説明

バランス訓練装置

【課題】バランス訓練装置の小型化、安定化、揺動動作の円滑化等を図る。
【解決手段】被検者が搭乗し得る揺動板40、揺動板40を支持して揺動させる駆動機構、駆動機構を保持するフレーム10,20、制御手段80を備え、駆動機構として、略水平面内の異なる複数の方向に駆動力を発生する駆動源50,60、駆動源に連動して揺動板を異なる複数の方向に揺動させる揺動機構70を採用する。これにより、装置を低重心化でき、転倒を防止でき安定した状態で設置でき、又、被検者の乗降性が向上する。さらに、駆動機構が略水平面内の複数の異なる方向に駆動力を発生し、揺動機構がこれらの異なる方向の駆動力に連動して異なる複数の方向に揺動力を発生させるため、揺動板40を全周方向において円滑にかつ連続的に揺動させることができ、バランスに必要な平衡感覚、筋力等を効率よく訓練(発達、育成、強化、回復)させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が搭乗した揺動板を揺動させて、人の平衡感覚及び揺動に対処し得る筋力等の発達、育成、強化、回復等を行うことができ、あるいは、遊戯機としてバランス感覚を競い合うことのできるバランス訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバランス訓練装置としては、円形の基板、基板の中央に直立して設けられた第1エアシリンダー、第1エアシリンダーのロッドの中間に固着された上下可動板、上下可動板に設けられた第2エアシリンダー及び第3エアシリンダー、第1エアシリンダー、第2エアシリンダー及び第3エアシリンダーのそれぞれのロッドの先端に対して自在継手を介して連結された円形の揺動板、それぞれのエアシリンダーを駆動制御する制御手段等を備え、人が揺動板に搭乗した状態で、それぞれのエアシリンダーを上下駆動して揺動板を適宜傾斜さることにより、人の平衡機能の強化、維持、及び体力の鍛錬等を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この装置においては、鉛直方向に伸縮するエアシリンダーを採用しているため、装置を設置する床面等から揺動板までの高さが高くなり、人の乗り降りに不便であり、特に高齢者の介護訓練装置として適用するには好ましくない。また、上下方向に伸縮する3つのエアシリンダーのみで揺動板を傾斜させるため、揺動板を全周方向において円滑かつ連続的に揺動させるのは機械的にも制御ソフト的にも困難である。さらに、揺動板は中央に配置されたアクチュエータのみで支持されているため、人が揺動板に実際に搭乗した場合に揺動板が転倒する虞があり、機能上の安全性及び信頼性に問題がある。
【0003】
また、他のバランス訓練装置としては、人が搭乗する揺動板、揺動板の中央を自在継手を介して支持する支柱、揺動板の中央から離れた二箇所において玉軸受けにより連結された二つの連結棒、それぞれの連結棒の下端に連結された二つのクランクアーム、それぞれのクランクアームを回転させる二つのギヤモータ等を備え、ギヤモータにより二つのクランクアームを適宜回転させ、その回転に連動してそれぞれの連結棒を上下動させて揺動板を揺動させることにより、人の平衡機能の強化、維持、及び体力の鍛錬等を行うものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
この装置においては、クランクアーム及び連結棒を採用しているため、前述の装置と同様に、装置を設置する床面等から揺動板までの高さが高くなり、人の乗り降りに不便であり、特に高齢者の介護訓練装置として適用するには好ましくない。また、クランクアームの回転により揺動板を傾斜させるため、その傾斜角度及び傾斜方向にも限界があり、前述の装置同様に、揺動板を全周方向において円滑かつ連続的に揺動させるのが困難である。
【0004】
【特許文献1】特開平6−254178号公報
【特許文献2】特開2003−135622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の装置の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、装置の小型化、装置の低重心化による転倒防止及び安定化、人が乗り降りする際の乗降性の向上等を図りつつ、全周方向において円滑でかつ連続的な揺動動作が可能で、人のバランスに必要な筋力と感覚を効率よく訓練することができ、又、バランス感覚を数値的に評価することができ、さらには人同士のバランス感覚を競い合う遊技機としても用いることのできるバランス訓練装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバランス訓練装置は、被検者が搭乗し得る揺動板と、揺動板を支持して揺動させる駆動機構と、駆動機構を保持するフレームと、駆動機構を制御する制御手段と、を備えたバランス訓練装置であって、上記駆動機構は、略水平面内の異なる複数の方向に駆動力を発生する駆動源と、駆動源に連動して揺動板を異なる複数の方向に揺動させる揺動機構と、を含む、構成となっている。
