説明

バンドの駒アジャスト構造

【課題】簡単な構成であって、一般ユーザがバンド長さの調節を容易かつ簡単に行えるようにしたバンドの駒アジャスト構造を提供する。
【解決手段】取り外したいアジャスト駒2におけるアジャスト部材5の外部に露呈している操作面部5bを、コイルスプリング6の付勢力に抗して内方へ押圧する。この押圧により当該アジャスト駒2の係合突起部5cが、隣り合うアジャスト駒2の外駒部4の中空部から当該アジャスト駒2の内駒部3の中空部内部に入り、係合突起部5cと他のアジャスト駒2における外駒部4の中空部との係合が解除され、アジャスト駒2の取り外しが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う駒体を連結して構成される各種バンドにおいて、駒体の一部を取り外すためのアジャスト構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駒体を連結して構成されるバンドの長さを、装着者などの装着部分に合わせて調節するために、駒体にアジャスト部材を設けて、アジャスト部材と共に駒体を取り外すようにしている。
【0003】
従来、アジャスト部材としては、一般的には隣り合う駒体の連結するアジャストピンを外すようにした構造が採用されている。このアジャストピンに各種の工夫がなされている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、アジャストピンによるアジャスト構造は、バンドの小さな貫通孔に嵌挿されている細いピンを押し出すようにする作業が必要であり、さらに、その作業ための治具が必要であって、一般ユーザにとって直ぐに行えるような、簡単な作業であるとは云えない。
【0005】
また、特許文献2に記載されているように、アジャストピンにおける前記課題を解決するため、駒体を構成する外駒部と内駒部とを弾性部材にて形成し、外駒部と内駒部を外部から押圧変形させることにより、連結ピンによる外駒部と内駒部との連結を解除させるようにした構造のものがある。
【0006】
また、特許文献3には、外駒部と内駒部とを連結する部材の寸法構造を工夫し、隣り合う駒体の一方を回動させて、互いに直交する状態にしたときに、駒体を取り外すことができるようにした構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−253214号公報
【特許文献2】実用新案登録第3089795号公報
【特許文献3】実用新案登録第3091447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記アジャストピンによる駒アジャストは、バンド類を購入する際、仔細を熟知している販売店の店員などによって行われるため、一般ユーザに対して負担を与えるようなことはない。
【0009】
しかし、バンドのサイズを一般ユーザが個人的に調節しようとする場合、前記のように治具を使う必要があり、治具があったとしても、容易にはアジャスト作業を行うことはできない。
【0010】
また、特許文献2,3に記載の構造では、治具を必要とせず、一般ユーザによる作業が簡単になるといっても、駒体内の連結ピンの連結解除を見えない状態で行う作業、あるいは駒体を適正な位置まで回動させる作業などの特殊な作業を一般ユーザに強いることになる。
【0011】
特に、近年、通信販売の普及に伴い、時計またはバンドを購入した後に、一般ユーザであっても個人的に、容易かつ簡単にバンドの調節が行えるような駒アジャストの構造が要求されてきている。
【0012】
そこで、本発明は、簡単な構成であって、一般ユーザがバンド長さの調節を容易かつ簡単に行えるようにしたバンドの駒アジャスト構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は前記課題を解決するため、中空の内駒部と、該内駒部の両側から延出されて間に凹部を形成する中空の外駒部を備えた駒体を複数連結して構成されるバンドにおいて、前記凹部に隣り合う駒体の前記内駒部を挿入した状態で、隣り合う駒体の前記外駒部と前記内駒部とに跨るようにアジャスト部材を配設することにより、隣り合う駒体を連結してなる駒アジャスト構造であって、前記アジャスト部材を、前記外駒部と前記内駒部との中空部内に、駒体が連結される方向