説明

バルーンカテーテル

【課題】バルーンの拡張後であっても再巻き付き特性、すなわちリラップ特性に優れ、再挿入および取り出しが容易であるバルーンカテーテルを提供すること。
【解決手段】バルーンと、バルーンの先端部が接合されバルーンの内部を軸方向に延びるインナーシャフトと、バルーンの基端部が接合され、内部に前記インナーシャフトを軸方向に収容し、前記バルーンの内部に圧力流体を給排可能なルーメンを形成するアウターシャフトとを備えるバルーンカテーテルにおいて、バルーンに圧力が作用しない状態でバルーンの先端部に対して、バルーンの基端部が円周方向に相対的に所定の角度で捻れてアウターシャフトに接合され、アウターシャフトの先端部から基端側に所定距離離れた位置で、インナーシャフトとアウターシャフトとが接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば心臓血管の狭窄部の拡張術として、バルーンカテーテルを用いた方法が提案されている。バルーンカテーテルを血管内部に通し、バルーンカテーテルの先端部に装着してあるバルーンを、血管の狭窄部の位置まで案内し、その位置で、バルーンの内部に圧力流体を導入してバルーンを拡張し、狭窄部を拡げる。
【0003】
このような体腔拡張用バルーンカテーテルにおいて、バルーンカテーテルを血管内部に挿入する際には、バルーンの外径は、できる限り小さい方が良く、バルーンは収縮されて折り畳まれている。そして、治療済のバルーンカテーテルを血管内部から取り出す際には、拡張されたバルーンの内部から圧力流体を導出させてバルーンを収縮させて再度折り畳む必要がある。
【0004】
バルーンの再折り畳み(リラップ)性を向上させる方法としては、高分子材料で構成されたバルーンの製造時に折り畳み状態を記憶させる方法が採用されている。しかしながら、高分子材料に熱処理などにより折り畳み状態を記憶させても、完全な折り畳み形状を記憶させること(形状記憶性)は困難である。しかも、バルーンの内部に流体圧力を加えて拡張した後では、バルーンの形状記憶性が低下し、リラップ性が低下する。リラップ性が低下すると、バルーンが収縮しても折り畳まれた状態のバルーンの外径を小さくすることが困難になり、バルーンカテーテルを血管内部で引き戻す際に、血管やガイディングカテーテルに引っ掛かりやすくなり好ましくない。
【0005】
また1つのバルーンカテーテルで、複数箇所の狭窄部の拡張を行う場合もあるが、その場合に、バルーンの拡張と収縮とを繰り返すうちに、バルーンの形状記憶性が低下し、リラップ性が低下する。リラップ性が低下すると、バルーンが収縮しても折り畳まれた状態のバルーンの外径を小さくすることが困難になり、拡張治療すべき次の狭窄部にバルーンを通しにくくなるおそれもある。
【0006】
特許文献1には、バルーンの先端部が接合されるインナーシャフトと、バルーンの基端部が接合される先端部を有し、内部に前記インナーシャフトを軸方向に収容し、前記バルーンの内部に流体圧力を出し入れするルーメンを前記インナーシャフトとの間に形成しているアウターシャフトとを備え、バルーンに内部圧力が作用しない状態で、バルーンの先端部に対して、バルーンの基端部が、円周方向に相対的に所定の角度θで捻れてアウターシャフトの先端部に接合されるバルーンカテーテルが記載されている。
【0007】
特許文献1に記載のバルーンカテーテルによれば、バルーンが拡張すれば、バルーンの軸方向の捻れを戻すように膨らみ、その捻れ力は、バルーンが接合してあるアウターシャフトおよびインナーシャフトに伝達し、これらを相対的に捻らせる。血管の狭窄部の拡張治療が終了してバルーンの内部圧力を解除して負圧にすれば、アウターシャフトおよびインナーシャフトに伝達された捻れ力が、バルーンの形状記憶により折り畳み形状に戻ろうとする力を助けて、バルーンは容易に折り畳まれ、インナーシャフトの周囲に巻き付くことになる。
【0008】
