説明

バルブ及び燃焼式動力工具。

【課題】簡単な構成で自動的にガス噴射量を調整可能なバルブ及び燃焼式動力工具の提供。
【解決手段】ガス缶が装着されて燃料が供給されると共に打込機の燃焼室内に燃料を射出するバルブ12は、燃料容器から供給された燃料が貯留されると共に燃焼室に射出される一定量の燃料を蓄える計量室15aを画成する計量室内面を備えた計量キャップ14Aを有し、計量キャップ14Aは、凹部14bを有すると共に、計量室内面の一部であって凹部14bを密閉する樹脂シート14Cを有し、密閉された凹部14b内に希ガスを封入して、雰囲気温度の低下または上昇に応じて該計量室15a内容積を増加または縮小させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃焼式動力工具に用いられるバルブ及び前記バルブを使用した燃焼式動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる燃焼式動力工具において、釘打機やタッカ等の作業工具の駆動源としてピストン・シリンダ式の内燃機関を用いた構造が知られている。上記構造では、燃焼室内に取り込まれた外気に対し、ガス缶バルブの計量室に溜められたガスが噴射されることで混合気が形成され、点火機構によって燃焼動作が行われる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−285815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この燃焼式動力工具において、低温環境下では、空気中の酸素密度増加や、低温による燃焼反応性の悪化により、常温と比較して着火不良が発生しやすい。ガス噴射量を増やすことで改善が可能であるが、常温時の噴射量も多くなり、無駄が発生し、結果としてガス缶一本あたりの噴射回数が減ってしまう。よって本発明は、ガス噴射量を調整可能なバルブ及び燃焼式動力工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、燃料容器から燃料が供給されると共に燃焼式動力工具の燃焼室内に該燃料を射出するバルブであって、該バルブは、該燃料容器から供給された燃料が貯留されると共に該燃焼室に供給される燃料を蓄える計量室を画成する計量室内面を備えた計量室壁を有し、該計量室壁は、雰囲気温度の低下または上昇に応じて該計量室内容積を増加または縮小させるように構成されているバルブを提供する。
【0006】
上記構成のバルブにおいて、該計量室壁は、該計量室内面を規定する軟質材と、該軟質材と共に該計量室に隣接する密閉空間を画成する密閉空画成部と、該密閉空間内に配置されて該軟質材を介して該計量室内に接すると共に温度上昇または温度低下に応じて体積が増加または縮小する体積変化部材と、を含んで構成されていることが好ましい。
【0007】
また上記構成のバルブにおいて、該計量室壁は、温度変化に応じて変形するバイメタル材を含んで構成され、該バイメタル材は、該計量室内面が雰囲気温度の低下または上昇に応じて該計量室内容積を増加または縮小させるよう変形可能に構成されていてもよい。
【0008】
また上記構成のバルブにおいて、該計量室壁は、温度上昇及び温度低下に応じて体積が増加及び縮小する体積変化部材を含んで構成され、該体積変化部材は、該計量室内面が体積変化箇所になるように構成されていてもよい。
【0009】
また上記課題を解決するために、ハウジングと、該ハウジングに収容される燃料容器と、該ハウジングの一端に設けられたシリンダヘッドと、該シリンダヘッドと共に燃焼室を形成する燃焼室枠と、該燃料容器から燃料が供給されると共に該燃焼室内に該燃料を供給するバルブと、を備え、該バルブは、該燃料容器から供給された燃料が貯留されると共に該燃焼室に供給される燃料を蓄える計量室を画成する計量室内面を備えた計量室壁を有し、該計量室壁は、雰囲気温度の低下または上昇に応じて該計量室内容積を増加または縮小させるように構成されている燃焼式動力工具を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバルブ及び燃焼式動力工具によれば、温度変化に応じて、計量室容積を自動的に増減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る燃焼式動力工具及びバルブ部の側面断面図。
