説明

パレット用帯ゴム

【課題】帯ゴムのパレットからの剥離防止と、良好な滑り止め効果とを長期に亘って維持すること。
【解決手段】パレット1のデッキ面3に取り付けられて積載物の滑り止めをおこなうパレット用帯ゴム2が、硬度の異なるゴム材料で構成され、パレット1に溶着される下層が硬度の比較的硬いゴム材料からなる帯状の硬質ゴム部5からなり、該硬質ゴム部5の上面に、硬質ゴム部5よりも硬度の柔らかいゴム材料からなる軟質ゴムの表層4を積層形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレット用帯ゴムに関し、詳しくはパレットのデッキ面に取り付けられて積載物の滑り止めをおこなう帯ゴムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製のパレットは、木製パレットに比べて、耐久性が優れている反面、滑性が高いために積載物が滑り易く、荷くずれ等が発生するおそれがある。このために、パレットのデッキ面に滑り止め用の帯ゴムを溶着するようにしている。
【0003】
従来は、図5に示すように、合成樹脂製のパレット1のデッキ面3の一部を凹ませて凹溝50を形成し、この凹溝50の底に帯ゴム51を溶着し、帯ゴム51の上端を凹溝50よりも突出させて積載物が接触し得るようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1では、図5(b)のように帯ゴム51の幅を凹溝50の溝幅よりも狭くすることで、帯ゴム51上に積載物の荷重がかかっても、図5(c)のように帯ゴム51が潰れて凹溝50内で逃げることで、積載物の荷重がデッキ面3で受け止められ、帯ゴム51が切断されないようにしている。しかし、パレット1に凹溝50を形成する必要があるため、パレット1を成形する金型コストが高くつくという問題や、凹溝50を成形するための入れ子の位置が金型内で固定され、凹溝50の形成位置の変化に対応できないという問題があり、さらには入れ子の個数が増えるという問題や、比較的高価な帯ゴム51の厚みを凹溝50の深さよりも厚肉にする必要があり、帯ゴム51の薄肉化ができず、更なるコストアップを招くという問題がある。そのうえ、帯ゴム51を多く必要とする場合を基準として多くの凹溝50を形成するため、帯ゴム51の使用数が少ない場合は、帯ゴム51が取り付けられない凹溝50内部にゴミが溜まるなどの問題もある。
【0005】
以上の問題に鑑みて、従来から、図6(a)のように合成樹脂製のパレット1のデッキ面3上に帯ゴム51を溶着することもおこなわれている。
【0006】
しかし、特に一斗缶等の重量物が載置される場合は、一斗缶の底面外周に突設している凸リブ(糸尻)が帯ゴム51上に載ると、帯ゴム51の逃げ場がなく、図6(b)のように線荷重Pによって帯ゴム51が切断されやすくなり、この切断によって帯ゴム51が細かくなってパレット1から剥離しやすくなるという問題が生じる。また運搬中に一斗缶が左右にズレて、帯ゴム51が延びて薄くなることや、切れることがある。なお、帯ゴム51が切断されないように硬いゴム材料で形成した場合は、積載物の滑り止め効果が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭56−41505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、パレットからの剥離防止と、良好な滑り止め効果とを長期に亘って維持できるパレット用帯ゴムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明は、パレット1のデッキ面3に取り付けられて積載物の滑り止めをおこなうパレット用帯ゴムであって、硬度の異なるゴム材料で構成され、パレット1に溶着される下層が硬度の比較的硬いゴム材料からなる帯状の硬質ゴム部5からなり、該硬質ゴム部5の上面に、硬質ゴム部5よりも硬度の柔らかいゴム材料からなる軟質ゴムの表層4を積層形成してなることを特徴としている。
