説明

ピロリジン誘導体の製造方法

本発明は、優れたVLA−4阻害作用と安全性を有する1,4−トランスシクロヘキサンカルボン酸誘導体(1)を得るために工業的に有利な製造方法およびその製造方法に有利な製造中間体を提供する。
すなわち、本発明は、下記に従って、式(I)の化合物を式(VI)の化合物に変換する方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、優れたVLA−4阻害作用と安全性を有する化合物の製造中間体として有用な化合物の製造方法および新規有用中間体に関するものである。
【背景技術】
下記の一般式(1)で表わされる化合物は、優れたVLA−4阻害作用に基づく抗炎症作用を示し、かつ高い安全性を有する医薬品化合物として期待されている(国際公開第2002/053534号パンフレット)。

この化合物(1)の製造中間体として、下式の化合物(12)[化合物(VI−trans)において、Rが水素原子である化合物]は重要である。

この化合物の従来の製造方法は、ヒドロキシプリンの一級の水酸基に光延反応によってメチルエーテル構造を形成し、さらにカルボン酸部分をヒドロキシメチル基に変換後、安息香酸単位を導入する。その後安息香酸部位ベンゼン環の還元反応を行い、得られる、シス体が多い1,4−シクロヘキサンカルボン酸エステル体を、エノラート経由の異性化反応を実施することによって合成されていた(国際公開第2002/053534号パンフレット)。
しかしながら、光延反応は爆発の危険性を伴うアゾ試薬を使用する必要があり、また用いる試薬に由来する大量の不要物が生成するためこれらを除去する精製工程が必要である等、大量合成時には難点がある。一方、ベンゼン環の還元反応においてはシス体が多く生成するため、トランス体を得るためには異性化工程が必要であった。しかしながら、この異性化反応工程に長時間を要していたため、異性化反応条件下においてエステルの加水分解反応が進行してカルボン酸が副生するため、カルボン酸を再度エステル化処理する必要が生じていた。
このように、従来の反応では、化合物(1)を得るまでに、大量合成に不適な複数回の光延反応の工程が必要であり、さらに異性化反応時に加水分解による副生成物を生じること等から工業的製造方法としては、改良の余地があった。
【発明の開示】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、重要な中間体である式(VI−trans)で表わされる化合物の製造に関して;
11の保護基としてベンジルオキシカルボニル基を選択することにより、塩基存在下、Rがパラトルエンスルホニル基またはメタンスルホニル基である化合物(II)に変換し、これを化合物(III)とのSN−2反応に附すことで所望の化合物(IV)に変換できることを見いだし、この結果、光延反応を回避できること、またこの反応ではRが保護基でなくともよいことを見出し、保護基の使用も回避できることを見出した。
さらに、化合物(V)の還元反応において優位に生成するシス体化合物についてトランス体化合物への異性化工程が必要であるが、従来法(国際公開第2002/053534号パンフレット参照)では長時間が必要であった。しかしながら溶媒として非プロトン性極性溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド等、を用いることにより極めて短時間で異性化反応が終了することを見出した。これによって、単に反応時間の短縮だけでなく、エステルの加水分解によるカルボン酸の副生を抑え、再エステル化を省略できることも明らかとなった。
これらの優れた改良によって、化合物(1)製造の中間体として重要な中間体化合物(VI−trans)を、より効率的に製造できる方法を見出して本発明は完成に至ったものである。
すなわち本発明は、式(I)

(式中、R11は、アミノ基の保護基を意味し、Rは、水素原子または水酸基の保護基を意味するが、両者が保護基である場合は同一の保護基とはならない。)
で表わされる化合物に、塩基存在下、置換基を有していてもよいアリールスルホニルクロリドまたは置換基を有していてもよいアルキルスルホニルクロリドを反応させ、得られる式(II)

(式中、R11およびRは、先と同義であり、Rは、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基または置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基を意味する。)
で表わされる化合物に、式(III)

(式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味し、Mは、アルカリ金属原子を意味する。)
で表わされる化合物を反応させることを特徴とする式(IV)

(式中、R11、RおよびRは先と同義である。)
で表わされる化合物の製造方法に関するものである。
さらに本願発明は以下の各々にも関するものである;
11が、ベンジルオキシカルボニル基である上記の製造方法;
が、水素原子である上記の各製造方法;
が、パラトルエンスルホニル基またはメタンスルホニル基である上記の各製造方法;
が、メチル基またはエチル基である上記の各製造方法;
等である。
さらに本願発明は、式(V)

(式中、Rは、水素原子またはアミノ基の保護基を意味し、Rは先と同義である。)
で表わされる化合物を還元し、得られる式(VI)

(式中、RおよびRは先と同義である。)
で表わされる化合物を、非プロトン性極性溶媒中、金属水素化物で処理した後に、異性体を分離することを特徴とする式(VI−trans)

(式中、RおよびRは先と同義である。)
で表わされる化合物の製造方法にも関するものである。
さらに本願発明は、以下の各々にも関するものである;
が、第三級ブトキシカルボニル基である上記の製造方法;
が、メチル基またはエチル基である上記の各製造方法;
金属水素化物が、水素化ナトリウムまたは水素化リチウムである上記の各製造方法;
非プロトン性極性溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、またはジメチルスルホキシドである上記の各製造方法;
等である。
また本発明は、式(12)

(式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味する。)
で表わされる化合物に、式(20)

で表わされる化合物を縮合させ、得られる式(21)

(式中、Rは、先と同義である。)
で表わされる化合物に、次式(19)

で表わされる化合物又はその反応性誘導体を反応させ、得られる式(13)

(式中、Rは、先と同義である。)
で表わされる化合物のエステルを切断することを特徴とする式(1)

で表わされる化合物の製造方法に関するものである。
さらに本発明は、下記式(21)

(式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味する。)
で表わされる化合物に関するものである。
本発明の製造方法および製造中間体を提供することにより、優れたVLA−4阻害作用と高い安全性を有する化合物(1)を医薬品として高い純度で高率的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の製法の好適な例の一つは、ハイドロキシプロリンを出発物質とする次の工程からなっている。ここに示した方法は、ハイドロキシプロリンの水酸基を保護せずに実施する方法である。すなわち、本発明の方法によればハイドロキシプロリンの水酸基を保護せずに変換することができることも特徴である。しかしながら、この水酸基を保護して同様の変換工程が実施できることは言うまでもない。この場合、採用すべき保護基は、この分野において通常使用される保護基から選択すればよいが、ハイドロキシプロリンの環の窒素原子上にある保護基とは異なる保護基を採用することがより好ましい。


これらの各工程について以下に詳細に説明する。
[工程a]

