説明

ピンチロール

【課題】簡略な構造にてロール幅方向に及び周方向で均一な温度分布が得られるように内部冷却できるピンチロールを提供することを目的とする。
【解決手段】金属ストリップ連続鋳造装置で製造される高温ストリップの移動経路がガスチャンバで覆われているストリップを搬送するためのピンチロール7a,7bであって、両端に軸部52,53を有するロール胴部51と、ロール胴部51の外周面に形成した1つ以上の螺旋溝59aと、ロール胴部51の外部に嵌合して螺旋流路59を形成するスリーブ60と、軸部52に形成した流体供給路64と螺旋流路59の一端とを連通する半径方向の供給連通孔70と、軸部52に形成した流体排出路66と螺旋流路59の他端とを連通する半径方向の排出連通孔75とを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属ストリップ連続鋳造装置に備えられるピンチロールに関する。より詳細には、双ロール式連続鋳造機に備えられるピンチロールに関するが、これに限定されるものではない。
【0002】
【従来の技術】
従来、溶融金属から金属板を連続的に鋳造する一手段として、種々の双ロール式連続鋳造機が提案されている。
【0003】
図13は特開昭63−26240号公報及び特開昭63−30158号公報に開示されているストリップキャスタ(双ロール式連続鋳造機)を示すものである。図中1a,1bは一対の内部冷却される鋳造ロールであり、該鋳造ロール1a,1bは、水平に且つ互いに平行にロールギャップを有して並ぶように配置されている。
【0004】
この鋳造ロール1a,1bの直上には、鋳造ロール1a,1bの間に溶融金属溜まり2を形成させるためのタンディッシュ3及びサイド堰3aが設けられており、鋳造ロール1a,1bの間に溶融金属溜まり2を形成させた状態で、図13において左側に位置する鋳造ロール1aを時計回りに、また、図13において右側に位置する鋳造ロール1bを反時計回りに同時に回動させると、鋳造ロール1a,1bの間で凝固した金属が鋳造ロール1a,1bのロールギャップに応じた板厚の高温ストリップ4に成形されて鋳造ロール1a,1bの下方へ連続的に送り出されるようになっている。
【0005】
5a,5bは一対の案内用のピンチロール群であり、該ピンチロール群5a,5bは、鋳造ロール1a,1bから下方へ送り出される高温ストリップ4を板厚方向に挾持し得るように、鋳造ロール1a,1bの直下に配置されている。6は側方から見て湾曲板状に形成されたストリップガイド部材であり、該ストリップガイド部材6は、ピンチロール群5a,5bから下方へ送り出されるストリップ4を水平方向へ案内するように、ピンチロール群5a,5bの下方に配置されている。
【0006】
7a,7bはピンチロールであり、該ピンチロール7a,7bは、ストリップガイド部材6によって水平方向に案内されるストリップ4を板厚方向に挾持して搬送するように、ストリップガイド部材6のストリップ移動方向下流側に配置されている。
【0007】
8は巻取機であり、該巻取機8は、ピンチロール7a,7bから水平に送り出されるストリップ4を巻き取り得るように、ピンチロール装置7の下流側に配置している。
【0008】
上述した鋳造ロール1a,1bの下半部、ピンチロール群5a,5b、ストリップガイド部材6、ピンチロール7a,7b、巻取機8からなるストリップ4の移動経路は、大型のガスチャンバ9に内装されており、該ガスチャンバ9の内部には、ストリップガイド部材6とピンチロール7a,7bとの間において、ストリップ4の下面及び上面に対峙するようにノズル10a,10bが設けられている。このノズル10a,10bには、供給管11a,11bを介し窒素ガス等の無酸化ガスのガス供給源12が接続され、ガスチャンバ9には、供給管13a,13bを介しガス供給源14が接続されている。
【0009】
すなわち、図13に示す双ロール式連続鋳造機においては、窒素ガス等の無酸化ガスをガスチャンバ9へ供給することにより該ガスチャンバ9の内部を無酸化ガス雰囲気とし、更に、窒素ガスをノズル10a,10bから噴射させることにより、ストリップ4の表面にスケール(酸化被膜)が生成されるのを抑制している。また、ストリップ4の温度は、鋳造ロール1a,1bから送り出される時点において約1400℃程度であるが、ノズル10a,10bから噴射される窒素ガスによって冷却されることにより、約600〜800℃程度に低下されるようにしている。
