説明

パターン形成装置、パターン形成方法

【課題】この発明は、転写電界を抑制しつつ被転写媒体に対して帯電粒子によるパターンを高い解像度で高精細に形成できるパターン形成装置、およびパターン形成方法を提供することを課題とする。
【解決手段】パターン形成装置10は、ステージ6上に保持されたガラス板5に沿って転動するドラム状の原版1を有する。帯電器2によって原版1の高抵抗層表面を帯電させた後、現像装置3r、3g、3bを介して各色の液体現像剤を原版1に供給してトナー粒子によるパターンを形成する。そして、原版1をガラス板5に沿って転動させてガラス板5との間に電界を形成し、且つ転写領域で2つの永久磁石62、64の間にあるトナー粒子に磁界を作用させ、帯電したトナー粒子をガラス板5に転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、平面型画像表示装置、配線基板、ICタグなどの製造に用いるパターン形成装置、およびパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置の前面基板に蛍光体スクリーンを形成する製造装置として、感光体ドラムの表面にパターン状の静電潜像を形成し、この静電潜像に帯電した現像剤を供給して現像し、このように現像した各色の現像剤像を転写ドラムへ順次転写し、転写ドラム上で重ねられた各色の現像剤像を基板に一括転写して定着させる装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この装置で、転写ドラムから基板へ各色の現像剤像を転写する際には、基板の裏面側に配置した転写チャージャを用いて基板を帯電させ、転写ドラムと基板との間に電界を形成して、この電界の作用によって転写ドラム表面上の各色の現像剤像を基板へ転写する。
【0004】
しかし、この従来の装置によると、転写ドラムと基板との間のギャップに比例して基板上に転写される現像剤像(転写像)が広がる問題がある。つまり、ギャップが広くなると、転写ドラムから基板に向かう現像剤像が拡散して広がり、パターンがにじんだように大きくなってしまう。転写電界を大きくすることで、このような転写像の広がり問題は軽減できるが、転写電界をあまり大きくし過ぎると放電の問題を新たに生じてしまう。
【0005】
特に、画像表示装置のサイズが大きくなるにつれて前面基板のサイズも大きくなると、基板の歪みに起因して転写ドラムとの間のギャップ管理が極めて難しくなり、基板全面に亘って均一なギャップを維持することは極めて困難となる。この場合、転写ドラムと基板が近付いた部位で放電を生じることのないように、転写ドラムと基板との間のギャップを十分に大きく取るか、或いは転写電界を小さく抑える対策を講じる必要がある。
【0006】
このため、上述した従来の装置では、転写像の広がりの問題を解消することは困難であり、転写ドラム上の各色の現像剤像を高い解像度で高精度に基板へ転写することはできなかった。
【特許文献1】特開2004−30980号公報(段落[0023]〜[0026])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、転写電界を抑制しつつ被転写媒体に対して帯電粒子によるパターンを高い解像度で高精細に形成できるパターン形成装置、およびパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明のパターン形成装置は、像保持体の表面に帯電粒子を付着させてパターン像を形成する像形成装置と、この像形成装置で表面にパターン像が形成された上記像保持体と該表面に対向した被転写媒体との間に電界を形成して上記パターン像を上記被転写媒体に転写する転写装置と、この転写装置による転写動作時に上記像保持体と被転写媒体との間に上記電界の方向に沿った磁界を形成する磁界形成装置と、を有する。
【0009】
また、この発明のパターン形成方法は、像保持体の表面に帯電粒子を付着させてパターン像を形成する像形成工程と、この像形成工程で表面にパターン像が形成された上記像保持体と該表面に対向した被転写媒体との間に電界を形成して上記パターン像を上記被転写媒体に転写する転写工程と、を有し、上記転写工程において上記像保持体と被転写媒体との間に上記電界の方向に沿った磁界を形成することを特徴とする。
【0010】
上記発明によると、像保持体の表面に形成したパターン像を被転写媒体に転写するとき、像保持体と被転写媒体との間に電界を形成するとともに電界と同じ方向の磁界を形成するようにしたため、被転写媒体上でパターン像に広がりを生じる不具合を防止でき、解像度の高い高精細なパターンを形成できる。
【0011】
