説明

バリ取り洗浄方法及び装置

【課題】 短時間で広い範囲に亘ってバリ取り洗浄を効果的に行うことができ、作業効率の向上とコストの低減化が可能なバリ取り洗浄方法および装置の提供。
【解決手段】 処理液3に浸漬されたワーク4に近接して処理液3中に臨ませた正負放電電極22,23間に高電圧パルスを印加して該正負放電電極22、23間にアーク放電aを発生させ、これにより発生する衝撃波cによってワーク4に付着された異物またはバリを除去して洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工により発生するバリの除去や切粉等を除去するためのバリ取り洗浄方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバリ取り洗浄方法としては、ブラシを用いた洗浄、ウオータジェットによる洗浄(例えば、特許文献1参照。)、超音波による洗浄(例えば、特許文献2参照。)がある。
【0003】
前記ウオータジェットによる洗浄方法は、第1の高圧ノズルと第2の高圧ノズルとを備え、共に高圧洗浄液を勢いよく噴射しながら所定の角度で正反転させ、第1のノズルによりワークの加工穴の中空部内側に付着したバリを、また、第2の高圧ノズルにより加工穴の内側に付着したバリを除去するようにしたものである。
【0004】
また、前記超音波による洗浄方法は、底部に超音波振動子を設け、洗浄液を入れた洗浄槽にワークを浸漬した状態で、洗浄液に超音波振動子から超音波を放射し、ワークのバリ取り、洗浄を行うようにしたものである。
【0005】
【特許文献1】特開平8−216100号
【特許文献2】特開平7−124532号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来例のバリ取り洗浄方法においては、以下に述べるような問題がある。
即ち、ブラシを用いた洗浄方法にあっては、ブラシが磨耗するため、ランニングコストが高くつくという問題がある。
【0007】
また、ウオータジェットによる洗浄方法にあっては、洗浄範囲がスポット的であるため、洗浄範囲が広くなると作業時間が長くかかり作業効率が悪いと共に、エネルギー消費量が多く、このためランニングコストが高くつくと共に、高圧ノズルを挿入できる箇所、または洗浄液を高圧のままバリに当てられる箇所等に制約され、ワークの細穴や長穴、曲がった穴の内部については効果的にバリ取り洗浄を行うことができないという問題がある。特に、ワークの細穴や長穴の内部、またはアルミニウム等のように超音波振動を吸収し易いワークの中空部内面については、目的とする箇所まで超音波が届きにくいため、キャビテーションの発生が少なく、効果的にバリ取り洗浄することができなかった。
【0008】
また、超音波による洗浄方法にあっては、洗浄時間が長くかかるため、作業効率が悪いと共に、超音波の届きにくいワーク内部はキャビテーションの発生が少なく、このため、ワーク内部のバリの除去が効果的に行えないという問題がある。
【0009】
本発明は、上述のような従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、短時間で広い範囲に亘ってバリ取り洗浄を効果的に行うことができ、作業効率の向上とコストの低減化が可能なバリ取り洗浄方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明請求項1記載のバリ取り洗浄方法は、処理液に浸漬された被処理体に近接して前記処理液中に臨ませた正負放電電極間に高電圧パルスを印加して該正負放電電極間にアーク放電を発生させ、これにより発生する衝撃波によって前記被処理体に付着された異物またはバリを除去して洗浄するようにしたことを特徴とする手段とした。
【0011】
請求項2記載のバリ取り洗浄装置は、被処理体を浸漬する処理液を収容した処理槽と、該処理槽中に浸漬された前記被処理体に近接して前記処理液中に臨ませた前記正負放電電極間に高電圧パルスを印加する高電圧パルス発生手段とで構成され、前記高電圧パルス発生手段により前記正負放電電極間にアーク放電を発生させ、これにより発生する衝撃波によって前記被処理体に付着された異物またはバリを除去して洗浄するように構成されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のバリ取り洗浄方法では、上述のように、処理液に浸漬された被処理体に近接して処理液中に臨ませた正負放電電極間に高電圧パルスを印加して該正負放電電極間にアーク放電を発生させ、これにより発生する衝撃波によって被処理体に付着された異物またはバリを除去して洗浄するようにし、また、請求項2記載のバリ取り洗浄装置では、上述のように、被処理体を浸漬する処理液を収容した処理槽と、該処理槽中に浸漬された被処理体に近接して処理液中に臨ませた正負放電電極間に高電圧パルスを印加する高電圧パルス発生手段とで構成され、高電圧パルス発生手段により正負放電電極間にアーク放電を発生させ、これにより発生する衝撃波によって被処理体に付着された異物またはバリを除去して洗浄するように構成したことで、衝撃波によって短時間で広い範囲に亘ってバリ取り洗浄を効果的に行うことができ、これにより、作業効率の向上が図れると共に、高電圧パルス発生時間が短くエネルギー消費量が少ないため、コストの低減化が可能になるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面により説明する。
