説明

パケット転送システム、パケット転送装置、新規フロー受付判断方法、及び、コンピュータプログラム

【課題】容易なパラメータ設定により、既にサービス中のフローの品質と設備効率を確保しながら、新規フローの受付可否を判断する。
【解決手段】新たなフローを開始するに先立って端末1sは、通信開始依頼パケットを送信する。優先パケットを低優先パケットより優先して転送し、低優先パケットを優先パケットの出力の待ち合わせがないときにのみに転送する、発側、中継、着側の各パケット転送装置は、受信した通信開始依頼パケットの優先度を、フローを構成するパケットよりも低く判断し、優先されるパケットの影響で通信開始依頼パケットに待ちが発生した場合には、その通信開始依頼パケットを廃棄する。着側端パケット転送装置2dは、通信開始依頼パケットを受信すると、発側へ送り返し、発側端パケット転送装置2sは、送り返された通信開始依頼パケットを受信した場合に、発側の端末1sからのフローを受付可能と判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP網における、少なくとも電話を含むリアルタイム通信において、既に受け付けたセッションの品質を確保するために新たなセッションの受付制御を行うパケット転送システム、パケット転送装置、新規フロー受付判断方法、及び、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
リアルタイム通信を行う場合に、ネットワーク内に流入するフローを無制限に受け付けると、新規に受け付けたフローだけではなく、既にサービス中のフローにパケット損失や遅延、遅延揺らぎなどが発生してしまい、全てのフローがサービスとして成り立たなくなってしまう。このためリアルタイム通信を実現するには、ネットワークの混雑状況に応じて新たなフローの流入を規制しなければならない。
このような新たなフローの流入の制御についてはこれまでに様々な検討がなされているが、そのうちのひとつである非特許文献1と、この非特許文献1の技術を元に作成された非特許文献2における新規フロー受付判断の方法を説明する。
【0003】
この従来の方法では、リアルタイム通信を行おうとする端末が、本来のフローを送出する前に低優先のパケットを本来のフローと同じレートあるいは最大のレートとしてネットワークに発出し、その低優先パケットを受信端末側で受信してパケット損失率を計測する。そして、この計測された損失率により帯域に余裕があるかどうかを判断し、余裕があると判断された場合には、本来のフローを構成するパケットを優先パケットとして送出する。つまり、パケット損失率が閾値よりも大きければそのフローは送出しない。
【0004】
発着端末間のパケットを中継するパケット転送装置では、スタティックモードとよばれる一定レートを常時流し続けるフローに対応した優先制御として、トークンバケツを使用し、低優先パケットは、自らのパケットサイズに加えて予め決められた量の余分なトークンが残っていなければ廃棄される制御がある。これにより優先パケットと低優先パケットとを優先付けしている。また、エラスティックモードとよばれるレートが変動するフローに対応した優先制御では、パケットを損失させる容量の他に新たなフローを制限する容量の2つの容量を設け、これらの容量に基づいたトークンバケツによる制御で優先をつけている。これにより既に受け付けたフローの品質を保つように新たなフローの受付を規制している。
【非特許文献1】N. MORITA、G. KARLSSON,“draft-morita-tsvwg-pps-01.txt,Framework of Priority Promotion Scheme”,[online],2004年5月,Internet Engineering Task Force,[平成19年7月9日検索],インターネット<URL:http://ietfreport.isoc.org/idref/draft-morita-tsvwg-pps/>
【非特許文献2】N. MORITA,“draft-morita-tsvwg-mfphb-00.txt,Measurable Forwarding: A New per-Hop Behavior (PHB)”,[online],2004年5月,Internet Engineering Task Force,[平成19年7月9日検索],インターネット<URL:http://ietfreport.isoc.org/idref/draft-morita-tsvwg-mfphb/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したスタティックモードでは、トークンバケツにおけるトークン残量が自らのパケットサイズに加え「予め決められた量」以上なければ廃棄されるしくみによって優先度の差を与えるものである。この優先のしくみでは、ある時間内に受け付ける新フローの上限の数を制限している。つまり、優先度の高いパケットが優先度の低いパケットに対して絶対優先になっているわけではない。よって、この予め決められた量を適切に決めないと低優先度のパケットにトークンが消費され、高優先度のパケットであっても損失することがおきる。このため、この「予め決められた量」を適切に決める必要がある。
また、スタティックモードで通信開始依頼パケットが損失されるときは、帯域を100%使用した状態であり、このとき初めて混雑状態を把握できる。つまり、新たに開始されるフローによって使用帯域が100%を越えてしまう直前まで、フローを許可する。しかし、実際のパケットのレートには、通常、揺らぎがある。このモードでは、揺らぎにより使用帯域が100%以上になるような帯域使用率が高い状態であっても、パケットを受信したその時点で100%以上の帯域使用率にならなければ新規フローを受け付けてしまうため、優先パケット(すでにサービス中のフロー)が損失される危険性が非常に高くなる。
【0006】
さらにエラスティックモードでは、流れるフローの特性に応じてパケットを損失させる帯域と新たなフローを制限する帯域の2つのパラメータをバランスよく決めなければならない。なぜならば、新たなフローを制限する帯域が相対的に大きくなれば、その分新たなフローを多く受け付けてしまうために、サービス中のフロー品質を悪化させてしまうからである。一方、新たなフローを制限する帯域を小さく設定すると、受け付けられたフローの品質は確保されるものの、新たなフローがなかなか受け付けられないために、ネットワーク内のサービス中のフロー数が減少し、ネットワーク設備の効率を下げてしまうという問題がある。加えて、これらのパラメータは事前に決めておかなければならないため、トラヒックに応じて柔軟に変更することができず、さらに適切に決めることは難しい。
【0007】
