説明

バックアップ用ボイラを設けた蒸気供給システム

【課題】 主蒸気供給装置とバックアップ用ボイラを設けた蒸気供給システムにおいて、主蒸気供給装置停止時に蒸気が不足することを防止する。
【解決手段】 主蒸気供給装置4と、複数台のバックアップ用ボイラ1を設けた蒸気供給システムにおいて、主蒸気供給装置4が供給している蒸気量に見合うバックアップ用ボイラ1の台数を算出し、算出台数分のバックアップ用ボイラに対して予熱指令を送る運転制御装置2を設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主蒸気供給装置のほかにバックアップ用ボイラを設けた蒸気供給システムにおいて、蒸気供給が不足することを防止するものである。
【0002】
【従来の技術】エネルギーの有効活用のため、電気と共に蒸気を発生するコージェネレーションシステムが普及してきている。コージェネレーションのシステムでは、コージェネレーションで発生させている電気及び蒸気をベースとし、不足した場合やコージェネレーション停止時には商用電力やバックアップ用ボイラの蒸気を使用する。コージェネレーション停止時、電力供給は電源を切り換えることで、それまでと変わりない容量の電力を瞬時に供給することができる。主蒸気供給装置であるコージェネレーション停止時の蒸気供給は、それまで停止していたバックアップ用ボイラを燃焼させることで行う。
【0003】バックアップ用ボイラへの燃焼指令は、蒸気圧力が設定圧力まで低下した時点で行うため、蒸気供給の開始がその時点から遅れると蒸気が不足することになる。停止していたバックアップ用ボイラの燃焼を開始して蒸気供給を行う場合、ボイラは冷えているためにバックアップ用ボイラが蒸気供給を開始するまでには一定の時間が必要である。その間は蒸気圧力が低下し続けることになるため、厳密な蒸気供給制御が必要な食品工場や薬品工場などでは、蒸気の不足によって製品の品質に影響を与えることがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、主蒸気供給装置とバックアップ用ボイラを設けた蒸気供給システムにおいて、主蒸気供給装置停止時に蒸気が不足することを防止することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、主蒸気供給装置と、複数台のバックアップ用ボイラを設けた蒸気供給システムにおいて、主蒸気供給装置が供給している蒸気量に見合うバックアップ用ボイラの台数を算出し、算出台数分のバックアップ用ボイラに対して予熱指令を送る運転制御装置を設けたことを特徴とする。
【0006】請求項2の発明は、主蒸気供給装置と、複数台のバックアップ用ボイラを設けた蒸気供給システムにおいて、主蒸気供給装置とバックアップ用ボイラに共通のスチームヘッダにおける蒸気圧力値を計測する圧力検出装置と、計測した蒸気圧力値に基づいてバックアップ用ボイラの燃焼台数を決定する運転制御装置を設けており、運転制御装置には、通常時台数制御と、通常時台数制御よりもバックアップ用ボイラの燃焼台数を多くする緊急蒸気供給時台数制御を設定しておき、主蒸気供給装置の作動を行っている時には通常時台数制御に基づいてバックアップ用ボイラの燃焼台数を制御し、主蒸気供給装置の作動が停止もしくは蒸気供給急減または停止を予告する信号を出力した時には緊急蒸気供給時台数制御に基づいてバックアップ用ボイラの燃焼台数を制御することを特徴とする。
【0007】請求項3の発明は、前記のバックアップ用ボイラを設けた蒸気供給システムにおいて、複数台設置したバックアップ用ボイラには、予熱運転対象のボイラと台数制御対象のボイラを設定しておき、予熱運転対象のボイラの中から前記算出台数分のボイラに対して予熱指令を送り、通常時台数制御は台数制御対象のボイラを対象に燃焼台数を制御するものであり、緊急蒸気供給時台数制御は、予熱運転対象のボイラと台数制御対象のボイラの両方を合わせたものを対象に燃焼台数の制御を行うものであることを特徴とする。
