説明

バックル

【課題】雄部材と雌部材とのがたつきを防止できるバックルを提供する。
【課題手段】雄部材Aと雌部材Bとを備える。雄部材は、基部10と、一対の脚部20と、各脚部の先端部に設けられた係合部30とを備える。雌部材は、差込口41と、差込口から差し込まれた脚部の先端を互いに接近する方向へ弾性変形されるガイド部50と、ガイド部の奥部両側に形成された一対の被係合部60とを備える。各被係合部は、各係合部を互いに離間する方向へ変位させるとともに、離間方向奥部に各係合部が当接する当接壁61Dを有する凹部61によって形成される。各当接壁は、雄部材Aの反差込方向へ向かうに従って互いに接近する方向へ傾斜する傾斜面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄部材と雌部材とを備えたバックルに関する。詳しくは、1本の紐状部材の両端、あるいは、2本の紐状部材同士を連結、分離するために用いられるバックルに関する。
【背景技術】
【0002】
1本の紐状部材の両端、あるいは、2本の紐状部材同士を連結、分離する手段として、特許文献1に開示されたバックルが知られている。
このバックルは、互いに連結される部材の一方に取り付けられる差込体と、他方に取り付けられるバックル本体とを備える。差込体は、バックル本体に差し込まれる一対の脚部と、この一対の脚部の先端に設けられた係合部とを有する。バックル本体には、脚部が挿入される収容部と、脚部の係合部が係合する被係合部とが設けられている。
【0003】
差込体の係合部とバックル本体の被係合部とは、同じ傾斜面を有する係合面で係合される。
つまり、図12(A)(B)に示すように、差込体110の係合部111には、差込体110の差込方向後端面に外側から内側へ向かうに従って差込方向へ傾斜した係合面112が形成されている。バックル本体120の被係合部121には、差込体110の差込方向先端面に外側から内側へ向かうに従って差込方向へ傾斜した被係合面122が形成されている。
【0004】
従って、差込体110をバックル本体120に差し込むと、脚部113の係合部111が被係合部121に当接し、脚部113が内側に弾性変形される(図12(A)の状態参照)。さらに、差込体110をバックル本体120に差し込み、係合部111が被係合部121を越えると、脚部113が外側へ弾性復帰され、係合面112と被係合面122とが係合される(図12(B)の状態参照)。これにより、差込体110がバックル本体120に係合される。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2594412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたバックルの場合、図12(B)の状態において、差込体110とバックル本体120とに引張力、つまり、差込方向とは反対方向の力が加わると、係合面112と被係合面122とが傾斜面になっているため、差込体110とバックル本体120との係合強度を高めることができる反面、差込体110がバックル本体120に係合された状態において、差込体110とバックル本体120とにがたつきが生じる。
【0007】
つまり、係合部111と被係合部121とが係合するには、係合部111が被係合部121を越える位置まで差込体110が差し込まれる必要がある。その後、係合部111が被係合部121を越えると、脚部113が外側へ弾性復帰され、かつ、差込体110が反差込方向へ僅か戻った位置で、係合面112と被係合面122とが係合するため、係合面112と被係合面122の傾斜分に相当する差込方向寸法Lが差込体110とバックル本体120とにがたつきを生じさせる要因となる。このようながたつきが生じると、衝撃音が発生したり、高級感を損なう。
【0008】
本発明の目的は、このような課題を解決し、雄部材と雌部材とのがたつきを防止できるバックルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバックルは、雄部材と、この雄部材が差込係合される雌部材とを備え、前記雄部材は、基部と、この基部から突出形成された一対の脚部と、この各脚部の先端部に設けられ前記雌部材に係合可能な係合部とを備え、前記雌部材は、前記雄部材の一対の脚部が差し込まれる差込口と、この差込口から差し込まれた前記一対の脚部の先端部を互いに接近する方向へ弾性変形させるガイド部と、前記雄部材が所定位置まで差し込まれた際、前記一対の脚部の先端部が互いに離間する方向へ変位して、前記各係合部が係合する一対の被係合部とを備え、前記各被係合部は、前記脚部の離間方向に対向して配置され、前記各係合部と当接する当接壁を有し、前記各当接壁は、前記雄部材の反差込方向へ向かうに従って互いに接近する方向へ延びる壁面に形成されている、ことを特徴とする。