に対して直交する方向に摺動可能に、かつ対向させて一対装填し、前記アジャスト部材に、前記内駒部を通って隣り合う駒体の外駒部に達する連結部と、該連結部の一端部に設けられ、かつ外駒部の中空部開口に露呈する操作面部と、前記連結部の他端部に設けられ、かつ隣り合う駒体の外駒部の中空部一部に係脱可能に係合する係合突起部とを備え、対向する前記アジャスト部材間に、該アジャスト部材の前記係合突起部を前記外駒部の中空部一部に係合させる方向に付勢させる付勢部材を配設し、前記アジャスト部材の前記操作面部を前記付勢部材に抗して前記外駒体内方へ押圧することにより、前記係合突起部と前記外駒部の中空部一部との係合を解除して隣り合う駒体の連結を解除するものである。
【0014】
前記構成により、外駒部の中空部開口に露呈しているアジャスト部材の操作面部を、外駒体内方へ押圧する操作により、隣り合う駒体の係合が解除されるため、駒体の連結を容易に解除することができる。
【0015】
また、前記アジャスト部材が存在する前記外駒体の裏側に、中空部開口から内方へ向けて操作用切欠部を形成することにより、操作用切欠部の存在により、アジャスト部材の操作面部の内方への押圧に際して、外駒体が邪魔になることなく押圧が円滑に行え、しかも、操作用切欠部がアジャスト用の操作面部が存在することの目印にもなる。
【0016】
また、前記外駒部に前記アジャスト部材の装填を可能にする間隙を形成したことにより、製造時のアジャスト部材の組み付け作業が容易になる。
【0017】
また、前記外駒部を塑性変形して前記間隙を閉じるようにしたことにより、特別な接着手段が不要になり、組立コストを低減することができる。
【0018】
また、前記駒体と前記アジャスト部材とが異なる材質のものにしたことにより、意匠の多様化を図ることができる。
【0019】
また、前記駒体が金属材であり、前記アジャスト部材がプラスチック材であることにより、意匠の多様化を図ることができと共に、アジャスト部材の操作面部のカラー化により、アジャスト部材の操作面部を目立つようにすることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外駒部の中空部開口に露呈しているアジャスト部材の操作面部を付勢部材に抗して外駒体内方へ押圧する操作により、隣り合う駒体の係合が解除されるため、駒体の連結を容易に解除することができるため、比較的簡単な構成により、一般ユーザであっても、駒体の取り外しが容易に行え、バンド長さの調節を容易かつ簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態である時計バンドの一部を示す斜視図である。
【図2】本実施形態におけるアジャスト駒の平面断面図である。
【図3】本実施形態におけるアジャスト駒の分解斜視図である。
【図4】本実施形態におけるアジャスト駒の内駒部の巻き端部側を示す斜視図である。
【図5】本実施形態におけるアジャスト駒の組立を説明するための斜視図である。
【図6】本実施形態におけるアジャスト駒の組立を説明するための斜視図である。
【図7】本実施形態におけるアジャスト駒の組立を説明するための斜視図である。
【図8】本実施形態におけるアジャスト駒の組立を説明するための斜視図である。
【図9】本実施形態におけるアジャスト駒の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態である時計バンドの一部を示す斜視図、図2は本実施形態におけるアジャスト駒の平面断面図、図3は本実施形態のアジャスト駒の分解斜視図である。
【0024】
図1において、複数の駒体が連結されて長尺の時計バンドが構成されており、これらの駒体は、連結構造のみを備えた連結駒1とアジャスト駒2とからなっている。連結駒1とアジャスト駒2における外側の装飾面の形状は、同じバンドの駒体を構成する同一デザインとなっている。
【0025】
ただし、アジャスト駒2は、後述するように、駒体連結状態のバンドから任意のものを取り外すことが可能な構造になっている。また、前記連結構造の駒体1は公知の構造を採用すればよく、ここでは説明は省略する。
【0026】
バンドの駒体の一部を構成するアジャスト駒2は、図2,図3に示すように、本例ではステンレス板を折り曲げて成型され、中空の内駒部3と、この内駒部3の両側から延出されて凹部4aを形成する中空の外駒部4,4とを有している。
