説明

ハンドルバー型乗物の操舵用ブラケット及びハンドルバー型乗物

【課題】ハンドルバーの回動操作時に、ハンドルバーから延びるブレーキ液管、クラッチレバー等の長尺部材が大きく移動したり、曲げ応力が長尺部材の固定箇所に集中したりするのを防ぎ、快適な操作性、操作力の伝達性能及び耐久性を保ち、かつ、長尺部材を簡単に配設できるようにする。
【解決手段】操舵軸5に連結され、ハンドルバー及び前記操舵軸5と共に左右に回動する乗物の操舵用ブラケットに関し、左右のフロントフォーク1を連結して操舵軸5と共に回転する操舵用のアッパーブラケット2に適用する。前記ハンドルバーから延びるブレーキ液管18、クラッチケーブル24あるいはリード線ハーネス20等の長尺部材の外方を囲み、前記長尺部材の移動を所定の規制範囲S内に規制する規制ガイド部40、40を前記操舵用のアッパーブラケット2に一体成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルバー型乗物の操舵用ブラケット及びハンドルバー型乗物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドルバー型乗物としては、自動二輪車、騎乗型四輪走行車、騎乗型三輪走行車及びパーソナルウォータークラフト(小型水上滑走艇)等があり、それらの乗物は、通常、操舵軸に連結されてハンドルバー及び操舵軸と共に左右に回動する操舵用ブラケットを備えている。
【0003】
前記ハンドルバー型乗物のハンドルバーには、一般に、ブレーキレバー、クラッチレバー及びスロットルグリップ(又はスロットルレバー)、等の各種運転用の手動操作具並びにウインカ等のスイッチ類が設けられており、それら手動操作具及びスイッチ類には、操作力伝達用のブレーキ液管、ケーブル、ワイヤあるいは電気信号伝達用のリード線(又はリード線ハーネス)等の長尺部材が接続されている。そして、前記ブレーキ液管等の長尺部材は、ハンドルバー上から、乗物の各所に配設された装備品、たとえばABSユニット、エンジン、ECU、ブレーキキャリパー、バッテリ等まで延設され、対応する装備品にそれぞれ接続されている。
【0004】
特許文献1に記載されている自動二輪車では、前記各長尺部材は、車体フレームのヘッドパイプや、左右のフロントフォークを連結するアッパーブラケットに、クランプ部材により固定されている。そして、長尺部材による操作力及び信号の伝達性能及び耐久性を維持するために、一定以上の大きな曲率半径で湾曲させ、それにより、操舵時における長尺部材の折れ等を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−52526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、ヘッドパイプに長尺部材の途中部分を固定する構造では、ヘッドパイプ上の固定箇所からハンドルバー上の固定箇所までの長尺部材のスパンが長くなり、ハンドルバーの回動操作時、長尺部材が大きく変形すると共にランダムな方向にも大きく移動し、快適な操作性が損なわれ、また、フロントフォーク等に当接して、長尺部材に傷が付く可能性もある。
【0007】
一方、長尺部材をアッパーブラケット等の操舵用ブラケットに固定してしまう構造では、ハンドルバーの回動操作時、長尺部材の移動は制限されるが、長尺部材の操舵用ブラケットへの固定箇所近傍に曲げ応力や引っ張り応力が集中し、それにより、長尺部材の局部的な疲労を速め、操作力の伝達性能等が低下する可能性がある。また、固定用の部品点数が多くなると共に、固定作業にも手間がかかる。
【0008】
[発明の目的]
本発明の目的は、ハンドルバー型乗物において、ハンドルバーの回動操作時に、ハンドルバーから延びるブレーキ液管、クラッチレバー等の長尺部材が大きく移動したり、曲げ応力が長尺部材の固定箇所に集中したりするのを防ぎ、それにより快適な操作性、操作力の伝達性能及び耐久性を保ち、かつ、長尺部材を簡単に配設できようにすることである。また、長尺部材支持用の部品点数を削減することも、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、操舵軸に連結され、ハンドルバー及び前記操舵軸と共に左右に回動するハンドルバー型乗物の操舵用ブラケットにおいて、前記ハンドルバーから延びる長尺部材の外方を囲み、前記長尺部材の移動を所定の規制範囲内に規制する規制ガイド部を、前記操舵用ブラケットに一体成形している。
【0010】
上記操舵用ブラケットにおいて、好ましくは、次の構成を採用することができる。
