ヒートシンク
【課題】所定間隔で積層された放熱フィンのそれぞれが、最上層の放熱フィンまたは最上層の放熱フィンに接続されたヒートパイプに直接的に接合され、且つ、放熱フィン間の空気の流れが可能な、熱効率に優れたヒートシンクを提供する。
【解決手段】所定部分を切り込み、屈曲して起こして形成した、垂直部および水平部からなる概ねＬ字形の切り起こし部、および、切り起こしによって形成された開口部を備えた複数枚の薄板状体を、前記水平部が別の薄板状体に熱的に接続されて積層されて形成されたヒートシンク。
【解決手段】所定部分を切り込み、屈曲して起こして形成した、垂直部および水平部からなる概ねＬ字形の切り起こし部、および、切り起こしによって形成された開口部を備えた複数枚の薄板状体を、前記水平部が別の薄板状体に熱的に接続されて積層されて形成されたヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
この発明は、発熱部品等に熱的に接続されて発熱部品の熱を放熱するためのヒートシンク、特に、薄板材を加工して製作した薄板フィン材を積層して形成されたヒートシンクに関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、エレクトロニクス機器は、ＣＰＵ等の高出力、高集積の部品を内蔵している。半導体素子等の各種電子部品は、集積度が極めて高くなり、高速で情報の演算、制御等の処理を行うので、多量の熱を発生する。また、その他の機器においても熱の発生を伴う機器が増え、これらの機器においても放熱処理が重要な課題になっている。一方で、機器が発する熱を処理するために使用できるスペース、特に高さが制限されている。
【０００３】
これらの機器が発する熱を処理するために、各種ヒートシンクが用いられている。例えば、押し出し成形によるベースプレート部と放熱フィン部が一体的に形成されたヒートシンク、別々に作製された金属製のベースプレートと金属製の放熱フィンとを組み合わせたヒートシンク等がある。
【０００４】
即ち、別々に作製された金属製のベースプレートと金属製の放熱フィンとを組み合わせたヒートシンクは、一方の面に発熱素子が熱的に接続されるベースプレートの他方面に複数の薄板の放熱フィンを半田等によって接合して形成されたヒートシンクである。その他に、複数の溝部を備えたベースプレートの溝部に薄板フィンを挿入して、溝部の周辺部を機械的にカシメて、放熱フィンをベースプレートに接合するヒートシンクがある。
【０００５】
更に、放熱性に優れた部材で一体的に形成された上面部、底面部、および、上面部と底面部を接続する接続部からなる概ねコの字形の部材からなる放熱フィン部がある。この放熱フィン部の底面部には発熱素子等が熱的に接続される。更に、このように形成された放熱部を、例えば爪部、爪受け部によって、複数個並列に接続して、底面部が全体として平らな受熱面を形成するヒートシンクが知られている。
【０００６】
上述したようなヒートシンクと、強制冷却用のファンとを組み合わせて、発熱素子の熱が伝わった放熱フィンの間に冷たい空気を吹き付けて、発熱素子を冷却する方法が広く知られている。更に、発熱素子と放熱フィンとが離隔して配置されている場合に、発熱素子と放熱フィンとをヒートパイプによって熱的に接続し、発熱素子の熱をヒートパイプによって別の位置に配置された放熱フィンまで移動して、冷却用のファンによって冷却することも知られている。
【０００７】
更に、効果的な放熱機器として、空気取り入れ口および空気排出口を備えた筐体に遠心ファンを取り付けて発熱素子を冷却する遠心ファン付ヒートシンクが知られている。遠心ファン付ヒートシンクにおいては、通常、ファンの回転軸に垂直方向に、複数枚の放熱フィンを所定間隔で積層して使用する。遠心ファン付ヒートシンクは、空気取り入れ口から取り入れた空気を、遠心ファンを回転させて、周囲に吹き付け、直接または筐体の壁面に誘導されて空気排出口近傍に配置された放熱フィンを通って空気を筐体外に排出している。放熱フィンにはヒートパイプが熱的に接続されて発熱素子の熱が移動され、上述したファンによって吹き付けられた空気によって放熱フィンに移動した発熱素子の熱が放散される。
【特許文献１】特開２００５−３８９８５号公報
【特許文献２】特開２００５−３２１２８７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
発熱素子の熱を処理するヒートシンクを設置する空間が限定される。特に薄型パソコン等に内蔵する場合は、ヒートシンクの設置空間の制限が強くなる。遠心ファン付ヒートシンクを用いる場合も、そのファンによって形成される風がいろいろな向きに放射される場合があり、その風の流れをあまり阻害せずに効率よくヒートシンクの冷却性能を実現することが望まれていた。また、限られた設置空間の中でヒートシンクの性能向上や静音性の向上も望まれていた。 特に薄型パソコン等に内蔵する場合、遠心ファン付ヒートシンクの場合は、回転軸に垂直な方向に所定間隔で積層された放熱フィンの間の熱伝導を行うために、放熱フィンの一部にエンボス加工、バーリング、絞り加工等を施して、それらを接合させて、放熱フィン間の熱伝導を行っていた。
【０００９】
このように放熱フィンにエンボス加工等を施してそれらを接合すると、積層された放熱フィンの最下部の放熱フィンから最上部の放熱フィンへの熱伝導は、何層もの放熱フィンを経由するので、熱の移動が円滑に行われなかった。別部品の軸を使用して、積層された放熱フィン間の熱伝導を図る方式もあるが、製造コストが高くなり、組立てにも時間労力が必要であった。更に、積層された放熱フィン間の空気の移動が制限され、効果的な放熱が阻害されていた。
【００１０】
従って、この発明の目的は、所定間隔で積層された放熱フィンのそれぞれが、最上層の放熱フィンまたは最上層の放熱フィンに接続されたヒートパイプに直接的に接合され、且つ、放熱フィン間の空気の流れが可能な、熱効率に優れたヒートシンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
発明者は従来の問題点を解決するため、鋭意研究を重ねた。その結果、一枚板のフィンの適当な場所を概ねＬ字形に切り起こし、熱伝導したいフィンに、Ｌ字形の先端部の水平な部分を直接接合できるようにする、更に、その下層に位置するフィンの切り起こし部は、上層に位置するフィンの切り起こし部に形成された開口部を貫通し、その上の、熱を伝導したいフィンに接合するように、複数枚のフィンを積層すると、積層させた何れのフィンも熱伝導したいフィンに直接接合することができることが判明した。
【００１２】
更に、切り起こし部によって積層されたフィン間を風が流れることができ、放熱効率が向上することが判明した。
更に、切り起こす部分の向きを適切に設定することによって、遠心ファンによって送られた風の流れが阻害されるのを極力押さえて導き、且つ、それ自体を放熱部として使用することができることが判明した。
