説明

バイオディーゼル産生のための固体触媒系

本発明は、効率的、安価、および環境に優しい触媒および触媒系を提供する。その触媒を、例えばバイオディーゼルを調製するための、エステル化および/またはエステル転移反応を触媒するために使用し得る。セメントキルンダスト(CKD)、または石灰キルンダスト(LKD)のようなキルンダストを、穏やかな条件下において高い収率で、様々な原料の酸および/またはエステルをバイオディーゼルへ変換するために使用し得る。CKDおよびLKD触媒系は、植物油および動物脂肪を含む様々な原料から、ダイズ脂肪酸メチルのようなバイオディーゼルを調製するために使用し得る、再生利用可能なエステル化またはエステル転移反応触媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この特許出願は、2007年10月30日に出願された米国仮特許出願第60/983,875号および2008年5月16日に出願された米国特許出願第12/121,918号(これらの内容は、その全体が参考として本明細書に援用される)の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
バイオディーゼル(biodiesel)は、生物分解性の、無毒性ディーゼル燃料として、徐々に有用になりつつある(非特許文献1)。バイオディーゼルの例は、ダイズディーゼル(ダイズ脂肪酸メチル(methyl soyate))、ナタネメチルエステル、および様々な植物および動物脂肪メチルエステルを含む。バイオディーゼル脂肪酸メチルエステル(FAME)は最近、環境的な問題であり、そして環境的影響の減少を生じる生物分解性の代用品によって置換するよう法的な圧力下にある、従来の石油由来の溶媒の、実現性のある代替物として受け入れられた。バイオディーゼルに関する関心は急速に高まりつつあるが、それが合成される過程は、近年実質的に変化していない。
【0003】
ダイズディーゼルは、現在エネルギーおよび労働集約型の過程によって商業的に調製され、ここでダイズ油を、高い温度(多くの場合140−150°F)において、そして多くの場合高圧下で、均一系触媒としてナトリウムメトキシドの存在下で、メタノールと反応させる。この過程は「エステル転移反応」と呼ばれる。高度に腐食性(毒性)の触媒およびグリセロールのような他の産物から、望ましいダイズ脂肪酸メチルを単離することは、塩酸(HCl)のような強酸による正確な中和過程、およびできた塩化ナトリウム(NaCl)塩を除去するための、水による徹底的な洗浄を含む。また、グリセロールを、減圧蒸留によって塩化ナトリウム塩から分離しなければならない。グリセロールは有意に高い沸点を有するので、その蒸留は高価およびエネルギー集約型操作となる(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5を参照のこと)。
【0004】
現在のバイオディーゼル調製過程は、メタノール中でのナトリウムメトキシドの高い溶解性のために、触媒を再利用することができない。さらに、中和、分離、および触媒の除去に必要な労働および物質は、経済的および環境的懸念を生じる。これらの問題を回避するために、世界中の研究者は、油からバイオディーゼルへのエステル転移反応のための固体触媒を開発してきた。例えば、マグネシウムメトキシド、酸化カルシウム、カルシウムアルコキシド、および水酸化バリウムのような、様々な塩基性金属酸化物が、エステル転移反応の活性な触媒であることが示された(非特許文献6)。しかし、これらの固体塩基触媒は、少なくとも部分的にメタノール中における固体金属酸化物および水酸化物の溶解性のために、ほとんど再生利用性がない、または全くない(非特許文献7)。
【0005】
よって、現在公知の触媒に関連する、溶解性、分離、および再生利用性の問題を有さない、バイオディーゼル産生のための、効率的、安価、および環境に優しい触媒の必要性が存在する。現在公知の方法に関連する問題を有さない、効率的、安価、および環境に優しいバイオディーゼル産生のための新規方法の必要性も存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】MaおよびHanna、Bioresource Technology(1999)70、1−15
【非特許文献2】Bender,M.、Bioresource Technology(1999)70、81
【非特許文献3】Diasakouら、Fuel(1998)77、1297
【非特許文献4】OgoshiおよびMiyawaki、J.Am.Oil Chem.Soc.(1985)62、331
【非特許文献5】Suppesら、J.Am.Oil Chem.Soc.(2001)78、139
【非特許文献6】Gryglewicz,S.、Applied Catalysis,A:General(2000)192(1)、23−28
【非特許文献7】Gryglewicz,S、Bioresource Technology(1999)70(3)、249−253
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、キルンダスト組成物および触媒としてキルンダストを用いる方法を提供する。セメントキルンダスト(CKD)は、バイオディーゼル産生のために、効率的、安価、および環境に優しい触媒であることが見出された。石灰キルンダスト(LKD)およびポルトランドセメントのような、他の酸化カルシウムを含むダストを、CKDの代わりに、またはCKDと組み合わせて使用して、本発明の触媒組成物を提供し得る。
【0008】
セメントキルンダスト、メタノール、およびダイズ油の単純な組み合わせは、ダイズ油のダイズ脂肪酸メチルへの変換を効率的に引き起こさないことが見出された。この混合物を長時間加熱した後でも、セメントキルンダストは望ましいエステル転移反応を十分触媒しなかった。しかし驚くべきことに、キルンダストを、メタノールのようなアルコール性溶媒に分散し、そして混合物を、キルンダストを活性化するために十分な時間加熱することが、堅牢かつ再生利用可能なエステル転移反応触媒系を提供することが発見された。様々な酸化カルシウムを含む粒子を、この手順によって活性化し得、その触媒組成物はエステル化反応および/またはエステル転移反応を触媒し得、そしてその触媒は数回再生利用され得る。
【0009】
よって、本発明は、キルンダストまたはポルトランドセメント、および(C−C)アルカノールを含む、再生利用可能なエステル化またはエステル転移反応触媒系を提供し、ここでそのキルンダストまたはポルトランドセメントの表面積は、1グラムあたり約0.2mから1グラムあたり約10mであり、そしてここでそのキルンダストまたはポルトランドセメントは、(C−C)アルカノールとの接触によって活性化されている。触媒の活性化を、約20℃より上、約25℃より上、または約30℃より上のような、適当な活性化温度で行い得る。使用するアルカノールに依存して、活性化温度は、およそそのアルカノールの還流温度であり得る。いくつかの実施態様において、その温度は約65℃、約78℃、約82℃、約97℃、または約100℃であり得る。
【0010】
キルンダストの表面積は、産生過程のために選択された型に依存して変化し得る。様々な実施態様において、その表面積はまた、1グラムあたり約0.2mから1グラムあたり約15m、1グラムあたり約0.3mから1グラムあたり約10m、1グラムあたり約0.5mから1グラムあたり約5m、1グラムあたり約1mから1グラムあたり約4m、または1グラムあたり約1mから1グラムあたり約2mであり得る。そのキルンダストは、1つまたはそれ以上の酸化カルシウム(CaO)、方解石(CaCO)、硬石膏(CaSO)、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、または石英(SiO)を含み得る。いくつかの実施態様において、そのキルンダストは、あらゆる他の単一のアルカリ土類金属成分よりも多くの酸化カルシウムを含む。
【0011】
上記キルンダストは、約10質量%から約80質量%のカルシウム原子、約15質量%から約65質量%のカルシウム原子、約20質量%から約60質量%のカルシウム原子、または約10質量%から約50質量%のカルシウム原子を含み得る。そのキルンダストはまた、約30−40質量%のカルシウム、または質量で約35%のカルシウムを含み得る。そのキルンダストは、例えば、例えばその調製または組成分析におけるか焼の前または後のいずれかで、少なくとも約15wt%、少なくとも約30wt%、少なくとも約45wt%、少なくとも約50wt%、または少なくとも約55wt%の酸化カルシウムを含み得る。そのキルンダストは、例えば、例えばその調製または組成分析におけるか焼の前または後のいずれかで、約95wt%までの酸化カルシウムを含み得る。そのキルンダストは、セメントキルンダスト、石灰キルンダストであり得る、またはその触媒は、ポルトランドセメント、またはその組み合わせであり得る。さらに、そのキルンダストは、CKD−5、CKD−BP、またはその組み合わせであり得る。
【0012】
上記触媒系は、固体酸、分子ふるい、またはそれらの両方を含み得る。その酸は、酸性メソポーラスケイ酸アルミニウム混合酸化物粒子(acidic mesoporous aluminum silicate mixed oxide particle)であり得る。その分子ふるい粒子は、水を吸収または吸着する。その固体酸および分子ふるい粒子を、開始材料の状態および望ましい過程の状態に依存して、方法のあらゆる工程において使用し得る。
【0013】
上記触媒系において使用される(C−C)アルカノールは、メタノールまたはエタノール、または直鎖または分岐(C−C)アルカノールであり得る。その触媒系は、セメントキルンダスト、石灰キルンダスト、またはその組み合わせを含み得る。その触媒系はさらに、脂肪酸またはエステル、例えばバイオディーゼルに変換されるものを含み得る。
【0014】
本発明はさらに、脂肪酸(C−C)アルキルエステルを調製するための方法を提供し、それは、キルンダストが対応する脂肪酸(C−C)アルキルエステルの形成を触媒するような条件下で、油を有効な量のキルンダストおよび(C−C)アルコールと接触させて、反応混合物を生じることを含む。その油は、グリセリドを含有する植物油、またはグリセリドを含有する動物油であり得、ここでグリセロールがエステル転移反応の副産物として産生される。その油は、使用済み調理油の原料であり得る、および/またはその原料油はさらに遊離脂肪酸、例えば家禽の脂肪のような動物脂肪由来のものを含み得る。その方法を、バッチ反応器において、または固定床フロースルー反応器、例えばカラム反応器において行い得る。その方法を、油、アルコール、および触媒の十分な接触を提供し得るあらゆる反応器において行い得る。例は、連続撹拌タンク反応器、高せん断ポンプ、混合チューブ、固定床反応器、または管状反応器を含む。反応容器を、バッチまたは連続的な過程で操作し得る。
