説明

バックル

【課題】部品点数の削減、および、組立工数の低減が可能なバックルを提供する。
【解決手段】雄部材Aは、本体部10と一対の係合部材30を有する。本体部は、金属で形成されたベルト取付部11および基部21を有する。係合部材は、金属で形成され、基部に対して互いに内側方向へ回動可能に支持される。係合部材および基部の一方は、係合部材の回動中心となる軸部35を一体的に備え、他方は、軸部が入り込む凹部27を備える。更に、軸部を凹部内に保持し、かつ、軸部を回動中心とする係合部材の内側方向への回動を許容する弾性部材50を備える。本体部および係合部材は、弾性部材が係止する溝部24および係止壁部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄部材と雌部材とを備えたバックルに関する。詳しくは、ベルトの少なくとも一端、あるいは、2本のベルト同士を連結、分離するために用いられるバックルに関する。
【背景技術】
【0002】
金属製のバックルは、重量感があり、見た目が頑丈そうな印象を与えるとともに、高級感も与える。このため、カバンなどに付加価値を付けるために、金属製のバックルが要望されている。
このような要望に応えるバックルとして、特許文献1に開示されたバックルが知られている。これは、金属製の雄部材と、金属製の雌部材とから構成されている。雄部材は、中央にガイドバーを有するベルト取付部と、このベルト取付部の両側にピンによって回動可能に軸支された一対の係合部材と、各係合部材とガイドバーとの間に介在され各係合部材を外側方向へ付勢する一対の弾性部材とを備える。
従って、係合部材は、ピンを中心として、回動可能かつ復帰可能であるから、この動作によって、雄部材を雌部材に対して係合解除させることができる。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6553637号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のバックルは、雄部材が、ベルト取付部と、一対の係合部材と、一対のピンと、一対の弾性部材とから構成されているから、部品点数が多い。
そのため、組立にあたっては、一対の係合部材をベルト取付部の両側に配置し、これらのピン挿通孔にピンを差し込んで一対の係合部材をベルト取付部に回動可能に軸支したのち、係合部材とガイドバーとの間に弾性部材をそれぞれ係止させる作業が必要であるため、組立工数がかかるという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、このような課題を解決し、部品点数の削減、および、組立工数の低減が可能なバックルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバックルは、筒状の雌部材と、この雌部材に差込係合する雄部材とを備え、前記雄部材は、本体部と、一対の係合部材とを有し、前記本体部は、金属または金属粉を混入させた樹脂材で形成され、かつ、ベルト取付部およびこのベルト取付部から突出された基部を有し、前記係合部材は、金属または金属粉を混入させた樹脂材で形成され、かつ、前記基部に対して互いに内側方向へ回動可能に支持されるとともに、前記雌部材に係合する係合部を有するバックルにおいて、前記係合部材および前記基部の一方は、前記係合部材の回動中心となる軸部を一体的に備え、前記係合部材および前記基部の他方は、前記軸部が入り込む凹部を備え、前記軸部を前記凹部内に保持し、かつ、前記軸部を回動中心とする前記係合部材の内側方向への回動を許容するとともに、前記係合部材を元の位置へ復帰させる弾性部材を備え、前記本体部および前記係合部材は、前記弾性部材が係止する係止部を備えている、ことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、係合部材および基部の一方は、係合部材の回動中心となる軸部を一体的に備え、他方は、軸部が入り込む凹部を備えているから、まず、凹部に軸部を挿入したのち、本体部および係合部材に弾性部材を係止させる。すると、弾性部材によって、軸部が凹部内に保持され、かつ、軸部を回動中心とする係合部材の内側方向への回動が許容される。従って、係合部材が軸部を回動中心として内側方向へ回動可能であるから、雄部材を雌部材に対して係合、解除動作させることができる。