【0011】
(a)前記規制ガイド部は、前記操舵用ブラケットの前側に形成されている。
【0012】
(b)前記規制ガイド部は、左右一対形成されている。
【0013】
(c)前記規制ガイド部は、前記操舵用ブラケットの左右方向の中央寄りに形成されている。
【0014】
(d)前記操作用ブラケットには、イグニッションキー用のシリンダ錠を保持するシリンダ保持部が一体に形成され、該シリンダ保持部に、前記規制ガイド部が一体に形成されている。
【0015】
(e)前記操舵用ブラケットは、金型鋳造加工時に生じるパーティングラインが、上端及び下端以外の位置に形成されている。
【0016】
また、本発明は、上記いずれかの構成を備えたハンドルバー型の乗物も提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、(1)操舵時、ハンドルバー及び操舵用ブラケットの左右の回動に伴う長尺部材の移動及び変形を、操舵用ブラケットに一体成形した規制ガイド部により所定の規制範囲内に規制するので、長尺部材が大きく変形したり、ランダムな方向に大きく移動したりするのを防ぎ、それにより、快適な操舵性を維持できる。
【0018】
(2)また、各長尺部材は、規制ガイド部にクランプ等では固定されておらず、規制範囲内では水平方向及び垂直方向に遊動可能であるので、規制ガイド部において応力集中や大きな曲げ荷重が生じることはなく、応力集中や曲げ荷重による長尺部材の折れ曲がり、あるいは損傷を防止できる。
【0019】
(3)さらに操舵用ブラケットの鋳造成形時に、規制ガイド部も同時に形成できるので、製造工程及び部品点数の削減、並びに組立作業の簡略化を達成できる。
【0020】
(4)上記構成(a)によると、操舵用ブラケットの前側は、後方よりも長尺部材の配置スペースを確保し易いので、長尺部材の配置が容易で、組み付けも簡単である。
【0021】
(5)上記構成(b)によると、前記規制ガイド部は左右一対形成されているので、ハンドルバーの左右のグリップ近傍に設けられた各操作部からの長尺部材を、それぞれ対応する側の規制ガイド部で規制することができ、それにより、長尺部材の配線あるいは配管を短くかつ単純化でき、配管作業も容易になる。
【0022】
(6)上記構成(c)によると、前記規制ガイド部は、操舵時の移動量が少ない左右方向中央寄りに形成されているので、規制される移動範囲を狭くして、長尺部材の動き自体を小さくすることができる。
【0023】
(7)上記構成(d)によると、シリンダ保持部を規制ガイド部の一部として利用できるので、規制ガイド部を形成することによる操舵用ブラケット全体の重量増加を抑制できると共に、操舵用ブラケットの材料費も節約できる。また、操舵用ブラケットが無駄に大形化するのを抑制することができる。
【0024】
(8)上記構成(e)によると、金型鋳造時に生じるパーティングラインが、上端及び下端以外の位置に形成されているので、操舵時、長尺部材がパーティングラインに引掛かかるのを防ぎ、規制範囲内を円滑に長尺部材が移動できる。
【0025】
(9)上記いずれかの構成を備えたハンドルバー型の乗物においても、上記各効果と同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る操舵用ブラケット(アッパーブラケット)を備えた自動二輪車のハンドル装置の正面図である。
【図2】図1のハンドル装置を左側の後上方から見た斜視図である。
【図3】図1のハンドル装置の左側面図である。
【図4】図1の操舵用ブラケット(アッパーブラケット)の平面図である。
【図5】図4のV-V断面拡大図である。
【図6】本発明にかかる操舵用ブラケットの変形例を示す平面図である。
【図7】本発明にかかる操舵用ブラケットの変形例を示す平面図である。
【図8】本発明にかかる操舵用ブラケットの変形例を示す平面図である。
【図9】本発明にかかる操舵用ブラケットの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明にかかる操舵用のアッパーブラケットを備えた自動二輪車のハンドル装置の正面図、図2は左側後上方から見た斜視図、図3は左側面図、図4は操舵用ブラケットの平面図であり、これらの図面に基づいて、本発明の一実施の形態を説明する。なお、説明の都合上、ライダーから見た左右方向を、自動二輪車及びその付属機器の左右方向として、説明する。
【0028】
