説明

ビタミンK3誘導体/NSA配合物

NAが高度に安定化されたビタミンK3誘導体粒子をもたらす物理的な保護層(連続的および非連続的の両方)を形成する、高度に安定化されたニコチンアミド(NA)が配合されたビタミンK3誘導体粒子、ならびにその製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、NAが高度に安定化されたビタミンK3誘導体粒子をもたらす物理的な保護層(連続的および非連続的の両方)を形成する、高度に安定化されたニコチンアミド(NA)が配合されたビタミンK3誘導体粒子、ならびにその製造方法を開示する。
【0002】
ビタミンK3(2−メチル−1,4−ナフトキノン;メナジオン)誘導体は、動物飼料産業における1つの成分として使用される。ビタミンK3誘導体は、ビタミンの安定性を高めるために、続けて開発された。1940年代において、相対的に低い安定性を有するMSB(メナジオンナトリウムビスルファイト)が市場に投入された。10年後、MSB、NaHSOおよび水からなるビスルファイト複合体であるMSBCが、新規の生成物形態として提供された。この生成物の安定性は、わずかにより高いが、4〜6ヶ月の保存期間を保証するのに十分ではなかった。1960年代において、置換ピリミジンのメナジオンビスルファイト付加体(例えば、2−ヒドロキシ−4,6−ジメチル−ピリミジニウムメナジオンビスルファイトまたはMPB)が、高湿および高温において、MSBと比較してより高い安定性を示すことが示された(米国特許第3,328,169号明細書)。1970年代の間に、MSBがニコチンアミドと反応する場合(MPBの場合には、代わりに2−ヒドロキシ−4,6−ジメチル−ピリミジンとの反応)、得られる有機ビスルファイト付加体(ニコチンアミドメナジオンビスルファイトまたはMNB)も、不活性成分をビタミン活性を有する化合物で置き換えるという利点を有するビタミンKの安定化形態であることが示された(米国特許第4,577,019号明細書および英国特許第2025976号明細書)。
【0003】
これらの特許において提供された全ての実施例において、各モルのMSBを1〜3モルのニコチンアミドと反応させることにより、1モルのMNBを沈殿させる(これは、1モルのメナジオンと1モルのニコチンアミドとを含む)。この過剰量のニコチンアミドの使用に対する唯一の理由は、沈殿収量を増大させることにある。しかしながら、先行技術文献には、MSB分子中のナトリウムカチオンをプロトン化ニコチンアミド分子で置き換える化学反応により作られる最終的なMNB生成物の組成およびそのよりずっと低い水溶性により沈殿するMNBの形成を修飾するために、過剰量のNAが使用され得るという示唆はない。
【0004】
最終的なMNB生成物は、MSB分子におけるナトリウムカチオンがプロトン化ニコチンアミド分子により置き換えられる化学量論的な化学反応により作られる。過剰量のニコチンアミドの使用は、そのよりずっと低い水溶性により沈殿するMNBの形成も増大させる。
【0005】
今日、MNBは、市場において最も安定な生成物であり、例えばブロイラーペレットにおいてもっぱら使用される。しかしながら、このペレット形成プロセス(80℃、高湿)の間でさえ、50%のMNBが分解される。塩化コリンを含む予混合物の場合においても、MNBが最も安定な生成物であると考えられるが、図2に示すように、保存の6ヶ月後に、予混合物は最初の量の70%以下のK3を含む(M. Coelho, Proceedings 13th Annual Florida Ruminant Nutrition Symposium, pp 127-145からのデータ)。
【0006】
先行技術の記述によると、安定性の問題は、最低K3濃度を保証するために、飼料中に付加的な量のビタミンK3を添加することにより解消される。しかしながら、これは、付加的なコストを生じる。
【0007】
米国特許第5,128,151号明細書は、MSBの安定性を改善するための生理学的に許容される有機または無機酸の使用を開示している。前記アプローチの欠点の1つは、ビタミン活性を有さない保護剤の使用である。実際に、ビタミン活性を有さない外因性の化合物の添加は、動物飼料におけるK3源としてのMPBの使用において、連続的な下降傾向に対する主要な寄与因子であった。一方、MNBの使用における上昇傾向は、主に、MPB中の外因性の不活性化合物(ビタミン活性を有さない)が、B3ビタミン活性を有するナイアシンアミドで置換されたという事実による。推奨される量のビタミンB3とビタミンK3の比較(MSBまたはMNBとして表される)は、重量比が動物種に依存して2〜20の間で変化することを示す(図3を参照されたい)。
【0008】
このように、過剰量のB3を保護剤として含む配合物は、いずれの場合も、予混合物に添加する必要のあるビタミンB3源が存在するというさらなる利点を有する。
【0009】
ニコチンアミド(NA)および/またはカルバゾクロム(CSS)と共にMNBまたはMSBを除草剤とその不活性支持体との混合物に同時添加することは、先行技術文献において報告されている(特開昭58−206505号公報)。この文献における目的は、除草剤の分散後に、ビタミンK3および/またはニコチンアミドおよび/またはカルバゾクロムと除草剤との共存を保証し、除草剤に接するであろう異なる水生種における除草剤の毒性の影響をできる限り低減することにある。それ故、この先行技術文献の目的は、いずれかの固体混合物におけるビタミンK3誘導体の安定性を増大させることでもなく、飼料の予混合のような厳しい環境またはペレット形成のような厳しい条件の操作の間に、その安定性を増大させるために、ビタミンK3誘導体の周囲にいずれかの保護バリアを形成するのに適した提案された組み合わせの成分により調製されるタイプの配合物でもない。実際に、ビタミンK3誘導体(MNBまたはMSB)とニコチンアミドとの混合物は、液体形態で残り(除草剤に溶解)、基質ペレットに含浸される。この態様において、添加されたニコチンアミドは、安定性の点で、MNBまたはMSBに対していずれの保護効果も及ぼさない。
