説明

ハンドプレス工具

【課題】 ハンドルどうしの作用を枢支ピンの穿設箇所の設定と連結金具の設定とを変えることによって、使用目的に最適の工具を製造することができる構成としたハンドプレス工具の提供。
【解決手段】 左右一対の切断刃体1,1と、これらの刃体1,1に枢軸2,2を介して連結された左右一対の操作ハンドル3,3と、刃体1,1どうしを連結する連結ピン4とを備えた工具であって、操作ハンドル3,3が同一平面で突き合わせ状に配置され、その対向面31,31が直接接当し合うカム当たり面32,32とされ、前記枢軸2,2と他方の操作ハンドル3,3の枢支ピン6,6との間に、左右のハンドル3,3間を表裏面で連結する二つの連結金具7,7を、たすき掛け状に傾斜配置して、それぞれの上下両端部7a,7bを枢軸2,2と枢支ピン6,6とに連結させ、該枢支ピン6,6の位置設定により連結金具7,7のたすき掛け状姿勢を特定した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として片手で持って操作するハンドプレス工具であって、例えば、通信ケーブルを支承するために架設された螺旋鋼線の切断用カッタ工具、通電用被覆ケーブルの切断用カッタ工具、電線端部に装着する端子の加圧用圧着工具等に代表されるハンドプレス工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のハンドプレス工具は、図19に基本構造図を示したように、互いに対向させた左右一対の切断刃体01,01を連結板05を介して連結ピン04,04で連結し、その下端部分を、中心軸06で連結した左右一対の操作ハンドル03,03の上端部に、枢軸02,02を介して開閉可能に連結した構造としてある。
【0003】
そのため、枢軸02,02から中心軸06までの距離は常に一定であるため、操作ハンドル03,03が開いている時には、即ち、切断操作開始当初における枢軸02・中心軸06・枢軸02がなす角度∠Aが小さい時には、トグル機構が充分に働かず小さい力しか発生しない。逆に操作ハンドル03,03を閉じて角度∠Aが大きくなればなるほど、即ち、操作ハンドル03,03を閉じれば閉じるほど、トグルの力が効きだして次第に大きな切断力(または加圧力)を発生させることができるようになる。
【0004】
このような構造としたハンドプレス工具は、後記特許文献2に記載されていて公知になっているが、ハンドルの開き状態から閉止状態に移行するまでの間、切断刃体01,01に加えられる力はほぼ直線的に漸増することとなるので切断操作の最終箇所において切断力を最大とすることができるが、電線ケーブルの切断のように、切断開始当初から大きな切断力が必要な工具としては最適とはいえない。
【0005】
そこで、切断開始当初から大きな切断力が得られるようにするための手段として、後記特許文献1に記載のように、トグル機構に工夫を加えて実効ある構造とし、更に、ハンドルを長くし、長いハンドルの押圧力によって刃体の切断圧力を増大させるようにしたものも公知になっている。
【0006】
しかしながら、切断圧力を増大させるためにハンドルを長くすることは、刃体への加圧力を増大させることができるが、工具自体の重量が増大し、持ち運びに不便で、操作性に欠け、殊に、片手操作に不向きなものとなり、電柱等に昇って行う作業では、大きな難点となることは否めない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−143680号公報
【特許文献2】実用新案登録第3145602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この種のハンドプレス工具を大別すると、刃体どうしに加えられる圧力が、切断操作の初期から終了時までほぼ平均していることが求められる鋼線の切断用カッタ工具と、切断初期段階から中期段階までに大きな力を必要とし、切断終期段階では力が小さくてもよい通電用被覆ケーブルの切断用カッタ工具と、切断初期段階では大きな力を必要とせず、加圧の終期段階で最大の力を必要とする電線端部への端子の圧着工具とに大別することができる。
【0009】
本発明は、刃体の移動操作を司るハンドルの作用構造を全く新規なものとし、ハンドルどうしの作用を枢支ピンの穿設箇所の設定と連結金具の設定とを変えることによって、前記の使用目的に最適の工具を製造することができるようにした全く新規な構成のハンドプレス工具を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
