説明

ヒートポンプ式給湯装置

【課題】沸き終い時においても効率の良い運転を行うヒートポンプ式給湯装置を提供する。
【解決手段】湯水を貯湯する貯湯タンクと、圧縮機、水冷媒熱交換器、減圧器、蒸発器を備えたヒートポンプ式加熱手段と、ヒートポンプ式加熱手段の水冷媒熱交換器の水側と貯湯タンクとを環状に接続する加熱循環回路と、貯湯タンク内の湯水を目標沸き上げ温度に加熱するようヒートポンプ式加熱手段を制御する制御手段とを備えたヒートポンプ式給湯装置において、制御手段は、圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度と水冷媒熱交換器から流出する冷媒の流出温度との温度差が、所定の目標温度差となるように減圧器の開度を制御するようにしたことで、沸き終い時においても、運転効率が高効率となる比エンタルピー差を保ちながらヒートポンプ式加熱手段を運転させることができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯タンク内の湯水をヒートポンプで加熱するヒートポンプ式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のヒートポンプ式給湯装置においては、下部に給水管が接続され、上部に出湯管が接続された貯湯タンクと、圧縮機、凝縮器としての水冷媒熱交換器、減圧器としての電子膨張弁、蒸発器としての空気熱交換器を冷媒配管で環状に接続したヒートポンプサイクルを有したヒートポンプ式加熱手段と、貯湯タンク下部から取り出した湯水を水冷媒熱交換器の水側に流通させ貯湯タンク上部に戻す循環ポンプを有した加熱循環回路とを備え、貯湯タンク内の湯水をヒートポンプ式加熱手段に循環させ沸き上げるようにしたものであった。
【0003】
ここで、前記ヒートポンプ式加熱手段は、その運転効率が高効率となる状態で運転するように制御されるものであり、その制御方法として、圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度が予め設定された目標吐出温度となるように、電子膨張弁の開度を制御するものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−188860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のヒートポンプ給湯装置において、貯湯タンク内の湯水の沸き上げが進み、沸き上げ終了時(沸き終い時)が近づくと、水冷媒熱交換器に流入する湯水の入水温度が上昇してくる。そうすると、ヒートポンプサイクルの状態は、図5の鎖線で示した安定時の状態から実線で示した沸き終い時の状態となる。この沸き終い時には、水冷媒熱交換器に流入する湯水の入水温度が上昇すると共に、水冷媒熱交換器から流出する冷媒温度も上昇していく。その状態で、圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度が予め設定された目標吐出温度に保たれるよう電子膨張弁の開度を制御すると、圧縮機の吐出温度と水冷媒熱交換器から流出する冷媒温度との温度差が必要以上に小さくなり、運転効率が最大となる比エンタルピー差を保てず、効率の悪い運転を行ってしまうという問題を有するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、この発明は上記課題を解決するために、特に請求項1ではその構成を、湯水を貯湯する貯湯タンクと、圧縮機、水冷媒熱交換器、減圧器、蒸発器を備えたヒートポンプ式加熱手段と、該ヒートポンプ式加熱手段の前記水冷媒熱交換器の水側と前記貯湯タンクとを環状に接続する加熱循環回路と、前記貯湯タンク内の湯水を目標沸き上げ温度に加熱するよう前記ヒートポンプ式加熱手段を制御する制御手段とを備えたヒートポンプ式給湯装置において、前記制御手段は、前記圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度と前記水冷媒熱交換器から流出する冷媒の流出温度との温度差が、所定の目標温度差となるように前記減圧器の開度を制御するものとした。
【0007】
また、請求項2では、前記所定の目標温度差は、前記目標沸き上げ温度と外気温度と前記水冷媒熱交換器に流入する湯水の入水温度とに基づいて算出するものとした。
【発明の効果】
【0008】