【0008】
本発明では、雄部材が、本体部と、一対の係合部材と、弾性部材とから構成されているから、従来のバックルに比べ、部品点数を削減できる。そのため、組立工数も低減できる。
もとより、雄部材のうち本体部および一対の係合部材は、金属または金属粉を混入させた樹脂材で形成されているから、金属製のバックルとして形成できる。従って、重量感のある印象を与えることができるバックルを提供できる。
【0009】
本発明のバックルにおいて、前記本体部の前記係止部は、前記弾性部材の一部を係止する溝部とされ、前記弾性部材は、前記溝部に係止される連結片部と、この連結片部の両端から略直角に延設され前記係合部材の内側面に当接し前記軸部を前記凹部内に保持する一対の弾性片部とを有する、ことが好ましい。
この構成によれば、本体部には、係止部としての溝部が設けられているから、この溝部に弾性部材の一部を収容すれば、弾性部材を本体部に保持させることができる。
また、弾性部材は、溝部に係止される連結片部と、この連結片部の両端から延設された一対の弾性片部とを有する形状に形成されているから、1本の弾性部材によって、軸部を凹部内に保持する機能と、一対の係合部材が内側方向へ回動できる機能との2つの機能を奏することができる。従って、1本の弾性部材でよいから、従来のバックルに比べても、部品点数を削減できる。この際、弾性部材は弾性変形可能であるため、弾性部材を弾性変形させながら組立作業を行うことにより、組立作業を容易に行うことができる。
【0010】
本発明のバックルにおいて、前記係合部材の前記係止部は、前記弾性部材の先端が係止する係止壁部とされていることが好ましい。
この構成によれば、係合部材には、係止部としての弾性部材の先端が係止する係止壁部が設けられているから、弾性部材を本体部の溝部に収容すると、弾性部材の先端が係合部材の係止壁部に係止されるため、この弾性部材によって、本体部と係合部材とを組み立てることができる。
【0011】
本発明のバックルにおいて、前記基部は、差込方向に突出する一対の支持脚を備え、前記支持脚の対向面に開口を有する前記凹部が形成され、前記係合部材には前記軸部が形成され、前記弾性部材は、前記開口を塞ぐ位置に配置され、前記軸部を前記凹部に保持する、ことが好ましい。
この構成によれば、基部に一対の支持脚が突出形成され、この支持脚の対向面に凹部が形成されているとともに、係合部材に軸部が設けられているから、係合部材の軸部を支持脚の対向面に沿って挿入していけば、軸部を凹部に挿入することができる。こののち、凹部の開口を塞ぐ位置に弾性部材を配置すると、弾性部材によって、軸部が凹部内に保持され、かつ、軸部を回動中心とする係合部材の内側方向への回動が許容される。従って、係合部材の軸部を基部の凹部に挿入しやすい。
【0012】
本発明のバックルにおいて、前記基部は、差込方向に突出する一対の支持脚を備え、前記支持脚は上壁と下壁とこれらを連結する前記軸部とを備え、前記係合部材の一部は前記上壁および下壁の間に収容可能とされているとともに、前記係合部材の外側面に開口を有する前記凹部が形成され、前記弾性部材は、前記開口と反対の前記係合部材の内側面に配置され、前記軸部を前記凹部に保持する、ことが好ましい。
この構成によれば、基部に一対の支持脚が突出形成され、この支持脚は上壁と下壁とこれらを連結する前記軸部とを備え、係合部材の外側面に開口を有する前記凹部が形成されているから、係合部材の凹部を支持脚の軸部に挿入したのち、係合部材の内面に弾性部材を配置すると、弾性部材によって、軸部が凹部内に保持され、かつ、軸部を回動中心とする係合部材の内側方向への回動が許容される。この状態では、弾性部材が係合部材の内面に接触してこれらを外側へ向かって付勢しているので、係合部材を安定した姿勢に保持できるとともに、係合部材の内側への回動も安定して行うことができる。
【0013】
本発明のバックルは、前記基部は、前記係合部材が内側方向へ所定角度回動したとき、前記係合部材が当接する当接部を備える、ことが好ましい。
この構成によれば、係合部材が内側方向へ所定角度回動すると、係合部材が基部に備えられた当接部に当接するので、係合部材のそれ以上の内側方向への回動が規制される。そのため、係合部材が過剰に内側方向へ回動されることがないため、長年の使用にも耐えうる構造にできる。
