説明

バッテリ冷却装置

【課題】組み立てが容易で、部品点数を低減でき、機械的強度に優れた小型化・軽量化されたバッテリ冷却装置を提供することを目的とする。
【解決手段】縁部が曲げられた一対の板と、前記一対の板に挟持されたヒートパイプと、前記一対の板上に載置されたバッテリモジュールとを備えたバッテリパックが、前記曲げられた縁部により、側面が形成されるように積重されたことを特徴とするバッテリ冷却装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを冷却する装置に関し、特に、電気推進車両に搭載されるバッテリ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気推進車両には、電源を供給するためのバッテリユニットが搭載されている。このバッテリユニット内には、複数のバッテリモジュールが収納されており、所定の容量が得られるよう構成されている。
【0003】
電気推進車両用のバッテリユニットは、氷点下の低温状態ではバッテリユニットの出力が低下することが知られている。一方、バッテリモジュールの充電時のようにバッテリユニットが高温状態に保持された場合には、容量の低下やバッテリモジュールの劣化などの可能性がある。そこで、バッテリユニットの温度管理は重要な課題となっている。しかし、バッテリユニットの小型軽量化を図りつつ所定の容量を得るために、バッテリユニット内には複数のバッテリモジュールが高密度に実装されており、放熱フィンなどを配置するスペースはほとんどない。
【0004】
このため、特許文献1では、バッテリユニットに冷却風導入口と排気口を設け、冷却風導入口を経てバッテリケース内に導入した冷却風を、バッテリモジュールとバッテリケース間の空気流通部に流すことにより、バッテリモジュールを冷却し、バッテリケース内の温まった空気を排気ファンによって排気口からバッテリケース外部に排出する冷却装置が提案されている。しかし、空気流通部の幅が極めて小さいことから空気流通部の通風抵抗が大きく、ファンの風量を確保するためには高出力のファンを使用する必要があるので、小型化、軽量化が困難であり、またファンの設置等、部品点数が多いという問題がある。
【0005】
一方、特許文献2では、バッテリモジュールを積層して配置するとともに、積層されたバッテリモジュール間にヒートパイプの加熱部を配置し、ヒートパイプの冷却部をケースに熱的に接続して加熱部に加えられた熱は冷却部を介してケースから放出する車両用バッテリパックが提案されている。しかし、このバッテリパックは、バッテリセモジュールを積層し、積層されたバッテリモジュール間に熱吸収部を所定間隔で配置しながらケース内に収納しなければならないので、組み立て作業が煩雑である。また、ヒートパイプ先端に形成されている冷却部は熱吸収部から露出し何ら保護手段が設けられていないので、ヒートパイプの凍結破壊が発生しやすい。さらに、バッテリパックの機械的強度を確保するためには、ケース及び熱吸収部の吸熱板を厚板とする必要があるので、小型化、軽量化が困難であり、製造コストの面で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−83656
【特許文献2】特開2007−257843
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、組み立てが容易で、部品点数を低減でき、機械的強度に優れた小型化・軽量化されたバッテリ冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、縁部が曲げられた一対の板と、前記一対の板に挟持されたヒートパイプと、前記一対の板上に載置されたバッテリモジュールとを備えたバッテリパックが、前記曲げられた縁部により、側面が形成されるように積重されたことを特徴とするバッテリ冷却装置である。すなわち、バッテリ冷却装置は、ヒートパイプを挟持した板とバッテリモジュールとが交互に積み重ねられ、またバッテリ冷却装置の側面は、バッテリパックの曲げられた縁部が積重されることで形成される。
【0009】
バッテリパックの板は、バッテリモジュールで発生した熱を吸収し、吸収した熱はヒートパイプの加熱部を介してヒートパイプの冷却部に伝達され、ヒートパイプの冷却部からバッテリ冷却装置の側面を構成する曲げられた縁部を介して外部に放出される。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記曲げられた縁部が対向していることを特徴とするバッテリ冷却装置である。この態様では、バッテリパックが積重されると、対向するように曲げられた縁部が鉛直方向に連なることで、バッテリ冷却装置の側面が形成される。
【0011】