【0015】
上記方法において、様々な量のアルカノールを使用し得る。反応の望ましいスピードおよび経済に依存して、より高いまたは低いモル比のアルカノールを採用し得る。(C−C)アルコール対油のモル比は、約600:1から約3:1であり得る。例えば、適当な比は、約560:1、約100:1、約93:1、約50:1、約40:1、約37:1、約20:1、約10:1、約5:1、または約3:1の比を含む。
【0016】
上記キルンダストを回収し、そして続く脂肪酸(C−C)アルキルエステルを調製する方法において再利用し得る。様々な型のキルンダストを数回、例えば5、10、15、17、または20またはそれ以上の回数、再生および再利用し得る。
【0017】
グリセリドを含有する植物または動物油の脂肪酸部分は、任意で不飽和C10−C24アルキル鎖を含み得、そしてここでそのC10−C24アルキル鎖は任意で1つまたはそれ以上の(例えば1、2、3、または4つの)不飽和、エポキシ化、水酸化、またはその組み合わせの部位を含む。
【0018】
エステルの形成を、(C−C)アルコール以外の溶媒を加えずに行い得る。(C−C)アルキルエステルの形成を、高い温度で、例えば約40℃より上で行い得る。反応条件に依存して、その形成を50℃から約130℃、例えば約65℃、約78℃、約82℃、約97℃、または約100℃で行い得る。そのエステルの形成をまた、1気圧より高い圧力で行い得る。例えば、そのエステルの形成を、約90psiまたは約100psiのような、約20psiから約150psiで行い得る。
【0019】
キルンダストおよび(C−C)アルコールを含む反応混合物を、セメントキルンダストおよび(C−C)アルコールを油および/または脂肪酸と接触させる前に調製し得る。そのキルンダストおよび(C−C)アルコールを、油および/または脂肪酸と接触させる前に加熱し得る。
【0020】
上記グリセリドを含有する動物油は、遊離の脂肪酸および任意で水を含み得る。そのような場合において、その方法は、動物油を分子ふるいと接触させることによって動物油を乾燥すること;遊離脂肪酸を固体酸に固定化すること;および任意でグリセリドを含有する動物油をキルンダストと接触させる前に、分子ふるいおよび固定化遊離脂肪酸を、グリセリドを含有する動物油から分離することを、任意の順序で含み得る。
【0021】
本発明はまた、動物脂肪からバイオディーゼルを調製する方法を提供する。よって、本発明は、1つまたはそれ以上の脂肪酸および任意で1つまたはそれ以上の脂肪酸グリセロールエステルを含む原料から、脂肪酸(C−C)アルキルエステルを調製する方法を提供する。その方法は、原料、(C−C)アルコール、セメントキルンダスト、石灰キルンダスト、またはポルトランドセメント触媒;任意で酸、および任意で分子ふるい粒子を、触媒が脂肪酸(C−C)アルキルエステルおよび脂肪酸グリセロールエステルが存在する場合にはグリセロールの形成を触媒する条件下で組み合わせることを含み得る。
【0022】
本発明はさらに、キルンダスト(またはポルトランドセメント)、アルカノール、例えばメタノール、および任意で分子ふるい粒子を含む混合物を調製すること;その懸濁物を約30℃より上、例えば約40℃、約50℃、約60℃、約67℃、または約70−100℃に加熱すること;キルンダストを原料に接触させて反応混合物を生じること;反応混合物を加熱して脂肪酸アルキルエステルを生じること;および脂肪酸アルキルエステルを反応混合物から分離することによって、1つまたはそれ以上の脂肪酸および任意で1つまたはそれ以上の脂肪酸グリセロールエステルを含む原料から、脂肪酸メチルエステルを調製する方法を提供する。本発明の様々な実施態様において、そのキルンダストは、セメントキルンダストまたは石灰キルンダストであり得る。この説明全体の他の実施態様におけるように、そのキルンダストをポルトランドセメントで置換し得る。
【0023】
本発明はまた、家禽の脂肪を含む原料から脂肪酸アルキルエステルを調製する方法を提供する。その方法は、遊離脂肪酸を固体酸に固定化するように、遊離脂肪酸を含む家禽の脂肪を固体酸と接触させること;家禽の脂肪を分子ふるい粒子と接触させて乾燥した家禽の脂肪を生じること;任意で固体酸および固定化遊離脂肪酸を家禽の脂肪から濾過すること、および任意で分子ふるい粒子を乾燥した家禽の脂肪から濾過すること;家禽の脂肪をキルンダストまたはポルトランドセメント、およびメタノールと接触させて、反応混合物を生じること;その反応混合物を高い温度、例えば約40℃より上に加熱して脂肪酸アルキルエステルを生じること;そしてその脂肪酸アルキルエステルを反応混合物から分離することを含み得る。
【0024】
1つの実施態様において、そのアルカノールはメタノールであり得、そしてその高い温度は、そのアルカノールの還流温度であり得る。あらゆる有効な量のキルンダストを採用し得る。キルンダストのwt%は、グリセリドを含有する植物または動物油、または乾燥した家禽の脂肪のような原料の重量に関して、約0.1wt%から約50wt%、約2wt%から約30wt%、約3wt%から約25wt%、約4wt%から約15wt%、または約3wt%から約10wt%であり得る。ある実施態様において、約3wt%から約5wt%、または約4wt%のキルンダストが、適当な量の触媒を提供する。いくつかの実施態様において、約0.5wt%、約1wt%、約3wt%、約4wt%、約5wt%、約10wt%、または約15wt%のキルンダストが、適当な量の触媒を提供する。反応条件はまた、1気圧より高い圧力(例えば約50−150spi)の使用、超音波処理、空洞化、超音波、またはその組み合わせの使用を含み得る。
【0025】
いくつかの実施態様において、そのバイオディーゼル産物は、残留量の検出可能なカルシウムを含み得る。残留カルシウムを、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析またはICP質量分析のような、当業者に周知の標準的な技術によって検出し得る。その産物は、反応条件および産物を反応混合物から分離するために使用した技術に依存して、例えば約1ppmから約1000ppmのカルシウム原子、典型的には約5ppmから約500ppm、または約50ppmから約500ppmを含み得る。そのカルシウムは、例えばカルシウム原子、カルシウムイオン、または酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムのようなカルシウム化合物であり得る。
【0026】
本発明はさらに、ダイズ脂肪酸メチルを産生するための方法を提供し、それはダイズ油、メタノール、およびキルンダストを、キルンダストがグリセロールおよびダイズ脂肪酸メチルの形成を触媒する条件下で接触させることを含む。その条件は、高い温度および/または1気圧より高い圧力を含み得る。その条件はまた、超音波処理、空洞化、超音波、またはその組み合わせの使用を含み得る。
【0027】
以下の図面は、本明細書の部分を形成し、そして本発明のある実施態様または様々な局面をさらに示すために含まれる。いくつかの例において、本発明の実施態様を、本明細書中で示される詳細な説明と組み合わせて付随する図面を参照することによって最もよく理解し得る。その説明および付随する図面は、本発明のある特定の実施例、またはある局面を強調し得るが、当業者は、実施例または局面の部分を、本発明の他の実施例または局面と組み合わせて使用し得ることを理解する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の1つの実施態様による、CKD触媒によるダイズ油のバイオディーゼルへの触媒的変換を示す。CKD−5(油の重量に関して4.3wt%の固体触媒)は、30分以内に完全な変換を示す。1.7wt%のCKD−BPを用いて、その反応は15分で完了した。反応条件:180mLのMeOH中7.5mLのダイズ油;油に対するMeOHのモル比は561であった;油に対するMeOHの容積比は24であった。
【図2】図2は、1つの実施態様による、ダイズ油のバイオディーゼルへの変換に対する、様々な量のメタノールの影響を示す。
【図3】図3は、1つの実施態様による、CKD−5およびCKD−BPの再生利用性研究を示す。反応条件:64.7℃において48mLのMeOHおよび30mLのダイズ油中、1.2gのCKD触媒;油に対するMeOHのモル比は37であった;油に対するMeOHの容積比は1.6であった。
【図4−1】図4は、1つの実施態様による、CKD触媒の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す。無定形、無秩序な構造が、CKD−5サンプルで観察され、そしてCKD−BPサンプルに関しては細かい粒子を有する、より球形の形態が示された。(a)CKD−5(5,000×);(b)CKD−BP(5,000×);(c)CKD−BP(50,000×);(d)17サイクルの反応後のCKD−BP(5,000×)。
【図4−2】図4は、1つの実施態様による、CKD触媒の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す。無定形、無秩序な構造が、CKD−5サンプルで観察され、そしてCKD−BPサンプルに関しては細かい粒子を有する、より球形の形態が示された。(a)CKD−5(5,000×);(b)CKD−BP(5,000×);(c)CKD−BP(50,000×);(d)17サイクルの反応後のCKD−BP(5,000×)。
【図5A】図5は、1つの実施態様による、様々なCKD触媒の粉末XRDプロットを示す。(a)バイオディーゼル産生のための触媒として評価された、4つのカルシウムを含む物質(CaO、CaCO、Ca(OH)、およびCaSO)および3つのCKD物質(CKD−BP、CKD−ESP、およびCKD−5)。
【図5B】図5は、1つの実施態様による、様々なCKD触媒の粉末XRDプロットを示す。(b)8サイクルの反応前および後のCKD−5。
【図6】図6は、CKD−ESP、CKD−BP、CKD−5、およびフライアッシュの粉末XRDプロットを示す。CKD−ESPおよびフライアッシュは、CKD−BPおよびCKD−5のXRDプロットにおいて見出し得る強いCaOのピークを欠くことを観察し得る。
