説明

バラ苗の生産方法

【課題】切り花栽培農家に提供するバラ苗の生産において、出荷率(活着率)を高めて生産効率を上げる手法を提供する。
【解決手段】栽培目的種の葉柄の根元部分の芽21を、葉22を残したままの接ぎ体2とし、台木1となるノイバラの茎に葉11を残し、前記台木1の葉11のやや下方に、前記接ぎ体2を常法手段で接ぎ芽を行い、台木1を適宜な苗床3に挿し木を行い、挿し木の根の活着の後に、台木1の葉11及びその根元にある芽を切除し、所定期間新芽を発育させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切り花栽培農家に提供するバラ苗の生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物の増殖手段として、一般に挿し木、接ぎ木、接ぎ芽が知られており、種々の品種が存在しているバラにおいても同様で、一般的な園芸好事家は、手間暇をかけて増殖を行っている。しかしバラ苗を切り花栽培農家に提供する業者にとっては、煩雑な作業を極力少なくし、且つ生産効率を高める必要がある。
【0003】
バラ苗の生産方法としては、特許文献1(特開平7−213152号公報)の図1に、接木床(苗床)に植えた台木に接ぎ穂(接ぎ木)又は接ぎ芽で行うことが示されている。
【0004】
また前記手段においては、台木が相応に生育して根を張った状態で接ぎ穂(接ぎ木)又は接ぎ芽を行うために、台木(ノイバラ)の生産を1年先行する必要があるとして、特許文献2(特開2000−245261号公報)に、バラの挿し木に対して効果のある発酵促進剤を使用しての挿し木増殖が提案されている。
【0005】
然し切り花栽培農家に提供するバラ苗の生産においては、特許文献1に開示されている接木床(苗床)に植栽された台木の使用は作業性が悪く、特許文献2に示されている直接の挿し木増殖は、活着率に問題が生産性に劣るという問題がある。このため現状においては、挿し木による生育が充分に見込める台木自体に、接ぎ木を行い、台木を挿し木(以下「接ぎ木・挿し木」という)としてバラ苗を生産している。
【0006】
具体的に説明すると、接ぎ木・挿し木は、図2に示すように、ノイバラの台木01に、栽培品種のバラ枝02を接ぎ木して、ロックウールの苗床03に挿し木を行って栽培し、台木01に根が活着し、バラ枝02の新芽04が生育した段階で出荷している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−213152号公報。
【特許文献2】特開2000−245261号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在の切り花栽培農家に提供するバラ苗の生産手段は、前記の図2に示した通りで、あるが、図2で示した接ぎ木・挿し木は約50日の栽培(ミスト栽培)で、十分に活着して出荷可能となる割合(活着率)は約70%程度ある。
【0009】
そこで本発明は、出荷率(活着率)を高めて生産効率を上げる新規なバラ苗の生産方法を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るバラの苗の生産方法は、栽培目的種の葉柄の根元部分の芽を、葉を残したままの接ぎ体とし、台木となるノイバラの茎に葉を残し、前記台木の葉のやや下方に、前記接ぎ体を常法手段で接ぎ芽を行い、台木を適宜な苗床に挿し木を行い、挿し木の根の活着の後に、台木の葉及びその根元にある芽を切除し、所定期間新芽を発育させてなることを特徴とするものである。
【0011】
従って台木となるノイバラは樹勢力(繁殖性、耐病性、耐寒性、耐暑性)が強く、挿し木に際しては、自己の葉の存在によって、図2の従前の接ぎ木・挿し木に比較して根の活着が良好であり、また接ぎ体と台木部分の接ぎ個所が、接ぎ体の葉の存在によって細胞結合が速やかに行われ、根の活着後には、台木の葉が切除されるので、苗の成長は接ぎ体の芽に集中することになり、栽培日数は50日程度で、且つ活着率は略90〜100%となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記のとおり、ノイバラの台木の挿し木を使用したバラ苗の生産において、特に台木に葉を残し、且つ葉を残した接ぎ芽を行うことで、従前のバラ苗生産に比較して、活着率を高め生産性を著しく向上させたものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の生産過程の説明図。
【図2】従来の生産形態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施形態を、生産手順に添って説明する。使用する部材は、台木1と、栽培目的品種の接ぎ体2と、苗床3である。
【0015】
台木1は、樹勢力の強いノイバラの茎で、少なくとも一枝の葉11を残したままのものとする。接ぎ体2は、栽培目的の品種から採取するもので、葉柄の根元部分の芽21の周りを切り取るもので、葉22は、必要に応じて数葉を適宜な大きさにして残しておく。また苗床3は、ロックウールのブロック体やピートモス、砂、パーライト等を採用するものである。
【0016】
而して前記の台木1に接ぎ体2を接ぐもので、接ぎ手段は、台木1における葉11の下方の側面に上方から切り込み12又は下方からの切り込み13を形成し、当該切り込み12,13に接ぎ体2の根元部分を差し込むものである。或いは台木1の側面の一部を抉り取り、当該抉り個所14に接ぎ体2の根元を当接して、テープ4でしっかりと固定するものである。勿論前記の差し込みにおいてもテープ4で固定しても良い。
【0017】
台木1に接ぎ体2の接ぎ芽を施した後は、台木1を苗床3に挿し木を行い、所定期間ミスト栽培を行うものである。
【0018】
ミスト栽培は、当初の2週間は、日中は数分間隔で10〜30秒程度(例えば5分間隔で20秒の噴霧)、夜間は3時間程度の間隔で20秒前後の噴霧を行い、3週目から徐々に噴霧回数を減らし、長くとも4週間でミスト栽培を終了し、その後は通常の苗栽培を行う。
【0019】
前記の栽培の途中において、挿し木(台木1)の根の活着がなされた後(挿し木から20〜40日後)の後に、台木1の葉11及びその根元にある芽を切除し、約50日に出荷するものである。
【0020】
特に本発明は、樹勢力の強い台木1が、挿し木当初に葉11を備えることによって、台木1の根の活着が良好であり、また接ぎ体2が葉22を備えているので、葉22への給水への必要性から台木1部分との接ぎ個所の細胞結合が速やかになされ、更に根の活着後には、台木1の葉11が切除されるので、苗の成長は接ぎ体の芽21に集中することになり、出荷までの栽培日数が50日程度で、活着率は約90〜100%となるものである。
【符号の説明】
【0021】
1 台木
11 葉
12・13 切り込み
14 抉り個所
2 接ぎ体
21 芽
22 葉
3 苗床
4 テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培目的種の葉柄の根元部分の芽を、葉を残したままの接ぎ体とし、台木となるノイバラの茎に葉を残し、前記台木の葉のやや下方に、前記接ぎ体を常法手段で接ぎ芽を行い、台木を適宜な苗床に挿し木を行い、挿し木の根の活着の後に、台木の葉及びその根元にある芽を切除し、所定期間新芽を発育させてなることを特徴とするバラ苗の生産方法。
【請求項2】
栽培当初は、水滴の噴霧で栽培を行うミスト栽培を採用すると共に、当初の2週間は、日中は数分間隔で10〜30秒程度、夜間は3時間程度の間隔で20秒前後の噴霧を行い、3週目から徐々に噴霧回数を減らし、長くとも4週間でミスト栽培を終了してなる請求項1記載のバラ苗の生産方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−43(P2011−43A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145233(P2009−145233)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(509173111)有限会社花プラン (1)
【Fターム(参考)】