説明

ハーネス型安全帯用の胴ベルトホルダ

【課題】ハーネス型安全帯に対して胴ベルトを後付けでセットすることができるハーネス型安全帯用の胴ベルトホルダを提供することである。
【解決手段】連結板1の上部と下部に開口部2を設け、各開口部2の内周両側に対向一対の突片3を形成し、その一対の突片3の上側部と下側部に平行一対の横長ベルト挿入孔4a、4bとして、連結板1を腹部ベルト12に後付けできるようにする。上下の開口部2間に胴ベルト30が挿通可能な平行一対の縦長ベルト挿入孔5a、5bを形成して、胴ベルト30をハーネス型安全帯10に後付けできるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高所作業時の安全性を確保するために作業者に装着されるハーネス型安全帯に対して胴ベルトを後付けでセットすることができるようにするハーネス型安全帯用の胴ベルトホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業時に装着されるハーネス型安全帯として、特許文献1あるいは特許文献2に記載されたものが従来から知られている。
【0003】
ここで、特許文献1に記載されたハーネス型安全帯は、作業者の左右の肩に掛けられて背中に沿う背面ベルト部が交差状とされて腰部の左右に至り、肩から前面側に垂れ下がる前面ベルト部が略平行状態とされる一対の肩ベルトと、その肩ベルトの前面ベルト部の端部に連結されたバックルを介してその前面ベルト部に連結され、腰部の左側または右側から大腿に延びて、その大腿の付け根に巻き付き、腰部から上側方に延びて上記前面ベルト部に連結された一対のループ状の腿ベルトと、上記一対の肩ベルトの前面ベルト部を連結する左右一対の胸ベルトと、上記一対の腿ベルトの大腿付け根に巻き付くループ部に両端部が連結された尻当てベルトからなっている。
【0004】
一方、特許文献2に記載されたハーネス型安全帯は、作業者の左右の肩に掛けられて背中に沿う背面ベルト部が交差状とされて腰部の左右から大腿に至り、肩から前面側に垂れ下がる前面ベルト部が略平行状態とされる一対の肩ベルトと、その肩ベルトの前面ベルト部の端部に連結されたバックルを介してその前面ベルト部に連結され、腰部の左側または右側から大腿に至る一対の腹部ベルトと、その腹部ベルトの端部および肩ベルトにおける前面ベルト部の端部それぞれに連結されて大腿に巻き付くループ状の一対の腿ベルトと、上記一対の肩ベルトの前面ベルト部を連結する左右一対の胸ベルトからなっている。
【0005】
ところで、上記のハーネス型安全帯は、作業工具を必要としない高所での作業の際に多く用いられる胴ベルトなしモデルであるため、工具を保持することができず、作業工具を必要とする高所作業の際には、作業性を著しく低下させることになる。このため、胴ベルトなしモデルのハーネス型安全帯の購入後において、工具袋の吊り下げが可能な胴ベルトを装備したいというユーザ側の要望がある。
【0006】
その要望に応えるため、特許文献2に記載のハーネス型安全帯においては、その安全帯に対して胴ベルトホルダを後付け可能とし、その胴ベルトホルダを介して胴ベルトを着脱自在に支持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−333011号公報
【特許文献2】特開2006−223639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献2に記載されたハーネス型安全帯においては、肩ベルトの前面ベルト部および背面ベルト部の腰部と対向する部位に胴ベルトホルダを装着し、その胴ベルトホルダの両端部に形成された長孔に胴ベルトを挿通して、その胴ベルトで作業工具を吊り下げ支持するようにしているが、上記胴ベルトは胴ベルトホルダの長孔に沿ってスライド自在であるため、作業の休憩や作業位置の変更等の際に胴ベルトを弛めると、胴ベルトに吊り下げ支持された作業工具の重量により、胴ベルトが胴ベルトホルダの長孔から抜け出し、ときには、胴ベルトから作業工具を収納する工具袋が抜け落ちて、セットのやり直しを行わなければならないという不都合があった。
【0009】