また、この発明のパターン形成装置は、像保持体の表面に帯電粒子を付着させてパターン像を形成する像形成装置と、この像形成装置で表面にパターン像が形成された上記像保持体と該表面に対向した被転写媒体との間に電界を形成して上記パターン像を上記被転写媒体に転写する転写装置と、上記電界が作用する転写領域で上記像保持体と被転写媒体との間に磁界を形成して、上記電界によって上記像保持体の表面から上記被転写媒体に向けて移動する各帯電粒子にローレンツ力を作用させ、各帯電粒子を上記被転写媒体上のそれぞれのランディング位置へ収束させる磁界形成装置と、を有する。
【0012】
さらに、この発明のパターン形成方法は、像保持体の表面に帯電粒子を付着させてパターン像を形成する像形成工程と、この像形成工程で表面にパターン像が形成された上記像保持体と該表面に対向した被転写媒体との間に電界を形成して上記パターン像を上記被転写媒体に転写する転写工程と、を有し、上記転写工程において、上記電界が作用する転写領域で上記像保持体と被転写媒体との間に磁界を形成して、上記電界によって上記像保持体の表面から上記被転写媒体に向けて移動する各帯電粒子にローレンツ力を作用させ、各帯電粒子を上記被転写媒体上のそれぞれのランディング位置へ収束させることを特徴とする。
【0013】
上記発明によると、転写装置による転写電界によって像保持体から被転写媒体に向けて移動する帯電粒子に対して磁界を作用させることで帯電粒子が拡散することを防止でき、被転写媒体上のランディング位置へ収束させることができるため、被転写媒体上でパターン像に広がりを生じる不具合を防止でき、解像度の高い高精細なパターンを形成できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明のパターン形成装置は、上記のような構成および作用を有しているので、転写電界を抑制しつつ被転写媒体に対して帯電粒子によるパターンを高い解像度で高精細に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に示すように、この発明の実施の形態に係るパターン形成装置10は、図中時計回り方向(矢印R方向)に回転するドラム素管(後述する)の周面に巻かれた原版1(像保持体)、この原版1の後述する高抵抗層に電荷を与えて帯電させる帯電器2、原版1に各色(r:赤、g:緑、b:青)の液体現像剤を供給して現像する複数の現像装置3r、3g、3b(以下、総称して現像装置3と称する場合もある)、現像によって原版1に付着した液体現像剤の溶媒成分をエアブローによって気化して乾燥させる乾燥器4、原版1に付着した現像剤粒子を転写してパターンを形成するガラス板5(被転写媒体)を定位置で保持するステージ6、転写に先立ってガラス板5の表面に高抵抗もしくは絶縁性の溶媒を塗布する塗布装置7、転写を終えた原版1をクリーニングするクリーナ8、および原版1の電荷を除去する除電器9を有する。帯電器2、現像装置3、および乾燥器4は、本発明の像形成装置として機能する。
【0016】
各色の現像装置3r、3g、3bに収納される液体現像剤は、炭化水素系やシリコーン系などの絶縁性溶媒中に帯電した微粒子(帯電粒子)を分散したもので、この微粒子が電界で電気泳動することによって現像が行われる。微粒子としては、例えば平均粒径4[μm]程度の各色の蛍光体粒子をこれよりも平均粒径が小さい樹脂粒子が取り囲み、樹脂粒子がイオン性帯電サイトを有していて電界中でイオン解離することで電荷を帯びる構成や、樹脂粒子の内部に各色の顔料微粒子を内包する構成、もしくは樹脂粒子の表面に各色の顔料微粒子を担持する構成などが実施可能である。
【0017】
図2(a)に平面図を示すように、原版1は、矩形の薄板状に形成されている。この原版1は、図2(b)に断面図を示すように、厚さ0.05[mm]ないし0.4[mm]、より好ましくは厚さ0.1[mm]ないし0.2[mm]の矩形の金属フィルム12の表面に高抵抗層13を形成して構成されている。金属フィルム12は可撓性を有し、アルミニウム、ステンレス、チタン、アンバーなどの素材で構成可能であるほかに、ポリイミドやPETなどの表面に金属を蒸着したものなどでも良いが、転写パターンを高い位置精度で形成するためには、熱膨張や応力による伸びなどが生じにくい素材で構成することが望ましい。また、高抵抗層13は、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリエステル、ウレタン、エポキシ、テフロン(登録商標)、ナイロン、公知のレジスト材料などの体積抵抗率が1010[Ωcm]以上の材料(絶縁体を含む)により形成され、その膜厚は、10[μm]〜40[μm]、より好ましくは20[μm]±5[μm]に形成されている。
【0018】
