説明

ファイナルドライブのコンパニオンフランジ

【課題】 本発明はファイナルドライブのコンパニオンフランジに係り、車両駆動系にトーショナルダンパやイナーシャウエイト等の振動低減部品を装着するに当たり、駆動系部品種類の削減、プロペラシャフトの脱着作業性の改善等を図ったコンパニオンフランジを提供することを目的とする。
【解決手段】 プロペラシャフトが接続されるファイナルドライブのコンパニオンフランジであって、プロペラシャフトを接続するボルト挿通孔が形成されたプロペラシャフト接続部の外方を径方向に正面視円形形状に延設し、その外周に、トーショナルダンパのリング状のラバーとイナーシャリングまたはイナーシャウエイトのリング状のウエイト部材を外嵌可能としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラシャフトが接続されるファイナルドライブのコンパニオンフランジに関する。
【背景技術】
【0002】
車両駆動系のプロペラシャフトは、トランスミッションのメーンシャフトとファイナルドライブのコンパニオンフランジとを接続する役割を果たしており、トランスミッションに伝達されたエンジン動力が、プロペラシャフトを介して後車軸側に伝達されるようになっている。
【0003】
そして、従来、この種の車両駆動系には、ねじり振動を緩衝する等、振動現象に対する目的に応じて特許文献1または図3に示すトーショナルダンパ1や、特許文献2に開示されるイナーシャウエイト等の振動低減部品が装着されている。
【0004】
図3はトーショナルダンパの取付構造を示し、従来、トーショナルダンパの取付けは、プロペラシャフト1側のフランジヨーク3と、ファイナルドライブ5側のコンパニオンフランジ7との間にトーショナルダンパ9を挟み込んで、トーショナルダンパ9をボルト11とナット13でフランジヨーク3とコンパニオンフランジ7の間に共締めした構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−144825号公報
【特許文献2】実開平7−8632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図3に示す従来の取付構造は、フランジヨーク3とコンパニオンフランジ7の間にトーショナルダンパ9を共締めすることでプロペラシャフト1の脱着作業性が悪化し、また、トーショナルダンパ9を別途使用することで駆動系部品の種類が増えてしまう不具合があった。
【0007】
更に、従来、インロー部によるセンタリング、即ち、図3に示すようにプロペラシャフト1とファイナルドライブ5の軸心Oを中心としてファイナルドライブ5側のコンパニオンフランジ7に設けた環状の突部15と、これに対向してプロペラシャフト1側のフランジヨーク3に設けた環状の凹部17と、トーショナルダンパ9の中央に設けた位置決め孔19の3箇所で芯出しを行っているが、インロー部によるセンタリングの箇所が増えることでトーショナルダンパ9に多少のガタが生じてしまう虞があった。
【0008】
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、車両駆動系にトーショナルダンパやイナーシャウエイト等の振動低減部品を装着するに当たり、駆動系部品種類の削減、プロペラシャフトの脱着作業性の改善等を図ったファイナルドライブのコンパニオンフランジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる目的を達成するため、本発明に係る発明は、プロペラシャフトが接続されるファイナルドライブのコンパニオンフランジであって、プロペラシャフトを接続するボルト挿通孔が形成されたプロペラシャフト接続部の外方を径方向に正面視円形形状に延設し、その外周に、トーショナルダンパのリング状のラバーとイナーシャリングまたはイナーシャウエイトのリング状のウエイト部材を外嵌可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来に比し
[1]プロペラシャフトの脱着作業性が改善され、
[2]駆動系部品の種類が削減できると共に、
[3]駆動系としてトータルの部品重量が削減されるため、慣性モーメントの低減による駆動ロスが低減し、加速性能の向上、燃費低減等に寄与し、更に、
[4]インロー部によるセンタリングの箇所が減少するため、ガタ量の削減により車載時のトータルアンバランス量が減り、この結果、プロペラシャフト回転1次成分の車両振動に対応しても有利になる利点を有する。
【0011】
[5]コンパニオンフランジをハブ部としての機能を共通化させながら、トーショナルダンパやイナーシャウエイトとして振動現象の目的別に使い分けができる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るファイナルドライブのコンパニオンフランジの断面図とこれに接続されるプロペラシャフトの側面図である。
【図2】コンパニオンフランジの要部拡大断面図である。