ここで、各当接壁を、雄部材の反差込方向へ向かうに従って互いに接近する方向へ延びる壁面に形成するには、例えば、傾斜面(テーパ面)や円弧面などによって形成することができる。
【0010】
この構成によれば、雄部材の一対の脚部を雌部材の差込口から差し込むと、ガイド部によって、一対の脚部の先端部が互いに接近する方向へ弾性変形されていく。やがて、雄部材が所定位置まで差し込まれると、一対の脚部の弾性復帰力によって、各係合部は、互いに離間する方向へ変位され、その離間方向に対向配置された当接壁に当接される。
このとき、各当接壁は、雄部材の反差込方向へ向かうに従って互いに接近する方向へ延びる壁面に形成されているから、例えば、係合部が当接する被係合部の当接壁が傾斜面などに形成されているから、係合部を被係合部に確実に接触させることができる。従って、係合部と被係合部との間にはクリアランスが生じることがないから、クリアランスによって生じるがたつきを防止できる。
【0011】
しかも、各係合部は、各脚部の弾性復帰力によって互いに離間する方向へ付勢された状態で各当接壁に当接され、各当接壁は、雄部材の反差込方向へ向かうに従って互いに接近する方向へ延びる壁面に形成されているから、雄部材の差込方向、および、雄部材の差込方向に対して直交しかつ一対の脚部が弾性変形する方向に対してもクリアランスが生じることがない。よって、これら2方向に対するがたつきを防止できる。
また、各係合部が互いに離間する方向へ付勢された状態で当接面に当接されているから、つまり、各係合部が雄部材の反差込方向へ向かうに従って互いに接近する方向へ延びる壁面に当接されているから、雄部材の引抜方向抵抗を付与でき、雄部材と雌部材との係合力も維持できる。
【0012】
本発明のバックルにおいて、前記各当接壁に当接する前記係合部の当接部は、前記雄部材の反差込方向へ向かうに従って互いに接近する方向へ延びかつ前記各当接壁の壁面と略一致する壁面に形成されている、ことが好ましい。
この構成によれば、各当接壁に当接する係合部の当接部も、各当接壁の壁面と略一致する壁面に形成されているから、被係合部の当接壁と係合部の当接部とを面接触させることができるので、雄部材の引抜方向抵抗を高く維持できる。従って、雄部材と雌部材との係合力もより高く維持できる。
【0013】
本発明のバックルにおいて、前記各被係合部は、前記当接壁の差込口側端に連続して形成され前記雄部材の差込方向に対して略直交する被係止壁を有し、前記各係合部は、前記当接部の前記基部側端に連続して形成され前記雄部材の差込方向に対して略直交しかつ前記被係止壁に係止される係止壁を有する、ことが好ましい。
この構成によれば、雄部材と雌部材とが係合した状態において、雄部材と雌部材とに引抜方向の力が作用すると、被係合部の当接壁の傾斜面に沿って係合部の当接部が移動され、係合部の係止壁が被係止部の被係止壁に係止される。
この係合部の係止壁と被係止部の被係止壁とは、雄部材の差込方向に対して略直交する壁に形成されているから、これらの係止壁と被係止壁とによって、雄部材と雌部材とに作用する引抜方向の力を確実に受けることができる。従って、雄部材と雌部材とに作用する引抜方向の力に対しても、雄部材と雌部材とが簡単に外れない構造にできる。
【0014】
本発明のバックルにおいて、前記雄部材の前記基部には、前記脚部が突出形成された側の両側部よりも中央部が前記脚部の突出方向へ向かって突出する突合部が設けられ、前記雌部材には、前記差込口側に前記雄部材の突合部と密着する突合部が設けられている、ことが好ましい。
この構成によれば、雄部材を雌部材に差し込むと、雄部材の突合部が雌部材の突合部に密着するので、意匠的にもすっきりとした印象が得られるうえ、よりがたつきの発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
<実施形態の構成>
図1は本実施形態のバックルの斜視図、図2は同バックルの分離状態を示す斜視図、図3は同バックルの分離状態を示す一部破断の平面図である。
これらの図に示すように、本実施形態のバックル1は、紐状部材の端部2,3を連結、分離するためのもので、合成樹脂によって一体成形された雄部材Aと、同様に合成樹脂によって一体成形され、雄部材Aが内部に差込係合される雌部材Bとを備えている。なお、雄部材Aおよび雌部材Bの材料については、合成樹脂に限らず、金属などの他の材料でもよい。
