヘッド
12a ノズル列(ノズル)
13 操作部
14 移動検出部(移動量検出部、移動方向検出部)
15 画像メモリ
16 第1加速度センサ(ヘッド傾斜角検出部)
17 報知部
21 第2加速度センサ
22 ヘッド駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水平面に沿って移動走査されたハンディプリンタ本体の移動量を検出する移動量検出部と、前記非水平面に画像を印刷するプリントヘッドとを備え、前記移動量検出部により検出された移動量に応じて前記プリントヘッドの前記画像の印刷を進行させるハンディプリンタであって、
垂直方向に対する前記プリントヘッドの側方への傾斜角を検出するヘッド傾斜角検出部と、
前記ヘッド傾斜角検出部により検出された前記傾斜角に応じて前記プリントヘッドにより印刷される前記画像を傾斜させ、前記非水平面に印刷される前記画像の傾斜を補正する制御部とを備えたことを特徴とするハンディプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のハンディプリンタであって、
前記画像を記憶する画像記憶部を備え、
前記制御部は、前記ヘッド傾斜角検出部により検出された傾斜角に応じて前記画像記憶部内の前記画像を回転させ、前記プリントヘッドにより前記回転させた画像を前記非水平面に印刷させること特徴とするハンディプリンタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハンディプリンタであって、
前記非水平面に沿って移動走査された前記ハンディプリンタ本体の順方向又は逆方向の移動方向を検出する移動方向検出部と、
報知部とを備え、
前記制御部は、前記移動方向検出部により検出された前記ハンディプリンタ本体の移動方向が規定移動方向と一致するか否かを判定し、この判定結果を前記報知部により報知させること特徴とするハンディプリンタ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のハンディプリンタであって、
前記非水平面に沿って移動走査された前記ハンディプリンタ本体の順方向又は逆方向の移動方向を検出する移動方向検出部を備え、
前記制御部は、前記移動方向検出部により検出された前記ハンディプリンタ本体の移動方向が規定移動方向と一致するか否かを判定し、前記規定移動方向と一致しないと判定した場合に、前記プリントヘッドにより印刷される前記画像の左右を反転させること特徴とするハンディプリンタ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のハンディプリンタであって、
前記非水平面に沿って移動走査された前記ハンディプリンタ本体の順方向又は逆方向の移動方向を検出する移動方向検出部を備え、
前記制御部は、前記プリントヘッドの印刷幅よりも前記画像の幅が広い場合に、前記画像を前記プリントヘッドの印刷幅未満の幅で複数の画像部分に分割し、前記各画像部分を順次選択して、前記移動量検出部により検出された移動量に応じて前記プリントヘッドによる前記画像部分の印刷を進め、前記移動方向検出部により検出された前記ハンディプリンタ本体の移動方向が反転したときには、前記プリントヘッドによる次に選択された前記画像部分の印刷を開始することを特徴とするハンディプリンタ。
【請求項6】
請求項5に記載のハンディプリンタであって、
前記制御部は、前記非水平面に沿って移動走査された前記ハンディプリンタ本体の移動軌跡を求め、前記移動軌跡から前記各画像部分の印刷範囲を求めて、前記画像部分の印刷範囲と次に選択された前記画像部分の印刷範囲との重複領域を求め、前記重複領域での次に選択された前記画像部分の印刷を禁止することを特徴とするハンディプリンタ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のハンディプリンタであって、
前記プリントヘッドは、インクを噴出するノズルを有するインクジェット方式のものであり、
水平方向に対する前記プリントヘッドのノズルからのインク吐出方向の傾斜角を検出するノズル傾斜角検出部と、
前記インク吐出方向の傾斜角に応じて前記プリントヘッドのノズルからのインク吐出力を調節するヘッド駆動部とを設けたことを特徴とするハンディプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−14114(P2013−14114A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150106(P2011−150106)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】