また、上述した両モードでは、ユーザ端末がパケットに優先度をつけているため、悪意のあるユーザが優先度を偽って常に高優先度パケットを送信してきた場合には、ネットワーク側は偽造されたものか偽造されていないものなのかの判別がつかないという問題もある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易なパラメータ設定により、既にサービス中のフローの品質と設備効率を確保しながら、不正にフローが受け付けられること防いで新規フローの受付可否を判断することのできるパケット転送システム、パケット転送装置、新規フロー受付判断方法、及び、コンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、優先パケットを低優先パケットより優先して転送し、低優先パケットを優先パケットの出力の待ち合わせがないときにのみに転送するパケット転送装置を複数有し、前記パケット転送装置を介して発端末と着端末間のパケットを転送するパケット転送システムであって、発端末は、新たなフローを開始する前に着端末宛の通信開始依頼パケットを送信し、前記パケット転送装置は、パケットを受信し、受信したパケットが通信開始依頼パケットである場合は、フローを構成するパケットより低優先のパケットと判断するクラス分け部と、前記通信開始依頼パケットに、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生した場合は当該通信開始依頼パケットを破棄し、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生しなかった場合は当該通信開始依頼パケットを転送する出力部と、を備え、着端末に接続されるパケット転送装置である着側端パケット転送装置は、受信した通信開始依頼パケットを、発端末に接続されるパケット転送装置である発側端パケット転送装置に返送されるよう宛先を書き換える返送部をさらに備え、前記発側端パケット転送装置の前記クラス分け部は、受信したパケットが前記着側端パケット転送装置から返送された通信開始依頼パケットである場合、前記発端末からのフローを受付可能とする、ことを特徴とするパケット転送システムである。
【0010】
また、本発明は、上述するパケット転送システムであって、前記発端末は、前記通信開始依頼パケットを複数送信し、前記発側端パケット転送装置の前記クラス分け部は、前記複数の通信開始依頼パケットが全て前記着側端パケット転送装置から返送された場合に、前記発端末からのフローを受付可能とする、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述するパケット転送システムであって、前記発側端パケット転送装置は、受付を許可するフローを特定する情報のリストである受付可能フローリストを記憶する記憶部をさらに備え、前記発側端パケット転送装置の前記クラス分け部は、前記着側端パケット転送装置から返送された前記通信開始依頼パケットよりフローを特定する情報を取得して、前記記憶部内の受付可能フローリストに追加し、前記発端末から受信したパケットが、フローを構成するパケットである場合は、当該パケットに設定されているフローを特定する情報が前記記憶部内の受付可能フローリストに含まれているかを判断し、含まれていると判断した場合に当該パケットの通過を許可する、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述するパケット転送システムであって、前記発側端パケット転送装置の前記クラス分け部は、前記着側端パケット転送装置から返送された通信開始依頼パケットを受信した時刻の情報をさらに前記記憶部内の受付可能フローリストに追加し、前記発端末から受信したパケットが、フローを構成するパケットである場合は、さらに、当該パケットの受信時刻が、前記フローを特定する情報に対応して前記記憶部に記憶されている受信時刻から所定の時間を超えているかを判断し、超えていると判断した場合は、当該受付可能フローリストから当該フローを特定する情報を削除するとともに、前記発端末へ再度新たな通信開始依頼パケットの送信指示を通知する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上述するパケット転送システムであって、前記パケット転送装置は、フローを構成するパケットのキューイングを行う高優先キューと、通信開始依頼パケットのキューイングを行う低優先キューとを備え、前記クラス分け部は、受信したパケットが通信開始依頼パケットである場合は、当該パケットを前記低優先キューに入れ、受信したパケットがフローを構成するパケットである場合は前記高優先キューに入れ、前記出力部は、前記高優先キュー内のパケットを低優先キュー内の通信開始依頼パケットに優先して読み出し、前記高優先キュー内に待ち合わせているパケットがないときに前記低優先キュー内の通信開始依頼パケットを読み出すとともに、前記高優先キュー内に待ち合わせているパケットがあるために待ち合わせが発生した場合は当該通信開始依頼パケットを廃棄する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上述するパケット転送システムであって、前記発端末、あるいは、前記発側端パケット転送装置のクラス分け部において、前記通信開始依頼パケットに低優先度を示す情報を設定することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上述するパケット転送システムであって、前記クラス分け部は、通信開始依頼パケットを受信したときに、自身が当該通信開始依頼パケットの着側端パケット転送装置であるかを判断し、着側端パケット転送装置でなければ受信した通信開始依頼パケットを転送し、着側端パケット転送装置であれば当該通信開始依頼パケットを前記発側端パケット転送装置に返送することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上述するパケット転送システムであって、前記発側端パケット転送装置の前記クラス分け部は、前記着側端パケット転送装置から返送された通信開始依頼パケットを受信した場合に、前記発端末へフロー受付可能を通知し、前記発端末は、前記通信開始依頼パケットを送信した後、所定の時間内にフロー受付可能を受信しない場合に、ネットワーク混雑により現在送信が不可能である旨を出力することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上述するパケット転送システムであって、フローを特定する情報は、発端末及び着端末のIPアドレス及びポート番号であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、優先パケットを低優先パケットより優先して転送し、低優先パケットを優先パケットの出力の待ち合わせがないときにのみに転送するパケット転送装置を複数有し、前記パケット転送装置を介して発端末と着端末間のパケットを転送するパケット転送システムにおいて前記発端末に接続されるパケット転送装置であって、パケットを受信し、受信したパケットが発端末から送信された通信開始依頼パケットである場合は、フローを構成するパケットより低優先のパケットと判断し、受信したパケットが着端末に接続されるパケット転送装置から返送された通信開始依頼パケットである場合は、前記発端末からのフローを受付可能とするクラス分け部と、前記通信開始依頼パケットに、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生した場合は当該通信開始依頼パケットを破棄し、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生しなかった場合は当該通信開始依頼パケットを転送する出力部と、を備えることを特徴とするパケット転送装置である。
【0019】
