説明

パチンコ機

【課題】パチンコ遊技において、磁石を用いて遊技盤上を転動する遊技球を誘導したり、滞留させたりして不正に入賞を発生させる行為を防止する。
【解決手段】遊技盤8の前面部位に、前方の磁気に反応して変色する磁気表示シート21を配設する。かかる構成にあっては、前方から遊技盤8に磁石を近づけると、該磁石に反応して磁気表示シート21が変色することとなる。かかる磁気表示シート21は、磁石を遠ざけた後も変色した状態を保持し、また、振動や衝撃によって誤作動を起こさない、信頼性の高いものであるため、遊技店の店員は、かかる磁気表示シート21の色をチェックすることで、磁石による不正が行われたか否かを正確に把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技盤に近づけられた磁気を検知するセンサを備えたパチンコ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パチンコ遊技では、磁石を用いて遊技盤上を転動する遊技球を誘導したり、滞留させたりすることで過剰に入賞を発生させる不正が問題となっている。かかる不正を防止すべく、最近のパチンコ機では、遊技盤に磁石を近づけると遊技盤に配設された磁気センサがこれを検知して、警告ランプを点灯させるなどの対策が取られている。
【0003】
特許文献1には、磁気センサとしてリードスイッチを用いたパチンコ機が記載されている。リードスイッチは、強磁性体製のリード上に接点を取り付けてガラス管に封入してなる杆状スイッチであり、外部から磁場が加わると通電するように設計されたものである。また、特許文献1のパチンコ機では、リードスイッチは、遊技盤の背面に形成された装着穴に保持されて、パチンコ機の制御装置と電気的に接続されている。
【0004】
【特許文献1】実開昭54−119476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リードスイッチは精密電子機器であり、振動や衝撃によって誤作動や故障が発生し易いという欠点がある。このため、上記特許文献1のパチンコ機では、遊技中にリードスイッチが作動して、遊技店の店員が当該パチンコ機に駆けつけたとしても、遊技者が実際に不正を行ったと確信することができなかった。
【0006】
本発明はかかる問題の解決を試みたものであり、磁石による不正を好適に防止し得るパチンコ機の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、遊技盤の前面部位に、前方の磁気に反応して変色する磁気表示シートが配設されていることを特徴とするパチンコ機である。ここで「磁気表示シート」とは、磁気によって変色し、磁気を除去した後も変色した状態を保持する表示機能素子を備えるものであり、局所的な磁場によって部分的に変色させることにより文字や像などの情報を表示するのに使用されたり、磁区観察に使用されたりしているものである。また、「遊技盤の前面部位」とは、遊技盤の前面及び遊技盤に配設される遊技部材の前面を含む部位である。かかる構成によれば、前方から遊技盤に磁石を近づけると、磁気表示シートが該磁石に反応して変色する。かかる磁気表示シートは、磁石を遠ざけた後も変色した状態を保持し、前方からは元の色に復帰させることができないため、遊技店の店員は、かかる磁気表示シートの色をチェックすることで、遊技盤に磁石が近づけられたか否かを、確信をもって判断できる。
【0008】
本発明にあって、前記磁気表示シートは、内部に磁性粉が分散するマイクロカプセルを多数含有するマイクロカプセル層を具備してなり、前方の磁気に反応して前記マイクロカプセル内の磁性粉が動くことによって変色する構成が提案される。かかる構成あっては、磁気表示シートが柔軟で成形性にも富んだものとなるから、遊技釘間の狭い領域や、遊技部材の湾曲した前面などに磁気表示シートを好適に配設可能となる。また、磁気表示シートを薄型化できるため、磁気表示シートを遊技盤の前面に貼付しても、磁気表示シートが遊技球の転動を阻害することがない。また、磁気表示シートが振動や衝撃に極めて強くなる。
