説明

ファイル

【課題】見出し用ポケットを有するファイルをキャビネット等に並べて収納する際に、隣接する位置にあるファイルの見出し用ポケットとの接触に起因してポケットを損傷してしまう不都合を未然に防止することのできるファイルを提供することにある。
【解決手段】表紙体11の背表紙15側の外面に見出し用ポケット14を設け、当該見出し用ポケット14に見出しカード30が収納可能に設けられている。見出し用ポケット14は、中央シート部22及び当該中央シート部22の左右両側に連なる横シート部23とからなる。横シート部23は、中央シート部22から離れるに従って上下各縁P1、P2間が大きくなる平面形状を備え、表紙体11の上下縁に対して平行でない方向に向けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はファイルに係り、更に詳しくは、背表紙を含む表紙体の外面側に見出し用ポケットを設けたファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
公知のファイルは、その背表紙側に見出しを表示できるようになっている。この見出しは、背表紙に文字を直接記入する場合の他、背表紙の外面側に透明な樹脂シートを溶着等の手段で取り付けて見出し用ポケットを形成し、当該ポケット内に見出しカードを挿入する場合とがある。
【0003】
背表紙の外面側に見出し用ポケットを形成したファイルとしては、例えば、特許文献1に開示されている。同文献に記載されたファイルは、背表紙を左右方向に跨ぐ大きさを有する透明なフィルムを用い、当該フィルムの左右両側を表裏の表紙体に熱溶着して見出し用ポケットを形成する構成となっている。なお、見出し用ポケットは、ポケットを形成する前の平面形状が長方形状であり、従って、ポケットを形成した状態における上縁及び下縁は表紙体の上下縁と平行となっている。
見出し機能を備えたファイルは、複数を横並びにしてキャビネット等に収納したときに、必要とするファイルの検索を容易に行うことができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平2−9994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したタイプのファイルの場合、例えば、図6中実線で示されるように第1のファイル50が既に収納されているものとし、同図中二点鎖線で示される第2のファイル51を矢印B方向に移動して収納しようとする場合、第1のファイル50のポケットPの上縁P1に第2のファイル51の下縁P2が引っ掛かってしまい、スムースな収納を妨げてしまう、という不都合がある。しかも、このような引っ掛かりに起因してポケットPが上縁P1又は下縁P2から破れてしまう、という不都合も招来する。
なお、このような収納に際し、第2のファイル51の収納空間がキャビネット内に十分に残されている場合には、第1のファイル50の表紙体に擦り合うような状態で収納されることはなく、前述の引っ掛かりの問題は生じない。しかしながら、オフィス等のキャビネットは、ファイルが隙間無く並んで収納されており、引っ掛かりを回避した状態での収納はできないのが実状である。
【0006】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、見出し用ポケットを有するファイルをキャビネット等に並べて収納する際に、隣接する位置にあるファイルの見出し用ポケットとの接触若しくは擦れ合いに起因してポケットを損傷してしまう不都合を未然に防止することのできるファイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、特許請求の範囲記載のファイルとしたものであり、具体的には、表紙体の外面側に見出し用ポケットを設けて当該見出し用ポケットと表紙体との隙間に見出しカードを収納可能としたファイルにおいて、
前記見出し用ポケットは、上下各縁の少なくとも一方の縁が、表紙体の上下縁に対して平行でない方向に向けられる、という構成を採っている。
なお、「上下縁に対して平行でない方向に向けられる」とは、上下縁が延びる方向と異なればよい、という意味である。
【0008】
本発明において、前記上下各縁のそれぞれが、前記表紙体の上下縁に対してそれぞれ平行でない方向に向けられる、という構成を採っている。
【0009】
また、前記見出し用ポケットは、上下及び左右対称形状に設けられる、という構成を採ることができる。
【0010】
また、前記見出し用ポケットは、背シート部と、当該背シート部の左右両側のうち、少なくとも一方に連なる横シート部とからなり、当該横シート部は、中央シート部から離れるに従って上下各縁間が大きく又は小さくなる平面形状を備える、という構成を採ることができる。
【0011】
更に、前記見出し用ポケットは、中央シート部と、当該中央シート部の左右両側に連なる横シート部とからなり、当該横シート部は、中央シート部から離れるに従って上下各縁間が大きく又は小さくなる平面形状を備える、という構成を採るとよい。
【0012】