この構成によれば、揺動板を揺動させる駆動機構が、鉛直方向ではなく略水平方向に駆動力を発生する駆動源及びこの駆動力を揺動力に変換する揺動機構により形成されているため、装置の高さを低く設定することができる。したがって、装置を低重心化でき、転倒を防止でき安定した状態で設置することができる。また、被検者が搭乗する揺動板の高さを低く設定できるため、乗降性が向上し、特に高齢者の乗り降りが容易になる。
また、駆動機構は、略水平面内の複数の異なる方向に駆動力を発生し、揺動機構は、これらの異なる方向の駆動力に連動して異なる複数の方向に揺動力を発生させるため、揺動板を全周方向において円滑にかつ連続的に揺動させることができ、バランスに必要な平衡感覚、筋力等を効率よく訓練(発達、育成、強化、回復)させることができる。
【0007】
上記構成において、駆動源は、略水平面内の一方向に往復動する第1アクチュエータと、第1アクチュエータの往復動方向に対して略直交する略水平面内の他方向に往復動する第2アクチュエータとを含み、揺動機構は、第1アクチュエータ及び第2アクチュエータに連結されると共に揺動板の略中央に垂下して結合された軸部材と、軸部材を第1アクチュエータの往復動方向及び第2アクチュエータの往復動方向にそれぞれ揺動自在に支持する自在継手とを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、駆動源が二つのアクチュエータ、揺動機構が揺動板に設けられた軸部材を揺動自在に支持する自在継手等により形成されるため、構造の簡略化、装置の小型化等を達成しつつ、二つのアクチュエータの駆動を適宜制御することにより、揺動板を全周方向において円滑にかつ連続的に揺動させることができる。
【0008】
上記構成において、軸部材は、その上端部において揺動板を支持し、その下端部において第1アクチュエータ及び第2アクチュエータに連結され、その上端部と下端部との間の領域において自在継手に連結されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、揺動板に結合された軸部材を揺動させる際に、その中間領域に支点(自在継手)、その下端部に力点(二つのアクチュエータの駆動力)、その上端部に作用点(揺動板)が配置される構成となるため、装置の小型化、集約化、低重心化を達成しつつ、揺動板の揺動角度をある程度広く(例えば、−15度〜+15度の範囲に)設定することができる。
【0009】
上記構成において、第1アクチュエータは、フレームに固定された第1モータと、第1モータに直結された第1リードスクリューと、軸部材を挟んで第1モータの反対側に配置されると共に第1リードスクリューに螺合する第1可動子と、第1可動子と軸部材とを連結する第1リンクとを含み、第2アクチュエータは、フレームに固定された第2モータと、第2モータに直結された第2リードスクリューと、軸部材を挟んで第2モータの反対側に配置されると共に第2リードスクリューに螺合する第2可動子と、第2可動子と軸部材とを連結する第2リンクとを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、略水平面内において、第1アクチュエータ及び第2アクチュエータが、それぞれ軸部材(揺動板)を中心とする略直径方向に配置されると共にお互いに直交するように配置されるため、軸部材を中心にしてそれぞれの部品を集約させることができ、装置をより一層小型化することができる。
【0010】
上記構成において、揺動板に搭乗した被検者の重心軌跡を計測する計測手段を有する、構成を採用することができる。
この構成によれば、被検者が揺動板に搭乗してバランスの訓練を行う場合に、計測手段によりその被検者の重心軌跡を計測することで、バランス感覚の発達、強化、回復等のレベルを確認することができ、訓練の効果を評価する一つの指標とすることができる。
【0011】
上記構成において、揺動板は円板状に形成され、フレームは、駆動機構を直接保持する保持フレームと、保持フレームから分離して形成され所定位置に固定される固定フレームとを含み、計測手段は、保持フレームと固定フレームとの間に介在すると共に揺動板の全周を略三等分する位置に対応して設けられた三つのロードセルを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、揺動板、駆動機構等が保持フレームに保持され、この保持フレームが三つのロードセルを介して、床面等に設置される固定フレームに保持されている。