図1において、前輪(図示せず)支持用の左右一対のフロントフォーク1は、上端部が操舵用のアッパーブラケット2及びロワーブラケット3により連結されており、アッパーブラケット2及びロワーブラケット3の左右方向の中央部は操舵軸5に連結され、操舵軸5は、車体のメインフレーム(図示せず)の前端部に形成されたヘッドパイプ6に回動自在に支持されている。上記アッパーブラケット2及びロワーブラケット3が、本発明における操舵用ブラケットに相当する。
【0029】
アッパーブラケット2の上面には、該上面から一定高さまで上方に突出する左右一対のハンドルバー固定台7が固定され、該ハンドルバー固定台7の上に、左右方向に延びるハンドルバー10がクランプ部材9により固定されている。
【0030】
ハンドルバー10の右端部(図1上では左側の端部)には、スロットルグリップ11、前輪制動用のブレーキレバー12及び各種スイッチ用のスイッチハウジング13が設けられると共に、前記ブレーキレバー12に連動する前輪制動用マスターシリンダ15が設けられている。該前輪制動用マスターシリンダ15には前輪制動用ブレーキ液管18が接続され、スロットルグリップ11には操作力伝達用の一対のスロットルケーブル19が連結され、スイッチハウジング13には、各スイッチ用リード線をまとめたリード線ハーネス20が接続されている。
【0031】
ハンドルバー10の左端部(図1上では右側の端部)には、左グリップ21、クラッチレバー22及び各種スイッチ用のスイッチハウジング23が設けられ、クラッチレバー22にはクラッチ操作力を伝達するためのクラッチケーブル24が接続され、スイッチハウジング23にはリード線ハーネス25が接続されている。
【0032】
図4において、アッパーブラケット2は左右方向に細長く形成れており、左右両端部にはフロントフォーク1を固定するためのクランプ部31が形成され、両クランプ部31の左右方向中央側には左右一対のハンドルバー固定座32が形成され、左右方向中央部の前端には、円弧状に前方に突出するイグニッションキー用のシリンダ保持部33が形成されている。該シリンダ保持部33に形成された保持孔内には、イグニッションキー用のシリンダ錠35が取り付けられている。シリンダ保持部33の外周面には、径方向の外方に突出するリブ33aがシリンダ保持部33と一体に形成されており、該リブ33aは、前記各固定座32の前端を経て左右のクランプ部31まで左右に延設されている。
【0033】
そして、シリンダ保持部33の前端部近傍の左右側面に、左右に延びる一対の規制ガイド部40がアッパーブラケット2と一体に形成されている。
【0034】
左右の規制ガイド部40は、平面視で略L字状に形成されており、シリンダ保持部33の前端部の左右両側面から左右方向外方に延びる第1アーム部41と、各第1アーム部41の左右方向外方端から略後方に折れ曲がる第2アーム部42とを一体に備えている。
【0035】
各第2アーム部42の後端は、各クランプ部31の前端から所定距離前方に位置しており、これにより、各第2アーム部42の後端と各クランプ部31の前端との間にそれぞれ開口部46を形成している。さらに、各第2アーム部42の後端には、左右方向の中央側に突出する係止突起43がそれぞれ形成されている。
【0036】
左右一対の規制ガイド部40、シリンダ保持部33の左右側壁(リブ33a)及びアッパーブラケット2の前端(リブ33a)で所定面積の領域を取り囲むことにより、アッパーブラケット2の前側に、前記ブレーキ液管18等の長尺部材の移動を規制するための左右一対の規制範囲Sを画定している。
【0037】
前記第1アーム部41の後端面41aは、左右方向の外方に向かってそれぞれ僅かに前方に傾斜している。また、第2アーム部42の左右方向の内面42aは、後方に向かって左右方向の外方に傾斜している。
【0038】
さらに、図1及び図3に示すように、各第1アーム部41は、左右方向の中央側から外方に向かって下方に傾斜している。
【0039】
図4において、左側の規制範囲S内には、左グリップ21(図1)の近傍から左右方向の中央側に延びるクラッチケーブル24及びリード線ハーネス25が、上方から下方に通過している。クラッチケーブル24は、規制ガイド部40の規制範囲Sを通過した後、図示しないが、エンジンのクラッチ部分まで延び、リード線ハーネス25は、バッテリあるいはECU(エンジンコントロールユニット)まで延びている。
【0040】
右側の規制範囲S内には、スロットルグリップ11(図1)の近傍から左右方向の中央側に延びる前輪制動用ブレーキ液管18,一対のスロットルケーブル19及びリード線ハーネス20が上方から下方に通過している。ブレーキ液管18は、規制ガイド部40の規制範囲Sを通過した後、図示しないが、車輌の前後方向中央部付近に配置されたABSユニットまで延び、スロットルケーブル19はエンジンのスロットルまで延び、リード線ハーネス20はECUまで延びている。