【0027】
図2,図3において、5はアジャスト部材であって、アジャスト部材5は、金属材あるいはプラスチック材からなり、外駒部4,4と内駒部3との中空部内に、駒体1が連設される方向Aに対して直交する方向に摺動可能に、かつ対向させて一対が装填される。
【0028】
前記一対のアジャスト部材5,5は対称形状であって、各アジャスト部材5,5は、内駒部3と外駒部4とに跨って配される連結部部5aと、この連結部5aの一端部に設けられ、かつ外駒部4,4の中空部開口に露呈する操作面部5bと、連結部5aの他端部に設けられ、かつ隣り合うアジャスト駒2の外駒部4,4の中空部一部に係脱可能に係合する円柱状の係合突起部5cとを有している。
【0029】
また、6は付勢部材であるコイルスプリングであって、コイルスプリング6は、対向するアジャスト部材5,5間に配されて、アジャスト部材5,5の係合突起部5cを、隣り合うアジャスト駒2における外駒部4,4の中空部一部に係合させる方向に付勢する。
【0030】
図5〜図8は本実施形態におけるアジャスト駒2の組立を説明するための斜視図である。
【0031】
組立前には、図4に示すように、アジャスト駒2の内駒部3の巻き端部3a部分は閉じておき、また、図5,図6に示すように、アジャスト駒2の両外駒部4の巻き端部4b部分も開いて間隙Bを形成している。また、一対のアジャスト部材5を対向させて、両アジャスト部材5の係合突起部5c間にコイルスプリング6を配した状態で、これらを外駒部4の巻き端部4b部分の間隙Bからアジャスト駒2内部へ挿入する。
【0032】
図7にアジャスト部材5とコイルスプリング6をアジャスト駒2に挿入した状態を示す。この状態で、アジャスト駒2の両外駒部4の巻き端部4b部分の隙間Bを閉じることにより、図8に示すように、アジャスト駒2が完成する。
【0033】
前記間隙Bを形成することにより、製造時のアジャスト部材の組み付け作業が容易になる。また、内駒部3と外駒部4を塑性変形してそれぞれの間隙Bを閉じるようにしたことにより、特別な接着手段が不要になり、組立コストを低減することができる。
【0034】
図8に示す状態では、アジャスト駒2の両外駒部4の巻き端部4b部分で、各アジャスト部材5の連結部5aが、それぞれコイルスプリング6の付勢力を受けて係止され、両アジャスト部材5はアジャスト駒2から抜け落ちることはない。
【0035】
両アジャスト部材5の係合突起部5cは、アジャスト駒2の内駒部3の側部から外駒部4の巻き端部4b部分に外部に突出している。
【0036】
また、各アジャスト部材5の操作面部5bは、それぞれ外駒部4の中空部開口に側面が外に突出しないように露呈している。アジャスト部材5の操作面部5bを内方にコイルスプリング6の付勢力に抗して押圧することにより、係合突起部5cを内部に引っ込めるようにすることができる。
【0037】
次に、隣り合うアジャスト駒2どうしの組み付けについて説明する。
【0038】
アジャスト駒2の外駒部4,4間の凹部4aに、隣り合うアジャスト駒2の内駒部3を、アジャスト部材5の操作面部5bを内方に押圧し、係合突起部5cを内部に引っ込めた状態で挿入する。挿入後、操作面部5bへの押圧を止めると、コイルスプリング6の付勢力を受けてアジャスト部材5がアジャスト駒2の外側に摺動する。
【0039】
前記摺動により、アジャスト部材5の連結部5aがアジャスト駒2の両外駒部4の巻き端部4b部分に係止し、かつ、係合突起部5cが隣り合うアジャスト駒2における外駒部4の中空部に入って係合する。この係合により、隣り合うアジャスト駒2どうしが連結されることになる。
【0040】
連結解除は、取り外したいアジャスト駒2のアジャスト部材5の外部に露呈している操作面部5bを、コイルスプリング6の付勢力に抗して内方へ押圧すると、当該アジャスト駒2の係合突起部5cが、隣り合うアジャスト駒2の外駒部4の中空部から当該アジャスト駒2の内駒部3の中空部内部に入り、係合突起部5cと他のアジャスト駒2における外駒部4の中空部との係合が解除されることにより行われる。
【0041】
前記アジャスト駒2のアジャスト部材5の操作面部5bに対する押圧操作は、図9に示すように、両アジャスト駒2の外駒部4の裏側に中空部開口側から内方へ向けて操作用切欠部10を形成することにより容易に行うことができるようになる。