【0010】
対照的に、本発明による配合物は、ビタミンK3を保護する物理的バリアを形成することにより、特にMNBのようなビタミンK3の安定化形態でさえ望ましい安定性を示さない固体混合物において(図2を参照されたい)、過剰量のNAが、ビタミンK3誘導体によりずっと高い安定性を与えるという事実により特徴付けられる。この物理的バリアは、連続的または非連続的な層の形態であり、安定化ストレス因子に曝される表面積を減少させることにより、ビタミンK3誘導体に対してより高い安定性を与える。予混合、ペレット形成および保存におけるビタミンの安定性に影響を与える典型的なストレス因子は、温度、湿度、酸化還元反応および光である。
【0011】
いくつかのビタミンK3誘導体ならびにNAの安定性におけるこれらの因子のいくつかの影響を、以下の表1に示す(ref. ≪Keeping Current (KC 9804), Vitamins in pet food), BASF Corporation, 1998)。
【表1】

【0012】
このように、各因子は、ビタミンの分解速度を増大させ、安定性をより低くする。ビタミン保持値から、ビタミンK3の最も安定な形態として認識されるMNBと比較しても、ナイアシンアミドがよりずっと高い安定性を有することも分かる。それ故、上述したように、NAの物理的バリアの作製は、露出した感受性の高いビタミンK3誘導体をより感受性の低いNAの層で部分的または全体に覆うことにより、より安定性の高い配合物を得ることを可能にする。
【0013】
さらに、本発明の配合物において、両方の成分(ビタミンK3誘導体およびニコチンアミド)がもっぱら固体形態で存在することにも留意すべきである。
【0014】
MPB(米国特許第328169号明細書)およびMNB(米国特許第4,577,019号明細書および英国特許第2025976号明細書)のような生成物のより高い安定性は、以下の因子に関連する:
・結晶水の非存在
・低い水溶性
・飽和水溶液のpHが4.5未満である
これらの因子に反して、本発明による生成物のより高い安定性は、最終的な固体粒子における非化学的に結合した過剰なNAの層の保護効果に基づき、これは、表1に示したように、NA分子のよりずっと高い化学的な耐性に基づく。安定性の問題とは別に、予混合物中のビタミンK3含量は1重量%以下であり、これは、ビタミン予混合物中で有意な分離または均質性の問題を生じさせる。理論的に良好な分布を保証するための、他の化合物の範囲での相対的に大きな粒子(100〜300μm)との低い分離および非常に小さな粒子との高い均質性の両方の要求は、同時には達成できない。
【0015】
さらに、小さな粒子は、より高度に特異的な表面により、より低い安定性をもたらす。
【0016】
先行技術に記載されている全ての実施例は、ビタミンK3誘導体の安定性を向上させ、粒子サイズ分布を改善することにより、当該分野の現状の欠点を克服すること、ならびにそのような方法により得られる生成物に対する要求が存在することを示している。
【0017】
前記問題は、驚くべきことに、特許請求の範囲に定義する本願発明の方法により解決され、以下の組み合わせにおいて当該分野の現状より優れた生成物を提供する:
1.より高い安定性;
2.より優れた分離特性;予混合物中の全ての他の粒子と比較して、同じサイズを有する粒子を生じる狭い粒子サイズ分布を保証する前記配合方法によると、分離が含まれる。
【0018】
3.より優れた有効性;低いビタミンK3誘導体濃度においても、混合物内でのより優れた拡散により、ビタミンの均一な分布をもたらす。
【0019】
4.少ない粉塵;前記配合方法によると、新規の生成物は、少ない粉塵の画分を有する。
【0020】
5.配合物中の一定量の物質;活性物質のみからなる配合物によると、さらなる充填剤またはコーティング物質が必要とされない。
【0021】
一般的に、前記方法は、以下の工程を含むことにより特徴付けられる:
a)NA、ビタミンK3誘導体および水を混合することと;
b)工程a)の混合物を乾燥すること;
ただし、有機または無機酸は、工程a)およびb)において使用されない。
【0022】
本発明による「有機または無機酸」は、pKa<7のいずれかのプロトン酸またはルイス酸として定義される。
【0023】
物理的な保護層は、上記で挙げた技術的な利点を達成するためにビタミンK3誘導体粒子の表面の十分な部分が被覆される限り、連続的であっても非連続的であってもよい。
【0024】
この方法は、使用されるビタミンK誘導体と添加される過剰量のNAとの間に化学反応がない点において、英国特許第2025976号明細書および米国特許4,577,019号明細書において報告されたものとは実質的に異なる。
【0025】
噴霧乾燥器または噴霧造粒機において、水の除去を行うことが好ましくてよい。
【0026】
他の好ましい方法は、高剪断造粒機(high shear granulator)または粉砕、混練、乾燥および破砕の組み合わせである。