【図3】従来のトーショナルダンパの取付構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態を示し、図中、21はトランスミッションのメーンシャフトとファイナルドライブ側のコンパニオンフランジ23を接続するプロペラシャフトで、従来と同様、ジョイントヨーク25にユニバーサルジョイント27が取り付き、ユニバーサルジョイント27にフランジヨーク29が取り付けられている。
【0015】
一方、ファイナルドライブのコンパニオンフランジ23には、その軸心Oを中心に前記フランジヨーク29(プロペラシャフト21)を接続する複数のボルト挿通孔31が開口したプロペラシャフト接続部33が設けられている。そして、図示するように本実施形態は、プロペラシャフト接続部33の外方を径方向に延設して、コンパニオンフランジ23全体を、図3のコンパニオンフランジ7に比し大径な正面視円形形状に形成すると共に、その外周に、プロペラシャフト21側に断面略L字状に折曲した環状のフランジ35を設けたことを特徴としている。
【0016】
そして、図1及び図2に示すように前記フランジ35の外周に、一体となったリング状のスリーブ37、ラバー39、イナーシャリング41からなるトーショナルダンパのラバー&イナーシャリング43が外嵌、言い換えるとリング状のラバー&イナーシャリング43内にコンパニオンフランジ23が圧入して、ラバー&イナーシャリング43がフランジ35にストッパ45で位置決め保持されており、径方向外方へ延設されたコンパニオンフランジ23が、所謂トーショナルダンパのハブ部として機能している。
【0017】
また、前記ラバー&イナーシャリング43に代え、フランジ35の外周にイナーシャウエイトの周知のリング状のウエイト部材を外嵌、言い換えると、リング状のウエイト部材内にコンパニオンフランジ23を圧入させることで、コンパニオンフランジ23がイナーシャウエイトとして機能するようになっている。
【0018】
そして、インロー部によるセンタリングのため、従来と同様、コンパニオンフランジ23の軸心Oを中心に、プロペラシャフト接続部33に環状の突部47が形成され、これに対向してプロペラシャフト21側のフランジヨーク29に環状の凹部49が形成されている。
【0019】
本実施形態に係るコンパニオンフランジ23はこのように構成されているから、図1及び図2に示すようにリング状のラバー&イナーシャリング43内にコンパニオンフランジ23を圧入して、これをフランジ35にストッパ45で位置決め保持することで、コンパニオンフランジ23が、車両駆動系のねじり振動を緩衝するトーショナルダンパとして機能する。
【0020】
また、図示しないが、振動現象に対する目的に応じてリング状のウエイト部材内にコンパニオンフランジ23を圧入させれば、コンパニオンフランジ23がイナーシャウエイトとして機能することとなる。
【0021】
そして、本実施形態は、トーショナルダンパ9をフランジヨーク3とコンパニオンフランジ7に共締めした図3の従来構造に代え、単にプロペラシャフト21のフランジヨーク29と、ファイナルドライブのコンパニオンフランジ23をボルトとナットで接続するだけで車両駆動系にトーショナルダンパやイナーシャウエイトが装着できることとなる。
【0022】
従って、本実施形態によれば、従来に比し
[1]プロペラシャフト21の脱着作業性が改善され、
[2]駆動系部品の種類が削減できると共に、
[3]駆動系としてトータルの部品重量が削減されるため、慣性モーメントの低減による駆動ロスが低減して加速性能の向上、燃費低減等に寄与し、更に、
[4]インロー部によるセンタリングの箇所が、コンパニオンフランジ23側の環状の突部47と、プロペラシャフト21側の環状の凹部49の2箇所ですむため、ガタ量の削減により車載時のトータルアンバランス量が減り、この結果、プロペラシャフト21回転1次成分の車両振動に対応しても有利になる等の利点を有する。
【0023】
[5]コンパニオンフランジ23をハブ部としての機能を共通化させながら、トーショナルダンパやイナーシャウエイトとして振動現象の目的別に使い分けができる利点を有する。
【符号の説明】
【0024】
21 プロペラシャフト
23 ファイナルドライブのコンパニオンフランジ
25 ジョイントヨーク
27 ユニバーサルジョイント
29 フランジヨーク
31 ボルト挿通孔
33 プロペラシャフト接続部
35 環状フランジ
37 スリーブ
39 ラバー
41 イナーシャリング
43 ラバー&イナーシャリング
45 ストッパ
47 環状の突部
49 環状の凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラシャフトが接続されるファイナルドライブのコンパニオンフランジであって、プロペラシャフトを接続するボルト挿通孔が形成されたプロペラシャフト接続部の外方を径方向に正面視円形形状に延設し、その外周に、トーショナルダンパのリング状のラバーとイナーシャリングまたはイナーシャウエイトのリング状のウエイト部材を外嵌可能としたことを特徴とするファイナルドライブのコンパニオンフランジ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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