したがって、揺動板に搭乗した被検者の重心軌跡は、この三つのロードセルにより検出される荷重を演算処理して求められる。このように、計測手段としてロードセルを採用することにより、構造を簡素化でき、装置を小型化することができる。特に、円板状をなす揺動板の全周を三等分する位置に対応して三つのロードセルが配置されているため、構成部品の個数を抑えつつも高精度に計測することができる。
【0012】
上記構成において、固定フレームは、揺動板に搭乗した被検者を所定の緩みをもって吊り下げる吊り紐を掛止し得るべく、揺動板の上方まで伸長して形成された鉛直フレームを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、特に、被検者として高齢者等の訓練のために適用する場合に、鉛直フレームに吊るした吊り紐で被検者を緩く吊るすことにより、揺動に追従した運動を許容しつつも被検者の転倒等を防止することができる。
【0013】
上記構成において、制御手段は、駆動機構を自動的に駆動制御するためのプログラムを任意に設定可能である、構成を採用することができる。
この構成によれば、被検者の身体能力の状態(例えば、バランス感覚の発達レベルあるいは回復レベル等)に応じて、揺動板を駆動制御するプログラムを設定することにより、その被検者に適した受動運動を行わせることができる。
【0014】
上記構成において、制御手段には、駆動機構を指令に応じて直接駆動制御するための操作ユニットが接続されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、操作ユニット(例えば、ジョイスティック等)を操縦することにより、揺動板の揺動動作を直接コントロールすることができる。したがって、被検者以外の者(例えば、訓練監視者等)が、揺動板に搭乗した被検者の状態を確認しながら、操作ユニットを操縦することで、その被検者に適した訓練を行わせることができる。
【0015】
上記構成において、計測手段により計測された被検者の重心軌跡に関する情報を表示する表示手段を有する、構成を採用することができる。
この構成によれば、表示手段に表示された重心軌跡に関する情報を確認することにより、その被検者のバランス感覚のレベルを目視にて認識あるいは判断することができる。
【0016】
上記構成において、表示手段は、計測手段により計測された被検者の重心軌跡の揺動中心からの偏差に関する情報を表示する、構成を採用することができる。
この構成によれば、被検者の重心軌跡が揺動板の中心位置からの偏差として表示されるため、中心に近づくほどバランス感覚に優れ、中心から離れるほどバランス感覚が劣るというように、被検者のレベルを容易に判断することができる。
【0017】
上記構成において、計測手段により計測された被検者の重心軌跡に関する情報を記憶する記憶手段と、計測手段により計測された被検者の重心軌跡に関する情報と記憶手段に記憶された同一の被検者の重心軌跡に関する情報を比較する比較手段と有し、表示手段は、比較手段により得られた比較情報を表示する、構成を採用することができる。
この構成によれば、同一の被検者が、この装置を用いてバランスの訓練を繰り返し行う場合に、記憶手段に記憶された以前の重心軌跡に関する情報と計測手段により計測された新たな重心軌跡に関する情報とが比較手段により比較され、その比較情報が表示手段により表示される。したがって、被検者のバランス感覚の発達、育成、回復の度合いを容易に確認あるいは判断することができる。
【0018】
上記構成において、計測手段により計測された複数の被検者の重心軌跡に関する情報を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された複数の被検者の重心軌跡に関する情報を比較する比較手段と有し、表示手段は、比較手段により得られた比較情報に基づいて複数の被検者の順位を表示する、構成を採用することができる。
この構成によれば、複数の被検者が、この装置を用いてバランスの訓練を行う場合に、記憶手段に記憶された複数の被検者の重心軌跡に関する情報が比較手段により比較され、その比較情報に基づいた複数の被検者の順位が表示手段により表示される。したがって、複数の被検者のバランス感覚のレベルを容易に確認しあるいは競い合うことができ、アミューズメント施設等の遊戯機としても有用である。
【0019】
上記構成において、制御手段には、外部との情報の送受信を行うための接続部が設けられている、構成を採用することができる。
この構成によれば、接続部を介して外部の端末機(例えば、介護施設等の中央コンピュータ等)と接続することにより、例えば、この装置を複数設置した場合、被検者のバランス感覚に関する情報等を一箇所に集約して比較あるいは判断することができる。