【0008】請求項1の発明によれば、主蒸気供給装置が供給していた蒸気量に見合うだけのバックアップ用ボイラを予熱しているため、主蒸気供給装置を停止しても、予熱していたボイラの燃焼を開始するとすぐに蒸気供給を開始することができるため、蒸気供給が遅れて蒸気が不足するということを防止できる。請求項2に記載の発明によれば、主蒸気供給装置の作動が停止もしくは蒸気供給急減または停止を予告する信号を出力した時には、緊急蒸気供給時台数制御とし、バックアップ用ボイラの燃焼台数を通常よりも多くしておくことで、蒸気圧力は下がらなくても、それまでより多いボイラに対して燃焼指令を送り、燃焼指令を受けたボイラは燃焼を開始することになる。実際に蒸気の供給が必要となる前に燃焼を開始することになるため、その間にボイラ内の温度を高めることで、冷缶状態からの起動であっても、蒸気供給が遅れて蒸気が不足するということを防止できる。請求項3の発明によれば、前記の両方の効果を組み合わせることができ、蒸気が不足することをより確実に防止できる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施するボイラの設置状況、図2は蒸気圧力値と燃焼台数の関係を示している。蒸気の発生は、主蒸気供給装置4と、バックアップ用ボイラ1で行う。主蒸気供給装置4は、コージェネレーション設備など優先的に稼働するものであり、バックアップ用ボイラ1は、主蒸気供給装置4のみでは蒸気量が不足する場合や、主蒸気供給装置4の蒸気供給急減または停止時に蒸気を供給するためのものである。バックアップ用ボイラ1には、起蒸時間の短い小型貫流ボイラを使用する。バックアップ用ボイラ1は、1台当たりの蒸気発生量は主蒸気供給装置4よりも小さいために複数台設置しており、A〜Fの6台のボイラを並列に設置している。
【0010】主蒸気供給装置4及び6台のバックアップ用ボイラ1は、共通のスチームヘッダ5に接続しており、スチームヘッダ5には圧力検出装置3を設けている。主蒸気供給装置4とスチームヘッダ5を結ぶ蒸気配管には、主蒸気供給装置4が供給している蒸気量を計測する蒸気量計測装置6を設ける。バックアップ用ボイラ1に対する運転指令は、各ボイラと接続している運転制御装置2で行う。運転制御装置2には、主蒸気供給装置4、蒸気量計測装置6、圧力検出装置3とも接続しておき、運転制御装置2へは、圧力検出装置3で検出した蒸気圧力値、蒸気量計測装置6で検出した蒸気量、主蒸気供給装置4における運転有無の情報を送る。
【0011】バックアップ用ボイラ1のうち、A〜Cの3台のボイラを予熱運転対象のボイラとし、D〜Fの3台のボイラを台数制御対象のボイラとする。予熱運転対象のボイラは、主蒸気供給装置4の停止時に主蒸気供給装置4に代わって蒸気を発生するものであり、台数制御対象のボイラは、主蒸気供給装置4からの蒸気供給を行っていても蒸気が不足する場合に蒸気を発生するものである。
【0012】主蒸気供給装置4の運転を行っている場合、運転制御装置2は、蒸気量計測装置6で検出した蒸気量からそれに見合うバックアップ用ボイラ1の台数を算出し、算出した台数分のボイラを予熱する。例えば算出したバックアップ用ボイラ1の台数が3台であった場合、運転制御装置は予熱運転対象のボイラから3台のボイラに対して予熱指令を送る。この場合はボイラA〜Cの3台とも予熱指令を受けることになり、予熱指令を受けた3台のボイラは、緊急時には必要な時間内に蒸気供給可能となるようにボイラ内部における蒸気圧力が、蒸気供給圧力より低い値(例えば0.5MPa)を保つように運転を行う。
【0013】また、運転制御装置2は、圧力検出装置3で検出した蒸気圧力値に応じて、バックアップ用ボイラ1の燃焼台数を制御する。運転制御装置2には、通常時台数制御、緊急蒸気供給時台数制御、バックアップ時台数制御の3通りの制御基準を設定しておく。
【0014】通常時台数制御では、台数制御対象の3台のボイラを用いて、蒸気圧力値が0.75MPa〜0.85MPaの範囲を保つように燃焼台数を制御する。つまり、蒸気圧力値が0.75MPaを下回っていればボイラD〜Fの3台のボイラを燃焼、蒸気圧力値が0.75〜0.80MPaの範囲内にあれば、ボイラD・Eの2台のボイラを燃焼、蒸気圧力値が0.80〜0.85MPaの範囲内にあれば、ボイラDのみを燃焼、蒸気圧力値が0.85MPaを上回ればボイラD〜Eの3台のボイラは全て停止とする。
