説明

パークゴルフ用クラブ

【課題】従来のパークゴルフ用クラブヘッドは、重心位置を調整するためにその都度ヘッドを加工して適当な錘を埋め込んだり金属板を張り付けたりする必要があり、またそのために異なる材質や大きさの錘や金属板を数種類用意しておかねばならず、作業が非常に煩雑で、コスト上昇を招いていた。
【解決手段】前記クラブのヘッドの木質母材に穿設された挿通孔と、同挿通孔内を摺動可能に配設された重心調整用の錘体と、同錘体を前記挿通孔内で移動・定着させる錐体移動・定着手段からなる重心調整機構を備えたパークゴルフ用クラブによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパークゴルフ用クラブに係わり、詳しくはクラブヘッドの重心を移動調整するための錘をクラブヘッド内に備えたパークゴルフ用クラブに関する。
【背景技術】
【0002】
パークゴルフは、従来のゴルフを基本とし、公園や河川敷等の芝生で行える競技として提案されたものである。したがって、ゴルフと同様にスタート地点からいかに少ない打数でカップに入れ、コースを回るかを競う。
【0003】
このようにパークゴルフは、プレイヤー以外に大勢の人がいる公園や河川敷等で競技することが多いため、安全性を考慮して、使用するクラブも打球が飛び上がらないようにヘッドの打球面(フェース面)にロフト(傾斜角度)を付けず、さらに、ボールも通常のゴルフボールより大きい合成樹脂製のものを使用し、地上面を転がしてプレーするのが特徴である。
【0004】
前記合成樹脂製のボールは、直径6cm、重量80〜95gで、通常のゴルフボールよりかなり大きい。この大きなボールを打つクラブは、国際パークゴルフ協会(IPGA)規則に則って、重さ600g以下、長さ86cm以下(シャフト軸線上で装着グリップエンドの先端からヘッド底面までの長さ)に作られており、またクラブのヘッドは木質(打球面を合成樹脂などで補強するのは許容)で、打球面の中心において底面からフェース面補強板の上端までの高さは、53mm以上でなければならないと規定されている。
【0005】
このようにヘッドは木質である必要から、楓などの天然木や圧接合板が使用されるので同じ外形寸法に切り出しても重心の位置がそれぞれ異なってくる。したがって、この重心の位置を調整してそろえるため、ヘッドの木質母材に適当な錘を埋め込んだり金属板を張り付けたりする必要があり、従来はこのため、異なる材質や大きさの錘や金属片を数種類用意しておき、その中から適切な重さ、大きさの錘又は金属片を選択して取り付けることが行われていた。
【0006】
さらにヘッドの重心を底面に近づけるためヘッド先端(トウ)及び後端(ヒール)部分の底面に主材料である木材より比重及びヤング率の大きい帯状の金属片又は樹脂の成型品からなる重量付加部を固定したヘッドもあった。
【特許文献1】特許第3466510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、クラブヘッドの重心の位置を調整してそろえるためにその都度ヘッドに適当な錘を埋め込んだり又は金属片を張り付けたりする作業は非常に煩雑であり、さらに材質や大きさの異なる錘又は金属を数種類用意しておく必要もあり、クラブのコスト上昇を招いていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、上記に鑑み鋭意研究の結果、次の手段によりこの課題を解決した。
(1)パークゴルフ用クラブにおいて、同クラブのヘッドが、その木質母材に穿設された挿通孔と、同挿通孔内を摺動可能に配設された重心調整用の錘体と、同錘体を前記挿通孔内で移動・定着させる錐体移動・定着手段からなる重心調整機構を備えてなることを特徴とするパークゴルフ用クラブ。
【0009】
(2)前記ヘッドが、その木質母材の上面から垂直に穿設された1又は複数の上下方向挿通孔と、同上下方向挿通孔内で上下に摺動可能な錘体と、同錘体の移動量を調整し、かつ調整位置に定着させる錘体移動・定着手段からなる上下方向重心調整機構を備えてなることを特徴とする前項(1)に記載のパークゴルフ用クラブ。
【0010】