【0010】
上記したように、金属ストリップ連続鋳造装置で製造される高温ストリップにおいてはスケールの発生を防止する必要があり、このために、図13に示したようにストリップ4の移動経路全体を大型のガスチャンバ9で覆う方式の他に、ストリップ4の移動経路をピンチロール7a,7b位置で前後に分け、ストリップ4を前側のガスチャンバと後測のガスチャンバで包囲する方式もある。又、金属ストリップ連続鋳造装置には前記ピンチロール7a,7bの後段(下流側)に圧延機を設置する場合があり、この場合には圧延機の直前位置までガスチャンバを設けたり、或いは圧延機とその前後にガスチャンバを設ける方式もある。
【0011】
しかし、いずれの場合にも通常、少なくともピンチロール7a,7bの位置まではガスチャンバで覆うようにしており、このために1000℃前後のストリップ4を搬送するピンチロール7a,7bの近傍は非常に高温の雰囲気となり、このためにピンチロール7a,7bを冷却水で外部冷却することはできない。
【0012】
一方、ロールを冷却する手法としては、前記ピンチロール7a,7bとは機能が相違する鋳造ロール1a,1bにおいて、ロール内部に冷却水を通す種々の形状の流路を備えることにより内部冷却する方式が提案されている。
【0013】
図13に示した鋳造ロール1a,1b(双ロール)は、双ロール上部に溶融金属溜まり2を区画するためにロール端部にサイド堰3aを設けるため、双ロールにより溶融金属を凝固させて幅方向板厚分布を均一にしたストリップ4を形成させる過程での溶融金属の冷却速度は重要な要因を成し、その冷却速度の調整を担う双ロールに形成する冷却流路において、サイド堰3a近傍(両端部)とロール胴部の中央部に分けて検討された結果、両端部の冷却能力を中央部に比して低くする必要が生じ、この要求に応じた温度分布を保持させるために種々の流路構造を備えた鋳造ロール1a,1bが提案された。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
一方、双ロール式連続鋳造機に使用されるピンチロール7a,7bは、1000℃前後の高温ストリップ4を搬送する目的から耐熱を考慮した冷却手段を具備させる点は鋳造ロール1a,1bと同様であるが、鋳造ロール1a,1bの目的と異なり、正常な搬送を行うための蛇行対策が必須の要件となる。
【0015】
即ち、ピンチロール7a,7bは、熱歪みに伴うサーマルクラウンの抑制、真円度の維持を図る必要があり、このためにピンチロール7a,7bの端部と中央部とで冷却効果を変化させることなく、しかも、ロール外面の周方向での冷却効果を変化させないようにすることが要求される。
【0016】
本発明は、こうした要求に鑑みてなしたもので、簡略な構造にて、ロール幅方向に及び周方向で均一な温度分布が得られるように冷却できるピンチロールを提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属ストリップ連続鋳造装置で製造される高温ストリップの移動経路がガスチャンバで覆われているストリップを搬送するためのピンチロールであって、両端に軸部を有するロール胴部と、該ロール胴部の外周面に形成した1つ以上の螺旋溝と、ロール胴部の外部に嵌合して螺旋流路を形成するスリーブと、軸部に形成した流体供給路と前記螺旋流路の一端とを連通する半径方向の供給連通孔と、軸部に形成した流体排出路と前記螺旋流路の他端とを連通する半径方向の排出連通孔と、を備えたことを特徴とするピンチロール、に係るものである。
【0018】
好ましくは、前記螺旋溝が、冷却に必要な流体量に見合う幅と深さを有する凹溝であることを含む。
【0019】
好ましくは、前記ロール胴部の両端に備えられる軸部が、流体供給路と流体排出路によって冷却されるようにしたことを含む。
【0020】
本発明は、金属ストリップ連続鋳造装置で製造される高温ストリップの移動経路がガスチャンバで覆われているストリップを搬送するためのピンチロールであって、両端に軸部を有するロール胴部と、ロール胴部内において中央軸線周りの等間隔位置に軸と平行に形成した冷却流路と、軸部に形成した流体供給路と前記冷却流路の一端とを連通する半径方向の供給連通孔と、軸部に形成した流体排出路と前記冷却流路の他端とを連通する半径方向の排出連通孔と、を備えたことを特徴とするピンチロール、に係るものである。