【図7】図7は、1つの実施態様による、LKDの再生利用性研究を示す。反応条件:メタノール中8.7wt%のLKD触媒;ダイズ油容積(VSBO)に対するメタノール容積(VMeOH)の比=0.5;ダイズ油(nSBO)に対するメタノール(nMeOH)のモル比=12;反応を160°F(約71℃)で行った。反応収率を、2時間で測定した。
【図8】図8は、CaOおよびCaCOと比較した、異なる供給源由来の様々なLKDサンプルの粉末XRDプロットを示す。LKDサンプルは同様のXRDパターンを生じ、それぞれ特徴的なCaOおよびCaCOピークを示した。
【図9】図9は、2つの異なる解像度における、1つのLKDサンプル(LKD−2)の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す:(a)右下のサイズバーは500nmに相当する、および(b)右下のサイズバーは20μmに相当する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
セメントキルンダスト(「CKD」)は、ポルトランドセメントのような、セメントの製造の副産物である。CKDはきめの細かい固体であり、そしてセメントキルン排気ガスから除去される高度にアルカリ性の廃棄物物質である。この物質は、セメント製造過程の間にダスト回収システムによって集められる細かい粒子から成る。CKD粒子は、典型的には約0.1および約100ミクロンの間の粒子サイズ、および典型的には約2.6から約2.8の範囲の比重を有する。それらは、硫酸塩、ハロゲン化物、および他の揮発性物質を含む、部分的にか焼された、および未処理のそのままの原料、クリンカーダスト、および燃料灰の粒子性混合物から成る。CKDは典型的には土地に基づく処分ユニット、すなわちごみ埋立地、廃棄物の山、または表面貯留地(surface impoundment)に処分される。
【0030】
約6百万メートルトン(metric ton)のキルンダストが、セメントキルンによって毎年捨てられる。約510万トンが現場で埋められ、そして90万トンが他の廃棄物(下水汚泥のような)の安定化に、または農場における土壌添加物として使用するために敷地外へ運ばれる(「Report to Congress on Cement Kiln Dust」、United States Environmental Protection Agency、Office of Solid Wastes、1993年12月)。セメントキルン付近の大気汚染の可能性が、最近10年の間のCKDの新しい適用を発見するための研究活動を引き起こした(DaughertyおよびWist、Bull.Am.Ceram.Soc.54(1975)189を参照のこと)。
【0031】
「CKD−BP」、「CKD−ESP」、「CKD−5」という用語は、ポルトランドセメントの産生から回収されたCKDバッチの型を指す。成分分析およびX線粉末回折分析に基づいて、CKD−BPは典型的には約38wt%のカルシウムを有し、ここで約80%超のカルシウムは、酸化カルシウムの形態である。CKD−ESPは典型的には、約31wt%のカルシウムを有し、約80%超のカルシウムは炭酸カルシウムの形態である。CKD−5は典型的には約40wt%のカルシウムを有し、ここで約50%のカルシウムは酸化カルシウムの形態であり、そして残りのカルシウムは主に炭酸カルシウムおよび/またはケイ酸カルシウムの形態である。
【0032】
「バイパスCKD」および「CKD−BP」という用語は、予備か焼キルンのアルカリバイパスから回収されるキルンダストを指し、それは典型的には、例えばCKD−5またはCKD−ESPと呼ばれるCKDバッチのような、アルカリバイパスユニットから回収されないCKDよりきめが粗く、よりか焼され、そしてアルカリ揮発性物質が濃縮されていることが観察された。CKD−BPはアルカリバイパスシステムから回収され、それはキルンの予備加熱システムにおいて揮発性の成分の量を抑制するために採用される。
【0033】
アルカリバイパスシステムは、キルンシステムから高度に濃縮された揮発性成分を含むキルン排気ガスを除去する。キルン排気ガスは、約1100℃において、抽出ダクトを通じてキルンから抽出される。キルン排気ガスを次いで冷却室に入れ、そしてそこで送風機からの冷却空気と混合して、ガスの温度を約400℃から約450℃まで下げる。キルン排気ガス中の揮発性成分を、次いでガス温度を下げることによって、ダストの表面に濃縮する。ガスの温度を次いで、調整タワー(conditioning tower)において水の霧をスプレーすることによって、約150℃に下げる。ガス中のダストを次いで、静電集塵器によって回収し、そして残りのガスを、送風機を通じて大気中に排気する。ダストは粒子表面に揮発性成分を含むので、調整タワーおよび静電集塵器によって回収されたダストを、廃棄物として処理する。「ESP」という用語は、静電集塵を指し、それはキルンダストを捕捉するために使用される方法の1つであり、そしてこの方式で回収されたキルンダストを指すために使用される用語である。
【0034】
石灰キルンダスト(「LKD」)は、石灰セメントの製造の副産物である。LKDは、キルンに入れられた細かく粉砕された石灰石由来のダスト、およびキルンを加熱するために使用した燃料(例えば石炭、燃料油、天然ガス)由来のフライアッシュの混合物である。キルンにおいて、石灰石(CaCO)は生石灰(CaO)に変換される。石灰キルンダスト(LKD)は、物理的にはセメントキルンダストと類似しているが、化学的にはかなり異なる。LKDは、高カルシウム石灰(化学石灰、消石灰、生石灰)またはドロマイト石灰のいずれが製造されるかに依存して、化学的に異なり得る。LKDの粒子サイズは、直径または長さで(形に依存して)約50ナノメートルから約3mm、典型的には最も大きい寸法で約100ナノメートルから約2mmであり得る。表面積は、約0.05m/gから約5m/g、典型的には約0.1m/gから約2m/gであり得る。その粒子は、球状体または不規則な形であり得る。
【0035】
Cement and Concrete Terminology(ACI Committee 116)において、フライアッシュは、「煙道ガスによってボイラーを通じて火室から移動する、粉砕された、または粉末の石炭の燃焼から生じる、細かく分割された残渣」と定義される。フライアッシュは、石炭を燃やす発電プラントの副産物である。使用される石炭の型によって、フライアッシュの2つの分類がなされる。無煙炭および瀝青炭は、クラスFと分類されるフライアッシュを産生する。クラスCのフライアッシュは、褐炭または亜瀝青炭を燃焼させることによって産生される。クラスCのフライアッシュが、Green Building Guideにおいて示された適用のためには好ましく、そしてレディーミックスの供給業者から住居用適用のために提示される主な型である。フライアッシュの成分分析は、その組成に関して以下のデータを提供する:
【0036】
【化1】

「エステル転移する」、「エステル転移」、および「エステル転移反応」という用語は、新規に形成されたエステルおよびグリセロールを形成する、(C−C)アルカノールまたは(C−C)アルカノールのようなアルコールによる、脂肪または油のグリセリルエステルのアルコーリシスを指す。新規に形成されたエステルのアルカノールは、エステル転移反応に使用されたアルコール由来である。対応する(C−C)アルキルエステルおよびグリセロールを生じる、モノ、ジ、またはトリグリセリドのエステル転移反応に関して、グリセリドのグリセロール部分を、(C−C)アルコールで置換し、従ってグリセロールをモノ、ジ、またはトリグリセリドから遊離させる。バイオディーゼル産生において、重力沈降、遠心分離、蒸留、またはその組み合わせによって、グリセロールをバイオディーゼルから分離し得る。
【0037】
「エステル」、「(C−C)アルキルエステル」および「脂肪酸(C−C)アルキルエステル」という用語は、それらが示される文脈において読まれるべきである。当業者は、「エステル」という用語が典型的には、グリセリド、植物油、動物油、または他の原料油由来のような、開始物質のエステルを指し、そして対応する「(C−C)アルキルエステル」は油のエステル転移反応の産物を指すことを容易に認識する。同様に、「脂肪酸(C−C)アルキルエステル」という用語は、開始物質脂肪酸または開始物質脂肪酸グリセリルエステルの(C−C)アルキルエステルを指す。
【0038】
脂肪酸は、炭素鎖の長さおよび不飽和結合の数において異なり得る。植物油は、典型的には脂肪酸の組み合わせから成る。通常の植物油は、キャノーラ、ココナッツ、コーン、綿実、ハマナ、ヤシ、ピーナッツ、ナタネ、ダイズ、およびヒマワリの油を含む。これらの油は、典型的には各炭素鎖に0、1、2、または3つの不飽和部位を有する、C10−C30脂肪酸、またはC16−C24脂肪酸の組み合わせを含む、様々な量の脂肪酸を含む。これらの脂肪酸のいくつかの例は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸を含む。動物脂肪および油は、典型的には同様に脂肪酸の組み合わせから成る。動物油は、ラードおよび獣脂を含む様々な形態で提供され得る。
【0039】
「原料」という用語は、ある量の1つまたはそれ以上の脂肪酸グリセロールエステル、1つまたはそれ以上の脂肪酸、任意で他の物質、およびその組み合わせを指す。原料は、動物脂肪およびレストランの廃油のような、植物油および動物油を含む。原料は、大量の酸およびエステル、例えば約1から100キログラムを指し得る。
【0040】
「脂肪酸(C−C)アルキルエステル」という用語は、(C−C)アルカノールでエステル化された脂肪酸を指す。この説明を通じて、(C−C)アルカノールは、(C−C)アルカノールで置換し得、そしてその使用の関係に依存して、逆も同じである。
【0041】
「グリセリドを含有する植物または動物油」という用語は、グリセロールのモノ、ジ、またはトリエステルを含む植物または動物油を指す。
【0042】
「C10−C24脂肪酸エステル」という用語は、C10−C24脂肪酸のエステルを指し、ここでその分子の脂肪酸部分は、飽和であり得る、または1つまたはそれ以上の不飽和、エポキシ化、水酸化、またはその組み合わせの部位を有し得る。例えば、その脂肪酸エステルは、1、2、3、4、またはそれ以上の、不飽和、エポキシ化、水酸化、またはその組み合わせの部位を有し得る。ある実施態様において、特定の例は、パルミチン酸メチル(ヘキサデカン酸メチルエステル)、オレイン酸メチル((9Z)−オクタデカ−9−エン酸)、ステアリン酸メチル(オクタデカン酸メチルエステル)、リノール酸メチル(cis,cis−9,12−オクダデカジエン酸メチルエステル)、リノレン酸メチル、その様々な水素付加したバージョン、その他のアルキルエステル、およびそのあらゆる組み合わせを含む。これらのエステルを、酸およびメタノールのようなアルカノールの縮合によって調製し得る。C10−C24炭素鎖は、分岐または分岐なしであり得、そしてC16−C24、C10−C18、C10−C20、C12−C18、またはC12−C20のような、様々な中間の長さであり得る。約4炭素から約30炭素のあらゆる鎖長の脂肪酸を、本発明の関係において使用し得る。