この発明の請求項1によれば、貯湯タンク内の湯水を沸き上げる際に、制御手段は、圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度と水冷媒熱交換器から流出する冷媒の流出温度との温度差が、所定の目標温度差となるように減圧器の開度を制御することで、沸き上げ中、運転効率が高効率となる比エンタルピー差を保ちながらヒートポンプ式加熱手段を運転させることができるものである。
【0009】
さらに、減圧器の開度を制御することで、圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度および水冷媒熱交換器から流出する冷媒の流出温度の双方が変化するため、減圧器の開度変化に対する吐出温度と流出温度との温度差の温度変化量が大きく、吐出温度と流出温度との温度差を所定の目標温度差とするまでの制御速度が速く、すばやく高効率で運転させることができるものである。
【0010】
また、請求項2によれば、所定の目標温度差を目標沸き上げ温度、外気温度、入水温度に基づき算出するので、外気温度や入水温度といった条件が刻々と変化する沸き上げ時において、その時その時で運転効率が高効率となる所定の目標温度差を確実に求めることができ、ヒートポンプ式加熱手段を高効率で運転させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明のヒートポンプ式給湯装置の一実施形態の概略構成図。
【図2】同一実施形態の電子膨張弁の開度と制御パラメータとの関係を示した図。
【図3】同一実施形態の沸き終い時のヒートポンプサイクルの状態と従来の沸き終い時のヒートポンプサイクルの状態とを比較した図。
【図4】この発明のヒートポンプ式給湯装置の他の実施形態の概略構成図。
【図5】従来のヒートポンプ式給湯装置の沸き上げ運転時のヒートポンプサイクルの状態を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク2を有した貯湯タンクユニット、3は貯湯タンク2内の湯水を加熱するヒートポンプ式加熱手段、4は前記貯湯タンク2の下部に接続された加熱往き管5および前記貯湯タンク2の上部に接続された加熱戻り管6からなり、貯湯タンク2とヒートポンプ式加熱手段3とを湯水が循環するよう環状に接続する加熱循環回路、7は前記貯湯タンク2の下部に接続され貯湯タンク2に水を給水する給水管、8は前記貯湯タンク2の上部に接続され貯湯されている高温水を出湯する出湯管である。
【0013】
9は給水管7から分岐された給水バイパス管、10は出湯管8からの湯と給水バイパス管9からの水を混合して給湯設定温度の湯とする混合弁、11は混合弁10で混合後の給湯温度を検出する給湯温度センサ、12は貯湯タンク2の側面上下にわたり複数設けられ、貯湯タンク2内の湯の温度を検出する貯湯温度センサ、13は前記貯湯タンクユニット1内の各センサの出力を受けて各機器の動作を制御する貯湯制御手段である。
【0014】
前記ヒートポンプ式加熱手段3は、冷媒を圧縮する圧縮機14と、圧縮機14から吐出された冷媒を流通させる冷媒側の流路と加熱往き管5からの湯水を加熱戻り管6に流通させる水側の流路とを有し、高温高圧の冷媒と貯湯タンク2内の湯水とを熱交換する水冷媒熱交換器15と、水冷媒熱交換器15通過後の冷媒を減圧させる減圧器としての電子膨張弁16と、電子膨張弁16からの低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器としての空気熱交換器17とを冷媒配管で環状に接続したヒートポンプサイクル18と、水冷媒熱交換器15の水側の加熱循環回路4途中に設けられて貯湯タンク2の湯水を循環させる加熱循環ポンプ19とを備えており、ヒートポンプサイクル18内には冷媒として二酸化炭素が用いられて超臨界ヒートポンプサイクルを構成しているものである。
【0015】
20は圧縮機14と水冷媒熱交換器15との間に設けられ、圧縮機14から吐出される冷媒の吐出温度を検出する吐出温度センサ、21は水冷媒熱交換器15と電子膨張弁16との間に設けられ、水冷媒熱交換器15の冷媒側から流出し電子膨張弁16に向かう冷媒の温度を検出する流出温度センサ、22は空気熱交換器17の空気入口側に設けられ、外気温度を検出する外気温度センサ、23は水冷媒熱交換器15の水側に流入する入水温度を検出する入水温度センサ、24は水冷媒熱交換器15の水側から貯湯タンク2に向かって流出する沸き上げ温度を検出する沸き上げ温度センサである。
