パルス光の発光制御器及び方法
【課題】優れた発光効率を示すエレクトロルミネッセンス素子のパルス光の発光制御を効率よく行う。
【解決手段】順方向バイアス電圧に基づいて発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて何れかの層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることを繰り返し、近接場光が発生した箇所では反転分布に基づき非断熱過程により複数段階で誘導放出させることが可能なEL素子1と、コンデンサ40とを互いに並列に接続し、これらに対して電源41から電圧を印加し続けることにより、EL素子1からパルス光を発光させる。
【解決手段】順方向バイアス電圧に基づいて発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて何れかの層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることを繰り返し、近接場光が発生した箇所では反転分布に基づき非断熱過程により複数段階で誘導放出させることが可能なEL素子1と、コンデンサ40とを互いに並列に接続し、これらに対して電源41から電圧を印加し続けることにより、EL素子1からパルス光を発光させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に赤外領域のパルス光を発光する上で好適なパルス光の発光制御器及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量・薄型の面発光型素子としてエレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子という)が注目されている。このEL素子は、電界印加時に、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子との再結合エネルギーにより蛍光性物質が発光する原理を利用した素子である。EL素子は、主としてモバイル機器等の各種機器のディスプレイの発光素子等に用いられる。
【0003】
これらEL素子には、蛍光体粒子を有機高分子材料からなるバインダー中に分散させ発光層とする分散型EL素子や、薄膜発光層の両側あるいは片側に絶縁層を設けた薄膜型EL素子とがあるが、その大半は、GaAs、GaNを初めとする無機半導体で作製される。これら無機半導体は、効率よく発光させるために、また発光波長の調整のために、Inが添加される。このような無機半導体を得るためには、高価な結晶成長装置が必要になり、またシリコン素子よりもはるかに高価なIn等のレアマテリアルを添加物として使用する。このため、従来においてはEL素子を大量に作製することになれば、その分レアマテリアルの資源を浪費することになり、資源枯渇問題を引き起こす原因にもなる。
【0004】
従って、近年においては、発光材料として有機化合物を用いた有機EL素子も普及してきている(例えば特許文献1参照。)。しかしながら、この有機EL素子は、発光材料として用いる有機化合物の寿命が短い等、解決すべき問題点も多く、やはり大出力、高信頼性が求められる分野においては、有機EL素子よりもむしろ無機半導体を発光材料として用いることが望ましいものといえる。そして、実際に、この無機半導体を発光材料として用いたEL素子を光通信に使用する場合、光損失の少ない近赤外光を発光させることがより望ましいものといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−036829号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T. Kawazoe、 K. Kobayashi、 S. Takubo、 and M. Ohtsu、 J. Chem. Phys.、 Vol.122、 No.2、January 2005、 pp.024715 1-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シリコンは、近赤外においてバンドギャップを持つ無機半導体であるが、あくまで間接型半導体であるため、近赤外EL素子としては望ましいものとはいえない。また、特に近年においてシリコンを微結晶化したポーラスシリコンによるEL素子が提案されているが、これらの発光効率もやはり1%に満たない。このため、あくまでシリコンを発光材料として用いるEL素子において近赤外における発光効率を向上させることが可能な技術が従来より望まれていた。これと同様に波長550nm領域では無機半導体化合物であるGaPが用いられているが、GaPもシリコンと同様に間接型半導体であるためそのEL素子としての発光効率は0.1%程度である。
【0008】
このため、従来より、シリコンなど間接型半導体を発光材料として用いるEL素子において発光効率を向上させる必要性があった。また、これに加えてEL素子のパルス発光制御を効率よく行うためのモジュールが必要となるが、従来においてこれは未だに案出されていないのが現状であった。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、優れた発光効率を示すエレクトロルミネッセンス素子のパルス光の発光制御を効率よく行うことが可能なパルス光の発光制御器及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明を適用したパルス光の発光制御器は、順方向バイアス電圧を印加することによりp層とn層の接合部に拡散電流を発生させ、上記発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて何れか1以上の上記層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることを繰り返すとともに、上記順方向バイアス電圧により伝導帯と価電子帯に反転分布を生じさせ、上記変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生した箇所では、上記反転分布を形成している上記伝導帯中の電子を非断熱過程に基づいて複数段階で誘導放出させることにより、上記拡散電流を減少させて上記ジュール熱を低下させることにより、表面形状及び/又はドーパント分布を固定させるとともに、上記誘導放出により発光させるエレクトロルミネッセンス素子と、上記エレクトロルミネッセンス素子に対して並列に接続されたコンデンサと、その互いに並列に接続された上記エレクトロルミネッセンス素子と上記コンデンサに対して電圧を印加し続けることにより、当該エレクトロルミネッセンス素子からパルス光を発光させる電源とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明を適用したパルス光の発光制御方法は、順方向バイアス電圧を印加することによりp層とn層の接合部に拡散電流を発生させ、上記発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて何れか1以上の上記層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることを繰り返すとともに、上記順方向バイアス電圧により伝導帯と価電子帯に反転分布を生じさせ、上記変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生した箇所では、上記反転分布を形成している上記伝導帯中の電子を非断熱過程に基づいて複数段階で誘導放出させることにより、上記拡散電流を減少させて上記ジュール熱を低下させることにより、表面形状及び/又はドーパント分布を固定させるとともに、上記誘導放出により発光させるエレクトロルミネッセンス素子と、コンデンサとを互いに並列に接続し、これらに対して電源から電圧を印加し続けることにより、当該エレクトロルミネッセンス素子からパルス光を発光させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上述した構成からなる本発明によれば、シリコンを発光材料として優れた発光効率を示すエレクトロルミネッセンス素子のパルス光の発光制御を効率よく行うことが可能なパルス光の発光制御器及び方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用したパルス光の発光制御器の構成図である。
【図2】n層とp層からなる半導体層の接合部のエネルギーバンド図である。
【図3】(a)は、ジュール熱発生前におけるn層とp層の接合部の微視的な形状の例を示す図であり、(b)は、ジュール熱を発生させた後におけるn層とp層の接合部の微視的な形状の例を示す図である。