【0016】
雄部材Aは、基部10と、この基部10の幅方向(雄部材Aの差込方向に直交する方向)両側から長さ方向(雄部材Aの差込方向)へ互いに平行に突出形成され、かつ互いに接近または離間する方向へ弾性変形可能な一対の脚部20と、この各脚部20の先端部に設けられ、雌部材Bに係合可能な係合部30とを備える。
【0017】
基部10は、内部中央に紐状部材の端部2が挿入係止される紐取付部としての紐取付孔11を有する略五角形状の枠フレーム12によって構成されている。
紐取付孔11の中間であって枠フレーム12の幅方向に連結杆13が架設され、この連結杆13によって紐取付孔11が、脚部20が設けられた差込方向前端側とそれとは反対側の差込方向後端側の2つの紐取付孔11A,11Bに分割されている。これにより、紐状部材を紐取付孔11A,11Bに挿通させて連結杆13の周囲に旋回させることにより、紐状部材の長さ調節が可能な構造となっている。
枠フレーム12のうち脚部20が設けられた枠材12Aは、雌部材Bとの突合部14として形成されている。突合部14は、枠材12Aの両端部よりも中央部が脚部20の突出方向へ向かって突出したV字状に形成され、この枠材12Aの脚部20が設けられた面に枠材12Aの外周輪郭形状より僅かに小さい輪郭形状で脚部20の突出方向へ僅かに突出した嵌合凸部15を有する。
【0018】
脚部20は、基部10の両側から雄部材Aの差込方向に向かって直線状に延長され互いに接近または離間する方向へ弾性変形可能な弾性片部21と、この弾性片部21の先端から雄部材Aの差込方向へ向かって延長されたガイド片部22とを有する。
弾性片部21は、弾性変形方向の寸法(幅寸法)が表裏方向寸法より小さい断面形状に形成されている。
ガイド片部22は、弾性片部21から二股に分岐されたのち先端で結合する形状に形成されているとともに、その外側面が先端へ向けて内側、すなわち、各脚部20が接近する方向へ傾斜して形成されている。なお、一対のガイド片部22の内側面間は、弾性を有する連結帯23によって連結されている。連結帯23は、枠材12Aへ接近する方向へ凸状に湾曲した逆U字形状を呈し、一対のガイド片部22が所定以上外側へ変形するのを阻止し、脚部20に過度の引張力(外側への引張力)が加わった時に脚部20の破損を防止する役目を果たす。
【0019】
係合部30は、一対の脚部20のガイド片部22の先端表裏面に突出して形成された突起31によって形成されている。
突起31は、図4に示すように、内側壁31A、前側壁31B、前外側壁31C、後外側壁31Dおよび後側壁31Eらの周壁を有し、隣接する壁の角部が円弧面で連結された略五角形状に形成されている。内側壁31Aは、ガイド片部22の内側面側に位置し、雄部材Aの差込方向と略平行な壁面に形成されている。前側壁31Bは、雄部材Aの差込方向に対して略直交する壁面に形成されている。前外側壁31Cは、前側壁31Bから雄部材Aの反差込方向へ向かうに従って内側壁31Aから次第に離れる傾斜面に形成されている。後外側壁31Dは、前外側壁31Cから雄部材Aの反差込方向へ向かうに従って内側壁31Aに接近する傾斜面に形成されている。より詳しくは、内側壁31Aとのなす角が約45度の傾斜面に形成されている。前外側壁31Cと後外側壁31Dとは、内側壁31Aとは反対側、すなわち、ガイド片部22の外側面側に位置している。後側壁31Eは、前側壁31Aと雄部材Aの差込方向にて前後に対向する壁であり、雄部材Aの差込方向に対して略直交する壁面に形成されている。
つまり、一対の突起31は、雄部材Aの反差込方向へ向かうに従って、互いに接近する方向へ傾斜する傾斜面に形成された当接壁としての後外側壁31Dと、後外側壁31Dの基部10側端から連続して形成され雄部材Aの差込方向に対して略直交する係止壁としての後側壁31Eとを有する略五角形状に形成されている。
【0020】
雌部材Bは、図5にも示すように、表裏面を構成する表壁40Aおよび裏壁40Bと、これらを連結する一対の側壁40Cを有する扁平筒形状の雌部材本体40を備える。
雌部材本体40の一端には、雄部材Aの一対の脚部20が差し込まれる差込口41が形成されているとともに、雄部材Aの突合部14と突き合わされる突合部42が設けられている。突合部42は、雄部材Aの突合部14と合致するV字形状に形成されているとともに、差込口41が雄部材Aの嵌合凸部15に嵌り込む形状に形成されている。
【0021】