本工程は、化合物(2a)のカルボキシル基をヒドロキシメチル基に変換する工程である。
式中、R11は、窒素原子(アミノ基)の保護基である(保護基としては例えば、『Protective Groups in Organic Synthesis, eds. by T.W.Greene and P.G.Wuts, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1991』参照)。保護基の例としては、カーボネート系、アシル系、アルキル系、またはアラルキル系等の保護基を挙げることができるが、置換もしくは無置換のベンジルオキシカルボニル基、または第三級ブトキシカルボニル基等のアルキルオキシカルボニル基等、カーボネート系の保護基が好ましい。これらのうちではベンジルオキシカルボニル基が最も好ましい。
カルボキシル基をヒドロキシメチル基に変換する方法は、通常用いられる公知の還元方法(例えば、国際公開第2002/053534号パンフレット)を適用することで化合物(2b)を得ることができる。最も簡便には還元剤を反応させればよいが、還元剤としてはジボランを好適に使用することができる。ジボランは反応時に発生させてもよいが、市販のボラン−ジメチルスルフィド錯体(Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, 15, 44.等)等のボラン錯体類を使用してもよい。
このジボラン還元に使用する溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、トルエン等の炭化水素系溶媒、あるいはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒を挙げることができるが、好ましくはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒である。
反応温度は、−78℃から溶媒の沸点の間でよく、好ましくは0℃から溶媒の沸点の間である。
反応時間は、5分から24時間の間でよいが、通常は30分から5時間程度で完結する。
反応後生成した化合物(2a)は、通常行われる方法によって反応液を処理し、さらに通常の方法によって単離生成できる。
[工程b]

本工程は、ヒドロキシメチル基を置換スルホニルオキシ基に変換する工程であり、置換反応のために水酸基を脱離基に変換する工程である。脱離基は置換スルホニルオキシ基には限定されず、ハロゲン原子等、脱離基としての機能を果たすのであれば特に制限はなく、他の置換基でもよいのであるが、置換スルホニルオキシ基を使用するのが簡便であり、最も好ましい。
式中、R11は、前記と同義である。Rは、置換スルホニル基であり、置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、または置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基を意味する。置換スルホニル基としてはp−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基が好ましい。
出発物質である化合物(2b)は、二級および一級の水酸基各々1個を有しているが、使用する試薬の量および反応温度を調整することによって、ヒドロキシメチル基に存在する一級水酸基を選択的に置換スルホニルオキシ基に変換することができる。反応は、置換スルホニルハロゲナイド、好ましくはクロライドを塩基存在下に反応させればよいが、具体的には次に示す方法によってこれを行うことができる。
置換スルホニルハロゲナイドは、採用するスルホニルに対応するものを使用するが、例えば、p−トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリドを挙げることができる。これらを、化合物(2b)に対して1から2.5倍モルの範囲、好ましくは1から1.5倍モル量を使用するのが好ましい。
用いる塩基としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等のアルキルアミン類、芳香族アミン類、または含窒素複素環化合物類等の有機塩基、あるいは、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩等であって、無水炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基を使用すればよい。好ましくは、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基である。これらの使用量は、化合物(2b)に対して1から10当量の範囲でよく、好ましくは1から2.5当量で、使用する置換スルホニルハロゲナイドと当モル量を使用すればよい。
反応溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒を挙げることができるが、好ましい溶媒として塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒を挙げることができる。
反応温度は−78℃から溶媒の沸点の範囲でよいが、0℃から室温の範囲で実施するのが好ましい。
反応時間は、5分から24時間の間でよいが、通常は30分から6時間程度で完結する。
化合物(3)は、通常、不安定な化合物であることが多いが、単離精製しなくとも、機器等で生成を確認後、十分な純度で次の工程に用いることができる。
[工程c]

本工程は、化合物(3)に安息香酸ユニットを導入する工程である。
この安息香酸ユニットの導入には4−ヒドロキシ安息香酸エステルを使用すればよい。例えば、メチルエステルおよびエチルエステルを市販品として入手可能である。この安息香酸化合物をナトリウム、カリウム、あるいはリチウムフェノラート体誘導体、さらにはカルシウムフェノラート誘導体に変換し、これと先の化合物(3)とのカップリング反応を実施すればよい。この反応は一般的なフェノラートアニオンの反応であり、アリールエーテル結合を形成する反応として公知である。したがって、式(III)の化合物において、Mで表わされる金属原子(陽イオン)はアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子であればよい。また、これらのうちではアルカリ金属原子が好ましく、リチウム、ナトリウム、あるいはカリウムが好ましく、より好ましくはナトリウムまたはカリウムである。
反応に用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、あるいはN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン製極性溶媒を挙げることができる。これらの中ではテトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等が好ましく、また、一般的に用いられる範囲で無水であるものが好ましい。
これらの溶媒中、市販の4−ヒドロキシ安息香酸エステルにアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩等の、無水炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基、そして化合物(3)を添加して反応を実施すればよい。この他、水素化金属類によって4−ヒドロキシ安息香酸エステルを処理して予めフェノラートを調製し、次いで化合物(3)を添加する方法でもよい。
反応温度は、0℃から溶媒の沸点の範囲、好ましくは20℃から120℃の範囲である。
反応時間は、30分から24時間の間でよいが、通常は30分から4時間程度で完結する。
また、本反応はエステル基の加水分解、スルホニルオキシ体(3)の分解を回避するために、無水の条件下で実施するのが好ましい。
[工程d]および[工程e]

本工程は、環上の置換基として存在する水酸基の配位を、αからβに変換する工程である(あるいは、水酸基の結合している炭素原子の配位をR配位からS配位に変換する。)。本工程は化合物(4)の水酸基を、光延反応を用いて水酸基の立体反転を伴ったエステル体あるいはホルミル体(5)に変換し[工程d]、次いで置換基(保護基)であるR22を選択的に脱離させる工程[工程e]である。これらによって水酸基の配位をαからβに反転させた化合物(6)を得ることができる。これら一連の変換反応は、公知の方法で容易に実施可能である(国際公開第2001/00206号パンフレット及び国際公開第2002/053534号パンフレット)。
式中、R11およびRは前記と同義である。R22は、無置換もしくは置換のアロイル基、アルカロイル基、またはホルミル基を意味し、好ましくは4−ニトロベンゾイル基、ベンゾイル基、アセチル基、ホルミル基を挙げることができる。これらのうちでは特に4−ニトロベンゾイル基、アセチル基、ホルミル基が好ましい。
[工程d]において用いるカルボン酸としては、4−ニトロ安息香酸、安息香酸、酢酸あるいはギ酸等を挙げることができるが、その中で4−ニトロ安息香酸、またはギ酸が好ましい。
反応に用いるホスフィン試薬としてはトリフェニルホスフィン等を挙げることができる。
反応溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等を挙げることができ、これらのうちではテトラヒドロフランが好ましい。
用いるアゾ試薬としては、市販のアゾジカルボン酸エステル類、例えばジイソプロピルアゾジカルボン酸エステル、ジエチルアゾジカルボン酸エステルを挙げることができる。
反応温度は、0℃から溶媒の沸点の範囲でよい。
化合物(5)はシリカゲル等を用いるカラムクロマトグラフィーで精製することが可能であるが、この段階で精製することなしに、引き続く[工程e]の終了後に分離精製してもよい。
[工程e]は脱エステルあるいは脱ホルミル化工程であり、分子内に存在するカルボン酸エステル基と容易に区別して選択的に実施する公知の方法を適用すればよい。
すなわち、エタノール、メタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、好ましくはテトラヒドロフランあるいはエタノールを使用してエステルの切断を実施すればよい。なお、所望により溶媒中に化学論的等量から10倍モル量相当の水を添加してもよい。
反応の温度は0℃から溶媒の沸点の範囲で実施可能であるが、0℃から室温の範囲で実施するのが好ましい。
反応時間は、5分から24時間の間でよいが、通常は30分から4時間程度で完結する。
[工程f]