なお、前記横シート部の上下各縁と、これら上下各縁を結ぶ縦縁とで形成されるコーナーの角度が鋭角に設けられる、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、見出し用ポケットにおける上下各縁の少なくとも一方の縁が、表紙体の上下縁に対して平行でない方向に向けられているので、ファイルを上方から下方に引き下ろすような要領で順次横並びに収納する際に、収納しようとする一方のファイルの見出し用ポケットの下縁が、既に収納されている他方のファイルの見出し用ポケットの上縁に突き当たるように接しても点接触又はこれに近い状態で接触させることができる。従って、接触抵抗を小さくして二つのファイルを表紙体の面に沿って相対的に滑り易くでき、見出し用ポケットを構成するシートが上縁又は下縁から破れてしまうといった不都合を効果的に防止することができる。
特に、見出し用ポケットが上下及び左右対称形状であれば、それに対応する平面形状を備えた見出しカードが採用でき、見出しカードに記入する内容の見易い表示を維持することができる。また、既に収納されているファイルの左右何れの側に他のファイルを収納する場合でも、前述した点接触的な突き当たりと相対的な滑りとが得られ、収納位置若しくは方向についての制約もない。
また、前記中央シート部と横シート部とにより見出し用ポケットを構成し、横シート部は、外側に向かって上下各縁間が大きくなる平面形状とすることで、前記端縁同士が突き当たる位置は背表紙より奥行き側となる。この場合、表紙体は、その厚み方向において背表紙側よりも変位し易くなるから、一方のポケットの端縁を他方のポケットの端縁が乗り越え易くなり、前述した相対的な滑りを難なくもたらすこととなり、ひいては、ポケットの損傷を効果的に回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るファイルの概略斜視図。
【図2】前記ファイルの表紙体を展開した内面側を示す平面図。
【図3】前記ファイルの表紙体を展開した外面側を示す平面図。
【図4】図2のA矢視図。
【図5】実施形態の作用を説明するための側面図。
【図6】(A)〜(I)は、見出し用ポケットの変形例を示す平面図。
【図7】(A)、(B)は従来の不都合を説明するための側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1ないし図4に示されるように、ファイル10は、樹脂シート製の表紙体11と、当該表紙体11の内面側に設けられるとともに上端が開放する多数のポケットフィルム12(図2参照)と、表紙体11の外面側に設けられた見出し用ポケット14とを備えて構成されている。表紙体11は、背表紙15と、当該背表紙15の幅方向両側に連設された表表紙16及び裏表紙17とにより構成されている。背表紙15、表表紙16及び裏表紙17の各外面側にはプレスによる筋若しくは薄肉ヒンジを設けることによって形成された多数の折曲線19が形成され、これら折曲線19により、前記各ポケットフィルム12に書類等を収納することに対応して綴じ込み幅を拡大できるようになっている。
【0017】
前記ポケットフィルム12は、カタログ、パンフレット等の枚葉の書類を収納することに適した袋体であり、所定枚数の一組を一単位とし、それらの幅方向一端側と表紙体11の内面側との間に溶着部20を形成することによって表紙体11に保持される。本実施形態では、図4に示されるように、溶着部20を設ける箇所を横方向にずらした状態で、10枚一組を一単位として表表紙16及び裏表紙17にそれぞれ20枚のポケットフィルム12が設けられている。このように、所定枚数の一単位毎に横方向にずらしたのは、ポケットフィルム12に書類を収納することで厚みが増したときに、表紙体11の背表紙15寄り部分が大きく膨らんでしまうことを防止するためである。
【0018】
見出し用ポケット14は、透明な樹脂シートを用いて形成されており、背表紙15と相対する位置に配置される背シート部としての中央シート部22と、当該中央シート部22の左右両側に連なる一対の横シート部23とにより構成されている。ここで、横シート部23は、中央シート部22から離れるに従って、つまり、表紙体11の自由端側に向かうに従って上下各縁P1、P2間の寸法が大きくなるように直線的に延びる平面形状に設けられ、上下各縁P1、P2と、これら上下各縁P1,P2の端部とを結ぶ縦縁P3とで形成されるコーナーCの角度が鋭角となるように設けられている。なお、見出し用ポケット14は、上下及び左右が対称となる形状に設けられている。
【0019】
前記見出し用ポケット14は、図3に示されるように、横シート部23の縦縁P3に沿って溶着部25を設けることで左右が表表紙16及び裏表紙17の外面に固定され、上下が開通するようになっている。ここで、横シート部23の縦縁P3側の各下部位置には、前記開通幅を狭めるストッパ26が設けられ、これにより、見出しカード30(図1参照)をポケット14に挿入したときに、下方から抜け出ることがないようになっている。
【0020】