また、本発明は、優先パケットを低優先パケットより優先して転送し、低優先パケットを優先パケットの出力の待ち合わせがないときにのみに転送するパケット転送装置を複数有し、前記パケット転送装置を介して発端末と着端末間のパケットを転送するパケット転送システムにおいて前記着端末に接続されるパケット転送装置であって送装置において、パケットを受信し、受信したパケットが通信開始依頼パケットである場合は、フローを構成するパケットより低優先のパケットと判断するクラス分け部と、受信した通信開始依頼パケットを、発端末に接続されるパケット転送装置に返送するよう宛先を書き換える返送部と、前記通信開始依頼パケットに、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生した場合は当該通信開始依頼パケットを破棄し、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生しなかった場合は当該通信開始依頼パケットを転送する出力部と、を備えることを特徴とするパケット転送装置である。
【0020】
また、本発明は、優先パケットを低優先パケットより優先して転送し、低優先パケットを優先パケットの出力の待ち合わせがないときにのみに転送するパケット転送装置を複数有し、前記パケット転送装置を介して発端末と着端末間のパケットを転送するパケット転送システムに用いられる新規フロー受付判断方法であって、発端末が、新たなフローを開始する前に着端末宛の通信開始依頼パケットを送信する通信開始依頼送信ステップを実行し、前記発端末に接続されるパケット転送装置である発側端パケット転送装置が、パケットを受信し、受信したパケットが通信開始依頼パケットである場合は、フローを構成するパケットより低優先のパケットと判断するクラス分けステップと、前記通信開始依頼パケットに、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生した場合は当該通信開始依頼パケットを破棄し、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生しなかった場合は当該通信開始依頼パケットを転送する出力ステップと、を実行し、前記発側端パケット転送装置と、着端末に接続されるパケット転送装置である着側端パケット転送装置との間でパケットを転送する中継パケット転送装置が、前記クラス分けステップと、前記出力ステップとを実行することにより他のパケット転送装置から受信した前記通信開始依頼パケットを破棄または転送し、前記着側端パケット転送装置が、前記通信開始依頼パケットを受信し、受信した通信開始依頼パケットの宛先を、前記発側端パケット転送装置に返送されるよう書き換えるとともに、前記クラス分けステップと、前記出力ステップとを実行することにより当該通信開始依頼パケットを破棄または返送し、前記中継パケット転送装置が、前記クラス分けステップと、前記出力ステップとを実行することにより、返送された通信開始依頼パケットを破棄または転送し、前記発側端パケット転送装置が、返送された通信開始依頼パケットを受信した場合に、前記発端末からのフローを受付可能とする、ことを特徴とする新規フロー受付判断方法である。
【0021】
また、本発明は、優先パケットを低優先パケットより優先して転送し、低優先パケットを優先パケットの出力の待ち合わせがないときにのみに転送するパケット転送装置を複数有し、前記パケット転送装置を介して発端末と着端末間のパケットを転送するパケット転送システムにおける、前記発端末に接続される前記パケット転送装置のコンピュータプログラムであって、パケットを受信し、受信したパケットが通信開始依頼パケットである場合は、フローを構成するパケットより低優先のパケットと判断し、受信したパケットが着端末に接続されるパケット転送装置から返送された通信開始依頼パケットである場合は、前記発端末からのフローを受付可能とするステップと、前記通信開始依頼パケットに、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生した場合は当該通信開始依頼パケットを破棄し、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生しなかった場合は当該通信開始依頼パケットを転送するステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラムである。
【0022】
また、本発明は、優先パケットを低優先パケットより優先して転送し、低優先パケットを優先パケットの出力の待ち合わせがないときにのみに転送するパケット転送装置を複数有し、前記パケット転送装置を介して発端末と着端末間のパケットを転送するパケット転送システムにおける、前記着端末に接続される前記パケット転送装置のコンピュータプログラムであって、パケットを受信し、受信したパケットが通信開始依頼パケットである場合は、フローを構成するパケットより低優先のパケットと判断するステップと、受信したパケットが前記通信開始依頼パケットである場合に、発端末に接続されるパケット転送装置に返送されるよう宛先を書き換えるステップと、前記通信開始依頼パケットに、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生した場合は当該通信開始依頼パケットを破棄し、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生しなかった場合は当該通信開始依頼パケットを転送するステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、パケット転送装置において、パケットの絶対優先読み出しを行うことにより、優先パケットによる待ちが発生した低優先パケットは廃棄されるため、優先パケットと低優先パケットの優先度が逆転するようなことが発生しない。また、低優先パケットの廃棄は、帯域を100%使用する前に発生する。これは、通常、ネットワークの使用帯域は常に一定ではなく、揺らぎがあるためであり、平均的な帯域の使用率が100%に近くなるほど瞬間的に使用率が100%を超えることが多くなる。この瞬間的に100%を超えた状態では、キューでの待ちが発生している。そのため、使用帯域のゆらぎによっては100%を超えるような高帯域使用率の状態において、通信開始に先立って帯域に余裕があるかを確認するため送信される低優先度の通信開始依頼パケットが廃棄され、新たなフローを受け付けないようにすることができる。よって、ゆらぎによっては使用帯域が100%を超えるような高帯域使用率の状態において、既に確立されているフロー等の優先パケットが損失されることを防ぐことができる。また、ネットワークが混雑するに従い、優先パケットによる待ち合わせが頻発するようになり、それに従い通信開始依頼パケットが廃棄される確率が高くなり、新規フローの受付はしづらくなる。よって、トラヒックに応じた制御が可能となる。また、ネットワークの利用率が低い場合には、優先パケットによる待ち合わせが発生する頻度は小さくなるため、新たなフローを受け付けることになり設備の有効利用が実現できる。
加えて、パケットの優先度付けは、端末ではなく端パケット転送装置にて行うため偽造の問題も発生せず、正しい制御が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態によるパケット転送装置を適用したパケット転送システムの簡単なネットワーク構成例を示す図である。
