説明

ピリジン−N−オキシド類の製造方法

【課題】ピリジン類から、抗菌剤もしくはその原料として、また医薬中間体等として有用なピリジン−N−オキシド類を高収率、高効率で製造する。
【解決手段】オキソ酸水和物およびリン酸の存在下、ピリジン類を過酸化物と反応させるピリジン−N−オキシド類の製造方法。オキソ酸水和物(M)とリン酸(P)のモル比はM/P=0.1〜10であることが好ましく、オキソ酸水和物はタングステン酸であることが好ましい。ピリジン類としては2−クロロピリジンが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリジン類から、抗菌剤もしくはその原料として、また医薬中間体等として有用なピリジン−N−オキシド類を高収率、高効率で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピリジン−N−オキシドの製造方法としては、無触媒もしくは触媒存在下で、ピリジン類と過酸化水素もしくは反応系内で発生させた有機過酸化物とを反応させる方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属酸化物およびオキシ酸を触媒として用い、モノ−およびジ−シアノピリジンと過酸化物を反応させる方法が記載されている。ただし、特許文献1の実施例では、触媒としてモリブデン、バナジウム又はタングステンの酸化物と酸との組み合わせが開示されているだけであり、オキソ酸水和物と酸を併用した実施例はない。また、特許文献1の実施例4では、本発明で必須とするリン酸を、酸化バナジウムと組み合わせて用いた例が開示されているが、本発明者らの検討の結果、シアノピリジン以外のピリジン類の反応にこの触媒の組み合わせを用いても、十分な収率が得られなかった。
【0004】
また、特許文献2には、触媒(タングステン化合物、バナジウム化合物、モリブデン化合物等)の存在下、pH3〜9でピリジン類と過酸化水素を反応させてピリジン−N−オキシドを製造する方法が記載されている。特許文献2にはまた、反応液のpHを制御するために塩酸、リン酸、硫酸などの酸を用いてもよいことが記載されているが、特許文献2の実施例では、タングステン酸ナトリウムと硫酸との組み合わせが開示されているだけである。
【0005】
特許文献3には、水中でタングステン酸アニオンを生成する化合物や、水中でモリブデン酸アニオンを生成する化合物を触媒として用い、ピリジン類と過酸化水素を反応させてピリジン−N−オキシドを製造する方法が記載されている。しかしながら、特許文献3の方法は、反応に酸を使用しないことを特徴のひとつとしている。特許文献3には、酸や有機溶媒を使用せずともピリジン−N−オキシドが高収率で得られると記載されているが、特許文献3の実施例を見ると、触媒としてタングストリン酸を用いた場合では収率が悪く、また、触媒としてタングステン酸を用いた場合、2−ピコリン、4−ピコリンを原料とする場合は収率が高いものの他のピリジン類を原料とする場合は収率が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−87251号公報
【特許文献2】特開平10−324678号公報
【特許文献3】特開2005−255560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ピリジン類から、抗菌剤もしくはその原料として、また医薬中間体等として有用なピリジン−N−オキシド類を、高収率かつ高効率で製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、触媒としてオキソ酸水和物とリン酸とを併用してピリジン類と過酸化物とを反応させることにより、ピリジン−N−オキシド類を高収率かつ高効率で製造することができることを見出した。
【0009】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0010】
[1] オキソ酸水和物およびリン酸の存在下、ピリジン類を過酸化物と反応させることを特徴とするピリジン−N−オキシド類の製造方法。
【0011】
[2] オキソ酸水和物(M)とリン酸(P)のモル比が、M/P=0.1〜10であることを特徴とする[1]に記載のピリジン−N−オキシド類の製造方法。
【0012】
[3] オキソ酸水和物がタングステン酸であることを特徴とする[1]または[2]に記載のピリジン−N−オキシド類の製造方法。
【0013】