【図2】本発明の実施の形態に係るバルブ部の側面断面図。
【図3】本発明の実施の形態に係るバルブの側面断面図(ステムが最も一方側に移動している状態)。
【図4】本発明の実施の形態に係るバルブの側面断面図(ステムが他方側に移動して計量室が密閉された状態)。
【図5】本発明の実施の形態に係るバルブの側面断面図(ステムが最も他方側に移動している状態)。
【図6】本発明の実施の形態に係るバルブの側面断面図(密閉空間が膨張した状態)。
【図7】本発明の実施の形態に係るバルブの側面断面図(密閉空間が収縮した状態)。
【図8】本発明の実施の形態に係るバルブ部の第一の変形例に係る側面断面図。
【図9】本発明の実施の形態に係るバルブ部の第二の変形例に係る側面断面図。
【図10】本発明の実施の形態に係る燃焼式動力工具であってバルブ部が一体に構成された燃焼式動力工具の側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第一の実施の形態による燃焼式打込工具について図1乃至図3に基づき説明する。図1に示される燃焼式打撃工具である釘打機1は、ハウジング2と、ハンドル3と、ノーズ部4と、マガジン8と、から主に構成されており、バルブ部10が装着されてバルブ部10より燃料供給を受けている。尚、ハウジング2からノーズ部4に向かう一方向を下側方向として上下方向を定義し以下説明する。
【0013】
ハウジング2は、主ハウジング21と、ヘッドカバー22とから主に構成されている。主ハウジング21においては、ノーズ部4近傍の位置に図示せぬ排気口が形成されており、内部にシリンダ5と、燃焼室枠6と、ヘッドキャップ7とが主に内蔵されている。
【0014】
シリンダ5は、一方が略閉塞された筒状に構成されており、筒状の軸方向が上下方向と平行になるように主ハウジング21内に配置されるとともに、後述のテールカバー41を介して主ハウジング21に固定されている。シリンダ5の略閉塞された一方の壁部分には、後述のブレード52が挿通する孔5a形成されている。シリンダ5において上方の開口周縁部分には、燃焼室枠6の内周面と接触するシール部5Aが設けられている。またシリンダ5において下端部分には燃焼室枠6を下方に付勢する図示せぬバネが設けられている。
【0015】
シリンダ5の下端部付近には主ハウジング21の図示せぬ排気口と連通する図示せぬ排気穴が形成されている。また図示せぬ排気穴には、シリンダ5の内周面よりシリンダ5の外周面へ向う方向に排気を流通させる図示せぬ排気逆止弁が設けられている。
【0016】
シリンダ5の内部には、ピストン51とブレード52と、バンパ53とが内蔵されている。ピストン51は略円板状に形成されており、複数のシール材を介してシリンダ5内周に当接してシリンダ5内空間を上下に区切っている。ブレード52は、ピストン51の下方に配置されており、孔5aを貫通してシリンダ5外部に延出されている。バンパ53は、シリンダ5内においてピストン51の下方となる端部に配置されている。よってピストン51が下方に移動した場合であってもバンパ53によりピストン51とシリンダ5の孔5a周辺の壁部とが直接接触することが抑制される。またバンパ53は後述の図示せぬ釘を打ち込んだ際にピストン51の衝撃を吸収している。
【0017】
燃焼室枠6は、両端が開口した円筒状に構成されており、その円筒内にシリンダ5が配置された状態でシリンダ5に対して上下動可能に配置されている。燃焼室枠6とシリンダ5との間には、図示せぬバネが介在しており、この図示せぬバネによって、燃焼室枠6は、シリンダ5に対して下方側の付勢力が付加されている。燃焼室枠6の内面は、燃焼室枠6が図示せぬバネの付勢力に反して上昇した場合に、その内周面全体に亘ってシール部5Aと当接するように構成されている。よって燃焼室枠6が上昇した場合は、燃焼室枠6の内周面とシール部5Aとが当接部分において気密性を保つことができる。
【0018】
ヘッドキャップ7は、燃焼室枠6の上方に配置されて主ハウジング21に固定されて設けられている。ヘッドキャップ7の下面部分には、燃焼室枠6の上端部分と係合する凹部7aが形成されており、凹部7aを形成する面には、燃焼室枠6と係合するシール部7Aが設けられている。
【0019】