(3)前記ヘッドが、ヘッドの木質母材の上面から下方に向けて斜め方向に穿設された1又は複数の上下斜め方向挿通孔と、同上下斜め方向挿通孔内で上下斜め方向に摺動可能な錘体と、同錘体の移動量を調整し、かつ調整位置に定着させる錘体移動・定着手段とからなる上下斜め方向重心調整機構を備えてなることを特徴とする前項(1)に記載のパークゴルフ用クラブ。
【0011】
(4)前記ヘッドが、ヘッドの木質母材の背面に穿設された1又は複数の前後方向挿通孔と、同前後方向挿通孔内で前後に摺動可能な錘体と、同錘体の移動量を調整し、かつ調整位置に定着させる錘体移動・定着手段からなる前後方向重心調整機構を備えてなることを特徴とする前項(1)に記載のパークゴルフ用クラブ。
【0012】
(5)前記ヘッドが、ヘッドの木質母材に背面から前方に向けて斜め方向に穿設された1又は複数の前後斜め方向挿通孔と、同前後斜め方向挿通孔内で前後斜め方向に摺動可能な錘体と、同錘体の移動量を調整し、かつ調整位置に定着させる錘体移動・定着手段からなる前後斜め方向重心調整機構を備えてなることを特徴とする前項(1)に記載のパークゴルフ用クラブ。
【0013】
(6)パークゴルフ用クラブにおいて、そのヘッドが、前項(2)又は(3)に記載の上下方向重心調整機構又は上下斜め方向重心調整機構のいずれかと、前項(4)又は(5)に記載の前後方向重心調整機構又は前後斜め方向重心調整機構のいずれかとを併せ備えてなることを特徴とする前項(1)に記載のパークゴルフ用クラブ。
【0014】
(7)パークゴルフ用クラブにおいて、同クラブのヘッドが、ヘッドの木質母材の背面に穿設された溝部と、同溝部内で前後に移動可能な1又は複数の錐体と、前記錐体の移動量を調整し、かつ調整位置に定着させる前後方向錐体定着手段と、前記錐体と前後錐体移動・定着手段とを前記溝部内で左右に摺動し、摺動位置に定着させるスライド機構からなる前後・左右重心調整機構を備えてなることを特徴とするパークゴルフ用クラブ。
【0015】
(8)パークゴルフ用クラブにおいて、そのヘッドが、前項(2)又は(3)に記載の上下方向重心調整機構又は上下斜め方向重心調整機構のいずれかと、前項(7)に記載の前後・左右重心調整機構とを併せ備えてなることを特徴とするパークゴルフ用クラブ。
【0016】
(9)前記錘体が、移動調整・定着手段によって移動量を調整された後、合成樹脂材又は接着材で固定されてなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のパークゴルフ用クラブ。
【0017】
(10)前記合成樹脂材又は接着材が、熱可塑性の合成樹脂材又は接着材であることを特徴とする前項(9)に記載のパークゴルフ用クラブ。
【発明の効果】
【0018】
本願発明によれば、次のような効果が発揮される。
1.本願発明の請求項1の発明によれば、
パークゴルフ用クラブのヘッドが楓などの天然木や圧接合板を使用するため同じ外形寸法に切り出したヘッドであってもそれぞれ異なってくる重心の位置を、ヘッドの木質母材に穿設した挿通孔に摺動可能に挿入された重心調整用の錐体を錘体移動・定着手段によって容易に移動し定着できるので、多量に生産するヘッドの重心の位置を簡単、かつ正確にそろえることができる。
【0019】
また、前記挿通孔、錐体、錐体移動・定着手段からなる重心調整機構によって、ヘッドの重心位置をある一定範囲内で任意な位置に容易に移動・定着することもできるので、プレイヤーの要望に応じてヘッドの重心位置をプレイヤーが最もプレイしやすい位置に正確に移動・定位し、ボールをスイートスポットで正しくとらえて真っ直ぐ打てるようにすることもできる。したがって、技術力や体力の低い人でも楽にプレイすることが可能になる。
【0020】
さらに、ヘッドの低重心化が図れるため、スイートスポットを外してボールを打った場合でもヘッドがシャフト周りに回転しにくくなり、打球の方向が安定する。したがって、技術力や体力の低い人でも楽にプレイすることが可能になる。
【0021】
さらにまた、材質や大きさの異なる錘や金属片を多数揃えたり、その都度ヘッドを加工して前記錘を埋め込んだり金属片を張り付けたりする作業から開放されるので作業性が向上し、クラブの低コスト化が図れる。
【0022】
2.本願発明の請求項2の発明によれば、