【発明の効果】
【0020】
上記構成をなすバランス訓練装置によれば、装置の小型化、装置の低重心化による転倒防止及び安定化、人が乗り降りする際の乗降性の向上等を達成しつつ、全周方向において円滑でかつ連続的な揺動動作が可能で、人のバランスに必要な筋力と感覚を効率よく訓練することができ、又、バランス感覚を数値的に評価することができ、さらには人同士のバランス感覚を競い合う遊技機としても用いることのできるバランス訓練装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態を、添付図面を参照しつつ説明する。
図1ないし図9は、本発明に係るバランス訓練装置の一実施形態を示すものであり、図1は装置の側面図、図2は装置の正面図、図3は装置の部分断面図、図4は装置の部分平面図、図5及び図6は装置の部分側面図、図7及び図8は装置の動作を説明する動作図、図9は装置の制御システムを示すブロック図である。
【0022】
この装置は、図1ないし4に示すように、床面等に設置される固定フレーム10、固定フレーム10と分離して形成された保持フレーム20、保持フレーム20と固定フレーム10との間に介在する計測手段としての三つのロードセル30、被検者が搭乗し得る揺動板40、揺動板40を支持して揺動させる駆動機構としての略水平面内の異なる複数の方向に駆動力を発生する駆動源(第1アクチュエータ50及び第2アクチュエータ60)及び駆動源に連動して揺動板40を異なる複数の方向に揺動させる揺動機構70、駆動機構を制御する制御手段としての制御ユニット80等を備えている。
【0023】
固定フレーム10は、図1ないし図3に示すように、被検者が踏み台にすると共に揺動板40を揺動可能に突出させる上板11、周りを覆う外壁12、揺動板40の上方まで伸長すると共に上方において屈曲して一体的に形成されたパイプ状の左右一対の鉛直フレーム13、一対の鉛直フレーム13を横方向において連結するパイプ状の連結フレーム14、昇降方向の左右に設けられたパイプ状の手摺用フレーム15等を備えている。
鉛直フレーム13は、図1に示すように、必要に応じて、揺動板40に搭乗した被検者を所定の緩みをもって吊り下げるスリング用の吊り紐Sを掛止できるように形成されている。したがって、被検者が高齢者等の場合には、鉛直フレーム13に吊るした吊り紐Sで被検者を緩く吊るすことにより、揺動に追従した運動を許容しつつも被検者の転倒等を防止することができる。
【0024】
保持フレーム20は、図3及び図4に示すように、下側保持フレーム21及び上側保持フレーム22により形成されており、上側保持フレーム22は、4本の支柱23を介して下側保持フレーム21に結合されている。そして、保持フレーム20(下側フレーム21)は、3つのロードセル30を介して固定フレーム10に連結されている。
下側フレーム21は、図3及び図4に示すように、駆動源50,60を保持し、上側フレーム22は、揺動機構70を保持している。
【0025】
三つのロードセル30は、図3及び図4に示すように、保持フレーム20(下側保持フレーム21)と固定フレーム20(上板21)との間に介在して、それぞれの位置における保持フレーム20全体から受ける荷重の変動を計測するものであり、揺動板40の全周を略三等分する位置に対応して設けられている。
すなわち、三つのロードセル30の計測値に基づいて所定の演算処理を施すことにより、揺動板40に搭乗した被検者の重心軌跡を計測することができるようになっている。
【0026】
このように、揺動板40に搭乗した被検者の重心軌跡を計測する計測手段を採用することにより、被検者が揺動板40に搭乗してバランスの訓練を行う場合に、その被検者の重心軌跡を計測することで、バランス感覚の発達、強化、回復等のレベルを確認することができ、訓練の効果を評価する一つの指標とすることができる。
また、計測手段としてロードセル30を採用することにより、構造を簡素化でき、装置を小型化することができる。特に、三つのロードセル30が円板状をなす揺動板40の全周を三等分する位置に対応して配置されているため、構成部品の個数を抑えつつも高精度に計測することができる。
【0027】
揺動板40は、図1ないし図4に示すように、円板状に形成されて、固定フレーム10の上板11から所定高さだけ突出した位置に配置され、その外周領域と上板11との間が蛇腹状の伸縮ブーツ41により覆われると共に、後述する揺動機構70により揺動自在に支持されている。
【0028】
揺動機構70は、図3ないし図6に示すように、揺動板40の中央において垂下するように結合された軸部材71、軸部材71をX軸回りに揺動自在に支持するリンク部材72、リンク部材72(及び軸部材71)をY軸回りに揺動自在に支持する支持部材73等を備えている。すなわち、リンク部材72及び支持部材73により、軸部材71(及び揺動板40)を、X軸回り及びY軸回りに揺動自在に支持する自在継手が構成されている。
