説明

バルブユニット

【課題】一度連接させたバルブユニットに、新たなロードセンシングバルブを組み付けやすくする。
【解決手段】 圧力補償弁Cを備えた複数のロードセンシングバルブVを連接してバルブ連接体Gを構成する。そして、バルブ連接体Gの一端にインレットIを設け、他端にアウトレットOを設ける。このようにしたアウトレットOには、ロードセンシングバルブVに設けた最高負荷圧通路21に連通する最高負荷圧導入ポート29と、同じくロードセンシングバルブVに設けた負荷圧通路14に連通する負荷圧導入ポート28と、同じくロードセンシングバルブVに設けたタンク通路5に連通するタンクポート30とを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各ロードセンシングバルブに接続したアクチュエータのうち、最高負荷圧を選択するとともに、この最高負荷圧を、ポンプ吐出圧を制御するレギュレータに導くようにしたバルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のバルブユニットとして特許文献1に記載したものが従来から知られている。この従来のバルブユニットは、複数のロードセンシングバルブを連接してバルブ連接体を構成するとともに、このバルブ連接体の一端にインレットを設け、他端にアウトレットを設けたものである。
そして、上記各ロードセンシングバルブには、当該ロードセンシングバルブに接続したアクチュエータの負荷圧を導く負荷圧通路と、最高負荷圧をポンプのレギュレータに導く最高負荷圧通路と、タンクに連通するタンク通路とを設け、しかも、上記負荷圧通路、最高負荷圧通路、タンク通路のそれぞれをバルブ連接体内で連通させている。ただし、上記負荷圧通路の最終端は最高負荷圧通路に合流させている。
【0003】
また、上記のようにバルブ連接体内で連通させた最高負荷圧通路及びタンク通路の一端はインレットに形成したポートに接続し、他端はアウトレットでふさぐようにしている。
なお、上記ロードセンシングバルブのそれぞれには、圧力補償弁を設けるとともに、この圧力補償弁の一方の受圧面には当該ロードセンシングバルブが制御するアクチュエータの負荷圧を導き、他方の受圧面には最高負荷圧通路の最高圧を導く構成にしている。
また、各ロードセンシングバルブの負荷圧通路には選択弁を設け、他のロードセンシングバルブに接続したアクチュエータの負荷圧との間で、高い方の圧力をこの選択弁で選択して最高圧を上記最高負荷圧通路に導くようにしている。
【特許文献1】特開平11−218101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにしたバルブユニットでは、バルブ連接体を構成するロードセンシングバルブとは別のロードセンシングバルブを事後的に付加することがある。例えば、パワーショベルの場合には、当該パワーショベルの基本的な機能以外の機能を実現するためにいろいろなアタッチメントを付加するが、このときにはアタッチメント用のロードセンシングバルブを新たに付加しなければならない。
【0005】
しかし、上記した従来のロードセンシングバルブでは、バルブ連接体の一端をアウトレットでふさいでいるので、新たなロードセンシングバルブを付加するときには、インレットとアウトレットとを取り外して上記バルブ連接体を解体できるようにした上で、既存のバルブ連接体を構成していたロードセンシングバルブ間に、付加すべき新たなロードセンシングバルブを組み入れなければならなかった。したがって、この組み入れ作業は、結局は、製造段階での組み付け作業と変わらないものになっていた。
【0006】
しかし、製造段階での組み付け作業は、その作業になれている熟練者が行うので、組み付け精度が十分に保たれる。しかし、新たなロードセンシングバルブを組み入れるときには、例えば、パワーショベルメーカの作業者等の手で行われることがあるが、この場合には、その組み付け精度が十分に保たれなくなるという問題があった。
しかも、新たなロードセンシングバルブを付加するためには、既存のバルブ連接体を一体化するタイロッドも交換しなければならなかった。なぜなら、タイロッドは、バルブ連接体を構成するロードセンシングバルブの数によって、その長さが異なるからである。もし、適切なタイロッドがなければ、それこそ新たなロードセンシングバルブを組み入れることすらできなくなるといった問題もあった。
【0007】
この発明の目的は、新たなロードセンシングバルブを簡単に付加できるバルブユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のバルブユニットは、圧力補償弁を備えた複数のロードセンシングバルブを連接してバルブ連接体を構成するとともに、バルブ連接体の一端にインレットを設け、他端にアウトレットを設けている。