また、原版1の高抵抗層13の表面13aには、図3に部分的に拡大して示すような矩形の凹部14aを多数整列配置したパターン14が形成されている。本実施の形態では、例えば平面型画像表示装置の前面基板に形成する蛍光体スクリーンを製造する凹版として、1色分の画素に相当する凹部14aだけを高抵抗層13の表面13aから凹ませて形成し、図3中に破線で示す他の2色分の領域14bには凹部を形成しないでスペースだけを確保してある。
【0019】
図4には、1つの凹部14aを拡大した原版1の断面図を示してある。本実施の形態では、凹部14aの底には金属フィルム12の表面12aが露出しており、この金属フィルム12の露出した表面12aがこの発明のパターン状の電極層として機能する。凹部14aの深さは、高抵抗層13の層厚に概ね相当する。凹部14aの底に露出した金属フィルム12の表面12a、および高抵抗層13の表面13aを含む原版1の表面全体に、厚さ0.5[μm]ないし3[μm]程度の表面離型層をコーティングすれば、転写特性が向上しより好ましい特性が得られる。
【0020】
図5には、上記構造のフィルム状の原版1をドラム素管31に巻きつける様子を描いた概略断面図を示してある。ドラム素管31の図中上部の切り込み部31aには、原版1の一端を固定するクランプ32と他端を固定するクランプ33が設けられている。原版1をドラム素管31の周面上に巻き付ける場合、まず、原版1の一端をクランプ32に固定し、その後、原版1を架張しつつその他端34をクランプ33で固定する。これにより、たるみ無く原版1をドラム素管31周面の規定位置に巻き付けることができる。
【0021】
図6は、このようにしてドラム素管31に巻きつけられた原版1の高抵抗層13の表面13aを帯電器4によって帯電する工程を説明するための部分構成図である。帯電器4は、周知のコロナ帯電器であり、コロナワイヤー42とシールドケース43で基本的に構成されているが、メッシュ状のグリッド44を設けることで帯電の均一性を向上できる。例えば、原版1の金属フィルム12とシールドケース43を接地し、コロナワイヤー42に不図示の電源装置によって+5.5[kV]の電圧を印加し、更にグリッド44に+500[V]の電圧を印加して原版1を図中矢印R方向に移動させると、高抵抗層13の表面13aは略+500[V]に均一に帯電される。
【0022】
同図に示した除電器9は、帯電器4とほぼ同様の構造であるが、コロナワイヤー46に例えば実効電圧6[kV]、周波数50[Hz]の交流電圧を印加すべく不図示の交流電源に接続し、シールドケース47とグリッド48を接地すると、帯電器4による帯電に先立って原版1の高抵抗層13の表面13aを略0[V]となるよう除電することが可能で、高抵抗層13の繰り返し帯電特性を安定化させることができる。
【0023】
図7には、上記のように帯電された原版1に対する現像動作を説明するための図を示してある。現像時には、現像する色の現像器3を原板1に対向させて、その現像ローラ51とスクイズローラ52を原版1に近接させ、原版1に上述した液体現像剤を供給する。現像ローラ51は、搬送される原版1の高抵抗層13の表面13aに対して100〜150[μm]程度のギャップを介してその周面が対向する位置に配置され、原版1の回転方向と同じ方向(図中反時計回り方向)に1.5倍ないし4倍程度の速度で回転する。
【0024】
不図示の供給系によって現像ローラ51周面に供給される液体現像剤53は、絶縁性液体としての溶媒54に帯電粒子としての帯電したトナー粒子55を分散させて構成されており、現像ローラ51の回転に伴って原版1の周面に供給される。ここで、現像ローラ51に図示しない電源装置によって例えば+250[V]の電圧を印加すると、正に帯電しているトナー粒子55は、接地電位の金属フィルム12に向かって溶媒54中を泳動し、原版1の凹部14a内に集められる。このとき、高抵抗層13の表面13aは、+500[V]程度に帯電されているので正帯電したトナー粒子55は表面13aから反発されて付着しない。
【0025】
このようにして原版1の凹部14a内にトナー粒子55が集められた後、トナー粒子55の濃度が薄くなった液体現像剤53が引き続いてスクイズローラ52と原版1が対向するギャップに進入する。ここでは、ギャップ(絶縁層13表面13aとスクイズローラ52表面の間の距離)が30[μm]ないし50[μm]、スクイズローラの電位が+250[V]で、スクイズローラ52は原版1とは逆向きに原版1の速度の3倍から5倍程度の速度で移動するように設定されているため、現像をさらに促進しつつ、同時に原版1に付着している溶媒56の一部を絞り取る効果を奏する。このようにして、原版1の凹部14aにトナーによるパターン57が形成される。