本工程は、環上の水酸基にメチル基を導入してメトキシ基に変換する工程である。
この工程は、水酸基をメチル化する一般的な方法を用いて実施すればよく、すなわち、塩基存在下、メチル化試剤で処理すればよい。
メチル化試剤はハロゲン化メチルを挙げることができ、ヨウ化メチルが最も好ましい。
使用する塩基は、金属水素化物が好ましく、水素化ナトリウムまたは水素化リチウムを好適に使用することができる。
反応溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、あるいはN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができ、この中でテトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等が好ましい。溶媒は一般的に入手可能な範囲で無水のものが好ましい。
反応温度は−78℃から溶媒の沸点の範囲で実施できるが、−20℃から室温の範囲が好ましい。
反応時間は、30分から24時間の間でよいが、通常は1時間から5時間程度で完結する。
また本工程はエステルの切断、さらにピロリジン環窒素原子の保護基であるRの分解を防ぐために、無水条件下、さらには窒素気流下で実施するのが好ましい。
[工程g]

本工程は、窒素原子上の保護基を脱離する工程である。この保護基の脱離は、化合物(7)において存在する保護基が芳香環を含む保護基であるときには特に脱離することが好ましい。これは、引き続く工程において実施される安息香酸部分の芳香環の還元反応によって、保護基に含まれる芳香環が還元されるとそれ以降の反応が煩雑になるからである。本工程は、選択した保護基に応じて、窒素原子上の保護基を除去する公知の方法(例えば、Protective Groups in Organic Synthesis, eds. by T.W.Greene and P.G.Wuts, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1991)にしたがって実施すればよい。
式中、R11およびRは前記と同義である。
例えば、R11がベンジルオキシカルボニル基である場合、接触水素化による中性条件下で脱保護すればよいが、使用する触媒としてはパラジウム−炭素、水酸化パラジウム(II)等のパラジウム触媒、あるいは二酸化白金等の白金触媒等を挙げることができる。
また、使用する溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に制限はないが、エタノール、メタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒を挙げることができ、この中でメタノールあるいはエタノールが好ましい。
水素圧は、常圧から10Mpaの範囲で実施でき、常圧から1Mpaの範囲が好ましい。
[工程h]および[工程i]

本工程は、安息香酸ユニットとして導入されたユニット中のベンゼン環部分を還元して、シクロヘキサン環に変換する工程である。
式中、Rは前記と同義である。
本工程は、ベンゼン環を水素添加してシクロヘキサン環に変換する方法として一般的に知られている方法のうちで、緩和な条件として知られている方法を適用すればよい。例えば、W.M.Pearlman等の方法(Organic Synthesis, Collective volume 5, p670−672, John Wiley & Sons, Inc.)を挙げることができる。この還元反応はシス選択性が高く、1,4−シス体が優位に得られることが述べられている。また本工程は、接触還元工程で反応進行の妨げとなる触媒毒のフリーな窒素原子を、あらかじめ酸を加えることにより塩に変換した後に実施することによって円滑に反応を進行させることができる。
また、引き続く第三級ブトキシカルボニル基の導入は、窒素原子を保護して次の工程(異性化および異性体の分離精製)の操作性を向上させるために有利である。なお、ここでは第三級ブトキシカルボニル基の導入が説明されているが、導入される保護基としては第三級ブトキシカルボニル基に限定されることはなく、これと同じ機能を果たす他の保護基であればよいことはいうまでもない。例えば、置換基を有していてもよいベンジルオキシカルボニル基を採用してもよい。
ベンゼン環を水素添加する工程で使用する触媒は、商業的に入手可能なパラジウム−炭素触媒、酸化白金触媒、炭酸ストロンチウム触媒、ロジウム−アルミナ触媒等を使用すればよいが、これらのうちではロジウム−アルミナ触媒が最も好ましい。
使用する触媒の量は、還元される基質の重量に対して1%から50%で実施できるが、3%から20%の範囲が好ましい。
溶媒は、反応を阻害するものでなければ特に制限はないが、エタノール、メタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒を使用することができ、好ましくはアルコール系溶媒であり、メタノールあるいはエタノールを挙げることができる。この溶媒中に、容積割合で5%から20%の範囲で酢酸またはトリフルオロ酢酸を共存溶媒として添加するのが好ましい。
反応の水素圧は常圧から10MPaの範囲で実施できるが、好ましくは常圧から1.5MPaの範囲である。
反応温度は0℃から100℃の範囲でよく、好ましくは20℃から60℃の範囲である。
反応時間は、1時間から72時間の間でよいが、通常は2時間から48時間程度で完結する。
引き続く第三級ブトキシカルボニル基、あるいは他の保護基、を導入する工程は、窒素原子(アミノ基)を保護する公知の方法(前記の、Protective Groups in Organic Synthesis, eds. by T.W.Greene and P.G.Wuts, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1991)にしたがって実施することができる。
[工程j]

