説明

フィールド機器

【課題】主入力測定とCJC測定の精度を保ちながら、CJCの測定回数を減らすことで消費電力を低減することを可能とするフィールド機器を実現する。
【解決手段】熱電対による温度検出信号を第1周期で測定する主入力測定と、前記熱電対の導線が接続される端子台の温度検出信号を前記第1周期よりは短い第2周期で測定するCJC測定を行うと共に、前記主入力測定と同時に前記CJC測定を実行するフィールド機器において、
前記第1周期と前記第2周期の相関関係に基づいて、前記第2周期のCJC測定のタイミングを変更する測定管理部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電対による温度検出信号を第1周期で測定する主入力測定と、前記熱電対の導線が接続される端子台の温度検出信号を前記第1周期よりは短い第2周期で測定するCJC測定を行うと共に、前記主入力測定と同時に前記CJC測定を実行するフィールド機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、熱電対による温度測定の原理を説明する回路図である。熱電対1で温度を計測する際、導線1A,1Bを熱電対接続用の端子台2に固定する。この時、熱電対の起電力を温度に換算するには、端子台2の温度を別途計測する必要がある。そのため、通常は端子台2の内部または直近に熱電対以外のCJC温度センサー3を配置して、端子台の温度を計測する。
【0003】
図4の構成例では、最初に熱電対1の起電力の基づく温度検出信号Tiを測定(以下「主入力測定」)した後、マルチプレクサ4を端子台2に設置したCJC温度センサー3側に切り替えて、端子台2の温度検出信号Tcを測定(以下「CJC(Cold Junction Compensation)測定」と呼ぶ)する。
【0004】
マルチプレクサ4で切り替えられた主入力測定値とCJC測定値は、ADコンバータ5でディジタル値に変換され、CPUに導かれ、冷接点補償演算されて熱電対の測定温度を算出する。
【0005】
このような熱電対による温度測定手段を、プラントに配置されたフィールド機器に適用して上位装置にデータ収集する場合、フィールド機器の電源を電池駆動にしたり、エナジーハーベスト技術で収穫できる電力で供給したりする構成では、回路の消費電力は極力抑えなければならない。
【0006】
電池寿命を考慮して一定の周期(第1周期)で主入力測定を実行する。この第1周期はユーザがパラメータとして設定することができ、例えば10分に設定される。測定時、主入力測定とCJC測定を同時に測定したほうが測定温度の演算精度がよくなる。
【0007】
ただし、フィールド機器には、本体温度あるいは周囲温度を監視する(温度範囲外になった場合、アラームを出す等)機能が必要であり、CJC測定は主入力測定の測定周期と別に、第2周期によりCJCのみを測定する必要がある。通常、この第2周期もユーザがパラメータとして設定することができ、3〜5分前後で測定することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−233665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5は、従来のフィールド機器の動作を説明するタイムチャートである。従来の手法では、CJC測定の第2周期が固定である。図5は、主入力測定の第1周期が10分、CJC測定の第2周期が3分の場合を示している。
【0010】
CJC測定の第2周期が主入力測定の第1周期とは独立で動作し、かつ主入力測定時にCJC測定もする場合には、9分の時にCJC測定して、1分後の10分にすぐ(主入力測定+CJC測定)をしている。
【0011】
電池の消費電力を極力小さくするという観点から見ると、CJC測定の1分間後にまたCJC測定をするのは、直前のCJC測定の意味が薄くなり、単に消費電力を増やすにすぎない。
【0012】
図6は、従来のフィールド機器の他の動作を説明するタイムチャートである。CJC測定の第2周期が主入力測定の第1周期とは独立で動作し、かつ主入力測定時にCJC測定をしない場合には、10分の主測定の温度測定値の冷接点補償演算で用いるCJC測定値は直前の9分の測定値を用いることになる。この場合、1分前のCJC測定の値で補正演算するため、温度値に誤差が出て測定の精度が低下する。
【0013】
本発明の目的は、主入力測定とCJC測定の精度を保ちながら、CJCの測定回数を減らすことで消費電力を低減することを可能とするフィールド機器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)熱電対による温度検出信号を第1周期で測定する主入力測定と、前記熱電対の導線が接続される端子台の温度検出信号を前記第1周期よりは短い第2周期で測定するCJC測定を行うと共に、前記主入力測定と同時に前記CJC測定を実行するフィールド機器において、