【0016】
25は前記ヒートポンプ式加熱手段3内の各センサの出力を受けて各機器の動作を制御する制御手段としての加熱制御手段で、貯湯制御手段13と通信可能に接続され、貯湯制御手段13と連携して作動するものである。
【0017】
次に、この一実施形態の動作について説明する。
深夜時間帯となると、貯湯制御手段13は貯湯タンク2内の湯水が所定の目標沸き上げ温度になるように沸き上げ運転を開始するよう加熱制御手段25へ沸き上げ開始命令を指示する。そして、加熱制御手段25は、沸き上げ運転において、前記目標沸き上げ温度および外気温度センサ22で検出した外気温度に応じて設定される運転周波数で動作するように圧縮機14を制御すると共に、吐出温度センサ20の検出する冷媒温度と流出温度センサ21の検出する冷媒温度との温度差ΔHが所定の目標温度差ΔHmとなるように電子膨張弁16の開度を所定の周期でフィードバック制御する。同時に、加熱制御手段25は沸き上げ温度センサ24で検出する水冷媒熱交換器15で加熱された湯が目標沸き上げ温度になるように加熱循環ポンプ19の回転数をフィードバック制御する。
【0018】
なお、前記所定の目標沸き上げ温度は、過去の給湯量の最大値や平均値等の給湯実績から翌日の給湯量の予測量を確保できるように貯湯制御手段13によって算出されるもので、65℃から90℃の範囲で決定されるものである。
【0019】
また、加熱制御手段25は、前記所定の目標温度差ΔHmを前記目標沸き上げ温度と、外気温度センサ22の検出する外気温度と、入水温度センサ23の検出する入水温度とに基づいて、次式により算出する。
ΔHm=外気温度×A+入水温度×B+目標沸き上げ温度×C+D
(ここで、A、Bは負の係数、Cは正の係数、Dは固定値である。)
【0020】
前記所定の目標温度差ΔHmは、上式より外気温度が高くなる程、値が小さくなっていき、入水温度が高くなる程、値が小さくなっていき、目標沸き上げ温度が高くなる程、値が大きくなるものであり、外気温度や入水温度といった条件が刻々と変化する沸き上げ運転中において、その時その時でヒートポンプ式加熱手段3の運転効率が最大効率となる所定の目標温度差ΔHmを確実に求めることができ、ヒートポンプ式加熱手段3を高効率で運転させることができるものである。なお、前記所定の目標温度差ΔHmの算出は沸き上げ運転中常時行われるものであってもよく、電子膨張弁16の開度をフィードバック制御する所定の周期にあわせて行ってもよいものである。
【0021】
先に説明したとおり、沸き上げ運転の際、加熱制御手段25は、吐出温度センサ20の検出する冷媒温度と流出温度センサ21の検出する冷媒温度との温度差ΔHが、算出した所定の目標温度差ΔHmとなるように電子膨張弁16の開度を制御しているが、具体的には、ΔH<ΔHmの場合は、電子膨張弁16の開度を閉じる方向に制御し、ΔH>ΔHmの場合は、電子膨張弁16の開度を開く方向に制御するものである。
【0022】
ここで、沸き上げ運転中のある一定条件下での電子膨張弁16の開度に対する制御パラメータの関係について、図2を用いて説明するが、横軸は電子膨張弁16の開度、縦軸は電子膨張弁16の開度制御によって制御される制御パラメータであり、ここでは圧縮機14から吐出され吐出温度センサ20で検出される冷媒の吐出温度と水冷媒熱交換器15から流出し流出温度センサ21の検出する冷媒の流出温度との温度差とする。
【0023】
図2に示すように、このものでは、電子膨張弁16開度を変化させると、圧縮機14から吐出される冷媒の吐出温度および水冷媒熱交換器15から流出する冷媒の流出温度の双方が変化するので、図2中の太実線で示されるように電子膨張弁16の開度変化1パルス当たりの温度変化量が大きく、吐出温度と流出温度との温度差を所定の目標温度差とするまでの制御速度が速く、制御性が良く、ヒートポンプ式加熱手段3をすばやく最大効率で運転させることができるものである。
【0024】
このように、上述のような加熱制御手段25による制御が行われながら、沸き上げ運転が進行していくと、貯湯タンク2の下部の水がヒートポンプ式加熱手段3へ循環され、貯湯タンク2の上部から目標沸き上げ温度に加熱された湯が積層状態に貯湯される。貯湯タンク2内に必要な湯量が沸き上げられたことを貯湯温度センサ12で検出するか、ヒートポンプ式加熱手段3の入水温度センサ23で検出する入水温度が沸き上げし難い所定の高温度以上を検出するか、あるいは電力料金単価の安い深夜時間帯が終了した時点で、貯湯制御手段13は沸き上げ運転を停止するべく加熱制御手段25に停止指示を出し、加熱制御手段25は圧縮機14と加熱循環ポンプ19の運転を停止して、沸き上げ運転を終了する。