【００１３】
この発明のヒートシンクの第１の態様は、所定部分を切り込み、屈曲して起こして形成した、垂直部および水平部からなる概ねＬ字形の切り起こし部、および、切り起こしによって形成された開口部を備えた複数枚の薄板状体を、前記水平部が別の薄板状体に熱的に接続されて積層されて形成されたヒートシンクである。
【００１４】
この発明のヒートシンクの第２の態様は、前記薄板状体の前記Ｌ字形の切り起こし部が、別の薄板状体に形成せれた前記開口部を貫通して、前記水平部が所定の薄板状体に熱的に接続されている、ヒートシンクである。
【００１５】
この発明のヒートシンクの第３の態様は、前記Ｌ字形の切り起こし部の垂直部の高さが異なっている、ヒートシンクである。
【００１６】
この発明のヒートシンクの第４の態様は、前記薄板状体の一部に形成された概ね円形の開口部を備えており、前記複数枚の薄板状体を積層することによって形成される円柱状の空洞部に、遠心ファンが収容される、ヒートシンクである。
【００１７】
この発明のヒートシンクの第５の態様は、前記Ｌ字形の切り起こし部が、遠心ファンの風を所望の方向に誘導するように配置されている、ヒートシンクである。
【００１８】
この発明のヒートシンクの第６の態様は、積層された前記薄板状体の最上部の薄板状体に、ヒートパイプが熱的に接合され、積層された前記薄板状体の各々の前記Ｌ字形の切り起こし部が前記水平部を介して前記最上部の薄板状体に熱的に接続されている、ヒートシンクである。
【００１９】
この発明のヒートシンクの第７の態様は、前記薄板状体が一枚板材からなり、前記Ｌ字形の切り起こし部によって誘導された空気が放出される、積層された前記薄板状体の端部が、放熱部として機能する、ヒートシンクである。
【００２０】
この発明のヒートシンクの第８の態様は、積層された前記薄板状体の端部に放熱フィン部を備えており、前記Ｌ字形の切り起こし部が、遠心ファンの風を前記放熱フィン部に導くように配置されている、ヒートシンクである。
【００２１】
この発明のヒートシンクの第９の態様は、前記ヒートパイプの一部が前記薄板状体から外側にはみだした部分によって、前記薄板状体との間に空間部が形成され、前記空間部を形成して配置された前記ヒートパイプの部分の上面および下面を、冷却用の空気が流れるようにヒートパイプが配置されている、ヒートシンクである。
【００２２】
この発明のヒートシンクの第１０の態様は、最上部の前記薄板状体に別の切込みを形成し、切り込み部を屈曲して、一枚の薄板状体の部分によって前記ヒートパイプを挟むように固定している、ヒートシンクである。
【発明の効果】
【００２３】
この発明によると、一枚板のフィンの適当な場所を概ねＬ字形に切り起こし、熱伝導したいフィンに、Ｌ字形の先端部の水平な部分を直接接合し、更に、その下層に位置するフィンの切り起こし部は、上層に位置するフィンの切り起こし部に形成された開口部を貫通し、その上の、熱を伝導したいフィンに接合するように、複数枚のフィンを積層するので、積層させた何れのフィンも熱伝導したいフィンに直接接合することができる。
【００２４】
更に、この発明によると、切り起こし部によって積層されたフィン間を風が流れることができ、放熱効率を向上させることができる。更に、この発明によると、切り起こす部分の向きを適切に設定することによって、遠心ファンによって送られた風の流れが阻害されるのを極力押さえて導き、且つ、それ自体を放熱部として使用することができる。
更に、上述したように、風の流れが阻害されるのを極力抑制されるので、ヒートシンクの性能が向上し、静音性も向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２５】
この発明のヒートシンクの態様を、図面を参照して詳細に説明する。
この発明のヒートシンクの第１の態様は、所定部分を切り込み、屈曲して起こして形成した、垂直部および水平部からなる概ねＬ字形の切り起こし部、および、切り起こしによって形成された開口部を備えた複数枚の薄板状体を、水平部が別の薄板状体に熱的に接続されて積層されて形成されたヒートシンクである。
薄板状体は、薄板材、例えば、熱伝導性に優れた銅、アルミニウム、アルミニウム合金等の加工性の高い金属薄板材からなっている。
【００２６】
図１は、切り起こし部および切り起こしによって形成された開口部を備えた薄板材の１つの例を示す斜視図である。図１に示すように、薄板材２は、一枚板からなり、一部が加工された薄板材からなっている。即ち、薄板材２の所定部分を切り込み、切り込んだ部分を屈曲して起こして形成した、垂直部１２および水平部１３からなる概ねＬ字形の切り起こし部１１、および、切り起こしによって生じた開口部１０を備えている。切り込みは、例えば、コの字形に３片に切り込みを入れて行われている。このように、薄板材２は加工性に富んでいるので、状況に対応して、さまざまな加工が可能である。
【００２７】
切り起こし部１１は、複数枚の加工された薄板材２が積層されたときに、垂直部１２が薄板材間の高さを規定し、水平部１３が他の薄板材２と接合されて熱的に接続される。このように、切り起こし部１１は、薄板材２間での熱伝導の働きをする機能を有している。さらに、切り起こし部１１の垂直部１２は、壁面として所定位置に配置されて、積層された複数の薄板材２の間を通る冷却風を所望の方向に誘導する誘導部として機能する。遠心ファンによって生じた風の流れの一例を矢印で示す。図１に矢印で示すように、所定位置に配置された複数の切り起こし部１１の垂直部１２が壁面として、風の流れを規制して、遠心ファンによって生じた風が、所望の方向に誘導される。
【００２８】
このように、切り起こし部１１の形状および大きさは、他の薄板材２との接続による熱伝導および冷却風の誘導方向によって各種設定することができる。加工性に優れた薄板材は、各種状況に対応でき、極めて設計自由に富んでいる。切り起こしによって生じた開口部１０は、積層された薄板材２の間の冷却風の移動を容易にすると共に、開口部１０を使用して、所望の薄板材２に、他の薄板材２の切り起こし部１１の垂直部１２を連絡することができる。
【００２９】
例えば、最下部の薄板材２の切り起こし部１１の垂直部１２を長く形成して、他の薄板材２の切り起こしによって生じた開口部１０を貫通して最上部の薄板材２の裏面に水平部１３を熱的に接続して接合する。このようにして、所望の薄板材２との間の熱的な連絡が可能で、所望の薄板材２に熱を伝導することができる。なお、薄板材２の形状は、遠心ファンの配置箇所、ヒートシンクとして利用できるスペース等によって、適宜設定することができる。
【００３０】
図２は、複数枚の加工した薄板材を積層する状態を説明する図である。図２においては、加工した薄板材を４枚積層する状態を示している。積層する薄板材を斜め下方から見た状態を示している。４枚の積層する薄板材２−１、２−２、２−３、２−４の最下部に位置する薄板材２−４に示すように、それぞれ所望の方向に切り起こして形成された複数の切り起こし部１１が設けられている。
