説明

バイアホール構造を用いた配線構造

[目的] 従来のバイアホール構造を用いた配線構造の利点を保持しつつ、高集積化した場合にも従来構造の場合よりもチップ面積の縮小化を図る。
[構成] 基板表面側の所要の回路構成要素のした側のイバン領域に、基板を貫通するバイアホールを設ける。相互接続する構成要素に対応するバイアホールには共通に配線層を設け、相互接続しない構成要素のバイアホールには、絶縁層を介して配線層を設ける。この基板裏側での配線層は、基板表面側に設けた構成要素に対して独立して印加する電位の数に対応した総数だけ設ける。これらの配線層を多層構造で設けるので、これら配線を基板表面側に設けた場合よりもチップ面積を著しく縮小することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、半導体装置の配線構造、特に基板の表面側の素子構成要素を、基板に設けたバイアホールを介して、基板の裏面側で接続するための、バイアホール構造を用いた配線構造に関する。
【0002】
【従来の技術】この発明の説明に先たち、この従来例につき、図2を参照して、簡単に説明する。従来のバイアホール構造を用いた配線構造は、基板の裏面側に、一層の配線を設けた構造のものであり、特に化合物半導体で構成した高出力素子の分野等で用いられている。
【0003】図2に示す従来構造は、集積回路における電界効果トランジスタ(以下、単に、FETと称する。)のソース接地をバイアホール構造で行なった場合の例を示す断面図である。この構造では、半導体基板、例えば、半絶縁性のガリウムひ素基板10の表面に能動層が形成されている。そして、素子構成要素である、例えば、オーミック金属のソース電極12、ショットキー金属のゲート電極14、オーミック金属のドレイン電極16を設け、その上側にコンタクトホール20が開けられた層間絶縁膜22を設け、このコンタクトホール20を介して、基板表面側での配線金属24を設けて、所要の配線を行なっている。一方、この基板10に、この基板を貫通するホールすなわちバイアホール25を設け、基板表面に設けた、所要の構成要素、この場合には、ソース電極を、このバイアホール25に設けた金属等の導電性材料層を経て、基板10の裏面側全面に導出し、この導出した導電性材料で、接地を行なっている。
【0004】このような、バイアホール構造を採ると、ワイアボンディング等によらずに、基板の裏面側でから直接接地が可能となる。このため、パターンレイアウトの自由度が大幅に増大すると同時に、接地インダクタンスおよび熱抵抗が低減するという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来構造では、基板裏面と、バイアホールの内壁とは一体化した電極用の導電性金属で被覆されているため、バイアホールを経て配線される各素子の構成要素は、全て同電位となる。従って、回路素子の集積度が増大すると、基板の表面側での配線密度および配線長が増大するため、基板面を占有する素子面積(チップ面積)が大きくなる。素子形成領域の大面積化を回避するため、基板表面側で配線層数を増大させることも出来るが、製造工程が複雑となること、配線禁止領域が存在するために配線パターンが冗長化してしまうこと、この冗長化に起因して配線インピーダンスが高くなってしまうこと等といった別の問題が生じている。 この発明は、上述した従来の問題点を出来るだけ緩和するためになされたものであり、従って、この発明の目的は、従来の利点を保持しつつ、高集積化の場合でも、配線の冗長化を回避でき、チップ面積の大幅な縮小化が可能で、しかも、製造工程が簡単となる、バイアホール構造を用いた配線構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】この目的の達成を図るため、この発明によれば、基板の表面側に設けた素子構成要素を、基板に設けたバイアホールを経て、基板の裏面側で配線する、バイアホール構造を用いた配線構造において、所要の構成要素間の接続を互いに電気的に絶縁して行なう、多層配線構造としたことを特徴とする。
【0007】
【作用】この発明の構造によれば、裏面側に設けた多層配線層で、バイアホールを介して回路構成素子の各要素に、それぞれ所要の電位を独立に与えることが可能となる。そして、配線を基板の、裏面側で多層構造としてあるので、配線禁止領域が無く、従って、配線の冗長化は回避でき、よって、電源インピーダンスの低下、また、レイアウトの自由度が増大を図れることはもとより、製造工程も簡単となるという利点がある。
【0008】また、この発明の構造では、基板の表面側での配線に追加して、基板の裏面側での多層配線構造で、所要の構成要素を選択して接続することが出来るので、高集積化した場合にも、チップ面積の拡大をせずに済むという利点がある。
【0009】
【実施例】以下、図面を参照して、この発明の実施例につき、説明する。なお、この実施例の説明で用いる各図は、この発明が理解出来る程度に、各構成成分の形状、大きさおよび配置関係を概略的に示してあるにすぎない。
【0010】図1の(A)および(B)は、基板の裏面側の配線構造を2層構造とした半導体装置の実施例を示す断面図および基板の裏面側から見た、平面的なレイアウトを示す図であり、図1の(A)および図1の(B)のA−A断面図である。
