説明

ヒートポンプ式給湯装置

【課題】ヒートポンプ式加熱手段で沸き上げられない中温水が日ごとに増加してしまうという問題があった。
【解決手段】ヒートポンプ式加熱手段21で加熱した湯水を沸き上げ管29を介して貯湯タンク1上部に戻すか、中間戻し管28を介して貯湯タンク1中間部に戻すかを切り換える切換手段30と、沸き上げ運転開始時に、切換手段30を中間戻し管28側に切り換え、ヒートポンプ式加熱手段21で沸き上げた湯を中間戻し管28から貯湯タンク1中間部に戻し、貯湯タンク1内の中間戻し管28よりも上部の湯を昇温した後に、切換手段30を沸き上げ管29の貯湯タンク1上部側へ切り換え、ヒートポンプ式加熱手段21で沸き上げた湯を貯湯タンク1上部に戻すようにした制御手段39とを備え、沸き上げ開始時に中温水を中間戻し管28からの高温水で昇温して中温水を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式加熱手段で貯湯タンク内の湯水を沸き上げるヒートポンプ貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のヒートポンプ貯湯式給湯装置においては、特許文献1に示されるように、貯湯タンクの下部から取り出した水をヒートポンプ式加熱手段で沸き上げ目標温度に加熱して貯湯タンクの上部から戻すようにしたものがある。そして、給湯の際は、貯湯タンク下部からの給水により貯湯タンク上部または中間部から沸き上げられた湯が出湯されることで給湯を行い、貯湯タンク内には上部に高温の湯、下部に低温の水、それらの境界層に中間温度の中温水が位置する状態となる。
【0003】
そして、この従来のものでは、電力料金単価の安価な深夜時間帯でのヒートポンプ式加熱手段での沸き上げ時には、貯湯タンク下部の低温の水のみを沸き上げ、貯湯タンク内の中温水を残して沸き上げ運転を終了するようにしてヒートポンプ式加熱手段の加熱効率の悪化を防止しているものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−49054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この従来のものでは、貯湯タンク内にフロ加熱用等の間接熱交換器を配設して、貯湯タンク内の熱をフロ加熱等に用いると、図5(A)のように貯湯タンク内の間接熱交換器の上端と冷水層との間に50℃程度の中温水が多量に生成される。そして、深夜時間帯となると、図5(B)のように冷水層のみを沸き上げて、生成された中温水は全て残して深夜沸き上げを行うため、翌日の深夜時間帯の開始時刻には、図5(C)のように間接熱交換器との熱交換によって新たに中温水が生成されると共に、前日の中温水がさらに温度低下した状態で残り、日ごとに中温水の量が増加してしまうこととなる。
【0006】
このように、中温水の量が増加してしまうと、貯湯タンクの蓄熱可能量を減らしてしまい、湯切れの可能性が高くなってしまうと共に、残っている中温水の温度が沸き上げ可能な温度まで低下したとしてもヒートポンプ式加熱手段の加熱効率の悪化を招き、電力使用量を増加してしまうものであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するため、湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク下部に給水するための給水管と、前記貯湯タンク上部から出湯するための出湯管と、前記貯湯タンク下部に接続された取水管と、前記取水管から取り出した湯水を加熱して沸き上げるヒートポンプ式加熱手段と、前記ヒートポンプ式加熱手段で加熱した湯水を前記貯湯タンクの上部に戻す沸き上げ管と、前記沸き上げ管から分岐され前記貯湯タンクの中間部に接続された中間戻し管と、前記沸き上げ管と前記中間戻し管との分岐部に設けられ、前