該目的を達成するために、本発明では次のような技術的手段を講じた。即ち、本発明にいう請求項1に記載のハンドプレス工具の構成は、左右一対の切断刃体1,1と、これらの刃体1,1に枢軸2,2を介して連結された左右一対の操作ハンドル3,3と、前記一対の刃体1,1どうしを連結する連結ピン4とを備えた工具であって、操作ハンドル3,3の上部が同一平面において突き合わせ状に配置され、その対向面31,31が特定の円弧状とされて直接接当し合うカム当たり面32,32に形成され、かつ、前記枢軸2,2と他方の操作ハンドル3,3のそれぞれに別途形成した枢支ピン6,6との間に、左右のハンドル3,3間を表裏面で個別に連結する二つの連結金具7,7を、正面視で、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部7a,7bを前記枢軸2,2と枢支ピン6,6とに連結させ、該枢支ピン6,6の位置設定により前記連結金具7,7のたすき掛け状姿勢を特定してある構成としたものである。
【0011】
請求項2に記載の構成は、左右一対の切断刃体1,1と、これらの刃体1,1に枢軸2,2を介して連結された左右一対の操作ハンドル3,3と、前記一対の刃体1,1どうしを連結する連結ピン4とを備えた工具であって、操作ハンドル3,3の上部が同一平面において突き合わせ状に配置され、その対向面31,31が特定の円弧状とされて直接接当し合うカム当たり面32,32に形成され、かつ、前記枢軸2,2と他方の操作ハンドル3,3のそれぞれに別途形成した枢支ピン6,6との間に、左右のハンドル3,3間を表裏面で個別に連結する二つの連結金具7,7を、正面視で、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部7a,7bを前記枢軸2,2と枢支ピン6,6とに連結させ、該枢支ピン6,6の位置設定により前記連結金具7,7のたすき掛け状姿勢を特定してハンドル3,3どうしの角度変化に追随することなく、前記カム当たり面32,32がほぼ一定位置を維持するように設定してある構成としたものである。
【0012】
また、請求項3に記載の構成は、左右一対の切断刃体1,1と、これらの刃体1,1に枢軸2,2を介して連結された左右一対の操作ハンドル3,3と、前記一対の刃体1,1どうしを連結する連結ピン4とを備えた工具であって、操作ハンドル3,3の上部が同一平面において突き合わせ状に配置され、その対向面31,31が特定の円弧状とされて直接接当し合うカム当たり面32,32に形成され、かつ、前記枢軸2,2と他方の操作ハンドル3,3のそれぞれに別途形成した枢支ピン6,6との間に、左右のハンドル3,3間を表裏面で個別に連結する二つの連結金具7,7を、正面視で、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部7a,7bを前記枢軸2,2と枢支ピン6,6とに連結させ、該枢支ピン6,6の位置設定により前記連結金具7,7のたすき掛け状姿勢を特定してハンドル3,3どうしの角度変化に伴って、前記カム当たり面32,32が高位置aから次第に低位置bに移行するように設定してある構成としたものである。
【0013】
更に、請求項4に記載の構成は、左右一対の加圧体1,1と、これらの加圧体1,1に枢軸2,2を介して連結された左右一対の操作ハンドル3,3と、前記一対の加圧体1,1どうしを連結する連結ピン4とを備えた工具であって、操作ハンドル3,3の上部が同一平面において突き合わせ状に配置され、その対向面31,31が特定の円弧状とされて直接接当し合うカム当たり面32,32に形成され、かつ、前記枢軸2,2と他方の操作ハンドル3,3のそれぞれに別途形成した枢支ピン6,6との間に、左右のハンドル3,3間を表裏面で個別に連結する二つの連結金具7,7を、正面視で、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部7a,7bを前記枢軸2,2と枢支ピン6,6とに連結させ、該枢支ピン6,6の位置設定により前記連結金具7,7のたすき掛け状姿勢を特定してハンドル3,3どうしの角度変化に伴って、前記カム当たり面32,32が低位置bから次第に高位置aに移行するように設定してある構成としたものである。
【0014】
