説明

ビニール穴あけ機

【課題】にんじん等の植物に使用する大型トンネル栽培の換気の為、ビニールに連続して穴をあける際に、ビニールの抜けカスがトンネル内や、圃場へ落ちないようにする。
【解決手段】抜きカス保持具4を設けたビニール穴あけ機10において、抜きカス保持具4の先端面4a、4bが外側0に向いているため、抜きカスを抜きカスたまり部Sへためながら連続して作業をすることができ、作業中に抜きカスたまり部Sから抜きカスが落下するのを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニールトンネルやマルチフィルム等に穴をあけるビニール穴あけ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル用フィルムを用いた栽培方法においては、トンネル内が日中高温になり栽培作物に対する高温障害の問題がある。かかる高温障害を解決する手段として、気温の上昇にともないその都度ビニールに穴をあけて換気する方法がある。換気の際にビニールに穴をあける方法として、従来は特許文献1のような、マルチフィルム穴あけ機を用いてフィルムに穴を開けていた。
【0003】
上記従来のマルチフィルム穴あけ機を図4に示す。このマルチフィルム穴あけ機50は、ロッド51の下端部には押え部53が設けられている。この押え部53は円盤状の押え部本体57と補強部58とからなる略帽子状に形成され、上記補強部58は上記ロッド51の支持ロッド部56の外周に外嵌される。また、上記ロッドの支持ロッド部56下端にはピン54が螺合され、該ピン54には円形状の抜きかす押出部が摺動自在にかつ交換可能に外嵌されている。穴あけを行う際には、ロッド51の下端をマルチフィルムに押し付け、ピン54がマルチフィルムと畝床を挿通し、抜きかす押し出し部55がマルチフィルムと当接して押さえ、さらに押し込むと切刃部52がマルチフィルムに食い込み、押え部本体57がマルチフィルムと当接してこれを押さえ、この状態でロッド51をピン54を中心にして所定角度回転させるとマルチフィルムに穴を開けることができる。こうしてマルチフィルムに穴が開けられると、ロッド51の下方押込力を弱めると、コイルばね59のばね力によってロッド51が上方に押し上げられ、マルチフィルムの抜きかすがピン54に挿通した状態で切刃部52から離脱する。同様な操作を繰り返してマルチフィルムに穴を開けていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】公開実用平成2−142144
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビニールトンネル栽培の換気の為に穴あけを行う際には、何箇所も穴を開ける必要がある。例として、面積10アール程度のビニールトンネル栽培で、3月から5月にかけて月平均7000箇所の穴あけを行う。
図4に示すマルチフィルム穴あけ機50は、ピン54にフィルムがたまる構成となっているが、繰り返し穴あけを行うので、何回も抜きかす押出作業をしなければならない。また、ピン54にたまっているフィルムが少しの衝撃により、ピン54から外れ、ビニールトンネルのハウス内外へ抜きかすが落下してしまい、拾うのが大変面倒であった。また、トンネル栽培のフィルムは作業者の背丈より少し低い位置にあるが、換気の為にトンネルの頂部へ穴を開ける必要があり、重量のあるマルチフィルム穴あけ機を何度も持ち上げて作業するため、大変労力がかかっており、その点で改良の余地がある。
【0006】
よって、本件はビニール穴あけ機において、大量の抜きカスを保持しても抜きカスが落下しないビニール穴あけ機を提供することを主たる課題とし、重量の軽い穴あけ機とすることを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、穴あけ作業時に握る把手部と、該把手部の下端へビニールフィルムを押えるフランジ部と、該フランジ部の下端へ同心円状に刃体部を備えたビニール穴あけ機において、該刃体の内側下部に先端が該刃体より下方に位置する抜きカス保持具を有し、該抜きカス保持具の先端が刃体へ向かって外側に傾斜していることを特徴とするビニール穴あけ機を提供している。
【0008】
上記構成によれば、抜きカス保持具の先端がビニールに刺さり、ビニールを固定させた状態で筒状の刃体で一気にビニールを切り取ることができ、作業を繰り返してビニールがたまっても抜きカス保持具の先端は、外向きとなっているので、ビニールが下に落ちず、繰り返し作業をすることができる。
【0009】
本発明は、前記フランジへ、抜きカスを抜く抜きカス抜き具を挿入するための抜きカス抜き穴をあけたことを特徴とすることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、抜きカスを抜くための押板や押出構造を除くことができるので、ビニール穴あけ機の重量が軽くなり、作業を繰り返し行っても、疲れにくくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、抜きカス保持部の先端が末端より外向きになっているので、抜きカスが機体より抜け落ちることが少なく、大量のビニールの抜けカスをためることができる。また、機体へたまった抜けカスの回収構造を無くし、フランジに設けた穴に押出具を突き刺して回収することにより、抜きカス押出機構を機体から省くことができ、全体の重量を軽くすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ビニール穴あけ機のA-A断面図である。
【図2】ビニール穴あけ機のA-A断面図である。
【図3】ビニール穴あけ機の上面図である。
【図4】大型ビニールトンネルの穴あけ箇所を示す図面である。