記ヒートポンプ式加熱手段で沸き上げた湯水を前記沸き上げ管を介して前記貯湯タンクの上部に戻すか、前記中間戻し管を介して前記貯湯タンクの中間部に戻すかを切り換える切換手段と、沸き上げ運転開始時に、前記切換手段を前記中間戻し管側に切り換え、前記ヒートポンプ式加熱手段で沸き上げた湯を前記中間戻し管から前記貯湯タンクの中間部に戻し、前記貯湯タンク内の前記中間戻し管よりも上部の湯を昇温した後に、前記切換手段を前記沸き上げ管の前記貯湯タンクの上部側へ切り換え、前記ヒートポンプ式加熱手段で沸き上げた湯を前記貯湯タンクの上部に戻すようにした制御手段とを備えたものとした。
【0008】
また、前記制御手段は、沸き上げ運転開始時に、前記貯湯タンク内の前記中間戻し管よりも上部に所定の温度範囲の中温水が存在する場合に、前記切換手段を前記中間戻し管側に切り換え、前記ヒートポンプ式加熱手段で沸き上げた湯を前記中間戻し管から前記貯湯タンクの中間部に戻し、前記貯湯タンク内の前記中間戻し管よりも上部の湯を前記所定の温度範囲よりも高い温度まで昇温し、一方、沸き上げ運転開始時に、前記貯湯タンク内の前記中間戻し管よりも上部に所定の温度範囲の中温水が存在しない場合、前記切換手段を前記沸き上げ管の前記貯湯タンクの上部側へ切り換え、前記ヒートポンプ式加熱手段で沸き上げた湯を前記貯湯タンクの上部に戻すようにした。
【0009】
また、前記貯湯タンク内の前記中間戻し管よりも上部に外部流体と熱交換するための内熱交換器を設けたものとした。
【0010】
また、前記貯湯タンク内の湯水と外部流体とを熱交換するための外熱交換器と、前記貯湯タンク上部から取り出した湯水を前記外熱交換器へ循環させ、前記貯湯タンクの下部または中間部へ戻す外部循環回路とを設けたものとした。
【0011】
また、前記ヒートポンプ式加熱手段は、冷媒に二酸化炭素冷媒を用い、高圧側で超臨界となる超臨界ヒートポンプサイクルとした。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、貯湯タンク内に残る再沸き上げ時の沸き上げ効率の悪い中温水をヒートポンプ式加熱手段で直接沸き上げることなく昇温して中温水の量を減少することができるので、貯湯タンクの蓄熱可能量の低下を抑制できて湯切れの可能性を低下することができると共に、中温水の再沸き上げによるヒートポンプ式加熱手段での加熱効率の悪化を招くことがなく、電力使用量を抑えて機器の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成図。
【図2】同一実施形態の作動を説明するためのフローチャート図。
【図3】同一実施形態の貯湯状態を説明するための図で、(A)は沸き上げ運転の開始前、(B)は中間沸き上げの終了時、(C)は沸き上げ運転の終了時、(D)は翌日の沸き上げ運転の開始前の貯湯状態を示す。
【図4】本発明の別の実施形態の概略構成図。
【図5】従来のヒートポンプ式給湯装置の貯湯状態を説明するための図で、(A)は沸き上げ運転の開始前、(B)は沸き上げ運転の終了時、(C)は翌日の沸き上げ運転の開始前の貯湯状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯するステンレス製の貯湯タンク、2は貯湯タンク1底部に市水を給水する給水管、3は貯湯タンク1頂部から出湯する出湯管、4は給水管2から分岐された給水バイパス管、5は出湯管3からの湯と給水バイパス管4からの水とを給湯設定温度になるように混合する給湯混合弁、6は給湯混合弁5で混合された湯が流通する給湯管、7は給湯管6からの湯を給湯する給湯栓、8は給湯管6途中に設けられ給湯温度を検出する給湯温度センサ、9は給湯管6途中に設けられ給湯量を検出する給湯流量センサ、10は給水管2に設けられ市水の給水圧を一定の圧力に減圧する減圧弁、11は貯湯タンク1内の過圧を逃がす過圧逃がし弁である。
【0015】
12は浴槽、13は貯湯タンク1内の上部に設けられ貯湯タンク1内の湯の熱で外部流体としての浴槽水を加熱するための内熱交換器、14は浴槽12と内熱交換器13とを浴槽水が循環可能に接続するフロ循環回路、15はフロ循環回路14途中に設けられ浴槽水を循環させるフロ循環ポンプ、16は給湯管6から分岐されフロ循環回路14に接続された湯張り管、17は湯張り管16途中に設けられ湯張り管16を開閉する湯張り開閉弁、18はフロ循環回路14途中に設けられ浴槽12から内熱交換器13へ流れる浴槽水の温度を検出するフロ温度センサである。ここで、内熱交換器13はステンレス管を螺旋状に巻回した構成としている。
【0016】
19は内熱交換器13の下方の貯湯タンク1中間部から出湯させて出湯管3へ合流させるための中間出湯管、20は中間出湯管19と出湯管3との合流点に設けられて貯湯タンク1の上部からの湯と貯湯タンク1の中間部からの湯の何れか一方あるいは両方を混合して給湯混合弁5の湯側に流入させるための中間切替弁である。
【0017】
21は加熱手段としてのヒートポンプ式加熱手段で、冷媒を圧縮する圧縮機22と、冷媒と水とを熱交換する冷媒水熱交換器23と、冷媒の圧力を減圧する減圧器24と、液冷媒を蒸発させる蒸発器25とを備え、蒸発器25で吸熱した冷媒を圧縮機22で圧縮して冷媒水熱交換器23を介して水を加熱するようにしている。このヒートポンプ式加熱手段21には冷媒として二酸化炭素冷媒が用いられ、高圧側が超臨界状態となることにより水を90℃の高温まで加熱することができるものである。
【0018】
26は貯湯タンク1の下部と冷媒水熱交換器23の水側と貯湯タンク1の上部とを湯水が循環可能に接続する加熱循環回路、27は加熱循環回路26途中に設けられた加熱循環ポンプ、28は加熱循環回路26の冷媒水熱交換器23よりも下流側の沸き上げ管29途中で分岐され貯湯タンク1の中間部とを接続する中間戻し管、30は冷媒水熱交換器23で加熱された湯を沸き上げ管29を介して貯湯タンク1上部へ戻すか中間戻し管28を介して貯湯タンク1中間部へ戻すかを切り換える三方弁より成る切換手段である。ここで中間戻し管28は貯湯タンク1の間接熱交換器13の上端より下方の貯湯タンク1の側面に接続されており、間接熱交換器13の下端付近に接続されているのが好ましい。
【0019】
31は冷媒水熱交換器23へ流入する水の温度を検出する入水温度センサ、32は冷媒水熱交換器23で加熱された湯の温度を検出する沸き上げ温度センサ、33は貯湯タンク1の側面の上下方向に複数設けられた貯湯温度センサで、貯湯タンク1内の湯水の温度を検出するためのものであり、上から33a、33b、33c、33d、33e、33fと呼ぶ。なお、これら貯湯温度センサ33a〜fの内、33bは内熱交換器13の中間部付近かつ中間戻し管28よりも上方の貯湯温度を検出する位置に設けられ、33cは内熱交換器13の下端より下方かつ中間戻し管28よりも下方の貯湯温度を検出する位置に設けられているものである。
【0020】
34はリモコンで、給湯装置に関する各種の情報(給湯設定温度、フロ設定温度、残湯量、給湯装置の作動状態等)を表示する表示部35と、給湯設定温度およびフロ設定温度を設定操作するための温度設定スイッチ36と、浴槽12へ一定量の湯張りを指示する湯張りスイッチ37と、浴槽水の追焚きを指示する追焚きスイッチ38とを備えている。
【0021】
39は給湯温度センサ8、給湯流量センサ9、フロ温度センサ18、入水温度センサ31、沸き上げ温度センサ32、貯湯温度センサ33a〜fの検出値が入力され、フロ循環ポンプ15、湯張り開閉弁17、圧縮機22、減圧器24、加熱循環ポンプ27、切換手段30の作動を制御すると共に、リモコン34と通信可能に接続された制御手段である。この制御手段39は、予め給湯装置の作動を制御するためのプログラムが記憶されていると共に、演算、比較、記憶機能、時計機能を有しているものである。