また、請求項5に記載の構成は、左右一対の切断刃体1,1と、これらの刃体1,1に枢軸2,2を介して連結された左右一対の操作ハンドル3,3と、前記一対の刃体1,1どうしを連結する連結ピン4とを備えた工具であって、操作ハンドル3,3の上部が同一平面において突き合わせ状に配置され、その対向面31,31が特定の円弧状とされて直接接当し合うカム当たり面32,32に形成され、かつ、前記枢軸2,2とは別に操作ハンドル3,3のそれぞれに支軸2A,2Aを形成し、該支軸2A,2Aと他方側の操作ハンドル3,3に別途形成した枢支ピン6,6との間に、左右のハンドル3,3間を表裏面で個別に連結する二つの連結金具7,7を、正面視で、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部7a,7bをこれらの支軸2A,2Aと枢支ピン6,6とに連結させ、これらの支軸2A,2Aと枢支ピン6,6との位置設定により前記連結金具7,7のたすき掛け状姿勢を特定してある構成としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明にいうところの請求項1のハンドプレス工具によれば、左右の操作ハンドルの上部を同一平面において突き合わせ状に配置し、その対向面を特定の円弧状として直接接当し合うカム当たり面に形成してあり、刃体と連結した一方の枢軸と他方の操作ハンドルとのそれぞれに別途形成した枢支ピンとの間に、左右のハンドル間を表裏面で個別に連結する二つの連結金具を、正面視で、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部を前記枢軸と枢支ピンとに連結させ、該枢支ピンの位置設定によって連結金具のたすき掛け状姿勢を特定するようにした構成としてあるので、このたすき掛け姿勢を所定姿勢とすることによって、工具の切断当初期から中間期を経て終端期までの間において、切断若しくは加圧対象物に最適な最大圧力を発揮させることができる工具を得ることができるという効果を有する。
【0016】
請求項2に記載のハンドプレス工具は、カム面を、同一平面において突き合わせ状に配置し、その対向面を特定の円弧状として直接接当し合うカム当たり面に形成し、前記二つの連結金具を、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部を枢軸と枢支ピンとに連結させた表裏二つの連結金具の枢支ピンの位置設定によって、たすき掛け状姿勢を特定したことにより、カムどうしの当たり面がハンドルどうしの角度変化に追随することなく、ほぼ一定位置を維持するように設定してあるので、刃体への切断圧力を、切断当初期から中間期を経て終端期までの間、ほぼ一定に維持させることができるので、切断操作の初期から終了時までほぼ平均した大きな力が求められる鋼線の切断用カッタ工具として最適の工具を得ることができるという効果を有する。
【0017】
請求項3に記載のハンドプレス工具は、カム面を、同一平面において突き合わせ状に配置し、その対向面を特定の円弧状として直接接当し合うカム当たり面に形成し、前記二つの連結金具を、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部を枢軸と枢支ピンとに連結させた表裏二つの連結金具の枢支ピンの位置設定によって、たすき掛け状姿勢を特定したことにより、ハンドルどうしの角度変化に伴って、カムどうしの当たり面が初期は高位置aにあり、次第に低位置bに移行するように設定してあるので、刃体への切断圧力を、切断初期段階から中期段階までに大きな力を必要とし、切断終期段階では力が小さくてもよい通電用被覆ケーブルの切断用カッタ工具として最適の工具を得ることができるという効果を有する。
【0018】
請求項4に記載のハンドプレス工具は、カム面を、同一平面において突き合わせ状に配置し、その対向面を特定の円弧状として直接接当し合うカム当たり面に形成し、前記二つの連結金具を、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部を枢軸と枢支ピンとに連結させた表裏二つの連結金具の枢支ピンの位置設定によって、たすき掛け状姿勢を特定したことにより、ハンドルどうしの角度変化に伴って、カムどうしの当たり面が当初は低位置bにあり、次第に高位置aに移行するように設定してあるので、加圧体への圧力を、初期段階では大きな力を必要とすることなく、終期段階で最大の大きな力を必要とする電線端部への端子の圧着工具として最適の工具を得ることができるという効果を有する。