【図5】従来のマルチフィルム穴あけ機である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態にかかるビニール穴あけ機について図面を参照して説明する。
図1に示すように、ビニール穴あけ機10は、筒体1の下縁部に刃体2を形成する。該刃体2は、連続波形をなしている。筒体1の上部には、フランジ3が設けられている。該フランジ3は長方形の端面が円弧状に形成されている。該フランジ3へ抜きカス保持具4が把手5により固定されている。筒体1と、フランジ3は、把手6に固定されており、把手6とフランジ3の間へ把持部7が固定されている。
【0014】
抜きカス保持具4は、刃体2の先端より下方に突出しており、抜きカス保持具4の先端が外側に向いている。本発明において、外側とは矢印Oで示す方向となっている。中心軸となる把手6から矢印O方向に向かって、抜きカス保持具4の先端面4a、4bが両面とも外側O方向へ向かっている。本発明において、抜きカス保持具4は、抜き穴8aから8dの近傍へ4箇所設けられている。
【0015】
本例の抜きカス保持具4は弾性材料(例えば、SUS301CSP)を適宜用いることが望ましい。弾性材料を使用することにより、抜きカスを押し出す際に把手6方向へたわみ、抜きカスの押出しがスムーズに行うことができる。
【0016】
前記抜きカス保持具4の先端面4bの傾斜角度αは、2度から8度に設定されており、本実施形態では5度となっている。前期抜きカス保持具4の傾斜角度αが2度より小さいと保持したビニールの抜きカスが落下してしまう恐れがある。一方、抜きカス保持具4の傾斜角度αが8度より大きいと、たまった抜きカスを抜く際に、抵抗が大きくなり抜きカスを円滑に抜くことができなくなる恐れがある。
【0017】
次に、筒体1と刃2及び抜きカス保持具4の位置関係について説明する。
筒体1の側面と抜きカス保持具4のエッジ部Eとの距離をYで示す。この距離Yは5.5mmから11.5mmに設定されており、本実施形態では8.5mmとなっている。距離Yが11.5mmより長いと抜きカス保持具で保持している抜きカスの端がバタつき、次に穴をあける際に再び刃2に引っかかり切れ味が悪くなる。
また、筒体1の刃2の先端と抜きカス保持具4のエッジ部Eとの距離をXで示す。この距離Xは5mmから11mmに設定されており、本実施形態では8mmとなっている。距離Xが5mmより短いと、エッジ部Eで抜きカスが留まってしまい、抜きカスたまり部へ抜きカスがたまらず、エッジ部Eで保持されたままの抜きカスを毎回取らなければならない。抜きカスがエッジ部Eを越えてから、筒体1の刃2が突き刺さることにより、抜きカスがスムーズに送られ抜きカスたまり部Sへ抜きカスを多数ためておくことができる。
【0018】
図2の上面図に示すように、フランジ3の上面には抜きカスを抜くための抜き具(図示せず)を差し込む抜き具挿し込み穴8a〜8dが四箇所設けられている。本発明の抜き具は、略コの字型を用いており、対角線上の穴2箇所(8aと8cもしくは8bと8d)へ抜き具を順に挿し込み、抜きカスたまり部Sへたまった抜きカスを抜く構成としている。
フランジ3を円盤状に構成しないことにより、ビニールトンネルのパイプ近傍へ穴をあける際に、フランジ3が邪魔にならない構成となっている。
【0019】
把持部7は、130cm程度の棒状の物で構成されており、ビニールトンネルの頂部へも充分届く長さとなっている。
また、ビニールトンネルの下方や作業者の腰から上方にかけて穴をあけたい場合は、把持部7を外すことができ、把手6を持って、ビニールへ穴をあけることができる。
【実施例】
【0020】
次にこのビニール穴あけ機の使用方法を説明する。
にんじん栽培を例にして説明する。
10月頃大型ビニールトンネルハウスを設置し、設置と同時に頂上部へ穴H1をあけていく。頂上へ穴を開ける際には、
(1)把持部7を持ち、頂上部へ向けて打ち付けると、ビニールに穴があく。穴H1は、換気の他農薬を散布する為の穴として使われる。ビニールの抜きカスは、抜きカスたまり部Sへたまるので、続けて作業を行うことができる。
(2)50箇所程度穴を開けたら、抜きカス抜き具(図示せず)を抜き各抜き穴8aと8c、8bと8dへそれぞれ挿入させ、ビニールが抜きカス保持具先端へ移動してくるので、刃2部分に気を付けながら抜きカスを回収する。
穴の必要数まで(1)、(2)の作業を繰り返す。
次に、11月頃に植物Nの葉上方へ穴H2をあけていく時には、把持部7を取り外し、把手6を持ち上記と同じ方法で繰り返し穴をあけていく。この時、ビニールトンネルハウスのパイプPの近傍へあけているが、パイプPとパイプPの中心部へ穴をあけてしまうと、雨水が入り植物に被害を与えたり、風が吹いた際に敗れる危険性があるので、できるだけパイプPの近傍へ穴をあける必要がある。
11月以降は、植物の生長、気温等を判断し、順次穴H3、H4、H5とあけていき、4月から5月にかけて収穫時季となる。
【符号の説明】
【0021】
1 筒体
2 刃
3 フランジ
4 抜きカス保持具
5 ボルト
6 把手
7 把持部
8a〜8d 抜きカス抜き穴
10 ビニール穴あけ機
S 抜きカスたまり部
P パイプ
N 植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴あけ作業時に握る把手部と、該把手部の下端へビニールフィルムを押えるフランジ部と、該フランジ部の下端へ同心円状に刃体部を備えたビニール穴あけ機において、該刃体の内側下部に先端が該刃体より下方に位置する抜きカス保持具を有し、該抜きカス保持具の先端が刃体へ向かって外側に傾斜していることを特徴とするビニール穴あけ機。
【請求項2】
前記フランジへ、抜きカスを抜く抜きカス抜き具を挿入するための抜きカス抜き穴を開けたことを特徴とする請求項1に記載のビニール穴あけ機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate