説明

ピアスホール用清掃具およびその製造方法

【課題】安価,容易に製造できるとともに、安全に使用できるピアスホール用清掃具を提供する。
【解決手段】合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維とが混合されて細長形の棒状体に形成されたピアスホール用清掃具は、加熱処理で溶融した合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維との融着状態により、ピアスホールへの挿通の案内部分である一端部側1が相対的に小径で硬質の均等質構造とされ、清掃部分である他端部側2が相対的に大径で軟質の多孔質構造とされてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピアスホール(身体に直接的に装身されるピアスを挿通するために耳たぶ等に穿たれた孔)を清掃するためのピアスホール用清掃具に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ピアスホールについては、穿孔状態と衛生状態とを維持するために定期的な清掃が必要とされる。このため、ピアスホールの清掃を簡便に行えるようにした各種のピアスホール用清掃具が提供されてきている。
【0003】
従来、ピアスホール用清掃具としては、例えば、以下に記載のものが知られている。
【特許文献1】 特開平8−206031号公報
特許文献1には、細長形の棒状体に形成され、一端部側がそのままとされ、他端部側に繊維,フェルト,スポンジ等が接着剤で固定されたピアスホール用清掃具が記載されている。
【0004】
特許文献1に係るピアスホール用清掃具は、一端部側を相対的に小径のピアスホールへの挿通の案内部分とし、他端部側を消毒薬を含浸させる清掃部分として、一端部側から他端部側までピアスホールに挿通し、他端部側をピアスホールで反復スライドさせて物理的に異物を除去したり化学的に消毒したりする清掃を行うものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係るピアスホール用清掃具では、細長形に形成された棒状体に対して部分的に接着剤を塗布して繊維等を接着させて固定する製造工作が必要とされるため、製造が面倒で製造コストが高くなるという問題点がある。また、棒状体に繊維等を固定するために接着剤が使用されているため、消毒薬の種類によっては接着剤が溶出して身体に悪影響を及ぼすおそれがあるという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、安価,容易に製造することができて安全に使用することのできるピアスホール用清掃具と、このピアス用清掃具を製造するに好適なピアスホール用清掃具の製造方法とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するため、本発明に係るピアスホール用清掃具は、特許請求の範囲の請求項1に記載の手段を採用する。
【0008】
即ち、合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維とが混合されて細長形の棒状体に形成され、加熱処理で溶融した合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維との融着状態により一端部側が相対的に小径で硬質の均等質構造とされ他端部側が相対的に大径で軟質の多孔質構造とされてなる。
【0009】
この手段では、棒状体を加熱処理することで、溶融した合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維との融着状態により、一端部側を相対的に小径のピアスホールへの挿通の案内部分とし他端部側を消毒薬を含浸させる清掃部分とすることができ、棒状体に別部材を取付ける製造工作が不要となる。また、製造工作で加熱処理を用いて接着剤を不要にすることで、使用の際に消毒薬によっては接着剤が溶出して身体に悪影響を及ぼすことがなくなる。
【0010】
また、前述の課題を解決するため、本発明に係るピアスホール用清掃具の製造方法は、特許請求の範囲の請求項2に記載の手段を採用する。
【0011】
即ち、融点の異なる少なくとも2種類の合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維とを混合させて細長形の棒状体からなる材料を形成し、材料の一端部側を全種類の合成繊維が溶融する温度で加熱し、材料の他端部側を少なくとも1種類の合成繊維が溶融する温度で加熱し、材料の一端部側で合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維とを完全に融着させ、材料の他端部側で合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維とを不完全に融着させる。
【0012】
この手段では、棒状体からなる材料の一端部側の加熱温度と他端部側の加熱温度とを異ならせることで、溶融した合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維との融着状態により、一端部側を相対的に小径のピアスホールへの挿通の案内部分とし他端部側を消毒薬を含浸させる清掃部分とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るピアスホール用清掃具は、棒状体を加熱処理することで、溶融した合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維との融着状態により、一端部側を相対的に小径のピアスホールへの挿通の案内部分とし他端部側を消毒薬を含浸させる清掃部分とすることができ、棒状体に別部材を取付ける製造工作が不要となるため、安価,容易に製造することができる効果がある。また、製造工作で加熱処理を用いて接着剤を不要にすることで、使用の際に消毒薬によっては接着剤が溶出して身体に悪影響を及ぼすことがなくなるため、安全に使用することができる効果がある。
【0014】
本発明に係るピアスホール用清掃具の製造方法は、棒状体からなる材料の一端部側の加熱温度と他端部側の加熱温度とを異ならせることで、溶融した合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維との融着状態により、一端部側を相対的に小径のピアスホールへの挿通の案内部分とし他端部側を消毒薬を含浸させる清掃部分とすることができるため、前述の本発明に係るピアスホール用清掃具の効果を損なうことなく、加熱温度の調整という簡単な技術で製造することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るピアスホール用清掃具およびその製造方法を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
この形態では、耳たぶに穿たれたピアスホールの製造に好適なものを示してある。
【0017】