【0021】
好ましくは、一端が前記供給連通孔に接続された冷却流路に対し奇数の冷却流路を挟む位置の冷却流路の他端を前記排出連通孔に接続しており、前記供給連通孔と排出連通孔との間において、冷却流体を冷却流路の長手方向に沿いジグザグ状に流動させる冷却ゾーンを周方向に複数形成したことを含む。
【0022】
好ましくは、前記ロール胴部の両端に備えられる軸部が、流体供給路と流体排出路によって冷却されるようにしたことを含む。
【0023】
上記手段によれば、次のように作用する。
【0024】
ピンチロールのロール胴部に螺旋溝を形成し、その外部にスリーブを嵌合することによって形成した螺旋流路に冷却流体を流動させて冷却するようにしたので、ピンチロールのロール表面がロール端部と中央部とで冷却効果が変化することがなく、ピンチロールを幅方向に均一に冷却できる。更に、前記螺旋流路による冷却によってロール外面の周方向での冷却効果も均一に保持されるようになる。従って、比較的簡略な構造にて、ピンチロールをロール幅方向及び周方向で均一な温度分布が得られるように冷却できるので、熱歪みに伴うサーマルクラウンの抑制、真円度の維持が図れ、ストリップの蛇行を効果的に防止できるようになる。
【0025】
又、前記螺旋溝は加工が比較的容易であり、よって螺旋流路を有したピンチロールが比較的容易に提供できる。
【0026】
スリーブがない場合、ロール胴部の内部で周方向等間隔に形成した冷却流路に冷却流体を流動させることによってピンチロールを冷却するようにしたので、ピンチロールのロール表面がロール端部と中央部とで冷却効果が変化することがなく、ピンチロールを幅方向に均一に冷却できる。更に、周方向等間隔の冷却流路によって、ロール外面の周方向での冷却効果も均一に保持されるようになる。従って、比較的簡略な構造にて、ピンチロールをロール幅方向及び周方向で均一な温度分布が得られるように冷却できるので、熱歪みに伴うサーマルクラウンの抑制、真円度の維持が図れ、ストリップの蛇行を効果的に防止できるようになる。
【0027】
奇数の冷却流路を挟む冷却流路間において冷却流体をジグザグ状に流すようにした冷却ゾーンをロール胴部の周方向に複数備えるようにしたので、ピンチロールの幅方向の冷却効果が更に均一になり、且つ供給連通孔及び排出連通孔の設置数も減少するので内部構造を簡略化できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
図1は本発明のピンチロールの形態例を示す断面図、図2は図1のII−II方向矢視図、図3は図1のIII−III方向矢視図、図4は図1のIV方向矢視図、図5は図1のV−V方向矢視図である。
【0030】
図13に示したように、高温ストリップ4の移動経路を種々のガスチャンバ9で覆う構成を有する金属ストリップ連続鋳造装置に用いられるピンチロール7a,7bを、図1〜図5R>5に示すように構成する。図1のピンチロール7a,7bは、管状を有するロール胴部51の両端に軸部52,53を、該軸部52,53に一体に形成したフランジ54を介してシール材55と固定具56により気密に固定している。上記軸部52,53は夫々軸受57により図示しないピンチロール装置に回転可能に支持されている。右側に設けられる他方の軸部53には、図示しない駆動装置に連結された駆動軸のカップリングが嵌合するカップリング接続部58が設けられている。
【0031】
前記ロール胴部51の外周面には1つ以上の螺旋溝59aが形成されている。図示例では図3に示すよう等間隔の4本の螺旋溝59aが平行に形成されている。この螺旋溝59aは、冷却に必要な流体量に見合う幅Wと深さHになるように機械加工等にて形成した凹溝とすることができる。
【0032】
前記螺旋溝59aが形成されたロール胴部51の外部にはスリーブ60が焼嵌めなどにて気密に嵌合されており、これにより螺旋流路59が形成されている。該螺旋流路59における一方の端部と他方の端部は、夫々図4に示すように閉塞具59bにて閉塞されている。
【0033】