同図において、IP(Internet Protocol)などを用いたネットワークであるネットワークNには、複数のパケット転送装置2が設置され、加入者の端末1は、ネットワークNのエッジのパケット転送装置2に接続される。発信者Sの端末1である端末1sに接続されるエッジのパケット転送装置2を発側端パケット転送装置2s、着信者Dの端末1である端末1dに接続されるエッジのパケット転送装置2を着側端パケット転送装置2d、発側端パケット転送装置2s及び着側端パケット転送装置2d間のパケットの中継を行うパケット転送装置2を中継パケット転送装置2rとする。以下では、発側端パケット転送装置2s及び着側端パケット転送装置2dを総称して端パケット転送装置と記載する。
【0025】
図2は、パケット転送装置2の備えるキュー構造を示す図である。
中継、端に関わらずパケット転送装置2は、図2に示すようなキュー構造を備えている。同図に示すキュー構造は、優先度の高い優先パケットをキューイングする高優先キューQhと、優先度の低い低優先パケットをキューイングする低優先キューQlと、高優先キューQh、低優先キューQlから絶対優先(SP:Strict Priority)にてパケットを読み出し、伝送路に送出する読み出し部Rからなる。読み出し部Rは、高優先キューQhで優先パケットが待ち合わせを行っている場合には、高優先キューQh内の優先パケットを先に読み出すため、低優先パケットは低優先キューQlで待ち合わせることになる。読み出し部Rは、高優先キューQhが空になったときに初めて低優先キューQlから低優先パケットを読み出すが、低優先パケットが高優先キューQhに優先パケットのために出力の待ち合わせを行った場合には、その低優先パケットを廃棄する。このように、高優先キューQhと低優先キューQlは、高優先キューQhの読み出しを絶対優先にすることで優先度の差をつけている。
【0026】
図1及び図2を使用して、本発明の一実施の形態によるパケット転送装置2を用いた通信全体の流れを説明する。ここで、発信者Sは、着信者Dにリアルタイム通信、例えば、VoIP等のメディア通信を行いたいものとする。発信者Sの端末1sは、まずはじめに、着信者Dの端末1d宛にパケットを送信し、内部にそのパケットの送出時刻を記録する。このとき送出するパケットは、本来のリアルタイム通信のフロー(以下、「本来フロー」)ではなく、事前にネットワークの品質状態を調べるために送出されるパケット、すなわち、通信開始依頼パケットであり、通信開始依頼であることを示す情報が設定される。なお、複数の通信開始依頼パケットを送出するときは、内部に記録する送出時刻を、あらかじめ決めた序数の通信開始依頼パケットを送出した時刻とし、その序数の情報もパケット内に設定する。
【0027】
この端末1sから送信された通信開始依頼パケットを受信した発側端パケット転送装置2sは、当該通信開始依頼パケットのヘッダ部分において優先度を示す部分を、低優先を示す設定値に書き換える。発側端パケット転送装置2sは、図2に示すようなキュー構造における低優先キューQlに、この優先度を書き換えた通信開始依頼パケットを入れ、本来フローを構成するパケットは高優先キューQhに入れて、高優先キューQh内の優先パケットを常に優先して読み出すようにする。低優先パケットである通信開始依頼パケットは、高優先キューQhで待ち合わせている優先パケットのために待ち合わせを行った場合、廃棄される。また、発側端パケット転送装置2sは、通信開始依頼パケットとそれに対応する本来フローとの対応を管理する。管理情報としては、発着IPアドレスおよび本来フローでのポート番号であり、これらの情報は通信開始依頼パケットから読み出される。
【0028】
中継パケット転送装置2rも、図2に示すようなキュー構造を備え、低優先の通信開始依頼パケットを低優先キューQlにいれ、本来フローを構成するパケットを高優先キューQhに入れる。そして、高優先キューQhで優先パケットが待ち合わせを行っている場合には、優先パケットが先に読み出され、高優先キューQhが空になったときに初めて低優先パケットが読み出されることになるが、低優先パケットが高優先キューQhで待ち合わせを行っている優先パケットのために待ち合わせを行った場合には、その低優先パケットは廃棄される。通信開始依頼パケットは、廃棄されなかった場合、次段のパケット転送装置2に転送される。その通信開始依頼パケットが着側端パケット転送装置2dに到着すると、当該着側端パケット転送装置2dは、自身が着側の端パケット転送装置であることを確認し、受信した通信開始依頼パケットの発着アドレスを入れ替えて発側端パケット転送装置2sへ送り返す。復路においても同様に通信開始依頼パケットは低優先キューに入れられ、復路において、いずれかの中継パケット転送装置2rで高優先キューによる待ち合わせが発生した場合には、廃棄される。廃棄されなかった通信開始依頼パケットは、最終的に発側端パケット転送装置2sに転送される。
【0029】
発側端パケット転送装置2sは、その返送された通信開始依頼パケットを受信するとフロー受付可能と判断し、当該通信開始依頼パケットから取得した端末1s及び端末1dのIPアドレス、ポート番号を記録し、受付可能フローリスト(後述する図6)に加える。そのときに発側端パケット転送装置2sは、着側端パケット転送装置2dから折り返されてきた通信開始依頼パケットを当該発側端パケット転送装置2sにおいて受信した時刻も受付可能フローリストに記録する。発側端パケット転送装置2sは、このフローリストに掲載されているフロー以外は、フローを受け付けない。さらに、発側端パケット転送装置2sは、発信者Sの端末1sに受け付け可能であることを通知する。フロー受付可能の通知を受け取った発信者Sの端末1sは、実際のリアルタイム通信のフローのパケットを送出する。
【0030】
一方、通信開始依頼パケットを送出後、ある決められた時間を経過しても発側端パケット転送装置2sからフロー受け付け可能通知がない場合には、端末1sは、ネットワーク混雑により現在送信が不可能である旨のメッセージをディスプレイに表示し、ユーザに知らせる。さらに一定時間、同じ着信者Dの端末1dへの通信開始依頼パケットの送出を規制する機能も有する場合がある。
また、発側端パケット転送装置2sにおいて、受付可能フローリストに受け付け可能としてフローを登録した後、当該フローを構成するパケットが、ある一定時間以内に送られてこない場合には、受付可能フローリストからそのフローを削除し、端末1sに再度通信開始依頼パケットを送付するように通知する。
【0031】
本実施の形態によれば、パケット転送装置2において、パケットの絶対優先読み出しを行うことにより、高優先キューQh内の高優先度のパケットによる待ちが発生した低優先度のパケットは廃棄されるため、優先パケットと低優先パケットの優先度が逆転するようなことが発生しない。また、低優先パケットの廃棄は、帯域を100%使用する前に発生する。これは、通常、ネットワークの使用帯域は常に一定ではなく、揺らぎがあるためであり、平均的な帯域の使用率が100%に近くなるほど瞬間的に使用率が100%を超えることが多くなる。この瞬間的に100%を超えた状態では、キューでの待ちが発生している。そのため、使用帯域のゆらぎによっては100%を超えるような高帯域使用率の状態において、低優先度の通信開始依頼パケットが廃棄され、新たなフローを受け付けないようにすることができる。これは、発側端パケット転送装置2s、中継パケット転送装置2r、着側端パケット転送装置2dそれぞれがこのキュー制御を行うことにより、揺らぎによって瞬間的に100%を超えるような帯域使用率のときには、どこかのパケット転送装置2において通信開始依頼パケットが廃棄される確率が高くなるからであり、換言すれば、揺らぎによって100%を超えることがないような帯域使用率に達するまで新たなフローを受け付けることができる。このように、ゆらぎによっては使用帯域が100%を超えるような高帯域使用率の状態において、既に確立されているフロー等の優先パケットが損失されることを防ぐことができる。また、ネットワークが混雑するに従い、高優先キューQhにパケットがたまることが頻発するようになり、それに従い通信開始依頼パケットが廃棄される確率が高くなり、新規フローの受付はしづらくなる。よって、トラヒックに応じた制御が可能となる。また、ネットワークの利用率が低い場合には、高優先キューQhにパケットがたまる頻度は小さくなるため、新たなフローを受け付けることになり設備の有効利用が実現できる。
