説明

フィールド機器

【課題】規模及びコストを大幅に上昇させることなく過去に生じた事象を正確に把握することができるフィールド機器を提供する。
【解決手段】無線フィールド機器1aは、機器の動作を規定するプログラムPGを格納するフラッシュメモリ14と、機器で用いられるパラメータPMを格納する強誘電体メモリ15と、機器内で生じた事象の種類を示す情報である事象番号、事象が生じた時刻を示す情報であるカウント値、及び事象に関連する情報である関連情報を対にした動作ログLGを生成し、強誘電体メモリ15の空き領域に確保されたログ格納領域に格納するログ生成部16aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントや工場等に設置されるフィールド機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラントや工場等においては、高度な自動操業を実現すべく、フィールド機器と呼ばれる現場機器(測定器、操作器)と、これらを制御する制御装置とが通信手段を介して接続された分散制御システム(DCS:Distributed Control System)が構築されている。このような分散制御システムの基礎をなす通信システムは、有線によって通信を行うものが殆どであったが、近年においては、ISA100.11a等の無線通信規格に準拠した無線によって通信を行うものも実現されている。
【0003】
プラント等においては、安全性及び信頼性が最優先されるため、分散制御システムを構築するフィールド機器は、自己の状態を自動的に診断する自己診断機能を備えるものが多い。ここで、フィールド機器で行われる自己診断は、定期的に行われる測定及び演算の結果が異常である否かを診断するものと、パラメータ等の設定値が異常であるか否かを診断するものとに大別される。前者の診断では、例えばプロセス値が予め設定された閾値を超えたことを示すプロセス値異常や、センサからの信号が異常な値であることを示すセンサ異常が診断される。後者の診断では、例えばフィールド機器の調整のためにユーザによって設定された調整量が異常な値であることを示す調整異常が診断される。
【0004】
従来のフィールド機器は、自己診断によって検出した異常をアラームとして処理しており、過去に生じたアラームを4つ分だけアラーム履歴として保存している。ここで、従来のフィールド機器は、同一のアラームが連続して発生している場合にはアラーム履歴を更新せず、発生するアラームが変化した場合にのみアラーム履歴を更新するようにしている。また、4つのアラームがアラーム履歴として既に保存されている状態で新たなアラームが発生した場合には、最も古いアラームを新たに発生したアラームに上書きするようにしている。
【0005】
尚、以下の特許文献1には、フィールド機器に関するものではないが、CPU(中央処理装置)の実行命令履歴を記録する技術が開示されている。具体的には、パイプライン制御方式のCPUを備えた情報処理装置において、処理続行が不可能な異常が生じた場合における解析を容易にするために、CPUが実行した命令及びそのアドレスや書込みデータを履歴として命令履歴バッファに記録する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−158754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のフィールド機器は、プラント等に設置される組み込み機器であるため、設置スペースの制約を受ける関係から外形形状や大きさが先に規定されてしまい、要求される機能を必要最低限の部品によって実現しているのが現状である。このため、従来のフィールド機器は、上述の通り、過去4つ分のアラームをアラーム履歴として保存することができるに留まり、アラームの履歴機能が貧弱であると言わざるを得ない。
【0008】
従来のフィールド機器は、アラームの履歴機能が貧弱ではあるものの、保存されたアラーム履歴からフィールド機器に生じた異常を全く把握することができないという訳ではなく、ある程度は異常を把握することが可能である。しかしながら、従来のフィールド機器はアラームの履歴機能が貧弱であるが故に、フィールド機器においてどのような異常がいつ発生したのかを正確に把握することは困難であるという問題がある。
【0009】
