説明

バックル

【課題】開口部周縁と操作部との間に異物が挟み込まれる不具合を回避しつつ、雄部材と雌部材との係合が簡単に解除されない構造のバックルを提供する。
【課題手段】雄部材Aと雌部材Bとカバー部材Cを備える。雄部材は、基部10と、基部から突出形成された脚部20と、この脚部に設けられ雌部材に係合可能な係合部25とを有する。雌部材は、差込口から差し込まれた脚部の係合部が係合する被係合部48を有する。雄部材および雌部材の少なくとも一方には、係合部および被係合部の少なくとも一方が形成された部分を弾性変形させて移動させる操作部50が形成されている。カバー部材Cは、雄部材が雌部材に係合された状態において、外表面に露出する操作部を覆う。カバー部材の内面と操作部との間には、操作部の操作方向に隙間65が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄部材と雌部材とを備えたバックルに関する。詳しくは、1本の紐状部材の両端、あるいは、2本の紐状部材同士を連結、分離するために用いられるバックルに関する。
【背景技術】
【0002】
雌部材に、雄部材の操作部を露出させる開口部を形成した構造のバックルでは、開口部周縁と操作部との間に、ベルトやテープ、その他の生地などの端部、あるいは、他の異物などが挟み込まれる場合があるため、これを防止したバックル(特許文献1参照)が提案されている。
【0003】
これは、雄体と、この雄体が差込係合される雌体とを備える。雄体は、基部と、この基部から突出形成された差込部と、この差込部に形成された係止部と、この係止部が形成された差込部を弾性変形させる操作部とを有する。雌体は、雄体の係止部と係合し雄体を雌体内に保持する被係止部と、雄体の操作部を外表面に露出させる開口部とを有する。
雄体が雌体に係合されると、雄体の操作部が雌体の開口部から外表面に露出した状態となるため、外表面に露出した操作部を覆う弾性を有する被覆部が雌体の外周に設けられている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−299030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたバックルの場合、雄体が雌体に係合された状態において、外表面に露出した操作部の全体が、被覆部で弾性的に覆われる構造のため、操作部には被覆部の弾性力が常時加わっている。つまり、係止部が被係止部から外れる方向へ操作部を押圧する力が加わっているため、被覆部に僅かな力が掛かっただけでも、係止部が被係止部から外れやすい。
【0006】
本発明の目的は、このような課題を解決し、開口部周縁と操作部との間に異物が挟み込まれる不具合を回避しつつ、雄部材と雌部材との係合が簡単に解除されない構造のバックルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のバックルは、雄部材と、この雄部材が差込係合される雌部材とを備え、前記雄部材は、基部と、この基部から突出形成された脚部と、この脚部に設けられ前記雌部材に係合可能な係合部とを有し、前記雌部材は、前記雄部材の前記脚部が差し込まれる差込口と、この差込口から差し込まれた前記脚部の前記係合部が係合する被係合部とを有し、前記雄部材および前記雌部材の少なくとも一方には、前記係合部および前記被係合部の少なくとも一方が形成された部分を弾性変形させて移動させる操作部が形成され、前記雄部材が前記雌部材に係合された状態において、外表面に露出する前記操作部を覆う弾性を有するカバー部材が設けられているバックルにおいて、前記カバー部材の内面と前記操作部との間には、前記操作部の操作方向に隙間が形成されていることを特徴とする。
【0008】
この構造によれば、雄部材が雌部材に係合された状態では、外表面に露出する操作部がカバー部材で覆われ、雌部材の外表面には開口部などが現れていないから、開口部周縁と操作部との間に、異物が挟み込まれる不具合を回避できる。
