説明

ファイル

【課題】ポケット式のファイルにおいて、出し入れを容易に行えるとともに、ポケット内に収納された用紙がポケット内で傾いてしまうことがないファイルを提供する。
【解決手段】背表紙11の左右両側に表表紙12及び裏表紙13を備えた表紙体15と、この表紙体15の内面側に溶着された透明な複数のポケットPとによりポケット式のファイル10が構成されている。ポケットPは、表表紙12及び裏表紙13の基部側内面に第1の溶着部25を介して溶着されている。各ポケットPは、第1の溶着部25よりも内側に第2の溶着部26が設けられており、当該第2の溶着部26とポケットPの自由端との間の幅Wが収納対象となる用紙より僅かに大きい程度に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はファイルに係り、更に詳しくは、透明な樹脂シートからなる複数枚のポケットを表紙体に溶着したポケット式のファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポケット式のファイルは、表表紙と、当該表表紙に背表紙を介して連なる裏表紙とからなる表紙体と、この表紙体の内面側に溶着された一端(上端)開放型のポケットとにより構成されている。
公知のポケット式のファイルとしては、例えば、特許文献1に開示されている。同文献に開示されたファイルは、表表紙に背表紙を介して背表紙が連なる表紙体と、この表紙体の内面側に設けられた複数枚のポケットとにより構成されている。このポケットは、表表紙及び裏表紙に跨る大きさを備えた上端開放型のポケットシートを表紙体の内面側に配置し、当該ポケットシートの左右方向中央部を背表紙に溶着することによって表表紙及び裏表紙の各内面側にそれぞれ形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭55−99880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたタイプのファイルにあっては、例えばA4サイズの用紙を収納するタイプとして形成されている場合、その幅寸法がA4サイズの用紙に対して余裕を持って形成されているため、収納された用紙がポケット内で傾いてしまうといった不都合を招来する。
この場合、ポケット幅の余裕を無くせば用紙の傾きを防止することができることになるが、そのような幅設定のポケットとした場合、溶着部に近い側の用紙の端部に巻き癖が付いてしまうという不都合がある。これは、各ポケットに用紙を収納したときに、表表紙と裏表紙の背表紙側が厚み方向に膨らんでしまうことに起因する。
【0005】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、ポケット内に収納された用紙がポケット内で傾いてしまうことがないポケット式のファイルを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、各ポケット内に書類を収容した状態において、表紙体の一部が膨らんでしまうような不都合がなく、書類の曲がり癖を回避することのできるポケット式のファイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、特許請求の範囲に記載した通りの構成を採用した。すなわち、本発明は、表表紙及び裏表紙を備えた表紙体と、この表紙体の内面側に溶着された透明な複数のポケットとを備えたファイルにおいて、
前記ポケットは、表表紙及び又は裏表紙の基部側の内面に第1の溶着部を介して溶着されているとともに、当該第1の溶着部よりも内側に、ポケット幅を狭める第2の溶着部を備える、という構成を採っている。
【0007】
本発明において、前記第2の溶着部よりも内側にスリットが設けられ、当該スリットがポケットの開口部を形成する、という構成を採ることができる。
【0008】
また、前記ポケットは、前記第1の溶着部と第2の溶着部との間のポケット部分が撓み代として作用するように設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第2の溶着部を設けることにより、第1の溶着部とポケットの自由端との間の寸法を小さくした収納幅を形成することができる。従って、ポケット内に収納された用紙の一部が、第2の溶着部よりも第1の溶着部側に移動することによって用紙が傾いてしまう不都合は生じない。
また、ポケットは、表表紙及び又は裏表紙の基部側の内面に溶着されている構成であるから、背表紙で溶着を行う従来タイプに見られるような表紙体の部分的な膨らみを生ずることがなく、ポケット内の用紙に巻き癖が付いてしまうこともない。