一般的にバルーンカテーテルの長さは長いものでは1mを超え、インナーシャフトおよびアウターシャフトもバルーンカテーテルの長さに応じて長くなる。ここで特許文献1に記載のバルーンカテーテルの構成では、インナーシャフトおよびアウターシャフトの長さが長くなると、アウターシャフトおよびインナーシャフトに伝達される捻れ力が分散され、バルーンが折り畳み形状に戻ろうとする力を助けるほど捩れ力が発生せず、リラップ性に対する効果が発揮されない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−148048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、バルーンの拡張後であっても再巻き付き特性、すなわちリラップ特性に優れ、再挿入および取り出しが容易であるバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、折り畳み可能なバルーンと、前記バルーンの先端部が接合される先端部を有し、前記バルーンの内部を軸方向に延びるインナーシャフトと、前記バルーンの基端部が接合される先端部を有し、内部に前記インナーシャフトを軸方向に収容し、前記バルーンの内部に圧力流体を給排可能なルーメンを形成するアウターシャフトとを備え、前記バルーンに圧力が作用しない状態で、前記バルーンの先端部に対して、前記バルーンの基端部が、円周方向に相対的に所定の角度で捻れて前記カテーテルシャフトの先端部に接合され、前記アウターシャフトの先端部から基端側に所定距離離れた位置で前記インナーシャフトと、アウターシャフトとが接合されていることを特徴とするバルーンカテーテルである。
【0012】
本発明によれば、バルーンに内部圧力が作用してバルーンが拡張すれば、バルーンの軸方向の捻れを戻すように膨らみ、その捻れ力は、バルーンが接合してあるアウターシャフトおよびインナーシャフトに伝達し、これらを相対的に捻らせる。血管の狭窄部の拡張治療が終了してバルーンの内部圧力を解除して負圧にすれば、バルーンは収縮し、バルーンが記憶してある折り畳み形状に戻ろうとする。ここで本発明のバルーンカテーテルでは、インナーシャフトと、アウターシャフトとがアウターシャフトの先端部から基端側に所定距離離れた位置で接合されている。したがってバルーンが拡張すればインナーシャフトの先端部からインナーシャフトとアウターシャフトとが接合されている位置までの領域において好適に捻れ力を発生させ、バルーンの内部圧力を解除すると当該捻れ力の助けによりバルーンが折り畳み形状に戻ろうとすることができる。これによりバルーンの拡張後であっても再巻き付き特性、すなわちリラップ特性に優れており、収縮状態でのバルーンの外径を小さくすることが容易である。そのため、他の狭窄部への再挿入が容易であると共に、治療後におけるバルーンカテーテルの取り出しが容易である。
【0013】
好ましくは、前記アウターシャフトおよびインナーシャフトの少なくとも何れかが、少なくとも軸方向一部が、外力が作用して長手方向に沿って所定の角度で捻れたとしても、外力が解除された状態で捻れが回復する弾力性部材で構成される。このような弾力性部材としては、特に限定されないが、たとえば超弾性合金、エラストマー、補強繊維などの補強材でブレードされた複合部材、コイル部材などが例示される。
【0014】
このような弾力性部材で構成することにより、捻れているバルーンが拡張する際に、その捻れ力が弾力性部材に伝達して良好に捻れ、バルーンが収縮する際には、弾力性部材に伝達している捻れ力をバルーンに良好に戻すことができる。
【0015】
好ましくは、前記所定の角度が30〜540度、さらに好ましくは90〜360度である。角度が小さすぎると、本発明の効果が小さく、逆に大きすぎると、バルーンの捻れが大きくなりすぎ、バルーン、アウターシャフトおよび/またはインナーシャフトに作用する負担が大きくなる傾向にある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルの縦断面図。
【図2】図1に示すII−II線に沿う横断面図