【0043】
「グリセロールのモノ、ジ、またはトリエステル」という用語は、グリセロールの1、2、または3つの水酸基が水素原子を失い、そして適当な数の有機酸とエステル結合を形成したグリセロール分子を指す。
【0044】
「ダイズ脂肪酸メチル」という用語は、ダイズ油の脂肪酸または脂肪酸部分のメチルエステルを指す。
【0045】
「エステルの酸部分」という用語は、エステルのカルボキシル(−C(=O)−O−)部分を指す。
【0046】
「エステルの遊離アルコール」という用語は、アルカノール部分が加水分解、アルコール分解、または他の方法でエステルのカルボキシル部分から遊離した後の、エステルのアルカノール部分を指す。
【0047】
「(C−C)アルコール」および「(C−C)アルカノール」という用語は、ヒドロキシル基を含む炭素または炭素原子のグループを指す。例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ペンタノール、sec−ペンタノール、およびピバリロール(pivalylol)を含む。(C−C)アルカノールは、これらのグループのいずれか1つ、またはその組み合わせであり得る。(C−C)アルカノールは、分子内に最大4つの炭素原子を有する同様のカテゴリーである。
【0048】
「固体酸触媒」は、遊離脂肪酸のエステル化を触媒し得る酸性の部位を含む物質である。例は、例えばAl−MCM、ゼオライト、スルホン酸で官能化された(sulfonic−functionalized)SBAまたはMCM物質等を含むがこれに限らない。
【0049】
「酸性メソポーラスケイ酸アルミニウム混合酸化物(Al−MCM)」という用語は、酸化アルミニウムおよび酸化シリコンの多孔性複合体である、典型的には直径約1nmから約100nm、多くの場合直径約1nmから約20nmの粒子を指し、そしてそれは粒子表面に酸性部位を有する。Al−MCMを、例えば反応混合物中のアルカリ性物質を隔離するために、固体酸として使用し得る
「分子ふるい」は、ガスおよび/または液体の吸着剤として使用する、正確および均一なサイズの小さい孔を含む物質である。分子ふるいは多くの場合、乾燥剤として機能する。分子ふるい4Aのような、典型的な分子ふるいは、それ自身の重量の22%まで水を吸着し得る。多くの場合それらはアルミノケイ酸ミネラル、粘土、多孔性ガラス、微細孔性木炭、ゼオライト、活性炭素、または窒素および水のような小分子が拡散し得る開放性の構造を有する合成化合物から成る。分子ふるい3A(孔サイズ3Å)は、NHおよびHOを吸着するが、Cは吸着せず、そして極性の液体および様々な無極性の液体を乾燥するために適当である。分子ふるい4A(孔サイズ4Å)は、HO、CO、SO、HS、C、C、C、およびEtOHを吸着する。分子ふるい4Aは、Cおよびより大きい炭化水素を吸着せず、そして無極性の液体およびガスを乾燥するために適当である。
【0050】
触媒系を調製/活性化する方法
上記触媒は、例えば1gあたり約0.05mから1gあたり約10m、1gあたり約0.1mから1gあたり約5m、1gあたり約0.3mから1gあたり約3mの表面積を有するキルンダストを含む、エステル化またはエステル転移反応触媒である。そのキルンダストは、セメントキルンダストまたは石灰キルンダストであり得る。再生利用可能なエステル化またはエステル転移反応触媒系を、セメントキルンダストおよびメタノールを組み合わせることによって調製し得る。キルンダストの反応性を、室温より上の温度、例えば約25−80℃、約35−70℃、または約50−65℃で、または(C−C)アルコールの還流温度まで、および/またはそれを含む温度で、キルンダストをメタノールと接触させることによって増加させ得る。アルコール活性化期間は比較的短く、例えばある条件下で1、5、または10から約30分であり得る、またはそれは数時間、例えば1−3時間、またはそれ以上まで延長し得る。
【0051】
上記エステルは、C10−C24脂肪酸エステルであり得る。別の実施態様において、そのエステルはC16−C24脂肪酸エステルであり得る。C10−C24脂肪酸エステルまたはC16−C24脂肪酸エステルのアルキル鎖は、飽和であり得る、または1つまたはそれ以上の不飽和またはエポキシ化部位を有し得る。別の実施態様において、その脂肪酸エステルは、1、2、3、または4つの不飽和、エポキシ化、またはその組み合わせの部位を有する。
【0052】
あらゆる様々なエステルを、本発明の触媒でエステル転移し得る。その触媒は、グリセリドエステルをエステル転移するのによく作用する。そのグリセリドエステルは、グリセロールのモノ、ジ、トリエステルであり得る。1つの特定の実施態様において、そのエステルはトリグリセリドである。
【0053】
あらゆる様々なアルコールを、エステル転移されるエステルのアルカノール部分を置換するために使用し得る。そのアルコールは、典型的には(C−C)アルコールである。その(C−C)アルコールは、メタノールまたはエタノールであり得る。他の実施態様において、その(C−C)アルコールは、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、またはその組み合わせであり得る。
【0054】
本明細書中で記載された触媒の1つの利点は、化合物をエステル化またはエステル転移するために使用したアルコール以外に、他の溶媒が必要でないことである。従って、産物エステル(例えばバイオディーゼル)の形成を、溶媒を加えることなく行い得る。他の実施態様において、開始油の溶解性、粘性、または他の性質を変化させるために、有機溶媒を加え得る。そのような溶媒は、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、またはジオキサンのようなエーテル溶媒;ペンタンまたはヘキサンのような炭化水素溶媒;アセトンまたはt−ブチルメチルケトンのようなケトン;またはその組み合わせを含む。
【0055】
触媒を調製した後、例えば、焼結ガラス漏斗を通して、デカントまたはろ過を含む、様々な技術によって、反応混合物から粒子を回収し得る。その触媒は、5回より多くの触媒の使用および回収後に触媒活性を維持し得る。ある実施態様において、その触媒は10回より多く、16回より多く、または20回より多くの触媒の使用および回収後に触媒活性を維持し得る。
【0056】
キルンダストは、植物油だけでなく、ほとんどの現在公知のエステル化およびエステル転移反応触媒で重要な問題である、高い遊離脂肪酸含有量を有する油での効率的な触媒として作用する。高い遊離脂肪酸含有量の油は、ニワトリ脂肪および使用済み調理油を含む。
【0057】
触媒としてキルンダストを使用する利点は、それが洗浄または中和なしに反応混合物から容易に分離し得る、不溶性の不均質な触媒であることを含む。その触媒物質は、続く触媒反応において使用するために、容易に再生される。その触媒系のための物質は、セメント産生から生じる廃棄物由来であり、従ってその触媒は広く入手可能であり、そして典型的にはコストなしで入手可能である。活性化過程は、非常にコストが低い。その触媒物質は、反応における触媒として繰り返し使用した後でも安定である。最後に、その触媒は高度に活性であり、迅速に(多くの場合1時間未満で)そして穏やかな条件下で、油からバイオディーゼルを産生する。
【0058】
触媒活性化過程の例は、以下の方法を含む。バッチ反応のための触媒を活性化する1つの方法は、原料油に加える前に、触媒をアルコール(例えばメタノール)に懸濁することを含む。懸濁物を撹拌することは、活性化を改善し得る。撹拌を、約20分、約30分、約1時間、または一晩(約8−12時間)行い得る。典型的には、少なくとも約20分の撹拌が、触媒の適当な活性化を生じる。別の方法は、撹拌せずに、しかし活性化時間の間定期的に、振とうのようないくらかの振動によって、触媒をメタノールに浸透させることを含む。この活性化手順を、例えば、少なくとも約20分間行い得る。両方の方法が、適当に活性化された触媒系を提供した。連続的過程のための活性化を、任意で振動および/または加熱と共に、続く量の原料と接触する前に、ある期間、触媒を新しいアルコールで流すことによって行い得る。
【0059】
触媒の活性が低下した後でさえ、例えば約15−20反応サイクルの後、触媒はまだ再生し得る。触媒再生過程を、以下のように行い得る。再生利用試験は、触媒は多くの回数再利用し得ることを示した。ある数のサイクル(例えば15−20より多く)の後、触媒はより低い反応性を提供し得る。ある時点で、その触媒は実質的に不活性になり得る。減少した活性を有する触媒を、適当な温度でか焼することによって、完全な活性へ再生し得ることが見出された。
【0060】
本明細書中で記載された方法によって産生し得るバイオディーゼルは、ますます石油に基づく燃料の実行可能な生物分解性の代替物になりつつある。反応の副産物であるグリセロールは、様々な美容および食品での使用を有し、そしてまた航空機の除氷処方のような、様々な適用のために、石油に基づくエチレングリコールおよびプロピレングリコールの生物分解性の代替物として調査中である。さらに、そのキルンダスト触媒系は、通常使用される酸化カルシウムよりも容易にバイオディーゼル反応混合物から分離され、有意により高い触媒の再生およびバイオディーゼルのより経済的な産生コストを可能にする。
【0061】
触媒作用の方法
バイオディーゼル産生のための触媒としてキルンダストを利用することは、非常に活性な、再利用可能な不均一触媒を提供するだけでなく、そうでなければごみ埋立地に廃棄されて環境問題およびセメント会社に経済的負担を生じるこの固体に適用を与える。
【0062】
セメント産生由来の廃棄物であるCKDが、ダイズ油を含む様々なグリセリドおよび油のエステル転移反応の、高度に活性な不均一触媒として作用し得ることが示された。さらに、CKDは、遊離の脂肪酸および動物脂肪組成物を含む、様々な脂肪酸、グリセリド、脂肪、および油のエステル化反応の高度に活性な不均一触媒として作用し得る。この不均一固体触媒系の反応性および再生利用性を調査した。例えば、CKDは、還流メタノール中で約65℃において、約2時間で100%の収率で、ダイズ油のダイズ脂肪酸メチル(バイオディーゼル)へのエステル転移反応を触媒し得る。いかなる精製も無しに、その触媒を16回より多く再生および再利用し得る。また、固体酸触媒および/または分子ふるいと組み合わせて、CKDは、穏やかな反応条件下で家禽の脂肪をバイオディーゼルへ効率的に変換し得ることが発見された。石灰キルンダスト(LKD)は、CKDのものと同様の、および時にはそれより上の触媒活性を提供し得る。