【００３１】
切り起こし部１１は、矩形の３辺に切り込みを入れて、切り起こし、先端部を水平方向に屈曲して、それぞれ垂直部１２と水平部１３からなる概ねＬ字形に形成されている。切り起こし部１１の水平部１３は、他の薄板材との間の熱的な接続を容易にするために平らな面に形成されている。切り起こしによって生じた複数の開口部１０が薄板材２に備わっている。
【００３２】
この態様では、薄板材２−４の切り起こし部の高さ（垂直部の高さ）は概ね同一である。同様に、残りの３枚の薄板材２−１、２−２、２−３にも、概ね対応した位置に対応した大きさの、垂直部１２および水平部１３からなる切り起こし部１１が形成されている。最上部の薄板材２の表面には、扁平型のヒートパイプ４が薄板材２の周辺部を囲むようにして接合されて、熱的に接続されている。このように加工された薄板材２−１、２−２、２−３、２−４を、それぞれの切り起こし部１１の水平部１３が、積層されて隣接する薄板材２の裏面に熱的に接続される。切り起こし部１１の垂直部１２は、壁面のように位置して、遠心ファンからの冷却用空気の流れを所望の方向に規制して誘導するように、その方向が設定されている。なお、切り起こし部の垂直部は、それ自体が放熱部材としても機能している。
【００３３】
上述した４枚の加工された薄板材２が積層されると、薄板材２は切り起こし部１１の水平部１３で接合されているので、積層された薄板材２の相互の間で熱の伝導が行われ、更に、切り起こしによって生じた開口部１０を通って冷却用空気が、最下部から最上部の薄板材の間で相互に連絡することができる。このようにして、最上部の薄板材２に伝わったヒートパイプの熱は、その他の薄板材２に伝導され、遠心ファンによって、放熱部８、１４に向かって移動される。
【００３４】
切り起こし部１１の垂直部１２の高さは、適宜設定することができる。図３は、異なる高さの垂直部１２を有する切り起こし部１１を組み合わせた状態を説明する部分拡大図である。図３に示すように、薄板材２間で、切り起こし部１１の垂直部１２の高さを変化させている。最下部の薄板材２は、垂直部１２−３、水平部１３−３からなる切り起こし部１１を備えている。下から２番目の薄板材２は、垂直部１２−２、水平部１３−２からなる切り起こし部１１を備えている。
【００３５】
図３に示すように、例えば、下側にある薄板材２−３の切り起こし部１１を垂直部１２−３が長く（高く）なるように設定し、薄板材２−２の開口部１０を貫通して、薄板材２−１の裏面に切り起こし部１１の水平部１３−３が接合されて熱的に接続されるようにする。このように、薄板間の間隙の大きさ等、状況に対応して、垂直部１２の高さを変化させることができる。例えば、４枚の積層された薄板材２の下部に位置する薄板材２の垂直部１２を最上部の薄板材２に直接接合させて、最上部の薄板材２に熱的に接続されたヒートパイプ４の熱を、切り起こし部１１を介して直接最下部の薄板材２に移動させて、冷却効率を高めることができる。１つの切り起こし部を別の薄板材の開口部を貫通して薄板材の裏面に接合する際、切り起こし部の位置が重なっているので、切り起こし部の水平部を重ねてもよいし、水平部の屈曲方向を変更して、重ならないように接合してもよい。
【００３６】
図４は、この発明のヒートシンクの１つの態様を説明する斜視図である。この発明のヒートシンクは、上述した薄板材を積層し、中央部に遠心ファンを備えている。
全体の高さを制限するために、最上部の薄板材に熱的に接続されたヒートパイプは、扁平型ヒートパイプを使用することができる。
【００３７】
図４に示すように、薄型ヒートシンク１は、加工した薄板材２を積層し、高さが限定された状態でも遠心ファンへの吸気口への空気の取り入れが容易であるように、ヒートパイプ４を配置している。即ち、薄型ヒートシンク１は、積層された薄板材２と、積層された薄板材の最上部に空間部を備えて接合された扁平型ヒートパイプ４と、積層された薄板材の端部に取り付けられた放熱フィン８および積層された薄板材の端部を使用した放熱フィン１４とを備えている。
【００３８】
複数の所定形状の薄板材２は、概ね中央部分に（図示しない）遠心ファンを収納する円形の開口を備えている。薄板材は所定間隙で積層され、円形の開口によって遠心ファンを収納する円柱状の空洞部が形成される。積層された薄板材は、遠心ファンを収納するケースの一部を形成している。積層された薄板材は、加工して形成された空気誘導部を備えている。
【００３９】
放熱フィン部８は、薄板材２の端部に接続され、薄板材２の空気誘導部に導かれた空気がその中を通る。扁平型のヒートパイプ４は、一方の端部５が発熱部品と熱的に接続された薄板材の部分に熱的に接続され、他方の端部６が薄板材の端部を利用した放熱フィン部１４に熱的に接続され、少なくとも一部が外側にはみだすように配置されて、薄板材２との間に、空間部７を備えている。遠心ファン付ヒートシンクでは、通常、積層された薄板材の最上部に吸気口を囲むようにして薄板材の端部に全面が接合されることが多い。
【００４０】
この発明の薄型ヒートシンクでは、上述したように、一部を積層した薄板材の外部に突き出すように配置され、遠心ファンへの吸気口への空気の流れを容易にしている。放熱フィン部の数と対応して、複数本のヒートパイプが使用される。図４に示す態様では、２本の扁平型ヒートパイプを使用して、積層された薄板材の全周に沿って取り付けられている。
【００４１】
図４を参照して、更に詳細に説明する。
図４に示すように、このように積層された薄板材２の最上部の薄板材２−１の表面に、扁平型ヒートパイプ４が接合されて熱的に接続される。図４に示す態様では、２本の扁平型ヒートパイプ４−１、４−２が配置されている。ヒートパイプ４−１、４−２は、発熱部品が熱的に接続された薄板材２−１の部分に吸熱部としての一方の端部５−１、５−２が接合されて熱的に接続される。図４に示すように、それぞれのヒートパイプ４−１、４−２は、積層された薄板材２との間に、空間部７を備えて配置されている。
【００４２】
即ち、ヒートパイプ４−１、４−２は、同一面内に配置されて、一部が積層された薄板材２の外側に突き出すようにして配置されて、薄板材２との間に空間部７がそれぞれ形成される。従来は、最上部の薄板材の上面に、吸気口を囲むように、全面を接合させて熱的に接続していたが、高さが制限されると、遠心ファンの吸気口への空気の取り込みが困難になる。
【００４３】
この問題点を解決するために、この発明では、ヒートパイプ４−１、４−２を吸気口３の周りを囲むようにして全面にわたって薄板材２−１に接合させるのではなく、上述したように、ヒートパイプ４−１，４−２の一部を同一面上で薄板材２の外側に突き出すようにして配置して、薄板材２との間に空間部７を形成させている。このように同一面上で、ヒートパイプ４−１、４−２の一部を薄板材２の外側に突き出すと、ヒートシンク１全体の厚さは変わらず、吸気口３への空気の流れを大きくすることができる。