【図3】図3(A)は図1に示すIII−III線に沿う横断面図、図3(B)はバルーンが収縮する過程を示すバルーンの横断面図、図3(C)は本発明の他の実施形態に係るバルーンが収縮する過程を示すバルーンの横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルの縦断面図であり、図2は、図1に示すII−II線における横断面図であり、図3(A)は図1に示すIII−III線における横断面図であり、図3(B)はバルーンが収縮する過程を示すバルーンの横断面図であり、図3(C)は本発明の他の実施形態に係るバルーンが収縮する過程を示すバルーンの横断面図である。
【0018】
図1に示すように、バルーンカテーテル1は、折り畳み可能なバルーン2と、バルーン2の先端部2aが接合される先端部3aを有し、バルーン2の内部を軸方向に延びるインナーシャフト3と、バルーン2の基端部2bが接合される先端部4aを有し、内部にインナーシャフト3を軸方向に収容し、バルーン2の内部に圧力流体を給排可能な給排ルーメン5を形成するアウターシャフト4とを備える。図1は、バルーン2が、内部に供給された圧力流体により、拡張している状態を示す。以下、バルーン2の先端部2aをバルーン先端部2aと、インナーシャフト3の先端部3aをインナー先端部3aと、アウターシャフトの先端部4aをアウター先端部4aという場合がある。
【0019】
インナーシャフト3は、ガイドワイヤ挿通可能なガイドワイヤルーメン6を形成し、ガイドワイヤルーメン6は、インナー先端部3aおよびインナーシャフト3の基端部(以下、インナー基端部という場合がある。)3bで開口する。インナー先端部3aは、バルーン先端部2aよりも幾分先端側に突出するように設けられている。インナー基端部3bおよびアウターシャフト4の基端部4bにはハブ7が接続される。ハブ7は、ガイドワイヤルーメン6に連通するガイドワイヤポート8と、給排ルーメン5に連通する給排ポート9とを備えている。以下、アウターシャフト4の基端部4bをアウター基端部4bという場合がある。
【0020】
アウターシャフト4は、アウター先端部4aがインナー先端部3aより基端側に後退した位置に配置され、インナーシャフト3と同軸的に設けられる。本実施形態ではアウターシャフト4の内面とインナーシャフト3の外面との間に給排ルーメン5が形成される。
【0021】
バルーン2はバルーン先端部2aがインナー先端部3aに接合され、バルーンに圧力が作用しない状態、換言すれば収縮状態で、バルーン先端部2aに対して、前記バルーン基端部2bが、円周方向に相対的に所定の角度θで捻れてアウター先端部4aに接合されている。所定の角度が小さすぎると角度が小さすぎると、本発明の効果が小さく、逆に大きすぎると、バルーンの捻れが大きくなりすぎ、バルーン、アウターシャフトおよび/またはインナーシャフトに作用する負担が大きくなる傾向にある。所定の角度θは、好ましくは30〜540度、さらに好ましくは90〜360度である。本実施形態では、バルーンと各シャフトとの接合は溶着によって行われ、具体的にはバルーン先端部2aの内面とインナー先端部3aの外面とが溶着され、バルーン基端部2bの内面とアウター先端部4aの面とが溶着される。
【0022】
バルーン2の内部は、バルーン基端部2bにおいて給排ルーメン5と連通している。バルーン2は内部に供給および内部から排出される流体圧力により半径方向に拡張および収縮が可能になっている。バルーン2は収縮状態ではインナーシャフト3の外周で収縮または折り畳まれた状態になっている。バルーン2は拡張した状態では少なくとも一部が円筒状となる円筒部2cを有し、血管の狭窄部を容易に拡張できるようになっている。具体的にはバルーン2は、拡張した状態では、先端側からバルーン先端部2a、先端側テーパ部2d、円筒部2c、基端側テーパ部2e、バルーン基端部2bを有する。
【0023】
バルーン2を拡張および収縮させるための圧力流体は、ハブ7の給排ポート9に、図示しない圧力流体給排装置を接続し、圧力流体供給排装置から給排ポート9および給排ルーメン5を通して、バルーン2の内部に導入される。バルーン2の内部に導入される圧力流体は、たとえば生理食塩水、ヨウ素系造影剤が用いられる。血管などの狭窄部を拡張するためにバルーン2の内部に導入される圧力流体の圧力は、好ましくは、約0.8〜1.5MPaである。バルーン2を収縮させるときには、2.0kPa以下程度に減圧する。