本発明の第3の態様は、前記曲げられた縁部に段差部が設けられていることを特徴とするバッテリ冷却装置である。この態様では、バッテリパックは、その下側に隣接して配置されている別のバッテリパックの段差部に載せられた状態で積み重ねられている。
【0012】
本発明の第4の態様は、前記曲げられた縁部が折り返されていることを特徴とするバッテリ冷却装置である。すなわち、曲げられた縁部の上部が下方へと折り返されることで曲げられた縁部が補強されている。
【0013】
本発明の第5の態様は、前記曲げられた縁部が、その下側に隣接して配置されている別のバッテリパックの曲げられた縁部に掛止されるための掛止機構を備えることを特徴とするバッテリ冷却装置である。
【0014】
本発明の第6の態様は、前記積重されているバッテリパックのうち、最下部に配置されたバッテリパックの曲げられた縁部に、放熱フィンが設けられていることを特徴とするバッテリ冷却装置である。
【0015】
本発明の第7の態様は、前記積重されているバッテリパックが、前記曲げられた縁部によりバッテリ冷却装置収納用ケースと熱的に接続されているバッテリ冷却装置であって、前記積重されているバッテリパックごとに、前記バッテリ冷却装置収納用ケースとの接続箇所が異なることを特徴とするバッテリ冷却装置である。この態様では、バッテリ冷却装置は、バッテリ冷却装置収納用ケースに収容されている。そして、バッテリモジュールで発生した熱を吸収したバッテリパックの板は、ヒートパイプと曲げられた縁部を介してバッテリ冷却装置収納用ケースに吸収した熱を伝達し、バッテリ冷却装置収納用ケースの外面から外部に放出される。
【0016】
本発明の第8の態様は、前記一対の板の外側底面に、凹部が設けられ、前記一対の板の内側底面に、前記凹部と嵌合する突起が設けられていることを特徴とするバッテリ冷却装置である。本発明の第9の態様は、前記バッテリモジュールが、前記ヒートパイプに当接した状態で該ヒートパイプ上に載置されていることを特徴とするバッテリ冷却装置である。本発明の第10の態様は、前記ヒートパイプのうち少なくとも1つが、前記バッテリモジュールの上面側に位置する上部位と、前記バッテリモジュールの下面側に位置する下部位と、前記上部位及び下部位を連結する連結部位とで平面視U字状に形成されていることを特徴とするバッテリ冷却装置である。
【0017】
本発明の第11の態様は、電気推進車両に搭載されることを特徴とするバッテリ冷却装置である。なお、本明細書中、「上」とは、バッテリパックの構成要素である一対の板のうち曲げられた縁部を除いた部分である底面部を基準にして、同じバッテリパックの構成要素であるバッテリモジュールが配置されている側を意味し、「下」とは、その反対側を意味する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の態様によれば、バッテリパックを積重させればよいので、組み立てが容易である。また、バッテリパックを積重させることでバッテリ冷却装置の側面が形成されるので、ケースに収納しなくてもよく、部品点数を低減できる。このように、組み立てが容易で部品点数を低減できるので、製造コストを抑えることができる。ヒートパイプは一対の板に挟持され、さらにバッテリモジュールと板は交互に配置されるので、機械的強度に優れ、ヒートパイプ及びバッテリモジュールを確実に保護できる。このように、機械的強度に優れるので、板の厚さを薄肉化でき、小型化・軽量化が可能である。さらに、ヒートパイプ先端部位の冷却部は、積重された板で保護されているので、ヒートパイプの凍結破壊を防止できる。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、縁部の一対が対向するように曲げられているので、より組み立てが容易である。
【0020】
本発明の第3の態様によれば、曲げられた縁部に段差部が設けられているので、バッテリパックが積重されてもバッテリモジュール及びヒートパイプに加重負荷がかかるのを防止できる。
【0021】
本発明の第4の態様によれば、曲げられた縁部が折り返されることで曲げられた縁部の機械的強度がさらに補強されているので、ヒートパイプの冷却部の凍結破壊を確実に防止して、バッテリモジュールの出力をより安定化できる。
【0022】
本発明の第5の態様によれば、曲げられた縁部が、下側に隣接して配置されている別のバッテリパックの曲げられた縁部に掛止されるので、バッテリパックが積重されても、バッテリモジュール及びヒートパイプに加重負荷がかかるのを防止できる。
【0023】
本発明の第6の態様によれば、放熱フィンが設けられているので、放熱効率がさらに向上する。さらに、放熱フィンは、積重されているバッテリパックのうち最下部に配置されたバッテリパックに設けられているので、放熱フィンが構造上の障害とはならず組み立てが容易である。
【0024】