【0010】
このように構成することで、積載物が帯ゴム2のどの場所に載っても、表面に露出する硬度の柔らかい軟質ゴムの表層4によって良好な滑り止め効果が得られると共に、重い荷重が掛かって仮りに軟質ゴムの表層4が切れるようなことがあっても、その下側に位置する硬度の硬い硬質ゴム部5は切れにくいため、帯ゴム2全体が切れにくい構造となり、結果、パレット1から帯ゴム2が剥がれるのを防止できる。
【0011】
また、上記帯状の硬質ゴム部5の側面に、硬質ゴム部5よりも硬度の柔らかいゴム材料からなる軟質ゴムの横層4aを被覆してなるのが好ましい。さらに、上記帯状の硬質ゴム部5の左右の両側面に、上記軟質ゴムの横層4aをそれぞれ被覆してなるのが好ましい。この場合、軟質ゴムの露出面積が拡大して滑り止め効果が向上すると共に、硬質ゴム部5と軟質ゴムとの接着面積が拡大して軟質ゴムの剥離防止効果が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、パレットに取り付けられる帯状の硬質ゴム部の上面に軟質ゴムの表層を積層形成したことにより、良好な滑り止め効果が得られる帯ゴムのパレットからの剥離を長期に亘って防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のパレット用帯ゴムの実施形態の一例を示し、(a)はパレットのデッキ面に帯ゴムを溶着した状態の斜視図であり、(b)は帯ゴム全体の斜視図である。
【図2】同上の帯ゴムを平坦なデッキ面に溶着した状態のパレットの斜視図である。
【図3】(a)は図1(a)のB-B線断面図であり、(b)は(a)の変形例であり、硬質ゴム部の両側面を軟質ゴムの横層で被覆した場合の断面図である。
【図4】(a)〜(d)はそれぞれ帯ゴムの更に他例であり、(a)は軟質ゴムの表層の中央領域を肉厚部で形成した場合の断面図であり、(b)は(a)の変形例を示す断面図であり、(c)は(a)の変形例を示す断面図であり、(d)は(b)の変形例を示す断面図である。
【図5】(a)は従来の帯ゴム付きパレットの斜視図であり、(b)はパレットのデッキ面に凹ませた凹溝内に帯ゴムを溶着した状態の断面図であり、(c)は帯ゴムに荷重がかかったときに帯ゴムが凹溝内に逃げた状態を説明する断面図である。
【図6】他の従来例を示し、(a)はパレットの平坦なデッキ面上に帯ゴムを溶着した状態の断面図であり、(b)は帯ゴムが荷重によって切断される状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0015】
合成樹脂製のパレット1は、PP、PE等の合成樹脂からなり、図2に示すように、積載物を載置する平坦なデッキ面3と、複数の桁部7とを備えたもので、桁部7,7間がフォーク挿入部8となっている。
【0016】
パレット1としては、4方差しのものと、2方差しのものとがあるが、本発明においてはいずれのタイプのものであってもよい。なお、図2では2方差しの例を示している。また、全体を合成樹脂の一体成形により成形する一体成形型パレットと、上半体と下半体とを別々に成形して上半体と下半体とを溶着一体化して成形する溶着型パレットとに大別できるが、図2では溶着型パレットを例示している。
【0017】
また、パレット1としては、両面がデッキ面3となった両面使用タイプのものと、片面のみがデッキ面3となった片面使用タイプのものとがあるが、本発明においては、これらのいずれかのタイプに限定されるものではない。
【0018】
帯ゴム2は、パレット1の平坦なデッキ面3上に取り付けられる。その一例として、帯ゴム2の裏面側を熱風等で溶融してデッキ面3に溶着する方法や、帯ゴム2の裏面側に接着剤を塗布し、帯ゴム2の裏面側を熱風等で溶融してデッキ面3に接着する方法など、従来から存在する公知の技術方法が用いられる。
【0019】
なお、図2の例では6本の帯ゴム2を等間隔で互いに平行に溶着或いは接着しているが、帯ゴム2の本数及び溶着箇所は適宜に設計変更自在である。
【0020】
