説明

パイロット式流調弁装置

【課題】軽操作が可能であり且つ万一導入小孔に目詰まりが生じた場合であっても確実に主弁を閉弁し強制止水することのできるパイロット式流調弁装置を提供する。
【解決手段】 主弁16と、背圧室24と、背圧室24の圧力を増大させる導入小孔26と、背圧室24の圧力を減少させるパイロット水路28と、パイロット弁46と、パイロット弁46を駆動する駆動軸30を備え、パイロット弁46の進退運動に追従して主弁16を進退運動させて主水路の流量調節を行うパイロット式流調弁装置10において、駆動軸30に閉弁方向の移動に伴って主弁16側の第1被係合部62に係合して主弁16を強制的に閉弁させる強制止水用の第1係合部58を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は流調弁装置に関し、詳しくは小さな操作力で簡単に操作することのできるパイロット式流調弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より水栓として各種のものが用いられているが、これら水栓は主水路の開度を変化させる主弁を主弁座に対して接近離間方向に進退運動させる際に大きな力を要し、操作が重いといった問題があった。
そこで水栓における操作を軽くする手段として、かかる水栓をパイロット式流調弁装置、即ちパイロット弁を進退運動させることによって主弁をこれに追従して進退運動させ、主水路の開度を変化させる方式のパイロット式流調弁装置を内蔵した水栓とすることが考えられる。
【0003】
例えば下記特許文献1にこの種パイロット式流調弁装置の構成が開示されている。図13はその具体例を示している。
同図において200,202は主水路を形成する1次側の流入水路,2次側の流出水路で、204はその主水路上に設けられたダイヤフラム弁から成る主弁である。
この主弁204は、主弁座206に対し接近離間方向に進退運動して主水路の開度を変化させ、その開度に応じて主水路における流量を調節する。
【0004】
208は主弁204の背後に形成された背圧室で、この背圧室208は、主弁204に対して内部の圧力を閉弁方向の押圧力として作用させる。
主弁204には、これを貫通して流入水路200と背圧室208とを連通させる導入小孔210が設けられている。
この導入小孔210は、流入水路200からの水を背圧室208に導いて背圧室208の圧力を増大させる。
主弁204にはまた、これを貫通して背圧室208と流出水路202とを連通させる水抜水路としてのパイロット水路212が設けられている。
このパイロット水路212は、背圧室208内の水を流出水路202に抜いて背圧室208の圧力を減少させる。
【0005】
214は駆動軸216に一体運動状態に設けられたパイロット弁で、このパイロット弁214が主弁204に設けられたパイロット弁座218に対し図中上下方向、即ち主弁204の進退方向と同方向に進退運動することでパイロット水路212の開度(背圧室208に対する開度)が変化せしめられる。
図13おいて220はパイロット弁214を駆動軸216とともに進退駆動させる電気的駆動装置である。
【0006】
この図13に示すパイロット式流調弁装置にあっては、パイロット弁214がパイロット弁座218に向かって前進運動すると、パイロット弁214とパイロット弁座218との隙間が小さくなってパイロット水路212の開度が小となり、背圧室208からパイロット水路212を通じて流出水路202に抜ける水の量が少なくなって背圧室208の圧力は増大する。
また一方パイロット弁214が図中上向きに後退運動すると、パイロット弁214とパイロット弁座218との隙間が大きくなってパイロット水路212の開度が大となり、ここにおいて背圧室208からパイロット水路212を通じて流出水路202に抜ける水の量が多くなって背圧室208の圧力が減少する。
そして主弁204は、その背圧室208の圧力と流入水路200の圧力とをバランスさせるようにして、パイロット弁214の進退運動に追従して図中上下方向に進退運動し、主水路の開度を変化させる。
そしてその主水路の開度の変化に応じて、流入水路200から流出水路202への水の流量が調節される。
【0007】