【図4】非断熱過程を説明するための、原子同士の結合をバネで置き換えたモデルを示す図である。
【図5】n層とp層からなる半導体層の接合部に形成された反転分布について説明するための図である。
【図6】非断熱過程に基づく多段階誘導放出について説明するための図である。
【図7】非断熱過程を継続して生じさせた場合におけるメカニズムについて説明するための図である。
【図8】n層としてのシリコン基板に対して、p層としてのホウ素の深さ方向に対する濃度分布を示す図である。
【図9】本発明を適用したEL素子における電圧−電流特性を示す図である。
【図10】(a)は、このEL素子とコンデンサにそれぞれ印加されている電圧の関係を、(b)は、電流の関係を示す図である。
【図11】EL素子に対して印加された電圧と電流の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用したパルス光の発光制御器ついて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明を適用したパルス光の発光制御器10の構成図である。この発光制御器10は、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)1と、このEL素子1に対して並列に接続されたコンデンサ40と、その互いに並列に接続されたEL素子1とコンデンサ40に対して電圧を印加し続けることにより、当該EL素子1からパルス光を発光させる電源41とを備え、更に回路のON/OFF制御を行うためのスイッチ42を備えている。
【0016】
次にEL素子1の構成について図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0017】
EL素子1は、N型半導体層(n層)13、n層13との間でpn接合を構成するP型半導体層(p層)14、n層13とp層14との間に形成される接合層35とを備えている。このn層13〜p層14までを半導体層30という。p層14には、電源2が接続されており、使用時には、p層14側が正電圧、n層13側が負電圧となるように順方向にバイアス電圧が負荷されることになる。
【0018】
n層13は、いわゆるシリコン等の基板等で構成されるがこれに限定されるものではなく、他の間接型半導体であってもよい。ここで代表的な間接型無機化合物にはSi以外に,GaP,AlGaAs(混晶比に依存)、AlP、AlAs, Ge, SiC, PbS, PbTe, TIO2, GaS, AlSb,, C(ダイヤモンド),BNなどがあり、本手法はそのすべてに応用可能である。
【0019】
p層14は、例えばホウ素等をp型ドーパントとして高密度、高エネルギーでインプラントしたものとして構成される。このp層14は、例えば700KeV、表面から500nm付近においてそのドーピング密度は1019とされていてもよい。
【0020】
このようなEL素子1を作製する際には、p層及びn層に順方向バイアス電圧を印加する。その結果、以下のメカニズムに基づいて、本発明所期のEL素子1を作製することが可能となる。
【0021】
図2は、n層13〜p層14のエネルギーバンド図を示している。順方向バイアス電圧が負荷されると、p層14中の正孔がn層13側へと移動し、n層13中の電子がp層14側へと移動していく。その結果、接合層35は空乏化することなく互いの電子と正孔が打ち消しあうことで拡散電流が流れる。その結果、順方向バイアス電圧が高い場合にこの電子の移動に伴うジュール熱が発生する。このジュール熱の特に大きな発生部位は、大きな電位差を生じる接合層35やn層13やp層14の表面等である。また、この順方向バイアス電圧をより高くしていくことにより、かかる接合層35においてアバランシェ降伏を起こし、一気に電流が流れていくことになる。その結果、ジュール熱による発熱が、かかるアバランシェ降伏により促進されることになる。
【0022】
このジュール熱が発生する結果、接合層35やn層13やp層14における流動性が増加し、その表面形状及び/又はドーパントの分布が変化することになる。上述した順方向バイアス電圧を負荷し続けることにより、かかる表面形状及び/又はドーパントの分布変化が継続して生じることになる。
【0023】
図3(a)は、かかるジュール熱発生前におけるn層13とp層14の接合層35の微視的な形状の例である。n層13とp層14の接合界面には、ナノオーダーの微細な凹凸が形成されている。
【0024】
図3(b)は、ジュール熱を発生させた後におけるn層13とp層14の接合層35の微視的な形状の例である。ジュール熱が発生することにより、このn層13とp層14の接合層35の流動性が増加する結果、n層13やp層14等の表面形状やドーパントの分布がランダムに変化することになる。かかる表面形状やドーパントの分布の変化が繰り返して起こる結果、例えば、ある特有の微細形状Aがこのn層13とp層14との界面において形成される。この微細形状Aは、入射された光に基づいて近接場光が発生する上でより適した形状である。この微細形状Aを形成させるための条件は確定されるものではなく、ジュール熱の発生に伴うn層13やp層14等の表面形状やドーパントのランダムな変化の結果、ある確率の下で偶然に形成されるものである。なお、この近接場光は、n層13とp層14との界面に発生する場合に限定されるものではなく、EL素子1を構成する何れか1以上の層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させるものであればよい。
【0025】
このような微細形状Aが形成されたときに、上述した順方向バイアス電圧を更に負荷し続けると、当該微細形状Aの主として角部において近接場光が発生する。ここでいう、近接場光は、仮想的な電磁場の意味も含まれていることから、仮想的な電磁場が形成されていることが近接場光の発生を意味するものとして解される。この近接場光の発生は、特に誘導光が無い状態の下であっても、順方向電流注入時には注入された電荷の自然放出およびそれを元とした誘導放出によって発生することになる。この近接場光が発生することにより以下に説明する非断熱過程が生じる。ちなみに、この近接場光の発生位置は、当該微細形状Aに対応したn層13とp層14の界面のみならず、他の箇所で発生することも当然起こりえる。
【0026】
この非断熱過程とは、図4に示すように、原子同士の結合をバネで置き換えたモデルで考えることができる。一般に伝搬光の波長は分子の寸法に比べると遥かに大きいため、分子レベルでは空間的には一様な電場とみなせる。その結果、図4(a)に示すように、バネで隣り合う電子は同振幅、同位相で振動させられる。感光性樹脂膜12の原子核は重いため、この電子の振動には追従できず、伝搬光では分子振動は極めて起こりにくい。このように伝搬光では、分子振動が電子の励起過程に関わることを無視することができるため、この過程を断熱過程という(非特許文献1参照。)。
【0027】
一方、近接場光の空間的な電場勾配は非常に急峻に低下する。このため近接場光では隣り合う電子に異なる振動を与えることになり、図4(b)に示すように、この異なる電子の振動により重い原子核も振動させられる。近接場光が分子振動を起こすことは、エネルギーが分子振動の形態を取ることに相当するため、近接場光では、振動準位を介した励起過程(非断熱過程)が可能となる。このように原子核の振動準位を介した励起過程は、通常の光学応答である断熱過程に対し、原子核が応答し動くため、非断熱過程という(非特許文献1参照。)。
【0028】
また、上述した順方向バイアス電圧を印加させ続けることにより、伝導帯における電子密度n1が、下位準位にある正孔密度n2と比較して圧倒的に高くなる。その結果、伝導帯と下位準位との間で、図5に示すように、かかる電子密度の差異に基づく反転分布が接合層35に形成される。次に図6(a)に示すように、この形成された反転分布により、伝導帯中の電子を近接場光による非断熱過程に基づいて、伝導帯中の電子を、バンドギャップの中間に位置する振動準位に仮想的に遷移させることができる。この電子が非断熱過程に基づいて振動準位に遷移できたのは、その箇所において近接場光が発生していたため実現できたものである。この近接場光は、ジュール熱による流動によってある確率の下で生じた微細形状A(又はそのドーパントの変化)によって生じたものである。振動準位に遷移した電子は、この近接場光によって仮想的に生じた仮想場を廻り、その後振動準位から伝導帯へと戻ることになる。この伝導帯に戻った電子は、拡散電流によるジュール熱に寄与する。
【0029】