燃焼室枠6が上方へ移動し、凹部7aにおいてシール部7Aと燃焼室枠6の上端部分とが係合することにより、この係合箇所において気密性を保持することができる。この気密性が保たれることにより、シリンダ5及びシリンダ5内のピストン51と、燃焼室枠6と、ヘッドキャップ7とにより燃焼室2aが画成される。
【0020】
またヘッドキャップ7には、ファンモータ71と、点火プラグ73とが設けられている。ファンモータ71は、回転軸71Aが上下方向と平行かつその先端が燃焼室2a内に突出するように配置されており、ヘッドキャップ7に弾発的に保持されている。このファンモータ71は図示せぬ電池より電力が供給されて回転駆動される。
【0021】
ファンモータ71の回転軸71Aにはファン72が設けられている。ファン72が燃焼室2a内で回転することにより、燃焼室2a内に供給された燃料ガスを攪拌して好適な混合気を形成するとともに、燃料ガスが燃焼した排ガスを燃焼室2a内から好適に排出することが可能となっている。またファン72は、ヘッドカバー22に設けられた図示せぬ孔から新鮮な空気を取り込んでいる。
【0022】
点火プラグ73は、点火部分がヘッドキャップ7において燃焼室2aを画成する面上に位置するように配置されている。よって燃焼室2a内に供給された燃料ガスに点火することが可能となっている。またヘッドキャップ7においては、バルブ部10から供給される燃料ガスを燃焼室2a内に導入する流路7bが形成されている。
【0023】
ヘッドカバー22は、主ハウジング21の上方に設けられており、ヘッドキャップ7を保護すると共に、ファンモータ71を保持している。また主ハウジング21において、後述のハンドル3上方には、バルブ部10を収容可能なバルブ収容部21aが形成されている。
【0024】
ハンドル3は、ハウジング2においてバルブ収容部21aから上下方向と交差する方向に延出されており、トリガ31と、第二コンタクトスイッチ24と、図示せぬ制御回路を主に備えて構成されている。
【0025】
トリガ31は、ハンドル3の基端部分下方側であって第二コンタクトスイッチ24の下方に設けられている。ワークコンタクト42と燃焼室枠6との間、及びワークコンタクト42とバルブ部10との間には、それぞれ図示せぬリンク機構が介在し、ワークコンタクト42を操作することにより、燃焼室枠6が上方へと移動して密閉された燃焼室2aが画成されると共に、バルブ部10をヘッドキャップ7へと近づけることができる。
【0026】
図示せぬ制御回路は、マガジン8側面に設けられており、ファンタイマーやファン駆動回路、点火回路を備えている。ファンタイマーは、第一コンタクトスイッチ23と第二コンタクトスイッチ24との少なくとも何れか一方からのON信号に応じ、ファン72を回転させるファンモータ71の駆動に係る電力の供給時間を規定している。ファン駆動回路は、第一コンタクトスイッチ23と第二コンタクトスイッチ24との少なくとも何れか一方からのON信号に応じ、ファン72を回転させるファンモータ71に供給される電力を供給・遮断している。点火回路は、第一コンタクトスイッチ23と第二コンタクトスイッチ24との双方からのON信号に応じ、点火プラグ73に駆動電力を供給している。
【0027】
第二コンタクトスイッチ24は、トリガ31の動作を感知しており、トリガ31が上昇して第二コンタクトスイッチ24と接触した状態でON信号を出力し、非接触の状態ではOFF信号を出力する。
【0028】
ノーズ部4は、主ハウジング21の下方に設けられており、主にテールカバー41とワークコンタクト42とから構成されている。テールカバー41は、主ハウジング21に固定されていると共にシリンダ5を担持している。テールカバー41には、孔5aと連通する孔41aが形成されている。
【0029】
マガジン8は内部に複数本の図示せぬ釘を内蔵しており、ノーズ部4に接続されている。マガジン8から供給された図示せぬ釘は、テールカバー41において孔41aの下方に配置されている。
【0030】
