説明

ハーネス型安全帯

【課題】胴ベルトの着脱操作性に優れたハーネス型安全帯を提供する。
【解決手段】作業者の背中に配置されるD環止め6から上方に二股に分かれて延びて作業者の両肩を通り、作業者の前面側を両肩から下方に延びる一対の肩ベルト1と、その各肩ベルト1の下端に連結された一対の腿ベルト2と、作業者の胴に巻き付けた胴ベルト5の両端を肩ベルト1に係脱自在に連結する胴ベルトバックル10と、その胴ベルトバックル10と同じ高さで一対の肩ベルト1同士を係脱自在に連結するセンターバックル9とを有する構成をハーネス型安全帯に採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高所作業時に墜落を防止するために着用するハーネス型安全帯に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等の高所において作業を行なう場合、作業者の墜落を防止して安全を確保するために安全帯が使用される。安全帯として、墜落阻止時の衝撃荷重を作業者の胴に装着した胴ベルトで支持する胴ベルト型安全帯のほか、墜落阻止時の衝撃荷重を作業者の身体の肩、腿などの複数部位に分散して支持するようにしたハーネス型安全帯が一般に使用されている。
【0003】
ハーネス型安全帯として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。このハーネス型安全帯は、作業者の背中に配置されるD環止めで交差する一対の肩ベルトと、肩ベルトの下端に連結された一対の腿ベルトとを有する。そして、このハーネス型安全帯は、作業者の両肩に一対の肩ベルトを掛けるとともに、作業者の両足の大腿部に一対の腿ベルトを装着し、その状態でD環止めのD環にランヤードの一端を接続し、ランヤードの他端を作業現場の構造物に接続して使用される。
【0004】
ところで、作業工具を収容した工具袋を携行しようとした場合、胴ベルト型安全帯においては、胴ベルトから工具袋を吊り下げることができるのに対し、上記特許文献1に記載のハーネス型安全帯は、作業者の胴に巻き付ける胴ベルトがないので工具袋を吊り下げることができない。
【0005】
そこで、ハーネス型安全帯においても、工具袋の吊り下げを可能とするために胴ベルトを装備したいというユーザ側の要望があった。その要望に応えるため、例えば、特許文献2の図10および図11に記載のハーネス型安全帯においては、各肩ベルトの途中に胴ベルトホルダを取り付け、その胴ベルトホルダに形成されたベルト通し穴に胴ベルトを挿通するようにしている。
【0006】
そして、胴ベルトホルダのベルト通し孔に胴ベルトを挿通するに際し、その胴ベルトを工具袋のベルト通し孔にも共通して挿通させることで、工具袋の吊り下げが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−112368号公報
【特許文献2】特開2006−223639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2のようにベルト通し穴に胴ベルトを挿通するようにしたハーネス型安全帯は、胴ベルトの着脱操作性に劣るという問題があった。
【0009】
すなわち、作業の休憩時などに身軽になるため、工具袋を一時的に取り外すことがあるが、工具袋を取り外すためにはいったん胴ベルトを胴ベルトホルダのベルト通し孔から引き抜く必要があり、しかも胴ベルトを引き抜くと、工具袋のベルト通し孔からも胴ベルトが抜けて、工具袋と胴ベルトとが分離した状態となってしまう。そのため、作業を再開するときに、再び複数の胴ベルトホルダのベルト通し孔と、工具袋のベルト通し孔とに胴ベルトを挿通させる必要があり、その操作が極めて面倒であった。
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、胴ベルトの着脱操作性に優れたハーネス型安全帯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、作業者の背中に配置されるD環止めから上方に二股に分かれて延びて作業者の両肩を通り、作業者の前面側を両肩から下方に延びる一対の肩ベルトと、その各肩ベルトの下端に連結された一対の腿ベルトと、作業者の胴に巻き付けた胴ベルトの両端を前記肩ベルトに係脱自在に連結する胴ベルトバックルと、その胴ベルトバックルと同じ高さで前記一対の肩ベルト同士を係脱自在に連結するセンターバックルとを有する構成をハーネス型安全帯に採用した。