このように近接場光が単に発生した段階では、伝導帯中の電子を振動準位に仮想的に遷移させて再度伝導帯に戻ることを繰り返すこととなる。伝導帯に戻った電子は、ジュール熱に寄与することとなり、ジュール熱は下がることなく表面形状及び/又はドーパントの分布変化が継続して生じることになる。
【0030】
またジュール熱による表面形状及び/又はドーパントの分布変化が生じた結果、更に近接場光の発生態様が変化した場合には、ある確率の下で図6(b)に示すように、伝導帯中の電子を近接場光による非断熱過程に基づいて、伝導帯中の電子を、バンドギャップの中間に位置する振動準位に仮想的に遷移させてそこから電子を放出させることによる発光させる。また、かかる近接場光に基づいて伝導帯中の電子を複数段階で誘導放出させることにより発光させる。
【0031】
その結果、このEL素子1から係る電子の放出による発光を実現することが可能となる。当該微細形状Aにおいては引き続き近接場光が発生するため、非断熱過程を生じさせることが可能となる。この非断熱過程による誘導放出においては、振動準位を介し電子を放出させる。このとき、バンドギャップ幅に相当する吸収端波長よりも長波長である波長の光でも伝導帯中の電子を多段階で遷移させて放出させることができ、その結果伝導体中の電子を減少させることが可能となる。
【0032】
このような非断熱過程による多段階の誘導放出が生じることにより、伝導帯における電子密度n1が減少する。その結果、かかる近接場光が発生する微細形状Aについては、n層13へと移動する電子の量は減少することになり、拡散電流が低下し、当該微細形状Aについてはジュール熱が低下することになる。即ち、誘導放出は、電子や正孔のエネルギーを奪うものとなり、接合層35やn層13やp層14の流動性が低下する。その結果、この微細形状Aについては、表面形状及び/又はドーパントの分布の変化が抑制されることになる。微細形状Aはそのまま変化することなく固定されることになる。
【0033】
また、図6(b)に示すように発光が生じた場合、その発光に基づいて、表面形状及び/又はドーパントの分布による近接場光が発生しやすくなる。その発生した近接場光により、さらに各部における非断熱過程が生じやすくなり、微細構造Aの固定化並びに発光が促進されることとなる。
【0034】
また、上述の如き順方向バイアス電圧を印加し続けることにより、上述したメカニズムが継続的に生じる。図7(a)に示すように、微細形状Aは、そのまま近接場光が発生し続けて、上述した非断熱過程による誘導放出が継続して生じる結果、温度が低下し、かかる形状の状態でそのまま固定され続ける。また、微細形状A以外の箇所は、近接場光が発生しないため冷却されることなく、そのままジュール熱が発生することにより、このn層13とp層14の接合層35の流動性が増加する結果、n層13やp層14等の表面形状やドーパントの分布がランダムに変化する。このランダムな変化の結果、図7(a)に示すように微細形状Aとほぼ同一形状の微細形状Bが形成される場合もある。かかる場合に光を入射させると、当該微細形状Bにおいて近接場光が発生することになる。そして、この微細形状Bについても同様に非断熱過程による誘導放出が生じる結果、温度が低下し、かかる形状の状態でそのまま固定され続ける。即ち、EL素子1において近接場光が好適に発生する領域が微細形状Aのみならず微細形状Bの分も増加したことになる。
【0035】
かかる処理が繰り返し実行されると、理想的には図7(b)に示すように、n層13とp層14との界面において微細形状Aと同一の形状が数多く形成されることになる。これは、順方向バイアス電圧が印加された場合に近接場光が好適に発生する微細形状Aと同一の形状が数多く作り出されたEL素子1として構成することが可能となる。その結果、発光効率を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0036】
なお、この微細形状Aは、あくまで表面形状に依拠したものであるが、これに限定されるものではなく、ジュール熱の発生に伴うn層13やp層14等のドーパントの変化の結果、表面形状が変化していなくても、近接場光が好適に発生する条件になる場合がある。かかるn層13やp層14等のドーパントが近接場光が好適に発生可能なように変化した場合においても、上述した微細形状Aの形成と同様な効果が得られる。即ち、拡散電流を減少させてジュール熱を低下させることにより、ドーパント分布を固定させることを繰り返し実行することになる。
【0037】
図8は、本発明を適用したEL素子の作製方法において、n層13としてのシリコン基板に対して、p層14としてのホウ素の深さ方向に対する濃度分布を示している。図8(a)は、n層13としてのシリコン基板に対してp層14としてのホウ素をインプラントした直後におけるホウ素の深さ方向の濃度分布を示しており、また図8(b)は、順方向バイアス電圧を負荷して、ドーパントとしてのホウ素を流動させて更に固定した後のホウ素の濃度分布を示している。この図8から、拡散電流によるジュール熱により、流動を起こした結果、近接場光を発生させる上で好適なドーパント分布に変化したことが示されている。この図中の11Boron, 12BoronはそれぞれBの同位体を意味するものである。
【0038】
次に、上述した本発明を適用した受光素子の作製方法に基づいて作製されたEL素子1による動作について説明をする。
【0039】
上述したようにEL素子1は、その作製の段階において、順方向バイアス電圧が負荷された場合に近接場光が好適に発生する、例えば微細構造A、B等を始めとした領域が広く形成されている。このようなEL素子1に対して、順方向バイアス電圧を印加するようにしてもよい。その結果、既に好適に近接場光を発生し得る形状が作り込まれていることから、図7(b)に示すように、近接場光が多くの領域において発生する。そして、図8(b)に示すように、その発生した近接場光による非断熱過程により、伝導帯にある電子が多段階で誘導放出されて発光することになる。このとき、順方向バイアス電圧の強度を更に増大させるとアバランシェ降伏が生じて更に発光量が大きくなる。
【0040】
図9は、本発明を適用したEL素子1における電圧−電流特性を示している。この電流特性においてバイアス電圧を徐々に増加させて100V超に至るまでは殆ど電流が流れないが、100Vを超えると極めて良好な微分負性抵抗の特性が表れていることが示されている。また順方向バイアス電圧によるジュール熱発生は通常の抵抗特性を示すPN接合においても発生するので、負性抵抗の出現は本手法にとって必須では無いが、この実施例ではドーパントの不均一が電気素子としても機能するような分布となったので優れた整流素子としても機能する可能性を示唆するものであり、図9は、その電気特性の傾向を示したものである。
【0041】
上述したように、本発明では、順方向バイアス電圧を印加することによりp層14とn層13の接合部に拡散電流を発生させ、発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいてEL素子1を構成する何れか1以上の層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることを繰り返し実行する。
【0042】
そして、変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生した箇所では、伝導帯中の電子を非断熱過程に基づいて複数段階で誘導放出させることにより、拡散電流を減少させてジュール熱を低下させて、表面形状及び/又はドーパント分布を固定させる。
【0043】
また変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生しない箇所では、或いは近接場光が発生しても単に仮想場ができているだけに発光させる上で好適な条件を満たさない箇所においては、拡散電流を発生させ続けて当該表面形状及び/又は当該ドーパント分布を変化させることを、近接場光による非断熱過程で発光するまで繰り返す。
【0044】
これにより、本発明では、接合層35のバンドギャップ幅に対応した吸収端波長より長波長である光を放出させることができる。仮に、n層13がシリコンであれば、そのシリコンによる発光波長としての近赤外域の光をも発光させることが可能となる。
【0045】
また、本発明を適用したEL素子1の作製方法では、特に大掛かりな装置を必要とすることなく、希望の波長に対して感度の優れた受光素子を安価で作成することが可能となる。
【0046】
この波長帯は上記のSi,GaP,AlGaAs(混晶比に依存)、AlP、AlAs, Ge, SiC, PbS, PbTe, TIO2, GaS, AlSb, C(ダイヤモンド), BNなど用いる間接遷移型無機材料の種類を変更することによっても紫外から赤外光まで広く対応可能である。
【0047】
