バックル
【課題】雄部材を雌部材に対して、途中でつかえることなく確実に差込操作できるバックルを提供する。
【解決手段】雄部材Aは、紐状部材を取り付け可能な基部10と、この基部から突出形成された一対の脚部20と、この各脚部の先端表裏面に突出して設けられた係合部25とを有する。雌部材Bは、雄部材が差し込まれる差込口42およびこの差込口から差し込まれた雄部材の脚部を収容する収容空間43を有する筒状の雌部材本体40と、この雌部材本体の収容空間内に形成され雄部材の係合部が係合する被係合部46と、差込口から被係合部に渡って形成され係合部を被係合部に案内するガイド溝47とを有する。雌部材Bの差込口には、雄部材の係合部と当接し、この係合部をガイド溝に誘導する誘導部61が形成されている。
【解決手段】雄部材Aは、紐状部材を取り付け可能な基部10と、この基部から突出形成された一対の脚部20と、この各脚部の先端表裏面に突出して設けられた係合部25とを有する。雌部材Bは、雄部材が差し込まれる差込口42およびこの差込口から差し込まれた雄部材の脚部を収容する収容空間43を有する筒状の雌部材本体40と、この雌部材本体の収容空間内に形成され雄部材の係合部が係合する被係合部46と、差込口から被係合部に渡って形成され係合部を被係合部に案内するガイド溝47とを有する。雌部材Bの差込口には、雄部材の係合部と当接し、この係合部をガイド溝に誘導する誘導部61が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄部材と雌部材とを備えたバックルに関する。詳しくは、1本の紐状部材の両端、あるいは、2本の紐状部材同士を連結、分離するために用いられるバックルに関する。
【背景技術】
【0002】
1本の紐状部材の両端、あるいは、2本の紐状部材同士を連結、分離する手段として、バックルが利用されている。
例えば、特許文献1では、雄部材と、筒状の雌部材とを備えた接続具が提案されている。雄部材には、一対の屈伸部が差込方向へ突出され、この屈伸部に突起が形成されている。雌部材には、雄部材が差し込まれる開口部から内部空洞に向けて、案内溝が上壁および下壁の内面に沿ってテーパ溝状に形成され、その案内溝の奥部に雄部材の突起が係合する切込みが形成されている。
雄部材の突起を雌部材の上下の案内溝に合わせ、雄部材を雌部材に差し込むと、突起が案内溝のテーパ溝に沿って進むため、屈伸部が内側へ弾性変形される。やがて、所定位置まで差し込まれると、突起が切込みに落ちて係合されるため、雄部材が雌部材に係合される。
【0003】
この接続具では、雌部材の案内溝方向に対して、雄部材を斜めに差し込むと、雄部材の突起が雌部材の上下の案内溝に合わないため、雄部材が途中でつかえたりする等の問題が発生しやすい。そのため、雄部材を雌部材に正しく差し込むには、雄部材の突起を雌部材の上下の案内溝に正しく合わせなくてはならないため、雄部材の差込操作が煩わしいという問題がある。
【0004】
このような問題を解消できる構造を備えたバックルとして、特許文献2に記載のバックルが知られている。
これは、雄部分と雌部分とを備える。雄部分は、基部と、この基部から同方向へ突出され先端にロック用タブを有する2つのロックアームと、このロックアームの間でこれらロックアームと同方向へ略三角形状に突出成形されたV字状中央部分とを有する。雌部分は、筒状の中空状本体部を有し、この中空状本体部には、雄部分のロック用タブが係合するロック用端部が形成されているとともに、雄部分のV字状中央部分が嵌り込むV字状溝が差込口から奥部へ向かって切り欠かれている。
【0005】
雄部分を雌部分に差し込むと、2つのロックアームが内側へ弾性変形されながら挿入されるとともに、雄部分のV字状中央部分が雌部分のV字状溝に差し込まれる。このとき、雌部分の筒方向軸線に対して、雄部材の差込方向が斜めに差し込まれると、雄部分のV字状中央部分が雌部分のV字状溝の溝壁に当接し、このV字状溝の溝壁に沿って差し込まれるため、雄部分の姿勢が矯正される。つまり、雌部分の筒方向軸線に対して、雄部材の差込方向が平行になるように雄部材の姿勢が矯正される。そのため、雌部分の筒方向軸線に対して、雄部材の差込方向が斜めに差し込まれた場合でも、雄部分を雌部分に差し込むことができる。
【0006】
【特許文献1】特許第3790094号公報
【特許文献1】特開2006−204911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載のバックルでは、雄部分の幅方向中央位置に形成したV字状中央部分と、雌部分の幅方向中央位置に形成したV字状溝とで、雄部分の挿入姿勢を矯正する構造であるため、雄部分がある程度雌部分に差し込まれるまでは、雄部分のV字状中央部分が雌部分のV字状溝の溝壁に当接しないため、姿勢矯正機能は働かない。
従って、雌部分の筒方向軸線に対して、雄部材の差込方向が極端に斜めに差し込まれた場合、姿勢矯正機能が機能せずに途中でつかえてしまう場合も考えられる。このような場合、雄部分を雌部分から引き抜いて、再度、差込操作をしなければならないので、差込操作にあたって注意を必要とする。
【0008】
本発明の目的は、このような課題を解決し、雄部材を雌部材に対して、途中でつかえることなく確実に差込操作できるバックルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバックルは、雄部材と、この雄部材が差込係合する雌部材とを備え、前記雄部材は、紐状部材を取り付け可能な基部と、この基部から突出形成された一対の脚部と、この各脚部の先端表裏面に突出して設けられた係合部とを有し、前記雌部材は、前記雄部材が差し込まれる差込口およびこの差込口から差し込まれた雄部材の脚部を収容する収容空間を有する筒状の雌部材本体と、この雌部材本体の収容空間内に形成され前記雄部材の前記係合部が係合する被係合部と、前記収容空間内に形成され前記係合部を前記被係合部に案内するガイド溝とを有するバックルにおいて、前記雌部材の前記差込口には、前記雄部材の係合部と当接して、この係合部を前記ガイド溝に誘導する誘導部が形成されている、ことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、雄部材の一対の脚部を雌部材の差込口から収容空間内に差し込む。このとき、雌部材の軸線(ガイド溝が延びる方向の軸線)に対して、雄部材の差込方向がずれていると、例えば、雌部材の軸線に対して、雄部材の差込方向軸線が一致していないか、あるいは、雄部材の差込方向が傾いていると、雄部材の一対の脚部の先端表裏面に突出して設けられた係合部が、雌部材の差込口に形成された誘導部に当接される。すると、この誘導部によって、係合部が雌部材に設けられたガイド溝に誘導される。つまり、雌部材の軸線に対して、雄部材の差込方向が一致するように、雄部材の姿勢が矯正される。
このまま雄部材を雌部材に差し込んでいくと、係合部は、ガイド溝によって被係合部まで案内され、その被係合部に係合される。従って、雌部材の軸線に対して、雄部材の差込方向がずれていても、雄部材を雌部材に対して、途中でつかえることなく確実に差込操作できる。
【0011】
本発明のバックルにおいて、前記誘導部は、前記差込口において、前記ガイド溝を挟んだ両側端面に形成されている、ことが好ましい。
この構成によれば、誘導部が、ガイド溝を挟んだ差込口の両側端面に形成されているから、雄部材の差込方向が、雌部材の軸線に対して幅方向へずれても、あるいは、雌部材の軸線に対して幅方向のいずれの方向へ傾いて差し込まれても、雄部材の係合部が雌部材の差込口両側端面に形成された誘導部に当接するので、これらの誘導部によって雄部材の係合部をガイド溝に正しく誘導することができる。
【0012】
本発明のバックルにおいて、前記雌部材本体は、表壁、裏壁およびこれらを連結する側壁を有する筒状に形成され、前記被係合部は、前記表壁および裏壁に形成され、前記ガイド溝は、前記表壁および裏壁のそれぞれの内面に、前記差込口から前記被係合部に向かうに従って溝幅が次第に狭くなるように形成され、前記誘導部は、前記表壁および裏壁の前記差込口側端面において、前記ガイド溝を挟んだ両側端面に形成され、この両側端面に形成された前記誘導部の間隔が前記差込口側端面から前記ガイド溝に向かうに従って次第に狭くなる形状に形成されている、ことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、雌部材本体を構成する表壁および裏壁のそれぞれの内面にガイド溝が形成され、このガイド溝が開口する表壁および裏壁の差込口両側端面に誘導部が形成され、この両側端面に形成された誘導部の間隔が差込口側の端面からガイド溝に向かうに従って次第に狭くなるように形成されているから、雄部材の差込方向が、雌部材の軸線に対してずれた状態で差し込まれても、そのまま押し込めば、雄部材を雌部材に正しく差し込むことができる。