請求項1の効果に加えて、同じ外形寸法のヘッドであってもそれぞれ上下にばらつく重心の位置を、ヘッドの木質母材の上面から垂直に穿設された1又は複数の上下方向挿通孔に摺動可能に挿入した重心調整用の錐体を錘体移動・定着手段によって容易に上下に移動し定着できるので、多量に生産するヘッドの重心位置の上下のばらつきを簡単、かつ正確に調整し、そろえることができる。
また、前記重心調整用の錐体を容易に上下に移動し定着できるので、プレイヤーの要望に応じて、ヘッドの重心をプレイヤーが最もプレイしやすい位置に正確に移動・調整して、ボールを正しくとらえて真っ直ぐ打てるようにすることもできる。
【0023】
3.本願発明の請求項3の発明によれば、
請求項1の効果に加えて、同じ外形寸法のヘッドであってもそれぞれ上下斜め方向にばらつく重心の位置を、ヘッドの木質母材の上面から下方に斜め方向にに穿設された1又は複数の上下斜め方向挿通孔に摺動可能に挿入した重心調整用の錐体を錘体移動・定着手段によって容易に上下斜め方向に移動し定着できるので、多量に生産するヘッドの重心位置の上下斜め方向のぶれを簡単、かつ正確に調整し、そろえることができる。
また、前記重心調整用の錐体を容易に上下斜め方向に移動し定着できるので、プレイヤーの要望に応じて、ヘッドの重心をプレイヤーが最もプレイしやすい位置に正確に移動・調整して、ボールを正しくとらえて真っ直ぐ打てるようにすることもできる。
【0024】
4.本願発明の請求項4の発明によれば、
請求項1の効果に加えて、同じ外形寸法のヘッドであってもそれぞれ前後にばらつく重心の位置を、ヘッドの木質母材の背面に穿設された1又は複数の上下方向挿通孔に摺動可能に挿入した重心調整用の錐体を錘体移動・定着手段によって容易に前後に移動し定着できるので、多量に生産するヘッドの重心位置の前後のばらつきを簡単、かつ正確に調整し、そろえることができる。
また、前記重心調整用の錐体を容易に前後に移動し定着できるので、プレイヤーの要望に応じて、ヘッドの重心をプレイヤーが最もプレイしやすい位置に正確に移動・調整して、ボールを正しくとらえて真っ直ぐ打てるようにすることもできる。
【0025】
5.本願発明の請求項5の発明によれば、
請求項1の効果に加えて、同じ外形寸法のヘッドであってもそれぞれ前後斜め方向にばらつく重心位置を、ヘッドの木質母材の背面から斜め前方に向けて穿設された1又は複数の上下方向挿通孔に摺動可能に挿入した重心調整用の錐体を錘体移動・定着手段によって容易に前方斜め方向に移動し定着できるので、多量に生産するヘッドの重心位置の前後斜め方向のばらつきを簡単、かつ正確に調整し、そろえることができる。
また、前記重心調整用の錐体を容易に前後斜め方向に移動し定着できるので、プレイヤーの要望に応じて、ヘッドの重心をプレイヤーが最もプレイしやすい位置に正確に移動・調整して、ボールを正しくとらえて真っ直ぐ打てるようにすることもできる。
【0026】
6.本願発明の請求項6の発明によれば、
請求項1の効果に加えて、同じ外形寸法のヘッドであってもそれぞれ異なる重心の位置を、前記上下方向重心調整機構又は上下斜め方向重心調整機構のいずれかと前記前後方向重心調整機構又は前後斜め方向重心調整機構のいずれかとの併用によって、上下又は上下斜め方向に移動する錐体と前後又は前後斜め方向に移動する錐体をそれぞれの錐体移動・定着手段で容易に移動し定着できるので、多量に生産するヘッドの重心位置を簡単、かつ正確に調整し、そろえることができる。
また、前記上下方向重心調整機構又は上下斜め方向重心調整機構のいずれかと前記前後方向重心調整機構又は前後斜め方向重心調整機構のいずれかとの併用にによって重心の位置を容易に移動し定着できるので、プレイヤーの要望に応じて、ヘッドの重心をプレイヤーが最もプレイしやすい位置に正確に移動・調整し、ボールを正しくとらえて真っ直ぐ打てるようにすることもできる。
【0027】
7.本願発明の請求項7の発明によれば、
パークゴルフ用クラブのヘッドが楓などの天然木や圧接合板を使用するため同じ外形寸法のヘッドであってもそれぞれ前後・左右にばらつく重心位置を、ヘッドの木質母材の背面に穿設された溝部と、同溝部内で前後に移動可能な1又は複数の錐体と、前記錐体の移動量を調整し、かつ調整位置に定着させる前後方向錐体移動・定着手段とからなる前後方向重心調整機構を前記溝部内で左右に摺動して定着させるスライド機構を備えているので、錐体の前後、左右への移動が容易にでき、多量に生産するヘッドの重心の位置を簡単、かつ正確にそろえることができる。