ここで、アラーム履歴を記憶するメモリとして大容量のメモリを新たに搭載すれば、フィールド機器のアラームの履歴機能を強化することができるとも考えられる。しかしながら、フィールド機器は、前述した通り設置スペースの制約を受けるとともにコストの上昇も避ける必要があることから、上述した特許文献1に開示された技術とは異なり大規模化することはできない。このため、新たな大容量のメモリをフィールド機器に搭載することによって、アラームの履歴機能の強化を図ることは難しい。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、規模及びコストを大幅に上昇させることなく過去に生じた事象を正確に把握することができるフィールド機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のフィールド機器は、機器の動作を規定するプログラム(PG)を格納する第1メモリ(14)と、機器で用いられるパラメータ(PM)を格納する第2メモリ(15)とを備えており、前記プログラムに従って機器の状態を監視しつつ所定の処理を行うフィールド機器(1a、1b)において、機器内で生じた事象の種類を示す第1情報、前記事象が生じた時刻を示す第2情報、及び前記事象に関連する第3情報を対にした動作ログ(LG)を生成し、前記第1,第2メモリの何れか一方の空き領域に確保されたログ格納領域(R2)に格納するログ生成手段(16a)を備えることを特徴としている。
この発明によると、機器内で生じた事象の種類を示す第1情報、事象が生じた時刻を示す第2情報、及び事象に関連する第3情報を対にした動作ログがログ生成手段によって生成されて、第1,第2メモリの何れか一方の空き領域に確保されたログ格納領域に格納される。
また、本発明のフィールド機器は、前記第3情報が、前記事象が生じた時点の前後における機器の状態を示す情報、前記事象が生じた時点における機器の状態を示す情報、又は前記事象が生じた時点における前記所定の処理で用いられる情報であることを特徴としている。
また、本発明のフィールド機器は、前記ログ生成手段が、機器内で事象が生ずる度に前記動作ログを生成して、前記ログ格納領域に時系列的に格納することを特徴としている。
また、本発明のフィールド機器は、前記ログ格納領域に格納された前記動作ログを用いて所定の解析処理を行う解析手段(16b)と、前記解析手段で行われた解析処理の結果を出力する出力手段(11、13)とを備えることを特徴としている。
また、本発明のフィールド機器は、前記ログ格納領域が、前記第2メモリの空き領域に確保されており、前記第1メモリに格納されるプログラムを更新するための更新プログラムを前記第2メモリに確保されたログ格納領域に一時的に格納し、該更新プログラムを用いて前記第1メモリに格納されるプログラムの更新を行う更新制御手段(16c)を備えることを特徴としている。
また、本発明のフィールド機器は、前記更新制御手段が、前記第2メモリに確保されたログ格納領域に格納されている前記動作ログを前記更新プログラムで上書きすることによって、前記第2メモリに確保されたログ格納領域に前記更新プログラムを一時的に格納することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ログ生成手段が、機器内で生じた事象の種類を示す第1情報、事象が生じた時刻を示す第2情報、及び事象に関連する第3情報を対にした動作ログを生成して、第1,第2メモリの何れか一方の空き領域に確保されたログ格納領域に格納するようにしているため、規模及びコストを大幅に上昇させることなく過去に生じた事象を正確に把握することが可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態によるフィールド機器が用いられる無線通信システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態によるフィールド機器の要部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態によるフィールド機器に設けられる強誘電体メモリのメモリマップを示す図である。
【図4】本発明の一実施形態によるフィールド機器で生成される動作ログの一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態において動作ログに含まれる関連情報の具体例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態によるフィールド機器の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態によるフィールド機器について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態によるフィールド機器が用いられる無線通信システムの全体構成を示すブロック図である。図1に示す通り、無線通信システムCSは、無線フィールド機器1a,1b(フィールド機器)、無線ゲートウェイ2、及びホスト装置3を備えており、無線通信ネットワークN1及びバックボーンネットワークN2を介した通信が可能である。尚、図1では2つの無線フィールド機器1a,1bを示しているが、無線フィールド機器の数は任意である。