図1は、帯ゴム2の一例を示している。本例の帯ゴム2は、図3(a)に示すように、パレット1に溶着される下層が帯状の硬質ゴム部5からなり、その上面に軟質ゴムの表層4が積層一体化されている。硬質ゴム部5は断面略矩形状に形成されており、軟質ゴムの表層4の表面はその中央部が両側部よりも上方に凸となるように滑らかに湾曲した円弧面で形成されている。
【0021】
本例の帯ゴム2は、硬度の異なる2種類のゴム材料を組み合わせた二色成形(押出し成形)によって得られるものであり、軟質ゴムの表層4はJIS硬度95°の軟質ゴム材料、例えばオレフィン系エラストマーからなる。硬質ゴム部5はJIS硬度110°の硬質ゴム材料、例えばオレフィン系エラストマーとPP(或いはPE)との複合材料からなる。勿論これらの材料に限定されるものではなく、硬度が異なる2種類のゴム材料であればよい。
【0022】
ここにおいて、パレット1が、例えばPP製の場合は、硬質ゴム部5をオレフィン系エラストマーとPPの複合材料で構成する。パレット1がPE製の場合は、オレフィン系エラストマーとPEの複合材料で構成する。このように硬質ゴム部5内部にパレット1の形成材料と同系統の材料を含有させることで、パレット1に対する帯ゴム2の溶着強度が強められている。
【0023】
帯ゴム2の厚み寸法としては、2.0mm以上では積載物がダンボール箱の場合はその表面に帯ゴム2の跡形が付きやすくなり、1.0mm以下ではパレット1のヒケや反りに吸収されて帯ゴム2の表面がパレット1表面よりも低くなり、滑り止め効果が得られにくくなる。そこで、厚み寸法c(図3(a))を1.0mm以上で2.0mm以下、好ましくは、1.5mm又は1.6mm程度とし、左右幅寸法d(図3(a))を、例えば10mm程度とするのが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、本パレット用帯ゴム2のどの場所に積載物が載っても、表面に露出している硬度の柔らかい軟質ゴムの表層4によって良好な滑り止め効果が得られるようになる。ところで、特に一斗缶のような重量物が載置された場合のように重い荷重が掛かって、仮りに軟質ゴムの表層4が切れるようなことがあっても、その下側に位置する硬度の硬い硬質ゴム部5は切れにくいため、帯ゴム2全体が切れにくい構造となり、結果、パレット1から帯ゴム2が剥がれるのを防止できる。
【0025】
また、帯ゴム2中の硬度の硬い硬質ゴム部5が占める割合が多いので、帯ゴム2全体として剛性が高まり、帯ゴム2の直線性を確保できると共にパレット1への溶着強度を強めることができる。
【0026】
しかも、硬質ゴム部5内部にパレット1の形成材料と同系統の材料を含有させることで、パレット1に対する帯ゴム2の溶着強度をより一層強めることができる。ちなみに、硬質ゴム部5がオレフィン系エラストマー製の場合、PP製パレット1(或いはPE製パレット1)と溶着しても、溶着強度は弱く、剥離しやすいものであるが、本例のようにパレット1に溶着される硬質ゴム部5にパレット1と同系統の材質(PP或いPE)を含有させることで、パレット1と硬質ゴム部5との溶着強度を上げることができ、パレット1からの帯ゴム2の剥がれを確実に防ぐことができ、軟質ゴムの表層4による良好な滑り止め効果を長期に亘って維持できるものである。
【0027】
また、軟質ゴムの表層4の面積が硬質ゴム部5の面積よりも小さくなっているので、硬質ゴム材料と比べて高価な軟質ゴム材料の使用量を削減できて、材料コストを低減できるものであり、しかも軟質ゴムの表層4と硬質ゴム部5との上下二層構造によって成形金型の構造を簡素化できる利点がある。
【0028】
また、前記パレット1のデッキ面3の裏面側には縦横に延びたリブ52(図2参照)が形成されており、デッキ面3のリブ52が形成される面と反対側の表面に、該リブ52と直交する方向に帯ゴム2を溶着することによって、デッキ面3が帯ゴム2の長さ方向と直交する方向にリブ52によって補強されることとなり、デッキ面3の強度を高めることができる利点もある。
【0029】