ワークコンタクト42は、バルブ収容部21a位置からノーズ部4の先端位置の間であってシリンダ5の下方に設けられており、当接部42Aと、接触部材42Bとを備えて構成されている。当接部42Aは、テールカバー41に装着されて上下方向に移動可能に保持されており、下端がテールカバー41下端より突出するように構成されている。接触部材42Bは、バルブ収容部21a内に配置されており、ワークコンタクト42が上方へ移動した場合に第一コンタクトスイッチ23と接触可能に構成されている。またワークコンタクト42とシリンダ5との間には、図示せぬバネが介在しておりワークコンタクト42を下方に付勢している。よってワークコンタクト42が上方に付勢されていない状態で当接部42Aの下側先端部分は、図示せぬ釘の先端部分より下側まで突出している。尚図示せぬバネは弱いバネであるので、ワークコンタクト42は図示せぬバネの付勢力に抗い容易に上方に移動することが可能になっている。
【0031】
図2に示されるように、バルブ部10は、主にガス缶11とバルブ12から構成されている。燃料容器であるガス缶11は、市販されている公知のガス缶であり、金属製の外殻11Aと、外殻11A内に配置され燃料ガスが注入された樹脂製もしくは金属箔製のガス袋11Bと、外殻11Aに固定されると共にガス袋11B内と連通し、押し込まれることにより燃料ガスを外部に射出可能なステム11Cとを備えている。外殻11A内であってガス袋11Bとの間には、外殻11A内の圧力を高める外ガスが封入されており、故にステム11Cが押し込まれることによりガス袋11B内の燃料ガスを外部に射出することが可能になる。
【0032】
バルブ12は、バルブハウジング13と、計量部14と、ステム部15とから主に構成されている。バルブハウジング13は、熱伝導率の高い金属製もしくは樹脂製であり、ガス缶11が装着される装着部13Aと、ステム部15が内蔵される収容空間13aとを主に有している。装着部13Aは、ガス缶11の外殻11Aが嵌合する円筒状の爪部13Bと、爪部13Bを構成する円筒の中心に位置し、ステム11Cが挿入される挿入孔13bとを有している。挿入孔13bは収容空間13aと連通している。以下、バルブ部10に係る説明においては、装着部13Aにガス缶11が装着される方向(爪部13Bを構成する円筒の軸方向)を第一方向と定義する。
【0033】
図3に示されるように収容空間13aは、内部に計量部14及びステム部15が配置されると共に、ステム11Cから挿入孔13bへと噴射された燃料ガスを計量部14に導く通路を構成しており、バルブハウジング13の端面に開口するように形成されている。バルブハウジング13において収容空間13aの開口位置には、収容空間13aを塞ぐバルブキャップ13Cが配置されている。またバルブハウジング13において、収容空間13aに関して装着部13Aの反対側には、複数のリブ13Dが設けられ、このリブ13Dによりバルブハウジング13の熱の放散・吸収性を向上させている。
【0034】
計量部14は、計量室14aを画成する計量室壁である計量キャップ14Aと、シーリングラバー14Bとから主に構成されている。計量キャップ14Aは、熱伝導率の高い金属もしくは樹脂製であり、略円筒状に構成され、第一方向と直交する方向が円筒の軸方向に成るようにバルブハウジング13においてバルブキャップ13C近傍に付設されている。計量キャップ14Aの反開口側端部(紙面中右側端部)であって内周側位置には、計量キャップ14の軸心側に向かって延びるスカート14Dが周回り一連に設けられている。計量キャップ14Aの内周面であってスカート14D近傍位置には、周方向に亘って一連に形成された溝状の凹部14bを有しており、凹部14bは、樹脂シート14Cによって密閉されて密閉空間14bを形成している。樹脂シート14Cは軟質樹脂から構成されており、計量キャップ14A内周面と共に計量室14aを画成している。樹脂シート14Cで密閉された密閉空間14b内には、体積変化部材であるヘリウム等の希ガスが封入されている。
【0035】
シーリングラバー14Bは、ゴム等の樹脂製であり、バルブキャップ13Cと計量キャップ14Aとの間に位置し、計量キャップ14Aの開口側端部を閉止している。またシーリングラバー14Bの中央には、ステム部15が計量キャップ14Aの軸方向に摺動可能に収容される孔14cが形成されている。
【0036】