[4] ピリジン類が下記一般式(1)で示されるものであることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載のピリジン−N−オキシド類の製造方法。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、Rはハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を表し、ピリジン環の2−,3−または4−位に結合するものとする。)
【0016】
[5] 一般式(1)におけるRがハロゲン原子であることを特徴とする[4]に記載のピリジン−N−オキシド類の製造方法。
【0017】
[6] ピリジン類が2−クロロピリジンであることを特徴とする[5]に記載のピリジン−N−オキシド類の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明のピリジン−N−オキシド類の製造方法によれば、触媒としてオキソ酸水和物とリン酸とを併用してピリジン類と過酸化物とを反応させることにより、抗菌剤もしくはその原料として、また医薬中間体等として有用なピリジン−N−オキシド類を高収率かつ高効率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明のピリジン−N−オキシド類の製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明のピリジン−N−オキシド類の製造方法は、触媒としてオキソ酸水和物とリン酸とを併用してピリジン類と過酸化物とを反応させることを特徴とする。
【0021】
本発明において、触媒としてオキソ酸水和物とリン酸とを併用することにより、ピリジン−N−オキシド類の収率が高まる理由の詳細は明らかではないが、オキソ酸水和物にリン酸が配位することで触媒活性が増すことによるものと推察される。
【0022】
<ピリジン類>
原料として用いるピリジン類としては、ピリジン;2−置換ピリジン、3−置換ピリジン、4−置換ピリジンなどの1つの置換基を有するピリジン;2,3−置換ピリジン、2,5−置換ピリジン、2,6−置換ピリジン、3,4−置換ピリジン、3,5−置換ピリジンなどの2つの置換基を有するピリジン;2,4,6−置換ピリジン、2,3,5−置換ピリジンなどの3つの置換基を有するピリジンなどが挙げられ、なかでも、反応性や得られるピリジン−N−オキシド類の用途において、1の置換基を有するピリジン、特に2−置換ピリジンが好ましい。
【0023】
また、ピリジンの置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基などが挙げられるが、なかでもハロゲン原子、アルキル基、アリール基が好ましく、特にハロゲン原子が好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子である。
アルキル基としては、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜12、好ましくは炭素数6〜10のアリール基、例えばフェニル基が挙げられる。
【0024】
原料ピリジン類として好ましいものは、下記一般式(1)で表され、このうち、特にRがピリジン環の2位に結合した2−置換ピリジンが好ましく、とりわけ2−クロロピリジンが好ましい。
【0025】
【化2】

【0026】
(式中、Rはハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を表し、ピリジン環の2−,3−または4−位に結合するものとする。)
【0027】
<過酸化物>
原料ピリジン類に反応させる過酸化物としては、過酸化水素、過酢酸等の過酸が挙げられるが、なかでも経済性、汎用性の点で過酸化水素が好ましい。
【0028】
過酸化水素は、通常、過酸化水素水として、反応系に供給される。
過酸化水素水は工業的に入手可能なものでよく、通常30〜70重量%、好ましくは30〜35重量%の濃度で提供されている。
【0029】
過酸化水素等の過酸化物の使用量は、原料ピリジン類1モルに対して、通常1〜5モル、好ましくは1〜3モルである。過酸化物の使用量が多すぎると生産効率が悪化して経済的な製造法とはいえず、少なすぎると未反応原料が残留し、未反応ピリジン類の回収が必要となる。
【0030】
<オキソ酸水和物>