【0012】
このようにすると、胴ベルトを装着するときは、胴ベルトを装着する前にあらかじめ胴ベルトに工具袋を取り付け、その胴ベルトを胴に巻き付けた後、胴ベルトの両端を胴ベルトバックルで肩ベルトに連結することで、胴ベルトを装着することができる。このとき、センターバックルにより胴ベルトバックルと同じ高さで一対の肩ベルト同士が連結されるので、肩ベルトの開きと胴ベルトの緩みを同時に防止することができる。胴ベルトを取り外すときは、胴ベルトバックルを分離することで、胴ベルトの両端を肩ベルトから切り離し、工具袋を取り付けたまま胴ベルトを取り外すことが可能である。また、ハーネス型安全帯を身体に装着するときおよび身体から取り外すときは、センターバックルを分離することで一対の肩ベルトを左右に開くことが可能となり、肩ベルトを肩に掛ける操作および肩ベルトを肩から外す操作が容易である。
【0013】
このハーネス型安全帯は、前記D環止めから作業者の背面中央を下方に延びる背面中央ベルトと、その背面中央ベルトの下端から二股に分かれて延びて前記一対の腿ベルトに連結された一対の尻ベルトとを更に設け、前記背面中央ベルトに、作業者の胴に巻き付けた状態の前記胴ベルトを支持する支持具を設けると好ましい。
【0014】
このようにすると、胴ベルトに工具袋を吊り下げたときに胴ベルトにかかる重みが、肩ベルトの胴ベルトバックルと、背面中央ベルトの支持具とに分散して支持されるので、工具袋の重量による作業者の負荷を効果的に軽減することが可能となる。また、支持具による胴ベルトの支持位置が背面の中央なので、胴ベルトに工具袋を取り付けるときに、工具袋が支持具に干渉しにくく、工具袋の取り付け位置の自由度が高い。
【0015】
さらに、前記胴ベルトに、前記背面中央ベルトの支持具に係合する係合部材を設けると、高所作業中に胴ベルトが支持具から外れるのを防止して、胴ベルトの背面側の支持を安定させることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明のハーネス型安全帯は、胴ベルトの両端を肩ベルトに連結することで胴ベルトの装着を行なうので、あらかじめ胴ベルトに工具袋を取り付けた状態のまま、胴ベルトを装着することが可能である。また、胴ベルトの両端を肩ベルトから切り離すことで、胴ベルトに工具袋を取り付けたまま胴ベルトを取り外すことが可能である。このように、このハーネス型安全帯は、胴ベルトに工具袋を取り付けたまま胴ベルトの着脱が可能であり、胴ベルトの着脱操作性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施形態のハーネス型安全帯を示す全体図
【図2】図1のハーネス型安全帯を作業者が着用した状態で作業者の前面側から見た図
【図3】図1のハーネス型安全帯を作業者が着用した状態で作業者の背面側から見た図
【図4】図3に示すハーネス型安全帯の係合部材の近傍の拡大図
【図5】図4のV−V線に沿った断面図
【図6】図2に示す胴ベルトを取り外した状態を示す図
【図7】図3に示す胴ベルトを取り外した状態を示す図
【図8】図4に示す係合部材の他の例を示す分解斜視図
【図9】図8に示す係合部材が支持具に係合した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に、この発明の実施形態のハーネス型安全帯を示す。このハーネス型安全帯は、作業者の両肩に掛けられる一対の肩ベルト1,1と、作業者の両足の大腿部に装着する一対の腿ベルト2,2と、背面中央ベルト3と、一対の尻ベルト4,4と、作業者の胴に巻き付ける胴ベルト5とを有する。これらのベルトはポリエステルやナイロン等の合成繊維の織物で形成されている。
【0019】
図2、図3に示すように、一対の肩ベルト1,1は、作業者の背中に配置されるD環止め6から上方に二股に分かれて延びて作業者の両肩を通り、作業者の前面側を両肩から下方に延びている。各肩ベルト1は、作業者の体格に応じて肩ベルト1の長さを調節する長さ調整具7と、長さ調整具7で生じるベルトの余剰長さ部分を保持するベルト止め8と、センターバックル9と、胴ベルトバックル10とを作業者の前面側に有する。
【0020】