【0014】
本発明のバックルは、前記基部は、前記係合部材が前記雄部材の差込方向軸線に対して外側方向へ回動しようとしたとき、前記係合部材が当接する当接部を備える、ことが好ましい。
この構成によれば、係合部材が外側方向へ回動しようとすると、係合部材が基部に備えられた当接部に当接するので、係合部材のそれ以上の外側方向への回動が規制される。そのため、係合部材が過剰に外側方向へ回動されることがないため、長年の使用にも耐えうる構造にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
<実施形態の構成>
図1は本実施形態のバックルの分解斜視図、図2は本実施形態のバックルの雄部材Aを示す一部破断の正面図である。
本実施形態のバックル1は、ベルト2(例えば、バッグの肩ベルトなど)の端部2A,2Bを連結、分離するためのもので、雌部材Bと、この雌部材Bに差込可能かつ引抜可能に設けられる雄部材Aとを備えている。
【0016】
(雄部材A)
雄部材Aは、本体部10と、一対の係合部材30と、弾性部材50とを備えている。これらのうち、本体部10と一対の係合部材30は金属のダイキャスト成形によって形成され、弾性部材50は弾性を有する樹脂材の射出成形によって形成されている。
金属としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、チタン、鉄、銅、亜鉛、あるいは、これらの合金などの金属を挙げることができる。中でも、アルミニウム、マグネシウム、チタンなどの軽金属やこれらの合金で形成するのが好ましい。
弾性を有する樹脂材としては、例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリプロピレンなどの合成樹脂を挙げることができる。
【0017】
(本体部10)
本体部10は、ベルト取付部11と、このベルト取付部11から突出された基部21とを有する。
ベルト取付部11は、両側の側枠12と、この両側の側枠12を連結する2本の連結杆13,14とから構成されている。2本の連結杆13,14は、雄部材Aの差込方向に間隔を隔てて側枠12に一体的に連結されている。従って、ベルト2の端部2Aを連結杆14の回りに掛け回すことにより、ベルト2の長さを調節することができる。
【0018】
基部21は、ベルト取付部11の両側の側枠12間に掛け渡された連結脚22と、この連結脚22の両側から雄部材Aの差込方向へ向かって突出成形された一対の支持脚26とを備える。ここで、雄部材Aの差込方向とは、連結脚22に対して、側枠12が延びる方向とは反対方向(図1および図2中下方向)を指す。また、反差込方向とは、連結脚22に対して、側枠12が延びる方向(図1および図2中上方向)を指す。
【0019】
連結脚22の差込方向側の端面には、支持脚26を挟んだ表裏面側に係合部材30が差込方向に延びる軸線に対して外側方向へ回動しようとしたとき、係合部材30が当接する第1当接部23が形成されているとともに、これらの間に弾性部材50の一部を係止する係止部としての溝部24が形成されている。第1当接部23は、図3の拡大図にも示すように、支持脚26の内側面側から支持脚26の外側面側へ向かうに従って雄部材Aの反差込方向へ傾斜する傾斜壁によって形成されている。溝部24は、一対の支持脚26間において、弾性部材50の厚み寸法と略同じ溝幅に形成されている。
【0020】
各支持脚26の内側面には、後述する軸部35(係合部材30に設けられる軸部35)の軸方向に対して略直交する方向から軸部35が入り込み可能に切り欠かれた凹部27が形成されている。つまり、軸部35が入り込むための開口(凹部27)が、両支持脚26の対向面側に形成されている。凹部27は、軸部35と略同じ直径を有する円形孔の周壁のうち、支持脚26の内面側に開口27Aを有し、開口27Aの幅寸法が円形孔の直径と略等しい寸法に形成されている。
また、各支持脚26の先端部外側面には、係合部材30が内側方向へ所定角度回動したとき、係合部材30が当接する第2当接部28と、係合部材30が外側方向へ回動しようとしたときに、係合部材が当接する第3当接部29とがそれぞれ設けられている。第2当接部28は、支持脚26の先端から反差込方向へ向かうに従って外側へ傾斜する傾斜面に形成されている。ここでは、差込方向軸線に対して約15度程度の傾斜面に形成されている。第3当接部29は、第2当接部28の最外側端から差込方向に対して直角にかつ外側に向かって延びる平面に形成されている。