加えて、パケットの優先度付けは、端末ではなく発側端パケット転送装置2sにて行うため偽造の問題も発生せず、正しい制御が行われる。
【0032】
以下に、パケット転送装置の詳細な処理を説明していくが、まず、パケット転送装置2の構成について説明する。
図3は、パケット転送装置2の機能ブロック図を示す。パケット転送装置2は、中継パケット転送装置2r、中継パケット転送装置に関わらず同図に示す構造を有している。同図において、パケット転送装置2は、回線対応部21、スイッチ部22を備える。伝送路からの入り側の回線対応部21が入り側回線対応部21iであり、伝送路への出側の回線対応部21が出側回線対応部21eである。
【0033】
端末1または1ホップ前のパケット転送装置2から送られてきたパケットは、入り側回線対応部21iに到着し、スイッチ部22により行き先ごとに、行き先に対応した出側回線対応部21eに送られ、次のパケット転送装置2または端末1に送られる。本実施の形態のパケット転送装置2では、出側回線対応部21eにおいて、図2に示すキュー構造を備え、絶対優先によりパケットを読み出し、優先パケットによって低優先パケットに待ちが発生した場合には、低優先パケットを廃棄する。それ以外は、通常のパケット転送装置と同様にパケット転送を行う。
【0034】
図4は、発側端パケット転送装置2sの入り側回線対応部21iの詳細な機能ブロック図である。入り側回線対応部21iは、物理回線対応部23、入り側クラス分け部24、及び、受付可能フローリスト記憶部25を備える。
受付可能フローリスト記憶部25は、受け付け可能なフローを特定する情報のリストである受付可能フローリストを記憶する。物理回線対応部23は、物理回線、すなわち、伝送路との接続インタフェースである。入り側クラス分け部24は、通信開始依頼パケットか否かによりパケットの優先度を決定するとともに、受付可能フローリストに登録されているフローのパケットであるか否かにより、受付可能可否の判断を行う。
なお、着側端パケット転送装置2d、中継パケット転送装置2rでは、受付可能フローリストは受付可能フローリスト記憶部25を保持せず、入り側クラス分け部24では、受付可能フローリストに登録されているフローのパケットであるか否かの判断は行わない。
【0035】
図5は、パケット転送装置2の出側回線対応部21eの詳細な機能ブロック図であり、発側端パケット転送装置2s、着側端パケット転送装置2d、中継パケット転送装置2rとも同様の構成である。出側回線対応部21eは、出側クラス分け部26、待ちキュー部27、物理回線対応部23を備える。出側クラス分け部26は、パケットの優先度に応じて待ちキュー部27へパケットを出力する。待ちキュー部27は、図2に示すキュー構造を有し、絶対優先によりパケットを読み出すとともに、優先パケットのために待ちが発生した低優先パケットを廃棄する。物理回線対応部23は、入り側回線対応部21iのものと同様である。
【0036】
図6は、受付可能フローリスト記憶部25に記憶される受付可能フローリストの設定例を示す。同図において、受付可能フローリストは、管理番号、通信開始依頼パケット到着時刻、発IPアドレス、着IPアドレス、発ポート番号、着ポート番号の情報を含むレコードからなる。管理番号は、一意にレコードを特定する番号であり、発側端パケット転送装置2sにて付与される。発IPアドレス、着IPアドレス、発ポート番号、着ポート番号の情報は、フローを特定する情報として用いられる。通信開始依頼パケット到着時刻は、着側端パケット転送装置2dから折り返された通信開始依頼パケットを発側端パケット転送装置2sで受信した時刻であり、端末1sが複数の通信開始依頼パケットを送信する場合は、さらに序数の情報が保持されうる。
【0037】
図7は、端パケット転送装置において、優先パケットによる待ちが発生したときに低優先パケットを廃棄する、パケット転送処理のフローチャートを示す。
端パケット転送装置では、パケットの転送以外に様々な機能を持つ。端パケット転送装置の入り側回線対応部21iは、パケットを受信すると(ステップS105)、当該パケットの内のサービスの種類を示す情報を参照し、リアルタイム通信用に帯域を保証するサービスのパケットかどうかを、入り側クラス分け部24で判断する(ステップS110)。ここでリアルタイム通信のパケットではない場合には(ステップS110:NO)、通常のパケット転送装置と同様に転送を行う(ステップS115)。
【0038】
ステップS110において、リアルタイム通信のパケットであると判断した場合には(ステップS110:YES)、通信開始依頼パケットかどうかの判断を、入り側回線対応部21iの入り側クラス分け部24で行う(ステップS120)。
受信したパケットが通信開始依頼パケットであった場合には(ステップS120:YES)、着側端パケット転送装置2dから送り返されたものかの判断を、入り側回線対応部21iの入り側クラス分け部24で行う(ステップS125)。着側端パケット転送装置2dから送り返されたものでない場合には、パケット転送装置2のスイッチ部22に送られ、次の転送先が着端末(端末1d)かどうかを判断する(ステップS130)。次の転送先が着端末でない場合、すなわち、当該端パケット転送装置が発側端パケット転送装置2sである場合、入り側クラス分け部24は、受信した通信開始依頼パケットに低優先パケットであることを示す情報を設定して(ステップS135)、スイッチ部22に出力し、スイッチ部22は当該通信開始依頼パケットを宛先に対応した出側回線対応部21eに出力する。出側回線対応部21eの出側クラス分け部26は、待ちキュー部27の低優先キューQlに通信開始依頼パケットを出力する。待ちキュー部27は、優先パケットによる待ちが発生したかどうか判断し(ステップS140)、優先パケットによる待ちが発生した場合には(ステップS140:YES)、当該パケットを廃棄し(ステップS145)、そうでない場合には次のパケット転送装置2に転送する(ステップS150)。
【0039】
一方、ステップS130において、次の転送先が着端末であった場合、すなわち、当該端パケット転送装置が着側端パケット転送装置2dである場合、スイッチ部22において、受信した通信開始依頼パケットに送り返しパケットであることの情報を付加するとともに、発着のアドレスを入れ替えて出側回線対応部21eに出力し、発側端パケット転送装置2sへ送り返す(ステップS155)。これにより、出側回線対応部21eの出側クラス分け部26により、通信開始依頼パケットは待ちキュー部27の低優先キューQlに出力される。待ちキュー部27は、優先パケットによる待ちが発生しなかった場合、通信開始依頼パケットを次の中継パケット転送装置2rに転送する。なお、出側クラス分け部26は、受信パケットが通信開始依頼パケットであるかを判断して低優先キューQlに出力するようにしてもよく、受信したパケットに低優先度であることを示す情報が設定されているかを判断して、低優先キューQlに出力するようにしてもよい。