【0009】
また、上述の構成にあって、前記磁気表示シートは、初期状態で前記マイクロカプセル内の磁性粉を背面側に偏在させており、前記磁性粉が前方の磁気に吸引されて前面側に移動すると、前記磁性粉の色によってその前面が変色する構成が提案される。すなわち、かかる構成にあっては、背面側から磁場を加えてマイクロカプセル内の磁性粉を背面側に偏在させて、磁気表示シートの前面に磁性粉の色が顕在化しないようにしておき、前方に磁石が近づけられると、磁性粉が前面側に移動して顕在化することによって、磁気表示シートが変色することとなる。かかる磁気表示シートは、特許2873825号公報に開示されているように公知であり、安価に入手できる。なお、かかる磁気表示シートは、局所的な磁場によって部分的に変色させて文字や像などの情報を表示するのに使用されるのみで、磁気センサとして使用されてはいない。
【0010】
また、上述の構成にあって、前記磁性粉は扁平状金属磁性粉であり、前記磁気表示シートは、初期状態で前記マイクロカプセル内の扁平状金属磁性粉を、該磁気表示シートの面方向に配向させており、扁平状金属磁性粉が前方の磁気によって磁気表示シートの厚み方向に配向するように変動すると、マイクロカプセルの光の反射具合が変化して、磁気表示シートが変色する構成が提案される。すなわち、かかる構成にあっては、マイクロカプセル内に扁平状金属磁性粉が磁場に応じて配向転換するように保持されており、磁気表示シートは、予め磁場をかけて扁平状金属磁性粉が磁気表示シートの面方向に配向した状態とされる。そして、かかる磁気表示シートの前方に磁石を近づけると、マイクロカプセル層に厚み方向の磁場が加わり、扁平状金属磁性粉は磁気表示シートの厚み方向に配向するよう変動し、これによりマイクロカプセルの光の反射率が変わって磁気表示シートが変色するのである。かかる磁気表示シートは、特開平11−45059号公報に開示されるように公知であり、僅かな磁場で配向を転換でき、表示性能に優れるという利点がある。なお、かかる磁気表示シートは磁区観察などに使用されるが、磁気センサとして使用されてはいない。
【0011】
本発明にあって、前記磁気表示シートは、遊技盤に対して着脱可能に配設されている構成が提案される。かかる構成にあっては、磁気表示シートを遊技盤から取り外すことで、磁気表示シートに磁場を加えやすくなるから、変色した磁気表示シートを容易に初期状態に復帰させることができる。また、磁気表示シートの交換や保守も容易となる。
【0012】
本発明に係る磁気表示シートは、遊技盤の前面部位に配設されていればよく、その配設態様は特に限定されるものではない。例えば、磁気表示シートを遊技盤や遊技部材に直接貼付してもかまわないし、磁気表示シートを基材に固定して該基材を遊技盤や遊技部材に取り付けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のパチンコ機は、遊技盤の前面部位に、前方の磁気に反応して変色する磁気表示シートが配設されているから、遊技店の店員は磁気表示シートの色をチェックすることで磁石が遊技盤に近づけられたか否かを判断できる。かかる磁気表示シートは、磁石の磁力によって直接的に変色するものであるから、振動や衝撃によって誤作動したり、故障することがない。また、磁気表示シートは、加わる磁力が強くなるに従って、変色具合が明瞭になり、また、変色する領域が連続的に拡大するから、強い磁力が加えられた場合には、磁気表示シートの前面にはっきりとした痕跡が残ることとなる。このように、磁気表示シートは信頼性が高く、磁力による痕跡を視覚的に残すものであるから、本発明によれば、磁石による不正が行われたか否かを磁気表示シートによって確信をもって判断することができ、磁石による不正を確実に防止可能となる。
【0014】
また、かかる磁気表示シートは、リードスイッチに比べてパチンコ機への装着が容易である。例えば、リードスイッチの装着時には、遊技盤の背面に装着穴を形成しなければならず、また、リードスイッチの磁気検知特性には指向性があるため配設角度を正確に合わせなければならないが、磁気表示シートは遊技盤の前面部位に配設するだけで足りる。さらに言えば、リードスイッチは制御装置と電気的に接続する必要があるが、磁気表示シートはかかる手間が不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。