図1に示すように、センターバックル9は、一対の肩ベルト1,1のうちの一方の肩ベルト1に取り付けられたタングプレート9Aと、他方の肩ベルト1に取り付けられたバックル本体9Bとからなる。そして、バックル本体9Bにタングプレート9Aを差し込むことにより、一対の肩ベルト1,1同士を互いに係脱自在に連結するようになっている。このセンターバックル9は、タングプレート9Aをバックル本体9Bに差し込むと、タングプレート9Aがバックル本体9Bに保持されたロック状態となり、バックル本体9Bに設けられた操作片11を操作することでロック状態を解除するワンタッチ式のバックルである。
【0021】
胴ベルトバックル10は、胴ベルト5の両端に取り付けられたタングプレート10Aと、各肩ベルト1に取り付けられたバックル本体10Bとからなる。そして、胴ベルト5を作業者の胴に巻き付けた状態で、胴ベルト5の両端の各タングプレート10Aを各肩ベルト1のバックル本体10Bに差し込むことにより、胴ベルト5の両端を肩ベルト1に係脱自在に連結するようになっている。この胴ベルトバックル10も、センターバックル9と同様、タングプレート10Aをバックル本体10Bに差し込むと、タングプレート10Aがバックル本体10Bに保持されたロック状態となり、バックル本体10Bに設けられた操作片12を操作することでロック状態を解除するワンタッチ式のバックルである。
【0022】
図2に示すように、胴ベルトバックル10は、ハーネス型安全帯を作業者が着用した状態で腰の高さとなる位置に配置され、この胴ベルトバックル10と同じ高さ位置にセンターバックル9が配置されている。具体的には、作業者の前面側の肩ベルト1を腰の高さで水平に横切るように各肩ベルト1に短ベルト13が固定され、その短ベルト13の一端に胴ベルトバックル10が取り付けられ、短ベルト13の他端にセンターバックル9が取り付けられている。肩ベルト1に対する短ベルト13の固定はベルト同士の縫着により行なわれている。
【0023】
作業者の前面側の一対の肩ベルト1,1は、センターバックル9を連結した状態でX形を呈するように延びている。すなわち、作業者の前面側の一対の肩ベルト1,1の間隔は、センターバックル9の位置で最も狭幅となるように肩から下方に向かって次第に狭くなり、センターバックル9から下方に向かって次第に広くなっている。ここで、各肩ベルト1は、胴ベルトバックル10の高さ位置でくの字形に屈曲しているが、この肩ベルト1の屈曲部分の形成は、例えば、作業者の前面側の肩ベルト1を腰の高さ位置で半回転ねじって屈曲させ、その屈曲部分に短ベルト13を重ね合わせて縫着することにより形成することができる。
【0024】
腿ベルト2は、作業者の前面側の肩ベルト1の下端に連結されている。腿ベルト2と肩ベルト1の連結は縫着により行なわれている。腿ベルト2は、大腿部を巻回する環状に形成され、その腿ベルト2の一部が腿ベルトバックル14で係脱自在に連結されている。
【0025】
図3に示すように、作業者の背面側の肩ベルト1,1は、D環止め6から上方に二股に分かれて作業者の両肩に至るように延び、背面中央ベルト3は、D環止め6から作業者の背面中央を下方に延びている。尻ベルト4は、背面中央ベルト3の下端から二股に分かれて延びて各腿ベルト2に連結されている。腿ベルト2と尻ベルト4の連結は、尻ベルト4の下端に形成したループに腿ベルト2を通すことで行なわれ、作業者の体格に応じて腿ベルト2に対する尻ベルト4の相対位置を調節できるようになっている。
【0026】
D環止め6には、ベルト通し用の長穴15が上下に間隔をおいて複数形成され、隣り合う長穴15の間でベルトをD環16に通すことでランヤード接続用のD環16がD環止め6に取り付けられている。D環16は、ショックアブソーバまたはストラップを介してD環止め6に取り付けるようにしてもよい。
【0027】
背面中央ベルト3の下端には、作業者の胴に巻き付けた状態の胴ベルト5を支持する支持具17が取り付けられている。図4、図5に示すように、支持具17は方形の金属板からなり、上下に間隔をおいて複数の長穴18,18が形成され、その長穴18に順にベルトを通すことで支持具17が背面中央ベルト3に固定されている。
【0028】
作業者の背面側の胴ベルト5には、背面中央ベルト3の支持具17に係合する係合部材19が取り付けられている。係合部材19には、上下方向に延びる複数の長穴20が左右方向に間隔をおいて形成され、その各長穴20に胴ベルト5を順に通すことで胴ベルト5に固定されている。また、係合部材19の下縁には、背面中央ベルト3よりも広幅でかつ支持具17よりも狭幅の嵌合凹部21が形成されており、支持具17と背面中央ベルト3の間に係合部材19を差し込んだ状態で、嵌合凹部21の縁が支持具17に係合して背面中央ベルト3に対する胴ベルト5の相対移動を阻止するようになっている。