【００４４】
その結果、遠心ファンを回転させると、外側に突き出て薄板材２との間に空間部７を形成しているヒートパイプ４−１、４−２部分の上面および下面の両側を通って冷たい空気が吸気口３に向かって流れる。従って、ヒートパイプ４−１、４−２の一部を、吸気口３へ流れる冷たい空気によって冷却することができる。更に、外側に突き出て薄板材２との間に空間部７を形成しているヒートパイプ４−１、４−２の部分に（図示しない）別の放熱フィン部を接続すると、吸気口３に向かって流れる冷たい空気によって、ヒートパイプ４−１、４−２が冷却され、一層冷却効率が高まる。
【００４５】
ヒートパイプ４−１、４−２は、外側に突き出て薄板材２との間に空間部７を形成した後、薄板材２の最上部の表面に戻り、放熱フィン部８、１４に接合されて熱的に接続される。例えば、積層された薄板材２の最上部の一部９が、屈曲されて、両側からヒートパイプ４−１、４−２を挟みつけるようにしてもよい。こうすることによって、加工された薄板材２によって、ヒートパイプ４の放熱部６が薄板材の端部に接合されて熱的に接続される。
【００４６】
この発明のヒートパイプの１つの態様においては、２種類の放熱フィン部８、１４を備えている。一方の放熱フィン部８は、加工され積層された薄板材２の端部に取り付けられた複数の薄板材からなる第１の放熱フィン部である。第１の放熱フィン部８のフィンは遠心ファンの軸方向に平行（即ち、垂直方向）に配置されている。第１の放熱フィン部８は、例えば、底面、垂直面、上面からなる断面が概ねコの字形の板材を複数枚並列に配置して、垂直面が遠心ファンの軸方向に平行に配置されている。
【００４７】
上面および底面は複数個のフィンが並列配置されて、平らな面を形成している。一方の面は、例えば、図４に示すように、受熱面を形成して、ヒートパイプ４−１、４−２の下面に接合されて熱的に接続されている。第１の放熱フィン部８−１、８−２は、例えば、積層された薄板材２の中を誘導された風が、第１の放熱フィン部８−１、８−２の垂直面に概ね平行に流れる、ヒートシンクの隅部に配置される。第１の放熱フィン部８−１、８−２は図４に示すように、ヒートパイプ４−１、４−２の数と同じ数を配置することができる。
【００４８】
他方の放熱フィン部は、積層された薄板材２の端部が、第２の放熱フィン部１４を形成する。即ち、図４に示すように、扁平型ヒートパイプ４−１、４−２の放熱部６−１、６−２が接合され熱的に接続されている薄板材の部分１４−１、１４−２が、遠心ファンの軸方向に直交する方向（即ち水平方向）に並列に配列されている。
【００４９】
この部分は、積層された薄板材２に、加工によって形成された切り起こし部１１の垂直部１２によって誘導され、排気口に斜め方向に流れる風（曲線の風を含む）が通過する。上述したように、遠心ファンの風の流れに対応した形状の複数種類の放熱フィン部８、１４を設けることによって、積層された薄板材の間を流れる風の流れが円滑になり、放熱効果を高めることができる。
【００５０】
なお、薄板材の一部に形成された概ね円形の開口を備えており、複数枚の薄板材を積層することによって形成される円柱状の空洞部に、遠心ファンが収納される。
【００５１】
この発明によると、空気取り入れ口の周りを囲むようにヒートパイプを配置しても、遠心ファンの吸気が容易で、冷却効率に優れた薄型ヒートシンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００５２】
【図１】図１は、切り起こし部および切り起こしによって形成された開口部を備えた薄板材の１つの例を示す斜視図である。
【図２】図２は、複数枚の加工した薄板材を積層する状態を説明する図である。
【図３】図３は、異なる高さの垂直部１２を有する切り起こし部１１を組み合わせた状態を説明する部分拡大図である。
【図４】図４は、この発明の薄型ヒートシンクの１つの態様を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【００５３】
１ ヒートシンク
２ 薄板材
３ 空洞部、吸気口
４ ヒートパイプ
５ ヒートパイプの吸熱部
６ ヒートパイプの放熱部
７ 空間部
８ 放熱フィン部
９ 薄板材の屈曲された一部
１０ 開口部
１１ 切り起こし部
１２ 垂直部
１３ 水平部
１４ 第２の放熱フィン部
【技術分野】
【０００１】
この発明は、発熱部品等に熱的に接続されて発熱部品の熱を放熱するためのヒートシンク、特に、薄板材を加工して製作した薄板フィン材を積層して形成されたヒートシンクに関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、エレクトロニクス機器は、ＣＰＵ等の高出力、高集積の部品を内蔵している。半導体素子等の各種電子部品は、集積度が極めて高くなり、高速で情報の演算、制御等の処理を行うので、多量の熱を発生する。また、その他の機器においても熱の発生を伴う機器が増え、これらの機器においても放熱処理が重要な課題になっている。一方で、機器が発する熱を処理するために使用できるスペース、特に高さが制限されている。
【０００３】
これらの機器が発する熱を処理するために、各種ヒートシンクが用いられている。例えば、押し出し成形によるベースプレート部と放熱フィン部が一体的に形成されたヒートシンク、別々に作製された金属製のベースプレートと金属製の放熱フィンとを組み合わせたヒートシンク等がある。
【０００４】
即ち、別々に作製された金属製のベースプレートと金属製の放熱フィンとを組み合わせたヒートシンクは、一方の面に発熱素子が熱的に接続されるベースプレートの他方面に複数の薄板の放熱フィンを半田等によって接合して形成されたヒートシンクである。その他に、複数の溝部を備えたベースプレートの溝部に薄板フィンを挿入して、溝部の周辺部を機械的にカシメて、放熱フィンをベースプレートに接合するヒートシンクがある。
【０００５】
更に、放熱性に優れた部材で一体的に形成された上面部、底面部、および、上面部と底面部を接続する接続部からなる概ねコの字形の部材からなる放熱フィン部がある。この放熱フィン部の底面部には発熱素子等が熱的に接続される。更に、このように形成された放熱部を、例えば爪部、爪受け部によって、複数個並列に接続して、底面部が全体として平らな受熱面を形成するヒートシンクが知られている。
【０００６】
上述したようなヒートシンクと、強制冷却用のファンとを組み合わせて、発熱素子の熱が伝わった放熱フィンの間に冷たい空気を吹き付けて、発熱素子を冷却する方法が広く知られている。更に、発熱素子と放熱フィンとが離隔して配置されている場合に、発熱素子と放熱フィンとをヒートパイプによって熱的に接続し、発熱素子の熱をヒートパイプによって別の位置に配置された放熱フィンまで移動して、冷却用のファンによって冷却することも知られている。