図3(b)は、図3(a)の変形例であり、硬質ゴム部5の両側面を軟質ゴムの横層4aでそれぞれ被覆した一例であり、この場合、軟質ゴムの露出面積が拡大して滑り止め効果が高められると共に、硬質ゴム部5に対する軟質ゴムの接着面積が拡大して軟質ゴムの剥離防止効果が高められる利点がある。
【0030】
図4(a)〜(d)は、それぞれ、帯ゴム2の他例であり、(a)は硬質ゴム部5の表面中央部分を凹ませてこの凹み部分に軟質ゴムの中央肉厚部4bを埋め込んだ場合の一例であり、(b)は(a)において硬質ゴム部5の両側面を薄肉の軟質ゴムの横層4aでそれぞれ被覆した一例である。(a)(b)では、軟質ゴムの中央肉厚部4bの厚み寸法を帯ゴム2の総厚の半分以上、好ましくは2/3以上としている。(c)は軟質ゴムの中央肉厚部4b´の左右両側に硬質ゴム部5をそれぞれ形成した一例であり、(d)は(c)において硬質ゴム部5の外側の側面をそれぞれ、薄肉の軟質ゴムの横層4aで被覆した一例である。
【0031】
上記図4(a)〜(d)の各例において、前記図1の実施形態の効果に加えて、軟質ゴムの中央肉厚部4b(4b´)の左右両側に硬度の硬い硬質ゴム部5がそれぞれ位置しており、この硬質ゴム部5は重い荷重によって切断されにくいため、軟質ゴムの中央肉厚部4b(4b´)も同様に切断されることが少ないものであり、特に積載物の積み降ろしする際に積載物が強く当たったり、或いは輸送時の振動により帯ゴム2に積載物からの振動荷重が掛かったり、或いは両面使用タイプや片面使用タイプのパレットの両面のデッキ面3にそれぞれ帯ゴム2を溶着した場合において、パレット1を引きずってパレット1裏側のデッキ面3上に溶着されている帯ゴム2の表面が地面で擦られたりした場合であっても、本例の帯ゴム2においては硬質ゴム部5で囲まれた軟質ゴムの中央肉厚部4bが切れたり、削られたりすることが少ないものであり、帯ゴム2の長寿命化を達成できる利点がある。
【0032】
なお、前記実施形態では、軟質ゴムの表層4の中央部を両側部よりも上方に凸となるように湾曲させた場合を例示したが、軟質ゴムの表層4全体をフラット面としてもよいものである。
【0033】
本発明のパレット用帯ゴムは、パレット1の平坦なデッキ面3上に溶着或いは接着する場合に限らず、デッキ面3に凹設した凹溝の中に溶着或いは接着して帯ゴム2の上端を凹溝の上方に突出させる使用態様にも広く適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 パレット
2 帯ゴム
3 デッキ面
4 軟質ゴムの表層
4a 軟質ゴムの横層
5 硬質ゴム部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットのデッキ面に取り付けられて積載物の滑り止めをおこなうパレット用帯ゴムであって、硬度の異なるゴム材料で構成され、パレットに溶着される下層が硬度の比較的硬いゴム材料からなる帯状の硬質ゴム部からなり、該硬質ゴム部の上面に、硬質ゴム部よりも硬度の柔らかいゴム材料からなる軟質ゴムの表層を積層形成してなることを特徴とするパレット用帯ゴム。
【請求項2】
上記帯状の硬質ゴム部の側面に、硬質ゴム部よりも硬度の柔らかいゴム材料からなる軟質ゴムの横層を被覆してなることを特徴とする請求項1記載のパレット用帯ゴム。
【請求項3】
上記帯状の硬質ゴム部の左右の両側面に、上記軟質ゴムの横層をそれぞれ被覆してなることを特徴とする請求項1又は2記載のパレット用帯ゴム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−93549(P2011−93549A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247612(P2009−247612)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000010054)岐阜プラスチック工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】