本発明の第7の態様によれば、バッテリパックごとにバッテリ冷却装置収納用ケースとの熱的接続箇所が異なるので、均一な放熱が可能となって放熱効率に優れている。
【0025】
本発明の第8の態様によれば、板の外側底面に凹部、板の内側底面に凹部と嵌合する突起が設けられているので、バッテリパックを積重させる際の位置決めが容易であり、また積重されたバッテリパックの位置ずれを防止できる。本発明の第9の態様によれば、一対の板の一部を省略することで、バッテリモジュールが、ヒートパイプに当接した状態で載置されているので、より軽量化が可能であり、放熱効率もより向上する。本発明の第10の態様によれば、ヒートパイプの数量を減らすことができるので、部品点数をより減らすことができ、生産効率に優れる。
【0026】
本発明の第11の態様によれば、電気推進車両に搭載することで、バッテリモジュールの温度管理が容易となり、電気推進車両の出力を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態例に係るバッテリ冷却装置であって蓋部を取り外した状態の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態例に係るバッテリ冷却装置の側面図である。
【図3】本発明の実施形態例に係るバッテリ冷却装置を構成するバッテリパックの側面図である。
【図4】本発明の実施形態例に係るバッテリ冷却装置の角部を拡大した部分側面図である。
【図5】本発明の第2実施形態例に係るバッテリ冷却装置を構成するバッテリパックの側面図である。
【図6】(a)図は、本発明の第3実施形態例に係るバッテリ冷却装置を構成する、掛止機構を備えたバッテリパックの側面図、(b)図は、掛止機構の掛止状態を説明する拡大図である。
【図7】位置合わせ手段を備えたバッテリパックが積重された状態を説明する断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態例1に係るバッテリ冷却装置の分解斜視図である。
【図9】(a)図は、本発明の他の実施形態例2に係るバッテリ冷却装置であって蓋部を取り外した状態の側面図、(b)図は、バッテリパックの部分拡大図である。
【図10】(a)図は、本発明の他の実施形態例3に係るバッテリ冷却装置を構成するバッテリパックの概略を示す部分平面図、(b)図は、本発明の他の実施形態例3に係るバッテリ冷却装置の概略を示す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の実施形態例に係るバッテリ冷却装置について図面を用いながら説明する。図1及び図2に示すように、本発明の実施形態例に係るバッテリ冷却装置1は、同じ寸法・形状である複数のバッテリパック10が鉛直方向に積み重ねられて構成されており、下側のバッテリパック10内部に上側のバッテリパック10が収容されて使用される。そして、バッテリパック10が鉛直方向に積み重ねられることで、バッテリパック10の側面部17も鉛直方向に連なってバッテリ冷却装置1の側面2が形成される。バッテリ冷却装置1の側面2は、バッテリパック10の側面部17内側面と、その上側に積重される別のバッテリパック10の側面部17外側面とが面接するように配置されている。このとき、外側面が面接している側面部17の一部が、内側面が面接している側面部17から上方に突出した状態となって、側面部17が鉛直方向に連なる。
【0029】
また、図2に示すように、それぞれのバッテリパック10にはヒートパイプ14が備えられている。そして、最上部には、バッテリモジュールが載置されていないバッテリパック、すなわち中空プレート13とヒートパイプ14からなる蓋部3が配置されている。なお、図1に示すように、本実施形態例では、1枚の中空プレート13内部に断面長方形状のヒートパイプ14が2本収容されている。
【0030】
このように、バッテリ冷却装置1は、バッテリパック10が積重した構造なので、組み立てが容易である。また、バッテリパック10を積重させることでバッテリ冷却装置1の側面2が形成されるので、ケースへの収納を省略することが可能となり、部品点数を低減できる。
【0031】
図3に示すように、前記バッテリパック10は、バッテリモジュール11と、一対の板12、12´からなる中空プレート13と、ヒートパイプ14とから構成されている。板12と板12´は、相互に略平行に配置されており、板12上には、バッテリモジュール11が置かれている。また、必要に応じて、バッテリモジュール11の位置ずれを防止するために、図示しない所定の固定手段にて板12上にバッテリモジュール11を固定してもよい。固定手段には、例えば、板12表面に、バッテリモジュール11と同じ平面形状であってバッテリモジュール11の厚さ寸法よりも小さい深さ寸法を有する凹部位を設ける態様が挙げられる。この固定手段では、バッテリモジュール11を前記凹部位に嵌合させることによりバッテリモジュール11を板12上に固定する。