【０００７】
更に、効果的な放熱機器として、空気取り入れ口および空気排出口を備えた筐体に遠心ファンを取り付けて発熱素子を冷却する遠心ファン付ヒートシンクが知られている。遠心ファン付ヒートシンクにおいては、通常、ファンの回転軸に垂直方向に、複数枚の放熱フィンを所定間隔で積層して使用する。遠心ファン付ヒートシンクは、空気取り入れ口から取り入れた空気を、遠心ファンを回転させて、周囲に吹き付け、直接または筐体の壁面に誘導されて空気排出口近傍に配置された放熱フィンを通って空気を筐体外に排出している。放熱フィンにはヒートパイプが熱的に接続されて発熱素子の熱が移動され、上述したファンによって吹き付けられた空気によって放熱フィンに移動した発熱素子の熱が放散される。
【特許文献１】特開２００５−３８９８５号公報
【特許文献２】特開２００５−３２１２８７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
発熱素子の熱を処理するヒートシンクを設置する空間が限定される。特に薄型パソコン等に内蔵する場合は、ヒートシンクの設置空間の制限が強くなる。遠心ファン付ヒートシンクを用いる場合も、そのファンによって形成される風がいろいろな向きに放射される場合があり、その風の流れをあまり阻害せずに効率よくヒートシンクの冷却性能を実現することが望まれていた。また、限られた設置空間の中でヒートシンクの性能向上や静音性の向上も望まれていた。 特に薄型パソコン等に内蔵する場合、遠心ファン付ヒートシンクの場合は、回転軸に垂直な方向に所定間隔で積層された放熱フィンの間の熱伝導を行うために、放熱フィンの一部にエンボス加工、バーリング、絞り加工等を施して、それらを接合させて、放熱フィン間の熱伝導を行っていた。
【０００９】
このように放熱フィンにエンボス加工等を施してそれらを接合すると、積層された放熱フィンの最下部の放熱フィンから最上部の放熱フィンへの熱伝導は、何層もの放熱フィンを経由するので、熱の移動が円滑に行われなかった。別部品の軸を使用して、積層された放熱フィン間の熱伝導を図る方式もあるが、製造コストが高くなり、組立てにも時間労力が必要であった。更に、積層された放熱フィン間の空気の移動が制限され、効果的な放熱が阻害されていた。
【００１０】
従って、この発明の目的は、所定間隔で積層された放熱フィンのそれぞれが、最上層の放熱フィンまたは最上層の放熱フィンに接続されたヒートパイプに直接的に接合され、且つ、放熱フィン間の空気の流れが可能な、熱効率に優れたヒートシンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
発明者は従来の問題点を解決するため、鋭意研究を重ねた。その結果、一枚板のフィンの適当な場所を概ねＬ字形に切り起こし、熱伝導したいフィンに、Ｌ字形の先端部の水平な部分を直接接合できるようにする、更に、その下層に位置するフィンの切り起こし部は、上層に位置するフィンの切り起こし部に形成された開口部を貫通し、その上の、熱を伝導したいフィンに接合するように、複数枚のフィンを積層すると、積層させた何れのフィンも熱伝導したいフィンに直接接合することができることが判明した。
【００１２】
更に、切り起こし部によって積層されたフィン間を風が流れることができ、放熱効率が向上することが判明した。
更に、切り起こす部分の向きを適切に設定することによって、遠心ファンによって送られた風の流れが阻害されるのを極力押さえて導き、且つ、それ自体を放熱部として使用することができることが判明した。
【００１３】
この発明のヒートシンクの第１の態様は、所定部分を切り込み、屈曲して起こして形成した、垂直部および水平部からなる概ねＬ字形の切り起こし部、および、切り起こしによって形成された開口部を備えた複数枚の薄板状体を、前記水平部が別の薄板状体に熱的に接続されて積層されて形成されたヒートシンクである。
【００１４】
この発明のヒートシンクの第２の態様は、前記薄板状体の前記Ｌ字形の切り起こし部が、別の薄板状体に形成せれた前記開口部を貫通して、前記水平部が所定の薄板状体に熱的に接続されている、ヒートシンクである。
【００１５】
この発明のヒートシンクの第３の態様は、前記Ｌ字形の切り起こし部の垂直部の高さが異なっている、ヒートシンクである。
【００１６】
この発明のヒートシンクの第４の態様は、前記薄板状体の一部に形成された概ね円形の開口部を備えており、前記複数枚の薄板状体を積層することによって形成される円柱状の空洞部に、遠心ファンが収容される、ヒートシンクである。
【００１７】
この発明のヒートシンクの第５の態様は、前記Ｌ字形の切り起こし部が、遠心ファンの風を所望の方向に誘導するように配置されている、ヒートシンクである。
【００１８】
この発明のヒートシンクの第６の態様は、積層された前記薄板状体の最上部の薄板状体に、ヒートパイプが熱的に接合され、積層された前記薄板状体の各々の前記Ｌ字形の切り起こし部が前記水平部を介して前記最上部の薄板状体に熱的に接続されている、ヒートシンクである。
【００１９】
この発明のヒートシンクの第７の態様は、前記薄板状体が一枚板材からなり、前記Ｌ字形の切り起こし部によって誘導された空気が放出される、積層された前記薄板状体の端部が、放熱部として機能する、ヒートシンクである。
【００２０】
この発明のヒートシンクの第８の態様は、積層された前記薄板状体の端部に放熱フィン部を備えており、前記Ｌ字形の切り起こし部が、遠心ファンの風を前記放熱フィン部に導くように配置されている、ヒートシンクである。
【００２１】
この発明のヒートシンクの第９の態様は、前記ヒートパイプの一部が前記薄板状体から外側にはみだした部分によって、前記薄板状体との間に空間部が形成され、前記空間部を形成して配置された前記ヒートパイプの部分の上面および下面を、冷却用の空気が流れるようにヒートパイプが配置されている、ヒートシンクである。
【００２２】
この発明のヒートシンクの第１０の態様は、最上部の前記薄板状体に別の切込みを形成し、切り込み部を屈曲して、一枚の薄板状体の部分によって前記ヒートパイプを挟むように固定している、ヒートシンクである。
【発明の効果】
【００２３】
この発明によると、一枚板のフィンの適当な場所を概ねＬ字形に切り起こし、熱伝導したいフィンに、Ｌ字形の先端部の水平な部分を直接接合し、更に、その下層に位置するフィンの切り起こし部は、上層に位置するフィンの切り起こし部に形成された開口部を貫通し、その上の、熱を伝導したいフィンに接合するように、複数枚のフィンを積層するので、積層させた何れのフィンも熱伝導したいフィンに直接接合することができる。
【００２４】
更に、この発明によると、切り起こし部によって積層されたフィン間を風が流れることができ、放熱効率を向上させることができる。更に、この発明によると、切り起こす部分の向きを適切に設定することによって、遠心ファンによって送られた風の流れが阻害されるのを極力押さえて導き、且つ、それ自体を放熱部として使用することができる。