【0024】
バルーン2の円筒部2cに対応する位置において、インナーシャフト3の外面にX線造影性の高い材質からなるマーカ10が設けられる。なお、バルーン2の円筒部2cの基端に対応する位置において、インナーシャフト3の外面に第2のマーカ(図示せず)を設けてもよい。また、この例に限らず、バルーン2の円筒部の両端に対応する位置において、インナーシャフト3の外面にマーカを2つ設けてもよい。
【0025】
インナーシャフト3と、アウターシャフト4とはアウター先端部4aから基端側に軸方向に所定距離L1だけ離れた位置でインナーシャフト3と、アウターシャフト4とが接合されている。具体的には図2に示すように、インナーシャフト3の外面3cとアウターシャフト4の内面4cとが、アウター先端部4aより基端側に軸方向に所定距離L1だけ離れた位置で接合され、接合部11を形成している。インナーシャフト3と、アウターシャフト4との接合は接着など特に限定されないが、本実施形態では溶着によって接合されている。
【0026】
アウター先端部4aより基端側に所定距離L1だけ離れた位置でインナーシャフト3と、アウターシャフト4とを接合することによりバルーン2の柔軟性が損なわれることがなく、血管への押し込み性、追従性に優れたカテーテルとすることができる。所定距離L1は、アウター先端部4aの最先端4dから接合部11の最先端11aまでの軸方向の距離であり、好ましくは3〜30cmである。所定距離L1が大きすぎると、本発明の効果が小さく、逆に小さすぎると、バルーン2を拡張したときの単位長さあたりの捻れが大きくなり、バルーン、アウターシャフトおよび/またはインナーシャフトに作用する負担が大きくなる傾向にある。また接合領域の軸方向の長さL2は特に限定されないが、好ましくは2〜20mmである。アウターシャフト4の内面とインナーシャフト3の外面との接合部11は、インナーシャフト3の外面の円周の5〜45%にわたって形成される。
【0027】
インナーシャフト3を構成する材料としては、ある程度可撓性を有するものであればよく、たとえばポリオレフィン、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれらのうち2種以上の混合物など、またポリオレフィンを架橋したもの、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂などの高分子材料またはこれらの混合物などを用いることができる。本実施形態では、インナーシャフト3が、少なくとも軸方向一部が、外力が作用して軸方向に沿って所定の角度で捻れたとしても、外力が解除された状態で捻れが回復する弾力性部材で構成される。具体的には、インナー先端部3aと接合部11との間のインナーシャフト3の少なくとも軸方向一部が、外力が作用して長手方向に沿って所定の角度で捻れたとしても、外力が解除された状態で捻れが回復する弾力性部材で構成される。弾力性部材としては、たとえばNi−Ti合金などの超弾性合金、エラストマー、補強繊維などの補強材でブレードされた複合部材、コイルスプリングチューブ部材などが例示される。
【0028】
インナーシャフト3としては、長さが500〜2000mm、より好ましくは500〜1500mm、肉厚が10〜150μm、より好ましくは20〜100μmのものが用いられる。インナーシャフト3の外径は、先端側で0.30〜2.00mm、好ましくは0.40〜1.80mm、基端側で0.40〜2.50mm、好ましくは0.55〜2.40mmに選択される。さらに、インナーシャフト3の外径は、最先端側で0.1〜1.0mm、より好ましくは0.3〜0.7mmに選択されることもある。インナーシャフト3は、先端側部材と基端側部材とを個々に作製して接合しインナーシャフト3としたもの、引き落とし等の二次加工を行ったもの、押し出し成形により先端側の径を基端側の径より小さくしたもののいずれでもよい。
【0029】