【0042】
すなわち、操作面部5bに対する押圧操作は、ユーザが指あるいは適当なピン状の物により操作面部5bを押すことにより行われるが、操作用切欠部10の存在により、操作面部5bの内方への押圧に際して、操作用切欠部10がガイドになり、外駒部4が邪魔になることなく押圧を円滑に行うことができる。しかも、操作用切欠部10が、一般の連結用の駒体1とアジャスト駒2とを区別するための目印にもなる。
【0043】
なお、駒体1を含むアジャスト駒2とアジャスト部材5とを異なる材質のものにしてもよく、多様な材質のものを適宜選択することにより、バンド意匠の多様化を図ることができる。
【0044】
また、駒体1を含むアジャスト駒2を金属材にて形成し、アジャスト部材5をプラスチック材にて形成することにより、前記のように意匠の多様化を図ることができと共に、アジャスト部材5の操作面部のカラー化により、アジャスト部材5の操作面部5bを目立つようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、駒体を連結する構成の時計バンドあるいは各種バンド類における駒体の取り外し構造として有効である。
【符号の説明】
【0046】
2 アジャスト駒
3 内駒部
4,4 外駒部
4a 外駒部間の凹部
4b 外駒部の巻き端部
5,5 アジャスト部材
5a 連結部
5b 操作面部
5c 係合突起部
6 コイルスプリング
10 操作用切欠部
B 外駒部の巻き端部部分の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の内駒部と、該内駒部の両側から延出されて間に凹部を形成する中空の外駒部を備えた駒体を複数連結して構成されるバンドにおいて、
前記凹部に隣り合う駒体の前記内駒部を挿入した状態で、隣り合う駒体の前記外駒部と前記内駒部とに跨るようにアジャスト部材を配設することにより、隣り合う駒体を連結してなる駒アジャスト構造であって、
前記アジャスト部材を、前記外駒部と前記内駒部との中空部内に、駒体が連結される方向に対して直交する方向に摺動可能に、かつ対向させて一対装填し、
前記アジャスト部材に、前記内駒部を通って隣り合う駒体の外駒部に達する連結部と、該連結部の一端部に設けられ、かつ外駒部の中空部開口に露呈する操作面部と、前記連結部の他端部に設けられ、かつ隣り合う駒体の外駒部の中空部一部に係脱可能に係合する係合突起部とを備え、
対向する前記アジャスト部材間に、該アジャスト部材の前記係合突起部を前記外駒部の中空部一部に係合させる方向に付勢させる付勢部材を配設し、
前記アジャスト部材の前記操作面部を前記付勢部材に抗して前記外駒体内方へ押圧することにより、前記係合突起部と前記外駒部の中空部一部との係合を解除して隣り合う駒体の連結を解除することを特徴とするバンドの駒アジャスト構造。
【請求項2】
前記アジャスト部材が存在する前記外駒体の裏側に、中空部開口から内方へ向けて操作用切欠部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のバンドの駒アジャスト構造。
【請求項3】
前記外駒部に前記アジャスト部材の装填を可能にする間隙を形成してなることを特徴とする請求項1または2に記載のバンドの駒アジャスト構造。
【請求項4】
前記外駒部を塑性変形して前記間隙を閉じることを特徴とする請求項3に記載のバンドの駒アジャスト構造。
【請求項5】
前記駒体と前記アジャスト部材とが異なる材質のものであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のバンドの駒アジャスト構造。
【請求項6】
前記駒体が金属材であり、前記アジャスト部材がプラスチック材であることを特徴とする請求項5に記載のバンドの駒アジャスト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−264203(P2010−264203A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134482(P2009−134482)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(300091197)株式会社 フォー・クリエイターズ (17)