この状態においては、カバー部材の内面と操作部との間に操作部の操作方向に隙間が形成されているから、操作部を押圧する力、つまり、雄部材の係合部と雌部材の被係合部とが外れる方向へ操作部を押圧する力が加わっていないから、雄部材と雌部材との係合が簡単に解除されない構造にできる。
雄部材と雌部材との係合を解除するには、カバー部材を介して操作部を押圧操作する。このとき、カバー部材は弾性を有する材料で形成されているから、押圧操作を容易に行うことができる。
【0009】
本発明のバックルにおいて、前記操作部が前記雌部材に形成され、この雌部材に形成された操作部によって前記雄部材の前記脚部が弾性変形されて移動されることが好ましい。
操作部が雄部材に形成されるバックルの場合、カバー部材を押圧操作すると、カバー部材の内面が操作部に接触し、密着した状態となりやすいため、雄部材を雌部材から引き抜きづらい。とくに、カバー部材がゴムなどの素材によって形成されていると、摩擦抵抗が大きいため、カバー部材の内面が操作部に密着した状態となるため、雄部材を雌部材から一層引き抜きづらい。
本発明によれば、操作部が雌部材に形成され、この雌部材に形成された操作部によって雄部材の脚部が弾性変形されて移動される構成のため、カバー部材を押圧操作してカバー部材の内面が操作部に接触、密着したとしても、雄部材にはカバー部材が密着していないから、雄部材を雌部材から容易に引き抜くことができる。また、操作部が雌部材に形成された構造の場合、操作部が外側へ拡がる虞があるが、本発明のように、操作部がカバー部材で覆われるから、操作部が外側へ拡がる虞も回避できる。
【0010】
本発明のバックルにおいて、前記カバー部材は、筒状に形成され、筒方向両端部分に前記雌部材の外周面に密着される密着部が形成され、中間部分に前記操作部を押圧する押圧部が形成され、前記押圧部の内面と前記操作部との間に前記隙間が形成されていることが好ましい。
この構成によれば、カバー部材は筒状に形成され、この筒方向の両端部分に雌部材の外周面に密着される密着部が形成されているから、カバー部材が雌部材に対してずれにくい。つまり、カバー部材が雌部材に対して、雄部材の差込・反差込方向および外周方向へずれにくいため、中間部分の押圧部が操作部に常に対向した状態を維持させることができる。従って、使用時などにおいて、カバー部材が雌部材に対してずれて、押圧部が操作部からずれてしまうことが防止できるので、使用にあたっても、雄部材と雌部材との係合が簡単に解除されない構造にできる。
【0011】
本発明のバックルにおいて、前記押圧部は、前記操作部と隙間を隔てて対向する部分の外表面が、前記一方の密着部から他方の密着部へ向かうに従って外側へ凸状に膨らんだ形状に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、押圧部の操作部と対向する部分の外表面が、外側へ凸状に膨らんでいるから、カバー部材の外から、操作部の部分を認識させることができるとともに、押圧部を押圧操作しやすい。つまり、押圧部が平坦、あるいは、凹んでいると、そこから更に内側へ凹むように押圧操作しなければならないため、操作しづらいが、本発明のように、外側へ凸状に膨らんでいるから、操作しやすい。
【0012】
本発明のバックルにおいて、前記雌部材の外周面には、前記カバー部材が収納される凹部が形成されていることが好ましい。
この構成によれば、雌部材の外周面には、カバー部材が収納される凹部が形成されているから、カバー部材が凹部内に収納されると、カバー部材は凹部内に保持されて雌部材に対してずれにくい。従って、使用時などにおいて、雄部材と雌部材との係合が更に簡単に解除されない構造にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のバックル1を示す分解斜視図、図2は、カバー部材Cを装着した雌部材Bと雄部材Aとを示す斜視図、図3は、カバー部材Cを装着した雌部材Bを示す断面図、図4は、雄部材Aを雌部材Bに係合した状態を示す断面図である。
【0014】
(全体構成)
これらの図に示すように、本実施形態のバックル1は、紐状部材の端部を連結、分離するためのもので、合成樹脂によって一体成形された雄部材Aと、同様に合成樹脂によって一体成形され、雄部材Aが内部に差込係合される雌部材Bと、弾性を有する材料によって一体成形され、雌部材Bの外周面に装着されるカバー部材Cとを備えている。