【0026】
ところで、ガラス板5上に3色の蛍光体のパターンを形成する場合、図8に示すように、まず、青色蛍光体粒子を含む液体現像剤を収納する現像器3bが原版1の直下に移動し、ここで図示しない昇降機構によって現像器3bが上昇して原版1に近接させる。この状態で、原板1が矢印R方向に回転して凹部14aによるパターンが現像される。青色パターンの現像が終了すると、現像器3bが下降して原版1から離間する。
【0027】
この青色現像プロセスの間に、図示しない搬送装置によって予め搬送されてステージ6上に保持されているガラス板5のステージ6から離間した表面に沿って塗布装置7が図中の破線矢印T1方向に移動し、ガラス板5の表面に溶媒(絶縁性液体)が塗布される。この溶媒の役割と材料組成については後述する。
【0028】
しかる後に、青色のパターンを周面に担持した原版1が回転しつつ図中の破線矢印T2に沿って移動(この動作を転動と称する)し、青色のパターン像がガラス板5の表面に転写される。このとき、後述する磁界形成装置60が動作される。転写の詳細についても後述する。青パターンの転写を終えた原版1は図中左方に平行移動し、現像時の初期位置に戻る。このとき、ガラス板5を保持したステージ6が下降して初期位置に戻る原版1との接触が避けられる。
【0029】
次に、3色の現像器3r、3g、3bが図中左方に移動し、緑色の現像器3gが原版1の直下に位置するところで停止し、青色の現像のときと同様にして現像器3gの上昇、現像、下降が行われる。引き続いて上記と同様の操作で緑パターンが原版1からガラス板5の表面に転写される。このとき、緑色のパターンのガラス板5表面上の転写位置は、上述した青色のパターンから1色分ずらされることは言うまでもない。
【0030】
そして、上記の動作を赤色の現像についても繰り返し、ガラス板5の表面上に3色パターンを並べて転写して3色のパターン像をガラス板5の表面に形成する。このように、ガラス板5を定位置に保持して固定し、原版1をガラス板5に対して移動させることで、ガラス板5の往復移動が不要になり、大きな移動スペースの確保や装置の大型化を抑制できる。
【0031】
図9には、上述した原版1をガラス板5に沿って転動させるための転動機構の要部の構造を示してある。原版1を周面上に巻き付けたドラム素管31の軸方向両端には、ピニオンと呼ばれる歯車71が取り付けられている。原版1は、この歯車71とモーター72の駆動歯車73のかみ合わせによって回転するとともに、ステージ6の両端に設置されている直線軌道のラック74とピニオン(歯車71)の噛み合わせによって図中右方向に並進する。このとき、ステージ6上に保持されたガラス板5の表面と原版1の表面との間に相対的なズレを生じることのないように、転動機構の各部の構造が設計されている。
【0032】
このようなラック・アンド・ピニオン機構によれば、駆動伝達用のアイドラが無いため、バックラッシュの無い高精度の回転・並進駆動を実現でき、ガラス板5上に例えば±5[μm]といった位置精度の高い高精細パターンを転写することが可能となる。
【0033】
一方、ガラス板5(図9では図示していない)は、図8に示すように、ステージ6の平らな接触面6aに対してその裏面5b(原版1から離間した側の面)の略全面を面接させるようにステージ6上に配置される。その上、ガラス板5には、ステージ6を貫通して接触面6aまで延びた吸気口76に、接続パイプ75から主パイプ77を経由して不図示の真空ポンプを接続することによって、吸気口76の接触面6aに開口した図示しない吸着孔を介して負圧が作用され、ステージ6の接触面6a上に吸着される。この吸着機構によって、ガラス板5は、高い平面度を持った接触面6aにその裏面5bの略全面を押圧させて密着され、平面性が高い状態でステージ6上に保持される。このように平らな接触面6aにガラス板5を押し付けることにより、ガラス板5の歪み等をも矯正でき、後述する原版1との間の転写ギャップを高精度に維持できる。
【0034】
図10は、原版1からガラス板5にトナー粒子55を転写する際の様子を説明する要部断面図である。ガラス板5の表面5aには、例えば導電性高分子などで構成される導電層81が塗布されており、この導電層81の表面81aと原版1の高抵抗層13の表面13aとは、ギャップd2を介して非接触状態に設置される。d2は例えば10[μm]ないし40[μm]の範囲の値に設定される。高抵抗層13の厚さが例えば20[μm]の場合は、金属フィルム12と導電層81表面81aとの間の距離は、30[μm]ないし60[μm]となる。
【0035】
この状態で、電源装置82(転写装置)を介して導電層81に例えば−500[V]の電圧を印加すると、接地電位の金属フィルム12との間に500[V]の電位差が形成され、その電界によってトナー粒子55が溶媒54中を電気泳動して導電層81の表面81aに転写される。