触媒として用いるオキソ酸水和物としては特に制限はないが、好ましくは、タングステン酸、モリブデン酸が挙げられ、なかでもタングステン酸が触媒活性の点で好ましい。
【0031】
オキソ酸水和物の使用量は、ピリジン類1モルに対して、通常0.01〜1.0モル、好ましくは0.01〜0.1モルである。オキソ酸水和物の使用量が多すぎると触媒の回収負荷が増し、少なすぎると反応収率が低下する。
【0032】
<リン酸>
助触媒としてオキソ酸水和物と併用されるリン酸の使用量は、ピリジン類1モルに対して、通常0.01〜1.0モル、好ましくは0.01〜0.1モルである。リン酸の使用量が多すぎると触媒回収の負荷が増し、少なすぎると反応収率が低下する。
【0033】
また、リン酸(P)に対するオキソ酸水和物(M)のモル比M/Pは、通常0.1〜10、好ましくは1〜5である。このM/P比が高すぎると反応収率が低下し、M/P比が低すぎると触媒回収時の負荷が増す。
【0034】
なお、リン酸としては、オルトリン酸(HPO)、メタリン酸(HPO)、ピロリン酸(H)などが挙げられるが、経済性の点からオルトリン酸が好ましい。
【0035】
<反応方法及び反応条件>
本発明において、ピリジン類、過酸化物、オキソ酸水和物及びリン酸の反応系への添加順序は特に制限はないが、ピリジン類、オキソ酸水和物及びリン酸を水に混合した溶液に、過酸化物を添加して反応させる方法が挙げられる。なお、水は使用してもしなくてもよい。
反応に水を使用する場合、水は、ピリジン類に対する重量比で、通常0.01〜1、好ましくは0.01〜0.1の割合で使用される。水の使用量が多すぎると反応速度が低下する。
【0036】
反応温度は、通常40〜100℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは50〜70℃である。反応温度が低過ぎる場合、反応速度が遅くなり、反応系が2層の不均一系になることもあり、好ましくない。反応温度が高過ぎても反応効率は頭打ちとなり、徒に加熱コストが上昇し、好ましくない。
反応時間は、通常1〜50時間、好ましくは5〜40時間、より好ましくは5〜20時間である。
【0037】
反応後は、オキソ酸水和物とリン酸を回収するために、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化カルシウムなどのカルシウム塩を、オキソ酸水和物とリン酸の合計酸量(モル)に対して1〜2(モル比)の割合で添加する。次いで、オキソ酸水和物とリン酸のカルシウム塩を析出させるために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性水溶液を添加し、反応液をpH8〜12、好ましくはpH10〜11に調整する。その後は、反応液を通常10〜60℃、好ましくは20〜30℃に冷却して、オキソ酸水和物とリン酸のカルシウム塩を濾別することにより、ピリジン−N−オキシド類を含む溶液を得ることができる。
【0038】
反応生成物のピリジン−N−オキシド類は、従来公知の方法により、ピリジン−N−オキシド類を含む溶液から分離され、必要に応じて精製され、回収される。また、このようにして得られたピリジン−N−オキシド類を含む溶液は、他の化合物を製造するための原料等として、そのまま使用することもできる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、何ら以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
以下の実施例および比較例で用いた試薬は次の通りである。
タングステン酸(HWO):和光純薬工業(株)製
酸化バナジウム(V):和光純薬工業(株)製
タングストリン酸(12タングスト(VI)リン酸n水和物:H(PW1240)・nHO):和光純薬工業(株)製
リン酸(HPO):和光純薬工業(株)製
硝酸(HNO):和光純薬工業(株)製
硫酸(HSO):和光純薬工業(株)製
【0041】
また、以下の実施例および比較例において、A%とは、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析を行なった際の全面積に対する原料ピリジン類とN−オキシド体の面積%(Area%)をそれぞれ表したものである。
なお、後掲の表1には、反応途中の原料とN−オキシド体(表1中、「NO体」と略記する。)のA%が記載されているが、これは、反応開始から2時間後、6時間後などの反応途中に、反応液をパスツールピペットで採取して測定サンプルとし、上記の方法によりA%を求めたものである。