なお、雄部材Aおよび雌部材Bの材料については、合成樹脂に限らず、金属などの他の材料でもよい。また、カバー部材Cの材料としては、シリコンゴムやエラストマーなどが好適に利用できるが、弾性を有する材料であれば、これに限られない。
【0015】
(雄部材A)
雄部材Aは、基部10と、この基部10の幅方向(雄部材Aの差込方向に直交する方向)両側から長さ方向(雄部材Aの差込方向)へ互いに平行に突出形成された一対のガイド片15と、このガイド片15よりも内側位置から長さ方向(雄部材Aの差込方向)へ互いに平行に突出形成され、かつ、互いに接近または離間する方向(内側および外側方向)へ弾性変形可能な一対の脚部20とを備える。
【0016】
基部10は、内部中央に紐状部材の端部が挿入係止される紐取付部としての紐取付孔11を有する横長矩形状の枠フレーム12によって構成されている。
紐取付孔11の中間であって枠フレーム12の幅方向に連結杆13が架設され、この連結杆13によって紐取付孔11が、脚部20が設けられた差込方向前端側とそれとは反対側の差込方向後端側の2つの紐取付孔11A,11Bに分割されている。これにより、紐状部材を紐取付孔11A,11Bに挿通させて連結杆13の周囲に旋回させることにより、紐状部材の長さ調節が可能な構造となっている。
ガイド片15は、互いに平行に突出され、脚部20の長さに対して約1/2程度の長さに形成されている。
【0017】
脚部20は、基部10の中間から雄部材Aの差込方向に向かって直線状に延長され互いに接近または離間する方向へ弾性変形可能な弾性片部21と、この弾性片部21の先端に形成されたガイド部23および係合部25とを有する。
弾性片部21の中央部分には、表裏面に貫通する溝22がガイド部23まで連続して形成されている。これにより、弾性片部21は、溝22を挟んだ両側の平行壁21A,21Bによって構成され、内外方向へ容易に弾性変形が可能になっている。
ガイド部23は、先端が円弧状に形成されているとともに、外側面が先端から反差込方向へ向かうに従って外側へ傾斜する傾斜面24に形成されている。
係合部25は、ガイド部23の外側面から内側へ向かって略直角に成形された係合面によって構成されている。
【0018】
(雌部材B)
雌部材Bは、表裏面を構成する表壁40Aおよび裏壁40Bと、これらを連結する一対の側壁40Cを有する扁平筒形状の雌部材本体40を備える。
雌部材本体40の一端には、雄部材Aの一対の脚部20が差し込まれる差込口41が形成されているとともに、雌部材本体40の他端には、紐状部材の端部が挿入係止される紐取付部としての紐取付孔43および連結杆44が形成されている。
【0019】
雌部材本体40の内部中央には、表壁40Aおよび裏壁40Bを連結する仕切壁45が差込口41から雌部材本体40の奥部に向かって一体成形されているとともに、この仕切壁45を挟んだ両側に当接壁46が設けられている。当接壁46には、差込口側に雄部材Aのガイド部23に当接し脚部20を互いに接近する方向へ弾性変形させる当接案内面47が形成されているとともに、反差込口側に雄部材Aの係合部25が係合する被係合部48が形成されている。
【0020】
側壁40Cの差込方向の両端部を除く中間部分に開口部49が形成され、この開口部49から雄部材Aの係合部25が形成された部分、つまり、脚部20を内側へ弾性変形させて移動させる操作部50が露出されている。
操作部50は、雌部材本体40の差込口41側の側壁40Cから一体的に形成され、開口部49から外表面に露出する操作片51と、この操作片51の先端から内側へ向かって略直角に一体成形された押圧片52とを有する。操作片51は、側壁40Cと連結する部分が弾性変形できるように最も肉薄に形成され、押圧片52へ向かうに従って次第に肉厚になるように形成されている。押圧片52の先端は、雄部材Aのガイド部23の外側面(傾斜面24)に対向され、操作片51が内側へ押圧された際、雄部材Aのガイド部23の外側面(傾斜面24)に当接して脚部20を内側へ弾性変形させる。これにより、雄部材Aの係合部25が雌部材Bの被係合部48から解除される。