【0036】
このとき、図8でも図示した磁界形成装置60が動作され、上記電界が作用する転写領域において原版1とガラス板5との間に磁界が形成される。すなわち、磁界形成装置60は、原版1と一緒に矢印T2に沿って移動可能に設けられた移動側の板状の永久磁石62、およびステージ6の下面側に配置された固定側の板状の永久磁石64を有し、移動する原版1がガラス板5に対向する転写領域で、常に、転写電界と略同じ方向に磁束が向かう磁界を発生させるよう機能する。
【0037】
より具体的には、一方の永久磁石62は、原版1をその外周面上に巻設したドラム素管31の図示しない回転軸に対して回転可能に取り付けられており、回転軸によって懸垂支持されている。このため、ドラム素管31の転動によってドラム素管31が矢印T2方向に移動する際、永久磁石62は、回転軸の直下の位置で図示したような略水平な姿勢を保ちつつドラム素管31とともに矢印T2方向に移動する。
【0038】
また、他方の永久磁石64は、ガラス板5より少なくとも一回り大きいサイズを有し、ガラス板5を水平な姿勢で載置したステージ6のガラス板5から離間した下面側に略水平な姿勢で固設されている。つまり、転写領域周辺を部分的に拡大した図10で示すように、原版1とガラス板5との間の転写領域では、一方の永久磁石62が原版1のガラス板5から離間した裏面側に略水平な姿勢で配置され、転写領域を挟むように、他方の永久磁石64がガラス板5の原版1から離間した下面(裏面)側に略水平な姿勢で配置されていることになる。このため、転写領域では、常に電界の方向と略同じ方向の磁界がトナー粒子55に作用することになる。
【0039】
なお、永久磁石62、64として、例えば、酸化鉄(Fe2O3)−ストロンチウム(Sr)−バリウム(Ba)等からなるストロンチウム系フェライト磁石、酸化鉄−酸化ストロンチウム(SrO)−バリウム−コバルト(Co)−ランタン(La)等からなるランタンコバルト系フェライト磁石、マンガン(Mn)−アルミニウム−カーボン(C)等からなるマンガンアルミニウムカーボン磁石、鉄(Fe)−クロム(Cr)−コバルト等からなる鉄クロムコバルト磁石、サマリウム(Sm)−コバルト等からなるサマリウムコバルト磁石、ネオジウム(Ne)−鉄−ホウ素(B)等からなるネオジウム系磁石、鉄−ニッケル(Ni)コバルト−アルミニウムや鉄−ニッケル−コバルト−アルミニウム−チタンや鉄−ニッケル−コバルト−アルミニウム−銅(Cu)等からなるアルニコ磁石、バリウム−酸化鉄−酸素(O)等からなるバリウム磁石等の公知の永久磁石が用いられる。
【0040】
また、永久磁石62、64が互いに対向する対向面の極性は、いずれか一方がN極、もう一方がS極であれば良く、N極、S極はどちらでも良い。また、永久磁石の代わりに電磁石を用いても永久磁石と同様の効果を得ることができる。特に、2つの永久磁石62、64のうち少なくとも一方の永久磁石の代りに電磁石を用いることで、転写領域に作用させる磁界の強度を制御できるため、装置の特性に合わせて最も高い解像度で高精細なパターン像を形成できる磁界強度を選択することができる。
【0041】
以上のように、原版1からガラス板5にパターン状のトナー粒子55を転写する際に、転写電界とともに同じ方向の磁界を形成することで、各トナー粒子55にローレンツ力を作用させることができ、各トナー粒子55をガラス板5(導電層81)上の理想的なランディング位置へ収束させることができ、転写電界を高めることなく、解像度の高い高精細なパターンを転写できる。なお、導電層81は、トナー粒子55の転写後、ガラス板5を図示しないベーク炉へ投入して焼成することで消失させる。
【0042】
なお、上記のように、電界を用いてトナー粒子をガラス板5に転写する場合、転写ギャップに溶媒が存在してガラス板5側の導電層81と原版1との間を濡らすことが必須条件となるため、転写に先立ってガラス板5の表面5aを溶媒でプリウェットしておくことが有効である。プリウェット溶媒としては絶縁性もしくは高抵抗であれば良いが、液体現像剤に用いられている溶媒と同一の溶媒、もしくはこれに帯電制御剤などが添加されたものであればなお好適である。プリウェット溶媒は、図8を用いて説明したように、塗布装置7によって適切なタイミングで適当な塗布量でガラス板5の表面5a上に塗布される。
【0043】
以下、上述した磁界形成装置60の機能について、図10とともに図11、図12を参照してより詳細に説明する。