【0022】
次に、給湯動作について説明すると、給湯栓7が開かれると、貯湯タンク1の底部に給水管2から市水が流入すると共に貯湯タンク1の頂部から出湯管3あるいは中間出湯管19を介して高温の湯が出湯し、制御手段39は給湯温度センサ8で検出する給湯温度がリモコン34の温度設定スイッチ36で設定された給湯設定温度になるよう給湯混合弁5の開度を調整し、給湯栓7から給湯設定温度の湯が給湯され、給湯栓7が閉じられることで給湯動作が終了する。
【0023】
このとき、貯湯タンク1の中間部の湯温が給湯設定温度よりも高い場合は、中間切替弁20は中間出湯管19側を開いて出湯管3側を閉じるように切り替えられ、貯湯タンク1中間部の湯が貯湯タンク1上部の湯よりも優先して出湯される。また、貯湯タンク1の中間部の湯温が給湯設定温度よりも低い場合は、中間切替弁20は出湯管3側を開いて中間出湯管19側を閉じるように切り替えられ、給湯設定温度の給湯を確実に行うようにしている。
【0024】
この給湯時には、貯湯タンク1の底部へ流入した水は給水管2の断面積に比べて十分に大きな断面積を持つ貯湯タンク1内で十分に減速され、高温の湯の層をほとんど乱すことなく下方から水の層を形成する。そして、貯湯タンク1上部の高温の湯と貯湯タンク1下部の低温の水とが接する温度境界層Lが形成される。そして、給湯量が増加するにつれて貯湯タンク1上部の高温の湯の層が減少すると共に貯湯タンク1下部の水の層が増加し、温度境界層Lが上昇する。この温度境界層Lは所定の温度差があればそれぞれの温度に基づく比重の違いによって混じり合うことがないもので、時間の経過に伴う熱伝導によって温度境界層Lの厚みが増し徐々に温度勾配が緩くなっていくものである。
【0025】
次に、湯張り動作について説明すると、リモコン34の湯張りスイッチ37が操作されると、制御手段39は湯張り開閉弁17を開いて給湯温度センサ8で検出する給湯温度がリモコン34の温度設定スイッチ36で設定されたフロ設定温度になるように給湯混合弁5の開度を調整して適温の湯を湯張りし、給湯流量センサ9が所望の湯張り流量を積算すると湯張り開閉弁17を閉じて湯張り動作を終了する。
【0026】
そして、湯張り動作が終了してから予め定めた一定時間は、浴槽水の温度をフロ設定温度に保つ保温動作を行う。この保温動作について説明すると、制御手段39は所定のインターバル時間毎にフロ循環ポンプ15を駆動させ、浴槽水をフロ循環回路14に循環させてフロ温度センサ18で浴槽水の温度を検出する。浴槽水の温度がフロ設定温度より低い場合はフロ循環ポンプの駆動を継続し、内熱交換器13から貯湯タンク1内上部の湯の熱を吸熱して浴槽水を加熱する。フロ温度センサ18が検出する温度がフロ設定温度を検出するとフロ循環ポンプ15の駆動を終了し、再度インターバル時間が経過すると同じ動作を繰り返す。そして、予め定めた一定時間が終了するとこの保温動作を終了する。
【0027】
また、リモコン34の追焚きスイッチ38が操作されたときの追焚き動作について説明すると、浴槽水の温度をフロ設定温度+一定温度(例えば2℃)まで追い焚きするように、制御手段39はフロ循環ポンプ15を駆動させ、浴槽水を内熱交換器13へ循環させ、内熱交換器13から貯湯タンク1内上部の湯の熱を吸熱して浴槽水を加熱する。そして、フロ温度センサ18が検出する温度がフロ設定温度+一定温度を検出するとフロ循環ポンプ15の駆動を終了して追焚き動作を終了する。
【0028】
次に、沸き上げ動作について図1〜図3に基づいて説明すると、電力料金単価が安価な所定時間帯である深夜時間帯となると(ステップS1)、制御手段39は、図3の(A)のように中間戻し管28の接続位置よりも上部の貯湯温度センサ33bが所定の温度範囲(ここでは例えば35〜60℃)を検出している場合、貯湯タンク1の中間戻し管28接続位置よりも上に中温水が存在すると判断してステップS2でYesとなり、切換手段30を中間戻し管28側に切り換え(ステップS3)、圧縮機22と減圧器24とを駆動制御してヒートポンプ式加熱手段21と加熱循環ポンプ27を駆動して、沸き上げ温度センサ32で検出する温度が沸き上げ目標温度となるように沸き上げ動作を開始する(ステップS4)。