【0040】
一方、ステップS125において、受信したパケットに折り返しパケットであることの情報が設定されており、着側端パケット転送装置2dから送り返されたものであると判断した場合(ステップS125:YES)、当該端パケット転送装置は発側端パケット転送装置2sであり、入り側クラス分け部24は、現在の時刻を記録し、受付可能フローリスト記憶部25内の受付可能フローリストに、管理番号、現在の時刻、通信開始依頼パケットから取得した端末1sのIPドレス(発IPアドレス)、端末1dのIPアドレス(着IPアドレス)、端末1sのポート番号(発ポート番号)、端末1dのポート番号(着ポート番号)、序数(複数送信の場合)の情報を含むレコードを登録する(ステップS160)。発側端パケット転送装置2sの入り側クラス分け部24は、スイッチ部22を介して出側回線対応部21eに出力される。出側回線対応部21eは、端末1sへ通信開始依頼パケットを転送し、フロー受け付け可能を通知する(ステップS165)。
【0041】
また、ステップS120において、通信開始依頼パケットではないと判断した場合には(ステップS120:NO)、受信したパケットは、本来フローのリアルタイム通信のパケットであると想定される。スイッチ部22は、次の転送先が中継パケット転送装置2rかどうか判断し(ステップS170)、中継パケット転送装置2rでない場合(ステップS170:NO)、すなわち当該端パケット転送装置が着側端パケット転送装置2dの場合には、パケットを宛先に対応する出側回線対応部21eに出力して着側の端末1dに転送する(ステップS175)。
【0042】
一方、次の転送先が中継パケット転送装置2rである場合は(ステップS170:YES)、当該端パケット転送装置は発側端パケット転送装置2sであり、受信パケットが、受付可能フローリスト記憶部25内の受付可能フローリストに登録されているフローのパケットかどうかの判断を、入り側回線対応部21iの入り側クラス分け部24で行う(ステップS180)。すなわち、入り側クラス分け部24は、受信パケットに設定されている発IPアドレス、着IPアドレス、発ポート番号、着ポート番号が受付可能フローリストに登録されているフローのパケットでなければ(ステップS180:NO)、そのパケットを廃棄する(ステップS185)。パケットが受付可能フローリストに属していれば(ステップS180:YES)、入り側クラス分け部24は、そのパケットに優先パケットであることを示す情報を設定する(ステップS190)。続いて、入り側クラス分け部24は、フローの最初のパケットかどうかを判断する(ステップS195)。これは、例えば、フローの最初のパケットを受信したときに、当該フローを特定する情報を受付可能フローリスト記憶部25などの記憶手段に記憶するようにしておき、最初のパケットか否かを判断するときには、受信したパケットから抽出したフローを特定する情報が、すでに最初のパケットを受信したフローとして内部に記憶されているか否かによって判断する。あるいは、端末1sによってパケット内にフローの最初のパケットであることを示す情報が設定されているかにより判断してもよい。
【0043】
フローの最初のパケットであると判断された場合(ステップS195:NO)、入り側クラス分け部24は、受付可能フローリスト内の当該フローの通信開始依頼パケット到着時刻と、現時刻との差が閾値以内かどうか判断する(ステップS200)。差が閾値以内であれば(ステップS200:YES)、受信パケットはスイッチ部22を介して出側回線対応部21eに出力され、出側回線対応部21eにおいて高優先キューQhに入れられ、転送される(ステップS205)。閾値以内に収まっていない場合には(ステップS200:NO)、該当フローのレコードを受け付け可能フローリストから削除して(ステップS210)、発側の端末1sにパケットを返送し、再度通信開始依頼パケットを送信するよう指示する(ステップS215)。なお、ステップS195において、受信したパケットが、フローの最初のパケットでないと判断された場合(ステップS195:NO)、当該パケットはスイッチ部22を介して出側回線対応部21eに出力され、出側回線対応部21eにおいて高優先キューQhに入れられ、転送される(ステップS220)。
【0044】
なお、端末1sが複数の通信開始依頼パケットを送信する場合、発側端パケット転送装置2sにおいて、返送された通信開始依頼パケットを全て、あるいは、所定の割合以上受信した場合に、フローを許可すると判断し、フローを許可すると判断した時点で端末1sにフロー受け付け可能を通知する。あるいは、発側端パケット転送装置2sは、返送された通信開始依頼パケットを受信する都度端末1sへ転送し、端末1sは、所定の割合以上返送された通信開始依頼パケットを受信した場合に、フロー受け付け可能と認識する。
【0045】
図8は、中継パケット転送装置2rの処理のフローチャートを示す。
中継パケット転送装置2rの入り側回線対応部21iがパケットを受信すると(ステップS305)、スイッチ部22に出力する。スイッチ部22は、宛先に対応する出側回線対応部21eに出力し、出側回線対応部21eの出側クラス分け部26は、受信したパケットが通信開始依頼パケットかどうかの判断を行う(ステップS310)。受信したパケットが通信開始依頼パケットであった場合(ステップS310:YES)、待ちキュー部27の低優先キューQlに出力する。なお、通信開始依頼パケットであるかの代わりに、受信したパケットに低優先度であることを示す情報が設定されている場合に、低優先キューQlに出力するようにしてもよい。待ちキュー部27は、優先パケットによる待ちが発生したかどうか判断する(ステップS315)。優先パケットによる待ちが発生しなかった場合には(ステップS315:NO)、次のパケット転送装置2に転送し(ステップS320)、優先パケットによる待ちが発生した場合には(ステップS315:YES)、当該パケットを廃棄する(ステップS325)。
【0046】
一方、ステップS310において、通信開始依頼パケットではないと判断した場合(ステップS310:NO)、受信したパケットは、スイッチ部22を介して出側回線対応部21eに出力され、出側回線対応部21eにおいて転送される(ステップS330)。
【0047】
上記実施形態によれば、各パケット転送装置2で本来フローを構成するパケットをキューイングする高優先キューQhと低優先度のパケットをキューイングする低優先キューQlの2つを設け、高優先キューQhは絶対優先読み出しを行う。これにより低優先パケットは、高優先キューQhにパケットが待ち合わせている限り読み出されることはない。新規フローの受付制御を行うために、低優先度である通信開始依頼パケットに高優先キューQhによる待ちが発生した場合には、その通信開始依頼パケットを廃棄する。パケットの優先度付けは、端末1ではなく発側端パケット転送装置2sにて行う。
【0048】
なお、上述の端末1、及び、パケット転送装置2は、内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述した端末1、及び、パケット転送装置2の動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものである。