【0021】
(係合部材30)
係合部材30は、平面形状が槍形状で上下に対向する上壁31および下壁32と、これらの上壁31および下壁32の先端部外側間を連結する側壁33と、この側壁33の中間から上壁31および下壁32の間に配置された仕切壁34とを有する。
【0022】
上壁31および下壁32の間において、先端部とは反対側の基端部寄りの位置には、係合部材30の回動中心となる軸部35が一体的に設けられている。軸部35は、断面円形の円柱部材を、該円柱部材の中心より片寄った位置、具体的には、中心より内側面側に片寄った位置で円柱部材の軸と平行な平面で切断した形状に形成されている。また、係合部材30が本体部10に組み込まれた状態において、両側の係合部材30に設けられる軸部35の切断された平面35Aが、支持脚26の内側面と略面一で、かつ、雄部材Aの差込方向に対して直交する方向に対向配置される。
【0023】
上壁31および下壁32の反差込方向端には、係合部材30が本体部10に組み込まれて差込方向と略平行な姿勢から外側方向へ回動しようとしたときに、本体部10の第1当接部23に当接する第1当接面36が形成されている。また、第1当接面36の内側面側には、切欠37が形成され、この切欠37によって、係合部材30が所定角度内側方向へ回動可能に構成されている。
【0024】
側壁33の反差込方向端には、図4に示すように、雌部材Bに係合する係合部41が形成されているとともに、本体部10の第2当接部28および第3当接部29に当接する第2当接面43および第3当接面44がそれぞれ形成されている。
係合部41は、側壁33の外側面から内部へ向かうに従って差込方向へ傾斜する係合面41Aを有する鉤状に形成されている。なお、側壁33、上壁31および下壁32の先端部は、外側面が先端へ向かうに従って内側へ湾曲する操作部42として構成されている。
第2当接面43は、係合部材30が内側方向へ所定角度回動された際に基部21の第2当接部28に当接される。第3当接面44は、係合部材30が本体部10に組み込まれて差込方向と略平行な姿勢から外側方向へ回動しようとしたときに、本体部10の第3当接部29に当接される。
【0025】
仕切壁34の反差込方向端には、弾性部材50の先端が係止する係止部としての係止壁部45が形成されている。係止壁部45は、差込方向と平行な第1係止壁45Aと、この第1係止壁45Aの先端から直角にかつ内側へ向かって延びる第2係止壁45Bとを有する切欠によって構成されている。
第1係止壁45Aは、後述する弾性部材50の先端と当接して弾性部材50が弾性力を発揮するようにし、また、第2係止壁45Bは、弾性部材50が差込方向へ抜けるのを防止する役目を果たす。ここで、第1係止壁45Aと第2係止壁45Bとは、必ずしも一体に形成される必要はない。例えば、弾性部材50の組込状態を維持するためであれば、差込方向の移動を阻止する壁45Bを設ければよく、弾性部材50に弾性力を発揮させるためであれば、その壁45Bとは別に、弾性部材50と接触する内壁などを設けてもよい。
【0026】
(弾性部材50)
弾性部材50は、軸部35を凹部27内に保持し、かつ、軸部35を回動中心とする係合部材30の内側方向への回動を許容するとともに、係合部材30を元の位置へ復帰させる。具体的には、弾性部材50は、本体部10の溝部24に係止される連結片部51と、この連結片部51の両端から略直角に延設された弾性片部52とを有する。
【0027】
連結片部51は、厚み寸法が本体部10の溝部24の溝幅と略等しく、かつ、差込方向寸法が溝部24の深さと略同じ寸法の断面矩形状で、長さが本体部10の支持脚26間の寸法と略同じに形成されている。溝部24に連結片部51が収容されると、反差込方向と表裏方向の移動が阻止される。
弾性片部52は、本体部10の支持脚26の内側面および軸部35の平面35Aに沿って延長されたのち、先端が外側へ僅か傾斜しながら係合部材30の係止壁部45に係止される。これにより、軸部35が本体部10の凹部27内に保持されるとともに、係合部材30が本体部10に組み込まれる。