アウターシャフト4を構成する材料としては、ある程度可撓性を有するものであればよく、たとえばポリオレフィン、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれらのうち2種以上の混合物など、またポリオレフィンを架橋したもの、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、ポリイミドなどの高分子材料またはこれらの混合物などが使用できる。アウターシャフト4の材質は、少なくとも接合部の内面においてインナーシャフト3の外面を形成する材料と同材質であることがより好ましい。またアウターシャフト4は、先端側部材と本体側部材とを接合しアウターシャフトを形成してもよい。先端側部材と本体側部材とを接合したものを用いる場合には、両者の材料を変えてもよい。例えば、基端側部材として剛性の高い材料、具体的にはポリイミド樹脂を用い、先端側部材として基端側部材の形成材料より柔軟な材料、具体的にはポリアミド系樹脂を用いることが好ましい。本実施形態では、アウターシャフト4が、少なくとも軸方向一部が、外力が作用して軸方向に沿って所定の角度で捻れたとしても、外力が解除された状態で捻れが回復する弾力性部材で構成される。具体的には、具体的には、アウター先端部4aと接合部11との間のアウターシャフト4の少なくとも軸方向一部が、外力が作用して長手方向に沿って所定の角度で捻れたとしても、外力が解除された状態で捻れが回復する弾力性部材で構成される。弾力性部材としては、たとえばNi−Ti合金などの超弾性合金、エラストマー、補強繊維などの補強材でブレードされた複合部材、コイルスプリングチューブ部材などが例示される。
【0030】
アウターシャフト4としては、長さが500〜2000mm、より好ましくは500〜1500mm、肉厚が25〜200μm、より好ましくは50〜100μmのものが用いられる。外管3の外径は、先端側で0.50〜1.5mm、好ましくは0.60〜1.1mm、基端側で0.75〜1.5mm、好ましくは0.9〜1.1mmに選択される。
【0031】
バルーン2の材料としては、血管の狭窄部を拡張でき、かつある程度の可塑性を有するものであればよく、ポリオレフィン、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれらのうち2種以上の混合物など、またポリオレフィンを架橋したもの、ポリエステル、具体的にはポリエチレンテレフタレートなど、またポリエステルエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、フッ素樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴムなどが使用できる。これらの材料を適宜積層してもよい。
【0032】
バルーン2としては、拡張されたときの円筒部2cの外径が1.0〜10mm、好ましくは1.0〜5.0mm、円筒部分の長さが5〜50mm、好ましくは10〜40mm、バルーン全体の長さが10〜70mm、好ましくは15〜60mmのものが用いられる。
【0033】
マーカ10の材料としては、X線造影性の高い材料、例えばPt、Pt合金、W、W合金、Au、Au合金、Ir、Ir合金、Ag、Ag合金などを用いることが好ましい。マーカ10は、コイルスプリングまたはリングの形状に形成することが好ましい。
【0034】
ガイドワイヤポート8および給排ポート9を含むハブ7の形成材料としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に使用できる。
【0035】
次に、バルーンカテーテル1の製造方法について説明する。まずバルーン2、インナーシャフト3、アウターシャフト4、ハブ7を形成する。バルーン2は、たとえばブロー成形、蒸着重合方法、ディッピング成形などで形成される。インナーシャフト3およびアウターシャフト4は、たとえば押出し成形、ディッピング成形で形成される。ハブ7は、たとえば射出成形などで形成される。
【0036】