上述した構成からなるEL素子1により、実際にパルス光を発光させるための制御方法について、以下説明をする。
【0048】
先ず、図1に示すパルス光の発光制御器10において、電源41から電圧を印加する。その結果、互いに並列接続されたEL素子1と、コンデンサ40とに対して、それぞれ電圧が印加されることとなる。
【0049】
図10(a)は、このEL素子1とコンデンサ40にそれぞれ印加されている電圧の関係を、また図10(b)は、電流の関係を示している。また、図11は、実際にEL素子1に対して印加された電圧と電流の関係を示している。
【0050】
図1に示すように、EL素子1に印加される電圧をV1、コンデンサ40に印加される電圧をV2としたとき、当初は、この電圧V1、V2ともに増大することになる。この電圧V1、V2ともに増大するフェーズ1)において、図11に示すEL素子1の電圧−電流特性は、順方向の印加電圧に対して流れる電流が微増するに過ぎない。この過程では、上述したように、EL素子1内において、順方向バイアス電圧を印加することによりp層とn層の接合部に拡散電流を発生させ、発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて何れか1以上の上記層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることが繰り返し行われている。
【0051】
また、図1に示すように、EL素子1に印加される電流をI1、コンデンサ40に印加される電流をI2としたとき、このフェーズ1)において電流I1は、上述したEL素子1の整流特性により僅かしか増加しない。これに対して、電流I2は、コンデンサ40に電荷が順次蓄積されることに伴い、徐々に低下していく。
【0052】
更に電圧印加されると、EL素子1の電圧−電流特性は、図11に示すフェーズ2)へと移行することとなる。このフェーズ2)では、上述したように良好な微分負性抵抗の特性が表れていることが示されている。即ち、このフェーズ2)では、pn接合において、変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生した箇所では、反転分布を形成している伝導帯中の電子を非断熱過程に基づいて複数段階で誘導放出させ、拡散電流を減少させてジュール熱を低下させることにより、当該表面形状及び/又はドーパント分布が固定された後の状態となっている。即ち、その誘導放出による発光が好適に行われるように表面形状及び/又はドーパント分布が固定された状態となっている。
【0053】
このため、このフェーズ2)では、EL素子1により、誘導放出による発光が生じる。この誘導放出の発光の過程では、L素子1の電圧−電流特性に示すようにEL素子1へ徐々に大きな電流が流れることになる。このため、電源41からの電流のみで足りない場合には、更に、コンデンサ40において蓄えられた電荷に基づく電流もこのEL素子1へと供給されることとなる。その結果、EL素子1からの発光強度はより増大することとなる。図10(b)に示す電流I1の立ち上がりは、このEL素子1のパルス光の立ち上がりに相当するものであるが、そのパルス光の立ち上がりは、予め並列接続されたコンデンサ40からの電荷に基づく電流の供給により成しえるものである。
【0054】
ちなみに、このフェーズ2)において電圧V1、V2はともに低下し続けることとなる。しかしながら、この電圧V1よりもV2の方が電圧の低下幅は大きいが、その理由は、コンデンサ40に蓄えられた電荷が徐々に減るためである。
【0055】
なお、このフェーズ2)においては、このコンデンサ40に蓄積された電荷が尽きてしまったために電荷が消去された場合には、コンデンサ40からEL素子1への電流の供給を停止させることとなる。この電流の供給が停止されると、EL素子1は、図11中のy点よりも多くの電流を流すことができず、パルス光をより高く立ち上げることができない。かかる場合にはフェーズ3)に移行することとなる。
【0056】
フェーズ3)では、EL素子1は、図11に示すように、同一の電圧を維持しつつ、電流が急激に減少することとなる。即ち、EL素子1においては、y点よりも多くの電流を流すことができない場合には、フェーズ1)に示される挙動に立ち戻ることになる。その結果、フェーズ3)では、図10(b)に示すように、電流I1が急激に減少し、パルス光が立ち下がることとなる。また、フェーズ3)では、EL素子1からコンデンサ40に対して電流が供給される結果、電流I2が増加し、コンデンサ40に電荷が蓄えられることとなる。更にフェーズ3)では、この図10(a)に示すように、電圧V1、V2はともに変化することなく一定である。
【0057】
このフェーズ3)が終了とすると再びフェーズ1)へ戻り、上述の動作が繰り返し実行されることとなる。これにより、パルス光の発光制御器10では、パルス光を所定期間をおいて立ち上げ、立ち下げることが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 EL素子
10 発光制御器
13 n層
14 p層
35 接合部
40 コンデンサ
41 電源
42 スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に赤外領域のパルス光を発光する上で好適なパルス光の発光制御器及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量・薄型の面発光型素子としてエレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子という)が注目されている。このEL素子は、電界印加時に、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子との再結合エネルギーにより蛍光性物質が発光する原理を利用した素子である。EL素子は、主としてモバイル機器等の各種機器のディスプレイの発光素子等に用いられる。
【0003】
これらEL素子には、蛍光体粒子を有機高分子材料からなるバインダー中に分散させ発光層とする分散型EL素子や、薄膜発光層の両側あるいは片側に絶縁層を設けた薄膜型EL素子とがあるが、その大半は、GaAs、GaNを初めとする無機半導体で作製される。これら無機半導体は、効率よく発光させるために、また発光波長の調整のために、Inが添加される。このような無機半導体を得るためには、高価な結晶成長装置が必要になり、またシリコン素子よりもはるかに高価なIn等のレアマテリアルを添加物として使用する。このため、従来においてはEL素子を大量に作製することになれば、その分レアマテリアルの資源を浪費することになり、資源枯渇問題を引き起こす原因にもなる。
【0004】
従って、近年においては、発光材料として有機化合物を用いた有機EL素子も普及してきている(例えば特許文献1参照。)。しかしながら、この有機EL素子は、発光材料として用いる有機化合物の寿命が短い等、解決すべき問題点も多く、やはり大出力、高信頼性が求められる分野においては、有機EL素子よりもむしろ無機半導体を発光材料として用いることが望ましいものといえる。そして、実際に、この無機半導体を発光材料として用いたEL素子を光通信に使用する場合、光損失の少ない近赤外光を発光させることがより望ましいものといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−036829号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T. Kawazoe、 K. Kobayashi、 S. Takubo、 and M. Ohtsu、 J. Chem. Phys.、 Vol.122、 No.2、January 2005、 pp.024715 1-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シリコンは、近赤外においてバンドギャップを持つ無機半導体であるが、あくまで間接型半導体であるため、近赤外EL素子としては望ましいものとはいえない。また、特に近年においてシリコンを微結晶化したポーラスシリコンによるEL素子が提案されているが、これらの発光効率もやはり1%に満たない。このため、あくまでシリコンを発光材料として用いるEL素子において近赤外における発光効率を向上させることが可能な技術が従来より望まれていた。これと同様に波長550nm領域では無機半導体化合物であるGaPが用いられているが、GaPもシリコンと同様に間接型半導体であるためそのEL素子としての発光効率は0.1%程度である。
【0008】