また、前記前後・左右重心調整機構によって重心位置を容易に前後・左右に移動し定着できるので、プレイヤーの要望に応じて、ヘッドの重心をプレイヤーが最もプレイしやすい位置に正確に移動・定位し、ボールを正しくとらえて真っ直ぐ打てるようにすることもできる。
【0028】
8.本願発明の請求項8の発明によれば、
上下方向重心調整機構又は上下斜め方向重心調整機構と、前後方向重心調整機構と、前記前後方向重心調整機構を左右に摺動するスライド機構を併せ備えているので、各重心調整機構の重心調整用錐体の定着位置を調整するとともに、前記前後方向重心調整機構を左右に摺動することによってヘッドの重心を容易に移動でき、多量に生産するヘッドの重心の位置を簡単、かつ正確にそろえることができる。
また、各重心調整機構の重心調整用錐体の定着位置を調整するとともに、前記前後方向重心調整機構を左右に摺動することによってヘッドの重心を容易に移動できるので、プレイヤーの要望に応じて、ヘッドの重心をプレイヤーが最もプレイしやすい位置に正確に移動・定位し、ボールを正しく捕らえ真っ直ぐ打てるようにすることもできる。
【0029】
9.本願発明の請求項9の発明によれば、
挿通孔又は溝部に挿入された錘体が、それぞれの錐体移動・定着手段によって移動、調整された後、合成樹脂材又は接着材で前記挿通孔又は溝部に固定されるので、プレイ中に錘体が動いて重心やスィートスポットの位置が変化するおそれが除去される。
【0030】
10.本願発明の請求項10の発明によれば、
前記請求項9の効果に加えて、前記合成樹脂材又は接着材に熱可塑性の合成樹脂材又は接着材を使用するので、プレイヤーの要求に応じて重心やスィートスポットの位置を繰り返し調整し定着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本願発明を実施するための最良の形態を、実施例の図に基づいて説明する。
図1は本願発明パークゴルフ用クラブにおいて重心調整用の錘体を上下に移動・調整・定着できる上下方向重心調整機構を備えたヘッドの実施例の構成図、図2は本願発明パークゴルフ用クラブにおいて重心調整用の錘体を前後に移動・調整・定着する前後方向重心調整機構を備えたヘッドの実施例の構成図、図3は本願発明パークゴルフ用クラブにおいて上下方向重心調整機構と前後方向重心調整機構を併せ備えたヘッドの実施例の構成図、図4は本願発明のパークゴルフ用クラブにおいて上下方向重心調整機構と前後方向重心調整機構をそれぞれ複数個備えたヘッドの実施例の構成図、図5は本願発明パークゴルフ用クラブにおいて重心調整用錐体を前後・左右に移動・調整・定着する前後及び左右方向重心調整機構を備えたヘッドの実施例の構成図である。
図において1はヘッド、2はシャフト嵌設用孔、3はフェース面補強板、4は底面補強板、5は蓋、6はバックプレート、7はヒール、8はトウ、11は上下方向の挿通孔、12は前後方向の挿通孔、13は上下斜め方向の挿通孔、14は雌ねじ、15は錘体、16は溝部、21は調整ねじ、22はフランジ、23は調整ねじ固定板、24はスライド用孔、25はナット、26は錘体である。
【実施例1】
【0032】
本願発明のパークゴルフ用クラブの第1の実施例として、重心調整用の錘体15を上下に移動・調整・定着できる上下方向重心調整機構を備えたヘッドを有するものについて説明する。
本実施例のヘッド1は、従来のヘッドと同様に楓などの天然木や圧接合板を切削加工して所定の形状に形成された木質母材の上面にシャフトを嵌入固定するシャフト用嵌設用孔2が穿設され、また前面(フェース面)には厚さ8mm以下のFRP等の合成樹脂材のフェース面補強板3がねじ止めされ、底面には打球面からの奥行き40mm以上でシャフト軸線からヒール7側に40mm以上の長さを持つ(シャフト軸線からトウ8側の長さは任意)金属製等の底面補強板4がフェース面に対して直角な面を形作るように取り付けられ、フェース面のロフト角を測定できるよう考慮されている。さらに背面には重量調整用及びバランサーとしてのアルミダイキャスト等鋳造品でなる金属板のバックプレート6がねじ止めされている。
【0033】