【0015】
無線フィールド機器1a,1bは、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントや工場に設置される機器であり、インダストリアル・オートメーション用無線通信規格であるISA100.11aに準拠した無線通信を行う。これら無線フィールド機器1a,1bは、安全性及び信頼性を高めるべく、自己の状態を自動的に診断する自己診断機能を備える。尚、無線フィールド機器1a,1bの内部構成の詳細については後述する。
【0016】
無線ゲートウェイ2は、無線フィールド機器1a,1bが接続される無線通信ネットワークN1と、ホスト装置3が接続されるバックボーンネットワークN2とを接続し、無線フィールド機器1a,1bとホスト装置3との間で送受信される各種データの中継を行う。この、無線ゲートウェイ2は、上記の無線通信規格ISA100.11aに準拠した無線通信が可能であり、無線通信ネットワークN1を介して行われる無線通信の制御や、無線フィールド機器を無線通信ネットワークN1に参入させるか否かの参入処理等も行う。
【0017】
ホスト装置3は、有線ネットワークであるバックボーンネットワークN2に接続されており、例えば無線通信システムCSの管理者に操作される装置である。このホスト装置3は、管理者の操作に応じて、例えば無線ゲートウェイ2との間で通信を行って、無線フィールド機器1a,1bに関する情報(測定データ、異常を示す情報(アラーム)等)を取得して無線フィールド機器1a,1bの管理に用いる。また、ホスト装置3は、無線フィールド機器1a,1bで用いられているプログラムを更新するためのプログラム(更新プログラム)を、無線ゲートウェイ2を介して無線フィールド機器1a,1bに配布する。
【0018】
次に、無線フィールド機器1a,1bの内部構成について詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態によるフィールド機器の要部構成を示すブロック図である。尚、無線フィールド機器1a,1bは同様の構成であるため、以下では無線フィールド機器1aのみについて説明し、無線フィールド機器1bについての説明は省略する。また、図2では、無線フィールド機器1aに設けられた構成のうち、本発明の説明を行う上で必要な構成のみを図示している。
【0019】
図2に示す通り、無線フィールド機器1aは、無線通信部11(出力手段)、機器固有処理部12、表示部13(出力手段)、フラッシュメモリ14(第1メモリ)、強誘電体メモリ15(第2メモリ)、及び制御部16を備えており、フラッシュメモリ14に格納されるプログラムPGに従って機器の状態を監視しつつ所定の処理を行う。ここで、無線フィールド機器1aで行われる所定の処理は、例えば温度の測定処理、バルブの開閉処理、アクチュエータの操作処理等である。本実施形態では、上記の所定の処理として、温度の測定処理が行われるものとする。
【0020】
無線通信部11は、制御部16の制御の下で、無線通信ネットワークN1を介した無線ゲートウェイ2との無線通信を行う。尚、無線通信部11で行われる無線通信は、上述した無線通信規格ISA100.11aに準拠したものである。機器固有処理部12は、制御部16の制御の下で無線フィールド機器1aに固有の処理を行う。具体的に、本実施形態においては、機器固有処理部12は温度センサを備えており、上記の固有の処理として温度の測定処理を行う。表示部13は、液晶表示装置等の表示装置を備えており、制御部16の制御の下で、例えば無線フィールド機器1aの保守作業を行う作業者に対する各種メッセージや機器の状態等を表示装置に表示する。
【0021】
フラッシュメモリ14は、不揮発性の半導体メモリであって、無線フィールド機器1aの動作を規定するプログラムPGを格納する。このプログラムPGは、制御部16の制御によって、ホスト装置3から無線通信ネットワークN1等を介して配布される更新プログラムに更新することが可能である。尚、無線フィールド機器1aに設けられるフラッシュメモリ14の容量は、例えば256キロバイト程度である。
【0022】
強誘電体メモリ15は、強誘電体の履歴現象(ヒステリシス)を利用し、正負の自発分極を値「1」及び値「0」にそれぞれ対応させた不揮発性の半導体メモリであって、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)とも呼ばれる。この強誘電体メモリ15は、無線フィールド機器1aで用いられる各種のパラメータPMを格納するとともに、制御部16で生成された機器の動作ログLG或いはホスト装置3から無線通信ネットワークN1等を介して配布される更新プログラムを格納する。尚、無線フィールド機器1aに設けられる強誘電体メモリ15の容量も、例えば256キロバイト程度である。