【0011】この実施例では、基板30として、例えば、半絶縁性のGaAs基板を用いる。この基板30の表面側に種々の所要の能動層を形成してあり、この能動層が形成されている表面を32aとし、裏面を32bとしてそれぞれ示す。この基板30の表面32a上の所要箇所に、回路構成要素である所要の金属電極34a,34b,34c,34d、34eを設けてある。そして、これら金属電極上に層間絶縁膜36を設け、この絶縁膜36に形成したコンタクトホール38aおよび38bを埋め込むようにして設けた表面側の金属配線層40で、2つの金属電極34dおよび34eを相互接続してある。この基板表面側の構造は、従来構造と変わらないので、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0012】この発明では、基板30の裏面側で接続しようとする各金属電極34a,34b,34cの下側の基板領域に、この基板30を貫通するバイアホール50a,50b,50c(以上、図1の(A)および(B)に示してある。)および50d(図1の(B)に示してある。)をそれぞれ設けてある。そして、このバイアホール50aおよび50bにこれらを埋め込むと共に、基板の裏面32b上に、両バイアホール間50aおよび50bを連絡するように、裏面側の第1の導電性材料層52を設けて金属電極34aおよび34bを相互接続してある。この状態を、図1の(B)図に示してある。
【0013】一方、金属電極34cとバイアホール50cを通じて相互接続すべき他方の金属電極は、図1の(A)および(B)には示していないが、この後者の金属電極は図1の(B)に示すバイアホール50dの上側に設けられている。従って、この実施例では、第1の導電性材料層52とは電気的に分離した第2および第3の導電性材料層54および56を、このバイアホール50cおよび50dを埋め込むようにして、それぞれ設けておく。そして、このバイアホール50cおよび50dを介して、それぞれの金属電極34cと、図示していない他方の金属電極とを電気的に接続するため、一旦、基板30の裏面側のこれら第1〜3金属電極を少なくとも被覆する絶縁層60を設け、この絶縁層60の所要の箇所にコンタクトホール62aおよび62bを設け、これらコンタクトホール62aおよび62bを第2および第3導電性材料層54および56で埋め込み、しかも、両導電性材料層54および56を電気的に接続するように、第4導電性材料層64を設ける。このようにすれば、図1の(B)にも示しているように、第1導電性材料層52と、第4導電性材料層64とは、絶縁層60を介在して互いに交差するため、両者が互いに電気的接触をする恐れは無い。
【0014】なお、図中62cは、絶縁層60に設けた別のコンタクトホールであり、64はこのコンタクトホール62cを介して第1導電性材料層52を他の、別の電極と接続するための、或いは、別の所要の電位点に接続するための第5導電性材料層である。
【0015】上述した、第1〜第5の導電性材料層52,54,56,64および66の各配線は互いに同一の材料で形成してもよいし、或いは、それぞれ異なる材料で形成してもよい。また、ひとつの導電性材料層を2種類以上の適当な材料層の多層構造として構成してもよい。また、これらの導電性材料としては、金属であっても、或いは、その他の導電性の良好な材料であってもよい。また、形成方法は、通常の蒸着方法はもとより、その他の適当な方法で行なえば良い。
【0016】このような、バイアホール構造を用いた2層配線構造であると、第4の導電性材料層すなわち第4配線64と、第5の導電性材料層すなわち第5配線66には、それぞれ個別の電位を与えることができる。
【0017】また、上述した実施例では、基板30の裏面側の配線層を2層構造としたが、バイアホールの接続関係とか、さらに多くのバイアホールが設けられている場合には、配線層は3層以上の層構造となる。その場合にも、当然のことながら、所要に応じて互いの配線層を絶縁膜をもって電気的に絶縁させる。
【0018】また、上述した実施例では、バイアホールの直下にコンタクトホールを設けない構成としている。しかしながら、場合によっては、例えば、バイアホールを埋め込む導電性材料層が、基板の裏面側で、充分に平坦化されている場合には、バイアホールの直下にコンタクトホールを設ける構造としてもよい。その実施例を図3の(A)および(B)に示す。図3の(A)は、図1の(A)と同様な図3の(B)のA−A線断面図であり、また、図3の(B)は図1の(B)と同様な、基板の裏面側から見た、平面的なレイアウト図である。なお、図3の(A)および(B)において、図1の(A)および(B)で説明したと同様な構成成分および構成要素については同一の番号を付して示してある。このような、構造であっても、配線層が段切れする恐れは無い。
【0019】また、上述した、図1の(A)および(B)の実施例および図2の(A)および(B)の実施例では、一部の構成要素、従って、2つの構成要素34aおよび34bをバイアホール50aおよび50bを経て1つの配線層52で互いに接続している構造となっている。しかしながら、そのような構成とせずに、2つの構成要素を2層以上の配線層を用いて接続するように構成してもよい。