【0016】
本実施例のパチンコ機1は、図1に示すように、遊技島(図示省略)に固定される正面視長方形状の外枠2と、該外枠2の開口部分に、開閉可能に配設される前枠3とを備える。該外枠2は、長尺板片を組み付けてなるものであり、その左側部に設けられたヒンジ部材4を介して、前記前枠3を片開き可能に枢支している。
【0017】
一方、前枠3は、中央上部に、略正方形状の遊技開口5が形成された方形状の樹脂製板からなり、該遊技開口5の下方前面には、前面に上皿11が回動可能に配設され、さらに、上皿11の下方には、遊技球を貯留する下皿12と、この下皿12の右側に突出する発射ハンドル6とが備えられている。
【0018】
前記遊技開口5には、矩形板状の遊技盤8が、遊技開口5全体を後方から塞ぐように配設され、また、該遊技盤8の前方には、遊技盤8前面を透視可能に遮蔽する遊技扉10が配設される。この遊技扉10は、略方形状の枠部15に2枚の透明板9を組み付けてなるものであり、該枠部15の左側部を遊技開口5の左側縁に枢支されることにより、開閉可能となっている。
【0019】
遊技盤8は、図2に示すように、木製合板13の前面全体に、プラスチックシートに装飾を施したセル板14を貼付してなるものである。遊技盤8の前面には、長尺な金属レール16を湾曲して取り付けることにより、円形の遊技領域7と円弧状の案内通路17が区画形成されており、遊技盤8の右下方に配設される発射装置(図示省略)から発射された遊技球を、案内通路17を介して遊技領域7左上部へ放出するようになっている。そして、遊技領域7には、遊技釘18や入賞装置19a,19b,19c等の遊技部材が配設されており、遊技領域7へ放出された遊技球は、遊技部材間を転動流下し、いずれかの入賞装置19a,19b,19cに入賞するか、又は遊技領域7下部に形成されたアウト口20に流入し、遊技盤8の背面側へ排出される。ここで、図2において19aは変動入賞装置である。変動入賞装置19aの入賞口22は大当り抽選に係る始動口を兼ねており、該入賞口22に遊技球を誘導すべく変動入賞装置19a付近に磁石が近づけられるおそれが高いため、本発明に係る磁気表示シート21は、変動入賞装置19aの前面に配設される。
【0020】
以下に、本発明の要部に係る構成を詳細に説明する。
上述のように、本実施例の磁気表示シート21は、変動入賞装置19aの前面に配設される。図3に示すように、変動入賞装置19aは、入賞口22を備える入賞装置本体24aと該入賞装置本体24aの上方に配設されるゲート24bとからなる。入賞装置本体24aは、入賞口22の開口度を変化させる開閉翼片23を備えており、開閉翼片23が閉じた状態では、遊技球は上部のゲート24bからのみ入賞口22に入賞可能であるが、開閉翼片23が拡開すると、ゲート24bの脇からも入賞口22に入賞可能となり、入賞し易くなる。
【0021】
図3に示すように、磁気表示シート21は、入賞装置本体24aの前面とゲート24bの前面とに夫々配設される。具体的には、各磁気表示シート21は所要形状に裁断されて、プラスチックの基板25a,25bの前面に接着される。そして、基板25a,25bは面ファスナ26a,26bを介して入賞装置本体24aとゲート24bの前面に着脱自在に取り付けられる。かかる構成にあっては、磁気表示シート21は、遊技盤8に対して平行に保持されて、パチンコ機1の前方から視認可能となる。そして、磁気表示シート21は、基板25a,25bを変動入賞装置19から分離することによって遊技盤8から取り外される。
【0022】
磁気表示シート21は、図4に示すように、多数のマイクロカプセル31をバインダー32で結着してなるマイクロカプセル層29の両面に、非磁性フィルム30a,30bを積層してなるものである。各マイクロカプセル31は、透明な外殻36内に、黒色の磁性粉33と白色の非磁性粉34を透明な油状液体35に分散させてなる構成となっている。そして、前面側(図4の上側)の非磁性フィルム30aとバインダー32は透明な樹脂材で構成されており、磁気表示シート21の前面からは各マイクロカプセル31の前面側の色が視認される。