【0021】
雌部材本体40の外周面には、カバー部材Cが収納される凹部55が形成されている。凹部55は、雌部材本体40の開口部49および操作部50を覆える領域、つまり、雌部材本体40を形成する表壁40A、裏壁40Bおよび側壁40Cが、差込口41近傍およびベルト取付部(紐取付孔43や連結杆44の部分)を除く領域において、他の部分よりも内部に窪んだ段差として形成されている。換言すると、雌部材本体40の差込口41の口縁に沿って、表壁40A、裏壁40Bおよび側壁40Cの外表面が外方へ向けて突出する突縁が形成され、また、雌部材本体40の基部(つまり、ベルト取付部)も同様に外方へ向けて突出され、これらの間に凹部55が形成されている。さらに、側壁40C部分において、開口部49の部分は凹部55よりも更に内部に窪んで形成されている。
【0022】
(カバー部材C)
カバー部材Cは、雄部材Aが雌部材Bに係合された状態において、外表面に露出する操作部50を覆うもので、雌部材Bの凹部55に嵌合する角筒形状、つまり、表皮60A
、裏皮60Bおよびこれらを連結する側皮60Cを有する角筒形状に形成されている。角筒形状の筒方向両端部分に雌部材Bの外周面に密着される密着部61,62が形成され、中間部分に操作部50を押圧する押圧部63が形成されている。
密着部61,62の開口端側の厚みは、雌部材Bの凹部55の深さに略等しい厚みに形成されている。これにより、カバー部材Cが凹部55に装着されると、雌部材Bの外表面とカバー部材Cの外表面とが段差なく連続する面に形成される。密着部61,62のうち、差込口側の密着部61については、開口端から押圧部63に向かって略一様の厚みで形成されたのち、側皮60Cの内面側が次第に厚みが厚くなった隆起部64を有する断面形状に形成されている。この隆起部64が操作部50の根元部分の凹部に嵌り込むことによって、カバー部材Cが差込方向に対してずれにくい構造になっている。
押圧部63は、側皮60Cの外表面が密着部61から密着部62へ向かうに従って外側へ凸状に膨らんだ形状で、厚みが略一様に形成されている。これにより、押圧部63の内面と操作部50との間に操作部50の操作方向に隙間65が形成されている。また、押圧部63の側皮60Cの外側面には、滑り止め用の3本の突条66が所定間隔で形成されている。
【0023】
(作用・効果)
カバー部材Cを拡げながら、雌部材Bの外側に被せながら挿入し、雌部材Bの凹部55に装着する。すると、雌部材Bの外表面に露出する操作部50がカバー部材Cで覆われ、雌部材Bの外表面には開口などが現れていないから、開口部49周縁と操作部50との間に、異物が挟み込まれる不具合を回避できる。
とくに、雌部材Bに操作部50を設けたタイプの場合、操作部50が外側へ拡がる虞があるが、本実施形態のように、操作部50がカバー部材Cで覆われるから、操作部50が外側へ拡がる虞がなく、従って、これを防ぐ機構も省略できる。よって、構造が簡素になるから、安価に製造できる。
【0024】
雄部材Aの一対の脚部20を雌部材Bの差込口41から差し込むと、各脚部20の先端部に設けられたガイド部23が当接壁46の当接案内面47に当接し、一対の脚部20の先端部が互いに接近する方向へ弾性変形されていく。やがて、係合部25が当接壁46を越えて被係合部48に達すると、図4に示すように、一対の脚部20の弾性復帰力によって、各係合部25は、互いに離間する方向へ変位され、雌部材Bの被係合部48に係合される。
【0025】
この状態においては、カバー部材Cの内面と操作部50との間に操作部50の操作方向に隙間65が形成されているから、操作部50を押圧する力、つまり、雄部材Aの係合部25が雌部材Bの被係合部48から外れる方向へ操作部50を押圧する力が加わっていないから、雄部材Aと雌部材Bとの係合が簡単に解除されない構造にできる。
【0026】
雄部材Aと雌部材Bとの係合を解除するには、カバー部材Cの押圧部63を押圧して操作部50を内側へ押圧操作する。このとき、カバー部材Cは弾性を有する材料で形成されているから、押圧操作を容易に行うことができる。しかも、押圧部63の外表面には滑り止め用の突条66が形成されているから、確実に押圧操作できる。