このように、楓などの天然木や圧接合板を切削加工して所定の形状に形成された木質母材のヘッド1は、同じ外形寸法であってもその木質母材の重心の位置は一定せずそれぞればらつき、さらに切り出した木質母材に前記のように各種補強板やプレート等が取り付けられるので、ヘッド1としての重心の位置もずれる。したがって、ばらついたりずれたりした重心の位置を調整してプレイヤーが最も打ちやすいクラブにする必要がある。
本実施例では前記重心の位置を調整する手段として、図1(a)の上面図に見られるように、シャフト嵌設用孔2より後方のヘッド1の上面に、上面から底面に向けて垂直に、すなわちフェース面補強板3の表面と平行に上下方向の挿通孔11を穿設し、その内壁に螺設された雌ねじ14に重心調整用の錘体15を上下方向に移動して定着できるように螺入した上下方向重心調整機構を備えている。
【0034】
前記重心調整用の錘体15は、上下方向の挿通孔11の所定位置まで螺入された後、熱可塑性合成樹脂材又は接着材で固定される。
なお、前記重心調整用の錘体15は、比重の大きな素材、例えば鉛、タングステン、金、銀、白金等で作られるのが好ましい。
【0035】
前記重心調整用の錘体15が上下方向の挿通孔11の所定位置に固着された後、前記挿通孔11に蓋5をその上面がヘッド1の上面に一致するまで螺入して封じ、さらに前記錘体15と同様、熱可塑性合成樹脂材又は接着材で固定する。
【0036】
前記合成樹脂材又は接着材は、加熱すると軟化し、常温になると硬化する線状の高分子構造を有する物質、例えばスチレン系、アクリル系、セルロース系、ポリエチレン系、ビニル系、ナイロン系など熱可塑性を有する合成樹脂材又は接着材であるので、ヘッド1の重心やスィートスポットの位置をプレイヤーの要求に応じて繰り返し調整し定着することができる。
【0037】
本実施例では、前記ヘッドが、上下方向の挿通孔11をヘッド1上面から底面に向けて垂直に穿設され、その中に重心調整用の錐体15を螺入する上下方向重心調整機構を備えた場合について説明したが、これに限定されることはなく、前記ヘッド1がフェース面補強板3の表面に対して前後・左右又は斜め方向に傾斜を持って穿設された挿通孔に重心調整用の錐体15を螺入した上下斜め方向重心調整機構を備えたものであってもよい。
また、本実施例では、前記上下方向重心調整機構を一つ備えたヘッド1について説明したが、前記上下方向重心調整機構を2つ以上備えたヘッド1であってもよく、上下斜め方向重心調整機構を複数備えたヘッド1であってもよい。
【実施例2】
【0038】
本願発明のパークゴルフ用クラブの第2の実施例は、図2に示す重心調整用の錘体を前後に移動・調整・定着できる前後方向重心調整機構を備えたヘッド1を有するものである。
本実施例のヘッド1は、前記重心位置を調整する手段として、図2に見られるようにヘッド1の背面からフェース面に向けてフェース面補強板3の表面に対して直角になる向きに穿設された前後方向の挿通孔12の内壁に螺設された雌ねじ14に重心調整用の錘体15を前後方向に移動し定着できるように螺入した前後方向重心調整機構を備えている。
前記重心調整用の錘体15は、前後方向の挿通孔12の所定位置まで螺入された後、熱可塑性合成樹脂材又は接着材で固定され、さらに前記前後方向の挿通孔12には蓋5がその表面とヘッド1背面とが一致するまで螺入されて封じられ、前記錘体15と同様に熱可塑性合成樹脂材又は接着材で固定される
なお、この場合のバックプレート6は、前記前後方向の挿通孔12及び蓋5を避ける形状に加工され、また前記前後重心位置調整用の錘体15は、比重の大きな素材、例えば鉛等で作られることが好ましい。
【0039】
本実施例では、前記ヘッドが、背面からフェース面に向けてフェース面補強板3の表面と直角になる向きで穿設された前後方向の挿通孔12に重心調整用の錐体15を螺入した前後方向重心調整機構を備えた場合について説明したが、これに限定されることはなく、前記ヘッドがフェース面に対し前後・左右又は斜め方向に傾斜を持って穿設された挿通孔に重心調整用の錐体15を螺入した前後斜め方向重心調整機構を備えたものであってもよい。
また、本実施例では、前後方向重心調整機構を一つ備えたヘッド1について説明したが、前記前後方向重心調整機構を2つ以上備えたヘッド1であってもよく、前後斜め方向重心調整機構を複数備えたヘッド1であってもよい。