本工程は、先のベンゼン環の還元工程において、優位に生成するシスの異性体をトランスの異性体に変換する工程である。
式中、Rは前記と同義である。
本工程は、化合物(10)をエノレート経由の異性化によって、所望の相対配位のトランス体割合を向上させ、さらにこれら2つの異性体を分離精製する工程からなる。なお、異性化の際に副生するカルボン酸化合物は、再度エステル化を実施することで容易に所望のエステル化合物(11)に変換することができる。
本工程と同様の異性化反応は、国際公開第2002/053534号パンフレットに記載された方法では、Rがメチル基であるメチルエステル体(10)を、メタノール中、塩基としてナトリウムメトキシドを用い、15時間から数日間、攪拌下に加熱還流するとの条件で実施していた。しかしながら本願発明者らが検討した結果、溶媒を非プロトン性極性溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド等に代えて実施することで、反応温度を50℃以下とし、かつ基質により多少の差はあるが5分から1時間以内との極めて短い反応時間で異性化反応が定常状態に達することを見出したのである。
これによって次の点、すなわち、短時間で異性化反応を終結することにより加水分解成績体のカルボン酸の副生が少量に抑えられ、再エステル化の工程を省略できることになり有利となるのである。
改良した反応条件としては、出発物質を、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、あるいはジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等に溶解させて反応を実施すればよい。また、反応を促進させるために、化合物(10)の1から3倍モルの、Rに対応するアルコールを共存させるのが好ましい。
使用する塩基は、水素化ナトリウムを挙げることができる。
反応温度は0℃から50℃の範囲でよく、好ましくは0℃から25℃である。
この温度に保ちながら、上記塩基を加え、反応の進行を確認しながらさらに室温から50℃の範囲で5分から1時間撹拌した後、希塩酸等を冷却下に加えて中和することによって反応を終結できる。
また、副生するカルボン酸をエステル体(11)に変換する処理として以下の処理を挙げることができる。
反応溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドを使用し、塩基として無水炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウムを使用して、アルキル化剤として対応するR−ブロミドまたはR−クロリドを反応させればよい。
また、エステルがメチルエステルの場合は、ジエチルエーテル、ベンゼン−メタノール(4:1、v/v)混合溶媒中、市販のトリメチルシリルジアゾメタンを用いてエステル化を実施することも可能である。
本異性化反応では加水分解成績体のカルボン酸の副生が少ないためエステル化工程を省いても化合物(11)の単離収率の低下は10%以下であった。トランス体の化合物(11)を分離精製する方法は、通常のシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーで実施でき、商業的に入手可能な中圧分取型カラム分離装置を用いるとより高い分離効率が得られる。また、分離はその他の、例えばHPLC等を用いても可能である。
[工程k]

本工程は、窒素原子上の保護基の脱保護工程である。
式中、Rは前記と同義である。
本工程は、窒素原子上の保護基である第三級ブトキシカルボニル基を除去する公知の方法(Protective Groups in Organic Synthesis, eds. by T.W.Greene and P.G.Wuts, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1991)にしたがって実施すればよく、またこれ以外の保護基であっても同様である。例えば第三級ブトキシカルボニル基であれば、化合物(12)を、市販の4N塩酸−ジオキサンまたはトリフルオロ酢酸を用いて脱保護が可能である。また、トリフルオロ酢酸を用いる場合は補助溶媒として塩化メチレン等の塩素系溶媒を用いてもよい。
反応温度は0℃から溶媒の沸点の範囲で実施可能である。
反応時間は、5分から24時間の間でよいが、通常は30分から5時間程度で完結する。
脱保護反応終了後、反応溶媒を留去すると化合物(12)が、用いた酸との塩、例えば塩酸塩あるいはトリフルオロ酢酸塩として単離される。これら塩はこのままで次の反応に用いることが可能であるが、飽和重曹水等を用いて中和し、遊離のアミン体の化合物(12)として単離することも可能である。
このようにして製造された化合物(12)は、公知の方法、例えば国際公開第2002/053534号パンフレットに記載された方法、にしたがって、同じくこの公報に記載された方法によって製造可能な化合物(20)との縮合反応に使用し、化合物(13)に変換することができる。
また、化合物(13)から化合物(1)への工程は、エステル体を切断する公知の方法(Protective Groups in Organic Synthesis, eds. by T.W.Greene and P.G.Wuts, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1991)で、遊離カルボン酸に変換可能である。
また、以下に示す方法によっても化合物(13)を製造することができる。

式中、Rは直鎖又は分枝状アルキル基、置換あるいは無置換アリールアルキル基を意味し、好ましくはメチル基、エチル基、第三級ブチル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基を挙げることができ、その中ではメチル基、エチル基であるものが好ましい。本工程は、エステルを加水分解して遊離のカルボン酸にする一般的な反応であり、アルコキシカルボニル基をカルボン酸に変換する一般的な方法(Protective Groups in Organic Synthesis, eds. by T.W.Greene and P.G.Wuts, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1991)で実施できる。

式中、Rは前記と同義である。本工程は、化合物(12)と化合物(20)を縮合するものであるが、公知の反応で容易に実施できる。
用いる溶媒は、反応を阻害するものでなければ特に制限はないが、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、またはN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができる。これらの中で、好ましくは塩化メチレンまたはN,N−ジメチルホルムアミドである。
これらの溶媒中で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N−カルボニルジイミダゾール、またはそれらの同類物である縮合剤を使用して反応を実施すればよい。好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド中で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドを用いて反応を実施するのがよい。
反応温度は、−20℃から溶媒の沸点の範囲でよく、好ましくは0℃から室温の範囲の温度でよい。
また、この反応は、トリエチルアミンまたはN,N−ジメチルアミノピリジン等の有機アミン系塩基、または有機アミン系塩基、および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール等の活性エステル化試薬の触媒量から化学量論的等量の共存下に実施してもよい。

式中、Rは前記と同義である。
化合物(13)は、化合物(19)、または当該化合物を酸ハライド(例えば、酸クロリド)等の反応性誘導体に変換した後、これと化合物(21)を公知の縮合反応に従って縮合することにより製造することができる。
市販の1−メチル−3−インドールカルボン酸(19)を、例えば酸クロリドに変換する際に用いる溶媒は、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒を挙げることができるが、好ましくは塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒である。
この反応温度は0℃から溶媒の沸点の範囲でよい。
クロル化剤としては塩化オキザリル、塩化チオニル等の、カルボン酸を酸クロリドに変換する際に通常使用される塩素化試薬を用いればよい。
次に、化合物(19)の酸クロリドと化合物(21)との縮合工程に用いる溶媒であるが、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒を挙げることができるが、好ましくは塩化メチレン等の塩素系溶媒である。
反応温度は0℃から溶媒の沸点の範囲でよいが、室温から溶媒の沸点の範囲が好ましい。
使用する塩基としては、例えば化学量論的なトリエチルアミン等の有機塩基を挙げることができる。
本工程は1−メチル−3−インドールカルボン酸部分をアイソトープ標識した誘導体の合成、あるいは活性代謝物等を合成する際、または1−メチル−3−インドールカルボン酸部分を修飾した化合物を合成する時に有効である。また、化合物(21)は新規化合物であり、化合物(1)の他、VLA−4阻害活性を有する化合物、例えば以下に示す化合物(1a)〜(1f)等の有用な生理活性物質の合成中間体として有用である。