【0023】
かかる構成にあっては、図4(a)に示すように、磁気表示シート21の背面に磁石BのN極又はS極を近づけると、マイクロカプセル31内の黒い磁性粉33が磁石Bに吸引されて背面側に移動し、また、これに伴い白い非磁性粉34は磁性粉33に押し退けられて前面側に移動する。そして、これにより、磁石Bを近づけた部分のマイクロカプセル31は前面側から白く視認される。なお、かかる状態で磁石Bを遠ざけても、前記油状液体35の粘性が磁性粉33と非磁性粉34を拡散や沈殿させないよう保持するため、磁性粉33と非磁性粉34は偏在し続けることとなる。
【0024】
これに対して、図4(b)に示すように、磁気表示シート21の前面に磁石BのN極又はS極を近づけると、マイクロカプセル31内の黒い磁性粉33が磁石Bに吸引されて前面側に移動し、また、これに伴い白い非磁性粉34は磁性粉33に押し退けられて背面側に移動する。そして、これにより、磁石Bを近づけた部分のマイクロカプセル31は前面側から黒く視認されることとなる。そして、かかる状態で磁石Bを遠ざけても、油状液体35の粘性によって磁性粉33と非磁性粉34は偏在し続ける。かかる磁気表示シート21は公知であるため、詳細な構造や製造方法についての説明は省略する。
【0025】
本実施例に係る磁気表示シート21は前面全体が白色になった状態を初期状態とする。すなわち、磁気表示シート21を変動入賞装置19aに装着する前に、図4(a)に示すように、磁気表示シート21の背面全体に磁石Bを近づけて、各マイクロカプセル31内の黒色の磁性粉33を背面側に偏在させて、磁気表示シート21の前面全体を白色にする。
【0026】
そして、かかる状態にあって、パチンコ機1の前面側から変動入賞装置19a付近に磁石を近づけて遊技球を入賞口22に誘導しようとすると、マイクロカプセル31内の磁性粉33が磁石に引き寄せられて磁気表示シート21が黒く変色することとなる。かかる磁気表示シート21は一旦変色すると背面側から磁石を近づけない限り初期状態に復帰させることはできないから、遊技者は磁気表示シート21を初期状態に復帰させることはできない。したがって、遊技店の店員は、かかる磁気表示シート21の色をチェックすることで、変動入賞装置19a付近に磁石が近づけられたか否かを把握できる。特に、磁気表示シート21aは、振動や衝撃では誤作動しないため、遊技店の店員は、磁気表示シート21aの変色が磁力によるものであると確信でき、誤作動の可能性を疑わなくて済む。また、磁気表示シート21は、加えられる磁力が強くなるほど明瞭にかつ広範囲で変色するため、遊技店の店員は、磁気表示シート21の変色具合によって、加えられた磁力が不正に用いられる程の強力なものなのか、それとも、磁気ネックレス程度が有する悪意のない微弱なものなのかを区別することができる。
【0027】
また、磁気表示シート21が変色した場合は、遊技店の店員は、遊技扉10を開放して、基板25a,25bを変動入賞装置19aから取り外し、磁気表示シート21の背面側に磁石を当てることによって磁気表示シート21を初期状態に復帰させることができる。
【0028】
このように、本実施例のパチンコ機1にあっては、遊技店の店員は、磁気表示シート21の色をチェックすることで遊技盤8に磁石が近づけられたか否かを確認できる。そして、かかる磁気表示シート21は、振動や衝撃によって誤作動しない、信頼性の高いものであるから、遊技店の店員は、磁石による不正行為が為されたか否かを、確信をもって判断できる。また、かかる磁気表示シート21は、変動入賞装置19aの前面に装着するだけでよく、制御装置等との電気的な接続が不要であるから、リードスイッチに比べて簡単に装着できる。また、磁気表示シート21は遊技盤8に対して着脱可能であるから、遊技盤8から取り外すことで初期状態に簡単に復帰させることができる
【0029】
次に、上記実施例から、磁気表示シートの構成と配設位置を変更した変形例について説明する。