なお上記以外の構成及び作用は、実施例1と同じである。
【実施例3】
【0040】
本願発明のパークゴルフ用クラブの第3の実施例は、図3に示すように、実施例1で述べた上下方向重心調整機構と、実施例2で説明した前後方向重心調整機構とを併せ備えたヘッド1を有するものである。
本実施例の上下方向重心調整機構及び前後方向重心調整機構それぞれの構成、作用は、実施例1及び実施例2で記述したとおりであり、楓などの天然木や圧接合板を同じ外形寸法に切り出して作られるヘッド1の重心の位置を前記上下方向重心調整機構、及び前後方向重心調整機構によって容易に移動・調整・定着できるので、多量に生産するヘッドごとにばらつく重心の位置を簡単、かつ正確にそろえることができ、またプレイヤーの要求に応じて最も打ちやすい位置に定位させることもできる。
図3では、上下方向重心調整機構及び前後方向重心調整機構をそれぞれ一つ併用した場合を示したが、前記上下方向重心調整機構と前後方向重心調整機構のいずれか一方または双方を複数個備えたヘッド1であってもよい。
なお上記以外の構成及び作用は実施例1と同じである。
【実施例4】
【0041】
本願発明のパークゴルフ用クラブの第4の実施例は、図4に示ように、上下斜め方向重心調整機構と前後方向重心調整機構をそれぞれ複数個備えたヘッド1を有するものである。
本実施例は、ヘッド1のシャフト嵌設用孔2より後方に、面から底面に向けてフェース面補強板3の表面と平行で、かつシャフト嵌設用孔2の傾斜角度に近似した角度を持つ2つの上下斜め方向の挿通孔13がヘッド1の中心軸面に対して対称的な位置に対象的に穿設され、該上下斜め方向の挿通孔13の内壁に螺刻された雌ねじ14に重心位置調整用の錘体15がそれぞれ上下斜め方向に移動し定着できるように螺入された一対の上下斜め方向重心調整機構が備えられ、また、ヘッド1の背面からはフェース面に向けてフェース面補強板3の表面に対して直角になる向きに2つの前後方向の挿通孔12が穿設され、その内壁に螺設された雌ねじ14に重心調整用の錘体15を前後方向に移動し定着できるように螺入した一対の前後方向重心調整機構を備えている。
【0042】
前記2つの重心調整機構それぞれの前記重心位置調整用の錘体15は、所定位置まで螺入後に熱可塑性合成樹脂材又は接着材で固定され、その後、それぞれ2つの挿通孔は蓋5をその表面がヘッド1上面又は背面と一致するまで螺入することによって封じられ、さらに前記錘体15と同様に熱可塑性合成樹脂材又は接着材で固定される。
【0043】
本実施例のように構成することによって、楓などの天然木や圧接合板を使用して同じ外形寸法にヘッド1を切り出して作るヘッド木質部の重心の位置が上下、前後さらに斜め方向に複雑にばらついていても前期上下斜め方向重心調整機構及び前期前後重心調整機構を複数備え、複数の錘体位置を簡単にかつ微妙に移動・調整・定着することによって、多量に生産するヘッドごとに上下、前後、さらに斜めのあらゆる方向にばらつく重心の位置を、簡単に、かつ緻密、正確に定位させることができ、またプレイヤーの要求に応じて最も打ちやすい位置に定位させることもできる。
【0044】
本実施例では2つの上下斜め方向重心調整機構を、その上下斜め方向の挿通孔13がフェース補強板に平行で、かつシャフト嵌設用孔2の傾斜角度に近似した角度で穿設されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、実施例1に示したヘッド1の上面から底面に向けて垂直に穿設された上下方向の挿通孔11を持つ上下方向重心調整機構を2つ使うものであってもよい。この場合、ヘッド1の背面に備える前後重心調整機構は、1つとすることが好ましいがそれに限られるものではない。
さらに前記前後方向重心調整機構に代えて前後斜め方向重心調整機構を上下方向重心調整機構又は上下斜め方向重心調整機構のいずれかと併せ使用することも可能である。
なお、その他の構成及び作用は実施例1と同様である。
【実施例5】
【0045】
本願発明のパークゴルフ用クラブの第5の実施例は、図5に示ように、ヘッド1の背面に穿設された溝部16に挿入された重心調整用の錐体26を前後方向に移動して定着する手段の前後方向重心調整機構を前記溝部16に沿って左右に摺動するスライド機構を備えたヘッド1を有するものである。