【0029】
軸部材71は、図3、図5及び図6に示すように、その上端部において揺動板40を支持(固定)し、その下端部において後述する第1アクチュエータ50及び第2アクチュエータ60に連結され、その上端部と下端部との間の領域において自在継手(リンク部材72、支持部材73)に連結されている。
すなわち、軸部材71を揺動させる際に、その中間領域に支点(自在継手)、その下端部に力点(二つのアクチュエータ50,60の駆動力)、その上端部に作用点(揺動板40)が配置される構成となるため、装置の小型化、集約化、低重心化を達成しつつ、揺動板の揺動角度をある程度広く、例えば、−15度〜+15度の範囲に設定することができる。
【0030】
第1アクチュエータ50は、略水平面内の一方向(X軸方向)に往復動する駆動力を発生するものであり、第2アクチュエータ60は、第1アクチュエータ50の往復動方向(X軸方向)に対して略直交する略水平面内の他方向(Y方向)に往復動する駆動力を発生するものである。
【0031】
第1アクチュエータ50は、図3、図4、図5に示すように、下側保持フレーム21に固定された第1モータ51、第1モータ51に直結された第1リードスクリュー52、軸部材71を挟んで第1モータ51の反対側に配置されると共に第1リードスクリュー52に螺合する第1可動子53、第1可動子53と軸部材71とを連結する第1リンク54等を備えている。
【0032】
すなわち、図7(a)に示すように、揺動板40が水平にある状態から、第1モータ51が一方向に回転して第1リードスクリュー52が回転すると、図7(b)に示すように、第1可動子53がX軸方向の外側に移動し、この第1可動子53の移動に追従して第1リンク54が外側に移動し、支持部材73に対して(Y軸を中心として)、リンク部材72及び軸部材71が反時計回りに所定角度回転し、揺動板40が左下がりに傾斜する。
一方、第1モータ51が他方向に回転して第1リードスクリュー52が回転すると、図7(c)に示すように、第1可動子53がX軸方向の内側に移動し、この第1可動子53の移動に追従して第1リンク54が内側に移動し、支持部材73に対して(Y軸を中心として)、リンク部材72及び軸部材71が時計回りに所定角度回転し、揺動板40が右下がりに傾斜する。すなわち、第1モータ51の回転方向を適宜制御することにより、揺動板40をY軸回りに揺動させることができる。
【0033】
第2アクチュエータ60は、図4及び図6に示すように、下側フレーム21に固定された第2モータ61、第2モータ61に直結された第2リードスクリュー62、軸部材71を挟んで第2モータ61の反対側に配置されると共に第2リードスクリュー62に螺合する第2可動子63、第2可動子63と軸部材71とを連結する第2リンク64等を備えている。
【0034】
すなわち、図8(a)に示すように、揺動板40が水平にある状態から、第2モータ61が一方向に回転して第2リードスクリュー62が回転すると、図8(b)に示すように、第2可動子63がY軸方向の外側に移動し、この第2可動子63の移動に追従して第2リンク64が外側に移動し、リンク部材72に対して(X軸を中心として)、軸部材71が反時計回りに所定角度回転し、揺動板40が左下がりに傾斜する。
一方、第2モータ61が他方向に回転して第2リードスクリュー62が回転すると、図8(c)に示すように、第2可動子63がY軸方向の内側に移動し、この第2可動子63の移動に追従して第2リンク64が内側に移動し、リンク部材72に対して(X軸を中心として)、軸部材71が時計回りに所定角度回転し、揺動板40が右下がりに傾斜する。すなわち、第2モータ61の回転方向を適宜制御することにより、揺動板40をX軸回りに揺動させることができる。
【0035】
上記構成によれば、駆動機構として、二つのアクチュエータ50,60、揺動板40に結合された軸部材71及び自在継手72,73等からなる揺動機構70を採用したことにより、構造の簡略化、装置の小型化等を達成しつつ、二つのアクチュエータ50,60の駆動を適宜制御することにより、揺動板40を全周方向において円滑にかつ連続的に揺動させることができる。
また、略水平面内において、第1アクチュエータ50及び第2アクチュエータ60がそれぞれ軸部材71(揺動板40)を中心とする略直径方向に配置されると共にお互いに直交するように配置されるため、軸部材71を中心にしてそれぞれの部品を集約させることができ、装置をより一層小型化することができる。
【0036】
制御ユニット80は、図1及び図2に示すように、連結フレーム14に固定されており、揺動板40に搭乗した被検者が容易に操作及び視認できるように配置されている。