【0029】
このように、貯湯タンク1中間部から貯湯タンク1内に戻された高温の湯は貯湯タンク1内に残湯として残った中温水の内、中間戻し管28よりも高い位置に存在する中温水を昇温する。この際、ヒートポンプ式加熱手段21には、貯湯タンク1下部の低温水が供給されているため、ヒートポンプ式加熱手段21の加熱効率を良好に保てる。
【0030】
そして、沸き上げ動作を開始してから、図3の(B)のように中間戻し管28の上部の湯が昇温され、中間戻し管28の接続位置よりも上部の貯湯温度センサ33bが所定の温度範囲よりも高い所定温度(ここでは例えば70℃)を検出するとステップS5でYesとなり、切換手段30を貯湯タンク1の上部側へ切り換え(ステップS6)、ヒートポンプ式加熱手段21で沸き上げ目標温度に沸き上げた湯を貯湯タンク1の上部から貯湯タンク1内へ戻すようにして沸き上げ動作を継続する。
【0031】
次に、図3の(C)のように貯湯タンク1の最下部の貯湯温度センサ33fがヒートポンプ式加熱手段21で加熱できる上限温度(例えば50℃)以上を検出するか、あるいは深夜時間帯の終了時刻となると、貯湯タンク1内の湯水の沸き上げが完了したと判断して(ステップS7でYes)、圧縮機22と減圧器24とを駆動停止してヒートポンプ式加熱手段21を停止すると共に加熱循環ポンプ27も停止して、沸き上げ運転を終了する(ステップS8)。
【0032】
このようにして、貯湯タンク1内に残る再沸き上げ時の沸き上げ効率の悪い中温水をヒートポンプ式加熱手段21で直接沸き上げることなく昇温するので、沸き上げ運転の終了時の中温水の量を少なくすることができ、次の深夜時間帯の開始時刻には図3の(D)のように中温水の量を少なくでき、従来のように前日の中温水がさらに温度低下した状態で残ることがなく、日ごとに中温水の量が増加してしまうことを防止できる。
【0033】
一方、前記ステップS2において、中間戻し管28の接続位置よりも上部の貯湯温度センサ33bが所定の温度範囲(ここでは例えば35〜60℃)よりも高い温度あるいは低い温度を検出している場合、ステップS2でNoとなり、切換手段30を貯湯タンク1の上部側へ切り換え(ステップS9)、圧縮機22と減圧器24とを駆動制御してヒートポンプ式加熱手段21と加熱循環ポンプ27を駆動して、沸き上げ温度センサ32で検出する温度が沸き上げ目標温度となるように沸き上げ動作を開始する(ステップS10)。
【0034】
このように、貯湯タンク1内の中間戻し管28よりも上部に中温水が残っていない場合は、貯湯タンク1の下部から取り出した低温水をヒートポンプ式加熱手段21で沸き上げて、貯湯タンク1の上部から貯湯タンク1内に戻す通常の沸き上げ運転を行い、沸き上げを完了すると(ステップS7でYes)、圧縮機22と減圧器24とを駆動停止してヒートポンプ式加熱手段21を停止すると共に加熱循環ポンプ27も停止して、沸き上げ運転を終了する(ステップS8)。
【0035】
このように、貯湯タンク1内に残る再沸き上げ時の沸き上げ効率の悪い中温水をヒートポンプ式加熱手段21で直接沸き上げることなく昇温して中温水の量を減少することができるので、貯湯タンク1の蓄熱可能量の低下を抑制できて湯切れの可能性を低下することができると共に、中温水の再沸き上げによるヒートポンプ式加熱手段21での加熱効率の悪化を招くことがなく、電力使用量を抑えて機器の効率を向上することができる。
【0036】