カバー部材Cの押圧操作によって、図5に示すように、カバー部材Cの押圧部63が弾性変形し、押圧部63の内面が操作部50に接すると、操作部50も内側へ押圧される。操作部50が内側へ押圧されると、押圧片52の先端が雄部材Aのガイド部23の外側面に当接して脚部20を内側へ弾性変形させる。これにより、雄部材Aの係合部25が雌部材Bの被係合部48から解除される。従って、この状態において、雄部材Aを雌部材Bから引き抜くと、雄部材Aを雌部材Bから外すことができる。
【0027】
ところで、操作部が雄部材に形成されるバックルの場合、カバー部材を押圧操作すると、カバー部材の内面が操作部に接触し、密着した状態となりやすいため、雄部材を雌部材から引き抜きづらい。
本実施形態のバックル1では、操作部50が雌部材Bに形成され、この雌部材Bに形成された操作部50によって雄部材Aの脚部20が内側へ弾性変形され、係合部25が被係合部48から解除される構成のため、カバー部材Cを押圧操作してカバー部材Cの内面が操作部50に接触、密着したとしても、雄部材Aにはカバー部材Cが密着していないから、雄部材Aを雌部材Bから容易に引き抜くことができる。
【0028】
このようなカバー部材Cを備えたバックル1によれば、カバー部材Cが筒状に形成され、この筒方向の両端部分に雌部材Bの外周面に密着される密着部61,62が形成されているから、カバー部材Cが雌部材Bに対してずれにくい。つまり、カバー部材Cが雌部材Bに対して、雄部材Aの差込・反差込方向および外周方向に対してもずれにくいため、中間部分の押圧部63が操作部50に常に対向した状態を維持させることができる。従って、使用時などにおいて、カバー部材Cが雌部材Bに対してずれて、押圧部63が操作部50からずれてしまうことが防止できるので、使用にあたっても、雄部材Aと雌部材Bとの係合が簡単に解除されない構造にできる。
【0029】
また、カバー部材Cの押圧部63において、操作部50と対向する部分の外表面が、外側へ凸状に膨らんでいるから、カバー部材Cの外から、操作部50の部分を認識させることができる。しかも、押圧部63が外側へ凸状に膨らんでいるから、押圧部63を押圧操作しやすい。例えば、押圧部が平坦、あるいは、凹んでいると、そこから更に内側へ凹むように押圧操作しなければならないため、操作しづらいが、本実施形態のように、外側へ凸状に膨らんでいるから、操作しやすい。
【0030】
また、カバー部材Cは、雌部材Bの差込口近傍およびベルト取付部を除く領域を覆っているから、カバー部材Cにデザイン的な工夫を付加することによって、バックル1の意匠性を高めることができる。
しかも、カバー部材Cはシリコンゴムなどによって形成されているから、滑りにくさと操作性の向上だけでなく、着色性にも優れた効果が期待できることから、着色によるデザインの自由度も高めることができる。
【0031】
また、雌部材Bの外周面には、カバー部材Cが収納される凹部55が形成されているから、カバー部材Cが凹部55内に収納されると、カバー部材Cは凹部55内に保持されて雌部材Bに対してずれにくい。従って、使用時などにおいて、雄部材Aと雌部材Bとの係合が更に簡単に解除されない構造にできる。
【0032】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態のバックル2を示す分解斜視図、図7は、同上実施形態において雄部材が雌部材に係合した状態を示す断面図である。なお、これらの説明にあたって、第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第1実施形態のバックル1では、係合部25が形成された脚部20を弾性変形させて移動させる操作部50が、雌部材Bの両側の側壁40Cに設けられた構造、いわゆる、サイドリリースバックルの構造であったが、第2実施形態のバックル2は、操作部が雌部材Bの表壁40Aに設けられた構造、いわゆる、フロントリリースバックルの構造である。
【0033】