【0020】図4は、このような、2つの構成要素を2層以上の配線層を用いて互いに接続する例を示す断面図である。同図において、図1の(A)に示した構成成分および構成要素と同一の番号は、同様な構成成分および構成要素をそれぞれ示している。この実施例では、先ず、各バイアホール52,54,56に1層目の埋め込み配線層、すなわち、第1配線層70a,70b,70cをそれぞれ導電性材料で形成する。次に、絶縁層80を設け、これにコンタクトホール82a,82b,82cをそれぞれ開けてから、第2配線層72a,72bを設ける。この実施例では、金属電極34aおよび34bは、第1配線層70a、第2配線82aおよび第1配線層70bを経て相互接続している構造となる。さらに、絶縁層84を設け、コンタクトホール86aおよび86bを開け、続いて第3配線層74aおよび74bを設けてる。この実施例の構造では、この第3配線層74aを第2配線層72aに接続し、第3配線層74bを第2配線層72bにそれぞれ接続した構造となっているので、金属電極34aおよび34bは、共通の電位点に接続されるが、金属電極34cとは別の電位点に接続することが出来る。もちろん、さらに 絶縁層、コンタクトホールおよび配線層を設けて金属電極34a、34bおよび34cを共通の電位点に接続するように構成することも出来る。
【0021】なお、上述した、各実施例では、基板30の表面側の配線層を1層構造の配線としたが、設計に応じて、2層以上の配線構造としてもよい。但し、その場合には、チップ面積の許容範囲を越えないように留意する必要がある。
【0022】
【発明の効果】上述したこの発明によれば、バイアホール構造を介して素子の構成要素を基板の裏面側で配線する際の、その配線を多層構造化している。従って、基板の裏面側で、基板の表面側に形成されている所要の選ばれた構成要素を共通な電位点に接続したり、或いは、互いに独立した複数の電位点に個別接続したりすることができる。このため、例えば、集積回路において、FETのソース接地と、ドレインの電源電圧印加を基板の裏面側より行なったとすると、従来の利点を保持しつつ、これに加えて、電源配線の冗長化を回避できる。よって、電源インピーダンスの低下が図られるので、電源電圧の均一性が向上すると共に、配線のレイアウトの自由度が一層増大するという利点が得られる。
【0023】さらに、半導体集積回路全体を見た場合、理論的には基板の裏面全面にわたって多層配線をめぐらすことが出来る。すなわち、基板裏面側での配線総数および配線密度は、従来の配線構造と比較して、この発明の配線構造の方が増大するので、同数の配線を基板表面側で行なう場合のチップ面積と、基板裏側で行なう場合のチップ面積とを比較すると、基板裏側に配線を行なったこの発明の場合の方が遥かにチップ面積を縮小することが出来る。
【0024】また、この発明によれば、基板裏面側には、配線禁止領域がないので、前述したレイアウトの自由度の増大とともに、製造工程が簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)および(B)は、この発明のバイアホール構造を用いた配線構造の一実施例の説明に供する断面図およびレイアウト図である。
【図2】(A)および(B)は、従来のバイアホール構造を用いた配線構造の説明に供する断面図およびレイアウト図である。
【図3】(A)および(B)は、この発明のバイアホール構造を用いた配線構造の他の実施例の説明に供する断面図およびレイアウト図である。
【図4】この発明のバイアホール構造を用いた配線構造の他の実施例の説明に供する断面図である。
【符号の説明】
30:基板、 32a:基板の表面、 32b:基板の裏面
34a,34b,34c,34d,34e:金属電極
36:層間絶縁膜
38a,38b,62a,62b,82a,82b,82c,86a,86b:コンタクトホール
40:金属配線層
50a,50b,50c:バイアホール
52:第1導電性材料層(配線層)
54:第2導電性材料層(配線層)
56:第3導電性材料層(配線層)
60,80,84:絶縁層、 66:第4導電性材料層(配線層)
70a,70b,70c:第1配線層
72a,72b:第2配線層
74a,74b:第3配線層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板の表面側に設けた素子構成要素を、基板に設けたバイアホールを経て、基板の裏面側で配線する、バイアホール構造を用いた配線構造において、所要の構成要素間の接続を互いに電気的に絶縁して行なう、多層配線構造としたことを特徴とするバイアホール構造を用いた配線構造。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−82659
【公開日】平成5年(1993)4月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−240106
【出願日】平成3年(1991)9月20日
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)