なお、本発明は上記した一実施形態に限定されるものではなく、例えば図5に示すように、内熱交換器の代わりに外部流体を加熱するための外熱交換器40を貯湯タンク1の外部に設け、貯湯タンク1の上部から取り出した湯水を外熱交換器40へ循環させて外部流体を加熱し、温度低下した湯水を貯湯タンク1の下部あるいは中間部へ戻す外部循環回路41を設けた構成でもよいものである。
【符号の説明】
【0037】
1 貯湯タンク
2 給水管
3 出湯管
13 内熱交換器
21 ヒートポンプ式加熱手段
28 中間戻し管
29 沸き上げ管
30 切換手段
33 貯湯温度センサ
39 制御手段
40 外熱交換器
41 外部循環回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク下部に給水するための給水管と、前記貯湯タンク上部から出湯するための出湯管と、前記貯湯タンク下部に接続された取水管と、前記取水管から取り出した湯水を加熱して沸き上げるヒートポンプ式加熱手段と、前記ヒートポンプ式加熱手段で加熱した湯水を前記貯湯タンクの上部に戻す沸き上げ管と、前記沸き上げ管から分岐され前記貯湯タンクの中間部に接続された中間戻し管と、前記沸き上げ管と前記中間戻し管との分岐部に設けられ、前記ヒートポンプ式加熱手段で沸き上げた湯水を前記沸き上げ管を介して前記貯湯タンクの上部に戻すか、前記中間戻し管を介して前記貯湯タンクの中間部に戻すかを切り換える切換手段と、沸き上げ運転開始時に、前記切換手段を前記中間戻し管側に切り換え、前記ヒートポンプ式加熱手段で沸き上げた湯を前記中間戻し管から前記貯湯タンクの中間部に戻し、前記貯湯タンク内の前記中間戻し管よりも上部の湯を昇温した後に、前記切換手段を前記沸き上げ管の前記貯湯タンクの上部側へ切り換え、前記ヒートポンプ式加熱手段で沸き上げた湯を前記貯湯タンクの上部に戻すようにした制御手段とを備えたことを特徴とするヒートポンプ式給湯装置
【請求項2】
前記制御手段は、沸き上げ運転開始時に、前記貯湯タンク内の前記中間戻し管よりも上部に所定の温度範囲の中温水が存在する場合に、前記切換手段を前記中間戻し管側に切り換え、前記ヒートポンプ式加熱手段で沸き上げた湯を前記中間戻し管から前記貯湯タンクの中間部に戻し、前記貯湯タンク内の前記中間戻し管よりも上部の湯を前記所定の温度範囲よりも高い温度まで昇温し、一方、沸き上げ運転開始時に、前記貯湯タンク内の前記中間戻し管よりも上部に所定の温度範囲の中温水が存在しない場合、前記切換手段を前記沸き上げ管の前記貯湯タンクの上部側へ切り換え、前記ヒートポンプ式加熱手段で沸き上げた湯を前記貯湯タンクの上部に戻すようにしたことを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ式給湯装置。
【請求項3】
前記貯湯タンク内の前記中間戻し管よりも上部に外部流体と熱交換するための内熱交換器を設けたことを特徴とする請求項1または2記載のヒートポンプ式給湯装置。
【請求項4】
前記貯湯タンク内の湯水と外部流体とを熱交換するための外熱交換器と、前記貯湯タンク上部から取り出した湯水を前記外熱交換器へ循環させ、前記貯湯タンクの下部または中間部へ戻す外部循環回路とを設けたことを特徴とする請求項1または2記載のヒートポンプ式給湯装置。
【請求項5】
前記ヒートポンプ式加熱手段は、冷媒に二酸化炭素冷媒を用い、高圧側で超臨界となる超臨界ヒートポンプサイクルとしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のヒートポンプ式給湯装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−141076(P2011−141076A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1665(P2010−1665)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】