次にインナー先端部3aがアウター先端部4aから突出するようにインナーシャフト3をアウターシャフト4の内部に通し、アウター先端部4aから基端側に所定距離L1だけ離れた位置で、インナーシャフト3と、アウターシャフト4とを接合する。インナーシャフト3と、アウターシャフト4との接合はたとえば溶着によって接合される。
【0037】
次にバルーン2のバルーン基端部2bからインナーシャフト3のインナー先端部3aを通し、バルーン2のバルーン先端部2aの内面を、インナー先端部3aの外面に接合する。次にバルーン基端部2bをバルーン先端部2aに対して円周方向に相対的に所定の角度θで回転させ、その角度のままでバルーン基端部2bをアウター先端部4aに接合する。その結果、アウターシャフト4およびインナーシャフト3と比較して相対的に柔らかいバルーン2は、所定の角度θで捻られる。インナー基端部3bをハブ7に接合すると共に、アウター基端部4bをハブ7に接合する。
【0038】
その後、図3(A)に示すように、たとえば膨らんだ状態で横断面円形のバルーン2の内部を減圧して図3(B)に示すように、バルーン2をインナーシャフト3を中心として両側に広がる形状に形成し、反時計方向にインナーシャフト3の周囲に巻き付ける。その状態で、たとえば40〜100°Cの温度で10〜120分間加熱して、くせ付けを行い、折り畳み巻き付き形状をバルーンに記憶させる。
【0039】
なお、折り畳み巻き付き形状は、特に限定されず、たとえば図2(C)に示すように、膨らんだ状態で横断面円形のバルーン2が収縮された状態でインナーシャフト3を中心として三方またはそれ以上の方向に放射状に広がる形状の膜体4bが反時計方向にインナーシャフト3の周囲に巻き付く形状であっても良い。また、巻き付き方向は、反時計方向に限らず、時計方向であっても良い。ただし、巻き付き方向は、後述するようにバルーンのリラップ時に作用する捻れ力の方向と同じであることが好ましい。
【0040】
次にバルーンカテーテル1の使用方法について説明する。バルーンカテーテル1を用いて血管の狭窄部の拡張術を行う場合には、先ず血管内に挿入されたシースイントロデューサにガイディングカテーテルを挿通し、冠動脈入口部まで導入する。次いで、ガイドワイヤをバルーンカテーテルのガイドワイヤルーメン及びガイディングカテーテル内に挿通し、冠動脈入口部から治療対象箇所を経て抹消部位まで導入する。続いて、ガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテル1をたとえば血管の狭窄部など治療対象箇所まで導入する。バルーン2が治療対象箇所に到達したら、圧力流体給排装置でバルーン2を膨張させ治療を行うとともに、治療対象箇所の拡張が完了したら圧力流体給排装置でバルーン2を収縮しバルーンカテーテル1の抜き取りを行う。
【0041】
上記拡張術に際して、たとえば血管において所定範囲に亘って狭窄部位が生じている場合に、収縮状態のバルーン2の配置、バルーン2の膨張、狭窄部位の一部の拡張、バルーン2の収縮、収縮状態のバルーン2を狭窄部位のより奥側に配置、バルーン2の膨張、狭窄部位の一部の拡張、バルーン2の収縮というように、バルーンの拡張、収縮を複数回行うことが考えられる
【0042】
バルーンカテーテル1によれば、バルーン2に内部圧力が作用してバルーン2が拡張すれば、バルーン2の軸方向の捻れを戻すように膨らみ、その捻れ力は、バルーン2が接合されるアウターシャフト4およびインナーシャフト3に伝達し、これらを相対的に捻らせる。血管の狭窄部の拡張治療が終了してバルーンの内部圧力を解除して負圧にすれば、バルーン2は収縮し、バルーン2が記憶してある折り畳み形状に戻ろうとする。バルーンカテーテル1では、インナーシャフト3と、アウターシャフト4とがアウター先端部4aから基端側に所定距離L1だけ離れた位置で接合されている。したがってバルーン2が拡張すればインナー先端部3aからインナーシャフト3とアウターシャフト4とが接合されている位置までの領域においてインナーシャフト3およびアウターシャフト4に好適に捻れ力を発生させ、バルーン2の内部圧力を解除すると当該捻れ力の助けにより図2(B)または図2(C)に示すように、バルーン2は容易に折り畳まれ、インナーシャフト3の周囲に巻き付くことになる。これによりバルーン2の拡張後であっても再巻き付き特性、すなわちリラップ特性に優れており、収縮状態でのバルーン2の外径を小さくすることが容易である。そのため、上記拡張術のようにバルーンの拡張、収縮を複数回行う場合であっても狭窄部への再挿入が容易であると共に、治療後におけるバルーンカテーテルの取り出しが容易である。