雌部材本体40の他端には、紐状部材の端部3が挿入係止される紐取付部としての紐取付孔43および連結杆44が形成されているとともに、側壁40Cの中間部には、表壁40Aおよび裏壁40Bの内部に向かって凹状に切り欠かれた開口部45が形成されている。開口部45からは、雄部材Aの脚部20に設けられたガイド片部22が露出され、ガイド片部22を互いに内側へ押圧操作できるようになっている。つまり、ガイド片部22は、雄部材Aを雌部材Bから外すための操作部を兼ねている。
【0022】
雌部材本体40の内部には、差込口41から雌部材本体40の内部に向かって形成され係合部30を案内しながら一対の脚部20の先端部を互いに接近する方向へ弾性変形させるガイド部50と、このガイド部50の奥部両側に各係合部30が係合する一対の被係合部60とが設けられている。
ガイド部50は、雌部材本体40の表壁40Aおよび裏壁40Bの内面に、差込口41から被係合部60に向かうに従って幅が次第に狭くなるテーパ形状のガイド溝50Aによって形成されている。
【0023】
被係合部60は、各係合部30を互いに離間する方向へ変位させる凹部61によって形成されている。
凹部61は、図6に示すように、雌部材本体40の表壁40Aおよび裏壁40Bの内面に、ガイド溝50Aの奥部から両外側に雄部材Aの差込方向に対して略直交方向へ切り欠き形成された略五角形状の凹溝として形成されている。つまり、各係合部30が離間する離間方向奥部に凹部61の突当壁が配置され、この突当壁に各係合部30が当接する当接壁61Dと、この当接壁61Dの差込口41側端に連続して形成された被係止壁61Eを有する略五角形状に形成されている。
当接壁61Dは、雄部材Aの反差込方向へ向かうに従って、互いに接近する方向へ傾斜する傾斜面に形成されている。詳しくは、係合部30の後外側壁31Dと略同じ傾斜面で、これと当接する傾斜面に形成されている。被係止壁61Eは、係合部30の後側壁31Eが係止される壁で、雄部材Aの差込方向に対して略直交する壁面に形成されている。なお、表壁40Aに形成された凹部61と裏壁40Bに形成された凹部61とは、それぞれ表壁40A、裏壁40Bの外表面に開口されている。
【0024】
<実施形態の作用・効果>
雄部材Aの一対の脚部20を雌部材Bの差込口41から差し込むと、図7に示すように、各脚部20の先端部に設けられた係合部30がガイド溝50に案内されながら雌部材Bの内部に差し込まれていくとともに、一対の脚部20の先端部が互いに接近する方向へ弾性変形されていく。やがて、係合部30がガイド溝50Aを越えて被係合部60に達すると、図8に示すように、一対の脚部20の弾性復帰力によって、各係合部30は、互いに離間する方向へ変位され、離間方向奥部の当接壁61Dを押圧しながら当接壁61Dに当接される。
【0025】
各当接壁61Dは、雄部材Aの反差込方向へ向かうに従って互いに接近する方向へ傾斜する傾斜面に形成されているから、つまり、係合部30が当接する被係合部60の当接壁61Dが傾斜面に形成されているから、係合部30を被係合部60に確実に接触させることができる。従って、係合部30と被係合部60との間にはクリアランスが生じないから、クリアランスによって生じるがたつきを防止できる。
【0026】
このとき、各係合部30は、各脚部20の弾性復帰力によって互いに離間する方向へ付勢された状態で各当接壁61Dに当接され、各当接壁61Dは、雄部材Aの反差込方向へ向かうに従って互いに接近する方向へ傾斜する傾斜面に形成されているから、雄部材Aの差込方向、および、雄部材Aの差込方向に対して直交しかつ一対の脚部20が弾性変形する方向に対してもクリアランスが生じないから、これら2方向に対するがたつきを防止できる。
【0027】
また、各係合部30が互いに離間する方向へ付勢された状態で当接壁61Dに当接されているから、つまり、各係合部30が雄部材Aの反差込方向へ向かうに従って互いに接近する方向へ傾斜する傾斜面に当接されているから、雄部材Aの引抜方向抵抗を付与でき、雄部材Aと雌部材Bとの係合力も維持できる。
【0028】
本実施形態では、各当接壁61Dに当接する係合部30の後外側壁31Dも、各当接壁61Dの傾斜面と略一致する傾斜面に形成されているから、被係合部60の当接壁61Dと係合部30の後外側壁31Dとを面接触させることができるので、雄部材Aの引抜方向抵抗を高く維持できる。従って、雄部材Aと雌部材Bとの係合力もより高く維持できる。
【0029】