図1、図2に示すように一方の軸部52の中心には貫通孔61が形成されており、この貫通孔61の内部には環状間隔が形成されるように内管62が支持部材62aによって同心に配置され、内管62のロール胴部51側の右方端部はシールパッキン63又はoリングにて軸部52に対し気密に固定されている。この内管62により径方向外側の流体供給路64と、径方向内側で前記ロール胴部51内の空間65と連通する流体排出路66とを隔成している。前記一方の軸部52の左側外方端にはロータリージョイント67が接続されており、更にロータリージョイント67の外方には、前記流体供給路64に連通する流体供給口68と前記流体排出路66に連通する流体排出口69が接続されている。
【0034】
前記流体供給路64のシールパッキン63に近い内方端部には、前記フランジ54内を半径方向に延びて前記4本の螺旋流路59の各一端に連通する4本の供給連通孔70が形成されている。
【0035】
又、図1、図5に示すように、他方の軸部53の中心には右方端部が軸受57内部近傍で行き止まりになっている穴71が形成されており、この穴71の内部には環状間隔が形成されるように内管72が支持部材72aにより同心に配置され、内管72のロール胴部51側の左方端部はシールパッキン73又はoリングにより軸部53に対し気密に固定されている。この時、内管72は穴71の深さより短い長さとなっており、これにより、内管72の径方向外側の流路74aと、穴71の最奥部の反転部74bと、内管72の径方向内側の流路74cとによりU字状を有してロール胴部51内の空間65に連通する流体排出路74が形成されている。
【0036】
更に、前記流体排出路74における流路74aのシールパッキン73に近い内方端部には、前記フランジ54内を半径方向に延びて前記4本の螺旋流路59の各他端に連通する4本の排出連通孔75を形成している。
【0037】
上記形態例においては、4本の螺旋流路59を形成した場合について例示したが、1本以上何本の螺旋流路59を形成してもよい。又、ロール胴部51と軸部52,53とが別体に構成された場合について例示したが、ロール胴部51と軸部52,53が一体構造の場合にも適用できる。更に、一方の軸部52から冷却流体の給排を行う場合について例示したが、一方の軸部から冷却流体を供給して他方の軸部から冷却流体を排出するようにしてもよい。
【0038】
次に、上記図1〜図5に示した形態例の作用を説明する。
【0039】
図1に示すように、軸受57に支持されて回転しているピンチロール7a,7bにおいて、流体供給口68から水等の冷却流体を供給すると、冷却流体はロータリージョイント67を経て一方の軸部52の流体供給路64に流入することにより軸部52の軸受57部を冷却した後、4本の供給連通孔70に分かれて流入する。供給連通孔70に流入した冷却流体は、ロール胴部51に形成した螺旋流路59の一端に流入し、螺旋流路59内を旋回しながら流れることによりロール胴部51及びスリーブ60を冷却する。この冷却により、ピンチロール7a,7bはストリップを冷却しつつ搬送することができる。この時、ストリップによって加熱されるピンチロール7a,7bの冷却に必要な流体量に見合う幅Wと深さHになるように予め凹溝による螺旋溝59aを形成しておくことにより、ピンチロール7a,7bを目的の最適温度に冷却することができる。
【0040】
螺旋流路59を流動した冷却流体は、他端部から4本の排出連通孔75に流入し、該排出連通孔75から流体排出路74の流路74aに流入し、他方の軸部53の軸受57を冷却しつつ反転部74b及び流路74cを経てロール胴部51内部の空間65に流入する。そして、空間65内の冷却流体は、前記一方の軸部52の流体排出路66からロータリージョイント67を経て流体排出口69より外部に排出される。
【0041】
上記したように、冷却流体は螺旋流路59を旋回して流れることによりピンチロール7a,7bを冷却しているので、ピンチロール7a,7bのロール表面はロール端部と中央部とで冷却効果が変化することがなく、ピンチロール7a,7bは幅方向に均一に冷却される。更に、前記螺旋流路59による冷却によればロール外面の周方向での冷却効果も均一に保持されるようになる。このように比較的簡略な構造にて、ロール幅方向及び周方向で均一な温度分布が得られるように冷却できるので、熱歪みに伴うサーマルクラウンの抑制、真円度の維持が図れ、ストリップの蛇行を効果的に防止できるようになる。