【0042】
以下の実施例および比較例において、原料ピリジン類に対する過酸化水素水の使用量(原料ピリジン類1モルに対して過酸化水素0.83モル)と反応温度(60℃)はすべて同一条件とした。
【0043】
[実施例1]
2−クロロピリジン5.97g(0.052mol)とタングステン酸0.67g(0.0027mol)とリン酸0.018g(0.0016mol)を水1.25gに加え、攪拌しながら60℃に昇温した。ついで、35重量%過酸化水素水6.14g(0.063mol)を30分かけて滴下した。滴下後60℃で10時間反応を行った。反応終了後、塩化カルシウム0.63g(0.00567mol)を加え、28重量%水酸化ナトリウム水溶液で反応液のpHを10〜11に調整した。この反応液を30℃まで冷却した後に触媒のカルシウム塩を濾別し、濾液をHPLCで分析したところ、2−クロロピリジン−N−オキシドを99.9A%含んでいた。結果をまとめて表1に示す。
【0044】
[比較例1]
2−クロロピリジン5.97g(0.052mol)とタングステン酸0.67g(0.0027mol)を水1.25gに加え、攪拌しながら60℃に昇温した。ついで、35重量%過酸化水素水6.14g(0.063mol)を30分かけて滴下した。滴下後60℃で16時間反応を行った。反応終了後、塩化カルシウム0.63g(0.00567mol)を加え、28重量%水酸化ナトリウム水溶液で反応液のpHを10〜11に調整した。この反応液を30℃まで冷却した後に触媒のカルシウム塩を濾別し、濾液をHPLCで分析したところ、2−クロロピリジン−N−オキシドを96.3A%含んでいた。結果をまとめて表1に示す。
【0045】
[比較例2]
2−クロロピリジン5.97g(0.052mol)とタングステン酸0.67g(0.0027mol)と硝酸0.17g(0.0027mol)を水1.25gに加え、攪拌しながら60℃に昇温した。ついで、35重量%過酸化水素水6.14g(0.063mol)を30分かけて滴下した。滴下後60℃で14時間反応を行った。反応終了後、塩化カルシウム0.63g(0.00567mol)を加え、28重量%水酸化ナトリウム水溶液で反応液のpHを10〜11に調整した。この反応液を30℃まで冷却した後に触媒のカルシウム塩を濾別し、濾液をHPLCで分析したところ、2−クロロピリジン−N−オキシドを98.5A%含んでいた。結果をまとめて表1に示す。
【0046】
[比較例3]
2−クロロピリジン5.97g(0.052mol)とタングステン酸0.67g(0.0027mol)と硫酸0.86g(0.0086mol)を水1.25gに加え、攪拌しながら60℃に昇温した。ついで、35重量%過酸化水素水6.14g(0.063mol)を30分かけて滴下した。滴下後60℃で10時間反応を行った。反応終了後、塩化カルシウム0.63g(0.00567mol)を加え、28重量%水酸化ナトリウム水溶液で反応液のpHを10〜11に調整した。この反応液を30℃まで冷却した後に触媒のカルシウム塩を濾別し、濾液をHPLCで分析したところ、2−クロロピリジン−N−オキシドを95.4A%含んでいた。結果をまとめて表1に示す。
【0047】
[比較例4]
2−クロロピリジン5.97g(0.052mol)と酸化バナジウム0.49g(0.0027mol)とリン酸0.018g(0.0016mol)を水1.25gに加え、攪拌しながら60℃に昇温した。ついで、35重量%過酸化水素水6.14g(0.063mol)を30分かけて滴下した。滴下後60℃で10時間反応を行った。反応終了後、塩化カルシウム0.63g(0.00567mol)を加え、28重量%水酸化ナトリウム水溶液で反応液のpHを10〜11に調整した。この反応液を30℃まで冷却した後に触媒のカルシウム塩を濾別し、濾液をHPLCで分析したところ、2−クロロピリジン−N−オキシドを5.0A%含んでいた。結果をまとめて表1に示す。
【0048】
[比較例5]
2−クロロピリジン5.97g(0.052mol)とタングストリン酸0.65g(0.0027mol)を水1.25gに加え、攪拌しながら60℃に昇温した。ついで、35重量%過酸化水素水6.14g(0.063mol)を30分かけて滴下した。滴下後60℃で6時間反応を行った。反応終了後、塩化カルシウム0.63g(0.00567mol)を加え、28重量%水酸化ナトリウム水溶液で反応液のpHを10〜11に調整した。この反応液を30℃まで冷却した後に触媒のカルシウム塩を濾別し、濾液をHPLCで分析したところ、2−クロロピリジン−N−オキシドを15.9A%含んでいた。結果をまとめて表1に示す。