【0025】
この沸き上げ運転の終了直前の沸き終い時においては、貯湯タンク2内の湯層と水層との間の混合層の湯水がヒートポンプ式加熱手段3へ流入し、このとき、水冷媒熱交換器15の水側に流入する湯水の入水温度が徐々に上昇していくものである。
【0026】
ここで、沸き終い時におけるヒートポンプサイクル18の状態を図3を用いて説明するが、本実施形態での沸き上げ運転におけるヒートポンプサイクル18の状態は、図3の鎖線で示した安定時の状態から実線で示した沸き終い時の状態となる。なお、図3中に点線で描かれているのは、図5で示した従来の沸き終い時のヒートポンプサイクル18の状態であり、本実施形態の沸き終い時のヒートポンプサイクル18の状態との比較のためのものである。本実施形態では、吐出温度センサ20の検出する冷媒温度と流出温度センサ21の検出する冷媒温度との温度差ΔHが所定の目標温度差ΔHmとなるように電子膨張弁16の開度を制御するため、水冷媒熱交換器15の水側に流入する湯水の入水温度が高くなっても、それに応じて最適な目標温度差ΔHmを算出することができ、温度差ΔHを算出した最適な目標温度差ΔHmに保つので、沸き上げ運転中、特に、水冷媒熱交換器15の水側に流入する入水温度が高くなる沸き終い時においても、運転効率が最大となる比エンタルピー差を保ちながらヒートポンプ式加熱手段3を運転させることができるものである。
【0027】
なお、本発明はこれまで説明してきた一実施形態に限定されることなく、その趣旨を変更しない範囲で適用可能なもので、例えば、ヒートポンプサイクル18は減圧器としてエジェクターを用いたエジェクターサイクルでもよいものである。
【0028】
また、ヒートポンプサイクル18は、図4に示すように、水冷媒熱交換器15を通過した後の高圧冷媒と圧縮機14の吸入側の低圧冷媒との間で熱交換を行う内部熱交換器26を備えた構成としてもよいものであり、この場合、流出温度センサ21は、水冷媒熱交換器15より下流側で、高圧冷媒が通過する内部熱交換器26より上流側の冷媒温度を検出する位置に配設し、吐出温度センサ20の検出する冷媒温度と流出温度センサ21の検出する冷媒温度との温度差ΔHが所定の目標温度差ΔHmとなるように電子膨張弁16の開度を制御することで、先に説明した一実施形態と同様、運転効率が最大となる比エンタルピー差を保ちながらヒートポンプ式加熱手段3を運転させることができるものである。
【符号の説明】
【0029】
2 貯湯タンク
3 ヒートポンプ式加熱手段
4 加熱循環回路
14 圧縮機
15 水冷媒熱交換器
16 電子膨張弁(減圧器)
17 空気熱交換器(蒸発器)
20 吐出温度センサ
21 流出温度センサ
22 外気温度センサ
23 入水温度センサ
25 加熱制御手段(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、圧縮機、水冷媒熱交換器、減圧器、蒸発器を備えたヒートポンプ式加熱手段と、該ヒートポンプ式加熱手段の前記水冷媒熱交換器の水側と前記貯湯タンクとを環状に接続する加熱循環回路と、前記貯湯タンク内の湯水を目標沸き上げ温度に加熱するよう前記ヒートポンプ式加熱手段を制御する制御手段とを備えたヒートポンプ式給湯装置において、前記制御手段は、前記圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度と前記水冷媒熱交換器から流出する冷媒の流出温度との温度差が、所定の目標温度差となるように前記減圧器の開度を制御するようにしたことを特徴とするヒートポンプ式給湯装置。
【請求項2】
前記所定の目標温度差は、前記目標沸き上げ温度と外気温度と前記水冷媒熱交換器に流入する湯水の入水温度とに基づいて算出するようにしたことを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−13267(P2012−13267A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148410(P2010−148410)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)