このため、従来より、シリコンなど間接型半導体を発光材料として用いるEL素子において発光効率を向上させる必要性があった。また、これに加えてEL素子のパルス発光制御を効率よく行うためのモジュールが必要となるが、従来においてこれは未だに案出されていないのが現状であった。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、優れた発光効率を示すエレクトロルミネッセンス素子のパルス光の発光制御を効率よく行うことが可能なパルス光の発光制御器及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明を適用したパルス光の発光制御器は、順方向バイアス電圧を印加することによりp層とn層の接合部に拡散電流を発生させ、上記発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて何れか1以上の上記層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることを繰り返すとともに、上記順方向バイアス電圧により伝導帯と価電子帯に反転分布を生じさせ、上記変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生した箇所では、上記反転分布を形成している上記伝導帯中の電子を非断熱過程に基づいて複数段階で誘導放出させることにより、上記拡散電流を減少させて上記ジュール熱を低下させることにより、表面形状及び/又はドーパント分布を固定させるとともに、上記誘導放出により発光させるエレクトロルミネッセンス素子と、上記エレクトロルミネッセンス素子に対して並列に接続されたコンデンサと、その互いに並列に接続された上記エレクトロルミネッセンス素子と上記コンデンサに対して電圧を印加し続けることにより、当該エレクトロルミネッセンス素子からパルス光を発光させる電源とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明を適用したパルス光の発光制御方法は、順方向バイアス電圧を印加することによりp層とn層の接合部に拡散電流を発生させ、上記発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて何れか1以上の上記層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることを繰り返すとともに、上記順方向バイアス電圧により伝導帯と価電子帯に反転分布を生じさせ、上記変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生した箇所では、上記反転分布を形成している上記伝導帯中の電子を非断熱過程に基づいて複数段階で誘導放出させることにより、上記拡散電流を減少させて上記ジュール熱を低下させることにより、表面形状及び/又はドーパント分布を固定させるとともに、上記誘導放出により発光させるエレクトロルミネッセンス素子と、コンデンサとを互いに並列に接続し、これらに対して電源から電圧を印加し続けることにより、当該エレクトロルミネッセンス素子からパルス光を発光させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上述した構成からなる本発明によれば、シリコンを発光材料として優れた発光効率を示すエレクトロルミネッセンス素子のパルス光の発光制御を効率よく行うことが可能なパルス光の発光制御器及び方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用したパルス光の発光制御器の構成図である。
【図2】n層とp層からなる半導体層の接合部のエネルギーバンド図である。
【図3】(a)は、ジュール熱発生前におけるn層とp層の接合部の微視的な形状の例を示す図であり、(b)は、ジュール熱を発生させた後におけるn層とp層の接合部の微視的な形状の例を示す図である。
【図4】非断熱過程を説明するための、原子同士の結合をバネで置き換えたモデルを示す図である。
【図5】n層とp層からなる半導体層の接合部に形成された反転分布について説明するための図である。
【図6】非断熱過程に基づく多段階誘導放出について説明するための図である。
【図7】非断熱過程を継続して生じさせた場合におけるメカニズムについて説明するための図である。
【図8】n層としてのシリコン基板に対して、p層としてのホウ素の深さ方向に対する濃度分布を示す図である。
【図9】本発明を適用したEL素子における電圧−電流特性を示す図である。
【図10】(a)は、このEL素子とコンデンサにそれぞれ印加されている電圧の関係を、(b)は、電流の関係を示す図である。
【図11】EL素子に対して印加された電圧と電流の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用したパルス光の発光制御器ついて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明を適用したパルス光の発光制御器10の構成図である。この発光制御器10は、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)1と、このEL素子1に対して並列に接続されたコンデンサ40と、その互いに並列に接続されたEL素子1とコンデンサ40に対して電圧を印加し続けることにより、当該EL素子1からパルス光を発光させる電源41とを備え、更に回路のON/OFF制御を行うためのスイッチ42を備えている。
【0016】
次にEL素子1の構成について図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0017】
EL素子1は、N型半導体層(n層)13、n層13との間でpn接合を構成するP型半導体層(p層)14、n層13とp層14との間に形成される接合層35とを備えている。このn層13〜p層14までを半導体層30という。p層14には、電源2が接続されており、使用時には、p層14側が正電圧、n層13側が負電圧となるように順方向にバイアス電圧が負荷されることになる。
【0018】
n層13は、いわゆるシリコン等の基板等で構成されるがこれに限定されるものではなく、他の間接型半導体であってもよい。ここで代表的な間接型無機化合物にはSi以外に,GaP,AlGaAs(混晶比に依存)、AlP、AlAs, Ge, SiC, PbS, PbTe, TIO2, GaS, AlSb,, C(ダイヤモンド),BNなどがあり、本手法はそのすべてに応用可能である。
【0019】
p層14は、例えばホウ素等をp型ドーパントとして高密度、高エネルギーでインプラントしたものとして構成される。このp層14は、例えば700KeV、表面から500nm付近においてそのドーピング密度は1019とされていてもよい。
【0020】
このようなEL素子1を作製する際には、p層及びn層に順方向バイアス電圧を印加する。その結果、以下のメカニズムに基づいて、本発明所期のEL素子1を作製することが可能となる。
【0021】
図2は、n層13〜p層14のエネルギーバンド図を示している。順方向バイアス電圧が負荷されると、p層14中の正孔がn層13側へと移動し、n層13中の電子がp層14側へと移動していく。その結果、接合層35は空乏化することなく互いの電子と正孔が打ち消しあうことで拡散電流が流れる。その結果、順方向バイアス電圧が高い場合にこの電子の移動に伴うジュール熱が発生する。このジュール熱の特に大きな発生部位は、大きな電位差を生じる接合層35やn層13やp層14の表面等である。また、この順方向バイアス電圧をより高くしていくことにより、かかる接合層35においてアバランシェ降伏を起こし、一気に電流が流れていくことになる。その結果、ジュール熱による発熱が、かかるアバランシェ降伏により促進されることになる。
【0022】
このジュール熱が発生する結果、接合層35やn層13やp層14における流動性が増加し、その表面形状及び/又はドーパントの分布が変化することになる。上述した順方向バイアス電圧を負荷し続けることにより、かかる表面形状及び/又はドーパントの分布変化が継続して生じることになる。
【0023】
図3(a)は、かかるジュール熱発生前におけるn層13とp層14の接合層35の微視的な形状の例である。n層13とp層14の接合界面には、ナノオーダーの微細な凹凸が形成されている。
【0024】