【0019】
請求項5に記載のハンドプレス工具は、正面視で、たすき掛け状となるように、左右のハンドル間を表裏面で個別に連結する二つの連結金具の連結用支軸を、枢軸とは別に操作ハンドルのそれぞれに形成し、この別途形成した支軸と他方側の操作ハンドルに別途形成した枢支ピンとの間に、二つの連結金具を、たすき掛け状となるように配置して、それぞれの両端部を連結させるようにしたので、これらの支軸と枢支ピンとの位置関係を任意に選定でき、連結金具の長さや、たすき掛け状姿勢を最適に設定し易く、刃体の切断移動中における最大切断圧箇所の決定がし易く、最適の切断工具を得易いという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施例としての鋼線カッタ用工具を示す正面図。
【図2】同工具の刃体開き状態を示す正面図。
【図3】同工具の要部を示す正面図。
【図4】同工具の要部を説明する正面図。
【図5】同カッタの論理説明図。
【図6】同カッタの経時変化説明図。
【図7】第2実施例としてのケーブルカッタ用工具を示す正面図。
【図8】同カッタの要部を示す正面図。
【図9】同カッタの論理説明図。
【図10】同カッタの経時変化説明図。
【図11】第3実施例としての端子圧着用工具を示す正面図。
【図12】同工具のハンドル部を示す正面図。
【図13】同カッタの論理説明図。
【図14】同カッタの経時変化説明図。
【図15】第4実施例としての型材切断用工具を示す正面図。
【図16】同工具の刃体開き状態を示す正面図。
【図17】同工具の要部を示す正面図。
【図18】同工具の要部を説明する正面図。
【図19】従来構造のカッタの要部の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にいうハンドプレス工具のうち、殊に通信ケーブルを支承するために螺旋状に架設された鋼線を切断するのに適した鋼線切断用カッタの実施例を第1実施例とし、通電用被覆ケーブルの切断用カッタに適した工具の実施例を第2実施例とし、また、電線端部に装着する端子の圧着に適した工具の実施例を第3実施例として、それぞれ図面に基づいて説明する。
【0022】
図1乃至図6は本発明にいう鋼線カッタに関する実施例を第1実施例として示したものである。該鋼線カッタの基本構造は、図1〜4のように、刃部を直線状に形成した左右一対の切断刃体1,1を対向させて配置し、これらの刃体1,1の下端部に枢軸2,2によって左右一対の操作ハンドル3,3の上端部分とそれぞれ連結させ、前記刃体1,1どうしを連結ピン4,4を介して連結板5で連結させ、操作ハンドル3,3の下方には、図1,2のようにハンドル操作用の握り部3A,3Aをそれぞれ連接してある構造としたものである。
【0023】
而して、左右の操作ハンドル3,3は、その上部を同一平面上において突き合わせ状に配置させ、その対向面31,31どうしを図3〜5のように、特定の円弧状に形成して直接接当し合うようにし、カム当たり面32,32に形成してある。また、前記左右の枢軸2,2と他方の操作ハンドル3,3側のそれぞれに枢支ピン6,6の装着穴を形成し、これらの枢軸2,2と枢支ピン6,6装着穴との間に、左右のハンドル3,3間を表面側と裏面側とで個別に連結する二つの連結金具7,7を、正面視において、たすき掛け状となるように傾斜配置し、それぞれの上端部7aと下端部7bとを、これらの枢軸2,2と、前記枢支ピン6,6の穴に固着した枢支ピン6,6との間に連結してある。
【0024】
該実施例に示した鋼線切断用のカッタは、図5に示したように、カム当たり面32,32の円弧形状を図3,4及び図5に示した通りの曲面形状に設定し、枢支ピン6,6の位置を枢軸2,2の位置との関係で図1乃至3の形状に特定することにより、連結金具7,7の傾斜姿勢並びにたすき掛け状姿勢を図3のように特定して、ハンドル3,3どうしが切断作用開始位置(実線の位置)3aから作用位置(破線の位置)3bへと相対角度が変化し、枢軸2,2の位置が符号2aから2bの位置に変化し、その中心点とカム当たり面32,32とを結ぶ線が符号L1からL2に変化しても、このハンドル3,3どうしの角度変化に直ちに追随して上下方向に大きく変化することなく、カム当たり面32,32どうしがほぼ一定位置を維持するように設定したものである。
【0025】