この図13に示すパイロット式流調弁装置にあっては、背圧室208の圧力の増減に基づいて主弁204を進退運動させ、そしてその背圧室208の圧力の増減をパイロット弁214の進退運動により制御するようになしていることから、小さい力で主弁204を開閉動作させることができ、軽い操作で流量調節を行うことができる特長を有する。
【0008】
しかしながらこのパイロット式流調弁装置では、導入小孔210が目詰まりを起したとき、かかる導入小孔210を通じて流入水路200の水が背圧室208に流入できなくなって、背圧室208が圧力上昇しなくなくなり、その結果主弁204が閉弁できなくなってしまうといった問題を内包する。
【0009】
【特許文献1】特開平4−302790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上のような事情を背景とし、軽操作が可能であり且つ万一導入小孔に目詰まりが生じた場合であっても確実に主弁を閉弁し強制止水することのできるパイロット式流調弁装置を提供することを目的として成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
而して請求項1のものは、(イ)主弁座に対して接近離間方向に進退運動して主水路の開度を変化させる主弁と、(ロ)該主弁の背後に形成され、内部の圧力を該主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(ハ)前記主水路における1次側の流入水路の水を該背圧室に導いて該背圧室の圧力を増大させる導入小孔と、(ニ)該背圧室と前記主水路における2次側の流出水路とを連通させる状態に前記主弁を貫通して設けられ、該背圧室の水を該流出水路に抜いて該背圧室の圧力を減少させるパイロット水路と、(ホ)前記主弁と同方向に進退運動して該主弁に設けられたパイロット弁座に対する相対位置を変化させ、該パイロット水路の開度を変化させるパイロット弁と、(ヘ)該パイロット弁を駆動する駆動軸と、を備え、該パイロット弁の進退運動に追従して前記主弁を進退運動させて前記主水路の流量調節を行うパイロット式流調弁装置において、前記駆動軸に、該駆動軸の軸方向且つ主弁の閉弁方向の移動に伴って前記主弁側の被係合部に係合して該主弁を強制的に閉弁させ止水させる強制止水用の係合部が設けてあることを特徴とする。
【0012】
請求項2のものは、請求項1において、前記主弁側には強制止水用の前記被係合部としての第1被係合部が設けられているとともに、該第1被係合部に対して軸方向に隔たった位置に強制開弁用の第2被係合部が設けられており、且つ前記係合部は強制開弁用の係合部も兼ねていて前記駆動軸の軸方向且つ開弁方向の移動に伴って該係合部が前記第2被係合部に係合して前記主弁を強制開弁させるようになしてあることを特徴とする。
【0013】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記係合部が前記駆動軸に嵌着され、該駆動軸から径方向に突出するリング部材にて構成してあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0014】
以上のように本発明は、小さな操作力で軽操作可能なパイロット式流調弁装置における駆動軸に、駆動軸の軸方向且つ閉弁方向の移動に伴って主弁側の被係合部に係合して主弁を強制的に閉弁させ、止水させる強制止水用の係合部を設けたもので、本発明によれば、導入小孔が目詰まりを生じて、かかる導入小孔を通じて流出水路側から背圧室に水が流入できず、これにより背圧室が圧力上昇しなくなって主弁が閉弁できなくなった場合においても、駆動軸を閉弁方向に移動させることで、駆動軸に設けた係合部と主弁側の被係合部との係合作用で主弁を強制的に閉弁させ、止水させることができる。
これにより、導入小孔の目詰まりによって水が出っ放しとなってしまうといった不都合を良好に解消することができる。
【0015】
次に請求項2は、駆動軸に設けた係合部を強制開弁用の係合部としても働かせるようになし、その係合部を主弁側に設けた第2被係合部に係合させて主弁を強制開弁させるようになしたもので、このようにしておけば、寒冷地などにおいて水抜きを行う際に主弁を強制的に開弁させ且つその開弁状態に維持し得て、凍結により主弁が主弁座と固着してしまい、動作不良に繋がるといった問題を併せて解決することができる。