図3(b)は、ジュール熱を発生させた後におけるn層13とp層14の接合層35の微視的な形状の例である。ジュール熱が発生することにより、このn層13とp層14の接合層35の流動性が増加する結果、n層13やp層14等の表面形状やドーパントの分布がランダムに変化することになる。かかる表面形状やドーパントの分布の変化が繰り返して起こる結果、例えば、ある特有の微細形状Aがこのn層13とp層14との界面において形成される。この微細形状Aは、入射された光に基づいて近接場光が発生する上でより適した形状である。この微細形状Aを形成させるための条件は確定されるものではなく、ジュール熱の発生に伴うn層13やp層14等の表面形状やドーパントのランダムな変化の結果、ある確率の下で偶然に形成されるものである。なお、この近接場光は、n層13とp層14との界面に発生する場合に限定されるものではなく、EL素子1を構成する何れか1以上の層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させるものであればよい。
【0025】
このような微細形状Aが形成されたときに、上述した順方向バイアス電圧を更に負荷し続けると、当該微細形状Aの主として角部において近接場光が発生する。ここでいう、近接場光は、仮想的な電磁場の意味も含まれていることから、仮想的な電磁場が形成されていることが近接場光の発生を意味するものとして解される。この近接場光の発生は、特に誘導光が無い状態の下であっても、順方向電流注入時には注入された電荷の自然放出およびそれを元とした誘導放出によって発生することになる。この近接場光が発生することにより以下に説明する非断熱過程が生じる。ちなみに、この近接場光の発生位置は、当該微細形状Aに対応したn層13とp層14の界面のみならず、他の箇所で発生することも当然起こりえる。
【0026】
この非断熱過程とは、図4に示すように、原子同士の結合をバネで置き換えたモデルで考えることができる。一般に伝搬光の波長は分子の寸法に比べると遥かに大きいため、分子レベルでは空間的には一様な電場とみなせる。その結果、図4(a)に示すように、バネで隣り合う電子は同振幅、同位相で振動させられる。感光性樹脂膜12の原子核は重いため、この電子の振動には追従できず、伝搬光では分子振動は極めて起こりにくい。このように伝搬光では、分子振動が電子の励起過程に関わることを無視することができるため、この過程を断熱過程という(非特許文献1参照。)。
【0027】
一方、近接場光の空間的な電場勾配は非常に急峻に低下する。このため近接場光では隣り合う電子に異なる振動を与えることになり、図4(b)に示すように、この異なる電子の振動により重い原子核も振動させられる。近接場光が分子振動を起こすことは、エネルギーが分子振動の形態を取ることに相当するため、近接場光では、振動準位を介した励起過程(非断熱過程)が可能となる。このように原子核の振動準位を介した励起過程は、通常の光学応答である断熱過程に対し、原子核が応答し動くため、非断熱過程という(非特許文献1参照。)。
【0028】
また、上述した順方向バイアス電圧を印加させ続けることにより、伝導帯における電子密度n1が、下位準位にある正孔密度n2と比較して圧倒的に高くなる。その結果、伝導帯と下位準位との間で、図5に示すように、かかる電子密度の差異に基づく反転分布が接合層35に形成される。次に図6(a)に示すように、この形成された反転分布により、伝導帯中の電子を近接場光による非断熱過程に基づいて、伝導帯中の電子を、バンドギャップの中間に位置する振動準位に仮想的に遷移させることができる。この電子が非断熱過程に基づいて振動準位に遷移できたのは、その箇所において近接場光が発生していたため実現できたものである。この近接場光は、ジュール熱による流動によってある確率の下で生じた微細形状A(又はそのドーパントの変化)によって生じたものである。振動準位に遷移した電子は、この近接場光によって仮想的に生じた仮想場を廻り、その後振動準位から伝導帯へと戻ることになる。この伝導帯に戻った電子は、拡散電流によるジュール熱に寄与する。
【0029】
このように近接場光が単に発生した段階では、伝導帯中の電子を振動準位に仮想的に遷移させて再度伝導帯に戻ることを繰り返すこととなる。伝導帯に戻った電子は、ジュール熱に寄与することとなり、ジュール熱は下がることなく表面形状及び/又はドーパントの分布変化が継続して生じることになる。
【0030】
またジュール熱による表面形状及び/又はドーパントの分布変化が生じた結果、更に近接場光の発生態様が変化した場合には、ある確率の下で図6(b)に示すように、伝導帯中の電子を近接場光による非断熱過程に基づいて、伝導帯中の電子を、バンドギャップの中間に位置する振動準位に仮想的に遷移させてそこから電子を放出させることによる発光させる。また、かかる近接場光に基づいて伝導帯中の電子を複数段階で誘導放出させることにより発光させる。
【0031】
その結果、このEL素子1から係る電子の放出による発光を実現することが可能となる。当該微細形状Aにおいては引き続き近接場光が発生するため、非断熱過程を生じさせることが可能となる。この非断熱過程による誘導放出においては、振動準位を介し電子を放出させる。このとき、バンドギャップ幅に相当する吸収端波長よりも長波長である波長の光でも伝導帯中の電子を多段階で遷移させて放出させることができ、その結果伝導体中の電子を減少させることが可能となる。
【0032】
このような非断熱過程による多段階の誘導放出が生じることにより、伝導帯における電子密度n1が減少する。その結果、かかる近接場光が発生する微細形状Aについては、n層13へと移動する電子の量は減少することになり、拡散電流が低下し、当該微細形状Aについてはジュール熱が低下することになる。即ち、誘導放出は、電子や正孔のエネルギーを奪うものとなり、接合層35やn層13やp層14の流動性が低下する。その結果、この微細形状Aについては、表面形状及び/又はドーパントの分布の変化が抑制されることになる。微細形状Aはそのまま変化することなく固定されることになる。
【0033】
また、図6(b)に示すように発光が生じた場合、その発光に基づいて、表面形状及び/又はドーパントの分布による近接場光が発生しやすくなる。その発生した近接場光により、さらに各部における非断熱過程が生じやすくなり、微細構造Aの固定化並びに発光が促進されることとなる。
【0034】
また、上述の如き順方向バイアス電圧を印加し続けることにより、上述したメカニズムが継続的に生じる。図7(a)に示すように、微細形状Aは、そのまま近接場光が発生し続けて、上述した非断熱過程による誘導放出が継続して生じる結果、温度が低下し、かかる形状の状態でそのまま固定され続ける。また、微細形状A以外の箇所は、近接場光が発生しないため冷却されることなく、そのままジュール熱が発生することにより、このn層13とp層14の接合層35の流動性が増加する結果、n層13やp層14等の表面形状やドーパントの分布がランダムに変化する。このランダムな変化の結果、図7(a)に示すように微細形状Aとほぼ同一形状の微細形状Bが形成される場合もある。かかる場合に光を入射させると、当該微細形状Bにおいて近接場光が発生することになる。そして、この微細形状Bについても同様に非断熱過程による誘導放出が生じる結果、温度が低下し、かかる形状の状態でそのまま固定され続ける。即ち、EL素子1において近接場光が好適に発生する領域が微細形状Aのみならず微細形状Bの分も増加したことになる。
【0035】
かかる処理が繰り返し実行されると、理想的には図7(b)に示すように、n層13とp層14との界面において微細形状Aと同一の形状が数多く形成されることになる。これは、順方向バイアス電圧が印加された場合に近接場光が好適に発生する微細形状Aと同一の形状が数多く作り出されたEL素子1として構成することが可能となる。その結果、発光効率を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0036】
なお、この微細形状Aは、あくまで表面形状に依拠したものであるが、これに限定されるものではなく、ジュール熱の発生に伴うn層13やp層14等のドーパントの変化の結果、表面形状が変化していなくても、近接場光が好適に発生する条件になる場合がある。かかるn層13やp層14等のドーパントが近接場光が好適に発生可能なように変化した場合においても、上述した微細形状Aの形成と同様な効果が得られる。即ち、拡散電流を減少させてジュール熱を低下させることにより、ドーパント分布を固定させることを繰り返し実行することになる。
【0037】
図8は、本発明を適用したEL素子の作製方法において、n層13としてのシリコン基板に対して、p層14としてのホウ素の深さ方向に対する濃度分布を示している。図8(a)は、n層13としてのシリコン基板に対してp層14としてのホウ素をインプラントした直後におけるホウ素の深さ方向の濃度分布を示しており、また図8(b)は、順方向バイアス電圧を負荷して、ドーパントとしてのホウ素を流動させて更に固定した後のホウ素の濃度分布を示している。この図8から、拡散電流によるジュール熱により、流動を起こした結果、近接場光を発生させる上で好適なドーパント分布に変化したことが示されている。この図中の11Boron, 12BoronはそれぞれBの同位体を意味するものである。
