説明

バイス用のワーク保持具セット

【課題】バイス用のワーク保持セットを収納する箱体のサイズを最小に抑える。
【解決手段】横長の長方形の一方の長辺に沿って段部を形成する複数の支持プレートT1と、支持プレートT1に共通に組み付ける複数の吸着用マグネットT2を整列して収納する蓋20付きの箱体10において、箱体10には、支持プレートT1に付属する吸着用のマグネットT2を個別に収納するポケットを形成し、ポケットの底面には、マグネットを吸着保持する保持材を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小さいワークをバイスに正しく把持させるために使用するバイス用のワーク保持具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
小さいワークをバイスに正しく把持させて加工するために、バイス用のワーク保持具が知られている(特許文献1)。
【0003】
従来のバイス用のワーク保持具は、精密に加工された横長の支持プレートと、吸着用のマグネットとからなり、マグネットを介して適切な高さの支持プレートをバイスの口金に吸着させて固定することにより、支持プレートを介してワークをバイスの適切な高さ位置に安定に保持することができる。なお、マグネットは、支持プレートに対して着脱自在に組み合わせ、支持プレートは、たとえば高さが1mmまたは2mm置きに異なる多数枚を用意しておき、ワークのサイズに適合するものを選択して使用するものとする。
【特許文献1】特開平9−207073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、多数枚の支持プレートや、吸着用のマグネットは、保管や持運びが意外に面倒であり、ワークに合わせて所定の高さの支持プレートを選択することも、必ずしも簡便でないという問題があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、支持プレートと、支持プレートから分離させた吸着用のマグネットとを箱体に一括して収納することによって、収納、保管や、全体の持運び、支持プレートの選択などに至便なバイス用のワーク保持具セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、横長の長方形の一方の長辺に沿って段部を形成する複数の支持プレートと、支持プレートに共通に組み合わせる複数の吸着用のマグネットと、支持プレート、マグネットを収納する蓋付きの箱体とを備えてなり、支持プレートは、同一高さの前後対称の2枚を1組として高さが異なる所定組数を箱体に整列して収納し、箱体には、片面吸着形の円柱状のマグネットの所定数を個別に収納するポケットを形成し、ポケットの底面には、マグネットを吸着させて保持する保持材を固定することをその要旨とする。
【0007】
なお、マグネットは、支持プレートの前後に貫通する取付孔に挿入し、止めねじを介して支持プレートの厚さ方向に位置決めすることができ、止めねじ用のねじ孔は、支持プレート上において、段部を形成しない方の長辺側から取付孔に向けて形成することができる。
【0008】
また、保持材は、ポケットの底面に装着する木ねじとしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
かかる発明の構成によるときは、箱体は、支持プレートと共通に組み合わせる所定数の吸着用のマグネットを個別に収納するポケットを形成し、各支持プレートは、マグネットを取り外した状態で互いに密着させて所定組数を箱体に整列して収納するから、箱体のサイズを必要最小限に小さくすることができ、収納、保管や、全体の持運び、支持プレートの選択などにも極めて便利である。なお、支持プレートは、高さが1mmまたは2mm置きに異なる2枚1組の10〜20組(20〜40枚)程度を箱体に収納するものとする。10組未満では、適切に把持し得るワークのサイズ範囲が狭くて不便であり、20組超では、全体重量が重くなり過ぎて持運びに支障を来たすおそれがある。
【0010】
マグネットは、各支持プレートに共通に装着し得るように、その形状、サイズを設定するものとし、円柱状の片面吸着形とすることにより、ポケットの形状を単純な円形穴にすることができる。また、箱体に収納するマグネットの総数は、同時に使用する可能性がある支持プレートの数に見合う所定数であればよく、箱体内の支持プレートの総数より相当に少なくて足りる。
【0011】
ポケットの底面に固定する保持材は、ポケット内のマグネットを吸着させ、ポケットから不用意に脱落しないようにマグネットをポケット内に保持することができる。なお、保持材は、マグネットが吸着する磁性体であれば、板状、ブロック状などの任意の形状でよく、ポケットの底面に対し、接着、埋設、ねじ止めなどの任意の方法で固定すればよい。また、保持材は、鉄製の木ねじをポケットの底面中央に差し込んで装着するだけでも十分である。
【0012】
吸着用のマグネットは、取付孔に挿入し、止めねじを介して支持プレートの厚さ方向に位置決めすることにより、支持プレートの表面から吸着面を後退させることができ、バイスの口金に対する吸着力を適切に調節することができる。また、支持プレートの段部を形成しない方の長辺側、すなわち支持プレートの下側から取付孔に向けてねじ孔を形成し、止めねじをねじ込むことにより、ワークを加工することによって発生する切粉が止めねじにかかることがなく、加工後のマグネットの取外しに際して、切粉の除去作業をする必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0014】