【0043】
またバルーンカテーテル1では、アウターシャフト4およびインナーシャフト3の少なくとも何れかの少なくとも軸方向一部が、外力が作用して長手方向に沿って所定の角度で捻れたとしても、外力が解除された状態で捻れが回復する弾力性部材で構成される。このような弾力性部材で構成することにより、捻れているバルーン2が拡張する際に、その捻れ力が弾力性部材に伝達して良好に捻れ力を発生させ、バルーン2が収縮する際には、弾力性部材に伝達している捻れ力をバルーンに良好に戻すことができる。
【0044】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえばアウターシャフト4およびインナーシャフト3の少なくとも何れか一方のみを、少なくとも軸方向一部が、外力が作用して長手方向に沿って所定の角度で捻れたとしても、外力が解除された状態で捻れが回復する弾力性部材で構成してもよい。また上述の実施形態では、インナーシャフト3がアウターシャフトの軸方向全体にわたって延び、ガイドワイヤルーメン6がバルーンカテーテル1の軸方向全体にわたって形成されるいわゆるオーバーザワイヤ型バルーンカテーテルであるが、インナー基端部3bをアウター基端部4bよりも先端側に設け、ガイドワイヤルーメンがアウターシャフト4の軸方向途中位置で開口するいわゆるラピッドエクスチェンジ型バルーンカテーテルであってもよい。また上述した実施形態では、本発明に係るバルーンカテーテルを、血管の狭窄部を拡張するためのバルーンカテーテルとして用いているが、本発明のバルーンカテーテルは、それ以外の用途のバルーンカテーテルとしても用いることができる。また上述の実施形態ではインナーシャフトとして、ガイドワイヤルーメンが形成された中空のチューブ状であるが、中実の棒材であっても良い。
【符号の説明】
【0045】
1…バルーンカテーテル、2…バルーン、3…インナーシャフト、4…アウターシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳み可能なバルーンと、
前記バルーンの先端部が接合される先端部を有し、前記バルーンの内部を軸方向に延びるインナーシャフトと、
前記バルーンの基端部が接合される先端部を有し、内部に前記インナーシャフトを軸方向に収容し、前記バルーンの内部に圧力流体を給排可能なルーメンを形成するアウターシャフトとを備え、
前記バルーンに圧力が作用しない状態で前記バルーンの先端部に対して、前記バルーンの基端部が円周方向に相対的に所定の角度で捻れて前記アウターシャフトの先端部に接合され、
前記アウターシャフトの先端部から基端側に所定距離離れた位置で、前記インナーシャフトとアウターシャフトとが接合されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記アウターシャフトおよびインナーシャフトの少なくとも何れかの少なくとも軸方向一部が、外力が作用して長手方向に沿って所定の角度で捻れたとしても、外力が解除された状態で捻れが回復する弾力性部材で構成されることを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記所定の角度が20〜720度である請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−42841(P2013−42841A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181337(P2011−181337)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(393015324)株式会社グツドマン (56)
【Fターム(参考)】