この形態は、図1に示すように、全体形状が細長形(直径1mm程度)の棒状体に形成されている。一端部側1は、相対的に小径で長さaが3〜5cm程度とされている。他端部側2は、相対的に大径で長さbが5〜15cmとされている。一端部側1から他端部側2へは、大きな段差が形成されることなくスムースに連続している。
【0018】
この棒状体は、融点の異なる少なくとも2種類の合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維とを混合させた材料Pから製造される。さらに具体的には、低融点のポリエステル繊維20〜40重量%を鞘とし、高融点のポリエステル繊維20〜40重量%と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維20〜40重量%とを芯として、束状に混合させた材料Pから製造される。この束状への混合については、絡げ,撚り等を加えることも可能である。
【0019】
材料Pは、図2〜図4に示すように、長尺に形成されて引出ローラRで加熱炉Hに間欠送りされ、加熱炉Hの内部で加熱処理され、加熱炉Hを通過した後にカッタCで切断される。
【0020】
加熱炉Hは、材料Pの通過方向の下手側から第1炉Ha,第2炉Hbが配置されている。第1炉Ha,第2炉Hbは、電熱ヒータ,熱風発生器等の加熱体Haa,Hbaの周囲を断熱材Hab,Hbbで覆ってなるものである。第1炉Haは、加熱体Haaが前述の一端部側1の長さaに相当する軸長を有して材料Pに近接(孔径1mm程度)するように配置されて、材料Pを高い温度で加熱するものである。第2炉Hbは、加熱体Hbaが前述の他端部側2の長さbに相当する軸長を有して材料Pから離間(孔径20mm程度)するように配置されて、材料Pを低い温度で加熱するものである。
【0021】
材料Pは、前述の一端部側1の長さaと他端部側2の長さbとの合計である長さc(図3(B)参照)を送り長として、引出ローラRの回転駆動で加熱炉Hの内部に送込まれる。そして、引出ローラRの回転駆動の停止により材料Pが加熱炉Hの内部に停止され、材料Pが第1炉Haの加熱体Haaと第2炉Hbの加熱体Hbaとでそれぞれ異なる温度で一定の時間をかけて加熱される。
【0022】
材料Pの加熱温度,加熱時間(材料Pの停止時間)については、一端部側1となる部分では低融点のポリエステル繊維と高融点のポリエステル繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維とが完全に融着する状態となり、他端部側2となる部分では低融点のポリエステル繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維とが不完全に融着して高融点のポリエステル繊維が溶融しない状態となるように設定される。
【0023】
加熱処理された材料Pは、引出ローラRの再度の回転駆動で前述の長さc送り長で加熱炉Hの外部へ送出される。なお、他端部側2となる部分が第1炉Haの加熱体Haaを通過する際に、加熱体Haaを停止させて必要以上に加熱するのを避けることもできる。
【0024】
加熱炉Hの外部へ送出された材料Pは、引出ローラRを通過した位置でカッタCで切断される。切断された長さは、送り長である長さc(長さa+長さb)である。
【0025】
加熱炉Hで加熱処理された材料Pは、一端部側1となる部分では相対的に小径で硬質の均等質構造とされ、他端部側2となる部分では相対的に大径で軟質の多孔質構造とされている。従って、一端部側1については、相対的に小径のピアスホールへの挿通の案内部分とすることができる。他端部側2については、消毒薬を含浸させる清掃部分とすることができる。
【0026】
この形態によると、特許文献1に係るピアスホール用清掃具のように細長形に形成された棒状体に対して部分的に接着剤を塗布して繊維等を接着させて固定する製造工作が不要で、材料Pを間欠送りして一端部側1,他端部側2で異なる温度で加熱処理するだけであるため、安価,容易に製造することができる。特に、加熱温度の調整という簡単な技術で製造することができるため、製造装置等が複雑化することはない。
【0027】
さらに、この形態を使用しても、接着剤を使用していないため、特許文献1に係るピアスホール用清掃具のように接着剤が消毒薬で溶出されることはない。従って、安全に使用することができる。
【0028】
以上、図示した形態の外に、ポリエステル繊維以外の合成繊維を使用することも可能である。
【0029】
さらに、ポリエステル繊維を含めて複数種類の合成繊維を使用することも可能である。
【0030】
さらに、綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維についても、複数種類を使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係るピアスホール用清掃具およびその製造方法は、ピアスホールの清掃以外に精密部品の清掃等にも使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】 本発明に係るピアスホール用清掃具を実施するための最良の形態の斜視図である。
【図2】 本発明に係るピアスホール用清掃具の製造方法に使用される製造装置の斜視図である。
【図3】 図2の要部の拡大図であり、(A),(B)の順に製造工程が示されている。
【図4】 図2の製造装置の工作手順のフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1 一端部側
2 他端部側
C カッタ
H 加熱炉
P 材料
R 引出ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維とが混合されて細長形の棒状体に形成され、加熱処理で溶融した合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維との融着状態により一端部側が相対的に小径で硬質の均等質構造とされ他端部側が相対的に大径で軟質の多孔質構造とされてなるピアスホール用清掃具。
【請求項2】
融点の異なる少なくとも2種類の合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維とを混合させて細長形の棒状体からなる材料を形成し、材料の一端部側を全種類の合成繊維が溶融する温度で加熱し、材料の他端部側を少なくとも1種類の合成繊維が溶融する温度で加熱し、材料の一端部側で合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維とを完全に融着させ、材料の他端部側で合成繊維と綿繊維または綿繊維に類する植物繊維,動物繊維とを不完全に融着させるピアスホール用清掃具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−178642(P2008−178642A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42913(P2007−42913)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(593215852)豊国商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】