つまり、雄部材の差込方向が、雌部材の軸線に対してずれた状態で差し込まれると、雄部材の係合部が雌部材の差込口両側端面に設けられた誘導部に当接される。すると、これらの両側の誘導部の間隔が差込口側の端面からガイド溝に向かうに従って次第に狭くなる形状に形成されているから、そのまま押し込むと、係合部が誘導部に沿ってガイド溝方向へ導かれるから、差込操作が極めて容易に行える。
【0014】
本発明のバックルにおいて、前記表壁の内面に形成されたガイド溝の溝底と前記裏壁の内面に形成されたガイド溝の溝底との間の寸法をH1、前記表壁の前記差込口側に形成された前記誘導部から前記裏壁の前記差込口側に形成された前記誘導部までの寸法をH2、前記脚部の先端表裏面にそれぞれ突出して設けられた表面側係合部と裏面側係合部との先端間の寸法をH3としたとき、
H2<H3<H1
の関係に形成されている、ことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、まず、表壁の差込口側に形成された誘導部から裏壁の差込口側に形成された誘導部までの寸法H2が、脚部の先端表裏面にそれぞれ突出して設けられた表面側係合部と裏面側係合部との先端間の寸法H3より小さい寸法に形成されているから、雄部材の差込方向が、雌部材の軸線に対してずれた状態で差し込まれると、係合部が誘導部に確実に当接される。
このまま押し込むと、係合部は誘導部にならってガイド溝へ誘導される。このとき、脚部の先端表裏面にそれぞれ突出して設けられた表面側係合部と裏面側係合部との先端間の寸法H3が、表壁の内面に形成されたガイド溝の溝底と裏壁の内面に形成されたガイド溝の溝底との間の寸法H1より小さい寸法に形成されているから、係合部をガイド溝に確実に案内、挿入できる。
【0016】
本発明のバックルにおいて、前記雌部材と前記雄部材とは、突き合わせ面によって嵌合され、前記雄部材の突き合わせ面は、前記差込口から雄部材の差込方向へUまたはV字形状に窪んだ拡開部を有し、この拡開部の中央に前記ガイド溝が形成され、かつ、両側に前記誘導部が形成され、前記雄部材の突き合わせ面は、前記拡開部に嵌合する突出部を有している、ことが好ましい。
【0017】
この構成によれば、雌部材の突き合わせ面に拡開部が形成され、この拡開部の中央にガイド溝が、両側に誘導部が形成されているから、この拡開部を目安として、この拡開部に雄部材の脚部を差し込めば、脚部の係合部を拡開部によってガイド溝まで誘導させることができる。また、雄部材の突き合わせ面も、拡開部に嵌合する突出部に形成されているから、雄部材と雌部材との突き合わせ面を密着させた状態で、雄部材と雌部材とを係合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は第1実施形態のバックルの分離状態を示す分解斜視図、図2は同バックルの分離状態を示す一部破断の平面図、図3は図2のIII−III線断面図、図4は同バックルの係合状態を示す一部破断の平面図、図5は雌部材に対して雄部材が傾いて差し込まれる状態を示す斜視図、図6は図5の状態を示す一部破断の平面図である。
【0019】
(全体構成)
これらの図に示すように、第1実施形態のバックル1は、紐状部材の端部2,3を連結、分離するためのもので、合成樹脂によって一体成形された雄部材Aと、同様に合成樹脂によって一体成形され雄部材Aが差込係合される雌部材Bとを備えている。なお、雄部材Aおよび雌部材Bの材料については、合成樹脂に限らず、金属などの他の材料でもよい。
【0020】
(雄部材A)
雄部材Aは、基部10と、この基部10の幅方向(雄部材Aの差込方向に直交する方向)両側から互いに平行に突出形成され雄部材Aの差込方向に対して交差する方向(具体的には、略直交する方向)へ弾性変形可能な一対の脚部20と、この脚部20の間にこれらと平行に突設された1本の横ずれ規制片30とを備えている。
基部10は、内部中央部に紐状部材の端部2が挿入係止される紐取付部としての紐取付孔11を有する枠フレーム12と、この枠フレーム12の脚部20が突出形成された側から脚部20と同方向へ突出成形された突出部14とを含んで構成されている。
紐取付孔11の中間であって、枠フレーム12の幅方向に連結杆13が架橋され、この連結杆13によって紐取付孔11が、脚部20が設けられた差込方向前端側とそれとは反対側の差込方向後端側の2つの紐取付孔11A,11Bに分割されている。これにより、紐状部材を紐取付孔11A,11Bに挿通させて連結杆13の周囲に旋回させることにより、紐状部材の長さ調節が可能な構造になっている。
【0021】
突出部14は、一対の脚部20の間にあって、基部10の脚部20が突出形成された側、つまり、雌部材Bとの突き合わせ面から脚部20の突出方向に向かって突出形成されている。具体的には、差込方向前端縁が、指の先端輪郭形状に略合致するように、基部10の幅方向両端部から中央に向かうに従って突出量が次第に大きくなる円弧状(より詳細には、放物線形状)に形成されている。
突出部14の表面には、凹部15が形成されている。凹部15は、雄部材Aの差込方向前端15Aと差込方向後端15Bとを有し、前端15Aと後端15Bとを接続する面(凹部15の表面)が、後端15Bの幅方向中央位置が最も低く、この最も低い位置から前端15Aに向けて次第に高くなる曲面形状(放物線形状)に形成されている。つまり、指の腹形状に合致する曲面形状に形成されている。
突出部14の裏面にも、凹部17が形成されている。凹部17も、凹部15の形状と同じである。
【0022】
脚部20は、基部10の幅方向両側から雄部材Aの差込方向に向かって直線状に延長され互いに接近または離間する方向へ弾性変形可能な弾性脚片21と、この弾性脚片21の先端から雄部材Aの差込方向へ向かって延長されたガイド脚片22とを有する。
弾性脚片21は、弾性変形方向の寸法(幅寸法)が表裏方向寸法より小さい断面形状に形成されている。
ガイド脚片22は、二股に分岐されたのち先端で結合する形状に形成されているとともに、その外側面が先端へ向けて内側、すなわち、各脚部20が接近する方向へ傾斜して形成されている。
係合部25は、ガイド脚片22の先端表裏面に突出して形成された突起25Aによって構成されている。
【0023】
横ずれ規制片30は、突出部14の先端から一対の脚部20と平行に突出して形成されているとともに、表裏面中央に係合溝32が横ずれ規制片30の突出方向に沿って形成されている。
【0024】
(雌部材B)
雌部材Bは、表裏面を構成する表壁40A、裏壁40Bおよびこれらを連結する一対の側壁40Cを有する扁平筒形状の雌部材本体40を備える。
雌部材本体40は、一端に雄部材Aが差し込まれる差込口42が形成され、他端に紐状部材の端部3が挿入係止される紐取付部41が形成されているとともに、内部に雄部材Aの脚部20を収容する収容空間43を有する。差込口42を形成する表壁40Aおよび裏壁40Bには、中央部分が内部へ向かって窪んだ円弧形状(放物線形状)で、雄部材Aの突出部14が入り込む拡開部42Aが形成されている。つまり、雄部材Aの突出部14と雌部材Bの拡開部42Aとが嵌合するように突き合わされる。紐取付部41は、紐取付孔41Aおよび連結杆41Bを含んで構成されている。
【0025】
雌部材本体40の表裏面には、紐取付孔41Aに隣接して、凹部51,52が形成されている。これらの凹部51,52も、雄部材Aの凹部15,17と略同様な形状に形成されている。
収容空間43の奥部両側壁には、図2および図4に示されているように、雄部材Aの脚部20を外表面に露出させる脚部用開口部45が形成されている。脚部用開口部45は、雌部材本体40の周囲壁のうち、側壁40Cから表壁40Aおよび裏壁40Bの内部へ向かって凹曲面状に切り欠かれている。
【0026】
脚部用開口部45より収容空間43の奥部であって、表壁40Aおよび裏壁40Bの内面には、凹状の被係合部46が設けられているとともに、各脚部20に設けられた係合部25を被係合部46に案内するガイド溝47が、拡開部42Aの両端を除く中央から被係合部46にかけて形成されている。
ガイド溝47は、拡開部42A(差込口42)から被係合部46に向かって溝幅寸法が次第に狭くなるように形成されている。これにより、脚部20は、雌部材Bに差し込まれるに従って、差込方向に対して略直交する方向(内側)へ弾性変形されながら挿入されたのち、被係合部46に係合される。また、表壁40Aおよび裏壁40Bの内面には、横ずれ規制片30の係合溝32に嵌り合う突条48が雄部材Aの差込方向に沿って形成されている。