【0049】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0050】
なお、端末1、及び、パケット転送装置2は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態によるパケット転送システムの構成図である。
【図2】本実施形態によるパケット転送装置が備えるキュー構造の図である。
【図3】本実施形態によるパケット転送装置の機能ブロック図である。
【図4】本実施形態による入り側回線対応部のブロック図である。
【図5】本実施形態による出側回線対応部のブロック図である。
【図6】本実施形態による受付可能フローリストの例である。
【図7】本実施形態による端パケット転送装置における処理のフローチャートである。
【図8】本実施形態による中継パケット転送装置における処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1s、1d…端末
2…パケット転送装置
2s…発側端パケット転送装置
2r…中継パケット転送装置
2d…着側端パケット転送装置
21…回線対応部
21i…入り側回線対応部
21e…出側回線対応部
22…スイッチ部(返送部)
23…物理回線対応部
24…入り側クラス分け部(クラス分け部)
25…受付可能フローリスト記憶部(記憶部)
26…出側クラス分け部(クラス分け部)
27…待ちキュー部(出力部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
優先パケットを低優先パケットより優先して転送し、低優先パケットを優先パケットの出力の待ち合わせがないときにのみに転送するパケット転送装置を複数有し、前記パケット転送装置を介して発端末と着端末間のパケットを転送するパケット転送システムであって、
発端末は、新たなフローを開始する前に着端末宛の通信開始依頼パケットを送信し、
前記パケット転送装置は、
パケットを受信し、受信したパケットが通信開始依頼パケットである場合は、フローを構成するパケットより低優先のパケットと判断するクラス分け部と、
前記通信開始依頼パケットに、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生した場合は当該通信開始依頼パケットを破棄し、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生しなかった場合は当該通信開始依頼パケットを転送する出力部と、
を備え、
着端末に接続されるパケット転送装置である着側端パケット転送装置は、
受信した通信開始依頼パケットを、発端末に接続されるパケット転送装置である発側端パケット転送装置に返送されるよう宛先を書き換える返送部をさらに備え、
前記発側端パケット転送装置の前記クラス分け部は、
受信したパケットが前記着側端パケット転送装置から返送された通信開始依頼パケットである場合、前記発端末からのフローを受付可能とする、
ことを特徴とするパケット転送システム。
【請求項2】
前記発端末は、前記通信開始依頼パケットを複数送信し、
前記発側端パケット転送装置の前記クラス分け部は、
前記複数の通信開始依頼パケットが全て前記着側端パケット転送装置から返送された場合に、前記発端末からのフローを受付可能とする、
ことを特徴とする請求項1に記載のパケット転送システム。
【請求項3】
前記発側端パケット転送装置は、
受付を許可するフローを特定する情報のリストである受付可能フローリストを記憶する記憶部をさらに備え、
前記発側端パケット転送装置の前記クラス分け部は、
前記着側端パケット転送装置から返送された前記通信開始依頼パケットよりフローを特定する情報を取得して、前記記憶部内の受付可能フローリストに追加し、
前記発端末から受信したパケットが、フローを構成するパケットである場合は、当該パケットに設定されているフローを特定する情報が前記記憶部内の受付可能フローリストに含まれているかを判断し、含まれていると判断した場合に当該パケットの通過を許可する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパケット転送システム。
【請求項4】
前記発側端パケット転送装置の前記クラス分け部は、
前記着側端パケット転送装置から返送された通信開始依頼パケットを受信した時刻の情報をさらに前記記憶部内の受付可能フローリストに追加し、
前記発端末から受信したパケットが、フローを構成するパケットである場合は、さらに、当該パケットの受信時刻が、前記フローを特定する情報に対応して前記記憶部に記憶されている受信時刻から所定の時間を超えているかを判断し、超えていると判断した場合は、当該受付可能フローリストから当該フローを特定する情報を削除するとともに、前記発端末へ再度新たな通信開始依頼パケットの送信指示を通知する、
ことを特徴とする請求項3に記載のパケット転送システム。
【請求項5】
前記パケット転送装置は、
フローを構成するパケットのキューイングを行う高優先キューと、
通信開始依頼パケットのキューイングを行う低優先キューとを備え、
前記クラス分け部は、受信したパケットが通信開始依頼パケットである場合は、当該パケットを前記低優先キューに入れ、受信したパケットがフローを構成するパケットである場合は前記高優先キューに入れ、
前記出力部は、前記高優先キュー内のパケットを低優先キュー内の通信開始依頼パケットに優先して読み出し、前記高優先キュー内に待ち合わせているパケットがないときに前記低優先キュー内の通信開始依頼パケットを読み出すとともに、前記高優先キュー内に待ち合わせているパケットがあるために待ち合わせが発生した場合は当該通信開始依頼パケットを廃棄する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかの項に記載のパケット転送システム。
【請求項6】
前記発端末、あるいは、前記発側端パケット転送装置のクラス分け部において、前記通信開始依頼パケットに低優先度を示す情報を設定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかの項に記載のパケット転送システム。
【請求項7】
前記クラス分け部は、通信開始依頼パケットを受信したときに、自身が当該通信開始依頼パケットの着側端パケット転送装置であるかを判断し、着側端パケット転送装置でなければ受信した通信開始依頼パケットを転送し、着側端パケット転送装置であれば当該通信開始依頼パケットを前記発側端パケット転送装置に返送することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかの項に記載のパケット転送システム。
【請求項8】
前記発側端パケット転送装置の前記クラス分け部は、
前記着側端パケット転送装置から返送された通信開始依頼パケットを受信した場合に、前記発端末へフロー受付可能を通知し、
前記発端末は、
前記通信開始依頼パケットを送信した後、所定の時間内にフロー受付可能を受信しない場合に、ネットワーク混雑により現在送信が不可能である旨を出力することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかの項に記載のパケット転送システム。
【請求項9】