【0016】
またこの請求項2では、同一の係合部が主弁の強制閉弁用としても、また強制開弁用のものとしても働くため、強制閉弁用の係合部の他に強制開弁用の係合部を別に設ける場合に較べて構造を簡素化することができる。
この場合においてかかる係合部を、駆動軸から径方向に突出する形態で駆動軸に嵌着したリング部材にて構成しておくことができる(請求項3)。
このようにすれば、係合部を駆動軸に簡単に設けることができる。
本発明において、上記パイロット弁はプランジャにて構成しておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態のパイロット式流調弁装置で、12,14は主水路を形成する1次側の流入水路,2次側の流出水路で、16はその主水路上に設けられたダイヤフラム弁から成る主弁である。
主弁16は、主弁本体18とこれにより保持されたゴム製のダイヤフラム膜20とから成っている。
【0018】
この主弁16は、主弁座22に対して接近離間方向に進退運動して主水路の開度を変化させる。
詳しくは、主弁座22への主弁16の着座によって主水路を遮断し、また主弁座22から図中上向きに離間することによって主水路を開放する。
また主弁座22からの離間量に応じて主水路の開度を大小変化させ、主水路を流れる水の流量を調節する。
【0019】
この主弁16の図中上側の背後には背圧室24が形成されている。
背圧室24は、内部の圧力を主弁16に対して閉弁方向の押圧力として作用させる。
主弁16には、これを貫通して1次側の流入水路12と背圧室24とを連通させる導入小孔26が設けられている。
この導入小孔26は、流入水路12からの水を背圧室24に導いて背圧室24の圧力を増大させる。
【0020】
主弁16にはまた、これを貫通して背圧室24と2次側の流出水路14とを連通させる水抜水路としてのパイロット水路28が設けられている。
このパイロット水路28は、背圧室24内の水を流出水路14に抜いて背圧室24の圧力を減少させる。
【0021】
30は駆動軸で、ハンドル等を組み付ける組付部31と、径方向に突出した環状の突出部32と、これより図中下向きに延出する小径部(スピンドル部)34とを有している。
環状の突出部32の外周面には雄ねじ33が設けられていて、この雄ねじ33がボデー35に設けられた雌ねじ36に螺合されている。
駆動軸30は、加えられた回転操作力に基づいてこれら雄ねじ33と雌ねじ36とのねじ送り作用で図中上下方向に進退移動する。
尚この駆動軸30、詳しくはスピンドル部34とボデー35との間はシールリングとしてのOリング38により水密にシールされている。即ちスピンドル部34と背圧室24との間がOリング38にて水密にシールされている。
【0022】
この駆動軸30は、スピンドル部34が主弁本体18の中心部に形成された貫通孔40を貫通して下端部が下向きに延出している。
上記パイロット水路28は、この貫通孔40の内周面とスピンドル部34の外周面との間に環状に形成されている。
主弁本体18には、この貫通孔40に臨む内周部において図2(イ)に示しているように環状溝42が形成されており、そこに弾性を有するOリングが装着され保持されている。
本実施形態では、このOリングによってパイロット弁座44が構成されている。即ちかかるOリングが主弁16における主弁本体18に組み付けられることで、主弁16にパイロット弁座44が設けられている。
【0023】
図1,図2及び図3において、46は駆動軸30のスピンドル部34に一体に構成されたパイロット弁で、軸心周りに環状を成す凹部48を有している。
この凹部48の軸方向の各端部は、凹部48の軸方向の中央部に向って漸次小径となるテーパ面50とされており、このテーパ面50と軸方向のストレート形状部56との間に段付部52,54が形成されている。
このパイロット弁46は、止水時においてはストレート形状部56がOリングから成るパイロット弁座44に水密に弾性嵌合してパイロット水路28を遮断する。
このとき、主弁16は主弁座22に着座して主水路を閉鎖した状態にある。図3はその止水状態を示したものである。
【0024】