【0023】
ここで、強誘電体メモリ15には、制御部16によって、図3に示す2つの領域R1,R2が確保される。図3は、本発明の一実施形態によるフィールド機器に設けられる強誘電体メモリのメモリマップを示す図である。図3に示す領域R1は、上記のパラメータPMを格納するために確保されるパラメータ格納領域であって、例えば容量が64キロバイトの領域である。これに対し、図3に示す領域R2は、上記の動作ログLG或いは上記の更新プログラムを格納するために強誘電体メモリ15の空き領域(パラメータ格納領域R1以外の領域)に確保されるログ格納領域であって、例えば容量が192キロバイトの領域である。
【0024】
強誘電体メモリ15の空き領域は、フラッシュメモリ14に格納されたプログラムPGの更新が行われる場合に、ホスト装置3から無線通信ネットワークN1等を介して配布される更新プログラムを一時的に格納するために用いられるだけである。本実施形態では、強誘電体メモリ15の空き領域を、動作ログLGを格納するログ格納領域R2として予め確保しておき、フラッシュメモリ14に格納されたプログラムPGの更新が行われる場合には更新プログラムをログ格納領域R2に格納するようにしている。これは、強誘電体メモリ15の空き領域を動作ログLGの格納のために有効活用して、規模及びコストの大幅な増大を防止するためである。
【0025】
制御部16は、ログ生成部16a(ログ生成手段)、ログ解析部16b(解析手段)、及び更新制御部16c(更新制御手段)を備えており、無線フィールド機器1aの動作を統括して制御する。これら制御部16に設けられる各機能(ログ生成部16a、ログ解析部16b、及び更新制御部16c)は、制御部16がフラッシュメモリ14に格納されたプログラムPGを読み出して実行することにより実現される。
【0026】
ログ生成部16aは、無線フィールド機器1aで所定の事象が生じた場合に、動作ログLGを生成して強誘電体メモリ15に確保されたログ格納領域R2に格納する。ここで、ログ生成部16aが動作ログLGを生成する必要のある事象としては、機器の状態遷移、機器の外部エラー又は内部エラーによる外部アラーム又は内部アラームの発生、プロセス値や測定値の異常、ユーザによって設定された設置値の異常等が挙げられる。
【0027】
このログ生成部16aは、上記の事象が生ずる度に動作ログLGを生成し、生成した動作ログLGを、例えば図3に示す動作ログLG1,LG2,LG3のように、強誘電体メモリ15に確保されたログ格納領域R2に時系列的に格納する。ログ格納領域R2において新たに動作ログを格納すべき先頭アドレスを示す情報が、図3に示すパラメータ格納領域R1内における領域R11に格納される。このため、ログ生成部16aが、領域R11に格納されたアドレスを参照しつつ動作ログLG1,LG2,LG3をログ格納領域R2に順次格納すれば、これらの動作ログLG1,LG2,LG3は時系列的に格納されることになる。尚、ログ格納領域R2の残りの容量が無くなった場合には、ログ生成部16aは、ログ格納領域R2の先頭に戻って、既に格納されている動作ログを新たな動作ログで上書きする。
【0028】
図4は、本発明の一実施形態によるフィールド機器で生成される動作ログの一例を示す図である。図4に示す通り、本実施形態において生成される動作ログLGは、カウント値(第2情報)、事象番号(第1情報)、及び関連情報(第3情報)を対にしたものである。上記のカウント値は無線フィールド機器1a内で生じた事象の発生時刻を示す情報であり、上記の事象番号は生じた事象の種類を示す情報であり、上記の関連情報は生じた事象に関連する情報である。
【0029】
上記のカウント値は、例えば制御部16で用いられる32ビットのカウンタ(例えば、1秒毎にカウント値をインクリメントするカウンタ)のカウント値である。このカウンタによるカウントが開始された時刻を示す基準時刻情報が、図3に示すパラメータ格納領域R1内における領域R12に格納されている。このため、領域R12に格納された基準事項情報で示される時刻に対して上記のカウント値で示される時間を加算すれば、事象が発生した時刻を得ることができる。尚、時刻そのものではなくカウント値を用いるのは、データ量を削減するためである。
【0030】
上記の事象番号は、無線フィールド機器1a内で生ずる事象の各々に対して一意に割り当てられた番号である。このため、事象番号から無線フィールド機器1a内で生じた事象を特定することができる。上記の関連情報は、無線フィールド機器1a内で生じた事象に関連する情報であって事象毎に内容及びデータ長が異なる情報である。具体的に、関連情報は、事象が生じた時点の前後における機器の状態を示す情報、事象が生じた時点における機器の状態を示す情報、又は事象が生じた時点において機器固有処理部12等で用いられる情報等である。