図10に示すように、電源装置82を介してガラス板5表面の導電層81に電圧(−500[V])を与えて接地電位の金属フィルム12との間で電界を形成すると、凹部14a内に収容された各トナー粒子55に対し、ガラス板5に真っ直ぐ向かう方向の電界による力が作用するとともに、この方向以外の方向の力が僅かに作用することが知られている。このように、僅かでも、トナー粒子55が転写方向に垂直な方向の速度成分を持った場合、上述した磁界形成装置60によって磁界を形成しないと、当該トナー粒子55の導電層表面81aにおけるランディング位置にズレを生じてしまう。
【0044】
凹部14a内に収容した全てのトナー粒子55が同じような挙動をするため、磁界を形成しない場合、金属フィルム12と導電層表面81aとの間の距離d1に比例して、導電層表面81aにランディングする転写像のサイズが広がることになる。この現象は、転写するパターンの形状によらずギャップd1および転写電界の強度に依存して発生し、例えば、図11に示すように、原版1の凹部14aの形状が楕円形である場合であっても、転写像の広がり量Lは、最大で、上述した高抵抗層表面13aと導電層表面81aとの間のギャップd2と同等に達することが分かっている(図12参照)。
【0045】
このため、本実施の形態では、2つの永久磁石62、64を用いてトナー粒子55の転写方向と略同じ方向に磁束を有する磁界を形成し、各トナー粒子の導電層表面81aにおけるランディング位置のズレを抑制するようにし、その結果、転写像の広がりを抑制するようにした。つまり、電界と略平行な磁界を形成することで、凹部14aからガラス板5に向けて溶媒54中を泳動する各トナー粒子55に対してローレンツ力を作用させて、転写方向に垂直な方向の回転運動とガラス板5に向かう直線運動を組み合わせた螺旋運動をさせ、各トナー粒子の転写方向に垂直な方向のズレをその回転運動の軌道の内側に拘束し、それ以上に転写像が広がることを抑制することができる。
【0046】
図12には、磁界を形成した場合と形成しない場合について、ギャップd2[μm]を変化させたときの転写像の広がり量L[μm]を示してある。これによると、磁界を印加しない場合、転写像の広がり量Lが最大で60[μm]になることが確認された。この転写像の広がりは、転写パターンの形状には依存せず、サンプルパターンとして長径260[μm]短径160[μm]の長円を形成する場合、最大で長径380[μm]短径280[μm]の長円となり特に短径の増倍率は175[%]にもなることが分かった。
【0047】
これに対し、磁界を印加することで、ギャップd2によらず、転写像の広がり量Lを10[μm](増倍率113[%])以内に抑えることができた。
【0048】
以上のように、本実施の形態によると、原版1からガラス板5へトナー粒子55によるパターンを転写する際、トナー粒子にガラス板5に向かう電界を作用させると同時に、電界と略同じ方向の磁界を形成するようにしたため、電界によってガラス板5に向けて移動する各トナー粒子55に対してローレンツ力を作用させることができ、転写像の広がりを抑制することができた。つまり、本実施の形態によると、解像度の高い高精細なパターンを転写できる。
【0049】
図13には、原版1の高抵抗層13の表面13aをガラス板5の表面5a上に設けた導電層81の表面81aに接触させた状態でトナー粒子55を転写する例を示してある。なお、ここで図示した各部の構成は、ステージ6とガラス板5との間に弾性部材91を介在させた以外、上述した実施の形態の構成と殆ど同じであるため、同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0050】
実際のガラス板5は、位置によって厚さのばらつきがあり、ばらつきの大きさが30[μm]に達する場合もあるため、図10に示すように原版1との間にギャップd2を20[μm]に設定した場合であっても、位置によって導電層81の表面が図13に示すように高抵抗層13の表面13aに接触することも考えられる。
【0051】
この場合、トナー粒子55が溶媒中を泳動する距離が極めて短くなるため、2つの永久磁石62、64を用いて転写領域を磁束が通過する磁界を形成しても転写像の広がりを抑制する効果はあまり期待できないが、磁界をかけることによる悪影響は発生せず、電気泳動によって良好な転写が行われる。
【0052】
しかしながら、ステージ6の接触面6a上にそのままガラス板5を載置して原版1を導電層81に接触させると、ガラス板5の厚さのばらつき等、両者の間のギャップが変動した場合、その部位で応力が集中して不具合を生じる。このため、原版1とガラス板5を接触させる場合には、図13に示すように、ステージ6上に厚さが高精度に制御された板状の弾性部材91(例えば硬度60度で厚さ1[mm]のウレタンゴムなど)を設け、その上にガラス板5を設置するなどの対策を施すことが有効である。これにより、例えば、ガラス板5に厚さのばらつきがあっても、そのばらつきを弾性部材91が吸収でき、良好な転写特性を維持できる。