【0032】
中空プレート13は、その対向する2つの縁部が鉛直方向に対しやや外側方向に同じ角度で折り曲げられることで、バッテリパック10の側面部17が形成されている。すなわち、中空プレート13は、90°未満の所定角度に折り曲げた2つの側面部17(バッテリパック10の側面部17となる)と折り曲げられた縁部以外からなる底面部18とを有している。バッテリモジュール11は、底面部18の所定位置、本実施形態例では底面部18の中央部に載置、固定され、中空プレート13と熱的に接続されている。
【0033】
一対の板12、12´は、その先端部にて所定の結合手段(本実施形態例ではネジ止め)で連結されて中空プレート13が形成されている。また、板12´の両端部にはヒートパイプ14の厚さと同じ寸法の段差が設けられており、この一対の板12、12´により、ヒートパイプ14が挟持されている。すなわち、ヒートパイプ14は板12、12´と熱的に接続されており、また、ヒートパイプ14は中空プレート13内部に収容された状態で、一方の側面部17から底面部18を通り他方の側面部17へと延びる構成となっている。ただし、図1に示すように、一対の板12、12´のうち、バッテリモジュール11を載置している板12については、所定角度で折り曲げられている両角部に、矩形状の切欠き部19が形成され、ヒートパイプ14の一部が中空プレート13から露出した態様となっている。この切欠き部19は、ヒートパイプ14の曲げを緩和して、ヒートパイプ14の機械的強度を維持するとともに、円滑に熱輸送をするためである。
【0034】
また、図3に示すように、ヒートパイプ14のうち、板12を介してバッテリモジュール11と接している部位は、熱を吸収する加熱部15であり、加熱部15から両側面部17へと伸びる部位は、熱を放出する冷却部16である。これにより、ヒートパイプ14は、加熱部15で吸収した熱を冷却部16に伝達する熱輸送系を構成する。
【0035】
バッテリモジュール11で発生した熱は、板12を介してヒートパイプ14の加熱部15に伝達される。加熱部15が吸収した熱は、冷却部16に伝達され、さらに前記冷却部16と熱的に接続されたバッテリパック10の側面部17から外部に放出できるよう構成されている。このとき、加熱部15が吸収した熱は、切欠き部19から露出している冷却部16からも外部に放出される。なお、板12、12´は、熱伝導性の良い部材で構成されており、本実施形態例では、軽量化に優れる点でアルミ板によって構成されている。また、本実施形態例では、ヒートパイプ14の部材は銅で構成され、内部の作動液には水を使用している。
【0036】
図4に示すように、バッテリパック10には、その側面部17と底面部18との角部に段差部20が設けられている。段差部20は、バッテリモジュール11を載置している板12の前記角部をクランク状に折り曲げることで形成されている。バッテリパック10の中空プレート13の底面部18が、下側に隣接した別のバッテリパック10の段差部20に当接した状態で積み重ねられている。また、段差部20はバッテリモジュール11の厚みと同じ高さ寸法を有しているので、バッテリ冷却装置1の中空プレート13間には、バッテリモジュール11の厚さ寸法と同じ寸法の間隔が形成されている。
【0037】
従って、段差部20は、上側に積まれた別のバッテリパック10によってバッテリモジュール11が潰されるのを防止する。また、バッテリモジュール11の上面は、上側に積まれた別のバッテリパック10の中空プレート13の下面側、すなわち板12´と面接するので、バッテリモジュール11は上下両面からの冷却が可能となり、冷却効率がより向上する。
【0038】
また、バッテリ冷却装置1は、バッテリモジュール11と中空プレート13が交互に配置されるので、機械的強度に優れ、ヒートパイプ14及びバッテリモジュール11を確実に保護できる。さらに、機械的強度に優れることから、板12、12´の厚さを薄肉化でき、バッテリ冷却装置1の小型化・軽量化が可能である。
【0039】
本実施形態例では、必要に応じて、放熱効率をさらに高めるために、バッテリ冷却装置1の側面2、例えば最下部に配置されたバッテリパック10の側面部17に相当する位置に、適宜放熱フィン(図示せず)を設けてもよい。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態例に係るバッテリ冷却装置について説明する。図5に示すように、本発明の第2実施形態例に係るバッテリ冷却装置では、さらに補強部22を備えたバッテリパック10を使用しており、このバッテリパック10を鉛直方向に積重してバッテリ冷却装置1が形成される。つまり、ヒートパイプ14の冷却部16の凍結破壊を確実に防止するために、側面部17を構成している板12の曲げられた縁部及び板12´の曲げられた縁部のうち、一方の曲げられた縁部について、その上半部を下方に折り返すことで補強部22を形成している。補強部22が側面部17を被覆することで、側面部17の機械的強度が増して、側面部17に収容されているヒートパイプ14の冷却部16を補強・保護している。