【0027】
拡開部42Aの両側には、雄部材Aの係合部25と当接して、その係合部25をガイド溝47に誘導する誘導部61が形成されている。つまり、差込口42において、ガイド溝47を挟んだ両側端面に誘導部61が形成されている。
誘導部61は、表壁40Aおよび裏壁40Bの差込口42側の端面、つまり、差込口42の口縁において、ガイド溝47を挟んだ両側端面に形成されている。ガイド溝47を挟んだ両側の誘導部61は、傾斜面状、つまり、雄部材Aの差込方向へ向けて互いに接近するように傾斜して形成されている。換言すると、両側端面に形成された誘導部61の間隔が差込口42側の端面からガイド溝47に向かうに従って次第に狭くなる形状、つまり、拡開部42Aの円弧あるいは放物線形状の一部を構成する形状に形成されている。
【0028】
ここで、図3に示すように、表壁40Aの内面に形成されたガイド溝47の溝底と裏壁40Bの内面に形成されたガイド溝47の溝底との間の寸法をH1、表壁40Aの差込口42側に形成された誘導部61から裏壁40Bの差込口42側に形成された誘導部61までの寸法をH2、脚部20の先端表裏面にそれぞれ突出して設けられた表面側係合部25と裏面側係合部25との先端間の寸法をH3としたとき、
H2<H3<H1
の関係に形成されている。
【0029】
(作用・効果)
このような構成において、雄部材Aを雌部材Bに係合させるには、まず、一方の手の親指と人差指とで雄部材Aの表裏面をつまみ、他方の手の親指と人差指とで雌部材Bの表裏面をつまむ。
この際、雄部材Aの表裏面には、基部10から突出形成された突出部14の表裏面に凹部15,17が形成されているから、これらの凹部15,17に親指および人差指をあてがえば、雄部材Aの表裏面をつまんで操作する場合でも、つまみやすい。また、雌部材Bの表裏面にも、凹部51,52が形成されているから、他方の手の親指と人差指をあてがうことができるから、同様に、雌部材Bの表裏面をつかみやすい。
【0030】
このようにして、雄部材Aと雌部材Bとをつまんだのち、雄部材Aを雌部材Bに差し込む。すると、脚部20の先端に形成された係合部25がガイド溝47の内側に案内されながら差し込まれる。ガイド溝47は雌部材Bの奥に向かって幅狭に形成されているから、脚部20が内側へ弾性変形されながら差し込まれていく。
やがて、脚部20の係合部25が雌部材Bの被係合部46を越える位置まで雄部材Aが差し込まれると、内側に弾性変形されていた脚部20が元の状態に弾性復帰するため(外側へ復帰するため)、脚部20の係合部25が雌部材Bの被係合部46に係合される。
【0031】
これにより、図4に示すように、雄部材Aが雌部材Bに係合される。この状態においては、雌部材Bの拡開部42Aに雄部材Aの突出部14が嵌り込んた状態で、ほとんど隙間なく嵌合した状態になるため、がたつきも少ないうえ、意匠的にもすっきりとした印象が得られる。
【0032】
しかも、この状態では、雌部材Bの突条48が雄部材Aの横ずれ規制片30に形成された係合溝32に嵌り込んでいるため、雄部材Aが雌部材Bに対して幅方向へ移動するのが規制される。例えば、雄部材Aの片方の脚部20に、係合を人為的に解除する以外の外力(内側へ押圧する力)が加わると、横ずれ規制片30が無い場合、雄部材Aが幅方向他方側へ変位される。すると、他方の脚部20の根本部分が雌部材Bの側壁40Cに当接し、他方の脚部20が内側へ弾性変形され、その結果、両脚部20の先端に設けられた係合部25が被係合部46から外れて雄部材Aが雌部材Bから外れてしまう事態も想定される。しかし、本実施形態によれば、雌部材Bの突条48が雄部材Aの横ずれ規制片30に形成された係合溝32に嵌り込んでいるため、雄部材Aが雌部材Bに対して幅方向へ移動するのが規制され、雄部材Aが雌部材Bから外れるのが防止される。
【0033】
ところで、雄部材Aを雌部材Bの差込口42から収容空間43内に差し込む際、雌部材Bの軸線(ガイド溝47が延びる方向の軸線)に対して、雄部材Aの差込方向がずれていると、例えば、雌部材Bの軸線に対して、雄部材Aの差込方向軸線が一致していないか、あるいは、図5に示すように、雄部材Aの差込方向が傾いていると、雄部材Aの係合部25が雌部材Bのガイド溝47に一致しない。
このような状態では、雄部材Aの一対の脚部20の先端表裏面に突出して設けられた係合部25が、雌部材Bの差込口42に形成された誘導部61に当接される。つまり、表壁40Aの差込口42側に形成された誘導部61から裏壁40Bの差込口42側に形成された誘導部61までの寸法H2が、脚部20の先端表裏面にそれぞれ突出して設けられた表面側係合部25と裏面側係合部25との先端間の寸法H3より小さい寸法に形成されているから、雄部材Aの差込方向が、雌部材Bの軸線に対してずれた状態で差し込まれると、係合部25が誘導部61に当接される。
【0034】
また、両側端面に形成された誘導部61の間隔が差込口42側の端面からガイド溝47に向かうに従って次第に狭くなる形状に形成されているから、誘導部61によって、係合部25がガイド溝47に誘導される。つまり、雌部材Bの軸線に対して、雄部材Aの差込方向が一致するように、雄部材Aの姿勢が矯正される。このとき、脚部20の先端表裏面にそれぞれ突出して設けられた表面側係合部25と裏面側係合部25との先端間の寸法H3が、表壁40Aの内面に形成されたガイド溝47の溝底と裏壁40Bの内面に形成されたガイド溝47の溝底との間の寸法H1より小さい寸法に形成されているから、係合部25がガイド溝47内に案内、挿入される。
従って、雌部材Bの軸線に対して、雄部材Aの差込方向がずれていても、雄部材Aを雌部材Bに対して、途中でつかえることなく確実に差込操作できる。
【0035】
とくに、誘導部61が、ガイド溝47を挟んだ差込口42の両側端面に形成されているから、雄部材Aの差込方向が、雌部材Bの軸線に対して幅方向へずれていても、あるいは、雌部材Bの軸線に対して幅方向のいずれの方向へ傾いて差し込まれても、雄部材Aの係合部25が雌部材Bの差込口42両側端面に形成された誘導部61に当接するので、これらの誘導部61によって雄部材Aの係合部25をガイド溝47に誘導することができる。
【0036】
また、雌部材Bの突き合わせ面に拡開部42Aが形成され、この拡開部42Aの中央にガイド溝47が、両側に誘導部61が形成されているから、この拡開部42Aを目安として、この拡開部42Aに雄部材Aの脚部20を差し込めば、脚部20の係合部25を拡開部42Aの両側に形成された誘導部61によって拡開部42Aの中央に形成されたガイド溝47まで誘導させることができる。
【0037】
しかも、差込口42において誘導部61が形成された部分、つまり、差込口42の左右両側部分は、差込口42の中央部分よりも雌部材Bの表裏方向の厚みが厚くなっている。この厚肉となった部分はガイド溝47の両側に沿って雌部材Bの内部に向けて延びているため、雌部材Bの左右両側に形成した開口部45の周辺部分の肉厚も厚くなり、開口部45の周辺部分が補強され、強度を高めることができる利点がある。
【0038】
なお、雄部材Aを雌部材Bから外すには、雌部材Bの脚部用開口部45から突出している脚部20を内側へ押圧すると、雄部材Aの脚部20が内側に弾性変形される。
すると、係合部25が被係合部46から外れるから、この状態において、雄部材Aを雌部材Bから引き抜くと、雄部材Aを雌部材Bから外すことができる。
【0039】
<第2実施形態>
図7は第2実施形態のバックルの分離状態を示す分解斜視図、図8は同バックルの分離状態を示す一部破断の平面図、図9は図8のIX−IX線断面図、図10は同バックルの係合状態を示す一部破断の平面図、図11は雌部材に対して雄部材が傾いて差し込まれる状態を示す斜視図、図12は図11の状態を示す一部破断の平面図である。なお、これらの図の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0040】
(構成)
第2実施形態のバックルは、雄部材Aにおいて、突出部14、脚部20および係合部25の形状が、また、雌部材Bにおいて、拡開部42Aおよび被係合部46の形状が、第1実施形態とはそれぞれ異なる。
【0041】
第2実施形態における突出部14は、枠フレーム12のうち脚部20が設けられた枠材12Aが、脚部20の突出方向へ突出する形状に湾曲形成されている。つまり、枠材12Aの両端部よりも中央部が脚部20の突出方向へ向かって突出した略V字状に形成されている。
【0042】