パイロット弁46は、この状態から図中上方向、即ち主弁16に設けられたパイロット弁座44に対し図中上方向に後退運動してパイロット水路28を開き、更にまた図中上方の後退方向の移動量、つまりパイロット弁座44からの離間量に応じてパイロット水路28の開度を大きく変化させる。
また逆に図中下向きの前進移動によりパイロット水路28の開度を小となし、そして段付部52がパイロット弁座44に接触し、更にストレート形状部56がパイロット弁座44に弾性嵌合することでパイロット水路28を閉鎖する。
【0025】
この実施形態では、主弁16が主弁座22への着座にて主水路を閉鎖し(図3参照)、またパイロット弁46のストレート形状部56がパイロット弁座44に弾性嵌合した状態、即ちパイロット弁46が閉弁した状態の下で、駆動軸30の回転操作によりこれを図中上向き(開弁方向)に後退移動させると、パイロット弁46とパイロット弁座44との間に隙間が生じる(図4(I))。
その隙間を通じて背圧室24内の水がパイロット水路28を通じて流出水路14側に抜き出され、背圧室24の圧力が減少する。
【0026】
すると流入水路12の圧力が背圧室24の圧力に打ち勝って、主弁16が図4(II)に示しているように図中上向きに上昇、即ち後退運動させられ、そして背圧室24の圧力と流入水路12の圧力とが丁度バランスした位置で主弁16が停止する。
このとき、主弁16と主弁座22との間には隙間が生じて、その隙間を通じて流入水路12から流出水路14へと水が流れ込む。
この状態から更にパイロット弁46が図4(III)に示しているように図中上向きに後退運動すると、背圧室24の圧力と流入水路12との圧力をバランスさせるようにして主弁16がパイロット弁46の後退運動に追従して図中上向きに後退運動し、主水路における開度を更に大として水の流量を増大させる。
【0027】
一方上向きに後退運動したパイロット弁46が、図5(I)に示しているように図中下向きに前進運動し、パイロット弁46とパイロット弁座44との間の隙間が小さくなると、ここにおいて背圧室24の圧力が増大して流入水路12の圧力に打ち勝つに至り、これにより主弁16がそれらの圧力をバランスさせるように図5(II)に示しているように図中下向きに前進運動し、主弁座22との間の隙間を小さくする。即ち流入水路12から流出水路14への水の流量を減少させる。
【0028】
この状態から更にパイロット弁46が図5(III)に示しているように図中下向きに前進運動すると、これに追従して主弁16が図中下向きに前進運動し、水の流量を更に減少させる。そしてパイロット弁46の段付部52がパイロット弁座44に当接し、更にストレート形状部56がパイロット弁座44に密着状態に弾性嵌合することで、パイロット水路28が完全閉鎖された状態(図3参照)となって、ここに流入水路12から流出水路14への水の流れが停止する。
【0029】
これら図4及び図5に示しているように、この実施形態においてはパイロット弁46とパイロット弁座44との間、即ち主弁16との間に完全閉弁状態を除いて常時それらの間に隙間を生ぜしめる。そしてその隙間を大きく又は小さく変化させることで主弁16が進退運動し、主水路の水の流量を調節する。
【0030】
本実施形態では、図1及び図2の部分拡大図に示しているようにパイロット弁46の図中上側において駆動軸30に、詳しくはスピンドル部34に強制閉弁用(強制止水用)の第1係合部58がスピンドル部34から径方向に突出する形態で設けられている。
この第1係合部58は、スピンドル部34の嵌着溝64に嵌着されたEリング等の弾性リング59にて構成されている。
またスピンドル部34の下端部、詳しくは主弁16から下向きに突出した端部に、同様の構成から成る強制開弁用の第2係合部60が設けられている。この第2係合部60もまた、第1係合部58と同様にスピンドル部34の嵌着溝64に嵌着された弾性リング59にて構成されている。
【0031】
本実施形態において、第1係合部58は次のような働きを成す。
即ち、本実施形態のパイロット式流調弁装置10は、導入小孔26を通じて流入水路12の水が背圧室24に流入することで所要の流量調節動作を行うことが可能であり、従って図6に示しているように導入小孔26が、そこにごみ等の異物が付着して目詰まりを生ずると、本来の流量調節動作を行うことができなくなってしまう。