バイス用のワーク保持具セットは、蓋20付きの箱体10に支持プレートT1 、T1 …、吸着用のマグネットT2 、T2 …を収納してなる(図1、図2)。なお、各支持プレートT1 は、マグネットT2 と組み合わせることにより、バイス用のワーク支持具として使用することができる。
【0015】
箱体10は、底板11、背板12、左右の側板13、13、中間の仕切板14を備えている。背板12は、底板11の後端に立設されており、側板13、13は、底板11、背板12の左右の両端に立設されている。ただし、各側板13は、背板12と同一高さであり、底板11の前後の幅よりやや短いサイズに裁断されている。仕切板14は、側板13、13の中間において、箱体10内を左右に仕切るようにして、底板11、背板12の間に立設されている。なお、仕切板14は、側板13、13よりやや低く、側板13、13より短い。仕切板14の前端には、側板13、13の間を連結する枕木15が底板11上に設置されている。
【0016】
蓋20は、天板21の前端に前板22を組み合わせて形成されている。天板21の後端は、ヒンジ23、23を介して背板12の上端に連結されており(図2、図3)、蓋20は、ヒンジ23、23を介し、箱体10の上面、前面を開閉することができる(図1の実線、二点鎖線、図2の二点鎖線、実線)。なお、蓋20の開放限を規定するために、背板12の外面の上端付近には、横長のブロック体12aがねじ止めされている。
【0017】
前板22の表面には、開閉用の横長凹状の手掛け22aが形成されており(図4)、側板13、13の外面には、それぞれ持運び用の手掛け用のブロック体13aがねじ止めされている。前板22の下端面には、短い位置決め用のピン22b、22bが植設されており(図1、図5)、底板11の前縁には、ピン22b、22bに対応する係止穴11b、11bが形成されている。そこで、蓋20は、箱体10の上面、前面を閉じると、ピン22b、22bが係止穴11b、11bに挿入され、ヒンジ23、23を介して一体の頑丈な蓋付きの収納箱を形成することができる。
【0018】
箱体10内には、仕切板14を介して左右の収納スペースS、Sが形成され(図1)、各収納スペースSには、複数の支持プレートT1 、T1 …を立てて整列させてコンパクトに収納することができる。
【0019】
支持プレートT1 は、横長の長方形の板状に形成されている(図6)。支持プレートT1 は、一方の長辺に沿って段部T1aが形成され、正面には、吸着用のマグネットT2 、T2 …用の取付孔T1b、T1b…が前後に貫通して一列に開口されている。なお、各取付孔T1bには、段部T1a側から止めねじT1c用のねじ孔T1dが形成されており、止めねじT1cは、六角レンチT3 を介して締め付けることにより、取付孔T1b内のマグネットT2 を固定することができる。また、支持プレートT1 の一端には、支持プレートT1 の高さHを示す銘板T1eが取り付けられている。銘板T1eは、支持プレートT1 の端面に形成する凹所T1f内に、リベットT1g、T1gを介して止められている(図7)。ただし、図7(A)、(B)は、それぞれ支持プレートT1 の要部拡大斜視図、一部切欠き要部拡大正面図である。
【0020】
マグネットT2 は、円柱状の片面吸着形に仕上げられている(図6)。すなわち、マグネットT2 は、充填剤T2bを介し、円柱状の永久磁石T2aを鋼材製の有底円筒状のケースT2cに収納し、永久磁石T2aの一方の磁極面を外部に露出させて吸着面として形成されている。
【0021】
マグネットT2 の高さhは、支持プレートT1 の厚さtに対し、h≧tに設定されている(図8(A))。そこで、取付孔T1b内のマグネットT2 は、止めねじT1cを介して支持プレートT1 の厚さt方向に任意に位置決めして固定することにより、支持プレートT1 の表面(後面)と吸着面との間に適切なギャップgを形成し、マグネットT2 による支持プレートT1 の吸着力を任意に調節することができる。なお、支持プレートT1 上において、止めねじT1c用のねじ孔T1dは、段部T1aを形成しない方の長辺側から取付孔T1bに向けて形成し、止めねじT1cをねじ込んでもよい(同図(B))。
【0022】
このような支持プレートT1 は、小物のワークをバイスに把持するときに、いわゆるバイス用の正敷台として使用する。支持プレートT1 の代表的な使用方法は、たとえばワークの厚さに合わせて適切に選択する同一高さHの2枚をそれぞれマグネットT2 によりバイスの固定ジョー、可動ジョーの各口金の内面に対向させて吸着させ、両者間にワークを掛け渡すことにより、薄板状のワークをバイスに安定に把持させることができる(特開平9−207073号公報参照)。なお、このときの各支持プレートT1 は、段部T1aを形成しない側の長辺を下にしてバイスのベース上に当接させ、段部T1a側の長辺上にワークの先端を掛けるようにして載せることにより、ワークの上面をバイスの固定ジョー、可動ジョーより高く突出させて把持するものとする。
【0023】