第2実施形態における脚部20は、中央のガイド脚片22が省略され、一対のガイド脚片22の内側面間は、弾性を有する連結帯23によって連結されている。連結帯23は、枠材12Aへ接近する方向へ凸状に湾曲した逆U字形状を呈し、一対のガイド脚片22が所定以上外側へ変形するのを阻止し、脚部20に過度の引張力(外側への引張力)が加わった時に脚部20の破損を防止する役目を果たす。
【0043】
第2実施形態における係合部25は、一対の脚部20のガイド脚片22の先端表裏面に突出して形成された略五角形状の突起25Aによって形成されている。
【0044】
第2実施形態における拡開部42Aは、差込口42を形成する表壁40Aおよび裏壁40Bの中央部分が内部へ向かって略V字状に窪んだ形状に形成されている。第2実施形態でも、拡開部42Aの中央位置にガイド溝47が開口し、ガイド溝47を挟んだ両側位置に誘導部61が設けられているから、第2実施形態における誘導部61は、差込口42からガイド溝47へ向かうに従って次第に狭くなるテーパ形状に形成されている。
第2実施形態における被係合部46は、各係合部25に対応して略五角形状の凹部46Aとして形成されている。表壁40Aに形成された凹部46Aと裏壁40Bに形成された凹部46Aとは、それぞれ表壁40A、裏壁40Bの外表面に開口されている。
【0045】
(作用・効果)
第2実施形態のバックルにおいても、第1実施形態で述べたのと同様な作用効果が期待できる。
すなわち、雄部材Aを雌部材Bの差込口42から収容空間43内に差し込む際、雌部材Bの軸線(ガイド溝47が延びる方向の軸線)に対して、雄部材Aの差込方向がずれていると、例えば、図11に示すように、雄部材Aの差込方向が傾いていると、雄部材Aの係合部25が雌部材Bのガイド溝47に一致しない。
【0046】
このような状態では、雄部材Aの一対の脚部20の先端表裏面に突出して設けられた係合部25が、雌部材Bの差込口42に形成された誘導部61に当接される。すると、この誘導部61によって、係合部25が雌部材Bのガイド溝47に誘導される。つまり、雌部材Bの軸線に対して、雄部材Aの差込方向が一致するように、雄部材Aの姿勢が矯正されるから、このまま雄部材Aを雌部材Bに差し込んでいけば、係合部25は、ガイド溝47によって被係合部46まで案内され、その被係合部46に係合される。従って、雌部材Bの軸線に対して、雄部材Aの差込方向がずれていても、雄部材Aを雌部材Bに対して、途中でつかえることなく確実に差込操作できる。
【0047】
<変形例の説明>
なお、本発明は、上記実施形態で説明した構造のバックルに限定されるものでなく、次のような変形例も含む。
【0048】
上記実施形態では、雌部材Bの表壁40Aおよび裏壁40Bの差込口42側に、円弧状またはV字状に窪んだ拡開部42Aを形成し、この拡開部42Aの中央位置にガイド溝47を開口し、かつ、両側に誘導部61を形成したが、拡開部42Aについては、必ずしも設けなくてもよい。つまり、雌部材Bの差込口42に誘導部61が形成されていればよい。このようにすれば、つまり、雌部材Bに拡開部42Aを形成しなければ、雌部材Bの強度を高めることができる。
【0049】
また、誘導部61の形状についても、上記各実施形態で述べた拡開部42Aの円弧形状の一部を構成する形状、あるいは、V字状の一部を構成するテーパ形状に限らず、他の形状でもよい。要するに、雄部材Aと係合部25が当接し、雄部材Aの押し込み力によって、当接した係合部25をガイド溝47へ案内できる形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0050】
上記実施形態では、雄部材Aおよび雌部材Bにそれぞれ紐取付部、つまり、紐取付孔11を有する枠フレーム12や紐取付部41を形成したが、雌部材Bについては、紐取付部41がなくてもよい。つまり、雌部材Bの雌部材本体40を直接他の部材に固定するようにしてもよい。
また、雌部材Bの射出成形時に、紐状部材の端部を雌部材本体40の紐取付部41に一体的に固定するようにしてもよい。つまり、紐状部材の端部を雌部材Bの射出成形時にインサート成形して一体成形するようにしてもよい。
【0051】
また、紐状部材としては、帯状のベルトに限らず、幅がない細い紐、例えば、丸紐などであってもよい。この際、雄部材Aまたは雌部材Bに細紐(丸紐)などが通る程度の紐挿通孔を形成し、この紐挿通孔に細紐(丸紐)を挿通して紐挿通孔から突出した細紐(丸紐)の先端に結び目を作って、抜け止めするようにしてもよい。
【0052】
以上、本発明に関して、好適な実施形態および各種の変形例を挙げたが、これらを適宜組み合わせて構成してもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、例えば、バッグ類のベルトの連結、離脱用のバックルとして好適であるが、その他どのような用途にも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態のバックルの分離状態を示す分解斜視図。
【図2】前記第1実施形態においいて、バックルの分離状態を示す一部破断の平面図。
【図3】図2のIII−III線断面図。
【図4】前記第1実施形態において、バックルの係合状態を示す一部破断の平面図。
【図5】前記第1実施形態において、雄部材が雌部材に差し込まれる際の斜視図。
【図6】図5の状態を示す一部破断の平面図。
【図7】本発明の第2実施形態のバックルを示す分解斜視図。
【図8】前記第2実施形態において、バックルの分離状態を示す一部破断の平面図。
【図9】図8のIX−IX線断面図。
【図10】前記第2実施形態において、バックルの係合状態を示す一部破断の平面図。
【図11】前記2実施形態において、雄部材が雌部材に差し込まれる際の斜視図。
【図12】図11の状態を示す一部破断の平面図。
【符号の説明】
【0055】
1…バックル、14…突出部、20…脚部、25…係合部、40…雌部材本体、40A…表壁、40B…裏壁、40C…側壁、42…差込口、42A…拡開部、43…収容空間、46…被係合部、47…ガイド溝、61…誘導部、A…雄部材、B…雌部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄部材と雌部材とを備えたバックルに関する。詳しくは、1本の紐状部材の両端、あるいは、2本の紐状部材同士を連結、分離するために用いられるバックルに関する。
【背景技術】
【0002】
1本の紐状部材の両端、あるいは、2本の紐状部材同士を連結、分離する手段として、バックルが利用されている。
例えば、特許文献1では、雄部材と、筒状の雌部材とを備えた接続具が提案されている。雄部材には、一対の屈伸部が差込方向へ突出され、この屈伸部に突起が形成されている。雌部材には、雄部材が差し込まれる開口部から内部空洞に向けて、案内溝が上壁および下壁の内面に沿ってテーパ溝状に形成され、その案内溝の奥部に雄部材の突起が係合する切込みが形成されている。
雄部材の突起を雌部材の上下の案内溝に合わせ、雄部材を雌部材に差し込むと、突起が案内溝のテーパ溝に沿って進むため、屈伸部が内側へ弾性変形される。やがて、所定位置まで差し込まれると、突起が切込みに落ちて係合されるため、雄部材が雌部材に係合される。
【0003】
この接続具では、雌部材の案内溝方向に対して、雄部材を斜めに差し込むと、雄部材の突起が雌部材の上下の案内溝に合わないため、雄部材が途中でつかえたりする等の問題が発生しやすい。そのため、雄部材を雌部材に正しく差し込むには、雄部材の突起を雌部材の上下の案内溝に正しく合わせなくてはならないため、雄部材の差込操作が煩わしいという問題がある。
【0004】
このような問題を解消できる構造を備えたバックルとして、特許文献2に記載のバックルが知られている。
これは、雄部分と雌部分とを備える。雄部分は、基部と、この基部から同方向へ突出され先端にロック用タブを有する2つのロックアームと、このロックアームの間でこれらロックアームと同方向へ略三角形状に突出成形されたV字状中央部分とを有する。雌部分は、筒状の中空状本体部を有し、この中空状本体部には、雄部分のロック用タブが係合するロック用端部が形成されているとともに、雄部分のV字状中央部分が嵌り込むV字状溝が差込口から奥部へ向かって切り欠かれている。
【0005】
雄部分を雌部分に差し込むと、2つのロックアームが内側へ弾性変形されながら挿入されるとともに、雄部分のV字状中央部分が雌部分のV字状溝に差し込まれる。このとき、雌部分の筒方向軸線に対して、雄部材の差込方向が斜めに差し込まれると、雄部分のV字状中央部分が雌部分のV字状溝の溝壁に当接し、このV字状溝の溝壁に沿って差し込まれるため、雄部分の姿勢が矯正される。つまり、雌部分の筒方向軸線に対して、雄部材の差込方向が平行になるように雄部材の姿勢が矯正される。そのため、雌部分の筒方向軸線に対して、雄部材の差込方向が斜めに差し込まれた場合でも、雄部分を雌部分に差し込むことができる。