【0042】
又前記螺旋溝59aは加工が比較的容易であり、よって螺旋流路59を有したピンチロール7a,7bが比較的容易に提供できる。
【0043】
図6は本発明のピンチロールの他の形態例を示す断面図、図7は図6のVII−VII方向矢視図、図8は図6のVIII−VIII方向矢視図、図9は図6のIX−IX方向矢視図、図10は図6のX−X方向矢視図、図11は図10のXI方向矢視図、図12は図1010のXII方向矢視図である。
【0044】
図6の形態例における軸部52,53の構成は前記図1の形態例の場合と略同一であるので説明の重複は省き、図1の形態例と異なる構成についてのみ詳述する。
【0045】
図6に示すように、両端に軸部52,53を固定したロール胴部51内の外表面に近い位置には、中央軸線周りの等間隔位置に軸と平行なキリ穴による冷却流路76が形成されている。図7〜図9では40本の冷却流路76が形成されており、この冷却流路76は冷却に必要な流体量に見合う本数、口径で形成される。
【0046】
一方の軸部52に形成されている流体供給路64のシールパッキン63に近い内方端部には、前記フランジ54内を半径方向に延びて一本の冷却流路76の一端に連通する供給連通孔77を設けており、上記供給連通孔77に連通した冷却流路76を含めて5本の冷却流路76を隔てた位置の冷却流路76の一端に別の供給連通孔77を連通させており、これにより5本の供給連通孔77が設けられている。
【0047】
又、他方の軸部53に形成されている流体排出路74における流路74aのシールパッキン73に近い内方端部には、前記フランジ54内を半径方向に延びて夫々が一本の冷却流路76の他端に連通する5本の排出連通孔78が設けられている。この5本の排出連通孔78は、一端が前記供給連通孔77に接続された冷却流路76に対して3本の冷却流路76を挟んだ位置、即ち5番目の冷却流路76の他端に夫々連通している。更に詳述すると、図7に示すように1本の供給連通孔77に連通した冷却流路76aを1番目とすると、図9に示すように5番目の冷却流路76eの他端に前記排出連通孔78が接続されている。そして、前記第1番目の冷却流路76aと第5番目の冷却流路76eの間において、各冷却流路76a〜76eを長手方向に沿い冷却流体がジグザグ状に流れるようにした冷却ゾーン81を構成している。
【0048】
即ち、図10、図11に示すように、第1番目の冷却流路76aと第2番目の冷却流路76bの他端側を夫々閉塞具79で閉塞し、閉塞具79に近い端部同士を接続穴80で接続することにより反転部を形成している。この時、第1番目の冷却流路76aから反転部を経て第2番目の冷却流路76bに向かう冷却流体が流動し易いように閉塞具79の内方端には傾斜面79aが形成されている。上記と同様に、第2番目の冷却流路76bと第3番目の冷却流路76cの一端側にも閉塞具79と接続穴80による反転部を形成し、又、第3番目の冷却流路76cと第4番目の冷却流路76dの他端側にも閉塞具79と接続穴80による反転部を形成し、更に、第4番目の冷却流路76dと第5番目の冷却流路76eの一端側にも閉塞具79と接続穴80による反転部を形成している。これにより、供給連通孔77からの冷却流体は冷却流路76a〜76eをジグザグ状に流れて排出連通孔78に向かうようになっており、前記冷却ゾーン81は、ロール胴部51の周方向に5個所形成されている。前記供給連通孔77が接続される冷却流路76の一端部と、前記排出連通孔78が接続される冷却流路76の他端部にも、閉塞具79が設けられているが、この閉塞具79には、図12に示すように供給連通孔77と冷却流路76の間、及び排出連通孔78と冷却流路76との間で冷却流体が流動し易いように、下向きの傾斜面79bが形成されている。
【0049】
尚、上記冷却ゾーン81は、供給連通孔77に連通する冷却流路76と排出連通孔78に連通する冷却流路76との間に奇数の冷却流路を挟んでいればジグザグ状の流れを形成することができ、冷却ゾーン81で冷却流体が折返し流れる回数は任意である。又、図示例ではロール胴部51と軸部52,53とが別体に構成された場合について例示したが、ロール胴部51と軸部52,53が一体構造の場合にも適用できる。更に、一方の軸部52から冷却流体の給排を行う場合について例示したが、一方の軸部から冷却流体を供給して他方の軸部から冷却流体を排出するようにしてもよい。