また、雄部材Aと雌部材Bとが係合した状態において、雄部材Aと雌部材Bとに引抜方向の力が作用すると、図9に示すように、被係合部60の当接壁61Dの傾斜面に沿って係合部30の後外側壁31Dが移動され、係合部30の後側壁31Eが被係合部60の被係止壁61Eに係止される。このとき、ガイド片部22の内側面間に掛け渡された連結帯23によって、脚部20の内側への変形が抑えられ、係合部30の後側壁31Eと被係合部60の被係止壁61Eとの係止状態が維持される。
この係合部30の後側壁31Eと被係合部60の被係止壁61Eとは、雄部材Aの差込方向に対して略直交する壁に形成されているから、これらの後側壁31Eと被係止壁61Eとによって、雄部材Aと雌部材Bとに作用する引抜方向の力を確実に受けることができる。従って、雄部材Aと雌部材Bとに作用する引抜方向の力に対しても、雄部材Aと雌部材Bとが簡単に外れない構造にできる。
【0030】
また、雄部材Aを雌部材Bに差し込むと、雄部材Aの突合部14が雌部材Bの突合部42に密着されるので、意匠的にもすっきりとした印象が得られるうえ、雄部材Aと雌部材Bとを密着させた状態で係合させることができるから、よりがたつきの発生を防止できる。
【0031】
雄部材Aを雌部材Bから外すには、雌部材Bの開口部45から突出している脚部20のガイド片部22の外側面を内側へ押圧する。すると、雄部材Aの脚部20が内側に弾性変形され、係合部30が被係合部60から外れる。従って、この状態において、雄部材Aを雌部材Bから引き抜くと、雄部材Aを雌部材Bから外すことができる。
【0032】
<変形例の説明>
なお、本発明は、上記実施形態で説明した構造のバックルに限定されるものでなく、次のような変形例も含む。
上記実施形態では、係合部30を略五角形形状の突起31によって構成し、被係合部60を略五角形形状の凹部61によって構成したが、必ずしも、五角形形状の突起や凹部でなくてもよい。
例えば、係合部30については、当接部としての後外側壁31Dおよび係止壁としての後側壁31Eを隣接辺にもつ多角形であってもよい。被係合部60については、当接壁61Dおよび被係止壁61Eを隣接辺にもつ多角形であってもよい。
【0033】
上記実施形態では、係合部30の当接部としての後外側壁31Dを、内側壁31Aとのなす角が約45度の傾斜面としたが、傾斜角度はこれに限られない。例えば、30度〜60度の範囲内で選択してもよい。
同様に、被係合部60の当接壁61Dについても、30度〜60度の範囲内で選択してもよい。
【0034】
あるいは、図10に示すように、被係合部60の当接壁61Dおよび係合部30の当接部としての後外側壁31Dを、共に、略同じ曲率を有する円弧面としてもよい。つまり、雄部材Aの反差込方向へ向かうに従って、互いに接近する方向へ湾曲し、かつ、凹部61や係合部30の中央から見て凸状を呈する円弧面としても、同様な効果が期待できる。
【0035】
上記実施形態では、雌部材本体40の内部に差込口41から被係合部60に向かってガイド溝50Aを形成し、このガイド溝50Aによって、係合部30を案内しながら一対の脚部20の先端部を互いに接近する方向へ弾性変形させるようにしたが、一対の脚部20の先端部を互いに接近する方向へ弾性変形させるガイド部50としては、これに限られない。
例えば、図11に示すように、雌部材本体40の内部に、係合部30に当接して一対の脚部20の先端部を互いに接近する方向へ弾性変形させたのち、離間する方向へ弾性復帰させる突起50Bなどを設けた構成でもよい。
【0036】
上記実施形態では、表壁40Aに形成された凹部61と裏壁40Bに形成された凹部61は、それぞれ表壁40A、裏壁40Bの外表面に開口されていたが、このような構成に限られない。例えば、図11に示すように、両方の凹部61または片方の凹部61を、表壁40A、裏壁40Bの外表面に開口することなく、突起50Bやガイド溝50Aの底壁と略同じ深さに形成してもよい。このようにすれば、表壁40Aや裏壁40Bの外表面に開口が形成されないため、開口から異物が侵入するのを防止できるとともに、意匠的にもシンプルにできる。
【0037】
上記実施形態では、雄部材Aおよび雌部材Bに、V字形状の突合部14,42を形成したが、これらの突合部14,42については、V字形状でなくてもよく、例えば、平坦な面であってもよい。
【0038】
上記実施形態では、雄部材Aおよび雌部材Bにそれぞれ紐取付部としての紐取付孔11,41を形成したが、雌部材Bについては、紐取付孔43がなくてもよい。つまり、雌部材Bの雌部材本体40を直接他の部材に固定するようにしてもよい。
また、雌部材Bの紐取付孔43の幅方向に連結杆を架設し、紐状部材の長さ調整を可能としてもよい。