【0006】
【特許文献1】特許第3790094号公報
【特許文献1】特開2006−204911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載のバックルでは、雄部分の幅方向中央位置に形成したV字状中央部分と、雌部分の幅方向中央位置に形成したV字状溝とで、雄部分の挿入姿勢を矯正する構造であるため、雄部分がある程度雌部分に差し込まれるまでは、雄部分のV字状中央部分が雌部分のV字状溝の溝壁に当接しないため、姿勢矯正機能は働かない。
従って、雌部分の筒方向軸線に対して、雄部材の差込方向が極端に斜めに差し込まれた場合、姿勢矯正機能が機能せずに途中でつかえてしまう場合も考えられる。このような場合、雄部分を雌部分から引き抜いて、再度、差込操作をしなければならないので、差込操作にあたって注意を必要とする。
【0008】
本発明の目的は、このような課題を解決し、雄部材を雌部材に対して、途中でつかえることなく確実に差込操作できるバックルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバックルは、雄部材と、この雄部材が差込係合する雌部材とを備え、前記雄部材は、紐状部材を取り付け可能な基部と、この基部から突出形成された一対の脚部と、この各脚部の先端表裏面に突出して設けられた係合部とを有し、前記雌部材は、前記雄部材が差し込まれる差込口およびこの差込口から差し込まれた雄部材の脚部を収容する収容空間を有する筒状の雌部材本体と、この雌部材本体の収容空間内に形成され前記雄部材の前記係合部が係合する被係合部と、前記収容空間内に形成され前記係合部を前記被係合部に案内するガイド溝とを有するバックルにおいて、前記雌部材の前記差込口には、前記雄部材の係合部と当接して、この係合部を前記ガイド溝に誘導する誘導部が形成されている、ことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、雄部材の一対の脚部を雌部材の差込口から収容空間内に差し込む。このとき、雌部材の軸線(ガイド溝が延びる方向の軸線)に対して、雄部材の差込方向がずれていると、例えば、雌部材の軸線に対して、雄部材の差込方向軸線が一致していないか、あるいは、雄部材の差込方向が傾いていると、雄部材の一対の脚部の先端表裏面に突出して設けられた係合部が、雌部材の差込口に形成された誘導部に当接される。すると、この誘導部によって、係合部が雌部材に設けられたガイド溝に誘導される。つまり、雌部材の軸線に対して、雄部材の差込方向が一致するように、雄部材の姿勢が矯正される。
このまま雄部材を雌部材に差し込んでいくと、係合部は、ガイド溝によって被係合部まで案内され、その被係合部に係合される。従って、雌部材の軸線に対して、雄部材の差込方向がずれていても、雄部材を雌部材に対して、途中でつかえることなく確実に差込操作できる。
【0011】
本発明のバックルにおいて、前記誘導部は、前記差込口において、前記ガイド溝を挟んだ両側端面に形成されている、ことが好ましい。
この構成によれば、誘導部が、ガイド溝を挟んだ差込口の両側端面に形成されているから、雄部材の差込方向が、雌部材の軸線に対して幅方向へずれても、あるいは、雌部材の軸線に対して幅方向のいずれの方向へ傾いて差し込まれても、雄部材の係合部が雌部材の差込口両側端面に形成された誘導部に当接するので、これらの誘導部によって雄部材の係合部をガイド溝に正しく誘導することができる。
【0012】
本発明のバックルにおいて、前記雌部材本体は、表壁、裏壁およびこれらを連結する側壁を有する筒状に形成され、前記被係合部は、前記表壁および裏壁に形成され、前記ガイド溝は、前記表壁および裏壁のそれぞれの内面に、前記差込口から前記被係合部に向かうに従って溝幅が次第に狭くなるように形成され、前記誘導部は、前記表壁および裏壁の前記差込口側端面において、前記ガイド溝を挟んだ両側端面に形成され、この両側端面に形成された前記誘導部の間隔が前記差込口側端面から前記ガイド溝に向かうに従って次第に狭くなる形状に形成されている、ことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、雌部材本体を構成する表壁および裏壁のそれぞれの内面にガイド溝が形成され、このガイド溝が開口する表壁および裏壁の差込口両側端面に誘導部が形成され、この両側端面に形成された誘導部の間隔が差込口側の端面からガイド溝に向かうに従って次第に狭くなるように形成されているから、雄部材の差込方向が、雌部材の軸線に対してずれた状態で差し込まれても、そのまま押し込めば、雄部材を雌部材に正しく差し込むことができる。
つまり、雄部材の差込方向が、雌部材の軸線に対してずれた状態で差し込まれると、雄部材の係合部が雌部材の差込口両側端面に設けられた誘導部に当接される。すると、これらの両側の誘導部の間隔が差込口側の端面からガイド溝に向かうに従って次第に狭くなる形状に形成されているから、そのまま押し込むと、係合部が誘導部に沿ってガイド溝方向へ導かれるから、差込操作が極めて容易に行える。
【0014】
本発明のバックルにおいて、前記表壁の内面に形成されたガイド溝の溝底と前記裏壁の内面に形成されたガイド溝の溝底との間の寸法をH1、前記表壁の前記差込口側に形成された前記誘導部から前記裏壁の前記差込口側に形成された前記誘導部までの寸法をH2、前記脚部の先端表裏面にそれぞれ突出して設けられた表面側係合部と裏面側係合部との先端間の寸法をH3としたとき、
H2<H3<H1
の関係に形成されている、ことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、まず、表壁の差込口側に形成された誘導部から裏壁の差込口側に形成された誘導部までの寸法H2が、脚部の先端表裏面にそれぞれ突出して設けられた表面側係合部と裏面側係合部との先端間の寸法H3より小さい寸法に形成されているから、雄部材の差込方向が、雌部材の軸線に対してずれた状態で差し込まれると、係合部が誘導部に確実に当接される。
このまま押し込むと、係合部は誘導部にならってガイド溝へ誘導される。このとき、脚部の先端表裏面にそれぞれ突出して設けられた表面側係合部と裏面側係合部との先端間の寸法H3が、表壁の内面に形成されたガイド溝の溝底と裏壁の内面に形成されたガイド溝の溝底との間の寸法H1より小さい寸法に形成されているから、係合部をガイド溝に確実に案内、挿入できる。
【0016】
本発明のバックルにおいて、前記雌部材と前記雄部材とは、突き合わせ面によって嵌合され、前記雄部材の突き合わせ面は、前記差込口から雄部材の差込方向へUまたはV字形状に窪んだ拡開部を有し、この拡開部の中央に前記ガイド溝が形成され、かつ、両側に前記誘導部が形成され、前記雄部材の突き合わせ面は、前記拡開部に嵌合する突出部を有している、ことが好ましい。
【0017】
この構成によれば、雌部材の突き合わせ面に拡開部が形成され、この拡開部の中央にガイド溝が、両側に誘導部が形成されているから、この拡開部を目安として、この拡開部に雄部材の脚部を差し込めば、脚部の係合部を拡開部によってガイド溝まで誘導させることができる。また、雄部材の突き合わせ面も、拡開部に嵌合する突出部に形成されているから、雄部材と雌部材との突き合わせ面を密着させた状態で、雄部材と雌部材とを係合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は第1実施形態のバックルの分離状態を示す分解斜視図、図2は同バックルの分離状態を示す一部破断の平面図、図3は図2のIII−III線断面図、図4は同バックルの係合状態を示す一部破断の平面図、図5は雌部材に対して雄部材が傾いて差し込まれる状態を示す斜視図、図6は図5の状態を示す一部破断の平面図である。
【0019】
(全体構成)
これらの図に示すように、第1実施形態のバックル1は、紐状部材の端部2,3を連結、分離するためのもので、合成樹脂によって一体成形された雄部材Aと、同様に合成樹脂によって一体成形され雄部材Aが差込係合される雌部材Bとを備えている。なお、雄部材Aおよび雌部材Bの材料については、合成樹脂に限らず、金属などの他の材料でもよい。
【0020】
(雄部材A)
雄部材Aは、基部10と、この基部10の幅方向(雄部材Aの差込方向に直交する方向)両側から互いに平行に突出形成され雄部材Aの差込方向に対して交差する方向(具体的には、略直交する方向)へ弾性変形可能な一対の脚部20と、この脚部20の間にこれらと平行に突設された1本の横ずれ規制片30とを備えている。