雄部材Aには、一対の脚部20が設けられているとともに、これらの中間に解除操作片71が脚部20と同方向へ向かって突設されている。各脚部20の裏面側先端位置に係合部25が形成されている。
雌部材Bには、裏面側に雄部材Aの係合部25が係合する被係合部48を有する被係合片72が内側へ傾斜状に切り起こし形成されているとともに、雄部材Aの解除操作片71を押圧して被係合片72を外側へ弾性変形させる操作部50が内部へ向かって弾性変形可能に切り起こし形成されている。
カバー部材Cは、雌部材Bの外周に装着される筒状で、筒方向両端部分に雌部材Bの外周面に密着される密着部61,62が形成され、中間部分に操作部50を押圧する四角形状の押圧部63が形成されている。押圧部63の内面と操作部50との間に隙間65が形成されている。
【0034】
第2実施形態においても、カバー部材Cが雌部材Bの操作部50を覆っているから、異物が挟み込まれる不具合を回避できるとともに、カバー部材Cと操作部50との間に隙間65が設けられているから、雄部材Aと雌部材Bとの係合が簡単に解除されない構造にできる。
【0035】
<第3実施形態>
図8は、本発明の第3実施形態のバックル3を示す断面図である。なお、この説明にあたって、第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第1実施形態および第2実施形態のバックル1,2は、係合部25が形成された脚部20を弾性変形させて移動させる操作部50が、雌部材Bに設けられた構造であったが、第3実施形態のバックル3は、操作部50が雄部材Aに設けられた構造である。
【0036】
雄部材Aには、一対の脚部20が設けられている。各脚部20の外側面中間位置に係合部25が形成されているとともに、それより先端側に操作部50が設けられている。つまり、係合部25が形成された脚部20を弾性変形させて移動させる操作部50が、雄部材Aに設けられている。
雌部材Bには、側壁40Cの中間部分に操作部50が露出する開口部49が形成されているとともに、開口部49の差込口側端に被係合部48が形成されている。
カバー部材Cは、雌部材Bの外周に装着される筒状で、筒方向両端部分に雌部材Bの外周面に密着される密着部61,62が形成され、中間部分に操作部50を押圧する押圧部63が形成されている。押圧部63の内面と操作部50との間に隙間65が形成されている。
【0037】
第3実施形態においても、カバー部材Cが雌部材Bの開口部49やそこから露出する操作部50を覆っているから、異物が挟み込まれる不具合を回避できる。また、カバー部材Cと操作部50との間に隙間65が設けられているから、雄部材Aと雌部材Bとの係合が簡単に解除されない構造にできる。
【0038】
<変形例の説明>
なお、本発明は、上記実施形態で説明した構造のバックルに限定されるものでなく、次のような変形例も含む。
上記第1、第2実施形態では、雌部材Bに操作部50が、第3実施形態では雄部材Aに操作部50が設けられていたが、操作部50は、雄部材Aおよび雌部材Bの少なくとも一方に設けられていればよい。
また、これらの操作部50によって弾性変形される部分は、係合部25が形成された部分(つまり、雄部材Aの部分)および被係合部48が形成された部分(つまり雌部材Bの部分)の少なくとも一方であればよい。
【0039】
また、雄部材Aを雌部材Bに差し込んだ際、脚部20を弾性変形させて、係合部25を雌部材Bの被係合部48に係合させる構成としては、上記各実施形態で挙げた構造に限らず、他の構成であってもよい。
例えば、雌部材Bの内部にガイド溝を次第に狭くなるように形成し、このガイド溝によって雄部材Aの脚部20を案内しながら、次第に内側へ弾性変形させ、所定位置において外側へ弾性復帰するように構成してもよい。
【0040】
上記実施形態では、雄部材Aおよび雌部材Bにそれぞれ紐取付部としての紐取付孔11,41を形成したが、雌部材Bについては、紐取付孔43がなくてもよい。つまり、雌部材Bの雌部材本体40を直接他の部材に固定するようにしてもよい。
また、雌部材Bの紐取付孔43の幅方向に連結杆を架設し、紐状部材の長さ調整を可能としてもよい。