制御ユニット80は、図1、図2、図9に示すように、その外部において、種々の情報を表示する表示手段としての表示パネル81、各種の操作及びプログラム等の入力を行う操作パネル82、外部への接続部83等を備えている。
【0037】
また、制御手段としての制御ユニット80は、図9に示すように、その内部において、種々の制御を司る制御回路84、ロードセル30の荷重信号を入力する荷重入力回路85、荷重入力回路85の出力信号に基づいて種々の演算及び比較等の処理を行う演算/比較手段としてのデータ処理回路86、被検者の重心軌跡に関する情報等種々のデータを記憶する記憶手段としての記憶回路87、第1モータ51及び第2モータ61を駆動するための信号を発する駆動回路88、接続部83を介して外部の端末機100等と接続した場合に送受信を行う送受信回路89、外部の操作ユニットとしてのジョイスティック200を接続した場合にその指令信号を処理する指令信号処理回路90等を備えている。
【0038】
ここで、表示パネル81は、種々の情報を表示するものであり、例えば、ロードセル30、荷重入力回路85、及びデータ処理回路86を介して得られた被検者の重心軌跡に関する情報、例えば、揺動板40の揺動中心からの重心軌跡の偏差等に関する情報等を表示するようになっている。
したがって、表示パネル81に表示された重心軌跡に関する情報を確認することにより、その被検者のバランス感覚のレベルを目視にて認識あるいは判断することができる。
【0039】
操作パネル82は、被検者等が種々の情報を表示させるために、あるいは、指令信号を入力、例えば、駆動機構(第1アクチュエータ50及び第2アクチュエータ60)を自動的に駆動制御するためのプログラムを任意に設定(入力)することができるようになっている。したがって、被検者の身体能力の状態(例えば、バランス感覚の発達レベルあるいは回復レベル等)に応じて、揺動板40を駆動制御するプログラムを適宜設定することにより、その被検者に適した受動運動を行わせることができる。
さらに、操作パネル82上のボタンの大きさ、形状、色等を異なるものにすれば、プログラムを設定(入力)する際に、誤操作、誤入力等を防止でき、例えば高齢者等も簡単に操作(設定、入力)することが可能になる。
【0040】
指令信号処理回路90は、操作ユニットとしてのジョイスティック200を介して、揺動板40の揺動動作を直接コントロールするためのものである。したがって、被検者以外の者(例えば、訓練監視者等)が、揺動板40に搭乗した被検者の状態を確認しながら、ジョイスティック200を操縦することで、その被検者に適した訓練を行わせることができる。
【0041】
データ処理回路86は、計測手段としてのロードセル30及び荷重入力回路85を介して計測された被検者の重心軌跡に関する情報を処理(演算/比較)するものであり、例えば、揺動板40の揺動中心からの重心軌跡の偏差を演算し、又、この偏差を記憶回路87に記憶された他のデータ情報(同一の被検者の以前のデータ情報、あるいは、複数の異なる被検者のデータ情報)と比較しその比較情報を出力するようになっている。
【0042】
記憶回路87は、計測手段30により計測された被検者の重心軌跡に関する情報、あるいは、計測手段30により計測された複数の被検者の重心軌跡に関する情報、その他の被検者に関する情報(年齢、性別等)、さらには駆動制御を行うプログラム情報等を記憶し得るようになっている。
駆動回路88は、入力されたプログラム、あるいは、ジョイスティック200及び指令信号処理回路90を介して発せられた指令信号に基づき、制御回路84からの出力信号により、第1モータ51及び第2モータ61を適宜回転制御するようになっている。
【0043】
送受信回路89は、接続部83を介して接続した外部の端末機100との間で、情報の送受信を行うものである。したがって、外部の端末機100が例えば介護施設等の中央コンピュータ等である場合、被検者のバランス感覚に関する情報等を一箇所に集約して比較あるいは判断することができる。
【0044】
上記構成によれば、計測された被検者の重心軌跡に関する情報と記憶回路87に記憶された同一の被検者の重心軌跡に関する情報が比較され、その比較情報が表示パネル81に表示されるようになっている。したがって、同一の被検者が、この装置を用いてバランスの訓練を繰り返し行う場合に、予め記憶された以前の重心軌跡に関する情報と新たに計測された重心軌跡に関する情報との比較情報を表示パネル81で確認することができ、被検者のバランス感覚の発達、育成、回復の度合いを容易に確認あるいは判断することができる。
【0045】