【0031】
図5は、本発明の一実施形態において動作ログに含まれる関連情報の具体例を示す図である。図5に示す例では、事象番号「0001」,「0002」,「0020」,「0021」,「0250」,「0251」が割り当てられた事象についての関連情報が示されている。ここで、事象番号「0001」,「0002」が割り当てられた事象は、それぞれ演算部(図示省略)の状態遷移及び表示部13の状態遷移であり、これらの事象の関連情報は、遷移前の状態と遷移後の状態を示す情報(事象が生じた時点の前後における機器の状態を示す情報)である。
【0032】
また、事象番号「0020」,「0021」が割り当てられた事象は、それぞれ外部アラーム及び内部アラームの発生であり、これらの事象の関連情報は、発生した外部アラーム及び内部アラームの全ビットの内容を示す情報(事象が生じた時点における機器の状態を示す情報)である。また、事象番号「0250」,「0251」が割り当てられた事象は、それぞれプロセス値及びセンサ入力値の異常であり、これらの事象の関連情報は、それらの値のステータスとそれらの値そのものを示す情報(事象が生じた時点において機器固有処理部12等で用いられる情報)である。
【0033】
具体的に、図4に示す動作ログLG1は、カウント値が「00000100」であって事象番号が「0001」であることから、制御部16のカウンタでカウントが開始されてから256秒後に生じた演算部の状態遷移によって生成されたものであることが分かる。また、関連情報が「00020001」であることから、遷移前の演算部の状態が「0002」であり、遷移後の演算部の状態が「0001」であることが分かる。
【0034】
また、図4に示す動作ログLG2は、カウント値が「00000500」であって事象番号が「0020」であることから、制御部16のカウンタでカウントが開始されてから1280秒後に発生した外部アラームによって生成されたものであることが分かる。また、関連情報から外部アラームの全ビットの内容が「000100FF00000044」であることが分かる。
【0035】
更に、図4に示す動作ログLG3は、カウント値が「00000C00」であって事象番号が「0250」であることから、制御部16のカウンタでカウントが開始されてから3072秒後に生じたプロセス値の異常によって生成されたものであることが分かる。また、関連情報「8045000000」からプロセス値のステータスとプロセス値とが分かる。
【0036】
ログ解析部16bは、強誘電体メモリ15に格納された動作ログLGを一定周期で読み出して自己解析することにより寿命診断や予防保全を行う。例えば、電源電圧やノイズの変動を解析して無線フィールド機器1aに設けられるバッテリの交換時期を予測したり、温度センサの測定値を解析して温度センサの寿命(交換時期)を予測する。ログ解析部16bの解析結果を、無線通信部11からホスト装置3に送信し或いは表示部13に表示して管理者や作業者に報知することによって予防保全が可能になる。
【0037】
更新制御部16cは、ホスト装置3から無線通信ネットワークN1等を介して更新プログラムが配布された場合に、フラッシュメモリ14に格納されたプログラムPGを更新する制御を行う。具体的には、ホスト装置3によって配布された更新プログラムを強誘電体メモリ15のログ格納領域R2に一時的に格納し、フラッシュメモリ14に格納されたプログラムPGを強誘電体メモリ15のログ格納領域R2に一時的に格納した更新プログラムに書き換える(更新する)。
【0038】
ここで、更新制御部16cは、ホスト装置3によって配布された更新プログラムを強誘電体メモリ15のログ格納領域R2に格納する場合には、ログ格納領域R2に格納されている動作ログLGを更新プログラムで上書きする。フラッシュメモリ14に格納されたプログラムPGが更新されてしまうと、そのプログラムPGが実行されることによって実現されていたログ生成部16aで生成された動作ログLG(強誘電体メモリ15のログ格納領域R2に格納されていた動作ログLG)は意味を持たなくなり消去する必要がある。
【0039】
本実施形態では、更新制御部16cが、フラッシュメモリ14に格納されたプログラムPGの更新を行うときに、強誘電体メモリ15のログ格納領域R2に格納されていた動作ログLGを更新プログラムで上書きしている。これは、意味を持たなくなった動作ログLGを消去する手間を省くとともに、意味を持たなくなった動作ログLGが消去されずに誤って使用されるといった事態を防止するためである。
【0040】