基部10は、内部中央部に紐状部材の端部2が挿入係止される紐取付部としての紐取付孔11を有する枠フレーム12と、この枠フレーム12の脚部20が突出形成された側から脚部20と同方向へ突出成形された突出部14とを含んで構成されている。
紐取付孔11の中間であって、枠フレーム12の幅方向に連結杆13が架橋され、この連結杆13によって紐取付孔11が、脚部20が設けられた差込方向前端側とそれとは反対側の差込方向後端側の2つの紐取付孔11A,11Bに分割されている。これにより、紐状部材を紐取付孔11A,11Bに挿通させて連結杆13の周囲に旋回させることにより、紐状部材の長さ調節が可能な構造になっている。
【0021】
突出部14は、一対の脚部20の間にあって、基部10の脚部20が突出形成された側、つまり、雌部材Bとの突き合わせ面から脚部20の突出方向に向かって突出形成されている。具体的には、差込方向前端縁が、指の先端輪郭形状に略合致するように、基部10の幅方向両端部から中央に向かうに従って突出量が次第に大きくなる円弧状(より詳細には、放物線形状)に形成されている。
突出部14の表面には、凹部15が形成されている。凹部15は、雄部材Aの差込方向前端15Aと差込方向後端15Bとを有し、前端15Aと後端15Bとを接続する面(凹部15の表面)が、後端15Bの幅方向中央位置が最も低く、この最も低い位置から前端15Aに向けて次第に高くなる曲面形状(放物線形状)に形成されている。つまり、指の腹形状に合致する曲面形状に形成されている。
突出部14の裏面にも、凹部17が形成されている。凹部17も、凹部15の形状と同じである。
【0022】
脚部20は、基部10の幅方向両側から雄部材Aの差込方向に向かって直線状に延長され互いに接近または離間する方向へ弾性変形可能な弾性脚片21と、この弾性脚片21の先端から雄部材Aの差込方向へ向かって延長されたガイド脚片22とを有する。
弾性脚片21は、弾性変形方向の寸法(幅寸法)が表裏方向寸法より小さい断面形状に形成されている。
ガイド脚片22は、二股に分岐されたのち先端で結合する形状に形成されているとともに、その外側面が先端へ向けて内側、すなわち、各脚部20が接近する方向へ傾斜して形成されている。
係合部25は、ガイド脚片22の先端表裏面に突出して形成された突起25Aによって構成されている。
【0023】
横ずれ規制片30は、突出部14の先端から一対の脚部20と平行に突出して形成されているとともに、表裏面中央に係合溝32が横ずれ規制片30の突出方向に沿って形成されている。
【0024】
(雌部材B)
雌部材Bは、表裏面を構成する表壁40A、裏壁40Bおよびこれらを連結する一対の側壁40Cを有する扁平筒形状の雌部材本体40を備える。
雌部材本体40は、一端に雄部材Aが差し込まれる差込口42が形成され、他端に紐状部材の端部3が挿入係止される紐取付部41が形成されているとともに、内部に雄部材Aの脚部20を収容する収容空間43を有する。差込口42を形成する表壁40Aおよび裏壁40Bには、中央部分が内部へ向かって窪んだ円弧形状(放物線形状)で、雄部材Aの突出部14が入り込む拡開部42Aが形成されている。つまり、雄部材Aの突出部14と雌部材Bの拡開部42Aとが嵌合するように突き合わされる。紐取付部41は、紐取付孔41Aおよび連結杆41Bを含んで構成されている。
【0025】
雌部材本体40の表裏面には、紐取付孔41Aに隣接して、凹部51,52が形成されている。これらの凹部51,52も、雄部材Aの凹部15,17と略同様な形状に形成されている。
収容空間43の奥部両側壁には、図2および図4に示されているように、雄部材Aの脚部20を外表面に露出させる脚部用開口部45が形成されている。脚部用開口部45は、雌部材本体40の周囲壁のうち、側壁40Cから表壁40Aおよび裏壁40Bの内部へ向かって凹曲面状に切り欠かれている。
【0026】
脚部用開口部45より収容空間43の奥部であって、表壁40Aおよび裏壁40Bの内面には、凹状の被係合部46が設けられているとともに、各脚部20に設けられた係合部25を被係合部46に案内するガイド溝47が、拡開部42Aの両端を除く中央から被係合部46にかけて形成されている。
ガイド溝47は、拡開部42A(差込口42)から被係合部46に向かって溝幅寸法が次第に狭くなるように形成されている。これにより、脚部20は、雌部材Bに差し込まれるに従って、差込方向に対して略直交する方向(内側)へ弾性変形されながら挿入されたのち、被係合部46に係合される。また、表壁40Aおよび裏壁40Bの内面には、横ずれ規制片30の係合溝32に嵌り合う突条48が雄部材Aの差込方向に沿って形成されている。
【0027】
拡開部42Aの両側には、雄部材Aの係合部25と当接して、その係合部25をガイド溝47に誘導する誘導部61が形成されている。つまり、差込口42において、ガイド溝47を挟んだ両側端面に誘導部61が形成されている。
誘導部61は、表壁40Aおよび裏壁40Bの差込口42側の端面、つまり、差込口42の口縁において、ガイド溝47を挟んだ両側端面に形成されている。ガイド溝47を挟んだ両側の誘導部61は、傾斜面状、つまり、雄部材Aの差込方向へ向けて互いに接近するように傾斜して形成されている。換言すると、両側端面に形成された誘導部61の間隔が差込口42側の端面からガイド溝47に向かうに従って次第に狭くなる形状、つまり、拡開部42Aの円弧あるいは放物線形状の一部を構成する形状に形成されている。
【0028】
ここで、図3に示すように、表壁40Aの内面に形成されたガイド溝47の溝底と裏壁40Bの内面に形成されたガイド溝47の溝底との間の寸法をH1、表壁40Aの差込口42側に形成された誘導部61から裏壁40Bの差込口42側に形成された誘導部61までの寸法をH2、脚部20の先端表裏面にそれぞれ突出して設けられた表面側係合部25と裏面側係合部25との先端間の寸法をH3としたとき、
H2<H3<H1
の関係に形成されている。
【0029】
(作用・効果)
このような構成において、雄部材Aを雌部材Bに係合させるには、まず、一方の手の親指と人差指とで雄部材Aの表裏面をつまみ、他方の手の親指と人差指とで雌部材Bの表裏面をつまむ。
この際、雄部材Aの表裏面には、基部10から突出形成された突出部14の表裏面に凹部15,17が形成されているから、これらの凹部15,17に親指および人差指をあてがえば、雄部材Aの表裏面をつまんで操作する場合でも、つまみやすい。また、雌部材Bの表裏面にも、凹部51,52が形成されているから、他方の手の親指と人差指をあてがうことができるから、同様に、雌部材Bの表裏面をつかみやすい。
【0030】
このようにして、雄部材Aと雌部材Bとをつまんだのち、雄部材Aを雌部材Bに差し込む。すると、脚部20の先端に形成された係合部25がガイド溝47の内側に案内されながら差し込まれる。ガイド溝47は雌部材Bの奥に向かって幅狭に形成されているから、脚部20が内側へ弾性変形されながら差し込まれていく。
やがて、脚部20の係合部25が雌部材Bの被係合部46を越える位置まで雄部材Aが差し込まれると、内側に弾性変形されていた脚部20が元の状態に弾性復帰するため(外側へ復帰するため)、脚部20の係合部25が雌部材Bの被係合部46に係合される。
【0031】
これにより、図4に示すように、雄部材Aが雌部材Bに係合される。この状態においては、雌部材Bの拡開部42Aに雄部材Aの突出部14が嵌り込んた状態で、ほとんど隙間なく嵌合した状態になるため、がたつきも少ないうえ、意匠的にもすっきりとした印象が得られる。
【0032】
しかも、この状態では、雌部材Bの突条48が雄部材Aの横ずれ規制片30に形成された係合溝32に嵌り込んでいるため、雄部材Aが雌部材Bに対して幅方向へ移動するのが規制される。例えば、雄部材Aの片方の脚部20に、係合を人為的に解除する以外の外力(内側へ押圧する力)が加わると、横ずれ規制片30が無い場合、雄部材Aが幅方向他方側へ変位される。すると、他方の脚部20の根本部分が雌部材Bの側壁40Cに当接し、他方の脚部20が内側へ弾性変形され、その結果、両脚部20の先端に設けられた係合部25が被係合部46から外れて雄部材Aが雌部材Bから外れてしまう事態も想定される。しかし、本実施形態によれば、雌部材Bの突条48が雄部材Aの横ずれ規制片30に形成された係合溝32に嵌り込んでいるため、雄部材Aが雌部材Bに対して幅方向へ移動するのが規制され、雄部材Aが雌部材Bから外れるのが防止される。
【0033】