【0041】
第2実施形態例では、補強部22を設けるために、板12または板12´のいずれかを他方よりも長尺とする。図5では、板12´が板12よりも長尺であり、板12´の曲げられた縁部の上半部を下方に折り返すことで補強部22が設けられている。また、補強部22の先端部をクランク状に折り曲げて段差部20としている。補強部22の構成を上記のようにすることで部品点数を低減できる。この段差部20は、バッテリ冷却装置1の中空プレート13間に、バッテリモジュール11の厚さ寸法と同じ寸法の間隔が形成されるよう位置づけられている。また、必要に応じて、カシメ等、所定の固定手段により補強部22を側面部17に固定してもよい。
【0042】
次に、本発明の第3実施形態例に係るバッテリ冷却装置について説明する。図6(a)に示すように、本発明の第3実施形態例に係るバッテリ冷却装置は、段差部20の代わりに、所定寸法の突起部21からなる掛止機構を設けたバッテリパック10を使用しており、このバッテリパック10を鉛直方向に積重してバッテリ冷却装置1が形成される。掛止機構とは、例えば、側面部17の上端に設けられた突起部21(図6(a)の態様ではカール曲げ状の突起部)であって、下側に隣接して配置されている別のバッテリパック10の側面部17上端に掛止されるための機構である。下側に隣接して配置されているバッテリパック10の側面部17上端にも、同様の突起部21が設けられている。
【0043】
従って、図6(b)に示すように、バッテリパック10が鉛直方向に積み重ねられた状態では、上側の突起部21が下側の別の突起部21に当接して、上側のバッテリパック10が下側の別のバッテリパック10に掛止される。このとき、突起部21の上下方向の寸法を調節することで、バッテリ冷却装置1の中空プレート13間に、バッテリモジュール11の厚さ寸法と同じ寸法の間隔を形成できる。なお、必要に応じて、この突起部21は、上記した段差部20とともに設けてもよい。
【0044】
また、上記各実施形態例では、図7に示すように、必要に応じて、さらに、中空プレート13の底面部18の外側、すなわち板12´の外側表面に凹部30を、段差部20の上面、すなわち板12の外側表面であって前記凹部30に対応する位置に、前記凹部30と嵌合可能な突起31を設けてもよい。ここでは、バッテリ冷却装置1の中空プレート13間に、バッテリモジュール11の厚さ寸法と同じ寸法の空間を形成させるために、突起31の高さは、バッテリモジュール11の厚さ寸法と凹部30の深さ寸法とを加えた寸法となっている。凹部30を底面部18に、凹部30に嵌合可能な突起31を段差部20に設けることで、バッテリパック10の位置合わせが容易となり、確実に鉛直方向に積重できる。またバッテリパック10の位置ずれも防止できる。
【0045】
次に、本発明の各実施形態例に係るバッテリ冷却装置の使用方法について説明する。バッテリ冷却装置1は、例えば、電気推進車両のフロアパネルの下側に配置される。フロアパネル下側への配置にあたり、バッテリ冷却装置1の側面2から外部に放熱する構成としてもよく、必要に応じて、バッテリ冷却装置1の側面2を車体等、車両を構成する他の構造物に熱的に接続して、熱を前記他の構造物に伝達し、放熱効率をさらに高めることもできる。
【0046】
次に、本発明の他の実施形態例に係るバッテリ冷却装置について説明する。上記各実施形態例では、いずれのバッテリパック10も、中空プレート13の対向する2つの縁部が鉛直方向に対しやや外側方向に同じ角度で折り曲げられて、バッテリパック10の側面部17、ひいてはバッテリ冷却装置1の側面2が形成されていたが、これに代えて、それぞれの中空プレートについて、その縁部のうちの一つを略鉛直方向に折り曲げることで、バッテリパックの側面部、ひいてはバッテリ冷却装置の側面を形成してもよい。
【0047】
つまり、他の実施形態例1に係るバッテリ冷却装置1´は、図8に示すように、4つのバッテリパック10´−1、10´−2、10´−3、10´−4が鉛直方向に積重されている。そして、バッテリパック10´−1、10´−2、10´−3、10´−4の中空プレート13´−1、13´−2、13´−3、13´−4の縁部のうち、一箇所の縁部外側に、該縁部の半分の長さであって所定幅を有する板状の延出部が設けられており、それぞれの延出部が略鉛直方向に折り曲げられた構造となっている。ここでは、中空プレート13´−1、13´−2の各延出部は上方に折り曲げられて側面部17´−1、17´−2を形成し、中空プレート13´−3、13´−4の各延出部は下方に折り曲げられて側面部17´−3、17´−4を形成している。そして、側面部17´−1と側面部17´−2が連設してバッテリ冷却装置1´の一方の側面2´を形成し、側面部17´−3と側面部17´−4が連設して、前記一方の側面2´に対向する他方の側面2´を形成する。中空プレート13´−1、13´−2、13´−3、13´−4がバッテリモジュール11から吸収した熱は、ヒートパイプ14を介して側面2´に伝達されて、側面2´から外部に放出される。