ステム部15は、ステム15Aと、バネ16とから構成されている。ステム15Aは、丸棒状に構成され、その丸棒の軸方向が第一方向と直交するようにシーリングラバー14Bの孔14c内に挿入されてシーリングラバー14Bに軸方向に摺動可能に保持されている。孔14c内面とステム15Aの外周面との間は密着した状態を保っており、故に孔14cから計量室14a内の燃料ガスが漏れることは防がれている。ステム15Aにおいて、シーリングラバー14Bから計量室14a外へと突出する一端側には、他端側へと向けて穿設されるガス排出口15aが形成されており、ステム15A外周面においてガス排出口15aの最深部近傍位置には、外周面の周回りに一連のリブ15Bが設けられている。リブ15Bは、ステム15Aが最も一端側へと移動した際に、シーリングラバー14Bと当接する位置に配置されている。ステム15Aにおいてリブ15Bよりも一端側には、外表面に開口すると共にガス排出口15aに連通する通気孔15bが形成されている。
【0037】
ステム15Aにおいて、リブ15Bより他端側は、スカート14Dの内周径と略同径を成す円柱状の大径部15Cと、大径部15Cより他端側に位置し大径部15Cより小径の小径部15Dとを有している。この大径部15Cと小径部15Dとは、ステム15Aが最も一端側に移動している状態(図3)では小径部15Dがスカート14Dと対向し、ステム15Aが他端側に移動して今だ通気孔15bが孔14cに位置している状態(図4)で初めてスカート14Dに大径部15Cが貫入されるように構成されている。
【0038】
バネ16は、小径部15Dの他端に係合してステム15Aを一端側に付勢するように収容空間13aに配置されている。よって通常ステム15Aは、リブ15Bがシーリングラバー14Bと当接する最も一端側に位置している。
【0039】
このステム15Aがヘッドキャップ7の流路7bに接続され、バルブ部10がヘッドキャップ7に押し付けられることにより、バネ16に抗ってステム15Aがバルブハウジング13に対して他方側へと移動することが可能になる。
【0040】
ガス缶11は、バルブ12に装着された状態で、ステム11Cが常にバルブ12に押し付けられた状態であるので、ガス缶11の燃料ガスは挿入孔13bを介して収容空間13aに送気される。バルブ10がヘッドキャップ7に押し付けられていない状態、即ちステム15Aがバルブハウジング13に対して最も一端側に位置している状態で(図3)は、小径部15Dがスカート14Dと対向する位置にあるため、小径部15Dとスカート14Dとの間の隙間から計量室14a内に燃料ガスが流入する。
【0041】
この状態で図4に示すようにステム15Aが他方側へと移動すると、スカート14Dと大径部15Cが係合してスカート14Dとステム15Aとの間が閉止され、収容空間13aから計量室14a内への燃料ガスの供給が停止する。この時に計量室14a内の容積は、計量キャップ15Aの内表面と、シーリングラバー14Bの他端側端面と、ステム15Aの外表面と、のそれぞれの形状に基づき規定される。図5に示されるように更にステム15Aが他方側へと移動すると、通気孔15bが計量室14a内まで移動し、計量室14a内の燃料ガスが通気孔15bを介してガス排出口15aから排出される。この状態においてもスカート14Dとステム15Aとの間は閉止されているため、ガス排出口15aから排出される燃料ガス量は計量室14aの容積に依存する。計量室14aを画成する計量室内面の一部は、樹脂シート14Cから構成されているが、樹脂シート14Cは、希ガスが密閉された密閉空間14bを覆っている。密閉空間14bを画成する密閉空間画成部である計量キャップ14A及び計量キャップ14Aを保持するバルブハウジング13はいずれも良熱伝導体であるため、外気温が密閉空間14bにも伝わり、内部に密閉された希ガスも外気温と同一温度になる。希ガスは温度変化による体積変化が大きいため、外気温が上昇すると体積膨張し、外気温が低下すると体積減少する。この体積増減に応じて、図6に示されるように樹脂シート14Cが計量室14a内へと突出、若しくは図7に示されるように密閉空間側へと凹むことになり、故に外気温に応じて計量室14a内容積を増減することができる。
【0042】