【0038】
次に、上述した本発明を適用した受光素子の作製方法に基づいて作製されたEL素子1による動作について説明をする。
【0039】
上述したようにEL素子1は、その作製の段階において、順方向バイアス電圧が負荷された場合に近接場光が好適に発生する、例えば微細構造A、B等を始めとした領域が広く形成されている。このようなEL素子1に対して、順方向バイアス電圧を印加するようにしてもよい。その結果、既に好適に近接場光を発生し得る形状が作り込まれていることから、図7(b)に示すように、近接場光が多くの領域において発生する。そして、図8(b)に示すように、その発生した近接場光による非断熱過程により、伝導帯にある電子が多段階で誘導放出されて発光することになる。このとき、順方向バイアス電圧の強度を更に増大させるとアバランシェ降伏が生じて更に発光量が大きくなる。
【0040】
図9は、本発明を適用したEL素子1における電圧−電流特性を示している。この電流特性においてバイアス電圧を徐々に増加させて100V超に至るまでは殆ど電流が流れないが、100Vを超えると極めて良好な微分負性抵抗の特性が表れていることが示されている。また順方向バイアス電圧によるジュール熱発生は通常の抵抗特性を示すPN接合においても発生するので、負性抵抗の出現は本手法にとって必須では無いが、この実施例ではドーパントの不均一が電気素子としても機能するような分布となったので優れた整流素子としても機能する可能性を示唆するものであり、図9は、その電気特性の傾向を示したものである。
【0041】
上述したように、本発明では、順方向バイアス電圧を印加することによりp層14とn層13の接合部に拡散電流を発生させ、発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいてEL素子1を構成する何れか1以上の層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることを繰り返し実行する。
【0042】
そして、変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生した箇所では、伝導帯中の電子を非断熱過程に基づいて複数段階で誘導放出させることにより、拡散電流を減少させてジュール熱を低下させて、表面形状及び/又はドーパント分布を固定させる。
【0043】
また変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生しない箇所では、或いは近接場光が発生しても単に仮想場ができているだけに発光させる上で好適な条件を満たさない箇所においては、拡散電流を発生させ続けて当該表面形状及び/又は当該ドーパント分布を変化させることを、近接場光による非断熱過程で発光するまで繰り返す。
【0044】
これにより、本発明では、接合層35のバンドギャップ幅に対応した吸収端波長より長波長である光を放出させることができる。仮に、n層13がシリコンであれば、そのシリコンによる発光波長としての近赤外域の光をも発光させることが可能となる。
【0045】
また、本発明を適用したEL素子1の作製方法では、特に大掛かりな装置を必要とすることなく、希望の波長に対して感度の優れた受光素子を安価で作成することが可能となる。
【0046】
この波長帯は上記のSi,GaP,AlGaAs(混晶比に依存)、AlP、AlAs, Ge, SiC, PbS, PbTe, TIO2, GaS, AlSb, C(ダイヤモンド), BNなど用いる間接遷移型無機材料の種類を変更することによっても紫外から赤外光まで広く対応可能である。
【0047】
上述した構成からなるEL素子1により、実際にパルス光を発光させるための制御方法について、以下説明をする。
【0048】
先ず、図1に示すパルス光の発光制御器10において、電源41から電圧を印加する。その結果、互いに並列接続されたEL素子1と、コンデンサ40とに対して、それぞれ電圧が印加されることとなる。
【0049】
図10(a)は、このEL素子1とコンデンサ40にそれぞれ印加されている電圧の関係を、また図10(b)は、電流の関係を示している。また、図11は、実際にEL素子1に対して印加された電圧と電流の関係を示している。
【0050】
図1に示すように、EL素子1に印加される電圧をV1、コンデンサ40に印加される電圧をV2としたとき、当初は、この電圧V1、V2ともに増大することになる。この電圧V1、V2ともに増大するフェーズ1)において、図11に示すEL素子1の電圧−電流特性は、順方向の印加電圧に対して流れる電流が微増するに過ぎない。この過程では、上述したように、EL素子1内において、順方向バイアス電圧を印加することによりp層とn層の接合部に拡散電流を発生させ、発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて何れか1以上の上記層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることが繰り返し行われている。
【0051】
また、図1に示すように、EL素子1に印加される電流をI1、コンデンサ40に印加される電流をI2としたとき、このフェーズ1)において電流I1は、上述したEL素子1の整流特性により僅かしか増加しない。これに対して、電流I2は、コンデンサ40に電荷が順次蓄積されることに伴い、徐々に低下していく。
【0052】
更に電圧印加されると、EL素子1の電圧−電流特性は、図11に示すフェーズ2)へと移行することとなる。このフェーズ2)では、上述したように良好な微分負性抵抗の特性が表れていることが示されている。即ち、このフェーズ2)では、pn接合において、変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生した箇所では、反転分布を形成している伝導帯中の電子を非断熱過程に基づいて複数段階で誘導放出させ、拡散電流を減少させてジュール熱を低下させることにより、当該表面形状及び/又はドーパント分布が固定された後の状態となっている。即ち、その誘導放出による発光が好適に行われるように表面形状及び/又はドーパント分布が固定された状態となっている。
【0053】
このため、このフェーズ2)では、EL素子1により、誘導放出による発光が生じる。この誘導放出の発光の過程では、L素子1の電圧−電流特性に示すようにEL素子1へ徐々に大きな電流が流れることになる。このため、電源41からの電流のみで足りない場合には、更に、コンデンサ40において蓄えられた電荷に基づく電流もこのEL素子1へと供給されることとなる。その結果、EL素子1からの発光強度はより増大することとなる。図10(b)に示す電流I1の立ち上がりは、このEL素子1のパルス光の立ち上がりに相当するものであるが、そのパルス光の立ち上がりは、予め並列接続されたコンデンサ40からの電荷に基づく電流の供給により成しえるものである。
【0054】
ちなみに、このフェーズ2)において電圧V1、V2はともに低下し続けることとなる。しかしながら、この電圧V1よりもV2の方が電圧の低下幅は大きいが、その理由は、コンデンサ40に蓄えられた電荷が徐々に減るためである。
【0055】
なお、このフェーズ2)においては、このコンデンサ40に蓄積された電荷が尽きてしまったために電荷が消去された場合には、コンデンサ40からEL素子1への電流の供給を停止させることとなる。この電流の供給が停止されると、EL素子1は、図11中のy点よりも多くの電流を流すことができず、パルス光をより高く立ち上げることができない。かかる場合にはフェーズ3)に移行することとなる。
【0056】
フェーズ3)では、EL素子1は、図11に示すように、同一の電圧を維持しつつ、電流が急激に減少することとなる。即ち、EL素子1においては、y点よりも多くの電流を流すことができない場合には、フェーズ1)に示される挙動に立ち戻ることになる。その結果、フェーズ3)では、図10(b)に示すように、電流I1が急激に減少し、パルス光が立ち下がることとなる。また、フェーズ3)では、EL素子1からコンデンサ40に対して電流が供給される結果、電流I2が増加し、コンデンサ40に電荷が蓄えられることとなる。更にフェーズ3)では、この図10(a)に示すように、電圧V1、V2はともに変化することなく一定である。
【0057】
このフェーズ3)が終了とすると再びフェーズ1)へ戻り、上述の動作が繰り返し実行されることとなる。これにより、パルス光の発光制御器10では、パルス光を所定期間をおいて立ち上げ、立ち下げることが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 EL素子