【0029】
肩ベルト1と背面中央ベルト3と尻ベルト4は、その各境界位置において接続された別個のベルト部材とすることも可能であるが、図3に示すように、一連に形成された2本のベルトを、D環止め6の長穴15と、D環止め6の下方に間隔をおいて配置された支持具17の長穴18とに重ね合わせた状態で挿通させ、その2本のベルトがD環止め6よりも上側の部分と支持具17よりも下側の部分で二股に分かれるようにし、この2本のベルトのD環止め6よりも上側の部分を肩ベルト1とし、D環止め6と支持具17の間の部分を背面中央ベルト3とし、支持具17よりも下側の部分を尻ベルト4とすると好ましい。このようにすると、肩ベルト1と背面中央ベルト3と尻ベルト4の各境界位置にベルトを接続するための縫製部が存在しないので、縫い糸の摩耗等による強度低下を防止して、安全性を高めることができる。
【0030】
次に、上述したハーネス型安全帯の使用例を説明する。
【0031】
ハーネス型安全帯を装着するときは、まず、センターバックル9、胴ベルトバックル10、腿ベルトバックル14がいずれも分離した状態で、一対の肩ベルト1,1を両肩に掛ける。次に、図6に示すように、センターバックル9を連結状態とすることにより、一対の肩ベルト1,1同士を作業者の前面側で連結する。続いて、各腿ベルト2を足の大腿部に巻回し、腿ベルトバックル14を連結する。その後、図2に示すように、胴ベルト5を胴に巻き付け、その胴ベルト5の両端を胴ベルトバックル10で肩ベルト1に連結する。このとき、センターバックル9により、胴ベルトバックル10と同じ高さで肩ベルト1,1が連結されているので、肩ベルト1,1の開きと胴ベルト5の緩みが同時に防止される。最後に、作業者の背面側の胴ベルト5を背面中央ベルト3の支持具17に上から引っ掛け、胴ベルト5の係合部材19を支持具17に係合させる。
【0032】
工具袋22(図3参照)を使用するときは、胴ベルト5を装着する前にあらかじめ胴ベルト5に工具袋22を取り付け、工具袋22を取り付けた状態のまま、胴ベルト5の両端を胴ベルトバックル10で肩ベルト1に連結する。
【0033】
そして、D環止め6のD環16にランヤード(図示せず)の一端を接続し、ランヤードの他端を作業現場の構造物に接続した状態で、建設現場等の高所作業を行なう。
【0034】
作業の休憩時などに身軽になるため、工具袋22を一時的に取り外すことがある。このときは、図6、図7に示すように、胴ベルトバックル10を操作して胴ベルト5の両端を肩ベルト1から切り離し、工具袋22を取り付けたまま胴ベルト5を取り外す。そして、休憩時間が終了して作業を再開するときは、図2、図3に示すように、再び工具袋22を取り付けたままの胴ベルト5を胴に巻き付け、胴ベルト5の両端を胴ベルトバックル10で肩ベルト1に連結することで、工具袋22ごと胴ベルト5を装着する。
【0035】
このとき、工具袋22を取り付けた状態の胴ベルト5を作業内容に応じて予め複数本準備しておけば、工具袋22つきの胴ベルト5をまるごと交換することにより、作業中に携行する工具袋22を迅速に取り替えることが可能となる。
【0036】
作業が終了して、ハーネス型安全帯を身体から取り外すときは、腿ベルトバックル14を切り離すとともに、センターバックル9を分離して作業者の前面側の肩ベルト1,1を左右に開き、両肩から肩ベルト1,1を外して、ハーネス型安全帯を身体から取り外す。このとき、胴ベルトバックル10を切り離さずに、胴ベルト5の両端を肩ベルト1に連結したまま、肩ベルト1,1を肩から外す操作を行なうことができる。その後、再びハーネス型安全帯を装着するときも、胴ベルト5の両端を肩ベルト1に連結した状態のまま、肩ベルト1,1を肩に掛ける操作を行なうことができる。
【0037】
このハーネス型安全帯は、胴ベルト5の両端を肩ベルト1に連結することで胴ベルト5の装着を行なうので、あらかじめ胴ベルト5に工具袋22を取り付けた状態のまま、胴ベルト5を装着することが可能である。また、胴ベルト5の両端を肩ベルト1から切り離すことで、胴ベルト5に工具袋22を取り付けたまま胴ベルト5を取り外すことが可能である。このように、このハーネス型安全帯は、胴ベルト5に工具袋22を取り付けたまま胴ベルト5の着脱が可能であり、胴ベルト5の着脱操作性に優れる。
【0038】