【0053】
図14には、ガラス板5の表面5a上にブラックマトリックスや抵抗層といった構造物101を形成した後、原版1に現像されたトナー粒子55をガラス板5の表面5a上に転写する例を示してある。この例では、高抵抗層13に凹部14aを持たない原版1’を用いた。この場合においても、原版1のトナー粒子55に電界を作用させるとともに磁界を作用させることで、ガラス板5にトナー粒子55を良好に転写できる。
【0054】
つまり、この場合、原版1は必ずしも凹版である必要は無く、金属フィルム12の表面と高抵抗層13の表面が同一平面上に存在するいわゆる平版であっても良い。例えば、原版1とガラス板5との間に一定のギャップを設けた場合、高抵抗層13の無い金属フィルム12が露出した表面に集められたトナー粒子55は、導電層81に対して非接触状態となるため良好な電界転写が行われる。
【0055】
図15には、この発明の他の実施の形態に係るパターン形成装置110の概略図を示してある。このパターン形成装置110は、ステージ6に沿って図中矢印T3方向に移動する永久磁石66を設けた以外、上述したパターン形成装置10と同じ構造を有するため、ここでは、パターン形成装置10と同様に機能する構成要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0056】
この装置110でも、原版1とガラス板5が対向する転写領域において、常に、転写電界と同じ向きの磁界を形成でき、上述したパターン形成装置10と同様の効果を奏することができる。つまり、本実施の形態においても、高い解像度で高精細なパターンを形成できる。
【0057】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【0058】
例えば、この発明は、あらかじめ凹部14aによるパターンが形成されている原版1を用いるパターン形成装置のみに限定されるものではなく、周知の電子写真法によって、感光体表面に静電潜像を形成し、これを液体現像剤で現像して転写する装置にも適用できる。
【0059】
また、上述した実施の形態では、現像剤粒子を正に帯電させてパターン形成装置を動作させる場合について説明したが、これに限らず、全ての構成を逆極性に帯電させて動作させても良い。
【0060】
また、上述した実施の形態では、平面型画像表示装置の前面基板に蛍光体層やカラーフィルターを形成する装置に本発明を適用した場合についてのみ説明したが、本発明は、他の技術分野における製造装置として広く利用できる。
【0061】
例えば、液体現像剤の組成を変更すれば回路基板やICタグなどにおける導電パターンを形成する装置に本発明を適用することも可能である。この場合には、液体現像剤を、例えば、平均粒径0.3[μm]の樹脂粒子と、その表面に付着している平均粒径0.02[μm]の金属微粒子(例えば銅、パラジウム、銀など)と、金属石鹸のような電荷制御剤から構成すれば、上述した実施の形態と同様の手法により、例えばシリコンウェハー上に現像剤による配線パターンを形成することもできる。一般に、このような現像剤のみで十分な導電性を有する回路パターンを形成することは容易ではないので、パターン形成後に上記の金属微粒子を核としてメッキを施すことが望ましい。このようにして、導電性回路や、コンデンサー、抵抗などのパターニングを行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の実施の形態に係るパターン形成装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】図1のパターン形成装置で使用する原版を示す平面図(a)、および断面図(b)。
【図3】図2の原版を部分的に拡大して示す部分拡大平面図。
【図4】図2の原版の1つの凹部の構造を説明するための部分拡大斜視図。
【図5】図2の原版をドラム素管に巻き付けた状態を示す概略図。
【図6】図2の原版の高抵抗層の表面を帯電させるための構成を示す概略図。
【図7】図2の原版に液体現像剤を供給してトナー粒子によるパターンを形成するための構成を示す概略図。
【図8】図1のパターン形成装置でトナー粒子によるパターンをガラス板に転写する動作を説明するための概略図。
【図9】図2の原版をガラス板に沿って転動させるための転動機構の要部の構成を示す概略図。
【図10】原版の凹部に集めたトナー粒子をガラス板に転写する動作を説明するための動作説明図。
【図11】図10の凹部に集めたトナー粒子をガラス板に転写したときの転写像の広がりについて説明するための図。