そして、得られた化合物(13)のエステルを、例えば加水分解、接触水素化等の公知の方法(Protective Groups in Organic Synthesis, eds. by T.W.Greene and P.G.Wuts, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1991)により切断して、遊離カルボン酸に変換することにより、化合物(1)を得ることができる。
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[参考例1]
2,5−ジクロロ−4−〔(1−メチル−1H−インドール−3−イル)カルボキサミド〕フェニル酢酸

1−メチル−1H−インドール−3−カルボン酸(794mg,4.53mmol)を塩化メチレン(25ml)に溶解し、0℃で攪拌下に塩化オキザリル(0.79ml,9.1mmol)を加えた。反応液をさらに室温で1時間攪拌後、減圧下に反応液を乾固した。残留物を塩化メチレン(25ml)に溶解し、0℃で攪拌下にトリエチルアミン(0.84ml,9.0mmol)および4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル酢酸エチルエステル(750mg,3.02mmol)の塩化メチレン(5ml)溶液を添加した。反応混合液を攪拌下に18時間加熱還流した。反応液を冷却後、水(30ml)に注ぎ、クロロホルムにて抽出した。抽出液を飽和食塩水洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残留物を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し(山善株式会社製、中圧HPLC;クロロホルム:メタノール(100:0〜95:5,v/v))、得られた2,5−ジクロロ−4−〔(1−メチル−1H−インドール−3−イル)カルボキサミド〕フェニル酢酸エチルエステル体はこれ以上精製することなく、テトラヒドロフラン(THF;45ml)および0.25NNaOH(18ml,4.5mmol)を加えて室温で4時間攪拌した。反応液を冷却下、1NHClを徐々に加えて弱酸性にして析出結晶を濾取し、水洗後、乾燥して標題化合物(807mg,71%)を結晶性粉末として得た。
MS(ESI);m/z:378(M+2).
H−NMR(DMSO−d)δ:3.72(s,2H),3.90(s,3H),7.22(t,J=8.1Hz,1H),7.28(t,J=8.1Hz,1H),7.56(d,J=8.3Hz,1H),7.64(s,1H),7.92(s,1H),8.15(d,J=7.8Hz,1H),8.31(s,1H),9.39(s,1H).
【実施例1】
(4R)−ヒドロキシ−(2S)−ヒドロキシメチルピロリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル

N−ベンジルオキシカルボニル−(4R)−ヒドロキシ−L−プロリン(150g,0.565mol)をTHF(1.5L)に溶解し、0℃で攪拌下にボラン−ジメチルスルフィド錯体(59.0ml,0.622mol)を滴下した。滴下終了後、反応液を攪拌下に加熱還流した。反応液を3時間攪拌後、再び0℃に冷却し、ボラン−ジメチルスルフィド錯体(16.1ml,0.170mol)を加えた後、さらに10時間攪拌した。反応液を冷却後、0℃にて徐々に水(500ml)を加えて過剰のボラン−ジメチルスルフィド錯体を分解後、酢酸エチルおよびクロロホルム−メタノール(10:1,v/v)にて抽出した。抽出液を飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去して標題化合物(122.06g,86%)を単黄色油状物として得た(本化合物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。)。
H−NMR(CDCl)δ:1.52−1.81(m,3H),2.06(m、1H),3.40−3.85 and 4.04−4.61(series of m,total6H),5.15(s,2H,ArCH),7.20−7.44(m,5H,Ar).
(4R)−ヒドロキシ−(2S)−(p−トルエンスルホニルオキシメチル)ピロリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル

(4R)−ヒドロキシ−(2S)−ヒドロキシメチルピロリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(120.11g,0.478mol)を塩化メチレン(1L)に溶解し、0℃で攪拌下にトリエチルアミン(133.1ml,0.956mol)および4−ジメチルアミノピリジン(5.84g,47.8mmol)を加えた後、さらに−10℃に冷却下、p−トルエンスルホニルクロリド(100.24g,0.526mol)を徐々に加えた。添加終了後、反応液を同温度で1時間、さらに5℃にて18時間攪拌した。反応液に冷却下、1NHCl(500ml)を加え、クロロホルムにて抽出した。抽出液を飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒留去して標題化合物を淡褐色油状物として得た(本化合物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。)。
H−NMR(CDCl)δ:1.80(s,1H,OH),1.99−2.20(m,2H),2.41and2.43(2×s,total3H,ArMe),3.32−3.67(m,2H),4.04−4.23(m,2H),4.35−4.53(m,2H),4.88−5.15(m,2H),7.17−7.42(m,7H),7.68(d,J=8.0Hz,1H),7.74(d,J=8.0Hz,1H).
MS(ESI);m/z:406(M+1).
4−(N−ベンジルオキシカルボニル−(4R)−ヒドロキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)安息香酸エチルエステル

上記(4R)−ヒドロキシ−(2S)−(p−トルエンスルホニルオキシメチル)ピロリジン−1−カルボン酸ベンジルエステルを精製することなくN,N−ジメチルホルムアミド(DMF;900ml)に溶解し、室温攪拌下に無水炭酸カリウム(132.13g,0.956mol)および4−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル(87.37g,0.526mol)を加えた後、反応混合液を90℃で2時間攪拌した。反応液を冷却後、酢酸エチル(2000ml)で希釈し、これを順次冷却水で2回洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲル(4kg)を用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、n−ヘキサン−酢酸エチル(2:1〜2:3,v/v)流分より標題化合物(76.65g,40.1%、(4R)−ヒドロキシ−(2S)−ヒドロキシメチルピロリジン−1−カルボン酸ベンジルエステルから2工程での収率)を淡橙色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.38(t,J=7.2Hz,3H),1.66(brs,1H),2.17(m,1H),2.27(m,1H),3.58(m,1H),3.69and4.02−4.23(series of m,total2H),4.26−4.44(m,2H),4.34(q,J=7.2Hz,2H),4.58(m,1H),5.05−5.27(m,2H),6.72−6.96(m,2H),7.33(m,5H),7.95(m,2H).
MS(ESI);m/z:400(M+1).
4−(N−ベンジルオキシカルボニル−(4S)−ヒドロキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)安息香酸エチルエステル