フローを特定する情報は、発端末及び着端末のIPアドレス及びポート番号であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかの項に記載のパケット転送システム。
【請求項10】
優先パケットを低優先パケットより優先して転送し、低優先パケットを優先パケットの出力の待ち合わせがないときにのみに転送するパケット転送装置を複数有し、前記パケット転送装置を介して発端末と着端末間のパケットを転送するパケット転送システムにおいて前記発端末に接続されるパケット転送装置であって、
パケットを受信し、受信したパケットが発端末から送信された通信開始依頼パケットである場合は、フローを構成するパケットより低優先のパケットと判断し、受信したパケットが着端末に接続されるパケット転送装置から返送された通信開始依頼パケットである場合は、前記発端末からのフローを受付可能とするクラス分け部と、
前記通信開始依頼パケットに、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生した場合は当該通信開始依頼パケットを破棄し、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生しなかった場合は当該通信開始依頼パケットを転送する出力部と、
を備えることを特徴とするパケット転送装置。
【請求項11】
優先パケットを低優先パケットより優先して転送し、低優先パケットを優先パケットの出力の待ち合わせがないときにのみに転送するパケット転送装置を複数有し、前記パケット転送装置を介して発端末と着端末間のパケットを転送するパケット転送システムにおいて前記着端末に接続されるパケット転送装置であって送装置において、
パケットを受信し、受信したパケットが通信開始依頼パケットである場合は、フローを構成するパケットより低優先のパケットと判断するクラス分け部と、
受信した通信開始依頼パケットを、発端末に接続されるパケット転送装置に返送するよう宛先を書き換える返送部と、
前記通信開始依頼パケットに、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生した場合は当該通信開始依頼パケットを破棄し、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生しなかった場合は当該通信開始依頼パケットを転送する出力部と、
を備えることを特徴とするパケット転送装置。
【請求項12】
優先パケットを低優先パケットより優先して転送し、低優先パケットを優先パケットの出力の待ち合わせがないときにのみに転送するパケット転送装置を複数有し、前記パケット転送装置を介して発端末と着端末間のパケットを転送するパケット転送システムに用いられる新規フロー受付判断方法であって、
発端末が、
新たなフローを開始する前に着端末宛の通信開始依頼パケットを送信する通信開始依頼送信ステップを実行し、
前記発端末に接続されるパケット転送装置である発側端パケット転送装置が、
パケットを受信し、受信したパケットが通信開始依頼パケットである場合は、フローを構成するパケットより低優先のパケットと判断するクラス分けステップと、
前記通信開始依頼パケットに、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生した場合は当該通信開始依頼パケットを破棄し、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生しなかった場合は当該通信開始依頼パケットを転送する出力ステップと、
を実行し、
前記発側端パケット転送装置と、着端末に接続されるパケット転送装置である着側端パケット転送装置との間でパケットを転送する中継パケット転送装置が、
前記クラス分けステップと、前記出力ステップとを実行することにより他のパケット転送装置から受信した前記通信開始依頼パケットを破棄または転送し、
前記着側端パケット転送装置が、
前記通信開始依頼パケットを受信し、受信した通信開始依頼パケットの宛先を、前記発側端パケット転送装置に返送されるよう書き換えるとともに、
前記クラス分けステップと、前記出力ステップとを実行することにより当該通信開始依頼パケットを破棄または返送し、
前記中継パケット転送装置が、
前記クラス分けステップと、前記出力ステップとを実行することにより、返送された通信開始依頼パケットを破棄または転送し、
前記発側端パケット転送装置が、
返送された通信開始依頼パケットを受信した場合に、前記発端末からのフローを受付可能とする、
ことを特徴とする新規フロー受付判断方法。
【請求項13】
優先パケットを低優先パケットより優先して転送し、低優先パケットを優先パケットの出力の待ち合わせがないときにのみに転送するパケット転送装置を複数有し、前記パケット転送装置を介して発端末と着端末間のパケットを転送するパケット転送システムにおける、前記発端末に接続される前記パケット転送装置のコンピュータプログラムであって、
パケットを受信し、受信したパケットが通信開始依頼パケットである場合は、フローを構成するパケットより低優先のパケットと判断し、受信したパケットが着端末に接続されるパケット転送装置から返送された通信開始依頼パケットである場合は、前記発端末からのフローを受付可能とするステップと、
前記通信開始依頼パケットに、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生した場合は当該通信開始依頼パケットを破棄し、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生しなかった場合は当該通信開始依頼パケットを転送するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項14】
優先パケットを低優先パケットより優先して転送し、低優先パケットを優先パケットの出力の待ち合わせがないときにのみに転送するパケット転送装置を複数有し、前記パケット転送装置を介して発端末と着端末間のパケットを転送するパケット転送システムにおける、前記着端末に接続される前記パケット転送装置のコンピュータプログラムであって、
パケットを受信し、受信したパケットが通信開始依頼パケットである場合は、フローを構成するパケットより低優先のパケットと判断するステップと、
受信したパケットが前記通信開始依頼パケットである場合に、発端末に接続されるパケット転送装置に返送されるよう宛先を書き換えるステップと、
前記通信開始依頼パケットに、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生した場合は当該通信開始依頼パケットを破棄し、優先パケットによる出力の待ち合わせが発生しなかった場合は当該通信開始依頼パケットを転送するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−33353(P2009−33353A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193695(P2007−193695)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人情報研究機構、「次世代ネットワーク(NGN)基盤技術の研究開発」委託研究、産業活力再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】