【0046】
本実施例は、ヘッド1の背面からフェース面に向けてフェース面補強板3の表面と直角な向きに、前記前後方向重心調整機構を左右に摺動可能にする溝部16が、ヘッド1のヒール7とトウ8を結ぶ直線に沿って所定の長さを有して穿設され、該溝部16に調整ねじ21の回動によって前後に移動し定着する扁平な重心調整用の錐体26が挿入されている。
そして前記溝部16は、前記調整ねじ21を回動したときに前記扁平な重心調整用の錐体26が調整ねじの動きに同調して回動しないように、前記重心調整用の錐体26の高さとほぼ同一寸法の高さに形成されている。
【0047】
前記調整ねじ21は、雄ねじとして形成され、前記錘体26の中心に螺刻された雌ねじ部に螺入されている。したがって、調整ねじ21を回動することにより、錘体26は前記溝部内を前後に摺動移動する。
一方ヘッド1の背面には前記溝部16を覆うように、スライド用孔24が穿設された調整ねじ固定板23がねじ止めされており、前記調整ねじ21の先端は、前記スライド用孔24に挿通され、前記調整ねじ21が前記スライド用孔24に沿って左右に摺動可能に装着されている。
また、前記調整ねじ21は、フランジ22を有し、前記調整用ねじ21をスライド用孔24に沿って左右に摺動した後、前記フランジ22とナット25とで前記調整ねじ固定板23を挟んで固定し、しかる後に、前記調整ねじ21とナット25、及びナット25と調整ねじ固定板23とが熱可塑性合成樹脂材又は接着材で固定される。
なおこの場合、バックプレート6は、調整ねじ固定板23の装着を妨げない形状に加工されることはいうまでもない。
【0048】
このように、前後方向重心調整機構と同機構を左右に摺動するスライド機構を備えたことにより、パークゴルフ用クラブのヘッドの重心の位置を容易に移動することができるので、同一外形寸法で多量に生産されるヘッドの重心の位置を簡単、かつ正確にそろえることができる。
また、前後方向重心調整機構と同機構を左右に摺動するスライド機構を備えたことにより、パークゴルフ用クラブのヘッドの重心の位置を容易に移動することができるので、プレイヤーの要求に応じてヘッド1の重心をプレイヤーが最もプレイしやすい位置に定位させることもできる。
【0049】
本実施例では、ヘッド1の背面に穿設された溝部16に挿入された重心調整用の錐体26を前後方向に移動して定着する手段の前後方向重心調整機構を前記溝部16に沿って左右に摺動するスライド機構を備えたヘッド1について説明したが、これにヘッド1の上面に1又は複数の上下方向重心調整機構又は上下斜め方向重心調整機構のいずれかを併せ備えてもよい。
なお、その他の構成及び作用は実施例1と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
パークゴルフは、いつでも、だれでも、どこででもプレイできるスポーツとして全国に普及し、子供から高齢者まで幅広く愛されている。本発明のパークゴルフ用クラブは、大きくて重量のあるクラブヘッドの重心の位置を、技術力や体力の低い人でも楽にプレイできるように簡単、かつ正確に調整し定着でき、かつ安価に提供できるので、産業上の利用可能性は大きなものがある。
またこの技術は、グランドゴルフや通常のゴルフのクラブに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】重心調整用の錘体を上下に移動・調整・定着できる上下方向重心調整機構を備えた本願発明パークゴルフ用クラブ第1実施例のヘッド外観図
【図2】重心調整用の錘体を前後に移動・調整・定着する前後方向重心調整機構を備えた本願発明パークゴルフ用クラブ第2実施例のヘッド外観図
【図3】上下方向重心調整機構と前後方向重心調整機構を併せ備えた本願発明パークゴルフ用クラブの第3実施例のヘッド外観図
【図4】上下方向重心調整機構と前後方向重心調整機構をそれぞれ複数個備えた本願発明のパークゴルフ用クラブ第4実施例のヘッド外観図
【図5】前後方向重心調整機構をヘッド背面で左右に移動可能とするスライド機構を備えた本願発明パークゴルフ用クラブ第5実施例のヘッド外観図
【符号の説明】
【0052】
1:ヘッド
2:シャフト嵌設用孔