【0049】
[実施例2]
ピリジン4.16g(0.052mol)とタングステン酸0.67g(0.0027mol)とリン酸0.018g(0.0016mol)を水1.25gに加え、攪拌しながら60℃に昇温した。ついで、35重量%過酸化水素水6.14g(0.063mol)を30分かけて滴下した。滴下後60℃で10時間反応を行った。反応終了後、塩化カルシウム0.63g(0.00567mol)を加え、28重量%水酸化ナトリウム水溶液で反応液のpHを10〜11に調整した。この反応液を30℃まで冷却した後に触媒のカルシウム塩を濾別し、濾液をHPLCで分析したところ、ピリジン−N−オキシドを98.8A%含んでいた。結果をまとめて表1に示す。
【0050】
[比較例6]
ピリジン4.16g(0.052mol)とタングステン酸0.67g(0.0027mol)を水1.25gに加え、攪拌しながら60℃に昇温した。ついで、35重量%過酸化水素水6.14g(0.063mol)を30分かけて滴下した。滴下後60℃で10時間反応を行った。反応終了後、塩化カルシウム0.63g(0.00567mol)を加え、28重量%水酸化ナトリウム水溶液で反応液のpHを10〜11に調整した。反応液を30℃まで冷却した後に触媒のカルシウム塩を濾別し、濾液をHPLCで分析したところ、ピリジン−N−オキシドを92.8A%含んでいた。結果をまとめて表1に示す。
【0051】
[実施例3]
2−メチルピリジン4.90g(0.052mol)とタングステン酸0.67g(0.0027mol)とリン酸0.018g(0.0016mol)を水1.25gに加え、攪拌しながら60℃に昇温した。ついで、35重量%過酸化水素水6.14g(0.063mol)を30分かけて滴下した。滴下後60℃で10時間反応を行った。反応終了後、塩化カルシウム0.63g(0.00567mol)を加え、28重量%水酸化ナトリウム水溶液で反応液のpHを10〜11に調整した。反応液を30℃まで冷却した後に触媒のカルシウム塩を濾別し、濾液をHPLCで分析したところ、2−メチルピリジン−N−オキシドを99.4A%含んでいた。結果をまとめて表1に示す。
【0052】
[比較例7]
2−メチルピリジン4.90g(0.052mol)とタングステン酸0.67g(0.0027mol)を水1.25gに加え、攪拌しながら60℃に昇温した。ついで、35重量%過酸化水素水6.14g(0.063mol)を30分かけて滴下した。滴下後60℃で10時間反応を行った。反応終了後、塩化カルシウム0.63g(0.00567mol)を加え、28重量%水酸化ナトリウム水溶液で反応液のpHを10〜11に調整した。反応液を30℃まで冷却した後に触媒のカルシウム塩を濾別し、濾液をHPLCで分析したところ、2−メチルピリジン−N−オキシドを90.5A%含んでいた。結果をまとめて表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1より、本発明によれば、ピリジン類からピリジン−N−オキシド類を高収率、高効率で製造することができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキソ酸水和物およびリン酸の存在下、ピリジン類を過酸化物と反応させることを特徴とするピリジン−N−オキシド類の製造方法。
【請求項2】
オキソ酸水和物(M)とリン酸(P)のモル比が、M/P=0.1〜10であることを特徴とする請求項1に記載のピリジン−N−オキシド類の製造方法。
【請求項3】
オキソ酸水和物がタングステン酸であることを特徴とする請求項1または2に記載のピリジン−N−オキシド類の製造方法。
【請求項4】
ピリジン類が下記一般式(1)で示されるものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のピリジン−N−オキシド類の製造方法。
【化1】

(式中、Rはハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を表し、ピリジン環の2−,3−または4−位に結合するものとする。)
【請求項5】
一般式(1)におけるRがハロゲン原子であることを特徴とする請求項4に記載のピリジン−N−オキシド類の製造方法。
【請求項6】
ピリジン類が2−クロロピリジンであることを特徴とする請求項5に記載のピリジン−N−オキシド類の製造方法。