なお、連結片部51および弾性片部52のうち、弾性片部52のみが変形するのではなく、変形度合いによっては、連結片部51も変形する。
【0028】
(雌部材B)
雌部材Bは、金属のダイキャスト成形によって形成され、表壁61、裏壁62、両側の側壁63を持った扁平四角筒状の筒体64を有する。なお、ここで用いる金属は、雄部材Aの本体部10や係合部材30を形成した金属と同じであるが、同じ材料でなくてもよい。
筒体64には、一端に雄部材Aの係合部材30が差し込まれる差込口65が形成され、他端にベルト取付部66が形成され、内部に差込口65から他端に向かって収納空間67が形成されている。ベルト取付部66は、ベルト2の端部2Bを挿通させるベルト挿通孔によって形成されている。
【0029】
表壁61および裏壁62の間には、差込口65の中央位置から収納空間67の奥部に向かって、差込方向に沿って平行に延びる2本の補強片68が一体的に設けられている。これにより、表壁61および裏壁62に外力が加わった場合でも、表壁61および裏壁62の変形が防止される。
側壁63は、差込口65から収納空間67の奥部に向かうに従って内側にテーパ状に傾斜して形成されている。また、側壁63には、収納空間67の中間位置より僅か差込方向奥側位置に、雄部材Aの操作部42を雌部材Bの外部へ露出させる開口部71が、表壁61および裏壁62の内部に向かって円弧状に切り欠き形成されている。開口部71の反差込方向端には、雄部材Aの係合部41が係合される被係合部72が形成されている。
【0030】
<本実施形態の作用・効果>
雄部材Aを組み立てるには、図5に示すように、本体部10の支持脚26に対して、係合部材30をその先端が外側に向いた姿勢とし、この状態から、係合部材30を図5中反時計方向へ回転させながら、軸部35を本体部10の凹部27に嵌め込むと、図6に示す状態になる。
この後、図6の二点鎖線で示すように、弾性部材50を取り付ければ、雄部材Aを組み立てることができる。つまり、弾性部材50の両側の弾性片部52を内側へ弾性変形させ、この状態において、まず、連結片部51を本体部10の溝部24に差し込んだのち、両側の弾性片部52を弾性復帰させると、両側の弾性片部52の先端が係合部材30の係止壁部45に係止される。このとき、場合によっては、連結片部51も変形する。
この状態で弾性部材50の先端は、係合部材30の上壁31と下壁32との間に配置される。
【0031】
この状態では、図2に示すように、弾性部材50は、連結片部51が本体部10の溝部24に係止され、両側の弾性片部52の先端が係合部材30の係止壁部45に係止されているため、弾性部材50が、これら本体部10や係合部材30から外れるのが防止されている。
また、弾性部材50の両側の弾性片部52が、本体部10の支持脚26の内側面および軸部35の平面35Aに当接し、かつ、先端が係止壁部45の第1係止壁45Aに接触して係合部材30を外側へ回動付勢しているため、つまり、軸部35が凹部27に嵌り込む方向へ回動付勢しているため、軸部35が本体部10の凹部27内に保持される。また、弾性部材50の弾性片部52は、組立状態において軸部35が入り込む凹部27の開口を塞ぎ、凹部27内に軸部35を収容する。
【0032】
この状態において、係合部材30が内側方向へ所定角度回動すると、図4に示すように、係合部材30の第2当接面43が本体部10に備えられた第2当接部28に当接するので、係合部材30はそれ以上の内側方向への回動が規制される。そのため、係合部材30が過剰に内側方向へ回動されることがないため、長年の使用にも耐えうる構造にできる。この状態、もしくは、これに近い位置で、雄部材Aの係合部41は雌部材Bの被係合部72との係合が解除され、雄部材Aが雌部材Bから引き抜き可能となる。
【0033】
逆に、係合部材30が外側方向へ回動しようとすると、係合部材30の第1当接面36または第3当接面44が本体部10に備えられた第1当接部23または第3当接部29に当接するので、係合部材30はそれ以上の外側方向への回動が規制される。そのため、係合部材30が過剰に外側方向へ回動されることがないため、長年の使用にも耐えうる構造にできる。
【0034】