【0063】
バイオディーゼル産生過程を、スキーム1で下記のように示し得る。多くの現在公知の塩基触媒は、遊離脂肪酸によって破壊されるが、キルンダスト触媒系は、単に固体酸性粒子のような酸、例えば酸性メノポーラスケイ酸アルミニウム混合酸化物を加えることによって、アルコールが存在する場合、動物脂肪および様々なレストランの油さえも、直接バイオディーゼルへ簡便に変換し得る。分子ふるいのような乾燥剤を使用することも、触媒の再生利用性の保存を助けることに加えて、エステル化またはエステル転移反応を促進することを助け得る。
【0064】
【化2】

スキーム1において模式的に示した、高い遊離脂肪酸含有量を有する動物および植物油のエステル転移反応に関して、水酸化ナトリウムのようなアルカリ性触媒を使用することは、産物の損失および産生されたバイオディーゼルの分離および精製における困難を生じる、比較的大量の石鹸の形成のために望ましくない。キルンダスト触媒活性は、遊離の脂肪酸によって負の影響を受けず、そして実際、下記の実施例において説明するように、動物または植物油のエステル転移反応の前にそのような遊離の脂肪酸をエステル化するために使用し得るので、キルンダストの使用はこの問題を回避する。
【0065】
以下の実施例は、上記の発明を説明することが意図され、そしてその範囲を狭めるように解釈されるべきではない。当業者は、実施例が、本発明を実施し得る多くの他の方法を示唆することを容易に認識する。本発明の範囲内に留まりながら、多くの変化および修飾がなされ得ることが理解されるべきである。
【実施例】
【0066】
物質の一般的な説明:
セメントキルンダストの未処理の物質を、特にLehigh Cement Company、Lafarge Corporation、Holcim Inc.、およびSt.Mary’s Cement Inc.を含む、いくつかの商業的セメント供給業者から得た。メタノールをFisherから購入し、そして他に述べなければ受け取ったまま使用した。無水メタノールを、アルミナカラム(Pure Solv MD−5)を含む溶媒精製システムから得た。分子ふるい4AをFisherから購入し、そして液体の脱水のために使用した。分子ふるいを、最初の使用後、減圧下で4−5時間、150℃で再活性化した。ゴムを除去したダイズ油を、West Central Co−op(Iowa)から得た。2つの型のニワトリ脂肪、1つはWest Central Co−op(Iowa)由来のPF(I)と示されるもの、およびIowaの農場によって寄付されたPF(II)と呼ばれる他のものを調査した。ポルトランドセメントは、Holcim、タイプ1、タイプGUであった。Nanopure水(18.1MHz)を、実験室の蒸留水をBarnstead E−pure水精製システムを通すことによって得た。
【0067】
実施例1.セメントキルンダスト(CKD)によるダイズ油エステル転移反応
エステル転移反応の典型的な手順は以下のようであった。メタノール(180mL、4.44モル)を、0.3gのセメントキルンダスト触媒に加え、そしてできた懸濁物を還流条件下で30−40分間撹拌して、触媒を活性化した。ダイズ油(6.9g、7.9mmol)を次いで触媒組成物混合物に加え、そしてその反応を還流条件下(〜64.7℃)で30分間撹拌した。油に対する固体触媒の重量パーセンテージは4.3であり、そして油に対するメタノールの容積比は24であった。サンプルアリコートを様々な時間間隔で反応混合物から取った。そのアリコートを、CDCl中でH NMRによって分析した。反応が完了した後、反応混合物を、ガラスフリットを通してろ過し、そして最低限の量のメタノールですすいだ。ICP−MS分析は、未精製の産物混合物(バイオディーゼル、グリセリン、およびメタノール)は、約20−140ppbのカルシウムイオンを含んでいることを示した。バイオディーゼルおよびグリセリンの最終的な産物を、減圧下であらゆる残留メタノールを除去することによって、ろ液から単離した。
【0068】
収率の決定
エステル化変換パーセンテージを、H NMR分析によって決定した。NMRスペクトルを、CDCl中で得た。〜3.6ppmに位置するメチルプロトンに対する、〜2.3ppmに位置するメチレン水素の比を決定することによって、変換を計算した。変換が進行するにつれて、トリグリセリドバックボーンの特徴的なピーク(〜3.7−4.2ppm)は消失する。
【0069】
ダイズ油のバイオディーゼルおよびグリセロールへの、実質的に完全な変換を達成するために、CKD−5およびCKD−BP触媒は、それぞれ30分および15分の反応時間しか必要としなかった(図1を参照のこと)。しかし、CKD−ESPは、これらの反応条件下でほとんど反応性を示さなかった。
【0070】
活性化の有効性
CKD触媒を、原料に加える前にメタノール中で撹拌した。結果は、原料をCKD触媒と同時に加えた場合には10%より低い収率が得られ、一方触媒をメタノール中で、64.7℃で30分間撹拌することによって活性化した場合には100%の収率が得られたことを示した。この反応性において観察された違いは、固体触媒をメタノール中に均一に懸濁し、潜在的に大きい接触領域を提供することの利点に起因し得る。CKDの表面はまた、まずメタノールに接触することによって活性化されることから利益を得ることができる。
【0071】
実施例2.相対的なメタノール量の影響
この実施例においてCKD−5を触媒として使用した。図2は、バイオディーゼル産生反応における、メタノールの量の影響を示す。図2に示すように、より多い量のメタノールの使用は、より速い反応を引き起こした。ダイズ油(「SBO」)に対するMeOHのモル比を561に設定した場合、反応全体は30分で完了した。しかし、nMeOH:nSBOのモル比がそれぞれ93および37であった場合、100%の変換を得るのに1.25時間および3時間が必要であった。より低いメタノール比によるより遅い反応にも関わらず、高度に経済的な条件下(例えばより低いメタノール添加)においてこの反応の可能性を評価するために、モル比nMeOH:nSBO=37を標準的な手順として使用した。
【0072】
2.1.CKDはダイズ油:561eq.MeOHのバイオディーゼル産生を触媒した
セメントキルンダスト(CKD−5)(0.3g)を、180mLのメタノールに加え、そしてその混合物を65℃で撹拌して触媒を均一に分散した。約30分間撹拌した後、7.5mLのダイズ油を導入し、そしてその反応混合物を65℃で撹拌した。ダイズ油のメチルエステル(バイオディーゼル)への変換は、30分で完了した。未精製の産物混合物を、ガラスフリット漏斗を通してろ過し、そして産物を含むろ液を減圧下で蒸発させてメタノールを除去した。メチルエステル(バイオディーゼル)の収率を、H NMRによって分析した。
【0073】
2.2.CKDはダイズ油:93eq.MeOHのバイオディーゼル産生を触媒する
上記の手順と同様に、セメントキルンダスト(CKD−5)(0.4g)を、40mLのメタノールに加え、そしてその混合物を65℃で撹拌した。約40分後、10mLのダイズ油を導入し、そして反応を65℃で撹拌した。反応は1.25時間で100%の収率に達した。
【0074】
2.3.CKDはダイズ油:37eq.MeOHのバイオディーゼル産生を触媒する
セメントキルンダスト(CKD−5)(0.8g)を、32mLのメタノール中で、65℃で約40分間撹拌した。ダイズ油(20mL)を導入し、そしてその反応混合物を65℃で撹拌した。エステル転移反応は、3時間で完了したことが見出された。
【0075】
実施例3.セメントキルンダスト(CKD)触媒の再生利用性試験
触媒として不均一な物質を用いることの重要な利点は、その固体触媒を再生および再利用する能力である。触媒の再生利用を、反応の最後に混合物の単純なろ過によって達成した。回収した触媒を、いかなる精製も無しに、再び同じ反応条件下で使用した。触媒CKD−BPを、ダイズ油エステル転移反応のために17回まで再利用し得た(図3)。著しいことに、連続的な反応それぞれにおいて、有意な活性の損失はなかった。化学的組成および微細構造の違いのために、CKD−5は、同じ条件下で、ダイズ油エステル転移反応のために8回まで再利用し得る。他の固体金属酸化物触媒の再生利用性と比較して、CKD触媒は、バイオディーゼル合成に関して前例のない安定性および再生利用性を示した。
【0076】
典型的な実施例に関して、1.2gのセメントキルンダスト(CKD−5)を48mLのメタノールに加え、そしてその混合物を64.7℃で撹拌した。約40分後、30mLのダイズ油を導入し、そして反応は64.7℃において2.5時間で100%の収率に達した。液体サンプルを異なる時間間隔で反応混合物から取って、変換をモニターした。そのアリコートを、CDCl中でH NMRによって分析した。その固体触媒を、細かいガラスフリット漏斗(孔サイズ4−5.5nm)を通してろ過し、そして次いでもとの反応フラスコに戻した。別の48mLの新しいメタノールを触媒に再充填し、そしてメタノール/触媒混合物を、30mLのダイズ油を加える前に、還流メタノール温度で40分間プレ活性化した。2回目の反応は、いかなる反応性も失わずに、2時間で終了した。同じ手順を、各反応サイクルに適用した。9サイクルの後、その反応はいくらか遅くなり、それは、小規模なこれらの反応における、ろ過および移動工程におけるいくらかの触媒の損失によるものであり得る。
【0077】
実施例4.乾燥条件下でのCKD触媒の触媒性能
この実験において、無水メタノールおよび乾燥ダイズ油を使用した。その触媒を、いかなる精製も無しに使用した。無水メタノールを、アルミナカラム(Pure Solv MD−5)を含む溶媒精製システムから得た。ダイズ油を、分子ふるい4Åに8−12時間接触させることによって乾燥した。系を通じて窒素ガスの流れを通過させることによって、その反応系から空気を除去し、そして次いでその系を反応の間閉鎖して、水分から隔離した。
【0078】