また、肩ベルトの前面ベルト部および背面ベルト部の腰部と対向する部位のそれぞれに合計4つ胴ベルトホルダを取り付ける必要があるため、多くの作業工具の吊り下げスペースを確保することができないという不都合もあった。
【0010】
この発明の課題は、ハーネス型安全帯に対して胴ベルトを後付けでセットすることができると共に、その胴ベルトが長さ方向にずれ動くことなく安定よく確実にセットすることができるハーネス型安全帯用の胴ベルトホルダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明においては、締付け用のバックルを端部に有する胴ベルトの幅寸法より長さの長い扁平な連結板の上端部と下端部のそれぞれに、ハーネス型安全帯の腿ベルトまたは腹部ベルトが挿入可能な一対の開口部を形成し、各開口部の内周両側に対向一対の突片を突設して、その対向一対の突片の上側部および下側部に長さ方向の中央部で連通する平行一対の横長ベルト挿入孔を設け、前記上下の開口部間には、上下方向に長く延びて前記胴ベルトを挿通可能とする平行配置の左右一対の縦長ベルト挿入孔を設けた構成を採用したのである。
【0012】
上記の構成からなる胴ベルトホルダを用いて、例えば、胴ベルト、一対の肩ベルト、一対の腿ベルトおよび一対の胸ベルトからなるハーネス型安全帯に対して胴ベルトを装着する場合は、一対の腿ベルトの腰部と対向する部位に連結板を取り付ける。その取り付けに際しては、腿ベルトを両側から摘んで盛り上がり部を設け、その盛り上がり部を連結板の背面側から開口部に形成された対向一対の突片間に挿入し、上記盛り上がり部が連結板の前面側に膨出する状態で、その盛り上がり部を幅方向に形状復元させて、平行一対の横長ベルト挿入孔のそれぞれに腿ベルトを挿入し、その平行一対の横長ベルト挿入孔間でUの字形に折れ曲がって連結板の前面で盛り上がる折曲げベルト部の内面側に一対の突片を係合させて腿ベルトを抜止めする。
【0013】
上記のようにして、連結板の上下の開口部のそれぞれに形成された上下一対の横長ベルト挿入孔のそれぞれに腿ベルトを挿入する作業によって、腿ベルトに連結板を後付けした後、左右一対の縦長ベルト挿入孔に胴ベルトを挿入することによって胴ベルトを装着状態とすることができる。
【0014】
一方、一対の肩ベルト、一対の腹部ベルト、一対の腿ベルトおよび一対の胸ベルトからなるハーネス型安全帯に対して胴ベルトを装着する場合は、一対の腹部ベルトの腰部と対向する部位に連結板を後付けする。その後付けに際しては、上記と同様の手法によって腹部ベルトに連結板を後付けし、その連結板の後付け後、左右一対の縦長ベルト挿入孔に胴ベルトを挿入する。
【0015】
一対の腹部ベルトを有するハーネス安全帯に対しては、その一対の腹部ベルトのそれぞれに合計2枚の連結板を取り付けるだけでよいため、胴ベルト上に多くの作業工具の吊り下げスペースを確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る胴ベルトホルダにおいては、上記のように、連結板の上下部に形成された開口部のそれぞれ内周両側に対向一対の突片を設けて、その一対の突片の上側部および下側部に長さ方向の中央部で連通する平行一対の横長ベルト挿入孔を設けたことにより、ハーネス型安全帯の腿ベルトや腹部ベルトに連結板を後付けすることができ、また、連結板には、上下の開口部間に左右一対の縦長ベルト挿入孔を形成したことにより、後付けされた連結板の左右一対の縦長ベルト挿入孔に胴ベルトを挿入することにより、その胴ベルトをハーネス型安全帯に後付けでセットすることができる。
【0017】
また、胴ベルトの後付けセット状態では、上側開口部および下側開口部のそれぞれに形成された上下一対の横長ベルト挿入孔の内周に肩ベルトや腹部ベルトが係合するため、肩ベルトや腹部ベルトに対して連結板をベルトの長さ方向にずれ動くことなく強固に取付けることができ、その強固に取付けられた連結板の左右一対の縦長ベルト挿入孔の内周に胴ベルトが係合するため、胴ベルトも長さ方向にずれ動くようなことがない。その結果、胴ベルトを弛めた状態で、その胴ベルトが吊り下げ工具の重みでずれ動くようなことがなく、安定した強固なセット状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係るハーネス型安全帯用の胴ベルトホルダの実施の形態を示す斜視図