前記第1周期と前記第2周期の相関関係に基づいて、前記第2周期のCJC測定のタイミングを変更する測定管理部を備えることを特徴とするフィールド機器。
【0015】
(2)前記測定管理部は、次に予測される主測定のタイミングと、この主測定のタイミングより前に予測される次のCJC測定のタイミングの時間差が所定の閾値以下である場合には、予測される次のCJC測定を中止させることを特徴とする(1)に記載のフィールド機器。
【0016】
(3)前記測定管理部は、主測定のタイミングとCJC測定のタイミングがほぼ一致するように前記第2周期を最適化することを特徴とする(1)または(2)に記載のフィールド機器。
【0017】
(4)電源として電池を使用することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のフィールド機器。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、CJC測定の第2周期のデフォルト値を3分としたとき、主入力測定の第1周期が4分以上の場合には、従来、1演算周期(10分)で3回のCJC測定を2回に減らすことができ、しかもCJC測定と主入力測定の測定精度を低下させない測定が可能となる。その結果、CJC測定の回数を減らすことができ、消費電力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用したフィールド機器の一実施例を示す機能ブロック図である。
【図2】図1の第1実施例の動作を説明するタイムチャートである。
【図3】図1の第2実施例の動作を説明するタイムチャートである。
【図4】熱電対による温度測定の原理を説明する回路図である。
【図5】従来のフィールド機器の動作を説明するタイムチャートである。
【図6】従来のフィールド機器の他の動作を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明を適用したフィールド機器の一実施例を示す機能ブロック図である。図4で説明した構成要素と同一要素には同一符号を付して示す。
【0021】
図1に示すフィールド機器10は、電池駆動型で無線手段を備え、ゲートウェイ20及び制御バス30を介して上位装置40と通信し、測定されたプロセス量を周期的に上位装置40に送信する。
【0022】
フィールド機器10は、CPU100、信号変換部200、無線モジュール300、アンテナ400、電源管理部500、電池600、外部インターフェース700よりなる。これら構成要素は防爆容器に収納されている。外部インターフェース700の受光手段701は、外部の赤外線通信装置50を介してユーザによる各種の設定信号を入力する。
【0023】
CPU100は中央演算処理装置であって、マイクロプロセッサ等の演算手段や、RAM,EEPROM等の記憶手段を有し、演算処理部101と本発明が適用される測定管理部102を具備する。
【0024】
信号変換部200は、図4で示したマルチプレクサ4及びADコンバータ5を含み、熱電対センサ1によって検出された温度測定値をCPU100の演算処理部101に渡す。演算処理部101は、渡されたプロセス量を変換、補正、ユーザー指定の例えば%値等のスケーリング値に換算する等の演算を実行する。
【0025】
演算処理部101の演算結果は、無線モジュール300に伝達され、アンテナ400を介して無線手段によりゲートウェイ20を介して上位装置40に送信される。また、上位装置40からの要求を受信してパラメータ設定変更等を行う。
【0026】
電源管理部500は、電池600から電源電圧を供給される。また、レギュレーションを行い、CPU100に必要な電圧の供給を行っている。また、CPU100の測定管理部102で指定された間欠動作周期時間に従いON/OFF制御で電源のスイッチングを行い、所定周期毎に信号変換部200、無線モジュール300に間欠的な電源供給を行っている。
【0027】
本発明が適用される測定管理部102は、主入力測定処理手段102AとCJC測定処理手段102Bを具備し、主入力測定の第1周期及びCJC測定の第2周期が、上位装置40または赤外線通信装置50を介してユーザによりパラメータ設定される。
【0028】
測定管理部102の特徴は、第1周期と第2周期の相関関係に基づいて、第2周期のCJC測定のタイミングを変更する。第1の実施例では、測定管理部102は、次に予測される主測定のタイミングと、この主測定のタイミングより前に予測される次のCJC測定のタイミングの時間差が所定の閾値以下である場合には、予測される次のCJC測定を中止させる。