【0050】
次に、図6〜図12に示した形態例の作用を説明する。
【0051】
図6の流体供給口68から水等の冷却流体を供給すると、冷却流体はロータリージョイント67を経て一方の軸部52の流体供給路64に流入することにより軸部52の軸受57部を冷却した後、5本の供給連通孔77に分かれて流入する。各供給連通孔77に流入した冷却流体は、ロール胴部51に形成された冷却ゾーン81の第1番目の冷却流路76aの一端に流入し、冷却流路76a〜76eを順次ジグザグ状に流れることによりロール胴部51を冷却する。この冷却によりピンチロール7a,7bはストリップを冷却しつつ搬送することができる。この時、ストリップによって加熱されるピンチロール7a,7bの冷却に必要な流体量に見合う口径、本数の冷却流路76を設けておくことにより、ピンチロール7a,7bを目的の最適温度に冷却することができる。
【0052】
各冷却ゾーン81を流動した冷却流体は、冷却流路76eの他端部から夫々5本の排出連通孔78に流入し、該排出連通孔78から流体排出路74の流路74aに流入し、他方の軸部53の軸受57を冷却しつつ反転部74b及び流路74cを経てロール胴部51内部の空間65に流入する。そして、空間65内の冷却流体は、前記一方の軸部52の流体排出路66からロータリージョイント67を経て流体排出口69より外部に排出される。
【0053】
上記したように、冷却流体はロール胴部51内部に形成した冷却ゾーン81の冷却流路76に沿ってジグザグ状に流れてピンチロール7a,7bを冷却するので、ピンチロール7a,7bのロール表面はロール端部と中央部とで冷却効果が変化することがなく、ピンチロール7a,7bは幅方向に均一に冷却される。更に、ロール胴部51の周方向に複数形成した冷却ゾーン81により、ロール外面の周方向での冷却効果も均一に保持できるようになる。このように比較的簡略な構造にて、ロール幅方向及び周方向で均一な温度分布が得られるようにピンチロール7a,7bを冷却できるので、熱歪みに伴うサーマルクラウンの抑制、真円度の維持が図れ、ストリップの蛇行を効果的に防止できるようになる。
【0054】
又、前記したように、奇数の冷却流路76を挟む冷却流路76間において冷却流体をジグザグ状に流すようにした冷却ゾーン81をロール胴部51の周方向に複数備えるようにしたので、ピンチロール7a,7bの幅方向の冷却効果を更に均一にすることができ、且つ供給連通孔77及び排出連通孔78の設置数も減少するので内部構造の簡略化も図れる。
【0055】
尚、本発明は上記形態例にのみ限定されるものではなく、螺旋流路、冷却流路の設置数、設置間隔等は任意に設定できること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ること、等は勿論である。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
【0057】
ピンチロールのロール胴部に螺旋溝を形成し、その外部にスリーブを嵌合することによって形成した螺旋流路に冷却流体を流動させて冷却するようにしたので、ピンチロールのロール表面がロール端部と中央部とで冷却効果が変化することがなく、ピンチロールを幅方向に均一に冷却できる。更に、前記螺旋流路による冷却によってロール外面の周方向での冷却効果も均一に保持されるようになる。従って、比較的簡略な構造にて、ピンチロールをロール幅方向及び周方向で均一な温度分布が得られるように冷却できるので、熱歪みに伴うサーマルクラウンの抑制、真円度の維持が図れ、ストリップの蛇行を効果的に防止できるようになる。
【0058】
又、前記螺旋溝は加工が比較的容易であり、よって螺旋流路を有したピンチロールが比較的容易に提供できる。
【0059】