更に、上述したように、風の流れが阻害されるのを極力抑制されるので、ヒートシンクの性能が向上し、静音性も向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２５】
この発明のヒートシンクの態様を、図面を参照して詳細に説明する。
この発明のヒートシンクの第１の態様は、所定部分を切り込み、屈曲して起こして形成した、垂直部および水平部からなる概ねＬ字形の切り起こし部、および、切り起こしによって形成された開口部を備えた複数枚の薄板状体を、水平部が別の薄板状体に熱的に接続されて積層されて形成されたヒートシンクである。
薄板状体は、薄板材、例えば、熱伝導性に優れた銅、アルミニウム、アルミニウム合金等の加工性の高い金属薄板材からなっている。
【００２６】
図１は、切り起こし部および切り起こしによって形成された開口部を備えた薄板材の１つの例を示す斜視図である。図１に示すように、薄板材２は、一枚板からなり、一部が加工された薄板材からなっている。即ち、薄板材２の所定部分を切り込み、切り込んだ部分を屈曲して起こして形成した、垂直部１２および水平部１３からなる概ねＬ字形の切り起こし部１１、および、切り起こしによって生じた開口部１０を備えている。切り込みは、例えば、コの字形に３片に切り込みを入れて行われている。このように、薄板材２は加工性に富んでいるので、状況に対応して、さまざまな加工が可能である。
【００２７】
切り起こし部１１は、複数枚の加工された薄板材２が積層されたときに、垂直部１２が薄板材間の高さを規定し、水平部１３が他の薄板材２と接合されて熱的に接続される。このように、切り起こし部１１は、薄板材２間での熱伝導の働きをする機能を有している。さらに、切り起こし部１１の垂直部１２は、壁面として所定位置に配置されて、積層された複数の薄板材２の間を通る冷却風を所望の方向に誘導する誘導部として機能する。遠心ファンによって生じた風の流れの一例を矢印で示す。図１に矢印で示すように、所定位置に配置された複数の切り起こし部１１の垂直部１２が壁面として、風の流れを規制して、遠心ファンによって生じた風が、所望の方向に誘導される。
【００２８】
このように、切り起こし部１１の形状および大きさは、他の薄板材２との接続による熱伝導および冷却風の誘導方向によって各種設定することができる。加工性に優れた薄板材は、各種状況に対応でき、極めて設計自由に富んでいる。切り起こしによって生じた開口部１０は、積層された薄板材２の間の冷却風の移動を容易にすると共に、開口部１０を使用して、所望の薄板材２に、他の薄板材２の切り起こし部１１の垂直部１２を連絡することができる。
【００２９】
例えば、最下部の薄板材２の切り起こし部１１の垂直部１２を長く形成して、他の薄板材２の切り起こしによって生じた開口部１０を貫通して最上部の薄板材２の裏面に水平部１３を熱的に接続して接合する。このようにして、所望の薄板材２との間の熱的な連絡が可能で、所望の薄板材２に熱を伝導することができる。なお、薄板材２の形状は、遠心ファンの配置箇所、ヒートシンクとして利用できるスペース等によって、適宜設定することができる。
【００３０】
図２は、複数枚の加工した薄板材を積層する状態を説明する図である。図２においては、加工した薄板材を４枚積層する状態を示している。積層する薄板材を斜め下方から見た状態を示している。４枚の積層する薄板材２−１、２−２、２−３、２−４の最下部に位置する薄板材２−４に示すように、それぞれ所望の方向に切り起こして形成された複数の切り起こし部１１が設けられている。
【００３１】
切り起こし部１１は、矩形の３辺に切り込みを入れて、切り起こし、先端部を水平方向に屈曲して、それぞれ垂直部１２と水平部１３からなる概ねＬ字形に形成されている。切り起こし部１１の水平部１３は、他の薄板材との間の熱的な接続を容易にするために平らな面に形成されている。切り起こしによって生じた複数の開口部１０が薄板材２に備わっている。
【００３２】
この態様では、薄板材２−４の切り起こし部の高さ（垂直部の高さ）は概ね同一である。同様に、残りの３枚の薄板材２−１、２−２、２−３にも、概ね対応した位置に対応した大きさの、垂直部１２および水平部１３からなる切り起こし部１１が形成されている。最上部の薄板材２の表面には、扁平型のヒートパイプ４が薄板材２の周辺部を囲むようにして接合されて、熱的に接続されている。このように加工された薄板材２−１、２−２、２−３、２−４を、それぞれの切り起こし部１１の水平部１３が、積層されて隣接する薄板材２の裏面に熱的に接続される。切り起こし部１１の垂直部１２は、壁面のように位置して、遠心ファンからの冷却用空気の流れを所望の方向に規制して誘導するように、その方向が設定されている。なお、切り起こし部の垂直部は、それ自体が放熱部材としても機能している。
【００３３】
上述した４枚の加工された薄板材２が積層されると、薄板材２は切り起こし部１１の水平部１３で接合されているので、積層された薄板材２の相互の間で熱の伝導が行われ、更に、切り起こしによって生じた開口部１０を通って冷却用空気が、最下部から最上部の薄板材の間で相互に連絡することができる。このようにして、最上部の薄板材２に伝わったヒートパイプの熱は、その他の薄板材２に伝導され、遠心ファンによって、放熱部８、１４に向かって移動される。
【００３４】
切り起こし部１１の垂直部１２の高さは、適宜設定することができる。図３は、異なる高さの垂直部１２を有する切り起こし部１１を組み合わせた状態を説明する部分拡大図である。図３に示すように、薄板材２間で、切り起こし部１１の垂直部１２の高さを変化させている。最下部の薄板材２は、垂直部１２−３、水平部１３−３からなる切り起こし部１１を備えている。下から２番目の薄板材２は、垂直部１２−２、水平部１３−２からなる切り起こし部１１を備えている。
【００３５】
図３に示すように、例えば、下側にある薄板材２−３の切り起こし部１１を垂直部１２−３が長く（高く）なるように設定し、薄板材２−２の開口部１０を貫通して、薄板材２−１の裏面に切り起こし部１１の水平部１３−３が接合されて熱的に接続されるようにする。このように、薄板間の間隙の大きさ等、状況に対応して、垂直部１２の高さを変化させることができる。例えば、４枚の積層された薄板材２の下部に位置する薄板材２の垂直部１２を最上部の薄板材２に直接接合させて、最上部の薄板材２に熱的に接続されたヒートパイプ４の熱を、切り起こし部１１を介して直接最下部の薄板材２に移動させて、冷却効率を高めることができる。１つの切り起こし部を別の薄板材の開口部を貫通して薄板材の裏面に接合する際、切り起こし部の位置が重なっているので、切り起こし部の水平部を重ねてもよいし、水平部の屈曲方向を変更して、重ならないように接合してもよい。
【００３６】
図４は、この発明のヒートシンクの１つの態様を説明する斜視図である。この発明のヒートシンクは、上述した薄板材を積層し、中央部に遠心ファンを備えている。
全体の高さを制限するために、最上部の薄板材に熱的に接続されたヒートパイプは、扁平型ヒートパイプを使用することができる。
【００３７】
図４に示すように、薄型ヒートシンク１は、加工した薄板材２を積層し、高さが限定された状態でも遠心ファンへの吸気口への空気の取り入れが容易であるように、ヒートパイプ４を配置している。即ち、薄型ヒートシンク１は、積層された薄板材２と、積層された薄板材の最上部に空間部を備えて接合された扁平型ヒートパイプ４と、積層された薄板材の端部に取り付けられた放熱フィン８および積層された薄板材の端部を使用した放熱フィン１４とを備えている。
【００３８】
複数の所定形状の薄板材２は、概ね中央部分に（図示しない）遠心ファンを収納する円形の開口を備えている。薄板材は所定間隙で積層され、円形の開口によって遠心ファンを収納する円柱状の空洞部が形成される。積層された薄板材は、遠心ファンを収納するケースの一部を形成している。積層された薄板材は、加工して形成された空気誘導部を備えている。
【００３９】
放熱フィン部８は、薄板材２の端部に接続され、薄板材２の空気誘導部に導かれた空気がその中を通る。扁平型のヒートパイプ４は、一方の端部５が発熱部品と熱的に接続された薄板材の部分に熱的に接続され、他方の端部６が薄板材の端部を利用した放熱フィン部１４に熱的に接続され、少なくとも一部が外側にはみだすように配置されて、薄板材２との間に、空間部７を備えている。遠心ファン付ヒートシンクでは、通常、積層された薄板材の最上部に吸気口を囲むようにして薄板材の端部に全面が接合されることが多い。
【００４０】
この発明の薄型ヒートシンクでは、上述したように、一部を積層した薄板材の外部に突き出すように配置され、遠心ファンへの吸気口への空気の流れを容易にしている。放熱フィン部の数と対応して、複数本のヒートパイプが使用される。図４に示す態様では、２本の扁平型ヒートパイプを使用して、積層された薄板材の全周に沿って取り付けられている。
【００４１】
図４を参照して、更に詳細に説明する。
図４に示すように、このように積層された薄板材２の最上部の薄板材２−１の表面に、扁平型ヒートパイプ４が接合されて熱的に接続される。図４に示す態様では、２本の扁平型ヒートパイプ４−１、４−２が配置されている。ヒートパイプ４−１、４−２は、発熱部品が熱的に接続された薄板材２−１の部分に吸熱部としての一方の端部５−１、５−２が接合されて熱的に接続される。図４に示すように、それぞれのヒートパイプ４−１、４−２は、積層された薄板材２との間に、空間部７を備えて配置されている。
【００４２】
即ち、ヒートパイプ４−１、４−２は、同一面内に配置されて、一部が積層された薄板材２の外側に突き出すようにして配置されて、薄板材２との間に空間部７がそれぞれ形成される。従来は、最上部の薄板材の上面に、吸気口を囲むように、全面を接合させて熱的に接続していたが、高さが制限されると、遠心ファンの吸気口への空気の取り込みが困難になる。
【００４３】
この問題点を解決するために、この発明では、ヒートパイプ４−１、４−２を吸気口３の周りを囲むようにして全面にわたって薄板材２−１に接合させるのではなく、上述したように、ヒートパイプ４−１，４−２の一部を同一面上で薄板材２の外側に突き出すようにして配置して、薄板材２との間に空間部７を形成させている。このように同一面上で、ヒートパイプ４−１、４−２の一部を薄板材２の外側に突き出すと、ヒートシンク１全体の厚さは変わらず、吸気口３への空気の流れを大きくすることができる。
【００４４】
その結果、遠心ファンを回転させると、外側に突き出て薄板材２との間に空間部７を形成しているヒートパイプ４−１、４−２部分の上面および下面の両側を通って冷たい空気が吸気口３に向かって流れる。従って、ヒートパイプ４−１、４−２の一部を、吸気口３へ流れる冷たい空気によって冷却することができる。更に、外側に突き出て薄板材２との間に空間部７を形成しているヒートパイプ４−１、４−２の部分に（図示しない）別の放熱フィン部を接続すると、吸気口３に向かって流れる冷たい空気によって、ヒートパイプ４−１、４−２が冷却され、一層冷却効率が高まる。
【００４５】
ヒートパイプ４−１、４−２は、外側に突き出て薄板材２との間に空間部７を形成した後、薄板材２の最上部の表面に戻り、放熱フィン部８、１４に接合されて熱的に接続される。例えば、積層された薄板材２の最上部の一部９が、屈曲されて、両側からヒートパイプ４−１、４−２を挟みつけるようにしてもよい。こうすることによって、加工された薄板材２によって、ヒートパイプ４の放熱部６が薄板材の端部に接合されて熱的に接続される。
【００４６】
この発明のヒートパイプの１つの態様においては、２種類の放熱フィン部８、１４を備えている。一方の放熱フィン部８は、加工され積層された薄板材２の端部に取り付けられた複数の薄板材からなる第１の放熱フィン部である。第１の放熱フィン部８のフィンは遠心ファンの軸方向に平行（即ち、垂直方向）に配置されている。第１の放熱フィン部８は、例えば、底面、垂直面、上面からなる断面が概ねコの字形の板材を複数枚並列に配置して、垂直面が遠心ファンの軸方向に平行に配置されている。
【００４７】
上面および底面は複数個のフィンが並列配置されて、平らな面を形成している。一方の面は、例えば、図４に示すように、受熱面を形成して、ヒートパイプ４−１、４−２の下面に接合されて熱的に接続されている。第１の放熱フィン部８−１、８−２は、例えば、積層された薄板材２の中を誘導された風が、第１の放熱フィン部８−１、８−２の垂直面に概ね平行に流れる、ヒートシンクの隅部に配置される。第１の放熱フィン部８−１、８−２は図４に示すように、ヒートパイプ４−１、４−２の数と同じ数を配置することができる。
【００４８】
他方の放熱フィン部は、積層された薄板材２の端部が、第２の放熱フィン部１４を形成する。即ち、図４に示すように、扁平型ヒートパイプ４−１、４−２の放熱部６−１、６−２が接合され熱的に接続されている薄板材の部分１４−１、１４−２が、遠心ファンの軸方向に直交する方向（即ち水平方向）に並列に配列されている。
【００４９】
この部分は、積層された薄板材２に、加工によって形成された切り起こし部１１の垂直部１２によって誘導され、排気口に斜め方向に流れる風（曲線の風を含む）が通過する。上述したように、遠心ファンの風の流れに対応した形状の複数種類の放熱フィン部８、１４を設けることによって、積層された薄板材の間を流れる風の流れが円滑になり、放熱効果を高めることができる。
【００５０】
なお、薄板材の一部に形成された概ね円形の開口を備えており、複数枚の薄板材を積層することによって形成される円柱状の空洞部に、遠心ファンが収納される。
【００５１】