【0030】
変形例の磁気表示シート21aは、図5に示すように、遊技盤8の前面であって、変動入賞装置19aの斜め上方位置に配設される。磁気表示シート21aは、遊技釘18の配設部位を避けるように予め所要形状に裁断され、遊技盤8の前面に貼付される。ここで、磁気表示シート21aは薄膜であるため、遊技球は、磁気表示シート21aに阻害されることなく、磁気表示シート21aが貼付された部位を他の部位と同様に転動することができる。また、磁気表示シート21aは、再剥離タイプの粘着剤によって遊技盤8の前面に貼付されており、遊技扉10を開放すれば遊技盤8から剥離し、再貼付できる。
【0031】
変形例の磁気表示シート21aは、図6に示すように、多数のマイクロカプセル31aをバインダー32aで結着してなるマイクロカプセル層29aの両面に、非磁性フィルム30c,30dを積層してなるものである。各マイクロカプセル31aは、透明な外殻36a内に、ニッケルフレーク等の扁平状金属磁性粉37を透明な油状液体35aに分散させてなる構成となっている。かかる扁平状金属磁性粉37は、マイクロカプセル31a内で凝集せず油状液体35a中に安定に分散されており、外部から磁場が加わると、該磁場の方向に沿って配向するよう転換する。すなわち、図6(a)に示すように、磁気表示シート21aの面方向から磁石BのN極又はS極を近づけて、磁気表示シート21aに面方向に沿った磁場を加えると、マイクロカプセル31a内の扁平状金属磁性粉37が磁場の方向、すなわち、磁気表示シート21aの面方向に配向するよう転換する。これに対して、図6(b)に示すように、磁気表示シート21aの前面に磁石BのN極又はS極を近づけて、磁気表示シート21aの厚み方向に磁場を加えると、扁平状金属磁性粉37は磁気表示シート21aの厚み方向に配向するよう転換する。
【0032】
また、磁気表示シート21aの前面側(図6の上側)の非磁性フィルム30cは無色透明な樹脂材で構成され、背面側の非磁性フィルム30dは黒色樹脂材で構成され、マイクロカプセル層29aのバインダー32aは黄色に着色された透明樹脂で構成される。かかる構成によれば、マイクロカプセル31aの扁平状金属磁性粉37が面方向に配向すると、マイクロカプセル31aの光の反射率が上昇し、これにより背面側の非磁性フィルム30dの黒色が隠されて、磁気表示シート21aの前面はバインダー32aの黄色を呈することとなる。一方、マイクロカプセル31aの扁平状金属磁性粉37が厚み方向に配向すると、マイクロカプセル31aの光の反射率が減少し、これにより背面側の非磁性フィルム30dが露出して、磁気表示シート21aの前面は背面側の非磁性フィルム30dの黒色を呈することとなる。なお、扁平状金属磁性粉37は油状液体35a中に安定に保持されているため、磁石Bを遠ざけて磁場から開放しても、別方向からの磁場が加えられるまでその配向は維持される。かかる磁気表示シート21aは公知であるため、詳細な構造や製造方法についての説明は省略する。
【0033】
本変形例に係る磁気表示シート21aは前面全体が黄色に視認される状態を初期状態とする。すなわち、磁気表示シート21aを遊技盤8に貼付する前に、図6(a)に示すように、磁気表示シート21aの面方向から磁石Bを近づけて、各マイクロカプセル31a内の扁平状金属磁性粉37を面方向に配向させて、磁気表示シート21aの前面全体を黄色にする。
【0034】
そして、かかる状態にあって、パチンコ機1の前面側から変動入賞装置19a付近に磁石を近づけて遊技球を入賞口22に誘導しようとすると、マイクロカプセル31a内の扁平状金属磁性粉37が厚み方向に転換し、磁気表示シート21aが黒く変色することとなる。かかる磁気表示シート21aは一旦変色すると面方向の磁場を加えない限り初期状態に復帰させることはできないから、遊技者は遊技扉10の前方から磁気表示シート21を初期状態に復帰させることはできない。したがって、かかる変形例にあっても、上記実施例同様に、遊技店の店員は、かかる磁気表示シート21の色をチェックすることで、変動入賞装置19a付近に磁石が近づけられたか否かを正確に把握できる。