この場合主弁16が開弁したままとなって閉弁することができず、水が出っ放しとなってしまう。
【0032】
しかるに本実施形態では、図6(I)に示しているように駆動軸30を図中下向き、即ち閉弁方向に移動させると、あるところで第1係合部58が主弁16の図中上面の第1被係合部62に当接して係合し(図6(II))、この状態で駆動軸30を更に図中下向きに移動させると、それら第1係合部58と主弁16の第1被係合部62との係合作用で主弁16が強制的に図中下向き、即ち閉弁方向に押動され、最終的に主弁座22に着座して閉弁状態となる(図6(III))。
ここにおいて止水が行われ、主弁16が開弁したままとなって水が出っ放しになるといった問題を解消することができる。
【0033】
一方強制開弁用の第2係合部60は次のような働きを成す。
即ち、寒冷地において主水路の水抜きを行うと、主弁16を流入水路12の給水圧で開弁させるといったことができなくなる。
而して主弁16が主弁座22に着座したままであると、凍結によって主弁16が主弁座22に固着した状態となってしまい、その後の流量調節動作を行えなくなってしまう。
【0034】
ここにおいて駆動軸30を図中上向きに移動させると、第2係合部60が主弁16の下面の第2被係合部68に当接係合し、更なる駆動軸30の上向きの移動によって主弁16が強制的に図中上向きに持ち上げられ、開弁させられる。
従って本実施形態によれば、主弁16と主弁座22との着座状態での凍結によってそれらが固着してしまうといった問題を良好に回避することができる。
尚主弁16の下面には水抜用の溝66が設けられており、第2係合部60が主弁16の第2被係合部68に当接し係合した状態の下でも良好に背圧室24内の水を流出水路14側に抜くことができる。
【0035】
以上のように本実施形態によれば、導入小孔26が目詰まりを生じて、かかる導入小孔26を通じて流出水路14側から背圧室24に水が流入できず、これにより背圧室24が圧力上昇しなくなって主弁16が閉弁できなくなった場合においても、駆動軸30を閉弁方向に移動させることで、駆動軸30に設けた第1係合部58と主弁16側の第1被係合部62との係合作用で主弁16を強制的に閉弁させ、止水させることができる。
これにより導入小孔26の目詰まりによって、水が出っ放しとなってしまうといった不都合を良好に解消することができる。
【0036】
また駆動軸30に設けた第2係合部60を主弁16側に設けた第2被係合部68に係合させることで主弁16を強制開弁可能となしており、寒冷地などにおいて水抜きを行う際、主弁16を強制的に開弁及び開弁状態に維持し得て、凍結により主弁16が主弁座22と固着してしまい、動作不良に繋がるといった問題を併せて解決することができる。
また第1及び第2係合部58,60を駆動軸30に嵌着した弾性リング59にて構成しているため、それら第1及び第2係合部58,60を駆動軸30に簡単に設けることができる。
【0037】
図7〜図12は本発明の他の実施形態を示している。
上記実施形態では、パイロット弁46が駆動軸30に一体に構成され、そして駆動軸30が背圧室24を貫通して背圧室24の側からパイロット弁46を駆動するようになしてあるが、この実施形態では、図7及び図8に示しているようにプランジャから成るパイロット弁46が、駆動軸30と別体且つ分離可能に構成されて背圧室24内部に設けられている。
一方駆動軸30は、2次側の流出水路14の側から主弁16を貫通してパイロット弁46を駆動するように設けられている。
【0038】
背圧室24内にはまた、有底円筒形状を成すパイロット弁ケース70が設けられていて、そこにパイロット弁46が摺動可能に嵌合され、かかるパイロット弁46がパイロット弁ケース70にて進退方向に摺動案内されるようになっている。
ここでパイロット弁ケース70は、図8に示しているように図中上端部が主弁16の主弁本体18にねじ結合にて固定状態に組み付けられている。
またパイロット弁46は、コイルスプリングから成る復帰スプリング72にて図中上向き、即ち前進方向に付勢されている。
【0039】
74は背圧室ケースで、背圧室24はこの背圧室ケース74の内側に形成されている。