また、このハーネス型安全帯は、胴ベルト5に吊り下げた工具袋22の重量を、腰ではなく肩で支持することができるので、作業者の負荷が小さい。そして、胴ベルト5に工具袋22を吊り下げたときに胴ベルト5にかかる重みを、肩ベルト1の胴ベルトバックル10と、背面中央ベルト3の支持具17とに分散して支持するので、工具袋22の重量による作業者の負荷を効果的に軽減することが可能である。
【0039】
また、このハーネス型安全帯は、支持具17による胴ベルト5の支持位置が背面の中央一箇所(左右方向の中央)なので、胴ベルト5に工具袋22を取り付けるときに、工具袋22が支持具17に干渉しにくく、工具袋22の取り付け位置の自由度が高い。
【0040】
また、このハーネス型安全帯は、胴ベルト5に、背面中央ベルト3の支持具17に係合する係合部材19を設けているので、高所作業中に胴ベルト5が支持具17から外れるのを防止することができ、胴ベルト5の背面側の支持を安定させることができる。
【0041】
また、このハーネス型安全帯は、背中のD環16に接続したランヤードで作業者の墜落を引き止める墜落阻止時の衝撃荷重を肩ベルト1と腿ベルト2に分散して支持する。このとき、作業者の前面側の肩ベルト1,1がX形を呈するように延びているので肩ベルト1が肩から外れにくく、肩ベルト1,1の間から身体が抜ける事態を防止することができる。
【0042】
図8、図9に、係合部材19の他の例を示す。この係合部材19は、上下方向に延びる複数の長穴30が左右方向に間隔をおいて形成された方形の鉛直板部31と、鉛直板部31の長穴30よりも上側部分から前方に延びるように設けられた水平板部32と、水平板部32を上下方向に貫通して形成された嵌合穴33と、背面中央ベルト3の表面に沿って接触するように水平板部32の前端に設けられた添え板部34とからなる。
【0043】
この係合部材19は、各長穴30に胴ベルト5を順に通すことで胴ベルト5に固定されている。そして、水平板部32の嵌合穴33を支持具17の上部外周に嵌合させたときに、嵌合穴33の縁が支持具17に係合して背面中央ベルト3に対する胴ベルト5の相対移動を阻止するようになっている。
【0044】
この係合部材19を用いると、係合部材19を支持具17に係合させたときに、係合部材19と支持具17の係合部分よりも下側に胴ベルト5がくる。そのため、係合部材19が支持具17から吊り下げられた状態となって、係合部材19の姿勢が安定し、係合部材19が支持具17から外れるのを効果的に防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 肩ベルト
2 腿ベルト
3 背面中央ベルト
4 尻ベルト
5 胴ベルト
6 D環止め
9 センターバックル
10 胴ベルトバックル
17 支持具
19 係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の背中に配置されるD環止め(6)から上方に二股に分かれて延びて作業者の両肩を通り、作業者の前面側を両肩から下方に延びる一対の肩ベルト(1)と、その各肩ベルト(1)の下端に連結された一対の腿ベルト(2)と、作業者の胴に巻き付けた胴ベルト(5)の両端を前記肩ベルト(1)に係脱自在に連結する胴ベルトバックル(10)と、その胴ベルトバックル(10)と同じ高さで前記一対の肩ベルト(1)同士を係脱自在に連結するセンターバックル(9)とを有するハーネス型安全帯。
【請求項2】
前記D環止め(6)から作業者の背面中央を下方に延びる背面中央ベルト(3)と、その背面中央ベルト(3)の下端から二股に分かれて延びて前記一対の腿ベルト(2)に連結された一対の尻ベルト(4)とを更に有し、前記背面中央ベルト(3)に、作業者の胴に巻き付けた状態の前記胴ベルト(5)を支持する支持具(17)を設けた請求項1に記載のハーネス型安全帯。
【請求項3】
前記胴ベルト(5)に、前記背面中央ベルト(3)の支持具(17)に係合する係合部材(19)を設けた請求項2に記載のハーネス型安全帯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−81597(P2013−81597A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222933(P2011−222933)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000106287)サンコー株式会社 (24)
【Fターム(参考)】