以上の構成において、本実施形態に係るファイル10は、見出しカード30に所定の見出し文字を記入した状態で見出し用ポケット14内に収納される。
【0021】
本実施形態におけるファイル10は、見出し用ポケット14の上下各縁P1、P2が表紙体11の上下縁と平行でなく、コーナーCが鋭角となるように傾斜した縁となる。従って、図5に示されるように、既に収納されているファイル10Aの表紙体11の外面に対し、他のファイル10Bの表紙体11が擦れるような状態で収納するときに、ファイル10Aの見出し用ポケット14Aの上縁P1におけるコーナーCと、ファイル10Bの見出し用ポケット14Bの下縁P2におけるコーナーCとが突き当たる点接触的な関係となる。つまり、上縁P1、下縁P2とが線接触的に突き当たるようなことはない。
従って、その抵抗は相対的に小さいので、ファイル10Bの見出し用ポケット14Bはファイル10Aの見出し用ポケット14Aの上縁P1を難なく乗り越えて滑り、これにより、見出し用ポケット14A、14Bを端縁から破ってしまうような不都合を回避しつつ、相互に隣り合う位置にファイル10A、10Bを収納することができる、という効果を得る。
【0022】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、材料、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材料などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0023】
例えば、前記実施形態では、見出し用ポケット14の上下各縁P1、P2が上下対称となるように傾斜する方向に直線的に設けたが、何れか一方のみを傾斜させて何れか他方は表紙体1の上下縁と平行となる水平としてもよい。
具体的には、図6(A)〜(D)に示されるように、見出し用ポケット14は、中央シート部22の左右両側の何れか一方から横シート部23を設けるようにしてもよい。つまり、中央シート部22に対して左右対称でなくてもよい。また、図6(A)、(E)に示されるように、上下各縁P1、P2相互間の寸法が端縁P3に向かって小さくなる傾斜縁としてもよく、図6(C)、(D)、(G)、(H)、(I)に示されるように一方の縁P1又はP2を傾斜させ、他の縁を水平としてもよい。
また、上下各縁P1、P2は直線でなくてもよく、図6(F)に示されるように曲線としてもよい。
要するに、本発明は、複数のファイル10を収納する際に、隣りに位置するファイル10に擦れ合うことで見出し用ポケット14が破れてしまうようなことがない限り、当該見出し用ポケット14の平面形状を変更することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 ファイル
11 表紙体
14 見出し用ポケット
22 中央シート部(背シート)
23 横シート部
30 見出しカード
P1 上縁
P2 下縁
C コーナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表紙体の外面側に見出し用ポケットを設けて当該見出し用ポケットと表紙体との隙間に見出しカードを収納可能としたファイルにおいて、
前記見出し用ポケットは、上下各縁の少なくとも一方の縁が、表紙体の上下縁に対して平行でない方向に向けられていることを特徴とするファイル。
【請求項2】
前記上下各縁のそれぞれが、前記表紙体の上下縁に対してそれぞれ平行でない方向に向けられていることを特徴とする請求項1記載のファイル。
【請求項3】
前記見出し用ポケットは、上下及び左右対称形状に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のファイル。
【請求項4】
前記見出し用ポケットは、背シート部と、当該背シート部の左右両側のうち、少なくとも一方に連なる横シート部とからなり、当該横シート部は、中央シート部から離れるに従って上下各縁間が大きく又は小さくなる平面形状を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のファイル。
【請求項5】
前記見出し用ポケットは、中央シート部と、当該中央シート部の左右両側に連なる横シート部とからなり、当該横シート部は、中央シート部から離れるに従って上下各縁間が大きく又は小さくなる平面形状を備えていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のファイル。
【請求項6】
前記横シート部の上下各縁と、これら上下各縁を結ぶ縦縁とで形成されるコーナーの角度が鋭角に設けられていることを特徴とする請求項4又は5記載のファイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−232451(P2012−232451A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101507(P2011−101507)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)