この刃体1,1とハンドル3,3との相対関係を示す図として、初期開き状態、中間状態、閉止状態の3態様の変化を、図6として上下方向に経時的に図示した。ここに示した3態様の図は、刃体1,1の開き角を8°、4°、0°とし、ハンドル3,3の開き角を当初60°、刃体の閉止状態で30°としたものである。このようにして、刃体に加わる挟持圧を計測した。その計測結果は、後記表1において、ハンドルAとして示してある。また、同表1には、後述する第2実施例の工具をハンドルBとして、第3実施例の工具をハンドルCとして、それぞれの計測結果を示してある。
【0026】
このように設定することにより、ハンドル3,3の締め付けによる刃体1,1への切断圧力を切断開始時期から切断終了時期まで、ほぼ一定に維持させることができるようにして、常に同じような圧力を必要とする工具に適した工具とする。したがって、この実施例のように形成した工具は、切断開始当初から終了直前までほぼ均一な大きな切断力を必要とする鋼線切断用カッタに適したものとしてある。
【0027】
図7乃至図10は、左右一対の切断刃体1,1の刃部を凹入弧状に形成した通電用被覆ケーブルの切断用カッタとして使用するのに適した工具としての実施例を示したもので、これを第2実施例として以下に説明する。
【0028】
該実施例に示したケーブル切断用のカッタ工具は、前記第1実施例において示した左右一対の刃体1,1は、当該刃体1,1の上下方向中間部分を1本の連結ピン4で直接連結してある。また、左右のハンドル3,3間に架け渡して連結する表裏二つの連結金具7,7が、即ち、左右のハンドル3,3の表面側と裏面側とに個別に架け渡して、正面視において、たすき掛け状となるように傾斜配置する二つの連結金具7,7を、前記第1実施例において示した連結金具7に比して、図7に示したように、長尺のものとし、枢支ピン6,6の穴をハンドル3の幅方向の端近くに形成してある構造とし、それぞれの上端部7aと下端部7bとを、枢軸2,2と枢支ピン6,6との間に連結してある構造としたものである。
【0029】
而して、該実施例に示した工具は、前記第1実施例で同一平面上において突き合わせ状に配置した左右の操作ハンドル3,3の対向面31,31どうしの形状を、図8及び9に明示したように、前記第1実施例に示したハンドル3,3の対向面31,31どうしの形状よりも少し曲率の大きい弧状に形成したものとし、枢軸2,2と他方の操作ハンドル3,3のそれぞれに形成した枢支ピン6,6との間にハンドル3,3の表裏面でたすき掛け状となるように傾斜配置した表裏二つの連結金具7,7を特定して、ハンドル3,3どうしの相対姿勢が、図9のように、切断作用開始位置(実線の位置)3aから作用位置(破線の位置)3bへと相対角度が変化し、枢軸2,2の位置が符号2aの位置から2bの位置へと変化し、その中心点とカム当たり面32,32とを結ぶ線が、符号L3からL4に変化するハンドル3,3どうしの角度変化に伴って、カム当たり面32,32が当初の高位置aから次第に低位置bへと移行するように設定したものである。
【0030】
この刃体1,1とハンドル3,3との相対関係を示す図として、初期開き状態、中間状態、閉止状態の3態様の変化を、図10として上下方向に経時的に図示した。この工具に関する刃体とハンドルとの関係を計測した計測結果は、後記表1のハンドルB欄に示してある。
【0031】
このように設定することによって、カム当たり面32,32が高位置aから次第に低位置bへ、符号L3からL4のように下方へ移行することにより、刃体1,1への切断圧力は切断作用の後半では弱くなるが、切断の初期段階から少なくとも中期段階までは、刃体1,1への切断圧力を集中させることができる。
【0032】
したがって、このようにした工具は、切断初期段階から中期段階までに大きな力を必要とし、切断終期段階では切断圧力は小さくてもよい通電用被覆ケーブルの切断用カッタに最適の工具として使用することができる。
【0033】
図11乃至図14は、前記各実施例における切断刃体に変えて加圧体の形状に変えた左右一対の加圧体1,1の形状を、電線端子の圧着に適した凹入窪みと小突起とを形成してあるものとした圧着用のハンドプレス工具として使用するのに適した工具の実施例を第3実施例として以下に説明する。
【0034】
該実施例に示したハンドプレス工具は、前記第1実施例において示した左右のハンドル3,3間に架け渡して連結する連結金具7,7の長さを、前記第1実施例において示した連結金具7に比して、図11に示したように、短尺のものとし、枢支ピン6を設ける穴6aの位置を、図12に示した左側ハンドル3の一部を延長させて形成した小突起33に形成してある構造としたものである。