【0048】
上記したバッテリ冷却装置1´は、ケース(図示しない)に収納して使用してもよい。側面部17´−1、17´−2、17´−3、17´−4を前記ケースの側面に面接させて、バッテリ冷却装置1´とケースを熱的に接続させると、積重されているそれぞれのバッテリパック10´−1、10´−2、10´−3、10´−4は、前記ケースの異なる部位にて熱的に接続される構造となる。従って、この態様では、各バッテリパック10´−1、10´−2、10´−3、10´−4から前記ケースへの均一な熱の伝達が可能となるので、放熱効率に優れている。
【0049】
他の実施形態例2に係るバッテリ冷却装置101は、図9(a)に示すように、中空プレート13に代えて、放熱プレート119を用いている。すなわち、バッテリモジュール11が載置される部位については、上記各実施形態例の底面部18が設けられておらず、ヒートパイプ14がバッテリパック110から露出した態様となっている。従って、バッテリモジュール11が、2本のヒートパイプ14に当接した状態で該ヒートパイプ14上に載置されている。
【0050】
このバッテリ冷却装置101は、複数のバッテリパック110が鉛直方向に積み重ねられて構成されている。バッテリパック110は、平面部118と該平面部118に対し上記各実施形態例と同様の所定角度にて曲げられた側面部117から形成された2つの放熱プレート119と、2つの放熱プレート119間に配置されたバッテリモジュール11と、2つの放熱プレート119を連結し、かつバッテリモジュール11の下面と当接した2本のヒートパイプ14とから構成されている。放熱プレート119の側面部117は、上記各実施形態例の中空プレート13の側面部17と同じ構成であり、放熱プレート119の側面部117が鉛直方向に積み重ねられることでバッテリ冷却装置101の側面が形成される。また、バッテリモジュール11の下面と当接しているヒートパイプ14は、上記各実施形態例と同一構成のヒートパイプであり、一方の放熱プレート119内から延出して、他端が他方の放熱プレート119内へと収容されている。2本のヒートパイプ14はいずれも断面長方形状である。
【0051】
図9(b)に示すように、平面部118の端部には、バッテリモジュール11の角部と嵌合可能な凹条部120が形成されている。この凹条部120は、バッテリモジュール11をバッテリパック110に固定しつつ、ヒートパイプ14にバッテリモジュール11の加重負荷がかかるのを抑えている。このバッテリ冷却装置101には上記各実施形態例の底面部18が設けられていないので、より軽量化されている。
【0052】
他の実施形態例3に係るバッテリ冷却装置201は、図10(a)に示すように、図9にて示したヒートパイプ14に代えて、バッテリモジュール11の上面に位置する上部位240と該バッテリモジュール11の下面に位置する下部位241と前記上部位240と前記下部位241を連結する連結部位242とで平面視略U字状またはU字状に形成されているヒートパイプ214を用いている。すなわち、ヒートパイプ214の連結部242は鉛直方向に対して斜めに配置されることで上下部位(240、241)を連結し、1本のヒートパイプ214にて1つのバッテリモジュール11の冷却を可能としている。図10(a)では放熱プレート119を使用していないが、連結部位242を放熱プレート119の形状に対応した形状に加工して、放熱プレート119内に収容してもよい。
【0053】
図10(b)に示すように、バッテリ冷却装置201は、複数のバッテリパック210が鉛直方向に積み重ねられて構成されている。バッテリパック210のヒートパイプ214のうち下部位241は、バッテリパック210から露出した状態で、一方の端部から他方の端部へと延びる構成となっており、下部位214は、バッテリモジュール11の下面に当接し加熱部となっている。ヒートパイプ214のうち連結部位242は、バッテリモジュール11と接しておらず冷却部となっている。そして、ヒートパイプ214のうち上部位240は、他方の端部から一方の端部へと延びる構成となっており、バッテリモジュール11の上面に当接し加熱部となっている。図10の態様では、放熱効率を均等化するために、所定のバッテリパック210には、上記した各実施形態例と同様の連結部を有しないヒートパイプ14も配置されている。ヒートパイプ214及びヒートパイプ14は、断面楕円形状である。このバッテリ冷却装置201は、ヒートパイプの数量を減らすことができるので、部品点数をより減らすことができる。