【図2】ハーネス型安全帯の一例を示す展開図
【図3】図1に示す胴ベルトホルダを用いてハーネス型安全帯に胴ベルトをセットした状態の正面図
【図4】図3の左側面図
【図5】図4のIV−IV線に沿った断面図
【図6】図4のV−V線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、この発明に係る胴ベルトホルダは、連結板1からなる。実施の形態では、連結板1が厚手のアルミニウム板からなり、そのアルミニウム板にアルマイト処理を施して耐摩耗性および耐食性を向上させるようにしているが、連結板1の素材はアルミニウム板等の金属板に限定されるものではない。例えば、硬質の樹脂板であってもよい。
【0020】
連結板1は、後述するハーネス型安全帯に後付けされる胴ベルトの幅寸法より長くなり、その上端部と下端部のそれぞれに、ハーネス型安全帯の腿ベルトまたは腹部ベルトが挿入可能な一対の開口部2が形成されている。
【0021】
一対の開口部2のそれぞれ内周両側の中央部には対向一対の突片3が突設され、その対向一対の突片3の上側部および下側部に長さ方向の中央部で連通する平行一対の横長ベルト挿入孔4a、4bが設けられている。
【0022】
また、連結板1には、上下の開口部2間に、上下方向に長く延びて胴ベルトが挿通可能な平行配置の左右一対の縦長ベルト挿入孔5a、5bが設けられている。
【0023】
図2乃至図4は、ハーネス型安全帯10の一例を示している。このハーネス型安全帯10は、一対の肩ベルト11、一対の腹部ベルト12、一対の腿ベルト13および一対の胸ベルト14からなる。
【0024】
一対の肩ベルト11は、作業者の左右の肩に掛けられた状態で背中に沿う背面ベルト部11aが交差状とされて腰部の左右から大腿に至り、上記肩から前面側に垂れ下がる前面ベルト部11bが略平行の状態とされる。
【0025】
背面ベルト部11aの交差部は、固定板15の取り付けによって交差状態に保持されている。ここで、固定板15は、特許文献1の図5に示すものと同様の構造であって従来から周知のものであるため、詳細を省略しており、その固定板15にフック付きロープが連結されるD環16が取り付けられている。
【0026】
前面ベルト部11bの端部は上向きに180°折り返され、その折り返し端部と前面ベルト部11bの重なり部が互いに縫着されて、その重なり部間に袋部が形成され、その袋部に前バックル17が取り付けられている。図2に示す18は、縫着部を示す。
【0027】
腹部ベルト12の一端部は、前バックル17のベルト挿入孔に挿入されて折り返されて長さ調整可能とされ、上記腹部ベルト12に予め取り付けられた固定板19の平行一対のベルト挿入孔に対する上記一端部の挿入によって長さ調整位置で固定されるようになっており、上記前バックル17を介して前面ベルト部11bに腹部ベルト12の一端部が連結されている。
【0028】
腹部ベルト12は背面ベルト部11aに交差して他端が大腿に至り、上記背面ベルト部11aとの交差部が縫着によってその背面ベルト部11bに固定されている。20は縫着部を示す。
【0029】
前記一対の腿ベルト13のそれぞれは、肩ベルト11における背面ベルト部11aの端部と腹部ベルト12の他端部とに縫着されている。21は、その縫着部を示す。腿ベルト13は、その一端部に取り付けられた板状のバックル22と他端部に取り付けられた係合板23の係合によってループ状に保持される。
【0030】
前記一対の胸ベルト14のそれぞれは、一対の腹部ベルト12のそれぞれ一端部に連結されている。この一対の胸ベルト14は、一方の胸ベルト14の一端部に取り付けられた雄バックル24と他方の胸ベルト14の端部に取り付けられた雌バックル25の係合によって互いに連結される。
【0031】
上記の構成からなるハーネス型安全帯10において、作業工具を必要としない高所での作業に際しては、胴ベルト30を装着することなくそのままの状態で人体に装着し、一方、作業工具を必要とする高所作業においては、そのハーネス型安全帯10に作業工具を吊り下げ可能な胴ベルト30を装着する。ここで、胴ベルト30は、一端部にバックル31が設けられている。
【0032】