この発明によると、空気取り入れ口の周りを囲むようにヒートパイプを配置しても、遠心ファンの吸気が容易で、冷却効率に優れた薄型ヒートシンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００５２】
【図１】図１は、切り起こし部および切り起こしによって形成された開口部を備えた薄板材の１つの例を示す斜視図である。
【図２】図２は、複数枚の加工した薄板材を積層する状態を説明する図である。
【図３】図３は、異なる高さの垂直部１２を有する切り起こし部１１を組み合わせた状態を説明する部分拡大図である。
【図４】図４は、この発明の薄型ヒートシンクの１つの態様を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【００５３】
１ ヒートシンク
２ 薄板材
３ 空洞部、吸気口
４ ヒートパイプ
５ ヒートパイプの吸熱部
６ ヒートパイプの放熱部
７ 空間部
８ 放熱フィン部
９ 薄板材の屈曲された一部
１０ 開口部
１１ 切り起こし部
１２ 垂直部
１３ 水平部
１４ 第２の放熱フィン部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
所定部分を切り込み、屈曲して起こして形成した、垂直部および水平部からなる概ねＬ字形の切り起こし部、および、切り起こしによって形成された開口部を備えた複数枚の薄板状体を、前記水平部が別の薄板状体に熱的に接続されて積層されて形成されたヒートシンク。
【請求項２】
前記薄板状体の前記Ｌ字形の切り起こし部が、別の薄板状体に形成された前記開口部を貫通して、前記水平部が所定の薄板状体に熱的に接続されている、請求項１に記載のヒートシンク。
【請求項３】
前記Ｌ字形の切り起こし部の垂直部の高さが異なっている、請求項２に記載のヒートシンク。
【請求項４】
前記薄板状体の一部に形成された概ね円形の開口部を備えており、前記複数枚の薄板状体を積層することによって形成される円柱状の空洞部に、遠心ファンが収容される、請求項１から３の何れか１項に記載のヒートシンク。
【請求項５】
前記Ｌ字形の切り起こし部が、遠心ファンの風を所望の方向に誘導するように配置されている、請求項４に記載のヒートシンク。
【請求項６】
積層された前記薄板状体の最上部の薄板状体に、ヒートパイプが熱的に接合され、積層された前記薄板状体の各々の前記Ｌ字形の切り起こし部が前記水平部を介して前記最上部の薄板状体に熱的に接続されている、請求項１から５の何れか１項に記載のヒートシンク。
【請求項７】
前記薄板状体が一枚板材からなり、前記Ｌ字形の切り起こし部によって誘導された空気が放出される、積層された前記薄板状体の端部が、放熱部として機能する、請求項１から６の何れか１項に記載のヒートシンク。
【請求項８】
積層された前記薄板状体の端部に放熱フィン部を備えており、前記Ｌ字形の切り起こし部が、遠心ファンの風を前記放熱フィン部に導くように配置されている、請求項１から７の何れか１項に記載のヒートシンク。
【請求項９】
前記ヒートパイプの一部が前記薄板状体から外側にはみだした部分によって、前記薄板状体との間に空間部が形成され、前記空間部を形成して配置された前記ヒートパイプの部分の上面および下面を、冷却用の空気が流れるようにヒートパイプが配置されている、請求項１から８の何れか１項に記載のヒートシンク。
【請求項１０】
最上部の前記薄板状体に別の切込みを形成し、切り込み部を屈曲して、一枚の薄板状体の部分によって前記ヒートパイプを挟むように固定している、請求項１から９の何れか１項に記載のヒートシンク。
【請求項１】
所定部分を切り込み、屈曲して起こして形成した、垂直部および水平部からなる概ねＬ字形の切り起こし部、および、切り起こしによって形成された開口部を備えた複数枚の薄板状体を、前記水平部が別の薄板状体に熱的に接続されて積層されて形成されたヒートシンク。
【請求項２】
前記薄板状体の前記Ｌ字形の切り起こし部が、別の薄板状体に形成された前記開口部を貫通して、前記水平部が所定の薄板状体に熱的に接続されている、請求項１に記載のヒートシンク。
【請求項３】
前記Ｌ字形の切り起こし部の垂直部の高さが異なっている、請求項２に記載のヒートシンク。
【請求項４】
前記薄板状体の一部に形成された概ね円形の開口部を備えており、前記複数枚の薄板状体を積層することによって形成される円柱状の空洞部に、遠心ファンが収容される、請求項１から３の何れか１項に記載のヒートシンク。
【請求項５】
前記Ｌ字形の切り起こし部が、遠心ファンの風を所望の方向に誘導するように配置されている、請求項４に記載のヒートシンク。
【請求項６】
積層された前記薄板状体の最上部の薄板状体に、ヒートパイプが熱的に接合され、積層された前記薄板状体の各々の前記Ｌ字形の切り起こし部が前記水平部を介して前記最上部の薄板状体に熱的に接続されている、請求項１から５の何れか１項に記載のヒートシンク。
【請求項７】
前記薄板状体が一枚板材からなり、前記Ｌ字形の切り起こし部によって誘導された空気が放出される、積層された前記薄板状体の端部が、放熱部として機能する、請求項１から６の何れか１項に記載のヒートシンク。
【請求項８】
積層された前記薄板状体の端部に放熱フィン部を備えており、前記Ｌ字形の切り起こし部が、遠心ファンの風を前記放熱フィン部に導くように配置されている、請求項１から７の何れか１項に記載のヒートシンク。
【請求項９】
前記ヒートパイプの一部が前記薄板状体から外側にはみだした部分によって、前記薄板状体との間に空間部が形成され、前記空間部を形成して配置された前記ヒートパイプの部分の上面および下面を、冷却用の空気が流れるようにヒートパイプが配置されている、請求項１から８の何れか１項に記載のヒートシンク。
【請求項１０】
最上部の前記薄板状体に別の切込みを形成し、切り込み部を屈曲して、一枚の薄板状体の部分によって前記ヒートパイプを挟むように固定している、請求項１から９の何れか１項に記載のヒートシンク。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００９−２３９１１７（Ｐ２００９−２３９１１７Ａ）
【公開日】平成２１年１０月１５日（２００９．１０．１５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−８４９１３（Ｐ２００８−８４９１３）
【出願日】平成２０年３月２７日（２００８．３．２７）
【出願人】（０００００５２９０）古河電気工業株式会社 (4,457)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年１０月１５日（２００９．１０．１５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年３月２７日（２００８．３．２７）
【出願人】（０００００５２９０）古河電気工業株式会社 (4,457)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]