また、紐状部材としては、帯状のベルトに限らず、幅がない細い紐であってもよい。
上記実施形態では、雄部材Aおよび雌部材Bを合成樹脂によって成形(射出成形、あるいは、射出圧縮成形)したが、これに限らず、金属などで形成してもよい。
【0039】
以上、本発明に関して、好適な実施形態および各種の変形例を挙げたが、これらを適宜組み合わせて構成してもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、例えば、バッグやリュックなどの連結、離脱用のバックルとして好適であるが、その他どのような用途にも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態のバックルを示す斜視図。
【図2】前記実施形態のバックルの分離状態を示す分解斜視図。
【図3】前記実施形態のバックルの分離状態を示す一部破断の平面図。
【図4】前記実施形態において、雄部材の係合部部分を示す拡大図。
【図5】図3のV−V線拡大断面図。
【図6】前記実施形態において、雌部材の被係合部部分を示す拡大図。
【図7】前記実施形態において、雄部材が雌部材に差込途中を示す断面図。
【図8】前記実施形態において、雄部材が雌部材に係合された後の断面図。
【図9】前記実施形態において、雄部材と雌部材とに引張力が作用した図。
【図10】雌部材の被係合部部分の変形例を示す拡大図。
【図11】雌部材の変形例を示す断面図。
【図12】従来のバックルの問題点を示す図。
【符号の説明】
【0042】
1…バックル、10…基部、14…突合部、20…脚部、30…係合部、31D…後外側壁(当接部)、31E…後側壁(係止壁)、41…差込口、42…突合部、50…ガイド部、60…被係合部、61…凹部、61D…当接壁、61E…被係止壁、A…雄部材、B…雌部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄部材Aと、この雄部材Aが差込係合される雌部材Bとを備え、
前記雄部材Aは、基部10と、この基部10から突出形成された一対の脚部20と、この各脚部20の先端部に設けられ前記雌部材Bに係合可能な係合部30とを備え、
前記雌部材Bは、前記雄部材Aの一対の脚部20が差し込まれる差込口41と、この差込口41から差し込まれた前記一対の脚部20の先端部を互いに接近する方向へ弾性変形させるガイド部50と、前記雄部材Aが所定位置まで差し込まれた際、前記一対の脚部20の先端部が互いに離間する方向へ変位して、前記各係合部30が係合する一対の被係合部60とを備え、
前記各被係合部60は、前記脚部20の離間方向に対向して配置され、前記各係合部30と当接する当接壁61Dを有し、
前記各当接壁61Dは、前記雄部材Aの反差込方向へ向かうに従って互いに接近する方向へ延びる壁面に形成されている、ことを特徴とするバックル。
【請求項2】
前記各当接壁61Dに当接する前記係合部30の当接部31Dは、前記雄部材Aの反差込方向へ向かうに従って互いに接近する方向へ延びかつ前記各当接壁61Dの壁面と略一致する壁面に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のバックル。
【請求項3】
前記各被係合部60は、前記当接壁61Dの差込口41側端に連続して形成され前記雄部材Aの差込方向に対して略直交する被係止壁61Eを有し、
前記各係合部30は、前記当接部31Dの前記基部10側端に連続して形成され前記雄部材Aの差込方向に対して略直交しかつ前記被係止壁61Eに係止される係止壁31Eを有する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバックル。
【請求項4】
前記雄部材Aの前記基部10には、前記脚部20が突出形成された側の両側部よりも中央部が前記脚部20の突出方向へ向かって突出する突合部14が設けられ、
前記雌部材Bには、前記差込口41側に前記雄部材Aの突合部14と密着する突合部42が設けられている、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のバックル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−11492(P2009−11492A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175411(P2007−175411)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】