典型的な手順は以下のようであった:0.4gのセメントキルンダスト(CKD−BP)を16mLの無水メタノールに加えた。その混合物を64.7℃で40分間撹拌した。前もって乾燥したダイズ油(10mL)を、触媒−メタノール混合物に導入した。MeOHおよびダイズ油のモル比は37であり、そして容積比は1.6であった。64.7℃で1時間撹拌した後、そのダイズ油は完全にメチルエステル(バイオディーゼル)に変換されたことが見出された。反応後、未精製の産物混合物を、細かいガラスフリット漏斗(孔サイズ4−5.5nm)を通してろ過し、そして産物を含むろ液を減圧下で蒸発させてメタノールを除去した。その液体産物を分離漏斗に加えて、メチルエステルおよびグリセロール副産物を分離した。メチルエステルの収率を、H NMRによって分析した。
【0079】
乾燥条件を採用することは、反応を有意により少ない量のメタノールで行い得ることを示した。例えば、その反応を、12モル当量のメタノールのみで行い得る。0.4gのセメントキルンダスト(CKD)を、5mLの無水メタノールに加えた。その混合物を64.7℃で40分間撹拌した。前もって乾燥したダイズ油(10mL)を、触媒メタノール混合物に導入し、ここでMeOHおよびダイズ油のモル比は12、そして容積比は0.5であった。完全な変換を達成するために、反応は約1.5時間のみを必要とした。メチルエステルの収率を、H NMRによって分析および確認した。その結果を表1にまとめる。
【0080】
【表1】

実施例5.触媒としてCKDを用いた、ダイズ油のバイオディーゼル産生に対する温度および圧力の影響
高温/圧の反応を、100mL Parr Series 4560 Mini Bench Topオートクレーブ反応器において行った。その反応器を磁力で撹拌した。圧力の上昇は、反応温度におけるメタノールの蒸気圧の結果であった。
【0081】
反応の速度論が、増加した温度および圧力によって有意に増強されたことが示された。典型的な反応において、0.4gのセメントキルンダスト(CKD)を、オートクレーブ反応器において、64.7℃で40分間、5mLの無水メタノールと混合した。乾燥ダイズ油(10mL)を触媒/メタノール混合物に導入した。ダイズ油のバイオディーゼルへの完全な変換は、120℃および90psiにおいて30分で完了したことが見出された。反応器を冷却した後、未精製の産物混合物を、細かいガラスフリット漏斗(孔サイズ4−5.5nm)を通してろ過し、そして産物を含むろ液を減圧下で蒸発させて、メタノールを除去した。ダイズ油のメチルエステルへの定量的な変換を、H NMRによって確認した。
【0082】
実施例6.乾燥条件下における、CKD触媒を用いた家禽の脂肪のエステル化
乾燥メタノール(30mL、0.74モル)を、CKD−BP触媒(0.2g)および分子ふるい4Å(8g)に加え、そしてできた溶液を、乾燥した家禽の脂肪PF(I)(1mL)を加える前に、50℃で30分間撹拌した。この反応において、油に対する固体触媒の重量パーセンテージは22であり、そして油に対するメタノールの容積比は30であった。分子ふるい4Åは、反応において産生されたHOを吸着した。その反応混合物を、ガラスフリットを通してろ過し、そして最低限の量のメタノールですすいだ。最終的な産物を、減圧下でメタノールを蒸発させることによって、ろ液から単離した。H NMRの測定は、反応は10時間で完了したことを示した。
【0083】
実施例7.CKDは、上昇した温度および圧力下において、遊離脂肪酸(FFA)を含む油原料からのバイオディーゼルの産生を触媒した
全ての反応を、100mL Parr Series 4560 Mini Bench Topオートクレーブ反応器において行った。その反応器を磁力で撹拌した。その圧力は、反応温度におけるメタノールの蒸気圧の結果であった。調査した原料は、15wt%のオレイン酸を含むダイズ油(滴定によって約13wt%の酸)、ニワトリ脂肪(PF(I)およびPF(II))、および使用済み調理油であった。
【0084】
オレイン酸を含むダイズ油は、単純に15gのオレイン酸を85gのダイズ油に溶解することによって得た。次いでその混合物を、分子ふるい4Åによって8−12時間乾燥した。0.6gのセメントキルンダスト(CKD)および15mLの無水メタノールを、オートクレーブ反応器に加え、そして64.7℃で40分間プレ活性化した。乾燥オレイン酸を含むダイズ油(15mL)を導入し、そしてその反応を閉鎖系において130℃で行った。圧力は約100psiに達した。その反応は、2.5時間で完了することが見出された。反応器を冷却した後、未精製の産物混合物を、細かいガラスフリット漏斗(孔サイズ4−5.5nm)を通してろ過し、そして産物を含むろ液を減圧下で蒸発させて、メタノールを除去した。H NMRによって、メチルエステルの収率を分析し、そして完全な変換を確認した。
【0085】
ニワトリ脂肪(PF(I))を、分子ふるい4Aによって乾燥した後使用した。ニワトリ脂肪PF(II)を、まず固体粒子を除去するためにろ過し、そして次いで減圧下で90℃に加熱して水分含有量を減少させた。その液体部分をさらに、分子ふるい4Åによって一晩乾燥した。典型的な実験に関して、0.6gのセメントキルンダスト(CKD−BP)および15mLの無水メタノールを、オートクレーブ反応器に加え、そして64.7℃で40分間、プレ活性化した。乾燥ニワトリ脂肪(15mL)を導入し、そしてその反応を閉鎖系において130℃で行った。反応の間、圧力は約100psiに達した。その反応は、2.5時間で完了することが見出された。反応器を冷却した後、未精製の産物混合物を、細かいガラスフリット漏斗(孔サイズ4−5.5nm)を通してろ過し、そして産物を含むろ液を減圧下で蒸発させて、過剰なメタノールを除去した。H NMRによって、メチルエステルの収率を分析し、そして完全な変換を確認した。
【0086】
使用済み調理油を、地元のレストランから得た。その調理油は、約0.2%の遊離脂肪酸(FFA)および約5%のタンパク質不純物を含む、たっぷりと揚げた(deep fried)キャノーラ油を含んでいた。その油を、分子ふるい4Åによって8−12時間乾燥した。0.4gのセメントキルンダスト(CKD)および5mLの無水メタノールをオートクレーブ反応器に加え、そして64.7℃で40分間、プレ活性化した。乾燥した使用済み調理油(10mL)を導入し、そしてその反応を閉鎖系において120℃で行った。反応の間、圧力は約90psiに達した。その反応は、35分で完了することが見出された。反応器を冷却した後、未精製の産物混合物を、細かいガラスフリット漏斗(孔サイズ4−5.5nm)を通してろ過し、そして産物を含むろ液を減圧下で蒸発させて、メタノールを除去した。H NMRによって、メチルエステルの収率を分析し、そして完全な変換を確認した。その結果を表2にまとめる。
【0087】
【表2】

実施例8.3工程アプローチによる家禽の脂肪のエステル化反応:組み合わせた酸および塩基触媒添加物
CKDを家禽の脂肪から脂肪酸メチルエステル(FAME)への変換に使用することの1つの問題は、CKDの高度に塩基性の性質に由来する。CKDは、けん化(石鹸の形成)と呼ばれる過程によって、家禽の脂肪および他のFFAを含む原料中の遊離脂肪酸(FFA)によって、中和および不活性化され得る。また、けん化によって産生される水は、CKD触媒を加水分解し得る。これらの問題を回避するために、固体酸触媒およびCKDを含む、触媒の組み合わせを用いることによって、効率的および経済的に家禽の脂肪をメチルエステルに変換するための新規アプローチが開発された。Al−MCMの使用が、本明細書中で酸触媒の一例として説明されるが、この適用はAl−MCMに限らない。採用し得る他の固体酸触媒は、ゼオライト、酸性Nafion樹脂、スルホン酸で官能化されたSBAまたはMCM物質等を含む。
【0088】
酸性メソポーラスケイ酸アルミニウム混合酸化物(Al−MCM)物質を、家禽の脂肪に適用してFFAを除去した。分子ふるい4Åを系に加えることによって、水を除去した。次いでCKDを加えて、バイオディーゼルの産生を触媒した。以下は典型的な実験手順である:Al−MCM(0.1g)および家禽の脂肪(1g)を、10mLのメタノールに加え、そして65℃で4時間反応させた。次いで分子ふるい4Åを加えて一晩ろ過し、水を除去した。次いで混合物を、3mLのメタノール中で前に活性化した0.1gのCKD−BPに注いだ。その反応は、65℃において1時間で完了したことが見出された。
【0089】
実施例9.エステル転移反応触媒としてのポルトランドセメント
ポルトランドセメントの化学的組成は、キルンダストのものと同様であるので、ポルトランドセメントの触媒性能を、上記で概略を述べた手順と同様の実験手順に従って評価した。反応フラスコに、0.3gのポルトランドセメントおよび180mLのメタノールを充填し、そしてこの混合物を30分間撹拌して均一な懸濁物を作成した。ダイズ油(7.5mL)を加え、そしてその反応混合物を還流下で24時間撹拌して完全な変換を行った。無水メタノールを適用し、そしてダイズ油を分子ふるい4Aで一晩乾燥させた乾燥条件下で、この反応は40分で完了した。ポルトランドセメントをろ過して除き、そして実質的な触媒活性を失う前に、2−3回のさらなる反応サイクルで再生利用し得る。
【0090】
実施例10.石灰キルンダスト(LKD)によるダイズ油エステル転移反応
メタノール(120mL、2.96モル)を、0.2gの石灰キルンダストに加え、そしてできた懸濁物を64.7℃で30分間撹拌して、活性化触媒組成物を生じた。ダイズ油(4.6g、5.28mmol)を次いで触媒組成物に加え、そして反応混合物を還流条件下で30分間撹拌した。油に対する固体触媒の重量パーセンテージは4.3であり、そして油に対するメタノールの容積比は24であった。産物の分析は、わずか16分後に90%の変換を示した。ダイズ油の脂肪酸メチルエステル(FAME)への変換は30分で完了した。
【0091】
実施例11.CKDの構造的分析
窒素吸着分析:
CKD物質の表面積を、窒素吸着−脱離表面分析によって決定した。結果は、CKDサンプルは低い表面積(約2−3m・g−1)を有することを示す。
【0092】
電子顕微鏡検査:
走査型電子顕微鏡検査(SEM)を、CKD触媒に行って、形態を決定し、そして触媒の多孔性構造を分析した。図4のSEMスペクトルは、CKD−5およびCKD−BPは、異なる形態を有することを立証する。CKD−5は、より大きな粒子サイズを有する無定形の構造を有し、一方CKD−BPサンプルは、より規則正しい、球形の形態および細かい粒子を示した。
【0093】
実施例12.CKD分析データ
CKDサンプルの分類
CKDの組成および鉱物学は、使用した未加工の物質、セメント産生に使用した炉の型、および操作温度、燃料の型、ダスト回収システム等のような、個々のプラントの実行に依存する。CKDは典型的には、方解石、石灰、石英、アルカリ塩化物および硫酸塩を含む。3つのCKD(CKD−BP、CKD−ESP、およびCKD−5と表示される)を、以下のように分析した。