更に、第1及び第2の溶着部間のポケット部分が撓み易く設けられているので、当該ポケット部分が表紙体間に無理なく収まり易くなり、この点からも、表表紙と裏表紙の基部側が膨らんでしまうような不都合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係るファイルを示す概略平面図。
【図2】前記ファイルの概略斜視図。
【図3】図2のA−A線矢視断面図。
【図4】(A)はポケットの概略斜視図、(B)はポケットの変形例に係る概略斜視図。
【図5】表紙体を閉じた状態を示すファイルの概略側面図。
【図6】変形例に係るファイルの概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。なお、本明細書における方向若しくは位置を示す用語、すなわち、「左右」、「上下」とは、特に明示しない限り、図1を基準として用いるものとする。
【0012】
図1及び図2において、ポケット式のファイル10は、背表紙11と、当該背表紙11の左右両側に連なる表表紙12及び裏表紙13とからなる表紙体15と、この表紙体15の内面側に設けられた透明な樹脂フィルムからなる複数のポケットPとを備えて構成されている。
【0013】
前記表紙体15は、樹脂シートにより構成されており、表表紙12及び裏表紙13は背表紙11側を開閉中心側とし、その反対側を自由端として開閉可能に設けられている。背表紙11の幅(左右幅)は、図3に示されるように、左右一対の折り曲げ線20A、20Aによって決定されており、これら折り曲げ線20A間の中心位置には、中央折り曲げ線20Bが折り曲げ線20Aと平行に形成されている。また、表表紙12及び裏表紙13の基部側には、綴じ幅拡大用の折り曲げ線20Cが所定間隔を隔てて相互に平行に設けられている。本実施形態において、綴じ幅拡大用の折り曲げ線20Cは、特に限定されるものではないが、それぞれ3つずつ形成されている。ここで、各折り曲げ線20A、20B、20Cは、表紙体の15の上下各縁に達する位置まで形成される場合の他、上下各縁の手前を終端とする折り曲げ線とする場合も含む。なお、背表紙11の外面、表表紙12及び裏表紙13の基部側外面には図示しない透明なフィルムシートを配置して上下に開通する見出し収容部を形成することができる。
【0014】
前記ポケットPは、表表紙12及び裏表紙13の面内に収まる大きさに設けられている。これらポケットPは、図1、図4(A)中上端側に開口部22を有する袋状をなし、その幅方向一端側を表表紙12及び裏表紙13の基部側内面にそれぞれ溶着して第1の溶着部25を設けることで表紙体15に一体化されている。また、各ポケットPは、第1の溶着部25よりも内側に、ポケット幅を狭める第2の溶着部26が設けられている。この第2の溶着部26とポケットPの自由端との間の幅Wは、収納する用紙との関係において決定される。例えば、収納する用紙がA4、B5、或いは名刺である場合、これらの出し入れを許容する幅であって、袋内で実質的な傾きを生じない程度の幅にそれぞれ設定される。ポケットPは、表表紙12側及び裏表紙13側のそれらを重ね合わせたときに、背表紙11の幅寸法以下の枚数がそれぞれ溶着されており、これにより、中央折り曲げ線20Bで折り曲げて最小厚みとすることができる。本実施形態におけるポケットPは、図4(A)に示されるように、一枚のフィルムを全体的に二枚厚とし、第2の溶着部26を設けて上端に開口部22を有する袋状とした後に、第2の溶着部26よりも外側となる端部を表表紙12、裏表紙13に溶着して第1の溶着部25(図1参照)を形成して一体化させることができる。また、図4(B)に示されるように、第2の溶着部26から外側のフィルム部分が一枚厚となるように形成し、当該一枚厚となっているフィルムの端部を溶着して第1の溶着部を設けるようにしもよい。
【0015】
なお、本実施形態において、前記第2の溶着部26を設けた構成を除く他の構成は、実質的に、本願と同一の出願人によって出願された特願2010−107221号と実質的に同一である。
【0016】
以上の構成において、ファイル10は、各ポケットPに書類を収容しない状態で表表紙12及び裏表紙13の各内面側を向き合わせるように背表紙11の中央折り曲げ線20Bで折り曲げることで、全体的にフラットな状態を維持するようになる。
ポケットPに書類を収容するときは、第2の溶着部26とポケットPの自由端との間の開口部から差し込めばよい。書類収納により厚みが増したときは、背表紙11の幅を決定する折り曲げ線20Aを折り曲げて使用でき、更に厚みが増大したときには、その厚みに応じて折り曲げ線20Cを折り曲げて使用することができる(図5参照)。
【0017】