また、紐状部材としては、帯状のベルトに限らず、幅がない細い紐であってもよい。
【0041】
以上、本発明に関して、好適な実施形態および各種の変形例を挙げたが、これらを適宜組み合わせて構成してもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、例えば、バッグやリュックなどの連結、離脱用のバックルとして好適であるが、その他どのような用途にも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態のバックルを示す分解斜視図。
【図2】前記実施形態において、カバー部材を装着した雌部材と雄部材の斜視図。
【図3】前記実施形態において、カバー部材を装着した雌部材の断面図。
【図4】前記実施形態において、雄部材が雌部材に係合した状態の断面図。
【図5】図4において、カバー部材を押圧した状態を示す断面図。
【図6】本発明の第2実施形態のバックルを示す分解斜視図。
【図7】前記実施形態において、雄部材が雌部材に係合した状態の断面図。
【図8】本発明の第3実施形態のバックルを示す断面図。
【符号の説明】
【0044】
1,2,3…バックル、10…基部、20…脚部、25…係合部、41…差込口、48…被係合部、50…操作部、55…凹部、61,62…密着部、63…押圧部、65…隙間、A…雄部材、B…雌部材、C…カバー部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄部材Aと、この雄部材Aが差込係合される雌部材Bとを備え、
前記雄部材Aは、基部10と、この基部10から突出形成された脚部20と、この脚部20に設けられ前記雌部材Bに係合可能な係合部25とを有し、
前記雌部材Bは、前記雄部材Aの前記脚部20が差し込まれる差込口41と、この差込口41から差し込まれた前記脚部20の前記係合部25が係合する被係合部48とを有し、
前記雄部材Aおよび前記雌部材Bの少なくとも一方には、前記係合部25および前記被係合部48の少なくとも一方が形成された部分を弾性変形させて移動させる操作部50が形成され、
前記雄部材Aが前記雌部材Bに係合された状態において、外表面に露出する前記操作部50を覆う弾性を有するカバー部材Cが設けられているバックルにおいて、
前記カバー部材Cの内面と前記操作部50との間には、前記操作部50の操作方向に隙間65が形成されていることを特徴とするバックル。
【請求項2】
前記操作部50が前記雌部材Bに形成され、この雌部材Bに形成された操作部50によって前記雄部材Aの前記脚部20が弾性変形されて移動されることを特徴とする請求項1に記載のバックル。
【請求項3】
前記カバー部材Cは、筒状に形成され、筒方向両端部分に前記雌部材Bの外周面に密着される密着部61,62が形成され、中間部分に前記操作部50を押圧する押圧部63が形成され、前記押圧部63の内面と前記操作部50との間に前記隙間65が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバックル。
【請求項4】
前記押圧部63は、前記操作部50と隙間65を隔てて対向する部分の外表面が、前記一方の密着部から他方の密着部へ向かうに従って外側へ凸状に膨らんだ形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のバックル。
【請求項5】
前記雌部材Bの外周面には、前記カバー部材Cが収納される凹部55が形成されていることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載のバックル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−39286(P2009−39286A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206963(P2007−206963)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】