胴ベルト30の装着に際しては、一対の腹部ベルト12の腰部と対向する部位に、図1に示す連結板1を後付けする。その後付けに際しては、腹部ベルト12を両側から摘んで盛り上がり部を設け、その盛り上がり部を連結板1の背面側から開口部2に形成された対向一対の突片3間に挿入し、上記盛り上がり部が連結板1の前面側に膨出する状態で幅方向に形状復元させて、図5に示すように、平行一対の横長ベルト挿入孔4a、4bのそれぞれに腹部ベルト12を挿入し、その平行一対の横長ベルト挿入孔4a、4b間でUの字形に折れ曲がって連結板1の前面で盛り上がる折曲げベルト部6の内面側に一対の突片3を係合させて折曲げベルト部6を抜止めする。
【0033】
上記のようにして、連結板1の上下の開口部2のそれぞれに形成された上下一対の横長ベルト挿入孔4a、4bのそれぞれに腹部ベルト12を挿入して、図5に示すように、その腹部ベルト12に連結板1を後付けした後、その連結板1に形成された左右一対の縦長ベルト挿入孔5a、5bに胴ベルト30を挿入することにより、図2乃至図4に示すように、胴ベルト30を装着状態とすることができる。
【0034】
上記のように、連結板1の上下部に形成された開口部2のそれぞれ内周両側に対向一対の突片3を設け、その一対の突片3の上側部および下側部に長さ方向の中央部で連通する平行一対の横長ベルト挿入孔4a、4bを設けておくことによって、ハーネス型安全帯10の腹部ベルト12に連結板1を後付けすることができる。
【0035】
また、連結板1の上下の開口部2間に左右一対の縦長ベルト挿入孔5a、5bを形成しておくことにより、後付けされた連結板1の左右一対の縦長ベルト挿入孔5a、5bに胴ベルト30を挿入することができるため、その胴ベルト30をハーネス型安全帯10に後付けでセットすることが可能となる。
【0036】
ここで、胴ベルト30の後付けセット状態では、上下の開口部2のそれぞれに形成された上下一対の横長ベルト挿入孔4a、4bの内周に腹部ベルト12が係合するため、腹部ベルト12に対して連結板1をベルトの長さ方向にずれ動くことない強固な取り付け状態を得ることができ、その強固に取付けられた連結板1の左右一対の縦長ベルト挿入孔5a、5bの内周に胴ベルト30が係合するため、胴ベルト30も長さ方向にずれ動くようなことがない。その結果、胴ベルト30を弛めた状態で、その胴ベルト30が吊り下げ工具の重みでずれ動くようなことがなく、安定した強固なセット状態を得ることができる。
【0037】
実施の形態では、胴ベルト30が後付けされるハーネス型安全帯10として、腹部ベルト12を有するものを示したが、ハーネス型安全帯10はこれに限定されるものではない。例えば、特許文献1に記載のハーネス型安全帯であってもよい。
【0038】
特許文献1に記載のハーネス型安全帯に対する胴ベルト30のセットに際しては、一対の肩ベルトの前面ベルト部の端部に連結された腿ベルトのそれぞれに連結板1を後付けして、その連結板1の一対の縦長ベルト挿入孔5a、5bに胴ベルト30を挿入する。
【符号の説明】
【0039】
1 連結板
2 開口部
3 突片
4a 横長ベルト挿入孔
4b 横長ベルト挿入孔
5a 縦長ベルト挿入孔
5b 縦長ベルト挿入孔
10 ハーネス型安全帯
12 腹部ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
締付け用のバックルを端部に有する胴ベルトの幅寸法より長さの長い扁平な連結板の上端部と下端部のそれぞれに、ハーネス型安全帯の腿ベルトまたは腹部ベルトが挿入可能な一対の開口部を形成し、各開口部の内周両側に対向一対の突片を突設して、その対向一対の突片の上側部および下側部に長さ方向の中央部で連通する平行一対の横長ベルト挿入孔を設け、前記上下の開口部間には、上下方向に長く延びて前記胴ベルトを挿通可能とする平行配置の左右一対の縦長ベルト挿入孔を設けたハーネス型安全帯用の胴ベルトホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−75672(P2012−75672A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223493(P2010−223493)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000106287)サンコー株式会社 (24)
【Fターム(参考)】