スリーブがない場合、ロール胴部の内部で周方向等間隔に形成した冷却流路に冷却流体を流動させることによってピンチロールを冷却するようにしたので、ピンチロールのロール表面がロール端部と中央部とで冷却効果が変化することがなく、ピンチロールを幅方向に均一に冷却できる。更に、周方向等間隔の冷却流路によって、ロール外面の周方向での冷却効果も均一に保持されるようになる。従って、比較的簡略な構造にて、ピンチロールをロール幅方向及び周方向で均一な温度分布が得られるように冷却できるので、熱歪みに伴うサーマルクラウンの抑制、真円度の維持が図れ、ストリップの蛇行を効果的に防止できるようになる。
【0060】
奇数の冷却流路を挟む冷却流路間において冷却流体をジグザグ状に流すようにした冷却ゾーンをロール胴部の周方向に複数備えるようにしたので、ピンチロールの幅方向の冷却効果が更に均一になり、且つ供給連通孔及び排出連通孔の設置数も減少するので内部構造を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のピンチロールの形態例を示す断面図である。
【図2】図1のII−II方向矢視図である。
【図3】図1のIII−III方向矢視図である。
【図4】図1のIV方向矢視図である。
【図5】図1のV−V方向矢視図である。
【図6】本発明の他の形態例を示す断面図である。
【図7】図6のVII−VII方向矢視図である。
【図8】図6のVIII−VIII方向矢視図である。
【図9】図6のIX−IX方向矢視図である。
【図10】図6のX−X方向矢視図である。
【図11】図10のXI方向矢視図である。
【図12】図10のXII方向矢視図である。
【図13】従来のストリップキャスタの一例を示す全体概略側面図である。
【符号の説明】
4  高温ストリップ(ストリップ)
7a,7b  ピンチロール
9  ガスチャンバ
51  ロール胴部
52  軸部(一方)
53  軸部(他方)
59  螺旋流路
59a        螺旋溝
60  スリーブ
64  流体供給路
66  流体排出路
70  供給連通孔
74  流体排出路
75  排出連通孔
76  冷却流路
76a〜76e        冷却流路
77  供給連通孔
78  排出連通孔
81  冷却ゾーン
H      深さ
W      幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップ連続鋳造装置で製造される高温ストリップの移動経路がガスチャンバで覆われているストリップを搬送するためのピンチロールであって、両端に軸部を有するロール胴部と、該ロール胴部の外周面に形成した1つ以上の螺旋溝と、ロール胴部の外部に嵌合して螺旋流路を形成するスリーブと、軸部に形成した流体供給路と前記螺旋流路の一端とを連通する半径方向の供給連通孔と、軸部に形成した流体排出路と前記螺旋流路の他端とを連通する半径方向の排出連通孔と、を備えたことを特徴とするピンチロール。
【請求項2】
前記螺旋溝が、冷却に必要な流体量に見合う幅と深さを有する凹溝であることを特徴とする請求項1記載のピンチロール。
【請求項3】
前記ロール胴部の両端に備えられる軸部が、流体供給路と流体排出路によって冷却されるようにしたことを特徴とする請求項1記載のピンチロール。
【請求項4】
金属ストリップ連続鋳造装置で製造される高温ストリップの移動経路がガスチャンバで覆われているストリップを搬送するためのピンチロールであって、両端に軸部を有するロール胴部と、ロール胴部内において中央軸線周りの等間隔位置に軸と平行に形成した冷却流路と、軸部に形成した流体供給路と前記冷却流路の一端とを連通する半径方向の供給連通孔と、軸部に形成した流体排出路と前記冷却流路の他端とを連通する半径方向の排出連通孔と、を備えたことを特徴とするピンチロール。
【請求項5】
一端が前記供給連通孔に接続された冷却流路に対し奇数の冷却流路を挟む位置の冷却流路の他端を前記排出連通孔に接続しており、前記供給連通孔と排出連通孔との間において、冷却流体を冷却流路の長手方向に沿いジグザグ状に流動させる冷却ゾーンを周方向に複数形成したことを特徴とする請求項4記載のピンチロール。
【請求項6】
前記ロール胴部の両端に備えられる軸部が、流体供給路と流体排出路によって冷却されるようにしたことを特徴とする請求項4記載のピンチロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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