4−(N−ベンジルオキシカルボニル−(4R)−ヒドロキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)安息香酸エチルエステル(76.65g,0.192mol)をTHF(1.5L)に溶解し、ギ酸(14.5ml,0.384mol)およびトリフェニルホスフィン(55.36g,0.211mol)を加えた。反応混合液に0℃で攪拌下にアゾジカルボン酸ジイソプロピルエステル(41.6ml,0.211mol)を滴下した。滴下終了後、反応混合液を室温で2.5時間攪拌した。反応混合液を減圧下に乾固し、得られた残留物をシリカゲル(1.0kg)を用いたカラムクロマトグラフィーにて精製した。n−ヘキサン−酢酸エチル(1:1,v/v)流分より4−(N−ベンジルオキシカルボニル−(4S)−ホルミルオキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)安息香酸エチルエステル(不純物として光延反応試薬由来の不純物を含む。本化合物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。)を含む画分を得た。これを、エタノール(500ml)で希釈し、0℃で攪拌下に無水炭酸カリウム(26.52g,0.192mol)および水(500ml)を加え、室温で2.5時間攪拌した。反応液を減圧下に約半量まで濃縮後、クロロホルムにて抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲル(1.5kg)を用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、n−ヘキサン−酢酸エチル(3:1〜1:2,v/v)流分より標題化合物(70.50g,92.0%;2工程での収率)を淡黄色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.38(t,J=7.2Hz,3H),2.13(m,1H),2.36(m,1H),3.24and3.54−3.78(series of mtotal 2H),4.15(m,1H),4.22−4.62(series of m,including q at δ 4.35,J=7.2Hz,total 5H),5.08−5.24(m,2H),6.83(m,1H),6.95(d,J=8.0Hz,1H),7.34(m,5H),7.92(m,1H),7.99(d,J=8.0Hz,1H).
MS(ESI);m/z:400(M+1).
4−(N−ベンジルオキシカルボニル−(4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)安息香酸エチルエステル

4−(N−ベンジルオキシカルボニル−(4S)−ヒドロキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)安息香酸エチルエステル(70.50g,0.176mol)にDMF(1.0L)およびヨウ化メチル(16.5ml,0.265mol)を加え、0℃で攪拌下に水素化ナトリウム(60% oil dispersion)(8.47g,0.212mol)を徐々に加えた。反応液を攪拌下に徐々に室温に戻し、さらに室温で3.5時間攪拌した。反応液を再び0℃に冷却し、水(1.0L)および1NHCl(500ml)を加え、酢酸エチル(1.0L×3)にて抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲル(1.5kg)を用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、n−ヘキサン−酢酸エチル(2:1,v/v)流分より標題化合物(70.68g,96.9%)を淡橙色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.38(t,J=7.2Hz,3H),2.07(m,1H),2.32(brd,J=14.4Hz,1H),3.29(s,3H,OMe),3.51−3.69(m,2H),3.97(m,1H),4.04(m,1H),4.17−4.47(series of m,including q at δ 4.34,J=7.2Hz,total4H),5.16(m,2H),6.81(d,J=8.8Hz,1H),6.97(d,J=8.8Hz,1H),7.37(m,5H),7.87(d,J=8.8Hz,1H),7.98(d,J=8.8Hz,1H).
MS(ESI);m/z:414(M+1).
4−((4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)安息香酸エチルエステル

4−(N−ベンジルオキシカルボニル−(4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)安息香酸エチルエステル(70.68g,0.171mol)をエタノール(500ml)に溶解し、10%パラジウム/炭素(wet,7.1g)を加え、室温攪拌下に18時間接触水素化を行った。反応混合液をろ過して不溶物を濾別後、減圧下に溶媒を留去した。残留物をさらにエタノール(500ml)および10%水酸化パラジウム/炭素(7.1g)を加え、室温攪拌下に1.5時間接触水素化を行った。反応液をろ過にて不溶物を濾別後、減圧下に溶媒を留去して標題化合物(48.47g)を淡褐色油状物として得た(本化合物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。)。
H−NMR(CDCl)δ:1.37(t,J=7.2Hz,3H),1.78(m,1H),2.22(ddd,J=6.4,7.6,14.0Hz,1H),3.06(dd,J=4.8,12.0Hz,1H),3.22(dd,J=1.2,12.0Hz,1H),3.30(s,3H,OMe),3.66(m,1H),3.72(m,1H),3.99(m,1H),4.09(m,1H),4.34(q,J=7.2Hz,2H),6.92(m,2H),7.97(m,2H).
MS(ESI);m/z:280(M+1).
4−((4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル・トリフルオロ酢酸塩

4−((4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)安息香酸エチルエステルをメタノール(500ml)およびトリフルオロ酢酸(26.3ml,0.342mol)に溶解し、ロジウム−アルミナ粉末(ロジウム5%)(9.6g)を加え、水素ガス雰囲気下(10〜7.5MPa)、室温で2日間攪拌した。反応液をろ過して不溶物を濾別し、減圧下に溶媒を留去して標題化合物(73.97g)を固形物として得た(本化合物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。)。
H−NMR(CDCl)δ:1.24and1.25(t,J=7.2Hz,total 3H),1.36−2.40(series of m,total 11H),3.31(s,3H),3.35−3.76(seriesofm,total5H),3.97(m,1H),4.05−4.16(m,1H),4.11(q,J=7.2Hz,2H),7.95(br s,1H,NH),10.80(br s,1H,CFCOH).
LC−MS;m/z:286(M+1).
4−(N−第三級ブトキシカルボニル−(4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル

4−((4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル・トリフルオロ酢酸塩に塩化メチレン(500ml)を加え、0℃で攪拌下にトリエチルアミン(47.7ml,0.342mol)および第三級ブチルジカーボネート(41.05g,0.188mol)を加えて70分間攪拌した。反応液を減圧下に乾固し、酢酸エチル(500ml)で希釈した。これを0.5NHCl、次いで飽和食塩水洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒留去して得られた残留物をシリカゲル(700g)を用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、n−ヘキサン−酢酸エチル(3:1〜2:1,v/v)流分より標題化合物(63.68g,96.6%,3工程)を油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.24and1.25(t,J=7.2Hz,total 3H),1.28−2.38(series of m,including s at δ 1.46,total 20H),3.14−4.16(series of m,including s at δ 3.30,total 12H).
LC−MS;m/z:286(M−Boc+1),408(M+Na).
トランス−4−(N−第三級ブトキシカルボニル−(4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル

4−(N−第三級ブトキシカルボニル−(4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(63.68g,0.165mol)にDMF(500ml)およびエタノール(20ml)を加え、0℃で攪拌下に水素化ナトリウム(60%in oil dispersion;9.91g,0.248mol)を加えた。反応液をさらに50℃で1時間攪拌後、再び0℃に冷却し、0.5NHCl(600ml)を加えて酸性にした。反応混合液を酢酸エチルにて抽出した。抽出液を飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残留物をDMF(300ml)に溶解し、室温攪拌下に無水炭酸カリウム(34.21g,0.248mol)およびヨウ化エチル(6.60ml,82.5mmol)を加え、13時間攪拌した。反応液を酢酸エチル(1000ml)で希釈し、冷却水洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒留去して得られた残留物をシリカゲル(150g)を用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、n−ヘキサン−酢酸エチル(1:1,v/v)流分よりシスおよびトランス異性体の混合物の標題化合物を得た。これをさらにフラッシュカラムクロマトグラフィー(Biotage Flush column chromatography sysytems)にて精製し、n−ヘキサン−酢酸エチル(6:1,v/v)流分より標題化合物(27.16g,42.7%)を淡黄色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.18−1.33(m,including t at δ 1.24,J=7.2Hz,total6H),1.37−1.53(m,includings at δ 1.46,total 11H),1.91−2.11(m,4H),2.15−2.29(m,2H),3.23(m,1H),3.30(s,3H,OMe),3.32−3.45(m,2H),3.46−4.01(series of m,total 4H),4.11(q,J=7.2Hz,2H).
MS(ESI);m/z:286(M−Boc+1),386(M+1).
トランス−4−((4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル

トランス−4−(N−第三級ブトキシカルボニル−(4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(27.16g,0.070mol)を1,4−ジオキサン(100ml)中、0℃で攪拌下に4NHCl/1,4−ジオキサン(200ml)を加えた。反応混合液をさらに室温で3時間攪拌後、減圧下に溶媒留去した。残留物をクロロホルム(500ml)で希釈し、飽和重曹水で中和後、クロロホルム−メタノール(10:1,v/v)で抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒留去して標題化合物(22.27g,crude)を淡黄色油状物として得た(本化合物はこれ以上精製することなく次の反応に用いた。)。
H−NMR(CDCl)δ:1.19−1.32(m,including t at δ 1.24,J=7.6Hz,total 5H),1.38−1.52(m,3H),1.83(br s,1H,NH),1.95−2.13(m,5H),2.25(m,1H),2.87(dd,J=5.2,11.6Hz,1H),3.06(dd,J=1.6,11.6Hz,1H),3.15−3.32(m,including s at δ 3.27,total 5H),3.45(dd,J=7.2,9.2Hz,1H),3.51(dd,J=4.8,9.2Hz,1H),3.89(m,1H),4.11(q,J=7.6Hz,2H).
MS(ESI);m/z:286(M+1).
[参考例2]
トランス−4−((2S,4S)−1−{2,5−ジクロロ−4−[(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシヘキサン−1−カルボン酸エチルエステル

トランス−4−((4S)−メトキシ−(2S)−ピロリジニルメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(20.1g,70.47mmol)をDMF(400ml)中、室温で攪拌下に2,5−ジクロロ−4−〔(1−メチル−1H−インドール−3−イル)カルボキサミド〕フェニル酢酸(26.58g,70.47mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1−HOBt)(1.90g,14.09mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.86g,7.047mmol)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(20.26g,0.106mmol)を加え、反応混合液を室温でさらに18時間攪拌した。反応液を酢酸エチル(1000ml)で希釈し、1NHClで洗浄した。析出した不溶物を減圧下に濾別、クロロホルム−メタノール(200ml,10:1,v/v)で洗浄した。濾液を飽和重曹水洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲル(1.2kg)を用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、クロロホルム−酢酸エチル(4:1,v/v)流分より標題化合物(45.35g,99.8%)を淡黄色アモルファスとして得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.14−1.33(m,6H),1.36−1.55(m,2H),1.92−2.14(m,4H),2.15−2.43(m,2H),3.18−3.35(m,including 2s,at δ 3.30,3.33,total 8H),3.44−3.58(m,2H),3.62−4.03(series of m,including s at δ 3.86,total 8H),4.09(q,J=6.8Hz,2H),4.25(m,1H),7.19−7.45(series of m,total 4H),7.78(s,1H),8.13(m,1H),8.22(brd,J=3.2Hz,1H),8.77(d,J=7.2Hz,1H).
MS(ESI);m/z:644(M+1).
[参考例3]
トランス−4−((2S,4S)−1−{2,5−ジクロロ−4−[(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシヘキサン−1−カルボン酸

トランス−4−((2S,4S)−1−{2,5−ジクロロ−4−[(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシヘキサン−1−カルボン酸エチルエステル(45.35g,70.4mmol)にTHF(250ml)およびメタノール(50ml)および1NNaOH(250ml)を加え、反応混合液を18時間攪拌し、さらに50℃で1時間攪拌した。反応液を0℃で冷却し、弱酸性になるまで1NHClを加えた。混合液をクロロホルム−メタノール(10:1,v/v)にて抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた粗結晶を酢酸エチル−メタノール(1.5L,2:1,v/v)から再結晶し、標題化合物(30.1g,69.1%)を微細針状結晶として得た。
IR(ATR)cm−1:2940,1727,1598.
H−NMR(DMSO−d)δ:1.09−1.43(m,4H),1.80−2.22(m,7H),3.10−4.30(series of m,including s at δ 3.89,total 12H),7.21(dd,J=7.6,7.6Hz,1H),7.28(dd,J=7.6,7.6Hz,1H),7.49and7.52(2S,total 1H),7.56(d,J=7.6Hz,1H),7.89and7.90(2S,total 1H),8.15(d,J=7.6Hz,1H),8.30(s,1H),9.37(s,1H),12.04(brs,1H,COH).
MS(ESI);m/z:616(M+1).
Anal;
Calcd.for C3135Cl・0.75HO:C, 59.10;H, 5.84;N, 6.67;Cl, 11.25.
Found:C, 58.93;H, 5.45;N, 6.70;Cl, 11.64.
〔参考例4〕
(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)酢酸(20)

(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)酢酸エチルエステル(14)(4.36g,17.57mmol)にエタノール(30ml)および1NNaOH(35ml)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に水(30ml)を加え、反応液がおよそ半量になるまで減圧下で濃縮した。これに、冷却下に1NHCl(36ml)を加え、析出結晶を減圧下に濾取した。結晶を水洗後、風乾した。得られた粗結晶を酢酸エチル:クロロホルム:メタノール(5:5:2,v/v/v,120ml)に溶解し、これを減圧下にろ過後、濾液を減圧下に濃縮した。析出結晶をヘキサンで洗浄し、減圧乾燥して(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)酢酸(20)(3.69g,96%)を微細プリズム結晶として得た。
融点(未補正):153−163℃.
IR(ATR)cm−1:3373,3249,1697,1599.
H−NMR(DMSO−d)δ:5.33(2H,s),6.86(1H,s),7.16(1H,s).
MS(ESI−Nega.)m/z:218(M−1).
Anal.
Calcd.for CClNO:C, 43.66;H, 3.21;N, 6.37.
Found:C, 43.54;H, 3.21;N, 6.37.
〔参考例5〕
トランス−4−[(2S,4S)−1−(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル]メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸エチルエステル(21)

トランス−4−[(2S,4S)−4−メトキシピロリジン−2−イル]メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸エチルエステル(12)(1.21g,5.45mmol)、(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)酢酸(20)(1.2g,5.45mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(700mg,5.73mmol)および触媒量の1−ヒドロキシベンゾトリアゾールをDMF(50ml)中、室温攪拌中、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1.25g,6.54mmol)を加え、反応混合液を室温で15時間撹拌した。反応液を氷水(100ml)に注ぎ、酢酸エチルにて抽出した。抽出液を飽和食塩水洗浄(2回)、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残留物を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、クロロホルム:酢酸エチル(9:1〜4:1,v/v)流分よりトランス−4−[(2S,4S)−1−(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル]メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸エチルエステル(21)(2.48g,94%)を無色固形物として得た。
融点(未補正):113−118℃
IR(ATR)cm−1:3464,3303,3182,1726,1633.
H−NMR(CDCl)δ:1.22−1.26(5H,m),1.42−1.48(2H,m),1.95−1.99(5H,m),2.03−2.08(2H,m),3.22−4.12(14H,m),6.78(1H,m),7.18(1H,m).
MS(ESI);m/z:488(M−1).
Anal.;
Calcd for C2332Cl:C, 56.88;H, 6.62;N, 5.75.
Found:C, 56.57;H, 6.62;N, 5.64.
〔参考例6〕
トランス−4−((2S,4S)−1−{2,5−ジクロロ−4−[(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸エチルエステル(13)

1−メチルインドール−3−カルボン酸(19)(150mg,0.86mmol)および1,2−ジクロロエタン(3ml)を氷水浴で冷却攪拌下に塩化オキザリル(0.095ml,1.07mmol)を加え、同温度で1時間攪拌した。反応液を減圧下に乾固した。得られた結晶を1,2−ジクロロエタン(3ml)に溶解し、これをトランス−4−[(2S,4S)−1−(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル]メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸エチルエステル(21)(348mg,0.714mmol)の1,2−ジクロロエタン(15ml)溶液に冷却攪拌下で加えた。添加終了後、反応混合液を10時間攪拌下に加熱還流した。反応液を冷却後、水洗、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残留物を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、クロロホルム:酢酸エチル(9:1〜3:1,v/v)流分より標題化合物(350mg,76%)を結晶性粉末として得た。本方法で得られた化合物の各種スペクトラルデータは先に示した方法で得たものと一致した。
〔参考例7〕
(2,5−ジクロロ−4−ニトロフェニル)酢酸エチルエステル(23)

(2,5−ジクロロ−4−ニトロフェニル)酢酸(22)(Valerie K.Chamberlain and R.L.Wain.Ann.appl.Biol.(1971),69,65−72.)(500mg,2.0mmol)をエタノール(10ml)に溶解し、p−トルエンスルフォン酸・1水和物(50mg,0.26mmol)を加えて60℃で2時間攪拌した。反応液を室温に冷却後、減圧下に濃縮乾固して得られる残渣に飽和重曹水(30ml)を加え、クロロホルムにて抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーにて精製し、クロロホルム流分より標題物 (505mg,91%)を淡黄色結晶性粉末として得た。
融点(未補正)洗浄:50−55℃
IR(ATR)cm−1:3095,1716,1525,1473,1365,1329,1083.
H−NMR(CDCl)δ:1.30(3H,t),3.80(2H,s),4.21(2H,m),7.53 and 7.98(each 1H,each s).
MS(ESI−Nega.)m/z:278(M−1).
Anal.;
Calcd for C10ClNO:C, 43.19;H, 3.26;N, 5.04.
Found:C, 42.97;H, 3.15;N, 5.13.
〔参考例8〕
(4−アミノ−2,5−ジクロロ−4−ニトロフェニル)酢酸エチルエステル(14)

(2,5−ジクロロ−4−ニトロフェニル)酢酸エチルエステル(23)(400mg,1.44mmol)、酢酸ナトリウム・3水和物(196mg,1.44mmol)および酢酸(0.535ml,9.35mmol)にエタノール(10ml)、水(5ml)および鉄粉(262mg,4.67mmol)を加え、100℃で1時間撹拌した。反応液を室温に冷却し、減圧下にセライトを用いて不溶物をろ別し、ろ液を減圧下に溶媒を留去した。残渣に酢酸エチル(50ml)を加え、順次0.2NHCl,飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られる残渣をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーにて精製し、クロロホルム:酢酸エチル(3:1,v/v)流分より標題物(278mg,78%)を飴状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.26(3H,t),3.61(2H,s),4.17(2H,m),6.79 and 7.16(each 1H,each d).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

(式中、R11は、アミノ基の保護基を意味し、Rは、水素原子または水酸基の保護基を意味するが、両者が保護基である場合は同一の保護基とはならない。)で表わされる化合物に、塩基存在下、置換基を有していてもよいアリールスルホニルクロリドまたは置換基を有していてもよいアルキルスルホニルクロリドを反応させ、得られる式(II)

(式中、R11およびRは、先と同義であり、Rは、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基または置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基を意味する。)
で表わされる化合物に、式(III)

(式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味し、Mは、アルカリ金属原子を意味する。)
で表わされる化合物を反応させることを特徴とする式(IV)

(式中、R11、RおよびRは先と同義である。)
で表わされる化合物の製造方法。
【請求項2】
11が、ベンジルオキシカルボニル基である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
が、水素原子である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
が、パラトルエンスルホニル基またはメタンスルホニル基である請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
が、メチル基またはエチル基である請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
式(V)

(式中、Rは、水素原子またはアミノ基の保護基を意味し、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味する。)
で表わされる化合物を還元し、得られる式(VI)

(式中、RおよびRは先と同義である。)
で表わされる化合物を、非プロトン性極性溶媒中、金属水素化物で処理した後に、異性体を分離することを特徴とする式(VI−trans)

(式中、RおよびRは先と同義である。)
で表わされる化合物の製造方法。
【請求項7】
が、第三級ブトキシカルボニル基である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
が、メチル基またはエチル基である請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
金属水素化物が、水素化ナトリウムまたは水素化リチウムである請求項6から8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
非プロトン性極性溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、またはジメチルスルホキシドである請求項6から9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
式(12)

(式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味する。)
で表わされる化合物に、式(20)

で表わされる化合物を縮合させ、得られる式(21)

(式中、Rは、先と同義である。)
で表わされる化合物に、次式(19)

で表わされる化合物又はその反応性誘導体を反応させ、得られる式(13)

(式中、Rは、先と同義である。)
で表わされる化合物のエステルを切断することを特徴とする式(1)

で表わされる化合物の製造方法。
【請求項12】
下記式(21)

(式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味する。)
で表わされる化合物。

【国際公開番号】WO2004/099136
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506035(P2005−506035)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006471
【国際出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】