このようにして組み立てられた雄部材Aを雌部材Bに係合させるには、雄部材Aの係合部材30を雌部材Bの差込口65から収納空間67に差し込む。すると、係合部材30が収納空間67内に差し込まれていくと、係合部材30は雌部材Bの側壁63によって内側へ弾性変形されながら差し込まれる。やがて、係合部材30の係合部41が雌部材Bの側壁63を越えた位置まで差し込まれると、係合部材30は外側へ弾性復帰する。すると、係合部材30の係合部41が雌部材Bの被係合部72に係合される。つまり、雄部材Aが雌部材Bに係合される。
【0035】
この状態において、雄部材Aと雌部材Bとに引張方向の力が加わると、この力は、係合部材30の軸部35と本体部10の凹部27との接触面で受けられる。軸部35は、断面円形の円柱部材を、該円柱部材の中心より片寄った位置で円柱部材の軸と平行な平面で切断した形状されているから、つまり、軸部35の中心を含んだ形状に形成され、軸部35としての強度が確保されているから、これらが破損するのを回避できる。
ちなみに、軸部35の切断された平面35Aが雄部材Aの差込方向に対して直交する方向に対向配置されているから、雄部材Aの差込方向に対して直交する幅方向の寸法を小さくできる効果が期待できる。従って、軸部35の強度を維持しつつ、雄部材Aの幅方向寸法を小さくできる。
【0036】
なお、雄部材Aと雌部材Bとの係合を解除するには、雌部材Bの開口部71から露出されている雄部材Aの操作部42を内側へ弾性変形させる。すると、係合部材30の係合部41が雌部材Bの被係合部72から外れるので、この状態で雄部材Aを雌部材Bから引き抜くと、両者の係合を解除することができる。
【0037】
このような構造のバックルでは、雄部材Aが、本体部10と、一対の係合部材30と、弾性部材50とから構成されているから、従来のバックルに比べ、部品点数を低減できる。そのため、組立工数も低減できる。
もとより、雌部材Bと、雄部材Aのうち本体部10および一対の係合部材30は、金属で形成されているから、金属製のバックルとして形成できる。従って、重量感のある印象を与えることができるバックルを提供できる。
【0038】
とくに、雄部材Aの組立にあたっては、本体部10の凹部27に係合部材30の軸部35を嵌め込んだのち、本体部10および係合部材30に弾性部材50を係止させるだけでよいので、組立作業を簡易に行うことができる。しかも、弾性部材50は弾性変形可能であるため、弾性部材50を弾性変形させながら組立作業を行うことにより、組立作業を容易に行うことができる。
【0039】
また、弾性部材50は、本体部10の溝部24に係止される連結片部51と、この連結片部51の両端から延設された一対の弾性片部52とを有する形状に形成されているから、1本の弾性部材50によって、軸部35を凹部27内に保持する機能と、一対の係合部材30が内側方向へ回動できる機能との2つの機能を奏することができる。従って、1本の弾性部材50でよいから、従来のバックルに比べても、部品点数を削減できる。
【0040】
<変形例>
なお、本発明は、上記実施形態で説明した構造のバックルに限定されるものでなく、次のような変形例も含む。
上記実施形態では、係合部材30に軸部35を一体に設けるとともに、本体部10の基部21に軸部35が入り込む凹部27を設けた構成としたが、これとは逆の構成であってもよい。例えば、図7に示すように、本体部10の基部21に軸部35を設けるとともに、係合部材30に軸部35が入り込む凹部27を設けた構成としてもよい。
【0041】
詳細には、連結脚22に溝部24を備えることは上記実施形態と同様であるが、まず、連結脚22から差込方向へ向かって突出成形される一対の支持脚26が異なる。支持脚26は、連結脚22に備える溝部24と同等の厚み寸法で連続する溝を形成するように、上壁26Aおよび下壁26Bを備える。これら上壁26Aおよび下壁26Bの間には、弾性部材50の弾性片部52の一部と、後述する係合部材30の一部とが収容される。
上壁26Aおよび下壁26Bを連結して軸部35が設けられている。係合部材30の基端側外側面には、軸部35が入り込むことが可能な凹部27が設けられてる。
【0042】
また、係合部材30には、雌部材Bに係合する係合部41が形成されているとともに、弾性部材50の先端が係止する係止部としての係止壁部45が形成されている。この係止壁部45は、係合部材30の内側面で、段差状に形成されており、弾性部材50の先端がその段差に係止することで、弾性部材50が差込方向へ抜けるのが防止されている。