また、上記構成によれば、新たに計測された被検者の重心軌跡に関する情報と記憶回路87に記憶された複数の被検者の重心軌跡に関する情報が比較され、その比較情報に基づいて複数の被検者の順位が表示パネル81に表示されるようになっている。したがって、複数の被検者が、この装置を用いてバランスの訓練を行う場合に、複数の被検者のバランス感覚のレベルを容易に確認しあるいは競い合うことができ、アミューズメント施設等の遊戯機としても適用することができる。
【0046】
上記実施形態においては、駆動機構の一部をなす駆動源として、二つのアクチュエータ50,60を示したが、これに限定されるものではなく、三つ以上のアクチュエータを採用してもよく、又、アクチュエータとしても、モータ及びリードスクリューに限らず、略水平面内で往復動する駆動力を発生するものであれば、その他の構成を採用することができる。
上記構成においては、駆動機構の一部をなす揺動機構として、自在継手(軸部材71、リンク部材72、支持部材73)を採用したが、揺動板40を異なる複数の方向に揺動させ得るものであれば、その他の構成を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上述べたように、本発明のバランス訓練装置は、小型化、低重心化による転倒防止及び安定化、人が乗り降りする際の乗降性の向上等を達成しつつ、全周方向において円滑でかつ連続的な揺動動作が可能で、人のバランスに必要な筋力と感覚を効率よく訓練することができ、又、バランス感覚を数値的に評価することができ、さらには人同士のバランス感覚を競い合う遊技機としても用いることができるため、バランス感覚を強化する装置として、又、介護施設等において高齢者等のバランス感覚を回復させる装置として、さらにはアミューズメント施設等における遊戯機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るバランス訓練装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】本発明に係るバランス訓練装置の一実施形態を示す正面図である。
【図3】本発明に係るバランス訓練装置の一実施形態を示す部分断面図である。
【図4】本発明に係るバランス訓練装置の一実施形態を示す部分平面図である。
【図5】本発明に係るバランス訓練装置の一実施形態を示す部分側面図である。
【図6】本発明に係るバランス訓練装置の一実施形態を示す部分側面図である。
【図7】(a),(b),(c)は、本発明に係るバランス訓練装置の動作を説明するための動作図である。
【図8】(a),(b),(c)は、本発明に係るバランス訓練装置の動作を説明するための動作図である。
【図9】本発明に係るバランス訓練装置の制御システムを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0049】
10 固定フレーム
11 上板
12 外壁
13 鉛直フレーム
14 連結フレーム
15 手摺用フレーム
20 保持フレーム
21 下側保持フレーム
22 上側保持フレーム
23 支柱
30 ロードセル(計測手段)
40 揺動板
41 伸縮ブーツ
50 第1アクチュエータ(駆動源)
51 第1モータ
52 第1リードスクリュー
53 第1可動子
54 第1リンク
60 第2アクチュエータ(駆動源)
61 第2モータ
62 第2リードスクリュー
63 第2可動子
64 第2リンク
70 揺動機構
71 軸部材
72 リンク部材(自在継手)
73 支持部材(自在継手)
80 制御ユニット(制御手段)
81 表示パネル(表示手段)
82 操作パネル
83 接続部
84 制御回路
85 荷重入力回路
86 データ処理回路(比較手段)
87 記憶回路(記憶手段)
88 駆動回路
89 送受信回路
90 指令信号処理回路
200 ジョイスティック(操作ユニット)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者が搭乗し得る揺動板と、前記揺動板を支持して揺動させる駆動機構と、前記駆動機構を保持するフレームと、前記駆動機構を制御する制御手段と、を備えたバランス訓練装置であって、
前記駆動機構は、略水平面内の異なる複数の方向に駆動力を発生する駆動源と、前記駆動源に連動して前記揺動板を異なる複数の方向に揺動させる揺動機構と、を含む、
ことを特徴とするバランス訓練装置。
【請求項2】
前記駆動源は、略水平面内の一方向に往復動する第1アクチュエータと、前記第1アクチュエータの往復動方向に対して略直交する略水平面内の他方向に往復動する第2アクチュエータと、を含み、
前記揺動機構は、前記第1アクチュエータ及び第2アクチュエータに連結されると共に前記揺動板の略中央に垂下して結合された軸部材と、前記軸部材を前記第1アクチュエータの往復動方向及び前記第2アクチュエータの往復動方向にそれぞれ揺動自在に支持する自在継手と、を含む、