ところで、雄部材Aを雌部材Bの差込口42から収容空間43内に差し込む際、雌部材Bの軸線(ガイド溝47が延びる方向の軸線)に対して、雄部材Aの差込方向がずれていると、例えば、雌部材Bの軸線に対して、雄部材Aの差込方向軸線が一致していないか、あるいは、図5に示すように、雄部材Aの差込方向が傾いていると、雄部材Aの係合部25が雌部材Bのガイド溝47に一致しない。
このような状態では、雄部材Aの一対の脚部20の先端表裏面に突出して設けられた係合部25が、雌部材Bの差込口42に形成された誘導部61に当接される。つまり、表壁40Aの差込口42側に形成された誘導部61から裏壁40Bの差込口42側に形成された誘導部61までの寸法H2が、脚部20の先端表裏面にそれぞれ突出して設けられた表面側係合部25と裏面側係合部25との先端間の寸法H3より小さい寸法に形成されているから、雄部材Aの差込方向が、雌部材Bの軸線に対してずれた状態で差し込まれると、係合部25が誘導部61に当接される。
【0034】
また、両側端面に形成された誘導部61の間隔が差込口42側の端面からガイド溝47に向かうに従って次第に狭くなる形状に形成されているから、誘導部61によって、係合部25がガイド溝47に誘導される。つまり、雌部材Bの軸線に対して、雄部材Aの差込方向が一致するように、雄部材Aの姿勢が矯正される。このとき、脚部20の先端表裏面にそれぞれ突出して設けられた表面側係合部25と裏面側係合部25との先端間の寸法H3が、表壁40Aの内面に形成されたガイド溝47の溝底と裏壁40Bの内面に形成されたガイド溝47の溝底との間の寸法H1より小さい寸法に形成されているから、係合部25がガイド溝47内に案内、挿入される。
従って、雌部材Bの軸線に対して、雄部材Aの差込方向がずれていても、雄部材Aを雌部材Bに対して、途中でつかえることなく確実に差込操作できる。
【0035】
とくに、誘導部61が、ガイド溝47を挟んだ差込口42の両側端面に形成されているから、雄部材Aの差込方向が、雌部材Bの軸線に対して幅方向へずれていても、あるいは、雌部材Bの軸線に対して幅方向のいずれの方向へ傾いて差し込まれても、雄部材Aの係合部25が雌部材Bの差込口42両側端面に形成された誘導部61に当接するので、これらの誘導部61によって雄部材Aの係合部25をガイド溝47に誘導することができる。
【0036】
また、雌部材Bの突き合わせ面に拡開部42Aが形成され、この拡開部42Aの中央にガイド溝47が、両側に誘導部61が形成されているから、この拡開部42Aを目安として、この拡開部42Aに雄部材Aの脚部20を差し込めば、脚部20の係合部25を拡開部42Aの両側に形成された誘導部61によって拡開部42Aの中央に形成されたガイド溝47まで誘導させることができる。
【0037】
しかも、差込口42において誘導部61が形成された部分、つまり、差込口42の左右両側部分は、差込口42の中央部分よりも雌部材Bの表裏方向の厚みが厚くなっている。この厚肉となった部分はガイド溝47の両側に沿って雌部材Bの内部に向けて延びているため、雌部材Bの左右両側に形成した開口部45の周辺部分の肉厚も厚くなり、開口部45の周辺部分が補強され、強度を高めることができる利点がある。
【0038】
なお、雄部材Aを雌部材Bから外すには、雌部材Bの脚部用開口部45から突出している脚部20を内側へ押圧すると、雄部材Aの脚部20が内側に弾性変形される。
すると、係合部25が被係合部46から外れるから、この状態において、雄部材Aを雌部材Bから引き抜くと、雄部材Aを雌部材Bから外すことができる。
【0039】
<第2実施形態>
図7は第2実施形態のバックルの分離状態を示す分解斜視図、図8は同バックルの分離状態を示す一部破断の平面図、図9は図8のIX−IX線断面図、図10は同バックルの係合状態を示す一部破断の平面図、図11は雌部材に対して雄部材が傾いて差し込まれる状態を示す斜視図、図12は図11の状態を示す一部破断の平面図である。なお、これらの図の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0040】
(構成)
第2実施形態のバックルは、雄部材Aにおいて、突出部14、脚部20および係合部25の形状が、また、雌部材Bにおいて、拡開部42Aおよび被係合部46の形状が、第1実施形態とはそれぞれ異なる。
【0041】
第2実施形態における突出部14は、枠フレーム12のうち脚部20が設けられた枠材12Aが、脚部20の突出方向へ突出する形状に湾曲形成されている。つまり、枠材12Aの両端部よりも中央部が脚部20の突出方向へ向かって突出した略V字状に形成されている。
【0042】
第2実施形態における脚部20は、中央のガイド脚片22が省略され、一対のガイド脚片22の内側面間は、弾性を有する連結帯23によって連結されている。連結帯23は、枠材12Aへ接近する方向へ凸状に湾曲した逆U字形状を呈し、一対のガイド脚片22が所定以上外側へ変形するのを阻止し、脚部20に過度の引張力(外側への引張力)が加わった時に脚部20の破損を防止する役目を果たす。
【0043】
第2実施形態における係合部25は、一対の脚部20のガイド脚片22の先端表裏面に突出して形成された略五角形状の突起25Aによって形成されている。
【0044】
第2実施形態における拡開部42Aは、差込口42を形成する表壁40Aおよび裏壁40Bの中央部分が内部へ向かって略V字状に窪んだ形状に形成されている。第2実施形態でも、拡開部42Aの中央位置にガイド溝47が開口し、ガイド溝47を挟んだ両側位置に誘導部61が設けられているから、第2実施形態における誘導部61は、差込口42からガイド溝47へ向かうに従って次第に狭くなるテーパ形状に形成されている。
第2実施形態における被係合部46は、各係合部25に対応して略五角形状の凹部46Aとして形成されている。表壁40Aに形成された凹部46Aと裏壁40Bに形成された凹部46Aとは、それぞれ表壁40A、裏壁40Bの外表面に開口されている。
【0045】
(作用・効果)
第2実施形態のバックルにおいても、第1実施形態で述べたのと同様な作用効果が期待できる。
すなわち、雄部材Aを雌部材Bの差込口42から収容空間43内に差し込む際、雌部材Bの軸線(ガイド溝47が延びる方向の軸線)に対して、雄部材Aの差込方向がずれていると、例えば、図11に示すように、雄部材Aの差込方向が傾いていると、雄部材Aの係合部25が雌部材Bのガイド溝47に一致しない。
【0046】
このような状態では、雄部材Aの一対の脚部20の先端表裏面に突出して設けられた係合部25が、雌部材Bの差込口42に形成された誘導部61に当接される。すると、この誘導部61によって、係合部25が雌部材Bのガイド溝47に誘導される。つまり、雌部材Bの軸線に対して、雄部材Aの差込方向が一致するように、雄部材Aの姿勢が矯正されるから、このまま雄部材Aを雌部材Bに差し込んでいけば、係合部25は、ガイド溝47によって被係合部46まで案内され、その被係合部46に係合される。従って、雌部材Bの軸線に対して、雄部材Aの差込方向がずれていても、雄部材Aを雌部材Bに対して、途中でつかえることなく確実に差込操作できる。
【0047】
<変形例の説明>
なお、本発明は、上記実施形態で説明した構造のバックルに限定されるものでなく、次のような変形例も含む。
【0048】
上記実施形態では、雌部材Bの表壁40Aおよび裏壁40Bの差込口42側に、円弧状またはV字状に窪んだ拡開部42Aを形成し、この拡開部42Aの中央位置にガイド溝47を開口し、かつ、両側に誘導部61を形成したが、拡開部42Aについては、必ずしも設けなくてもよい。つまり、雌部材Bの差込口42に誘導部61が形成されていればよい。このようにすれば、つまり、雌部材Bに拡開部42Aを形成しなければ、雌部材Bの強度を高めることができる。
【0049】
また、誘導部61の形状についても、上記各実施形態で述べた拡開部42Aの円弧形状の一部を構成する形状、あるいは、V字状の一部を構成するテーパ形状に限らず、他の形状でもよい。要するに、雄部材Aと係合部25が当接し、雄部材Aの押し込み力によって、当接した係合部25をガイド溝47へ案内できる形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0050】
上記実施形態では、雄部材Aおよび雌部材Bにそれぞれ紐取付部、つまり、紐取付孔11を有する枠フレーム12や紐取付部41を形成したが、雌部材Bについては、紐取付部41がなくてもよい。つまり、雌部材Bの雌部材本体40を直接他の部材に固定するようにしてもよい。
また、雌部材Bの射出成形時に、紐状部材の端部を雌部材本体40の紐取付部41に一体的に固定するようにしてもよい。つまり、紐状部材の端部を雌部材Bの射出成形時にインサート成形して一体成形するようにしてもよい。