【実施例】
【0014】
実施例のバリ取り洗浄装置は、請求項1、2に記載の発明に対応するものである。
図1は実施例のバリ取り洗浄装置を示す概略図、図2は該バリ取り洗浄装置を用いたバリ取り洗浄方法を示す作用工程説明図である。
本実施例のバリ取り洗浄装置は、図1に示すように、処理槽1と、高電圧パルス発生手段2とを主な構成として備えている。
【0015】
さらに詳述すると、前記処理槽1は、処理液3とワーク(被処理体)4を収容するための槽であり、この実施例では、処理液として水が収容され、該水に浸漬させた状態でワーク4が収容される。
【0016】
前記高電圧パルス発生手段2は、高電圧パルス発生回路21と、正負放電電極22、23とで構成されている。
前記正負放電電極22、23は、その先端部を露出した状態で絶縁筒24内に収容されている。
【0017】
前記高電圧パルス発生回路21は、処理液3中に浸漬されたワーク4に近接して処理液3中に臨ませた正負放電電極間22、23に高電圧パルスを印加して該正負放電電極22、23間にアーク放電を発生させるものである。
【0018】
次に、この実施例のバリ取り洗浄装置を用いたバリ取り洗浄方法を図2の作用工程説明図に基づいて説明する。
まず、図2(イ)に示すように、処理液3中に浸漬されたワーク4に近接して処理液3中に正負放電電極間22、23を臨ませた状態とし、次いで、図2(ロ)に示すように、高電圧パルス発生回路21から正負放電電極間22、23間に高電圧パルスを印加することにより、正負放電電極間22、23間アーク放電aを発生させると、図2(ハ)に示すように、該放電電路の周囲の処理液3が瞬間的に水蒸気爆発bを発生し、この水蒸気爆発bによる衝撃波cが図2(ニ)に示すように処理液3を介してワーク4に伝播され、ワーク4に付着された異物またはバリを瞬時に除去して洗浄することができる。
【0019】
この実施例のバリ取り洗浄方法および装置では、上述のように、処理液3に浸漬されたワーク4に近接して処理液3中に臨ませた正負放電電極22,23間に高電圧パルスを印加して該正負放電電極22、23間にアーク放電aを発生させ、これにより発生する衝撃波cによってワーク4に付着された異物またはバリを除去して洗浄するようにしたことで、衝撃波cによって短時間で広い範囲に亘ってバリ取り洗浄を効果的に行うことができるようになる。
従って、作業効率の向上が図れると共に、高電圧パルス発生時間が短くエネルギー消費量が少ないため、コストの低減化が可能になるという効果が得られる。
【0020】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0021】
例えば、実施例では、被処理体としてワークを例にあげたが、金属加工により発生するバリの除去や切粉等を除去する全てのものに適用することができる。また、被処理体が金属以外であっても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例のバリ取り洗浄装置を示す概略図である。
【図2】実施例のバリ取り洗浄装置を用いたバリ取り洗浄方法を示す作用工程説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 処理槽
2 高電圧パルス発生手段
21 高電圧パルス発生回路
22 放電電極
23 放電電極
24 絶縁筒
3 処理液
4 ワーク(被処理体)
a アーク放電
b 爆発が発生し、この水蒸気爆発bによる
c 衝撃波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液に浸漬された被処理体に近接して前記処理液中に臨ませた正負放電電極間に高電圧パルスを印加して該正負放電電極間にアーク放電を発生させ、これにより発生する衝撃波によって前記被処理体に付着された異物またはバリを除去して洗浄するようにしたことを特徴とするバリ取り洗浄方法。
【請求項2】
被処理体を浸漬する処理液を収容した処理槽と、
該処理槽中に浸漬された前記被処理体に近接して前記処理液中に臨ませた前記正負放電電極間に高電圧パルスを印加する高電圧パルス発生手段とで構成され、
前記高電圧パルス発生手段により前記正負放電電極間にアーク放電を発生させ、これにより発生する衝撃波によって前記被処理体に付着された異物またはバリを除去して洗浄するように構成されていることを特徴とするバリ取り洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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