【0035】
本変形例の磁気表示シート21aが変色した場合、遊技扉10を開放して、磁気表示シート21aの面方向に磁場を加えることによって磁気表示シート21aを初期状態に復帰させることができる。なお、磁気表示シート21aは、遊技盤8から剥離して厳密に面方向の磁場を加えなくても、遊技盤8の前面に貼付したまま略面方向の磁場を加えるだけでも初期状態に復帰させることができる。
【0036】
なお、本発明におけるパチンコ機は、上記実施例の形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、本発明に係る磁気表示シートは、上記実施例の構成に限らず公知の磁気表示シートを広く採用し得る。また、磁気表示シートは一般的に柔軟性を有しているため、湾曲状態で配設してもかまわない。また、本発明のパチンコ機は、磁気表示シート以外の磁気センサを排除するものではなく、磁気表示シートに加えて、リードスイッチ等の他の磁気センサを備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例のパチンコ機1の斜視図である。
【図2】遊技盤8の斜視図である。
【図3】変動入賞装置19aと磁気表示シート21を分離して示す斜視図である。
【図4】磁気表示シート21の構造を示す説明図である。
【図5】変形例を示す遊技盤8の正面拡大図である。
【図6】変形例の磁気表示シート21aの構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 パチンコ機
8 遊技盤
9 透明板
10 遊技扉
18 遊技釘
19a 変動入賞装置
21 磁気表示シート
22 入賞口
29,29a マイクロカプセル層
30a,30b,30c,30d 非磁性フィルム
31,31a マイクロカプセル
32,32a バインダー
33 磁性粉
34 非磁性粉
35,35a 油状液体
36,36a 外殻
37 扁平状金属磁性粉
B 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技盤の前面部位に、前方の磁気に反応して変色する磁気表示シートが配設されていることを特徴とするパチンコ機。
【請求項2】
前記磁気表示シートは、内部に磁性粉が分散するマイクロカプセルを多数含有するマイクロカプセル層を具備してなり、前方の磁気に反応して前記マイクロカプセル内の磁性粉が動くことによって変色することを特徴とする請求項1記載のパチンコ機。
【請求項3】
前記磁気表示シートは、初期状態で前記マイクロカプセル内の磁性粉を背面側に偏在させており、前記磁性粉が前方の磁気に吸引されて前面側に移動すると、前記磁性粉の色によってその前面が変色することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパチンコ機。
【請求項4】
前記磁性粉は扁平状金属磁性粉であり、
前記磁気表示シートは、初期状態で前記マイクロカプセル内の扁平状金属磁性粉を、該磁気表示シートの面方向に配向させており、
扁平状金属磁性粉が前方の磁気によって磁気表示シートの厚み方向に配向するように変動すると、マイクロカプセルの光の反射具合が変化して、磁気表示シートが変色することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパチンコ機。
【請求項5】
前記磁気表示シートは、遊技盤に対して着脱可能に配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のパチンコ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−88617(P2010−88617A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260728(P2008−260728)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(591142909)マルホン工業株式会社 (524)
【Fターム(参考)】