【0015】緊急蒸気供給時台数制御では、予熱運転対象のボイラを優先順位の最優先としておき、ボイラA〜Fの6台のボイラを用いて燃焼台数を制御する。蒸気圧力値が0.81MPaを下回っていればボイラA〜Fの6台のボイラを燃焼、蒸気圧力値が0.81〜0.83MPaの範囲内にあれば、ボイラA〜Eの5台のボイラを燃焼、蒸気圧力値が0.83〜0.85MPaの範囲内にあれば、ボイラA〜Dの4台のボイラを燃焼、蒸気圧力値が0.85〜0.87MPaの範囲内にあれば、ボイラA〜Cの3台のボイラを燃焼、蒸気圧力値が0.87〜0.89MPaの範囲内にあれば、ボイラA・Bの2台のボイラを燃焼、蒸気圧力値が0.89〜0.91MPaの範囲内にあれば、ボイラAのみを燃焼、蒸気圧力値が0.91MPaを上回ればボイラは全て停止とする。
【0016】バックアップ時台数制御では、緊急蒸気供給時台数制御と同じ6台のボイラを用い、通常時台数制御と同じ0.75〜0.85MPaの範囲を保つように燃焼制御を行う。蒸気圧力値が0.75MPaを下回っていれば6台のボイラを燃焼、蒸気圧力値が0.75〜0.77MPaの範囲内にあれば5台のボイラを燃焼、蒸気圧力値が0.77〜0.79MPaの範囲内にあれば4台のボイラを燃焼、蒸気圧力値が0.79〜0.81MPaの範囲内にあれば3台のボイラを燃焼、蒸気圧力値が0.81〜0.83MPaの範囲内にあれば2台のボイラを燃焼、蒸気圧力値が0.83〜0.85MPaの範囲内にあれば1台のボイラを燃焼、蒸気圧力値が0.85MPaを上回ればボイラは全て停止とする。
【0017】運転制御装置2は、主蒸気供給装置4の運転を行っている場合は、通常時台数制御に基づいて燃焼台数の制御を行う。例えば、圧力検出装置3で検出している蒸気圧力値が0.84MPaであったとすると、圧力検出装置3はボイラDのみに燃焼指令を出力し、ボイラDは燃焼を行って蒸気を発生する。発生した蒸気は、主蒸気供給装置4からの蒸気と共にスチームヘッダ5に入り、スチームヘッダから蒸気使用側へ送る。
【0018】通常は主蒸気供給装置4を優先的に運転するが、主蒸気供給装置4に異常が発生するなどして運転を停止した場合には、バックアップ用ボイラ1によって蒸気供給を行う必要がある。主蒸気供給装置4が蒸気供給急減または運転を停止した場合、主蒸気供給装置4から運転制御装置2へ緊急蒸気供給信号が発せられ、運転制御装置は通常時台数制御から緊急蒸気供給時台数制御に切り換える。
【0019】緊急蒸気供給時台数制御では、それまでは予熱運転対象のボイラであったボイラA〜Cを台数制御対象に加え、より高い圧力で燃焼を行う。蒸気量計測装置6より、バックアップ用ボイラ1のうち3台が予熱対象となった際、蒸気圧力値が0.84MPaであってボイラDのみを燃焼していた場合に、主蒸気供給装置4が蒸気供給急減または停止したとすると、運転制御装置2は0.84MPaでの燃焼台数である4台のボイラに対して燃焼指令を出力する。この時ボイラDは既に燃焼を行っているため、新しく燃焼を開始するのは、ボイラA〜Cの3台のボイラとなる。ボイラA〜Cの3台のボイラは予熱を行っていたため、燃焼を開始すると短時間で蒸気を発生することができ、すぐに蒸気圧力を安定させることができる。
【0020】バックアップ用ボイラ1の予熱を行っていなかった場合、バックアップ用ボイラ1の燃焼を開始してもすぐには蒸気供給を開始できないため、蒸気圧力が低下し続けて蒸気の不足を招くことがあった。しかし、主蒸気供給装置4が供給していた蒸気量に見合う分としてボイラA〜Cのボイラを予熱しておいたことにより、ボイラA〜Cのボイラでは燃焼を開始するとすぐに蒸気の供給を開始することができる。
【0021】また、緊急蒸気供給時台数制御により台数制御を行う圧力範囲を高くし、バックアップ用ボイラ1の燃焼台数が多くなるようにしたため、蒸気圧力が低下しなくてもそれまでより多いボイラに対して燃焼指令を送ることになり、実際に蒸気圧力が低下する前に燃焼を開始することになる。主蒸気供給装置4の蒸気供給急減または停止によって発生する蒸気圧力の低下に先駆けて燃焼を開始することになるため、主蒸気供給装置4の停止に伴う蒸気圧力の低下を防ぐことができる。
【0022】予熱を行っておくことと、主蒸気供給装置4の蒸気供給急減または作動を停止した時には燃焼台数を増加することのいずれか一方のみであっても、蒸気圧力の低下を防ぐ効果を得ることができるが、組み合わせることによって蒸気の不足をより確実に防止できる。そのため、予熱ボイラの設定蒸気圧力を0.5MPaとした場合、バックアップ用ボイラの燃焼準備時間を含めても、主蒸気供給装置4の作動停止から90秒以内に定格蒸気量を発生することができる。