上記構成の釘打機1において、図示せぬ釘を打設する際には、先ずノーズ部4の先端から突出している図示せぬ釘の先端を被打込材の所定の打込箇所に沿わせる。その後当接部42Aを被打込材に当接させ、ワークコンタクト42を上方へ移動させる。ワークコンタクト42の上方への移動により、図示せぬリンク機構を介して燃焼室枠6が上昇し燃焼室2aを画成すると共にバルブ部10をヘッドキャップ7へと押し付け、燃焼室2a内に燃料ガスを噴射する。また、この時に第一コンタクトスイッチ23に接触部材42Bが接触するため、第一コンタクトスイッチ23からON信号が出力され、この信号がファンタイマー及びファン駆動回路で検出されてファン72が回転する。この燃料ガスは燃焼室2a内においてファン72により燃焼室内2aの空気と攪拌されるため、燃焼室2a内には好適な混合気が形成される。
【0043】
その後トリガ31を引くことにより、第二コンタクトスイッチ24にトリガ31が接触するため、第二コンタクトスイッチ13からON信号が出力される。第一コンタクトスイッチ12からもON信号が出力されているため、双方のON信号が点火回路で検出されて点火プラグ73に通電し、混合気が燃焼し、ピストン51を急激に下方へ移動させ、ブレード52により図示せぬ釘を被打込材に打ち込む。
【0044】
上記構成の釘打機1は、気温−20℃や気温40℃の環境下で使用することがあり、このような環境下では、空気において単位体積中の酸素量も異なるため、これに応じて燃料ガスの噴射量も増減することが好ましい。また特に低温時においては、混合気中において点火プラグで点火後の火炎伝播速度が低下するため、燃焼室2a内の混合気における燃焼ガス濃度を高めることが要求される。
【0045】
これに対して本実施例では、計量室14aの容積が外気温の上昇及び低下に応じて減少及び増加しており、故に外気温が高い時には、燃焼室2a内に噴射される燃料ガス量が減少し、外気温が低い時には燃焼室2a内に噴射される燃料ガス量が増加する。即ち、特に操作をせずとも、外気温に応じた所望の燃料ガス量を燃焼室2a内に噴射することができる。
【0046】
本発明によるバルブ及びバルブを備えた燃焼式動力工具は上述の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の改良や変形が可能である。上記実施の形態では、密閉空間14b内に気体である希ガスを封入したがこれに限らず、例えばエタノール等の液体であってもよい。
【0047】
また図8に示されるように、凹部14bをバイメタル材114Cで閉止する構造であってもよい。このバイメタル材114Cは、熱膨張率が異なる2枚の金属板を貼り合わせて構成されており、外気温の変化により温度上昇して高温になることにより計量室14a内へと突出し、温度低下して低温になることにより凹部14b側へと凹む特性を備えている。この構成により外気温に応じて計量室14a内容積を増減することができる。尚、この構成において凹部14bは、計量室14a以外の空間に対して必ずしも密閉される必要はなく、例えば収容空間13aに開口していてもよい。またバイメタル材114Cを用いた構成で凹部14bを密閉した状態とするならば、上述の実施の形態と同様に、内部に温度変化に応じて体積変化する気体や液体を封入してもよい。
【0048】
また図9に示されるように、計量キャップ214Aに凹部を形成せず、計量キャップ214A内に温度によって体積変化する体積変化部材214Cを配置してもよい。この体積変化部材214Cは、固体状のパラフィンやポリエチレンであり、温度上昇して高温になることにより体積増加し、温度低下して低温になることにより体積減少する特性を備えている。この構成により外気温に応じて計量室14a内容積を増減することができる。
【0049】
また上記実施の形態では、バルブ部10が釘打機1と別体に構成されて、バルブ部10が釘打機1に対して着脱可能に構成されているが、これに限らず、図10に示されるように、ハウジング2の一部であって主ハウジング21に対してハンドル3側に位置する部分であるバルブハウジング部121Aを、図2に示されるバルブハウジング13と同様の構造してバルブ部10を構成してもよい。このバルブハウジング部121Aは、バルブハウジング部121Aの上部であって主ハウジング21に近接する位置に上下方向及び主ハウジング21からハンドル3が延びる方向のそれぞれと直交する方向を軸方向とする回転軸121Bを有し、この回転軸121Bで主ハウジング21に回動可能に接続されている。このように構成されることにより、バルブハウジング部121Aが主ハウジング21に近接離間可能になり、バルブ部10によって燃焼室2a内に燃料噴射が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のバルブ及び燃焼式動力工具は、上述の釘打機の他に、ねじ打ち機等の燃料ガスを動力として駆動される動力工具に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:釘打機 2:ハウジング 2a:燃焼室 3:ハンドル 4:ノーズ部