【0051】
また、紐状部材としては、帯状のベルトに限らず、幅がない細い紐、例えば、丸紐などであってもよい。この際、雄部材Aまたは雌部材Bに細紐(丸紐)などが通る程度の紐挿通孔を形成し、この紐挿通孔に細紐(丸紐)を挿通して紐挿通孔から突出した細紐(丸紐)の先端に結び目を作って、抜け止めするようにしてもよい。
【0052】
以上、本発明に関して、好適な実施形態および各種の変形例を挙げたが、これらを適宜組み合わせて構成してもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、例えば、バッグ類のベルトの連結、離脱用のバックルとして好適であるが、その他どのような用途にも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態のバックルの分離状態を示す分解斜視図。
【図2】前記第1実施形態においいて、バックルの分離状態を示す一部破断の平面図。
【図3】図2のIII−III線断面図。
【図4】前記第1実施形態において、バックルの係合状態を示す一部破断の平面図。
【図5】前記第1実施形態において、雄部材が雌部材に差し込まれる際の斜視図。
【図6】図5の状態を示す一部破断の平面図。
【図7】本発明の第2実施形態のバックルを示す分解斜視図。
【図8】前記第2実施形態において、バックルの分離状態を示す一部破断の平面図。
【図9】図8のIX−IX線断面図。
【図10】前記第2実施形態において、バックルの係合状態を示す一部破断の平面図。
【図11】前記2実施形態において、雄部材が雌部材に差し込まれる際の斜視図。
【図12】図11の状態を示す一部破断の平面図。
【符号の説明】
【0055】
1…バックル、14…突出部、20…脚部、25…係合部、40…雌部材本体、40A…表壁、40B…裏壁、40C…側壁、42…差込口、42A…拡開部、43…収容空間、46…被係合部、47…ガイド溝、61…誘導部、A…雄部材、B…雌部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄部材Aと、この雄部材Aが差込係合する雌部材Bとを備え、
前記雄部材Aは、紐状部材を取り付け可能な基部10と、この基部10から突出形成された一対の脚部20と、この各脚部20の先端表裏面に突出して設けられた係合部25とを有し、
前記雌部材Bは、前記雄部材Aが差し込まれる差込口42およびこの差込口42から差し込まれた雄部材Aの脚部20を収容する収容空間43を有する筒状の雌部材本体40と、この雌部材本体40の収容空間43内に形成され前記雄部材Aの前記係合部25が係合する被係合部46と、前記収容空間43内に形成され前記係合部25を前記被係合部46に案内するガイド溝47とを有するバックルにおいて、
前記雌部材Bの前記差込口42には、前記雄部材Aの係合部25と当接して、この係合部25を前記ガイド溝47に誘導する誘導部61が形成されている、ことを特徴とするバックル。
【請求項2】
前記誘導部61は、前記差込口42において、前記ガイド溝47を挟んだ両側端面に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のバックル。
【請求項3】
前記雌部材本体40は、表壁40A、裏壁40Bおよびこれらを連結する側壁40Cを有する筒状に形成され、
前記被係合部46は、前記表壁40Aおよび裏壁40Bに形成され、
前記ガイド溝47は、前記表壁40Aおよび裏壁40Bのそれぞれの内面に、前記差込口42から前記被係合部46に向かうに従って溝幅が次第に狭くなるように形成され、
前記誘導部61は、前記表壁40Aおよび裏壁40Bの前記差込口42側端面において、前記ガイド溝47を挟んだ両側端面に形成され、この両側端面に形成された前記誘導部61の間隔が前記差込口42側端面から前記ガイド溝47に向かうに従って次第に狭くなる形状に形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載のバックル。
【請求項4】
前記表壁40Aの内面に形成されたガイド溝47の溝底と前記裏壁40Bの内面に形成されたガイド溝47の溝底との間の寸法をH1、前記表壁40Aの前記差込口42側に形成された前記誘導部61から前記裏壁40Bの前記差込口42側に形成された前記誘導部61までの寸法をH2、前記脚部20の先端表裏面にそれぞれ突出して設けられた表面側係合部25と裏面側係合部25との先端間の寸法をH3としたとき、
H2<H3<H1
の関係に形成されている、ことを特徴とする請求項3に記載のバックル。
【請求項5】
前記雌部材Bと前記雄部材Aとは、突き合わせ面によって嵌合され、
前記雌部材Bの突き合わせ面は、前記差込口42から雄部材Aの差込方向へUまたはV字形状に窪んだ拡開部42Aを有し、この拡開部42Aの中央に前記ガイド溝47が形成され、かつ、両側に前記誘導部61が形成され、
前記雄部材Aの突き合わせ面は、前記拡開部42Aに嵌合する突出部14を有している、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のバックル。
【請求項1】
雄部材Aと、この雄部材Aが差込係合する雌部材Bとを備え、
前記雄部材Aは、紐状部材を取り付け可能な基部10と、この基部10から突出形成された一対の脚部20と、この各脚部20の先端表裏面に突出して設けられた係合部25とを有し、
前記雌部材Bは、前記雄部材Aが差し込まれる差込口42およびこの差込口42から差し込まれた雄部材Aの脚部20を収容する収容空間43を有する筒状の雌部材本体40と、この雌部材本体40の収容空間43内に形成され前記雄部材Aの前記係合部25が係合する被係合部46と、前記収容空間43内に形成され前記係合部25を前記被係合部46に案内するガイド溝47とを有するバックルにおいて、
前記雌部材Bの前記差込口42には、前記雄部材Aの係合部25と当接して、この係合部25を前記ガイド溝47に誘導する誘導部61が形成されている、ことを特徴とするバックル。
【請求項2】
前記誘導部61は、前記差込口42において、前記ガイド溝47を挟んだ両側端面に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のバックル。
【請求項3】
前記雌部材本体40は、表壁40A、裏壁40Bおよびこれらを連結する側壁40Cを有する筒状に形成され、
前記被係合部46は、前記表壁40Aおよび裏壁40Bに形成され、
前記ガイド溝47は、前記表壁40Aおよび裏壁40Bのそれぞれの内面に、前記差込口42から前記被係合部46に向かうに従って溝幅が次第に狭くなるように形成され、
前記誘導部61は、前記表壁40Aおよび裏壁40Bの前記差込口42側端面において、前記ガイド溝47を挟んだ両側端面に形成され、この両側端面に形成された前記誘導部61の間隔が前記差込口42側端面から前記ガイド溝47に向かうに従って次第に狭くなる形状に形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載のバックル。
【請求項4】
前記表壁40Aの内面に形成されたガイド溝47の溝底と前記裏壁40Bの内面に形成されたガイド溝47の溝底との間の寸法をH1、前記表壁40Aの前記差込口42側に形成された前記誘導部61から前記裏壁40Bの前記差込口42側に形成された前記誘導部61までの寸法をH2、前記脚部20の先端表裏面にそれぞれ突出して設けられた表面側係合部25と裏面側係合部25との先端間の寸法をH3としたとき、
H2<H3<H1
の関係に形成されている、ことを特徴とする請求項3に記載のバックル。
【請求項5】
前記雌部材Bと前記雄部材Aとは、突き合わせ面によって嵌合され、
前記雌部材Bの突き合わせ面は、前記差込口42から雄部材Aの差込方向へUまたはV字形状に窪んだ拡開部42Aを有し、この拡開部42Aの中央に前記ガイド溝47が形成され、かつ、両側に前記誘導部61が形成され、
前記雄部材Aの突き合わせ面は、前記拡開部42Aに嵌合する突出部14を有している、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のバックル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−61050(P2009−61050A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230675(P2007−230675)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]