【0094】
CKDサンプルの化学的組成および鉱物学的組成を分析するために、2つの異なる分光学的方法を採用した。X線蛍光(XRF)顕微鏡検査を用いて、CKDサンプル中の個々の元素の存在および量を決定した。典型的な実験において、フラックスを用いて固体サンプルを溶解または分解するために標準的な融合技術を適用して、均一なガラスを産生した。この過程は、異なる粒子サイズの不均質性および鉱物学的影響を排除した。次に、これらの物質のX線粉末回折(XRD)スペクトルを得て、これらの相組成を同定した。
【0095】
63個の異なる新規に産生したCKDサンプルの化学的組成の違いを調査し、そして文献に報告した(Engineering Geology 2006、85、165)。異なる単体のパーセント範囲を、対応する酸化物の形態で示し、そして結果を表3にまとめる。これらのCKDのうち、58個のサンプルを米国にある異なるセメント工場から得た。表3で概略を述べる異なる酸化物は、新しいCKDサンプルの酸化から産生された。
【0096】
【表3】

CKDサンプルの元素分析およびX線粉末回折分析
セメントの化学的分析の結果を、通常酸化物成分に関して表す。表4は、油からバイオディーゼルへの様々なエステル転移反応に関して調査した、3つのCKD触媒(CKD−BP、CKD−5、およびCKD−ESP)の化学的組成を示す。
【0097】
【表4】

CKDサンプルの粉末X線回折(XRD)分析を、図5(a)に示す。CKDにおいて同定された主な相は、酸化カルシウム(CaO)、方解石(CaCO)、硬石膏(CaSO)、および石英(SiO)を含み、それらも図5(a)に示す。CKD−5と比較して、CKD−BPは、32°、38°、および53°(2θ)の付近に3つの大きな回折ピークを示すのみであり、それらは酸化カルシウムに帰属する。従って、CKD−BPは、CKD−5およびCKD−ESPよりも多量のCaOを有する。反応性研究から、好ましい触媒反応性を有するCKDは、XRD分析によって決定されたように、より多量のCaO(遊離の石灰)を含むものを含むことが見出された。例えば、約45wt%より多く、または約50wt%より多くを有するCKDは、エステル化またはエステル転移反応において、産物へのより多いおよびより速い変換を生じる。
【0098】
この観察に基づいて、CaOは、少なくとも部分的にCKD触媒系の高い触媒反応性の原因である、重要な成分であるようである。この観察は、主にCaCO(方解石)を含み、遊離の石灰(CaO)をほとんど含まない、または全く含まない、CKD−ESP物質の低い触媒反応性によってさらに確認される。
【0099】
図5(b)に示すように、CKDの特徴的なCaOのピークは、エステル転移反応後に消失し、それは主な活性種は確かにCaOであることを示唆した。異なるXRDパターンも、異なるセメント会社から得られたこれらのCKDサンプルの2つの異なる化学的組成を示した。その結果は、CKD−BPはCKD−5より速い速度論的プロファイルを有することを示す。表5は、様々なCKDおよび通常のポルトランドセメント(タイプIセメント)のか焼した化学的組成の結果を示す。
【0100】
【表5】

従って、セメントキルンダスト(CKD)は、有機油のバイオディーゼルへの変換の有効な触媒として作用し得ることが示された。他の酸触媒および分子ふるいと組み合わせて、CKDを、高FFA含有油原料を、望ましいバイオディーゼルメチルエステルへ変換するための触媒として使用し得る。CKD触媒を、精製無しに容易に再生利用および再利用し得る。さらに、CKDは廃棄物と考えられ、そしてバイオディーゼル産生のためにこれらの固体触媒を利用することは、現在の最新の方法よりも数桁経済的であると考えられる。
【0101】
実施例13.非活性セメントキルンダスト(CKD−ESP)によって試みたダイズ油エステル転移反応
メタノール(180mL、4.44モル)を、0.3gのセメントキルンダスト(CKD−ESP)に加えた。その混合物を64.7℃で30分間撹拌して、固体CKD−ESP粒子を分散させた。次いでダイズ油(6.9g、7.9mmol)をCKD−ESPのメタノール溶液に加えた。その反応混合物を還流メタノール(64.7℃)中で30分間撹拌した。油に対する固体触媒の重量パーセンテージは4.3であり、そして油に対するメタノールの容積比は24であった。サンプルアリコートを、様々な時間間隔で反応混合物から取り、反応の進行をモニターした。ダイズ油のFAMEへの変換を、CDCl中でH NMRによって分析した。6時間の反応期間中、触媒としてCKD−ESPを用いたエステル転移反応においてFAMEは見出されなかった。図6は、CDK−ESPは、XRD分析によって決定されるような、強力な酸化カルシウムのピークを欠くことを示す。
【0102】
実施例14.フライアッシュによるダイズ油エステル転移反応
クラスFフライアッシュ(0.3g)を、180mLのメタノール(4.44モル)に64.7℃で30分間懸濁した。次いでダイズ油(6.9g、7.9mmol)を、上記の懸濁物に加え、そしてその反応を還流メタノール(64.7℃)中で3時間行った。油に対する固体触媒の重量パーセンテージは4.3であり、そして油に対するメタノールの容積比は24であった。様々な時間間隔で、サンプルアリコートを反応混合物から取り、反応の進行をモニターした。ダイズ油のFAMEへの変換を、CDCl中でH NMRによって分析した。3時間の反応時間中、産物は検出されなかった。図6は、フライアッシュは、XRD分析によって決定されるような、強力な酸化カルシウムのピークを欠くことを示す。
【0103】
実施例15.LKDおよびポルトランドセメントの触媒活性
石灰キルンダストは、適当な条件下で、例えばメタノールのようなアルコールによって活性化された場合に、CKD−5のようなセメントキルンダストと同様の触媒活性を有することが示された。さらに、ポルトランドセメントは、水分を含まない条件下で採用された場合、触媒として使用し得ることが発見された。ポルトランドセメントをアルコールで活性化し、そして水分を含まない条件下で触媒作用を行うことによって、ポルトランドセメントの触媒活性は、非活性化条件および/または水分が存在する条件下よりも有意に改善される。アルコール活性化および水分を含まない条件下で、ポルトランドセメントは、CKDと同様の触媒活性および再生利用性を示す。しかし、ポルトランドセメントのより高いコストおよび水分感受性のために、キルンダストは、ポルトランドセメントより経済的かつ堅牢である。
【0104】
実施例16.石灰キルンダスト(LKD)によるダイズ油エステル転移反応
LKDによるダイズ油エステル転移反応。触媒としてLKDを用いた、メタノールによるダイズ油のエステル転移反応の典型的な反応を、温度調節器および撹拌器を備えた8リットルのPPIバッチ反応器で行った。その反応器にまずダイズ油(2L)を充填し、そして撹拌しながら160°F(約71℃)に加熱した。その間に、80gの石灰キルンダストを、0.5Lのメタノール中で、室温で30分間活性化した。油に対するメタノールのモル比は6であり、そして触媒の添加は油の重量に関して4.3wt%であった。活性化後、触媒およびメタノールの混合物を反応器に加え、そしてその反応を同じ撹拌スピードで、160°Fで行った。様々な時間間隔でサンプルアリコートを反応器から取り、そしてCDCl中でH NMRによって分析した。その反応は90分で98%の変換に達した。
【0105】
より低い温度におけるLKDによるダイズ油エステル転移反応。その反応を、140、150、および160°Fで行って、反応温度の影響を評価した。これらの実験において、油に対するメタノールのモル比は6で固定し、そして油に対する触媒の重量パーセンテージは4.3であった。予期されたように、反応の速度論は温度と共に増加した。例えば、140および150°Fにおける変換は、それぞれ2時間で96%および1.5時間で98%であった。
【0106】
より高い触媒添加量の、LKDによるダイズ油エステル転移反応。この実施例において、160gの石灰キルンダスト(油に対して8.7wt%の触媒添加)を、0.5Lのメタノール中で、室温(約23℃)で30分間活性化した。2リットルのダイズ油を、触媒の活性化の間、反応器中で150°F(約65℃)に加熱した。次いで触媒およびメタノールの混合物を反応器に充填し、そしてその反応を撹拌しながら約150°Fで行った。その結果は、反応が1時間で94%、そして1.5時間で96%の変換に達したことを示した。
【0107】
油に対するメタノールのモル比が増加した、LKDによるダイズ油エステル転移反応。この実施例において、160gの石灰キルンダストを、1Lのメタノール中で、室温で30分間活性化した。触媒の活性化の間、2リットルのダイズ油を、反応器中で160°Fに加熱した。油に対するメタノールのモル比は12に設定した。触媒の活性化後、触媒およびメタノールの混合物を反応器に充填し、そしてその反応を撹拌しながら160°Fで行った。その反応は90分で95%の変換に達した。
【0108】
様々な量のCaを含む異なるLKDサンプルによる、ダイズ油エステル転移反応。2つのサンプル、LKD−18およびLKD−65は、それぞれその化学的分析から約18%のCaおよび65%のCaを含んでいた。以下の条件下で反応を行った:80gの触媒(4.3wt%)を、0.5Lのメタノール中で、室温で30分間活性化した(油に対するメタノールのモル比は0.25であった)。活性化後、触媒およびメタノールの混合物を反応器に加え、そしてその反応を140°F(約60℃)で2時間行った。どちらの反応も、2時間で96%より高い変換を生じたことが見出された。
【0109】
ダイズ油エステル転移反応に関するLKDのライフサイクル研究。反応の最後に、産物混合物を単にろ過することによって、触媒の再生利用を達成した。回収した触媒を、いかなる精製も無しに、再び同じ反応条件下で使用した。LKD触媒を、有意な反応性の喪失を観察することなく、少なくとも15回再利用し得る(図7)。触媒ライフサイクル研究を、以下のように行った。反応器にまず、ダイズ油(2L)を充填し、そして撹拌しながら160°Fまで加熱した。同時に、160gの石灰キルンダストを、1Lのメタノール中で、室温で30分間活性化した。活性化後、触媒およびメタノールの混合物を反応器に加え、そしてその反応を、同じ撹拌スピードで、160°Fで行った。速度論をモニターするために、様々な時間間隔でサンプルアリコートを反応器から取って、そしてCDCl中でH NMRによって分析した。各反応の完了時に、産物を反応器から排出し、そして触媒をろ過によって単離し、そして精製無しに次にサイクルで再利用した。