【0041】
図2において、左右の規制範囲Sを通過するブレーキ液管18,スロットルケーブル19,リード線ハーネス20,25及びクラッチケーブル24は、略水平方向の移動が各規制範囲S内に規制されるが、略上下方向の移動は自由である。
【0042】
前記左右のスイッチ用ハウジング13,23に設けられるスイッチとしては、ウインカスイッチ、ヘッドランプの高低切換スイッチ、ホーンスイッチ、運転モード切換スイッチ及びメータ表示切り替えスイッチ等、各種スイッチがある。
【0043】
図3において、アッパーブラケット2は、金型鋳造により成形された鋳造物であり、上下の型の合わせ面で生じるパーティングラインL1が、アッパーブラケット2の上端角部及び下端角部のいずれにも生じないように成形されている。具体的には、図5に示すように、規制ガイド部40の第1アーム部41の後端面41aにおいて、上端角部41bと下端角部41cとの上下方向中間部にパーティングラインL1が生じるように、金型鋳造成形されている。
【0044】
[実施の形態の作用]
(1)図4において、車輌組立時には、左側規制ガイド部40等で囲まれた左側規制範囲Sには、クラッチケーブル24及び左側リード線ハーネス25が挿通され、右側規制ガイド部40等で囲まれた右側規制範囲Sには、前輪制動用ブレーキ液管18,スロットルケーブル19及び右側リード線ハーネス20が挿通される。この場合、各長尺部材は、開口部46を通して規制範囲S内に収納することができるが、開口部46を利用せずに、上方から下方に挿通させることもできる。
【0045】
(2)車輌走行中あるいは車輌停止中、ハンドルバー10を、たとえば右方に回動すると、ハンドルバー10の右半部分が後方に移動すると共に左半部分が前方に移動し、それに伴って、ブレーキ液管18等の各長尺部材も規制範囲S内を移動する。その場合、右側のブレーキ液管18、スロットルケーブル19及び右側リード線ハーネス20は、アッパーブラケット2に対して相対的に左前方に離れるように移動することになるが、右側規制ガイド部40の第1アーム部41及びシリンダ保持部33の右側面によりそれらの移動が右側規制範囲S内に確実に制限される。
【0046】
一方、左側のクラッチケーブル24及び左側リード線ハーネス25は、アッパーブラケット2に対して相対的に右後方に近づくように変形するが、第2アーム部42の突起43及びアッパーブラケット2の前端によりそれらの移動が左側規制範囲S内に規制される。
【0047】
(3)ハンドルバー10を左方に回動した時には、各部の動きが前記右方に回動した時と左右が逆になるだけであり、基本的な動きは同様である。
【0048】
[実施の形態の効果]
(1)左右の操舵時、ハンドルバー10及びアッパーブラケット2の左右の回動に伴う長尺部材の移動及び変形を、アッパーブラケット2に一体成形した規制ガイド部40により所定の規制範囲S内に規制するので、長尺部材が大きく変形したり、ランダムな方向に大きく移動したりするのを防ぎ、それにより、快適な操舵性を維持できる。
【0049】
(2)ブレーキ液管18等の各長尺部材は、規制ガイド部40にクランプ等では固定されておらず、規制範囲S内では水平方向及び垂直方向に遊動可能であるので、規制ガイド部40において応力集中や大きな曲げ荷重が生じることはなく、応力集中や曲げ荷重による長尺部材の折れ曲がり、あるいは損傷を防止できる。
【0050】
(3)ハンドルバー10から延びる長尺部材の移動を規制する各規制ガイド部40を、アッパーブラケット2と一体成形しているので、アッパーブラケット2の鋳造成形時に規制ガイド部40を同時に形成でき、部品点数の削減及び組立作業の簡略化を達成できる。また、各規制ガイド部40を、アッパーブラケット2と一体成形していることにより、規制ガイド部40の上下方向の厚みを大きくすることができ、規制ガイド部40の強度を高めることができる。
【0051】
(4)規制ガイド部40を、アッパーブラケット2の前側に形成しているので、アッパーブラケット2の後側に形成する場合に比べ、長尺部材の配置作業が容易に行える。また、規制ガイド部40を、アッパーブラケット2の前側に形成していることにより、車両に搭乗した運転者から見て、ハーネス25等の長尺部材がハンドルバー10で隠されることにより、長尺部材が目立ち難く、操作部近傍の美観を維持することができる。
【0052】