3:フェース面補強板
4:底面補強板
5:蓋
6:バックプレート
7:ヒール
8:トウ
11:上下方向の挿通孔
12:前後方向の挿通孔
13:上下斜め方向の挿通孔
14:雌ねじ
15:錐体
16:溝部
21:調整ねじ
22:フランジ
23:調整ねじ固定板
24:スライド用孔
25:ナット
26:錘体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パークゴルフ用クラブにおいて、同クラブのヘッドが、その木質母材に穿設された挿通孔と、同挿通孔内を摺動可能に配設された重心調整用の錘体と、同錘体を前記挿通孔内で移動・定着させる錐体移動・定着手段からなる重心調整機構を備えてなることを特徴とするパークゴルフ用クラブ。
【請求項2】
前記ヘッドが、その木質母材の上面から垂直に穿設された1又は複数の上下方向挿通孔と、同上下方向挿通孔内で上下に摺動可能な錘体と、同錘体の移動量を調整し、かつ調整位置に定着させる錘体移動・定着手段からなる上下方向重心調整機構を備えてなることを特徴とする請求項1に記載のパークゴルフ用クラブ。
【請求項3】
前記ヘッドが、ヘッドの木質母材の上面から下方に向けて斜め方向に穿設された1又は複数の上下斜め方向挿通孔と、同上下斜め方向挿通孔内で上下斜め方向に摺動可能な錘体と、同錘体の移動量を調整し、かつ調整位置に定着させる錘体移動・定着手段とからなる上下斜め方向重心調整機構を備えてなることを特徴とする請求項1に記載のパークゴルフ用クラブ。
【請求項4】
前記ヘッドが、ヘッドの木質母材の背面に穿設された1又は複数の前後方向挿通孔と、同前後方向挿通孔内で前後に摺動可能な錘体と、同錘体の移動量を調整し、かつ調整位置に定着させる錘体移動・定着手段からなる前後方向重心調整機構を備えてなることを特徴とする請求項1に記載のパークゴルフ用クラブ。
【請求項5】
前記ヘッドが、ヘッドの木質母材に背面から前方に向けて斜め方向に穿設された1又は複数の前後斜め方向挿通孔と、同前後斜め方向挿通孔内で前後斜め方向に摺動可能な錘体と、同錘体の移動量を調整し、かつ調整位置に定着させる錘体移動・定着手段からなる前後斜め方向重心調整機構を備えてなることを特徴とする請求項1に記載のパークゴルフ用クラブ。
【請求項6】
パークゴルフ用クラブにおいて、そのヘッドが、
請求項2又は3に記載の上下方向重心調整機構又は上下斜め方向重心調整機構のいずれかと、請求項4又は5に記載の前後方向重心調整機構又は前後斜め方向重心調整機構のいずれかとを併せ備えてなることを特徴とする請求項1に記載のパークゴルフ用クラブ。
【請求項7】
パークゴルフ用クラブにおいて、同クラブのヘッドが、ヘッドの木質母材の背面に穿設された溝部と、同溝部内で前後に移動可能な1又は複数の錐体と、前記錐体の移動量を調整し、かつ調整位置に定着させる前後方向錐体定着手段と、前記錐体と前後錐体移動・定着手段とを前記溝部内で左右に摺動し、摺動位置に定着させるスライド機構からなる前後及び左右重心調整機構を備えてなることを特徴とするパークゴルフ用クラブ。
【請求項8】
パークゴルフ用クラブにおいて、そのヘッドが、
請求項2又は3に記載の上下方向重心調整機構又は上下斜め方向重心調整機構のいずれかと、請求項7に記載の前後及び左右重心調整機構とを併せ備えてなることを特徴とするパークゴルフ用クラブ。
【請求項9】
前記錘体が、移動調整・定着手段によって移動量を調整された後、合成樹脂材又は接着材で固定されてなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のパークゴルフ用クラブ。
【請求項10】
前記合成樹脂材又は接着材が、熱可塑性の合成樹脂材又は接着材であることを特徴とする請求項9に記載のパークゴルフ用クラブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−288793(P2006−288793A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114467(P2005−114467)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(505014465)
【Fターム(参考)】