背圧室ケース74はケースガイド76を有していて、そこにパイロット弁ケース70が上下、即ち進退方向に摺動可能に嵌合され、かかるパイロット弁ケース70がケースガイド76にて進退運動の際に案内されるようになっている。
【0040】
この実施形態では、駆動軸30を図中下向き即ち開弁方向に移動させると、これとは別体を成すパイロット弁46が図中下向きに押されて、主弁16に一体に形成されたパイロット弁座44から離間し、図10(I)に示しているようにパイロット弁座44との間に隙間を生ぜしめる。
するとその隙間を通じて背圧室24内の水が流出水路14側に抜け出して背圧室24の圧力が低下する。
【0041】
ここにおいて流入水路12の圧力が背圧室24の圧力に打ち勝つに至って、主弁16が図10(II)に示しているように図中下向きに下降即ち後退運動させられ、そして背圧室24の圧力と流入水路12との圧力とが丁度バランスした位置で主弁16が停止する。
このとき主弁16と主弁座22との間には隙間が生じて、その隙間を通じて流入水路12から流出水路14へと水が流れ込む。
その後更に駆動軸30にてパイロット弁46が図中下向きに後退移動させられると、これに追従して主弁16が更に図中下向きに後退運動し、主水路の開度を広くして水の流量を増大させる(図10(III))。
【0042】
また一方、図11(I)に示しているように駆動軸30を図中上向きに移動させると、復帰ばねの付勢力でパイロット弁46がこれに追従して図中上向きに移動し、パイロット弁座44との間の隙間を小さくして水の流量を減少させ(図11(II))、そして最終的にパイロット弁46がパイロット弁座44に着座し、また主弁16が主弁座22に着座した状態となって、ここに主水路が閉鎖され、水の流通が停止する(図11(III))。
これらの流量調節の基本的な動作については上記第1実施形態のものと同様である。
【0043】
図8及び図9に示しているように、本実施形態においても駆動軸30に、詳しくはスピンドル部34に強制閉弁用と強制開弁用とを兼ねた係合部78が径方向に突出する形態で設けられている。
一方主弁16側には、詳しくは主弁本体18には強制閉弁用の第1被係合部62と、強制開弁用の第2被係合部68とが軸方向に間隔を隔てて設けられている。ここで係合部78は、それら第1被係合部62と第2被係合部68との間で所定ストローク相対移動可能である。
そして係合部78がこの所定ストローク内で自由に移動できることによって、上記パイロット弁46が駆動軸30にて駆動され、所要の流量調節が行われる。
【0044】
この実施形態においても、係合部78は図9に示しているように駆動軸30詳しくはスピンドル部34の嵌着溝64に略U字状を成す弾性リング80が弾性的に嵌着されることによって構成されている。
また主弁16の主弁本体18には、略円錐台形状を成す突出部82が形成されていて、その突出部82に、弾性リング80の挿入開口が径方向に貫通する状態で設けられており、その挿入開口を通じて弾性リング80が駆動軸30のスピンドル部34に嵌着されるとともに、その挿入開口の軸方向の縁部が上記の第1被係合部62,第2被係合部68として構成されている。
【0045】
この実施形態では、図12(I)に示す状態から駆動軸30が図中上向きに移動して係合部78が第1被係合部62に係合(図12(II))することで主弁16が強制的に図中上向きに持ち上げられ、強制閉弁させられる(図12(III))。
一方駆動軸30が図中下向きに移動し、その際に係合部78が第2被係合部68に当接し係合することで、主弁16が図中下向きに移動させられ、強制開弁させられる。
【0046】
本実施形態においても、導入小孔26が目詰まりを生じて背圧室24が圧力上昇しなくなり、主弁16が閉弁できなくなった場合においても、駆動軸30を閉弁方向に移動させることで、その駆動軸30に設けた係合部78と主弁16側の第1被係合部62との係合作用で主弁16を強制的に閉弁させ、止水させることができる。従って導入小孔26の目詰まりによって水が出っ放しとなってしまうといった不都合を良好に解消することができる。
【0047】
また本実施形態では同一の係合部78が、主弁16の強制閉弁用としても、また強制開弁用としても働くため、強制閉弁用の係合部の他に強制開弁用の係合部を別に設ける場合に較べて構造を簡素化することができる。