【0027】
ビタミンK3誘導体/NAの質量比は、2/1〜1/100、特に1/1〜1/10であることが好ましくてよい。
【0028】
本発明による「誘導体」は、1つ以上の原子を他の原子または原子団で置換することにより親化合物から生じる化合物を示す、許容される化学的意味で使用される。
【0029】
ビタミンK3誘導体は、MNB、MBP、MSBCおよびMSBからなる群より選択される。
【0030】
本発明の別の目的は、本発明の方法により得られる、NAを配合したビタミンK3誘導体である。
【0031】
配合されるビタミンK3誘導体粒子は、少なくとも50μm、好ましくは50〜1000μm、最も好ましくは100〜400μmの大きさを有することが好ましくてよい。
【0032】
本発明を、以下の非限定的な例によりさらに説明する。
【0033】
実施例1
噴霧造粒
60℃の温度、実験室の造粒機(Aeromatic)において、40%(w/w)NA溶液(60℃に加熱)を用いて、MNBを噴霧造粒した。実験後、MSB:NAの比をHPLCにより1:0.87と測定した。さらなる検討のために、100μm〜315μmの間の画分を単離した。
【0034】
粉砕、混練、乾燥および破砕の組み合わせ
・MNBよびNA(比1:2)をボールミル(Analysette Kugelmuhle)において粉砕し、ニーダーにおいて水と混合した(2h、〜15%水、25℃)。その後、生成物を50℃、15mbar、減圧乾燥器において、16時間乾燥した。生成物を乳鉢で粉砕し、100μm〜315μmの振動篩において分画した。
【0035】
加速度安定性試験
NA配合MNBの安定性試験のためのマトリックスを、表2に示す。予混合物の組成は、以下に「予混合物」として示す。
【表2】

【0036】
加速度安定性試験のために、上記混合物のサンプルをHPLC調製のためのフラスコに0日目に分割した。これらのフラスコを25℃の一定温度、65%の湿度の人工気候室に保管した。各データ点について、2つのサンプルを採取した。加速度安定性試験において、生成物を、MNBとNAの標準混合物および上述した他の物質と比較した。その結果を、図1に示す。
【0037】
実験は、NAを予め配合したMNBの、純粋なMNBよりも高い安定性を示す。NAコーティングは、単に混合および造粒するよりもよりよい値を示す。11日後のMSB濃度は、測定の精度の範囲において、一定のままである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】加速度安定性試験において、生成物をMNBとNAの標準混合物および他の物質と比較した結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチンアミド(NA)がビタミンK3誘導体粒子上で物理的な保護層を形成する、NAを配合したビタミンK3誘導体粒子。
【請求項2】
前記粒子は、少なくとも50μm、好ましくは100〜400μm、最も好ましくは200〜350μmの大きさを有する請求項1に記載のニコチンアミド(NA)を配合したビタミンK3誘導体粒子。
【請求項3】
前記ビタミンK3誘導体は、MNB、MBP、MSBCおよびMSBからなる群より選択される請求項1および/または2に記載のニコチンアミド(NA)を配合したビタミンK3誘導体粒子。
【請求項4】
ビタミンK3誘導体/NA質量比は、2/1〜1/100、特に1/1〜1/10である請求項1〜3の少なくとも1項に記載の生成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のNAを配合したビタミンK3誘導体粒子の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
a)NA、ビタミンK3誘導体および水を混合することと;
b)工程a)の混合物を乾燥すること;
ただし、有機または無機酸は、工程a)およびb)において使用されない。
【請求項6】
混合後の水の除去は、噴霧乾燥機または噴霧造粒機において行われる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
混合および配合は高剪断造粒機において行われ、乾燥は対流または接触乾燥機において行われる請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、粉砕、混練、乾燥および破砕の組み合わせである請求項5に記載の方法。
【請求項9】
ビタミンK3誘導体/NA質量比は、2/1〜1/100、特に1/1〜1/10である請求項5〜8の少なくとも1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−500730(P2013−500730A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523238(P2012−523238)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004729
【国際公開番号】WO2011/015334
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(391003864)ロンザ リミテッド (36)
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
【Fターム(参考)】