10 発光制御器
13 n層
14 p層
35 接合部
40 コンデンサ
41 電源
42 スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順方向バイアス電圧を印加することによりp層とn層の接合部に拡散電流を発生させ、上記発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて何れか1以上の上記層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることを繰り返すとともに、上記順方向バイアス電圧により伝導帯と価電子帯に反転分布を生じさせ、上記変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生した箇所では、上記反転分布を形成している上記伝導帯中の電子を非断熱過程に基づいて複数段階で誘導放出させることにより、上記拡散電流を減少させて上記ジュール熱を低下させることにより、表面形状及び/又はドーパント分布を固定させるとともに、上記誘導放出により発光させるエレクトロルミネッセンス素子と、
上記エレクトロルミネッセンス素子に対して並列に接続されたコンデンサと、
その互いに並列に接続された上記エレクトロルミネッセンス素子と上記コンデンサに対して電圧を印加し続けることにより、当該エレクトロルミネッセンス素子からパルス光を発光させる電源とを備えること
を特徴とするパルス光の発光制御器。
【請求項2】
上記電源から電圧を印加することにより、上記コンデンサに対して電荷を蓄積させるとともに、上記エレクトロルミネッセンス素子に対して上記順方向バイアス電圧を印加させ、
上記エレクトロルミネッセンス素子による上記誘導放出時には、更に上記コンデンサに蓄積された電荷に基づく電流もこれに供給することにより、上記パルス光を立ち上げ、
上記コンデンサに蓄積された電荷消去時には、当該コンデンサから上記エレクトロルミネッセンス素子への電流供給を停止させることにより、上記パルス光を立ち下げ、
更に上記電源から電圧を印加することを繰り返し実行すること
を特徴とする請求項1記載のパルス光の発光制御器。
【請求項3】
順方向バイアス電圧を印加することによりp層とn層の接合部に拡散電流を発生させ、上記発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて何れか1以上の上記層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることを繰り返すとともに、上記順方向バイアス電圧により伝導帯と価電子帯に反転分布を生じさせ、上記変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生した箇所では、上記反転分布を形成している上記伝導帯中の電子を非断熱過程に基づいて複数段階で誘導放出させることにより、上記拡散電流を減少させて上記ジュール熱を低下させることにより、表面形状及び/又はドーパント分布を固定させるとともに、上記誘導放出により発光させるエレクトロルミネッセンス素子と、コンデンサとを互いに並列に接続し、これらに対して電源から電圧を印加し続けることにより、当該エレクトロルミネッセンス素子からパルス光を発光させること
を特徴とするパルス光の発光制御方法。
【請求項4】
上記電源から電圧を印加することにより、上記コンデンサに対して電荷を蓄積させるとともに、上記エレクトロルミネッセンス素子に対して上記順方向バイアス電圧を印加し、
上記エレクトロルミネッセンス素子による上記誘導放出時には、更に上記コンデンサに蓄積された電荷に基づく電流もこれに供給することにより、上記パルス光を立ち上げ、
上記コンデンサに蓄積された電荷消去時には、当該コンデンサから上記エレクトロルミネッセンス素子への電流供給を停止させることにより、上記パルス光を立ち下げ、
更に上記電源から電圧を印加することを繰り返し実行すること
を特徴とする請求項3記載のパルス光の発光制御方法。
【請求項1】
順方向バイアス電圧を印加することによりp層とn層の接合部に拡散電流を発生させ、上記発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて何れか1以上の上記層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることを繰り返すとともに、上記順方向バイアス電圧により伝導帯と価電子帯に反転分布を生じさせ、上記変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生した箇所では、上記反転分布を形成している上記伝導帯中の電子を非断熱過程に基づいて複数段階で誘導放出させることにより、上記拡散電流を減少させて上記ジュール熱を低下させることにより、表面形状及び/又はドーパント分布を固定させるとともに、上記誘導放出により発光させるエレクトロルミネッセンス素子と、
上記エレクトロルミネッセンス素子に対して並列に接続されたコンデンサと、
その互いに並列に接続された上記エレクトロルミネッセンス素子と上記コンデンサに対して電圧を印加し続けることにより、当該エレクトロルミネッセンス素子からパルス光を発光させる電源とを備えること
を特徴とするパルス光の発光制御器。
【請求項2】
上記電源から電圧を印加することにより、上記コンデンサに対して電荷を蓄積させるとともに、上記エレクトロルミネッセンス素子に対して上記順方向バイアス電圧を印加させ、
上記エレクトロルミネッセンス素子による上記誘導放出時には、更に上記コンデンサに蓄積された電荷に基づく電流もこれに供給することにより、上記パルス光を立ち上げ、
上記コンデンサに蓄積された電荷消去時には、当該コンデンサから上記エレクトロルミネッセンス素子への電流供給を停止させることにより、上記パルス光を立ち下げ、
更に上記電源から電圧を印加することを繰り返し実行すること
を特徴とする請求項1記載のパルス光の発光制御器。
【請求項3】
順方向バイアス電圧を印加することによりp層とn層の接合部に拡散電流を発生させ、上記発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて何れか1以上の上記層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることを繰り返すとともに、上記順方向バイアス電圧により伝導帯と価電子帯に反転分布を生じさせ、上記変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生した箇所では、上記反転分布を形成している上記伝導帯中の電子を非断熱過程に基づいて複数段階で誘導放出させることにより、上記拡散電流を減少させて上記ジュール熱を低下させることにより、表面形状及び/又はドーパント分布を固定させるとともに、上記誘導放出により発光させるエレクトロルミネッセンス素子と、コンデンサとを互いに並列に接続し、これらに対して電源から電圧を印加し続けることにより、当該エレクトロルミネッセンス素子からパルス光を発光させること
を特徴とするパルス光の発光制御方法。
【請求項4】
上記電源から電圧を印加することにより、上記コンデンサに対して電荷を蓄積させるとともに、上記エレクトロルミネッセンス素子に対して上記順方向バイアス電圧を印加し、
上記エレクトロルミネッセンス素子による上記誘導放出時には、更に上記コンデンサに蓄積された電荷に基づく電流もこれに供給することにより、上記パルス光を立ち上げ、
上記コンデンサに蓄積された電荷消去時には、当該コンデンサから上記エレクトロルミネッセンス素子への電流供給を停止させることにより、上記パルス光を立ち下げ、
更に上記電源から電圧を印加することを繰り返し実行すること
を特徴とする請求項3記載のパルス光の発光制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−51270(P2013−51270A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187523(P2011−187523)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(511026223)特定非営利活動法人ナノフォトニクス工学推進機構 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(511026223)特定非営利活動法人ナノフォトニクス工学推進機構 (4)
【Fターム(参考)】
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