【0035】
即ち、該実施例に示した工具は、前記第1実施例において同一平面上で突き合わせ状に配置した左右の操作ハンドル3,3の対向面31,31どうしの形状を、図12及び13に示したように、一方の操作ハンドル3を、図12において左側のハンドル3を、対向面31の一部に小突起33を突出させてあるものとし、他方の、図12において右側のハンドル3の対向面31を、この小突起33を受け入れる小凹部34を有する形状とし、これらの小突起33と小凹部34とが常時嵌合しあって、その内奥部で相互に接当し合う形状としてある。
【0036】
また、前記各実施例のものと同様に、枢軸2,2と他方の操作ハンドル3,3のそれぞれに形成した枢支ピン6,6との間にハンドル3,3の表裏面でたすき掛け状となるように傾斜配置した図外の連結金具を特定して、ハンドル3,3どうしの相対姿勢が、図13に示したように、切断作用開始位置(実線の位置)3aから作用位置(破線の位置)3bへと相対角度が変化し、枢軸2,2の位置が符号2aの位置から2bの位置へと変化し、その中心点とカム当たり面32,32の前記小突起33と小凹部34との内奥部での接当部とを結ぶ線が、符号L5からL6に変化するハンドル3,3どうしの角度変化に伴って、小突起33と小凹部34との内奥部での接当部が当初の低位置bから次第に高位置aに移行するように設定したものである。
【0037】
この工具の加圧体1,1とハンドル3,3との相対関係を示す図として、初期開き状態と、中間状態及び閉止状態の3態様の変化を、図14として上下方向に経時的に示した。この工具に関する加圧体とハンドルとの関係を計測した計測結果は、後記表1のハンドルC欄に示してある。
【0038】
このように設定することによって、カム当たり面32,32どうしの接当面が、低位置bから次第に高位置aへ、符号L5からL6のように平面視では上方に向かって移行することにより、加圧体1,1への圧力は作用開始の当初から前半部にあっては強い力は出し難いが、終期段階において加圧体1,1への圧力を最大限に集中させることができる。
【0039】
したがって、このようにした工具は、加圧の初期段階から中期段階までには大きな力を必要とせず、終期段階では大きな加圧力を必要とする電線端子圧着用のハンドプレス工具として最適の工具である。
【0040】
以上の各実施例に示した各工具についての刃体とハンドルとの関係を計測した結果を次に表1として示す。この表1に示した計測結果によれば、トグル角θが大きいほど刃体への力を発生させ易いこと。ハンドル角βの変化量が大きいほど刃体への力を発生させ易いことが分かる。また、この表1の計測結果から、次のことを読み取ることができる。
ハンドルAの刃体への力の発生は:ほぼ一定=常時ほぼ同じ力を出したい時に有効
ハンドルBの刃体への力の発生は:大→小=最初に大きい力を出したい時に有効
ハンドルCの加圧体への力の発生は:小→大=最後に大きい力を出したい時に有効
【0041】
【表1】

【0042】
図15乃至図18は、側面視コの字形またはCチャンネル形に形成された屋内配置用の金属長尺材であって、例えば天井裏などに配置されて天井板の取り付け材などとして使用される建築用材で、多くは金属薄板の帯材を長手方向に曲げ加工して形成された長尺材を任意の長さに切断するのに適した刃体形状を備えた切断工具について、これを第4実施例として示したものである。言うまでもなく、この実施例に示した切断工具は、刃体部分の形状を除いては、前記各実施例に示した鋼線や電線ケーブル切断用等の工具について実施できるものである。以下にその構造を説明する。
【0043】
該第4実施例に示した工具は、一対の刃体1,1の形状を、これらの図において左側刃体1の刃形1aをコの字形に凹入した刃とし、右側刃体1の刃形1bを略コの字形に突出した刃としたものである。これら一対の刃体1,1は、当該刃体1,1の上下方向中間部分を1本の連結ピン4で直接連結してある。この点は、前記第2実施例に示した工具と同じ構造である。
【0044】
これらの刃体1,1の下端部は、一対の操作ハンドル3,3の上部にそれぞれ枢軸2,2で連結してある。また、操作ハンドル3,3は、図17,図18に示したように、前記各実施例の工具の場合と同様に、同一平面上で対向するようにして、突き合わせ状に配置し、その対向面31,31どうしの形状を、特定の円弧状に形成してある。