また、弾性部材50は、係合部材30の内側面に当接されているため、係合部材30が内側へ押圧されると、係合部材30の内側への回動を許容し、かつ、押圧をやめると、係合部材30を基の位置に復帰させる。この変形例では、係合部材30を外側へ回動しようとすると、係合部材30が上壁26Aおよび下壁26Bを連結する側壁部26Cに接触するため、係合部材30がそれ以上回動されるのが防止される。
【0043】
この場合、軸部35の円弧面を係合部材30の回動案内として機能させる必要があるため、軸部35の円弧面が互いに内側を向くように、かつ、軸部35の平面35Aが互いに外側を向くように配置する必要がある。そして、係合部材30に備える凹部27は、外側面方向が開口した切り欠きとして形成されており、組立時に弾性部材50によって、係合部材30が内側方向へ移動するのが阻止され、軸部35が凹部27に収容された状態が維持される。
【0044】
上記実施形態では、軸部35を、断面円形の円柱部材を、該円柱部材の中心より片寄った位置で円柱部材の軸と平行な平面で切断した形状としたが、これに限られない。例えば、略半円柱状であってもよく、あるいは、円柱状(切断した平面がない丸柱状)であってもよい。
また、凹部27についても、必ずしも軸部35の輪郭形状に全て一致した形状にする必要はなく、少なくとも係合部材30が回動できる形状で、かつ、回動するときに力が作用する方向(反差込方向)と交差する方向において軸部35と接する面を備える形状であればよい。
【0045】
上記実施形態では、雄部材Aを構成する部材のうち、本体部10および係合部材30を金属製としたが、金属製に限らず、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、チタン、鉄、銅、亜鉛、あるいは、これらの合金などの金属粉などを混入させた樹脂材で形成してもよい。樹脂材に金属粉が混入されていれば、表面状態を金属と同等な質感、重量感に仕上げることができるから、金属製としたものと同等の製品が得られる。
【0046】
上記実施形態では、雌部材Bも金属製としたが、雌部材Bを構成する材質については、問わない。例えば、雄部材Aの本体部10や係合部材30を形成した材料などと同じ金属粉や、異なる種類の金属粉を混入した樹脂材によって形成してもよい。
【0047】
上記実施形態では、弾性部材50を、弾性を有する樹脂材で構成したが、弾性を有する材料であれば、樹脂材に限られない。例えば、金属製の帯板を屈曲して形成してもよい。
【0048】
上記実施形態では、雄部材Aの係合部41が、雌部材Bの開口部71の端部に設けた被係合部72に係合する構成であったが、これに限らず、他の構成であってもよい。例えば、雄部材Aの操作部42の先端の表裏に係合部を設け、この係合部が雌部材Bの収納空間67の奥部で表壁61と裏壁62とに設けた被係合部に係合する構造としてもよい。
【0049】
上記実施形態では、雄部材Aおよび雌部材Bにそれぞれベルト取付部11,66を形成したが、雌部材Bについては、ベルト取付部がなくてもよい。つまり、雌部材Bを直接他の部材に固定するようにしてもよい。
上記実施形態において、ベルト2としては、帯状のベルトに限らず、幅がない細い紐であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、バックの肩ベルトを連結、離脱するバックルとして好適であるが、その他どのような用途にも使用可能で、とくに、高級感が要望される用途に適する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態のバックルを示す分解斜視図。
【図2】同上実施形態のバックルの雄部材を示す一部切り欠き正面図。
【図3】図2の部分拡大図。
【図4】前記実施形態の係合部材、本体部、弾性部材の関係を示す断面図。
【図5】前記実施形態において、係合部材を本体部に組み込む前の状態を示す図。
【図6】前記実施形態において、係合部材を本体部に組み込み後の状態を示す図。
【図7】本発明の変形例の分解状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0052】