(5)規制範囲S内と規制範囲S外とを連通する開口部46を形成しているので、クラッチケーブル24等の各長尺部材を規制範囲S内に挿通する場合、開口部46を利用して、車輌側方から簡単に組み付けることができる。
【0053】
(6)各規制ガイド部40の第1アーム部41は、左右方向の中央側から外方に向かって下方に傾斜するように形成されているので、水平に形成される場合に比べ、規制範囲Sの面積を大きく取ることができ、組立時、各長尺部材を所望位置及び方向に向けて、無理なく配置することが可能となる。
【0054】
(7)規制範囲Sを取り囲む規制ガイド部40等のパーティションラインL1が、上下方向の中央部に位置するように、アッパーブラケット2を金型鋳造成形しているので、上下端角部41b、41cにパーティションラインが生じている場合に比べ、長尺部材の引っ掛かりを無くし、長尺部材の外周面に傷が付くのを防ぐことができる。
【0055】
(8)規制ガイド部40を左右一対設けているので、ハンドルバー10の左側から延びる長尺部材と右側から延びる長尺部材とを、それぞれ近い方の規制範囲S内に挿通することにより、各長尺部材の長さを短くすることができ、ハンドルバー10からの配管及び配線が複雑化するのを防止できる。
【0056】
(9)各規制ガイド部40を、操舵時における移動量が少ない左右方向の中央寄り(操舵軸5の近く)に形成しているので、規制される移動範囲を狭くして、長尺部材の動き自体を小さくすることができる。
【0057】
(10)シリンダ保持部33の側面が、規制範囲Sを取り囲む規制ガイド部の一部として利用されているので、規制ガイド部40を形成することによるアッパーブラケット2全体の重量増加を抑制できると共に、アッパーブラケット2の材料費も節約できる。また、アッパーブラケット2が無駄に大形化するのを抑制することができる。
【0058】
(11)前記開口部46を形成しながらも、開口部46に面する第2アーム部42の後端に、左右方向の中央側に突出する係止突起43を形成しているので、操舵時、開口部46から長尺部材が規制範囲S外に抜け出るのを防ぐことができる。
【0059】
(12)操舵用ブラケットとして、上下一対のブラケット2,3を備えている自動二輪車において、上側に配置されてハンドルバー10を直接支持するアッパーブラケット2に、規制ガイド部40を形成しているので、ロワーブラケット42のみに規制ガイド部を形成する場合に比べ、ハンドルバー10の近くで長尺部材の移動を規制することができ、より的確に規制することができる。
【0060】
(13)左右の規制ガイド部40は、左右のフロントフォーク1の左右方向間に配置されているので、操舵時、長尺部材がフロントフォーク1に当接するのを容易に防ぐことができる。
【0061】
(14)図1のように、ハンドルバー10が、アッパーブラケット2の上面から大きく上方に離れるように配置された自動二輪車では、操舵時に各長尺部材の変形量が大きくなる可能性があるが、そのような場合でも、アッパーブラケット2に規制ガイド部40を設けていることにより、長尺部材の移動を効果的に規制することができる。
【0062】
(15)規制ガイド部40による規制範囲Sが、左右方向及び前後方向にハーネス25等の長尺部材の径以上の幅を有する形状に形成されているので、旋回時にも長尺部材と規制ガイド部40との間にすき間を形成し易く、長尺部材の損傷を押さえることができる。また、規制ガイド部40よる規制範囲Sが、左右方向に横長に形成されているので、左右方向の中央に位置するシリンダ錠35にキーを差し込む場合に、ハーネス25等の長尺部材が邪魔になるのを防ぐことができる。
【0063】
(16)イグニッションキー用のシリンダ保持部33がアッパーブラケット2の本体部分の前面から前方に突出しており、前記シリンダ保持部33の前方突出部分から左右の規制ガイド部40が左右方向に延びているので、アッパーブラケット2の本体部分の前面から前方に離れた位置に規制ガイド部40を配置することができ、これにより、開口部46を大きくすることができると共に、ハーネス25等の長尺部材を、アッパーブラケット2の本体部分よりも前方に離して位置させることができる。
【0064】
[規制ガイド部の変形例]