【0045】
また、該実施例の工具は、一対の前記操作ハンドル3,3のそれぞれに図18に示したように、支軸2A形成用の穴2hと枢支ピン6形成用の穴6hとを穿設し、これらの穿設穴2h,6hを利用して、一方の操作ハンドル3に形成した支軸形成用の穴2hと他方の操作ハンドル3に形成した枢支ピン形成用の穴6hとの間に、左右のハンドル3,3間を表裏面で個別に連結する二つの連結金具7,7を、図17に示したように、正面視で、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部7a,7bを支軸2A,2Aと枢支ピン6,6とによって連結させる構造としたものである。
【0046】
このようにして、これらの支軸2A,2Aと枢支ピン6,6との位置設定により、操作ハンドル3,3の表裏に配置した二つの連結金具7,7のたすき掛け状姿勢を特定して、一対の操作ハンドル3,3の前記対向面31,31どうしのカム当たり面32の当たり箇所とその移動量等を設定する構造としたものである。
【0047】
この第4実施例に示したコの字形材切断用工具は、左右一対の切断刃体1,1の形状を例えば電線切断用刃体に変えると、換言すると、該実施例の一対の切断刃体1,1を前記第2実施例に示した電線切断用刃体1,1と取り換えると、電線切断用の工具として使用することができる。また、支軸2A,2Aと枢支ピン6,6との位置設定を変更することによって、前記第3実施例において示した端子圧着用の加圧体に変更して使用することもできるものである。
【0048】
以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に示した形態のみに特定されるものではなく、上記発明の目的を達成し、上記の効果を有し、請求の範囲の構成を逸脱しない範囲内で適宜改変して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明にいうところのハンドプレス工具は、硬質の線材や被覆電線ケーブルを切断する工具として、また、電線端への端子の圧着取り付けを行う工具やその他の材料の切断用工具として最適であるので市場において大いに利用されるものと思われる。
【符号の説明】
【0050】
1 切断刃体(加圧体)
2 枢軸
2A 支軸
3 ハンドル
4 連結ピン
5 連結板
6 枢支ピン
7 連結金具
7a 上端部
7b 下端部
31 対向面
32 カム当たり面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の切断刃体(1,1)と、これらの刃体(1,1)に枢軸(2,2)を介して連結された左右一対の操作ハンドル(3,3)と、前記一対の刃体(1,1)どうしを連結する連結ピン(4)とを備えた工具であって、
操作ハンドル(3,3)の上部が同一平面において突き合わせ状に配置され、その対向面(31,31)が特定の円弧状とされて直接接当し合うカム当たり面(32,32)に形成され、かつ、
前記枢軸(2,2)と他方の操作ハンドル(3,3)のそれぞれに別途形成した枢支ピン(6,6)との間に、左右のハンドル(3,3)間を表裏面で個別に連結する二つの連結金具(7,7)を、正面視で、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部(7a,7b)を前記枢軸(2,2)と枢支ピン(6,6)とに連結させ、
該枢支ピン(6,6)の位置設定により前記連結金具(7,7)のたすき掛け状姿勢を特定してある構造としたハンドプレス工具。
【請求項2】
左右一対の切断刃体(1,1)と、これらの刃体(1,1)に枢軸(2,2)を介して連結された左右一対の操作ハンドル(3,3)と、前記一対の刃体(1,1)どうしを連結する連結ピン(4)とを備えた工具であって、
操作ハンドル(3,3)の上部が同一平面において突き合わせ状に配置され、その対向面(31,31)が特定の円弧状とされて直接接当し合うカム当たり面(32,32)に形成され、かつ、
前記枢軸(2,2)と他方の操作ハンドル(3,3)のそれぞれに別途形成した枢支ピン(6,6)との間に、左右のハンドル(3,3)間を表裏面で個別に連結する二つの連結金具(7,7)を、正面視で、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部(7a,7b)を前記枢軸(2,2)と枢支ピン(6,6)とに連結させ、