【図12】図11の転写像の広がりを磁界を形成した場合と形成しない場合で比較して示す図。
【図13】原版をガラス板に接触させた例を示す概略図。
【図14】ガラス板の表面に構造物を形成した後にトナー粒子を転写する例を示す害略図。
【図15】この発明の他の実施の形態に係るパターン形成装置を示す概略図。
【符号の説明】
【0063】
1…原版、3r、3g、3b…現像装置、4…乾燥器、5…ガラス板、6…ステージ、7…塗布装置、10…パターン形成装置、12…金属フィルム、13…高抵抗層、14a…凹部、62、64、66…永久磁石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像保持体の表面に帯電粒子を付着させてパターン像を形成する像形成装置と、
この像形成装置で表面にパターン像が形成された上記像保持体と該表面に対向した被転写媒体との間に電界を形成して上記パターン像を上記被転写媒体に転写する転写装置と、
この転写装置による転写動作時に上記像保持体と被転写媒体との間に上記電界の方向に沿った磁界を形成する磁界形成装置と、
を有することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項2】
上記磁界形成装置は、上記像保持体と上記被転写媒体との間で上記電界を形成する転写領域を挟んで対向した2つの磁石を有することを特徴とする請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項3】
上記2つの磁石は、上記像保持体の上記被転写媒体から離間した裏面側、および上記被転写媒体の上記像保持体から離間した裏面側にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項2に記載のパターン形成装置。
【請求項4】
上記2つの磁石のうち少なくとも一方は、その磁力を制御可能な電磁石であることを特徴とする請求項3に記載のパターン形成装置。
【請求項5】
像保持体の表面に帯電粒子を付着させてパターン像を形成する像形成装置と、
この像形成装置で表面にパターン像が形成された上記像保持体と該表面に対向した被転写媒体との間に電界を形成して上記パターン像を上記被転写媒体に転写する転写装置と、
上記電界が作用する転写領域で上記像保持体と被転写媒体との間に磁界を形成して、上記電界によって上記像保持体の表面から上記被転写媒体に向けて移動する各帯電粒子にローレンツ力を作用させ、各帯電粒子を上記被転写媒体上のそれぞれのランディング位置へ収束させる磁界形成装置と、
を有することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項6】
上記磁界形成装置は、上記転写領域を挟んで対向し、上記像保持体の上記被転写媒体から離間した裏面側、および上記被転写媒体の上記像保持体から離間した裏面側にそれぞれ配置された2つの磁石を有することを特徴とする請求項5に記載のパターン形成装置。
【請求項7】
上記2つの磁石のうち少なくとも一方は、その磁力を制御可能な電磁石であることを特徴とする請求項6に記載のパターン形成装置。
【請求項8】
像保持体の表面に帯電粒子を付着させてパターン像を形成する像形成工程と、
この像形成工程で表面にパターン像が形成された上記像保持体と該表面に対向した被転写媒体との間に電界を形成して上記パターン像を上記被転写媒体に転写する転写工程と、を有し、
上記転写工程において上記像保持体と被転写媒体との間に上記電界の方向に沿った磁界を形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
像保持体の表面に帯電粒子を付着させてパターン像を形成する像形成工程と、
この像形成工程で表面にパターン像が形成された上記像保持体と該表面に対向した被転写媒体との間に電界を形成して上記パターン像を上記被転写媒体に転写する転写工程と、を有し、
上記転写工程において、上記電界が作用する転写領域で上記像保持体と被転写媒体との間に磁界を形成して、上記電界によって上記像保持体の表面から上記被転写媒体に向けて移動する各帯電粒子にローレンツ力を作用させ、各帯電粒子を上記被転写媒体上のそれぞれのランディング位置へ収束させることを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−133881(P2009−133881A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86265(P2006−86265)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】