従って、このような実施形態によれば、第1の溶着部25の内側に第2の溶着部26を設け、当該第2の溶着部26とポケットPの自由端との間の幅Wを、収納対象とする用紙の幅より僅かに大きい程度としたから、ポケットP内に収納された用紙が傾いてしまうという不都合を解消することができる。
しかも、書類の収納によって第1の溶着部25と第2の溶着部26との間のポケットP部分に曲がり癖等が付いていても(図5参照)、第2の溶着部26とポケットPの自由端との間の部分は比較的平面形状を保有できるので、書類の出し入れをスムースに行うことができる。
更に、第1の溶着部25と第2の溶着部26との間(ポケット部分)は、書類が入り込まないように構成されているため、当該ポケット部分が相対的に柔軟性を有する領域となって撓み代として作用するようになり、頁捲り作業を柔らかく行うことに寄与することとなる。また、図5に示されるように、背表紙11の曲がりに対応してポケット部分が自由に屈曲できるので、表表紙12及び裏表紙13の基部側が自由端側に対して相対的に大きく膨らんでしまうことを回避する。更に、図5に示されるように、前記ポケット部分の撓みにより、第2溶着部26が略横一列に並ぶようになり、ポケットPの自由端側も揃えることができる。
また、図5に示されるように、表表紙12、裏表紙13に近い側のポケットPは、前記ポケット部分が表紙体15に沿うように曲がるが、内側のポケットPになるに従って表紙体15に沿う形状が崩れ、内側に大きく撓むんで表紙体間の空間に無理なく収まるようになり、この点からも、表紙体15の部分的な膨らみを防止することができる。
【0018】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施例に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施例に対し、形状、材質、数量、位置若しくは配置等に関して当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、既に開示した形状等の限定をした記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に示したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状等の限定を一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0019】
例えば、前記実施形態では、ポケットPの上端側が開口部22を備えたものを示したが、図6に示されるように、上端を封止したものを用い、第2の溶着部26の更に内側に、当該第2の溶着部26と平行に延びるスリット27を形成して開口部を形成することでもよい。
また、前記実施形態では、表紙体15が背表紙11を備えた場合について図示、説明したが、背表紙11を設けることなく、表表紙12と裏表紙13とを直接連なる構成とすることもできる。また、背表紙11の幅方向中間に中央折り曲げ線20Bを設けたが、当該中央折り曲げ線は必ずしも設けることを要しない。
更に、前記ポケットPは、表表紙12及び裏表紙13の少なくとも一方の基部側の内面に第1の溶着部25を介して溶着されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0020】
10 ファイル
11 背表紙
12 表表紙
13 裏表紙
15 表紙体
25 第1の溶着部
26 第2の溶着部
27 スリット
P ポケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表表紙及び裏表紙を備えた表紙体と、この表紙体の内面側に溶着された透明な複数のポケットとを備えたファイルにおいて、
前記ポケットは、表表紙及び又は裏表紙の基部側の内面に第1の溶着部を介して溶着されているとともに、当該第1の溶着部よりも内側に、ポケット幅を狭める第2の溶着部を備えていることを特徴とするファイル。
【請求項2】
前記第2の溶着部よりも内側にスリットが設けられ、当該スリットがポケットの開口部を形成することを特徴とする請求項1記載のファイル。
【請求項3】
前記ポケットは、前記第1の溶着部と第2の溶着部との間のポケット部分が撓み代として作用することを特徴とする請求項1又は2記載のファイル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−148538(P2012−148538A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10633(P2011−10633)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】