該枢支ピン(6,6)の位置設定により前記連結金具(7,7)のたすき掛け状姿勢を特定してハンドル(3,3)どうしの角度変化に追随することなく、前記カム当たり面(32,32)がほぼ一定位置を維持するように設定してある鋼線切断用の請求項1に記載のハンドプレス工具。
【請求項3】
左右一対の切断刃体(1,1)と、これらの刃体(1,1)に枢軸(2,2)を介して連結された左右一対の操作ハンドル(3,3)と、前記一対の刃体(1,1)どうしを連結する連結ピン(4)とを備えた工具であって、
操作ハンドル(3,3)の上部が同一平面において突き合わせ状に配置され、その対向面(31,31)が特定の円弧状とされて直接接当し合うカム当たり面(32,32)に形成され、かつ、
前記枢軸(2,2)と他方の操作ハンドル(3,3)のそれぞれに別途形成した枢支ピン(6,6)との間に、左右のハンドル(3,3)間を表裏面で個別に連結する二つの連結金具(7,7)を、正面視で、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部(7a,7b)を前記枢軸(2,2)と枢支ピン(6,6)とに連結させ、
該枢支ピン(6,6)の位置設定により前記連結金具(7,7)のたすき掛け状姿勢を特定してハンドル(3,3)どうしの角度変化に伴って、前記カム当たり面(32,32)が高位置aから次第に低位置(b)に移行するように設定してある通電ケーブル切断用の請求項1に記載のハンドプレス工具。
【請求項4】
左右一対の加圧体(1,1)と、これらの加圧体(1,1)に枢軸(2,2)を介して連結された左右一対の操作ハンドル(3,3)と、前記一対の加圧体(1,1)どうしを連結する連結ピン(4)とを備えた工具であって、
操作ハンドル(3,3)の上部が同一平面において突き合わせ状に配置され、その対向面(31,31)が特定の円弧状とされて直接接当し合うカム当たり面(32,32)に形成され、かつ、
前記枢軸(2,2)と他方の操作ハンドル(3,3)のそれぞれに別途形成した枢支ピン(6,6)との間に、左右のハンドル(3,3)間を表裏面で個別に連結する二つの連結金具(7,7)を、正面視で、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部(7a,7b)を前記枢軸(2,2)と枢支ピン(6,6)とに連結させ、
該枢支ピン(6,6)の位置設定により前記連結金具(7,7)のたすき掛け状姿勢を特定してハンドル(3,3)どうしの角度変化に伴って、前記カム当たり面(32,32)が低位置bから次第に高位置(a)に移行するように設定してある電線端子圧着用の請求項1に記載のハンドプレス工具。
【請求項5】
左右一対の切断刃体(1,1)と、これらの刃体(1,1)に枢軸(2,2)を介して連結された左右一対の操作ハンドル(3,3)と、前記一対の刃体(1,1)どうしを連結する連結ピン(4)とを備えた工具であって、
操作ハンドル(3,3)の上部が同一平面において突き合わせ状に配置され、その対向面(31,31)が特定の円弧状とされて直接接当し合うカム当たり面(32,32)に形成され、かつ、
前記枢軸(2,2)とは別に操作ハンドル(3,3)のそれぞれに支軸(2A,2A)を形成し、該支軸(2A,2A)と他方側の操作ハンドル(3,3)に別途形成した枢支ピン(6,6)との間に、左右のハンドル(3,3)間を表裏面で個別に連結する二つの連結金具(7,7)を、正面視で、たすき掛け状となるように傾斜配置して、それぞれの上下両端部(7a,7b)をこれらの支軸(2A,2A)と枢支ピン(6,6)とに連結させ、
これらの支軸(2A,2A)と枢支ピン(6,6)との位置設定により前記連結金具(7,7)のたすき掛け状姿勢を特定してある構造としたハンドプレス工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−130589(P2012−130589A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286999(P2010−286999)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(391024009)ミノル工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】