【0023】主蒸気供給装置4停止時の蒸気圧力変動に対応するために、緊急蒸気供給時台数制御では制御圧力範囲を高くしたが、蒸気圧力が安定している場合には、0.75〜0.85MPaの範囲で良いため、蒸気圧力が安定すると運転制御装置2はバックアップ時台数制御に切り換える。主蒸気供給装置が蒸気供給急減または停止した場合は、主蒸気供給装置4の分も蒸気供給を行う必要があるためにバックアップ用ボイラ1の燃焼台数は多くなり、予熱を行う必要はないため、ボイラA〜Fの6台のボイラで台数制御を行う。
【0024】主蒸気供給装置4の作動を開始した場合には、バックアップ用ボイラ1の燃焼台数は少なくてよく、代わりに予熱を行うボイラが必要である。そのため、バックアップ用ボイラ1を予熱運転対象と台数制御対象に分け、通常時台数制御による台数制御と、主蒸気供給装置4による蒸気供給量に応じた予熱運転を行う。なお、燃焼優先順位の変更や、予熱運転対象または台数制御対象の指定は定期的に変更し、各バックアップ用ボイラの運転時間を平均化する。
【0025】
【発明の効果】本発明を実施することにより、主蒸気供給装置とバックアップ用ボイラを設けている蒸気供給システムにおいて、主蒸気供給装置の停止によって蒸気圧力が低下し、蒸気使用側に影響を与えることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例でのボイラ設置状況図
【図2】 本発明の一実施例での蒸気圧力値と燃焼台数の関係説明図
【符号の説明】
1 バックアップ用ボイラ
2 運転制御装置
3 圧力検出装置
4 主蒸気供給装置
5 スチームヘッダ
6 蒸気量計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 主蒸気供給装置と、複数台のバックアップ用ボイラを設けた蒸気供給システムにおいて、主蒸気供給装置が供給している蒸気量に見合うバックアップ用ボイラの台数を算出し、算出台数分のバックアップ用ボイラに対して予熱指令を送る運転制御装置を設けたことを特徴とするバックアップ用ボイラを設けた蒸気供給システム。
【請求項2】 主蒸気供給装置と、複数台のバックアップ用ボイラを設けた蒸気供給システムにおいて、主蒸気供給装置とバックアップ用ボイラに共通のスチームヘッダにおける蒸気圧力値を計測する圧力検出装置と、計測した蒸気圧力値に基づいてバックアップ用ボイラの燃焼台数を決定する運転制御装置を設けており、運転制御装置には、通常時台数制御と、通常時台数制御よりもバックアップ用ボイラの燃焼台数を多くする緊急蒸気供給時台数制御を設定しておき、主蒸気供給装置の作動を行っているときには通常時台数制御に基づいてバックアップ用ボイラの燃焼台数を制御し、主蒸気供給装置の作動が停止もしくは蒸気供給急減または停止を予告する信号を出力した時には緊急蒸気供給時台数制御に基づいてバックアップ用ボイラの燃焼台数を制御することを特徴とするバックアップ用ボイラを設けた蒸気供給システム。
【請求項3】 請求項1及び2に記載のバックアップ用ボイラを設けた蒸気供給システムにおいて、複数台設置したバックアップ用ボイラには、予熱運転対象のボイラと、台数制御対象のボイラを設定しておき、予熱運転対象のボイラの中から前記算出台数分のボイラに対して予熱指令を送り、通常時台数制御は台数制御対象のボイラを対象に燃焼台数を制御するものであり、緊急蒸気供給時台数制御は、予熱運転対象のボイラと台数制御対象のボイラの両方を合わせたものを対象に燃焼台数の制御を行うものであることを特徴とするバックアップ用ボイラを設けた蒸気供給システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2002−310403(P2002−310403A)
【公開日】平成14年10月23日(2002.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−312(P2002−312)
【出願日】平成14年1月7日(2002.1.7)
【出願人】(000130651)株式会社サムソン (164)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】