5:シリンダ 5A:シール部 5a:孔 6:燃焼室枠 7:ヘッドキャップ
7A:シール部 7a:凹部 7b:流路 8:マガジン 10:バルブ部
11:ガス缶 11A:外殻 11B:ガス袋 11C:ステム 12:バルブ
13:バルブハウジング 13A:装着部 13B:爪部 13C:バルブキャップ
13D:リブ 13a:収容空間 13b:挿入孔 14:計量部
14A:計量キャップ 14B:シーリングラバー 14C:樹脂シート
14D:スカート 14a:計量室 14b:凹部、密閉空間 14c:孔
15:ステム部 15A:ステム 15B:リブ 15C:大径部 15D:小径部
15a:ガス排出口 15b:通気孔 16:バネ 21:主ハウジング
21a:バルブ収容部 22:ヘッドカバー 23:第一コンタクトスイッチ
24:第二コンタクトスイッチ 31:トリガ 31A:連結部 41:テールカバー
41a:孔 42:ワークコンタクト 42A:当接部 42B:接触部材
51:ピストン 52:ブレード 53:バンパ 71:ファンモータ 71A:回転軸
72:ファン 73:点火プラグバネ93



【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料容器から燃料が供給されると共に燃焼式動力工具の燃焼室内に該燃料を射出するバルブであって、
該バルブは、該燃料容器から供給された燃料が貯留されると共に該燃焼室に供給される燃料を蓄える計量室を画成する計量室内面を備えた計量室壁を有し、
該計量室壁は、雰囲気温度の低下または上昇に応じて該計量室内体積を増加または縮小させるように構成されていることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
該計量室壁は、該計量室内面を規定する軟質材と、該軟質材と共に該計量室に隣接する密閉空間を画成する密閉空画成部と、該密閉空間内に配置されて該軟質材を介して該計量室内に接すると共に温度上昇または温度低下に応じて体積が増加または縮小する体積変化部材と、を含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
該計量室壁は、温度変化に応じて変形するバイメタル材を含んで構成され、
該バイメタル材は、該計量室内面が雰囲気温度の低下または上昇に応じて該計量室内体積を増加または縮小させるよう変形可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項4】
該計量室壁は、温度上昇及び温度低下に応じて体積が増加及び縮小する体積変化部材を含んで構成され、
該体積変化部材は、該計量室内面が体積変化箇所になるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項5】
ハウジングと、
該ハウジングに収容される燃料容器と、
該ハウジングの一端に設けられたシリンダヘッドと、
該シリンダヘッドと共に燃焼室を形成する燃焼室枠と、
該燃料容器から燃料が供給されると共に該燃焼室内に該燃料を供給するバルブと、を備え、
該バルブは、該燃料容器から供給された燃料が貯留されると共に該燃焼室に供給される燃料を蓄える計量室を画成する計量室内面を備えた計量室壁を有し、
該計量室壁は、雰囲気温度の低下または上昇に応じて該計量室内体積を増加または縮小させるように構成されていることを特徴とする燃焼式動力工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−22693(P2013−22693A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160692(P2011−160692)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】