(1)図6乃至図9はそれぞれ規制ガイド部の変形例を示している。図6の変形例は、平面視で、規制範囲Sが閉じた状態に形成されている。すなわち、開口部を有しておらず、規制ガイド部40の第2アーム部42の後端も、アッパーブラケット2の前端に繋がっている。図7の変形例は、規制ガイド部40の第1アーム部41の左右方向の中央側の端部と、シリンダ保持部33との間に開口部46を形成し、第2アーム部42の後端部をアッパーブラケット2の前端に繋げている。図8の変形例は、左右の規制ガイド部40を、アッパーブラケット2の後端に後方突出状に形成している。図9の変形例は、アッパーブラケット2にシリンダ保持部が形成されていない構造において、アッパーブラケット2の左右方向の中央部に、一つの規制ガイド部40を形成している。また、アッパーブラケット2の前後両側に規制ガイド部を形成することも可能である。
【0065】
(2)前記各実施の形態では、自動二輪車において、左右のフロントフォーク1の上端部を連結するアッパーブラケット2に規制ガイド部40を形成しているが、ロワーブラケット3(図1参照)に規制ガイド部40を形成することも可能である。また、アッパーブラケット2及びロワーブラケット3の両方に規制ガイド部40を形成することも可能である。
【0066】
(3)前記各実施の形態では、操舵用ブラケットとして、自動二輪車のフロントフォークを連結するアッパーブラケットに規制ガイド部を形成しているが、ハンドルバーを備えた騎乗型四輪走行車、騎乗型三輪走行車又は小型水上滑走艇の操舵用ブラケットにも、本発明を適用することができる。また、ハンドルバー型の電気自動車にも適用可能である。
【0067】
(4)前記実施の形態では、鋳造時に生じるアッパーブラケット2のパーティングラインL1が、上下方向の中間部に形成されているが、パーティングラインL1が上部又は下部に形成される場合には、バリ取り作業又は面取り作業等により、アッパーブラケット2の上部又は下部を非鋭利に形成することが好ましい。
【0068】
(5)本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 フロントフォーク
2 アッパーブラケット(操舵用ブラケットの一例)
3 ロワーブラケット(操舵用ブラケットの一例)
5 操舵軸
6 ヘッドパイプ
10 ハンドルバー
11 スロットルグリップ
12 ブレーキレバー
13 スイッチハウジング
15 前輪制動用マスターシリンダ
19 前輪制動用ブレーキ液管
20 スロットルケーブル
21 リード線ハーネス
21 左グリップ
22 クラッチレバー
23 スイッチハウジング
24 クラッチケーブル
25 リード線ハーネス
33 イグニッションキー用のシリンダ保持部
40 規制ガイド部
41 第1アーム部
42 第2アーム部
43 係止突起
S 規制範囲
L1 パーティションライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵軸に連結され、ハンドルバー及び前記操舵軸と共に左右に回動するハンドルバー型乗物の操舵用ブラケットにおいて、
前記ハンドルバーから延びる長尺部材の外方を囲み、前記長尺部材の移動を所定の規制範囲内に規制する規制ガイド部を、前記操舵用ブラケットに一体成形していることを特徴とする、ハンドルバー型乗物の操舵用ブラケット。
【請求項2】
前記規制ガイド部は、前記操舵用ブラケットの前側に形成されている、請求項1に記載のハンドルバー型乗物の操舵用ブラケット。
【請求項3】
前記規制ガイド部は、左右一対形成されている、請求項1又は2に記載のハンドルバー型乗物の操舵用ブラケット。
【請求項4】
前記規制ガイド部は、前記操舵用ブラケットの左右方向の中央寄りに形成されている、請求項1乃至3のいずれか一つに記載のハンドルバー型乗物の操舵用ブラケット。
【請求項5】
前記操舵用ブラケットには、イグニッションキー用のシリンダ錠を保持するシリンダ保持部が一体成形されており、該シリンダ保持部に、前記規制ガイド部が一体に形成されている、請求項1乃至4のいずれか一つに記載のハンドルバー型乗物の操舵用ブラケット。
【請求項6】
前記操舵用ブラケットには、鋳造加工時に生じるパーティングラインが、上端及び下端以外の位置に形成されている、請求項1乃至5のいずれか一つに記載のハンドルバー型乗物の操舵用ブラケット。
【請求項7】
前記請求項1乃至6のいずれか一つに記載の操舵用ブラケットを備えたハンドルバー型乗物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−23183(P2013−23183A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163226(P2011−163226)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】