【0110】
LKDの化学的組成。CKD粒子と同様に、LKD粒子は、サンプルに依存して、その化学的組成に変動を有し得る。2つのサンプルの化学的組成を、下記の表6で提供する。
【0111】
【表6】

LKDサンプルの粉末XRDプロットを図8に示し、それはLKD−1、LKD−2、およびLKD−3の粉末XRDプロットを、CaOおよびCaCOと比較する。LKDサンプルは、それぞれ特徴的なCaOおよびCaCOのピークを示す同様のXRDパターンを生じ、LKDの主な成分はCaOおよびCaCOであることを示した。図9は、2つの異なる解像度における、1つのLKDサンプル(LKD−2)の走査型電子顕微鏡検査(SEM)を示す。
【0112】
全ての出版物、特許、および特許文書は、個々に参考文献に組み込まれたように、本明細書中で参考文献に組み込まれる。本発明は、様々な特定のおよび好ましい実施態様および技術に関して記載された。しかし、本発明の意図および範囲内に留まりながら、多くの変化および修飾を行い得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キルンダストまたはポルトランドセメント、および(C−C)アルカノールを含む、再生利用可能なエステル化またはエステル転移反応の触媒系であって、該キルンダストまたはポルトランドセメントの表面積は、1グラムあたり約0.05mから1グラムあたり約10mであり、そして該キルンダストまたはポルトランドセメントは、約20℃〜約100℃の温度で該(C−C)アルカノールとの接触によって活性化されている、触媒系。
【請求項2】
セメントキルンダスト、石灰キルンダストまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の触媒系。
【請求項3】
前記キルンダストが、酸化カルシウム(CaO)、方解石(CaCO)、硬石膏(CaSO)、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、または石英(SiO)のうちの1つ以上を含む、請求項1または2に記載の触媒系。
【請求項4】
前記キルンダストが、約10質量%〜約65質量%のカルシウム原子、および少なくとも15wt%の酸化カルシウムを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項5】
固体酸、分子ふるいまたはそれらの両方をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項6】
前記酸が、酸性メソポーラスケイ酸アルミニウム混合酸化物の粒子を含む、請求項5に記載の触媒系。
【請求項7】
前記(C−C)アルカノールが、メタノールまたはエタノールである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項8】
前記キルンダストの表面積が、1グラムあたり約0.1m〜1グラムあたり約5mである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項9】
脂肪酸またはエステルをさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項10】
脂肪酸(C−C)アルキルエステルを調製するための方法であって、該方法は、グリセリドを含有する植物油または動物油と有効量のキルンダストおよび(C−C)アルコールとを、該キルンダストが対応する植物油由来または動物油由来の脂肪酸(C−C)アルキルエステルおよびグリセロールの形成を触媒するような条件下で接触させ、反応混合物を提供する工程を包含する、方法。
【請求項11】
前記(C−C)アルコール対前記グリセリドを含有する植物油または動物油のモル比が、約600:1〜約3:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記(C−C)アルコールが、メタノールまたはエタノールである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記キルンダストが、セメントキルンダストまたは石灰キルンダストを含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記キルンダストが回収され、脂肪酸(C−C)アルキルエステルを調製するための引き続く方法で再利用される、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記グリセリドを含有する植物油または動物油の脂肪酸部分が、任意で不飽和のC10−C24アルキル鎖を含み、該C10−C24アルキル鎖は、任意で1、2、3、または4つの不飽和、エポキシ化、水酸化、またはその組み合わせの部位を含む、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記エステルの形成が、前記(C−C)アルコール以外の溶媒を加えずに実行される、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記植物油由来または動物油由来の脂肪酸(C−C)アルキルエステルの形成が、約40℃よりも高く、そして必要に応じて1気圧よりも高い圧力で実行される、請求項10〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記キルンダストが、前記グリセリドを含有する植物油または動物油の重量に関して、少なくとも約0.5wt%で存在する、請求項10〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記キルンダストおよび前記(C−C)アルコールと前記植物油由来または動物油由来の脂肪酸とを接触させる前に、該キルンダストと該(C−C)アルコールとが、接触される、請求項10〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記植物油由来または動物油由来の脂肪酸と接触させる前に、前記キルンダストと前記(C−C)アルコールとが加熱される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記グリセリドを含有する動物油が、遊離脂肪酸および任意で水を含み、前記方法がさらに:
該遊離脂肪酸を固体酸上に固定化する工程;
任意で、該動物油と分子ふるいとを接触させることによって、該動物油を乾燥させる工程;ならびに
該グリセリドを含有する動物油と前記キルンダストとを接触させる前に、任意で、該分子ふるいおよび該固定化遊離脂肪酸を該グリセリドを含有する動物油から分離する工程、
を包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
前記脂肪酸(C−C)アルキルエステル産物が、約50ppm〜約1000ppmのカルシウム原子を含む、請求項10〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
1つ以上の脂肪酸および任意で1つ以上の脂肪酸グリセロールエステルを含む原料から脂肪酸(C−C)アルキルエステルを調製するための方法であって、該方法は:
該原料と、請求項1に記載の触媒系と、酸と、分子ふるい粒子とを、脂肪酸グリセロールエステルが存在する場合に該キルンダストが脂肪酸(C−C)アルキルエステルおよびグリセロールの形成を触媒する条件下で、合わせる工程を包含する、方法。
【請求項24】
1つ以上の脂肪酸および任意で1つ以上の脂肪酸グリセロールエステルを含む原料から脂肪酸メチルエステルを調製するための方法であって、該方法は:
キルンダスト、メタノールおよび分子ふるい粒子を含む懸濁物を調製する工程;
約40℃より高くまで該懸濁物を加熱する工程;
該懸濁物と該原料とを合わせ、反応混合物を提供する工程;
該反応混合物を加熱し、該脂肪酸メチルエステルを提供する工程;ならびに
該反応混合物から該脂肪酸メチルエステルを分離する工程、
を包含する、方法。
【請求項25】
家禽の脂肪を含む原料から脂肪酸メチルエステルを調製するための方法であって、該方法は:
遊離脂肪酸を含む家禽の脂肪と固体酸とを合わせて、該固体酸上に遊離脂肪酸を固定化する工程;
該家禽の脂肪と分子ふるい粒子とを合わせて、乾燥した家禽の脂肪を提供する工程;
任意で、該家禽の脂肪から該固体酸および固定化した遊離脂肪酸を濾過し、任意で、該乾燥した家禽の脂肪から該分子ふるい粒子を濾過する工程;
該家禽の脂肪と請求項1に記載の触媒系とを合わせ、反応混合物を提供する工程であって、該触媒系はメタノールを含む、工程;
該反応混合物を、約40℃より高くまで加熱し、該脂肪酸メチルエステルを提供する工程;ならびに
該反応混合物から該脂肪酸メチルエステルを分離する工程、
を包含する、方法。
【請求項26】
前記キルンダストおよびメタノールの懸濁物が、前記乾燥した家禽の脂肪の重量に関して、約0.1wt%〜約25wt%のキルンダストを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ダイズ脂肪酸メチルを産生するための方法であって、該方法は、ダイズ油と、メタノールと、有効量のキルンダストとを、該キルンダストがグリセロールおよび該ダイズ脂肪酸メチルの形成を触媒する条件下で接触させる工程を包含し、該キルンダストは、セメントキルンダストまたは石灰キルンダストである、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公表番号】特表2011−502039(P2011−502039A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531073(P2010−531073)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/012309
【国際公開番号】WO2009/058324
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(304057287)アイオワ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション・インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Iowa State University Research Foundation, Inc.
【出願人】(510118282)クレイテック, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】