上記ロードセンシングバルブは、最高負荷圧をポンプのレギュレータに導く最高負荷圧通路と、この最高負荷圧通路と選択弁を介して連通する負荷圧通路とを備えている。そして、上記選択弁で選択された最高負荷圧を、上記最高負荷圧通路を介してポンプのレギュレータに導く構成にし、しかも、各ロードセンシングバルブの最高負荷圧通路、負荷圧通路及びタンク通路をバルブ連接体内で連通させている。
上記のようなバルブユニットを前提にしながら、この発明は、上記アウトレットに、上記最高負荷圧通路に連通する最高負荷圧導入ポートと、負荷圧通路に連通する負荷圧導入ポートとを設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、アウトレットに、最高負荷圧通路に連通する最高負荷圧導入ポートと、負荷圧通路に連通する負荷導入ポートと、タンク通路に連通するタンクポートとを設けたので、このポートを介して新たなロードセンシングバルブを連接することができる。そこにおいては、既存のバルブ連接体を解体する必要が全くないので、きわめて簡単かつ正確に新たなロードセンシングバルブを連接することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1はバルブ連接体Gと、インレットIと、アウトレットOとの連結状態を具体的に示した平面図、図2はロードセンシングバルブVの断面図、図3は回路図である。
まず、バルブ連接体Gを構成するロードセンシングバルブVを図2に基づいて説明する。ロードセンシングバルブVは、そのバルブ本体1に、アクチュエータポート2,3と、供給通路4と、タンク通路5とを形成している。
さらに、このバルブ本体1にはスプール孔6を形成するとともに、このスプール孔6にスプール7を摺動自在に組み込んでいる。
【0011】
そして、上記スプール7が図示の中立位置にあるとき、ポンプPに連通するポンプポート8と流入ポート9との連通が遮断されるが、この流入ポート9は圧力補償弁Cを介して上記供給通路4に連通している。また、上記のようにスプール7が中立位置にあるとき、アクチュエータポート2,3は、供給通路4及びタンク通路5のいずれにも連通しない閉状態を保つ。
【0012】
上記のようにしたスプール7には、スプール7が上記中立位置にあるとき、流入ポート9に対向する第1環状溝10と、同じくアクチュエータポート2,3に対向する第2,3環状溝11,12とを形成している。
そして、スプール7が上記の中立状態から、例えば、図面右方向に移動すると、第1環状溝10を介してポンプポート8と流入ポート9とが連通し、第2環状溝11を介して供給通路4とアクチュエータポート2とが連通し、第3環状溝12を介してアクチュエータポート3とタンク通路5とが連通する。
【0013】
したがって、ポンプPからの圧力流体は、ポンプポート8から流入ポート9に流入するとともに、圧力補償弁Cを押し開いて供給通路4に流入する。さらに、この供給通路4に流入した圧力流体は、第2環状溝11からアクチュエータポート2を介して図示していないアクチュエータに供給される。
また、上記アクチュエータからの戻り流体は、アクチュエータポート3から第3環状溝12を介してタンク通路5に戻されることになる。
【0014】
スプール7が上記と反対に図面左方向に移動すると、第1環状溝10を介してポンプポート8と流入ポート9とが連通し、第3環状溝12を介して供給通路4とアクチュエータポート3とが連通し、第2環状溝11を介してアクチュエータポート2とタンク通路5とが連通する。
したがって、ポンプPからの圧力流体は、ポンプポート8から流入ポート9に流入するとともに、圧力補償弁Cを押し開いて供給通路4に流入し、さらに、この供給通路4に流入した圧力流体は、第3環状溝12からアクチュエータポート3を介して図示していないアクチュエータに供給される。
また、上記アクチュエータからの戻り流体は、アクチュエータポート2から第2環状溝11を介してタンク通路5に戻されることになる。
なお、上記供給通路4は、負荷ポート13を介して、図3に示した負荷圧通路14に連通させている。
【0015】
また、上記圧力補償弁Cは、円筒状にした弁体15内に仕切り壁16を形成するとともに、その一方の受圧面17を流入ポート9に臨ませ、他方の受圧面18を最高負荷圧室19に臨ませている。そして、この最高負荷圧室19にはスプリング20を介在させている。
なお、上記最高負荷圧室19は、図3に示した最高負荷圧通路21に連通させている。
上記のようにした圧力補償弁Cは、一方の受圧面17に対する圧力の作用力と、他方の受圧面18に対する圧力の作用力とがバランスした位置を保ちながら、供給通路4に対する弁体15の連通ポート22の位置を制御し、供給通路4に対する連通ポート22の開度を制御する。
【0016】
上記のようにしたロードセンシングバルブVは、図1に示すように複数連接して、バルブ連接体Gを構成するとともに、このバルブ連接体Gの両端にインレットI及びアウトレットOを設けている。そして、このバルブ連接体G、インレットI及びアウトレットOを一体化した状態の等価回路を図3に示している。