次に、上記構成における無線フィールド機器1aの動作について説明する。図6は、本発明の一実施形態によるフィールド機器の動作を示すフローチャートである。尚、図6に示すフローチャートは、無線フィールド機器1aにおいて行われる各種動作のうちの動作ログの生成に係る動作を示すフローチャートであり、無線フィールド機器1aの電源が投入された後に開始される。
【0041】
図6に示す処理が開始されると、まずフラッシュメモリ14に格納されたプログラムPGに従って無線フィールド機器1aの状態が監視され(ステップS11)、無線フィールド機器1a内において事象が発生したか否かが制御部16によって判断される(ステップS12)。無線フィールド機器1a内で事象が発生していないと判断した場合(ステップS12の判断結果が「NO」の場合)には、無線フィールド機器1aの状態監視が継続される(ステップS11)。
【0042】
これに対し、無線フィールド機器1a内で事象が発生したと判断した場合(ステップS12の判断結果が「YES」の場合)には、発生した事象が動作ログLGを生成する必要のある事象であるか否かが制御部16によって判断される(ステップS13)。具体的には、発生した事象が、無線フィールド機器1aの状態遷移、無線フィールド機器1aの外部エラー又は内部エラーによる外部アラーム又は内部アラームの発生、プロセス値や測定値の異常、及びユーザによって設定された設置値の異常の何れかであるか否かが判断される。
【0043】
発生した事象が動作ログLGを生成する必要のある事象ではないと制御部16が判断した場合(ステップS13の判断結果が「NO」の場合)には、無線フィールド機器1aの状態監視が継続される(ステップS11)。これに対し、発生した事象が動作ログLGを生成する必要のある事象と制御部16が判断した場合(ステップS13の判断結果が「YES」の場合)には、動作ログLGを作成する処理がログ生成部16aによって行われる。
【0044】
具体的には、まず発生した事象からその事象番号を特定し(ステップS14)、次いで、その事象に関連する関連情報を収集する処理(ステップS15)がログ生成部16aによって行われる。次に、現在時刻(制御部16のカウンタのカウント値)を取得する処理がログ生成部16aによって行われる。そして、ステップS16の処理で取得したカウント値、ステップS14の処理で特定した事象番号、及びステップS15の処理で収集した関連情報が対とされた動作ログLGがログ生成部16aで生成されて強誘電体メモリ15のログ格納領域R2に格納される(ステップS17)。
【0045】
最後に、ステップS17で格納した動作ログLGの長さに応じて強誘電体メモリ15の領域R11(図3参照)に格納される先頭アドレスを更新する処理がログ生成部16aによって行われる(ステップS18)。尚、ステップS18の処理が終了すると、処理はステップS11に戻る。以上説明した処理が繰り返され、動作ログLGを生成する必要のある事象が無線フィールド機器1a内で生ずる度に、強誘電体メモリ15のログ格納領域R2に動作ログLGが時系列的に順次格納される。
【0046】
強誘電体メモリ15のログ格納領域R2に格納された動作ログLGは、制御部16に設けられたログ解析部16bによって一定周期で読み出され、寿命診断等のために解析される。ログ解析部16bの解析結果は、無線通信部11からホスト装置3に送信され、或いは表示部13に表示されて、無線通信システムCSの管理者や無線フィールド機器1aの保守作業を行う作業者に報知される。
【0047】
以上の通り、本実施形態では、無線フィールド機器1aの状態を監視し、動作ログLGを生成する必要のある事象が無線フィールド機器1a内で生じた場合に、カウント値(無線フィールド機器1a内で生じた事象の発生時刻を示す情報)、事象番号(生じた事象の種類を示す情報)、及び関連情報(生じた事象に関連する情報)を対にした動作ログLGを強誘電体メモリ15のログ格納領域R2格納するようにしている。このため、従来のように単にアラームのみをアラーム履歴として保存する場合に比べて、事象の発生した時刻や発生した事象に関連する情報を把握することができ、過去に生じた事象を正確に把握することができる。
【0048】
また、本実施形態では、強誘電体メモリ15のログ格納領域R2に動作ログLGを時系列的に順次格納しているため、無線フィールド機器1aで生じた事象の変遷を辿ることができ、これによって過去に生じた事象をより正確に把握することができる。また、本実施形態では、強誘電体メモリ15のパラメータ格納領域R1以外の領域をログ格納領域R2として確保し、更新プログラム(フラッシュメモリ14に格納されるプログラムPGを更新するための更新プログラム)の格納に用いられていた領域を動作ログLGの格納にも用いているため規模及びコストの大幅な上昇を招くこともない。
【0049】