1…バックル、10…本体部、11…ベルト取付部、21…基部、23…第1当接部、24…溝部(係止部)、27…凹部、27A…開口、28…第2当接部、29…第3当接部、30…係合部材、35…軸部、35A…平面、41…係合部、45…係止壁部(係止部)、50…弾性部材、51…連結片部、52…弾性片部、A…雄部材、B…雌部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の雌部材Bと、この雌部材Bに差込係合する雄部材Aとを備え、
前記雄部材Aは、本体部10と、一対の係合部材30とを有し、
前記本体部10は、金属または金属粉を混入させた樹脂材で形成され、かつ、ベルト取付部11およびこのベルト取付部11から突出された基部21を有し、
前記係合部材30は、金属または金属粉を混入させた樹脂材で形成され、かつ、前記基部21に対して互いに内側方向へ回動可能に支持されるとともに、前記雌部材Bに係合する係合部41を有するバックルにおいて、
前記係合部材30および前記基部21の一方は、前記係合部材30の回動中心となる軸部35を一体的に備え、前記係合部材30および前記基部21の他方は、前記軸部35が入り込む凹部27を備え、
前記軸部35を前記凹部27内に保持し、かつ、前記軸部35を回動中心とする前記係合部材30の内側方向への回動を許容するとともに、前記係合部材30を元の位置へ復帰させる弾性部材50を備え、
前記本体部10および前記係合部材30は、前記弾性部材50が係止する係止部を備えている、ことを特徴とするバックル。
【請求項2】
前記本体部10の前記係止部は、前記弾性部材50の一部を係止する溝部24とされ、
前記弾性部材50は、前記溝部24に係止される連結片部51と、この連結片部51の両端から略直角に延設され前記係合部材30の内側面に当接し前記軸部35を前記凹部27内に保持する一対の弾性片部52とを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のバックル。
【請求項3】
前記係合部材30の前記係止部は、前記弾性部材50の先端が係止する係止壁部45とされている、ことを特徴とする請求項2に記載のバックル。
【請求項4】
前記基部21は、差込方向に突出する一対の支持脚26を備え、前記支持脚26の対向面に開口27Aを有する前記凹部27が形成され、
前記係合部材30には前記軸部35が形成され、
前記弾性部材50は、前記開口27Aを塞ぐ位置に配置され、前記軸部35を前記凹部27に保持する、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のバックル。
【請求項5】
前記基部21は、差込方向に突出する一対の支持脚26を備え、前記支持脚26は上壁26Aと下壁26Bとこれらを連結する前記軸部35とを備え、
前記係合部材30の一部は前記上壁26Aおよび下壁26Bの間に収容可能とされているとともに、前記係合部材30の外側面に開口27Aを有する前記凹部27が形成され、
前記弾性部材50は、前記開口27Aと反対の前記係合部材30の内側面に配置され、前記軸部35を前記凹部27に保持する、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のバックル。
【請求項6】
前記基部21は、前記係合部材30が内側方向へ所定角度回動したとき、前記係合部材30が当接する当接部28を備える、ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のバックル。
【請求項7】
前記基部21は、前記係合部材30が前記雄部材Aの差込方向軸線に対して外側方向へ回動しようとしたとき、前記係合部材30が当接する当接部23,29を備える、ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のバックル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−34383(P2009−34383A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202044(P2007−202044)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】