図3に示すように、各ロードセンシングバルブVのバルブ本体1にポンプ流通路23を形成し、これら各バルブVのポンプ流通路23を互いに連通させるとともに、インレットIに形成したポンプ流通路24からポンプPに連通している。
なお、図中符号Tはインレットに形成したタンクポートである。
【0017】
そして、各ロードセンシングバルブVのポンプポート8は、上記ポンプ流通路23,24を介してポンプPに連通している。したがって、各ロードセンシングバルブVは、ポンプPに対して並列に接続されることになる。
また、バルブ本体1の供給通路4に連通させた負荷ポート13は、バルブ本体1に設けた選択弁25を介して負荷圧通路14に連通している。そして、選択弁25は、隣り合う他のロードセンシングバルブVの負荷圧通路に連通し、当該ロードセンシングバルブVの供給通路4の負荷圧と、隣り合う他のロードセンシングバルブに設けた供給通路の負荷圧とを比較して、高い方の負荷圧を上記負荷圧通路14に導くようにしている。
【0018】
上記のようにして複数の選択弁25で負荷圧が選択されていく過程で最高圧が選択されるとともに、選択された最高圧は最高負荷圧通路21に導かれる。そして、この最高負荷圧通路21は、各ロードセンシングバルブVのバルブ本体1に形成するとともに、圧力補償弁Cの最高負荷圧室19に連通させ、しかも、各バルブVの最高負荷圧通路21を互いに連通させている。
【0019】
さらに、上記最高負荷圧通路21は、インレットIに形成したポート26を介して、ポンプPの吐出圧を制御する図示していないレギュレータに接続している。なお、このレギュレータは、ポンプPの吐出圧が、上記最高負荷圧通路21から導かれた最高負荷圧よりも設定圧分だけ高い吐出圧を保つためのものである。
また、各ロードセンシングバルブVのバルブ本体1にはタンク通路5を設けているが、このタンク通路5も各バルブV間で連通するとともに、連通したタンク通路は、インレットIに形成したポート27を介して図示していないタンクに連通させている。
一方、アウトレットOには、上記負荷圧通路14に連通する負荷圧導入ポート28、最高負荷圧通路21に連通する最高負荷圧導入ポート29及びタンク通路5に連通するタンクポート30を形成している。ただし、これらポート28,29,30のそれぞれは、それを使用しないときプラグでふさいでおくものである。
【0020】
上記のようにしたバルブユニットは、例えば、パワーショベルの制御用として利用されるが、パワーショベルの場合に、アーム先端にいろいろなアタッチメントを付加することがある。このようなときには、負荷圧導入ポート28及び最高負荷圧導入ポート29をふさいでいたプラグを外して、そこに当該アタッチメントを制御するロードセンシングバルブの負荷圧通路、最高負荷圧通路及びタンク通路のそれぞれを接続する。なお、アタッチメント用のロードセンシングバルブはポンプPに直接連通させるようにしている。
この時には、バルブ連接体Gを解体する必要がないので、当該バルブ連接体Gを再び組み合わせるといった問題が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】バルブ連接体の平面図である。
【図2】ロードセンシングバルブの断面図である。
【図3】当該バルブユニットの等価回路図である。
【符号の説明】
【0022】
V ロードセンシングバルブ
G バルブ連接体
I インレット
O アウトレット
5 タンク通路
P ポンプ
C 圧力補償弁
14 負荷圧通路
21 最高負荷圧通路
28 負荷圧導入ポート
29 最高負荷圧導入ポート
30 タンクポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力補償弁を備えた複数のロードセンシングバルブを連接してバルブ連接体を構成するとともに、バルブ連接体の一端にインレットを設け、他端にアウトレットを設ける一方、上記ロードセンシングバルブは、最高負荷圧をポンプのレギュレータに導く最高負荷圧通路と、この最高負荷圧通路と選択弁を介して連通する負荷圧通路とを備え、上記選択弁で選択された最高負荷圧を、上記最高負荷圧通路を介してポンプのレギュレータに導く構成にし、しかも、各ロードセンシングバルブの最高負荷圧通路、負荷圧通路及びタンク通路をバルブ連接体内で連通させてなるバルブユニットにおいて、上記アウトレットには、上記最高負荷圧通路に連通する最高負荷圧導入ポートと、負荷圧通路に連通する負荷圧導入ポートとを設けたバルブユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−203994(P2009−203994A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43796(P2008−43796)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】