【0048】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。例えば本発明は上記パイロット弁をプランジャ以外の他の様々な形態で構成するといったことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態であるパイロット式流調弁装置の断面図である。
【図2】同実施形態の要部拡大図である。
【図3】同実施形態のパイロット式流調弁装置の止水状態を示す作用説明図である。
【図4】同実施形態のパイロット式流調弁装置を開操作した際の作用説明図である。
【図5】同実施形態のパイロット式流調弁装置を閉操作した際の作用説明図である。
【図6】同実施形態のパイロット式流調弁装置の強制閉弁による止水を説明する図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【図8】同実施形態のパイロット式流調弁装置の要部を分解して示す図である。
【図9】同実施形態の係合部の拡大斜視図である。
【図10】同実施形態のパイロット式流調弁装置を開操作した際の作用説明図である。
【図11】同実施形態のパイロット式流調弁装置を閉操作した際の作用説明図である。
【図12】同実施形態のパイロット式流調弁装置の強制閉弁による止水を説明する図である。
【図13】従来のパイロット式流調弁装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10 パイロット式流調弁装置
12 1次側の流入水路
14 2次側の流出水路
16 主弁
24 背圧室
26 導入小孔
28 パイロット水路
30 駆動軸
44 パイロット弁座
46 パイロット弁
58 第1係合部
59,80 弾性リング
60 第2係合部
62 第1被係合部
68 第2被係合部
78 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)主弁座に対して接近離間方向に進退運動して主水路の開度を変化させる主弁と
(ロ)該主弁の背後に形成され、内部の圧力を該主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と
(ハ)前記主水路における1次側の流入水路の水を該背圧室に導いて該背圧室の圧力を増大させる導入小孔と
(ニ)該背圧室と前記主水路における2次側の流出水路とを連通させる状態に前記主弁を貫通して設けられ、該背圧室の水を該流出水路に抜いて該背圧室の圧力を減少させるパイロット水路と
(ホ)前記主弁と同方向に進退運動して該主弁に設けられたパイロット弁座に対する相対位置を変化させ、該パイロット水路の開度を変化させるパイロット弁と
(ヘ)該パイロット弁を駆動する駆動軸と
を備え、該パイロット弁の進退運動に追従して前記主弁を進退運動させて前記主水路の流量調節を行うパイロット式流調弁装置において
前記駆動軸に、該駆動軸の軸方向且つ主弁の閉弁方向の移動に伴って前記主弁側の被係合部に係合して該主弁を強制的に閉弁させ止水させる強制止水用の係合部が設けてあることを特徴とするパイロット式流調弁装置。
【請求項2】
請求項1において、前記主弁側には強制止水用の前記被係合部としての第1被係合部が設けられているとともに、該第1被係合部に対して軸方向に隔たった位置に強制開弁用の第2被係合部が設けられており、且つ前記係合部は強制開弁用の係合部も兼ねていて前記駆動軸の軸方向且つ開弁方向の移動に伴って該係合部が前記第2被係合部に係合して前記主弁を強制開弁させるようになしてあることを特徴とするパイロット式流調弁装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記係合部が前記駆動軸に嵌着され、該駆動軸から径方向に突出するリング部材にて構成してあることを特徴とするパイロット式流調弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−24063(P2007−24063A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202630(P2005−202630)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】