更に、本実施形態では、強誘電体メモリ15のログ格納領域R2に動作ログLGを一定周期で読み出して寿命診断等のための解析を行い、その解析結果をホスト装置3に送信し、或いは表示部13に表示している。これにより、無線フィールド機器1aに設けられるバッテリの交換時期や、温度センサの寿命(交換時期)を前もって知ることができるため予防保全が可能になる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態によるフィールド機器について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、強誘電体メモリ15にログ格納領域R2を確保して動作ログLGを格納する例について説明したが、このログ格納領域R2と同様の領域をフラッシュメモリ14に確保して動作ログLGを格納しても良い。また、上記実施形態では、パラメータPM及び動作ログLGを格納するメモリとして強誘電性メモリ15を用いる例について説明したが、強誘電性メモリ15に代えてEEEPROMやフラッシュメモリを用いても良い。
【0051】
また、上記実施形態では無線フィールド機器1a,1bが動作ログLGを解析し、その解析結果をホスト装置3に送信する例について説明した。しかしながら、ホスト装置3が無線フィールド機器1a,1bに格納された動作ログLGを取得して解析するようにしても良い。更に、上記実施形態では、無線通信規格ISA100.11aに準拠した無線通信が可能な無線フィールド機器1a,1bを例に挙げて説明したが、本発明は、有線ネットワーク介して通信を行うフィールド機器にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1a,1b 無線フィールド機器
11 無線通信部
13 表示部
14 フラッシュメモリ
15 強誘電体メモリ
16a ログ生成部
16b ログ解析部
16c 更新制御部
LG 動作ログ
PG プログラム
PM パラメータ
R2 ログ格納領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の動作を規定するプログラムを格納する第1メモリと、機器で用いられるパラメータを格納する第2メモリとを備えており、前記プログラムに従って機器の状態を監視しつつ所定の処理を行うフィールド機器において、
機器内で生じた事象の種類を示す第1情報、前記事象が生じた時刻を示す第2情報、及び前記事象に関連する第3情報を対にした動作ログを生成し、前記第1,第2メモリの何れか一方の空き領域に確保されたログ格納領域に格納するログ生成手段を備えることを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
前記第3情報は、前記事象が生じた時点の前後における機器の状態を示す情報、前記事象が生じた時点における機器の状態を示す情報、又は前記事象が生じた時点における前記所定の処理で用いられる情報であることを特徴とする請求項1記載のフィールド機器。
【請求項3】
前記ログ生成手段は、機器内で事象が生ずる度に前記動作ログを生成して、前記ログ格納領域に時系列的に格納することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のフィールド機器。
【請求項4】
前記ログ格納領域に格納された前記動作ログを用いて所定の解析処理を行う解析手段と、
前記解析手段で行われた解析処理の結果を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする請求項3記載のフィールド機器。
【請求項5】
前記ログ格納領域は、前記第2メモリの空き領域に確保されており、
前記第1メモリに格納されるプログラムを更新するための更新プログラムを前記第2メモリに確保されたログ格納領域に一時的に格納し、該更新プログラムを用いて前記第1メモリに格納されるプログラムの更新を行う更新制御手段を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載のフィールド機器。
【請求項6】
前記更新制御手段は、前記第2メモリに確保されたログ格納領域に格納されている前記動作ログを前記更新プログラムで上書きすることによって、前記第2メモリに確保されたログ格納領域に前記更新プログラムを一時的に格納することを特徴とする請求項5記載のフィールド機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−54497(P2013−54497A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191564(P2011−191564)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】