ことを特徴とするバランス訓練装置。
【請求項3】
前記軸部材は、その上端部において前記揺動板を支持し、その下端部において前記第1アクチュエータ及び第2アクチュエータに連結され、その上端部と下端部との間の領域において前記自在継手に連結されている、
ことを特徴とする請求項2記載のバランス訓練装置。
【請求項4】
前記第1アクチュエータは、前記フレームに固定された第1モータと、前記第1モータに直結された第1リードスクリューと、前記軸部材を挟んで前記第1モータの反対側に配置されると共に前記第1リードスクリューに螺合する第1可動子と、前記第1可動子と前記軸部材とを連結する第1リンクと、を含み、
前記第2アクチュエータは、前記フレームに固定された第2モータと、前記第2モータに直結された第2リードスクリューと、前記軸部材を挟んで前記第2モータの反対側に配置されると共に前記第2リードスクリューに螺合する第2可動子と、前記第2可動子と前記軸部材とを連結する第2リンクと、を含む、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のバランス訓練装置。
【請求項5】
前記揺動板に搭乗した被検者の重心軌跡を計測する計測手段を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載のバランス訓練装置。
【請求項6】
前記揺動板は円板状に形成され、
前記フレームは、前記駆動機構を直接保持する保持フレームと、前記保持フレームから分離して形成され所定位置に固定される固定フレームと、を含み、
前記計測手段は、前記保持フレームと固定フレームとの間に介在すると共に前記揺動板の全周を略三等分する位置に対応して設けられた三つのロードセルを含む、
ことを特徴とする請求項5記載のバランス訓練装置。
【請求項7】
前記固定フレームは、前記揺動板に搭乗した被検者を所定の緩みをもって吊り下げる吊り紐を掛止し得るべく、前記揺動板の上方まで伸長して形成された鉛直フレームを含む、
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれかに記載のバランス訓練装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記駆動機構を自動的に駆動制御するためのプログラムを任意に設定可能である、
ことを特徴とする請求項1ないし7いずれかに記載のバランス訓練装置。
【請求項9】
前記制御手段には、前記駆動機構を指令に応じて直接駆動制御するための操作ユニットが接続されている、
ことを特徴とする請求項1ないし7いずれかに記載のバランス訓練装置。
【請求項10】
前記計測手段により計測された被検者の重心軌跡に関する情報を表示する表示手段を有する、
ことを特徴とする請求項5記載のバランス訓練装置。
【請求項11】
前記表示手段は、前記計測手段により計測された被検者の重心軌跡の揺動中心からの偏差に関する情報を表示する、
ことを特徴とする請求項10記載のバランス訓練装置。
【請求項12】
前記計測手段により計測された被検者の重心軌跡に関する情報を記憶する記憶手段と、
前記計測手段により計測された被検者の重心軌跡に関する情報と前記記憶手段に記憶された同一の被検者の重心軌跡に関する情報を比較する比較手段と、有し、
前記表示手段は、前記比較手段により得られた比較情報を表示する、
ことを特徴とする請求項10又は11に記載のバランス訓練装置。
【請求項13】
前記計測手段により計測された複数の被検者の重心軌跡に関する情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の被検者の重心軌跡に関する情報を比較する比較手段と、有し、
前記表示手段は、前記比較手段により得られた比較情報に基づいて複数の被検者の順位を表示する、
ことを特徴とする請求項10又は11に記載のバランス訓練装置。
【請求項14】
前記制御手段には、外部との情報の送受信を行うための接続部が設けられている、
ことを特徴とする請求項5ないし13いずれかに記載のバランス訓練装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−82915(P2007−82915A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277958(P2005−277958)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000000310)株式会社アシックス (57)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)