【0029】
図2は、図1の第1実施例の動作を説明するタイムチャートである。この実施例の特徴は、CJC測定の第2周期は固定とせず、一定の範囲を設けて第2周期を自動的に判断して最適化する。
【0030】
CJC測定の第2周期をTとする。Tは固定ではなく、Tの範囲はTMin <= T < TMaxとする。測定管理部102は、次のように自動的に判断し、最適なCJC測定の第2周期周期を決める。
【0031】
(1)主入力測定の第1周期 <= TMax の場合には、毎回「主入力測定+CIC測定」する。
(2)主入力測定の第1周期 > TMax の場合、前回のCJC測定からTMax時間内に主入力測定があれば、CJC測定は主入力測定と一緒に測定する。前回のCJC測定からTMax以内に主入力測定がなければ、TMin後に、CJC測定のみを実行する。
【0032】
図3は、図1の第2実施例の動作を説明するタイムチャートである。この実施例の特徴は、主測定のタイミングとCJC測定のタイミングがほぼ一致するように第2周期を最適化する。測定管理部102は、次のように自動的に判断し、最適なCJC測定の第2周期周期を決める
【0033】
(1)主入力測定の第1周期 <= TMax の場合、毎回主「入力測定+CJC測定」を実行する。
(2)主入力測定の第1周期 > TMax の場合、主入力測定の1周期(T)期間中に、CJC測定周期範囲内(TMin〜TMax)で、測定点を均一になるように、CJC測定の測定点を決める。
(3)主入力測定周期がT、Tの期間でCJCの測定がN回とする。T/NがCJC測定の第2周期である。TMax >(T/N)>= TMinで、Nの範囲を求める。Nの範囲中の最大整数値nを決める。
【0034】
例えば、主入力測定の第1周期がT=10分、CJC測定の第2周期が、3分 <= T < 4分 とする時に、3分 <=(T/N)< 4分により、3.33 >= N > 2.5になる。Nの最大整数値n=3となる。即ち、10分間の間にCJC測定を3回均一に測定する。
【0035】
図1に示した実施例は、熱電対による温度測定信号を上位装置に渡すフィールド機器を示したが。本発明は、機器の周囲温度を測定して、自分自身の温度補正を必要とする全ての機器、例えば、高精度電圧計、電流計、電力計などに応用し、省エネ設計に貢献することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 熱電対
2 端子台
3 CJC温度センサー
10 フィールド機器
20 ゲートウェイ
30 制御バス
40 上位装置
50 赤外線通信装置
100 CPU
101 演算処理部
102 測定管理部
102A 主入力測定処理手段
102B CJC測定処理手段
200 信号変換部
300 無線モジュール
400 アンテナ
500 電源管理部
600 電池
700 外部インターフェース
701 受光手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電対による温度検出信号を第1周期で測定する主入力測定と、前記熱電対の導線が接続される端子台の温度検出信号を前記第1周期よりは短い第2周期で測定するCJC測定を行うと共に、前記主入力測定と同時に前記CJC測定を実行するフィールド機器において、
前記第1周期と前記第2周期の相関関係に基づいて、前記第2周期のCJC測定のタイミングを変更する測定管理部を備えることを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
前記測定管理部は、次に予測される主測定のタイミングと、この主測定のタイミングより前に予測される次のCJC測定のタイミングの時間差が所定の閾値以下である場合には、予測される次のCJC測定を中止させることを特徴とする請求項1に記載のフィールド機器。
【請求項3】
前記測定管理部は、主測定のタイミングとCJC測定のタイミングがほぼ一致するように前記第2周期を最適化することを特徴とする請求項1または2に記載のフィールド機器。
【請求項4】
電源として電池を使用することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフィールド機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−47529(P2012−47529A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188326(P2010−188326)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】