【0054】
また、上記各実施形態例では、バッテリ冷却装置1は、バッテリパック10を3層に積み重ね、バッテリ冷却装置1´は、バッテリパック10´を4層に積み重ねたが、必要とする出力に応じて、適宜数量の変更が可能である。また、上記第1、2、3の各実施形態例では、バッテリ冷却装置1の中空プレート13間に、バッテリモジュール11の厚さ寸法と同じ寸法の空間が形成されることで、バッテリモジュール11の上面が、上側に積まれた別のバッテリパック10の中空プレート13下面と面接していたが、これに代えて、中空プレート13間にバッテリモジュール11の厚さ寸法よりも大きい空間を形成させて、バッテリモジュール11の上面が、上側に積まれた別のバッテリパック10の中空プレート13下面と面接していない態様としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
バッテリ冷却装置の組み立てが容易であり、小型化、軽量化が可能なので、特に、電気推進車両の分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0056】
1、1´、101、210 バッテリ冷却装置
2、2´ 側面
10、10´、110、210 バッテリパック
11 バッテリモジュール
12、12´ 板
14、214 ヒートパイプ
20 段差部
21 突起部
22 補強部
30 凹部
31 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁部が曲げられた一対の板と、前記一対の板に挟持されたヒートパイプと、前記一対の板上に載置されたバッテリモジュールとを備えたバッテリパックが、前記曲げられた縁部により、側面が形成されるように積重されたことを特徴とするバッテリ冷却装置。
【請求項2】
前記曲げられた縁部が、対向していることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項3】
前記曲げられた縁部に、段差部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項4】
前記曲げられた縁部が、折り返されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項5】
前記曲げられた縁部が、その下側に隣接して配置されている別のバッテリパックの曲げられた縁部に掛止されるための掛止機構を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項6】
前記積重されているバッテリパックのうち、最下部に配置されたバッテリパックの曲げられた縁部に、放熱フィンが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項7】
前記積重されているバッテリパックが、前記曲げられた縁部によりバッテリ冷却装置収納用ケースと熱的に接続されているバッテリ冷却装置であって、
前記積重されているバッテリパックごとに、前記バッテリ冷却装置収納用ケースとの接続箇所が異なることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項8】
前記一対の板の外側底面に、凹部が設けられ、前記一対の板の内側底面に、前記凹部と嵌合する突起が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項9】
前記バッテリモジュールが、前記ヒートパイプに当接した状態で該ヒートパイプ上に載置されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項10】
前記ヒートパイプのうち少なくとも1つが、前記バッテリモジュールの上面側に位置する上部位と、前記バッテリモジュールの下面側に位置する下部位と、前記上部位及び下部位を連結する連結部位とで平面視U字状に形成されていることを特徴とする請求項1または9に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項11】
電気推進車両に搭載されることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載のバッテリ冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−124025(P2011−124025A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278746(P2009−278746)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】