そこで、箱体10には、たとえば高さHが等しく、前後対称の支持プレートT1 、T1 を2枚1組として(図1)、高さHを1mmまたは2mm置きの数値系列に設定する10〜20組を1セットにまとめて収納することが好ましい。ただし、マグネットT2 は、支持プレートT1 をバイスの口金に吸着させるとき、図6に拘らず、一般に1個のみを中央の取付孔T1bに挿着すれば十分である。
【0024】
箱体10内において、支持プレートT1 の吸着用のマグネットT2 、T2 …は、1セットの支持プレートT1 、T1 …に共通の必要個数、たとえば4個のみを用意し、支持プレートT1 、T1 …から分離して、六角レンチT3 とともに仕切板14の上側端面に列設して形成するポケット14a、14a…、14bに収納することができる(図1、図9)。また、支持プレートT1 、T1 …は、たとえば高さHが等しい前後対称の2枚ごとの背面側を密着させ、銘板T1e側の先端部を枕木15上に掛けるようにして箱体10の各収納スペースSに整然と整列させて収納することにより(図1、図2)、所定の高さHのものを容易に選択して取り出して使用することができる。たとえば枕木15の前方において、任意の隣接する2枚の支持プレートT1 、T1 の先端部に対して下側から手指Fを共通に掛け(図2)、そのまま上方に回転させることにより(同図の矢印方向、一点鎖線)、所定の2枚を簡単に取り出すことができる。
【0025】
仕切板14上の六角レンチT3 用のポケット14bは、六角レンチT3 の短辺側を差し込むための小径の丸穴である(図9)。一方、マグネットT2 用のポケット14aは、マグネットT2 の外径に適合する円形穴であって、マグネットT2 を収納するとき、指先による摘み代d相当だけマグネットT2 の高さhより浅く形成されている(図10(A))。また、各ポケット14aの底面中央には、マグネットT2 が吸着する鉄製の木ねじ14cが装着されており、したがって、マグネットT2 は、永久磁石T2aによる吸着面を下にしてポケット14aに収納することにより、木ねじ14cに吸着してポケット14aから不用意に脱落することがない。すなわち、木ねじ14cは、ポケット14a内のマグネットT2 を吸着させて保持する保持材となっている。
【0026】
なお、木ねじ14cを介し、ポケット14aの底面に磁性体の保持材14dをねじ止めしてもよく(図10(B))、このときの木ねじ14cは、非磁性体製であってもよい。また、磁性体の保持材14dは、ポケット14aの底面に埋設してもよく、接着してもよい(同図(C)、(D))。さらに、磁性体の保持材14dは、図示の板状に代えて、ブロック状に形成してもよい。
【0027】
また、箱体10は、仕切板14を省略してもよく、このとき、ポケット14a、14a…、14bは、たとえば背板12または側板13の上部内面に固定する図示しないブロック体の上面に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】全体構成斜視図(1)
【図2】図1の要部縦断面図
【図3】図1の背面図
【図4】全体構成斜視図(2)
【図5】図2の要部拡大断面図
【図6】ワーク保持具の分解斜視図
【図7】図6の要部構成説明図
【図8】図6のY−Y線矢視相当拡大断面説明図
【図9】図1のX矢視相当拡大図
【図10】図9のZ−Z線矢視相当拡大断面説明図
【符号の説明】
【0029】
T1 …支持プレート
T1a…段部
T1b…取付孔
T1c…止めねじ
T1d…ねじ孔
T2 …マグネット
10…箱体
14a…ポケット
14c…木ねじ
14d…保持材
20…蓋

特許出願人 株式会社 ニシムラジグ
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横長の長方形の一方の長辺に沿って段部を形成する複数の支持プレートと、該支持プレートに共通に組み合わせる複数の吸着用のマグネットと、前記支持プレート、マグネットを収納する蓋付きの箱体とを備えてなり、前記支持プレートは、同一高さの前後対称の2枚を1組として高さが異なる所定組数を前記箱体に整列して収納し、前記箱体には、片面吸着形の円柱状の前記マグネットの所定数を個別に収納するポケットを形成し、該ポケットの底面には、前記マグネットを吸着させて保持する保持材を固定することを特徴とするバイス用のワーク保持具セット。
【請求項2】
前記マグネットは、前記支持プレートの前後に貫通する取付孔に挿入し、止めねじを介して前記支持プレートの厚さ方向に位置決めすることを特徴とする請求項1記載のバイス用のワーク保持具セット。
【請求項3】
前記止めねじ用のねじ孔は、前記支持プレート上において、前記段部を形成しない方の長辺側から前記取付孔に向けて形成することを特徴とする請求項2記載のバイス用のワーク保持具セット。
【請求項4】
前記保持材は、前記ポケットの底面に装着する木ねじであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載のバイス用のワーク保持具セット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−195996(P2009−195996A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36902(P2008−36902)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000134899)株式会社ニシムラジグ (1)
【Fターム(参考)】